(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0011】
まず、前述の電圧−透過率特性のシフトを抑制する関連技術1(未公開)を、
図25に示す。この関連技術1は、FFSモードの横電界方式の液晶表示装置の画素を二分割して領域39a,39bとし、領域39aの液晶61aの初期配向方向62aと領域39bの液晶61bの初期配向方向62bとを直交させ、横電界42aと横電界42bとが直交するようにストライプ状電極63aの延在方向とストライプ状電極63bの延在方向とを直交させ、ストライプ状電極63aと初期配向方向62aとのなす角とストライプ状電極63bと初期配向方向62bとのなす角を等しくするものである。
図25には、初期配向方向62bの斜め視野40、初期配向方向62aに直交する方向の斜め視野40、初期配向方向62aの斜め視野41、初期配向方向62bに直交する斜め視野41、入射側偏光板の吸収軸43、出射側偏光板の吸収軸44などが開示されている。このようにすることで、横電界42a,42bを用いて液晶61a,61bを回転させて透過率を変化させる際に、二つの領域39a,39bの液晶61a,61bの互いの向きの直交を保ったままで、液晶61a,61bを回転させることができる。
【0012】
図26Aに示すように、領域39bでは初期配向方向62bの斜め視野40から見込むと電圧−透過率特性は低電圧側にシフトし、逆に、初期配向方向62bに直交する方向の斜め視野41から見込むと電圧−透過率特性は高電圧側にシフトする。領域39aでも同様である。これに対して、
図26Bに示すように、二つの領域39a,39bを合わせることにより、両者の視野角特性が平均化され、初期配向方向62a,62b及びこれに直交する方向から見ても、正面の特性とほぼ同等な特性に近づけることができる。
【0013】
一方、横電界方式の液晶表示装置では、黒表示の斜め視野からの特性も比較的良好ではあるが、直交する偏光板の吸収軸から45°をなす方向の斜め視野から見込んだ場合に、黒透過率がやや上昇することが知られている。この状況を
図27に示す。
図27Aには、入射側偏光板の吸収軸43、出射側偏光板の吸収軸44、吸収軸43,44と45°をなす方向64などが開示されている。
図27Bには、入射側偏光板の偏光軸56、出射側偏光板の偏光軸57などが開示されている。
【0014】
一般的に、横電界方式の液晶表示装置では、吸収軸43,44が直交する二枚の偏光板の間に、吸収軸43,44のいずれかに初期配向方向が一致するように液晶を配置する(
図27A)。この状態で、両偏光板の吸収軸43,44の方向から45°をなす方向64から、基板法線方向から傾斜した視野から見込むと、両偏光板の偏光軸56,57の方向が直交しなくなるため、上述のような黒表示時の透過率の上昇が発生してしまう(
図27B)。
【0015】
高い表示品位が要求される表示装置では、このような斜め視野からの黒輝度の上昇を抑制することが求められている。これを実現するための、
図28に示す関連技術2(特許文献1参照)について説明する。
図28には、入射側偏光板43a、入射側偏光板43aの吸収軸43、出射側偏光板44a、出射側偏光板44aの吸収軸44、Aプレート(A-plate)45、Cプレート(C-plate)46、液晶47a、液晶47aの初期配向方向47、液晶層47b、二枚の透明絶縁性基板48、二枚の配向膜49などが開示されている。
【0016】
まず、入射側偏光板43aの吸収軸43と一致するように、液晶47aの初期配向方向47をとる。更に、出射側偏光板44aと液晶層47bとの間には、液晶層47bに近い方から、Aプレート45、Cプレート46を配置し、出射側偏光板44aの吸収軸44は初期配向方向47に直交させる。Aプレート45は、初期配向方向47に直交する方向に正の一軸の屈折率異方性を有する位相補償層である。Cプレート46は、基板48に垂直な方向に正の一軸の屈折率異常性を有する位相補償層である。
【0017】
図29Aには、入射側偏光板43aの吸収軸43、出射側偏光板44aの吸収軸44、Aプレート45の軸方向50、Cプレート46の軸方向51が開示されている。
図29Bには、斜め視野から見込んだ場合の光線に垂直なAプレート45の常光方向52、光線に垂直なCプレート46の常光方向53、液晶47a通過後の偏光方向54、Aプレート45及びCプレート46通過後の偏光方向55、入射側偏光板43aの偏光軸56、出射側偏光板44aの偏光軸57が開示されている。
【0018】
前述のように各層の光学軸を配置し、各要素のパラメータを最適化することにより、偏光板43a,44aの吸収軸43,44と45°をなす方向から斜め視野で見込んだ場合に、
図29A及び
図29Bに示すように、入射側偏光板43aを透過した光は、入射側偏光板43aの透過軸の向きと光線が感じる液晶ダイレクタの光線の短軸の向きとが一致するため、液晶層47bをそのまま透過する。そして、その光の偏光方向は、液晶層47bと出射側偏光板44aとの間に存在するAプレート45及びCプレート46によって回転し、ほぼ出射側の透過軸に直交する向きに変換される。このため、出射側偏光板44aにより、ほぼ光が遮断されて、光漏れを抑制することができる。
【0019】
図30Aに位相補償層を設けない場合の黒の視野角特性を、
図30BにCプレート46とAプレート45とを組合せた位相補償層を設けた場合の黒の視野角特性を示す。
図30A及び
図30Bは、液晶の配向方向を90°方向とした場合に、視野角の方位角(0〜360°)及び極角(0〜80°)を指定したときの、黒表示の等輝度分布を示している。位相補償を設けない
図30Aの特性では、方位角45°かつ極角60°付近で約0.55[cd/m
2]とな
る。これに対して、位相補償層を設ける
図30Bの特性では、最大でも0.073[cd/m
2]程度となり、斜め視野の黒輝度を顕著に抑制できる。なお、
図30A及び
図30Bは等輝度曲線(isoluminance contour [nit])を示し、[nit]は[cd/m
2]と同じ次元である。
【0020】
このようなAプレート45とCプレート46の組合せによる偏光軸の変換は、等価な二軸性の光学補償層を一層設けることによっても、行うことができる。
【0021】
しかしながら、関連技術1すなわち液晶の初期配向方向を直交する二方向にとる場合には、関連技術2と同様な光学配置を用いても、黒の斜め視野からの特性を改善することができない。
図31にその状況を示す。
図31Aには、入射側偏光板の吸収軸43、出射側偏光板の吸収軸44、Aプレートの軸方向50、Cプレートの軸方向51が開示されている。
図31Bには、光線に垂直なAプレートの常光方向52、光線に垂直なCプレートの常光方向53、液晶通過後の偏光方向54、Aプレート及びCプレート通過後の偏光方向55、入射側偏光板の偏光軸56、出射側偏光板の偏光軸57が開示されている。
【0022】
まず、入射側偏光板を通過した光は、その偏光方向がp’の方向となる。液晶層の初期配向方向が直交する二方向を有する場合、その一方向は入射側偏光板の吸収軸43に直交する方向にとる。この初期配向方向では、液晶ダイレクタの短軸の方向がp’の向きに一致しないため、液晶層を通過した光の偏光軸の向きはp’とは異なる向きに向いてしまう。横電界方式の液晶表示装置の場合、一般的に概ねλ/2板とほぼ等価なリターデーションを液晶層に持たせることにより、正面から見た場合の白の透過率を極大化する。このように液晶層のリターデーションをλ/2とした場合に、偏光方向は、a’の方向に一致する液晶のダイレクタの短軸の向きに関して、対称な方向に変換される。
【0023】
AプレートとCプレートを通過する光の偏光方向は、
図31A及び
図31Bに示すように、時計回りの回転を受けるため、a’に直交する出射側偏光板の吸収軸44の方向から離れる方向に動いてしまう。そのため、AプレートとCプレートからなる光学補償層は、逆に透過率を増大させてしまい、
図32のような黒の視野角特性となってしまう。
図32の特性では、斜め視野の黒輝度が1.1[cd/m
2]となり、
図30Aに示す位相補償を適用しない場合よりも悪化してしまう。すなわち、関連技術1に関連技術2を適用しても、一方の領域の黒の視野角を抑制することができず、全体として、位相補償の効果による良好な黒表示の視野角特性を得ることができないという課題があった。
【0024】
そこで、下記実施形態の目的は、直交配向を有する横電界方式の液晶表示装置において、黒表示時に斜め視野から見込んだ場合の透過率を抑制し、どの視野角から見込んだ場合でも、良好な黒表示が得られる横電界方式の液晶表示装置を与えるものである。
【0025】
[実施形態1]
本発明の実施形態1について、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5を用いて説明する。すなわち、ここでの説明で用いる符号は、
図1乃至
図5のいずれかに開示されている。
図1は、実施形態1に係る液晶表示装置における1画素の光学的な機能を果たす主要要素の構成(一部の図示を省略している。)を示す。
図2は1画素の平面図である。
図3は、
図2のA−A’の断面図を示す。
図4は、画素内の表示領域における初期配向方向の分割を示したものである。
図5は分割に伴う構成を断面図で模式化したものである。
【0026】
本実施形態1を、以下、作成順を追って、詳細に説明する。
【0027】
まず、第1のガラス基板からなる透明絶縁性基板20上に、第1の透明導電膜としてITO(indium tin oxide)を50[nm]成膜し、このITOに平面状の共通電極1のパタンを形成する。更にこの上に、第1の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムに走査線3及び共通信号配線2のパタンを形成する。
【0028】
続いて、ゲート絶縁膜13として窒化シリコン(SiNx)を400[nm]成膜し、薄膜半導体層6として水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を200[nm]及びn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を50[nm]積層成膜し、画素のスイッチング素子となるTFT(thin film transistor)部分のみに薄膜半導体層6を残すパターニングをする。更に、第2の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムにデータ線4、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7d、第2の金属層からなる画素電極5の一部のパタンを形成する。
【0029】
続いて、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7dをマスクとして、薄膜半導体層6のn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を除去する。続いて、保護絶縁膜14として窒化シリコン(SiNx)を150[nm]成膜し、その窒化シリコンの一部に画素電極5を接続するためのスルーホール8を形成する。
【0030】
更に、この上に第2の透明電極としてITOを40[nm]成膜し、そのITOに画素電極5のパタンを形成する。画素電極5は、ストライプ状のパタンを両端部9で接続した形状とする。ストライプ状の電極の幅は3[μm]、ストライプ状の電極間のスリットの幅は6[μm]とする。画素の上半分の領域IIでは、水平方向(走査線3の延在方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ電極を延在させ、画素の下半分の領域Iでは、これと直交させる方向にストライプ電極を延在させてある。以上の方法により、TFTアレイ基板28を作製する。
【0031】
更に、第2のガラス基板からなる透明絶縁性基板21上に、樹脂ブラックを用いてブラックマトリクス17を形成し、この上にRGB
(red green blue)の色層18を所定のパタンに形成し、その上にオーバーコート層19を形成する。この上に、偏光した光を照射することにより配向可能な配向膜11を形成し、
図4に示す初期配向方向29,31が互いに直交する領域I及び領域IIを形成するように、光配向処理を行う。
【0032】
更にこの上に、液晶性の分子の末端に反応性の基を有するリアクティブメソゲンを全面に塗布して、表示部全体にUV(ultra violet)照射を行い、周辺部を未露光として残して、現像液により未露光部を除去し、更に露光・焼成を行なうことにより、
図4に示す方向に配向させた1軸光学異方性を有する層(第1の光学補償層)すなわちインセルリターダー(in-cell retarder)10を形成する。ここで、インセルリターダー10のリターデーションの大きさは、150[nm]とする。以上の方法により、カラーフィルタ基板30を作製する。
【0033】
上述のように作製したTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方に、光照射により配向可能な配向膜15,16を形成し、
図4に示す領域I及び領域IIを形成するように光配向処理を行う。この際、領域I及び領域IIのそれぞれにおいて、インセルリターダー10の異方軸と液晶12の初期配向方向29,31とを一致させる。
図4の上半分において水平方向(走査線3の延在方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ状の画素電極5を延在させた領域IIでは、水平方向に初期配向方向31を設定する。このとき、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30との両方において、プレティルト角を0°とする。更に
図4の下半分において縦方向(走査線3の延在方向に直交する方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ状の画素電極5を延在させた領域Iでは、縦方向に初期配向方向29を設定する。このとき、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30との両方において、プレティルト角を0°とする。
【0034】
ここで、
図4の上半分の領域IIの初期配向方向31と下半分の領域Iの初期配向方向29とは、直交するように角度を設定してある。また、領域Iと領域IIの面積はほぼ等しくする。これにより、領域I及び領域IIの相互の補償が行いやすくなり、電圧―輝度特性の視野角による変動や色つきが少なく、かつ対称性の良い、良好な視野角特性を得ることができる。
【0035】
更に、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30とにシール材を塗布してこれらを貼りあわせ、この中に正の誘電率異方性を有する液晶12を注入して封止する。ここで、液晶12の物性値はΔε=5.5、Δn=0.100とし、液晶層12aの厚さdは4.0[μm]となるように、柱状スペーサの高さを制御する。このとき、液晶層12aのリターデーションは、Δnとdの積で与えられ、400[nm]とする。この値は、緑色の光の中心的な波長550[nm]の1/2より、やや大きな値としてある。このような値にすると、実効的に液晶12が動く層厚deffが約270〜300[nm]となるので、表示が良好となる。上記約270〜300[nm]となる理由は、フリンジフィールドにより構成する横電界が、電極を構成する基板20側で強く、対向する基板21側では弱いことにより、基板20側の液晶12が主として動き、基板21側の液晶12で動きが小さくなるためである。
【0036】
リアクティブメソゲンを用いて形成した1軸光学異方性を有する層であるインセルリターダー10のリターデーション150[nm]と、液晶層12aのリターデーション400[nm]とは、同一方向であり、かつ合計で550[nm]のリターデーションとなる。このため、可視光の領域の中心となる緑の典型的波長であるところの550[nm]において、常光に対して、異常光はほぼ波長と同じ長さのリターデーションを有することになる。
【0037】
一方、両側の基板20,21の外側に、偏光軸が直交するように、偏光板22,23を貼付する。ここでTFTアレイ基板28側の偏光板22の吸収軸26の向きは、領域Iの初期配向方向29と一致させる。カラーフィルタ基板30側の偏光板23と基板21との間には、領域Iの初期配向方向29に直交する方向で面内に平行な方向に一軸屈折率異方性を有する第2の光学補償層(外側Aプレート24)と、基板21に直交する方向の一軸屈折率異方性を有する第3の光学補償層(Cプレート25)とを、基板21側からこの順に配置する。
【0038】
この際、外側Aプレート24とCプレート25とを支持する基板としてTAC(triacetylcellulose)層33を用いる。TAC層33は基板21に垂直な方向に負の一軸異方性を有するものを用いる。以下の説明では、TAC層33とCプレート25とのリターデーションを合わせて、Cプレート25のリターデーションとして説明する。本実施形態1では、基板21と出射側偏光板23との間に配置する外側Aプレート24のリターデーションは128[nm]、Cプレート25のリターデーションは68[nm]とする。
【0039】
上述のように作製した液晶表示パネルに、バックライトと駆動回路を実装することにより、実施形態1のアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成する。
図3に、バックライトの入射方向60を示す。
【0040】
上述のようにして得られた液晶表示装置では、画素電極5と共通電極1との間に電界を印加すると、領域I及び領域IIにおいて、いずれも液晶12は時計回りに回転する。領域I及び領域IIでは、液晶12の初期配向方向29,31が互いに直交しており、電界も互いに直交しており、初期配向方向29,31と電界とのなす角がほぼ等しい。そのため、領域Iの液晶12と領域IIの液晶12とは、互いに直交した状態のまま回転する。したがって、
図25及び
図26を用いて説明した、領域I及び領域IIそれぞれ単独では問題となる電圧−透過率特性のシフトが、両領域を同じ面積で配置することにより、互いに視野角特性が補償し合うので顕著に抑制される。
【0041】
次に、液晶12の初期配向状態を用いて、黒を表示させる場合について説明する。領域I及び領域IIのいずれにおいても、入射側偏光板22の吸収軸26と出射側偏光板23の吸収軸27とが直交し、これらの間に挟まれた液晶層12a並びに光学補償層であるインセルリターダー10、Aプレート24及びCプレート25は、吸収軸26,27のいずれかと平行であるか、又は基板20,21に直交している。そのため、表示面を正面から見た場合には、透過率が低く抑えられ、良好な黒表示が得られる。
【0042】
次に、両方の偏光板22,23の吸収軸26,27と45°をなす方向の斜め視野から見込んだ場合について考える。ここで、入射側偏光板22の吸収軸26の方向の単位ベクトルをp、出射側偏光板23の吸収軸27の単位ベクトルをa、領域Iのダイレクタの向きをn1、領域IIのダイレクタの単位ベクトルをn2、出射側偏光板23と基板21との間にある外側のAプレート24の光学軸の向きをap、Cプレート25の向きをcp、光線の向きをsとする。
【0043】
光線sに垂直な方向の、入射側偏光板22の透過軸をp’、出射側偏光板23の透過軸をa’、領域Iのダイレクタの常光の軸方向をn1’、領域IIのダイレクタの常光の軸方向をn2’、Aプレート24の常光の軸方向をap’、Cプレート25の常光の軸方向をcp’とすると、
p’=p×s
a’=a×s
n1’=n1×s
n2’=n2×s
ap’=ap×s
cp’=cp×s
となる。
【0044】
まず、領域Iでは、入射側偏光板22を透過した光の偏光軸がp’の方向となることにより、p=n1でありp’=n1’であるから、液晶層12a及びインセルリターダー10の常光の向きと一致するため、その光は液晶層12aをそのまま透過する。続いて、その光は、Aプレート24を通過する際にap’によりリターデーションを受け、更にCプレート25を通過する際にcp’によるリターデーションを受ける。その結果、p’の方向の偏光軸は、出射側偏光板23の透過軸a’に直交する偏光軸pp1’の方向に回転する。これにより、出射側偏光板23を透過する光は、吸収を受けて、透過率が低く抑えられるため、良好な黒表示を行うことができる。これは、関連技術2の光学補償層が、斜め視野からの黒表示の光漏れを抑制する原理と同じである。
【0045】
一方、領域IIにおいても、入射側偏光板22を透過した光の偏光軸はp’の方向となる。ここで領域IIのダイレクタn2の方向はpと垂直であり、n2’とp’は一致しないため、入射側偏光板22を透過した偏光は、液晶層12aを透過する際に、液晶12のリターデーションにより、偏光軸が変化する。
【0046】
液晶層12aのリターデーションがλ/2相当であり、インセルリターダーが存在しない場合、液晶層12aを透過した光はn2’に対称な方向p''に変化する。この光が続いてAプレート24を通過する際にap’によりリターデーションを受け、更にCプレート25を通過する際にcp’によるリターデーションを受ける結果、p''の方向の偏光はpp2’方向に回転する。そして、pp2’はa’と直交する方向から逆に遠ざかってしまうため、Aプレート24とCプレート25による光学補償は逆効果となり、斜め視野からの黒の透過率が上昇して、良好な黒表示が得られない。
【0047】
関連技術2のように液晶層のリターデーションのみでは、白表示を行った場合のリターデーションを考慮すると、300〜400[nm]程度が適当であるため、液晶層のみでは上述の状況に近いため、斜め視野から、良好な黒表示が得られない。
【0048】
これに対して、本実施形態1のように、液晶セル内に液晶層12aと同一な方向に一軸光学異方性を有するインセルリターダー10を配置する。これにより、白表示を得るために必要な300〜400[nm]の液晶層12aのリターデーションに加えて、液晶層12a及びインセルリターダー10の合計のリターデーションを500〜600[nm]とする。その結果、可視光の領域の中心となる緑の典型的波長であるところの550[nm]近辺において、常光に対して、異常光はほぼ波長と同じ長さのリターデーションを有することになる。したがって、これを透過した光は、異常光は常光に対して、一波長分のリターデーションを受けることになり、偏光方向がほぼp’の方向に戻る。
【0049】
このため、出射側偏光板23と基板21との間に配置されたAプレート24及びCプレート25を通過する光は、領域Iと同じく、pp1’の方向に回転する。そのため、その光は、出射側偏光板23で吸収を受けて、透過率が低く抑えられる。青の波長ではリターデーションが波長より大きくなり、赤の波長ではリターデーションが波長より小さくなるため、領域Iに比べて、若干透過率は上昇するものの、全体としては、透過率は低く抑えられる。
【0050】
図6Aに、インセルリターダー及び外側Aプレート、Cプレートを配置しない場合の領域IIの黒表示の視野角特性を示す。
図6Bに、外側Aプレート及びCプレートのみを配置した場合の領域IIの黒表示の視野角特性を示す。いずれも、領域Iの液晶の初期配向方向を90°とした場合の、視野角の方位角(0〜360°)と極角(0〜80°)を指定したときの、黒表示の等輝度分布を示している。
図6Aでは斜め視野の最大黒輝度が0.56[cd/m
2]程度であるのに対して、
図6Bでは斜め視野の最大の黒輝度が1.1[cd/m
2]程度である。
【0051】
外側Aプレート24及びCプレート25を配置することにより、領域Iでは、黒の視野角特性を顕著に改善できる。これに対し、領域IIでは、インセルリターダー10を配置しない状態で外側Aプレート24及びCプレート25を配置すると、逆に視野角特性が悪化してしまう。
図6Cに、本実施形態1のようなインセルリターダー10を配置した場合の領域IIの黒表示の視野角特性示す。このように、液晶層12aとインセルリターダー10と合わせて550[nm]のリターデーションとすることにより、黒表示の視野角特性を顕著に良化し、斜め視野の最大の黒輝度を0.30[cd/m
2]とすることができる。
【0052】
実際の画素としては、領域Iと領域IIが1/2ずつで構成されているため、黒表示時の斜め視野からの透過率は、領域Iと領域IIの平均で得られることになる。
図7Aに、基板21と偏光板23との間に外側Aプレート24、Cプレート25及びインセルリターダー10がない場合の黒表示の視野角特性示す。
図7Bには、インセルリターダー10を配置せずに、基板21と偏光板23との間に外側Aプレート24及びCプレート25を配置した場合の視野角特性示す。更に
図7Cに実施形態1の構成の液晶表示装置における黒表示の視野角特性を示す。
図7A、
図7B及び
図7Cに示すように、それぞれの斜め視野からの最大の黒輝度は
図7Aで0.56[cd/m
2]、
図7Bで0.57[cd/m
2]、
図7Cでは0.16[cd/m
2]となり、本実施形態1によれば良好な斜め視野の黒表示が得られることがわかる。
【0053】
上述の黒輝度の斜め視野からの特性は、各々の光学配置における黒輝度の視野角分布を相対的に比較するものであり、同等のバックライト光源を用いたものである。バックライトの輝度等が異なれば、相対的な関係は変化しないが、輝度の絶対値そのものは変化する。
【0054】
領域Iの初期配向方向29と領域IIの初期配向方向31とは直交しているため、領域Iと領域IIとの境界では初期配向方向29,31がそれぞれ90°変化する部分がある。この部分の初期配向方向は、黒表示の際に、偏光板22,23の偏光軸と異なる方向を向いてしまうため、光漏れが生じる。したがって、この部分は遮光することが望ましい。本実施形態1では、第1の金属層からなる共通信号配線2をこの部分に配置することによって遮光する。これにより、精度よく、必要な領域のみを遮光することができるため、開口率を落とすことなく、十分な遮光を行うことができる。また、不透明金属層の電位が共通電極1の電位と等しいため、電気的な擾乱を与えることなく、良好な表示を得ることができる。上述の例では、TFTアレイ基板28側に共通電極1と等電位の不透明金属層を配置することにより、光漏れを抑制したが、不透明金属層は画素電極5の電位と等しくしても同等の効果が得られる。また、領域Iと領域IIとの境界部分の遮光は、カラーフィルタ基板30側にブラックマトリクス17を設けて行うこともできる。
【0055】
また、
図4に、隣接画素との間の部分まで拡張した領域I,IIの平面図を示す。
図4に示すように、データ線4の近傍では、領域Iと同じ方向、すなわちデータ線4の延在方向と8°をなす方向に配向させる。これにより、データ線4と画素電極5との間に生ずる、図で横方向に発生する電界によって、液晶12の動きを小さくすることができる。そのため、カラーフィルタ基板30側でデータ線4近傍を遮光するブラックマトリクス17の幅を小さくできるので、開口率を広く取ることができる。この場合、領域IIの両サイドに領域Iと同じ方向に配向された領域が存在するため、第1の金属層からなる遮光層を、共通電極1に接続するように配置する。これにより、高開口率で、コントラストの良好な表示を得ることができる。
【0056】
上述の実施形態において、光照射によって分割配向を行う際に、光照射領域を完全に線で分割することは困難である。したがって、2〜3[μm]程度、領域間の重なりを持って光照射を行うことにより、画素内で光が照射されないために配向しない領域を、作らないようにする。これによって、配向が不完全な箇所が画素内に発生せず、良好な二分割配向が得られる。
【0057】
また、上述の実施形態では、領域I及び領域IIの各々で、ストライプ状の画素電極5と、液晶12の初期配向方向29,31とのなす角を8°としたが、5〜10°の範囲であれば、ほぼ同等で良好な表示が得られる。また、場合によっては、2°以上20°以下であれば、ほぼ問題ない表示を得ることができる。このように初期配向方向29,31とストライプ状の画素電極5の延在方向とは、画素の形状とサイズに応じて、適宜設計することができる。
【0058】
[実施形態2]
本発明の実施形態2について、
図8を用いて説明する。実施形態1では、
図5に示すように、出射側偏光板23と基板21との間に、基板21側から外側Aプレート24とCプレート25を配置することにより、斜め視野からの光漏れを抑制する。このような外側Aプレート24とCプレート25とを重ねた位相補償は、この部分を
図8に示すように、第4の光学補償層としての二軸の光学補償層である二軸補償層32で置き換えた場合でも、同等の効果を得ることができる。二軸補償層32と偏光板23との間には、支持基板となるTAC層33が配置されている。
【0059】
TAC層33は、基板21に垂直な方向の負のリターデーションを有する。そのため、これを見込んで、実施形態1とほぼ等価となる二軸の屈折率異方性を有する光学パラメータをシミュレーションにより導き、それに基づいた光学パラメータを有する二軸補償層32を、
図8のように配置する。二軸補償層32の主軸の向きは、基板21面内方向で偏光板23の吸収軸27に平行な方向及びこれに垂直な方向、並びに基板21に垂直な方向とする。
【0060】
これにより、
図9に示すように、実施形態1と同様、良好な黒表示の視野角依存性を得ることができる。本実施形態2の特性では、実施形態1と同等のバックライト光源を用いることにより、黒表示の斜め視野からの最大輝度が0.13[cd/m
2]と、
図7Cに示す実施形態1の黒表示の視野角特性とほぼ同等な特性を得ることができる。
【0061】
[実施形態3]
本発明の実施形態3について、
図10を用いて説明する。実施形態1では、
図5に示すように、出射側偏光板23と基板21との間には、基板21側からこの順に外側Aプレート24とCプレート25を配置することにより、斜め視野からの光漏れを抑制する。本実施形態3では、外側第2の光学補償層としてのAプレート24と第3の光学補償層としてのCプレート25とを、入射側偏光板22と基板20との間に配置する。
【0062】
順序としては、入射側偏光板22側から、基板20に垂直な方向に一軸異方性を有するCプレート25を配置し、更に、入射側偏光板22の吸収軸26の方向に一軸屈折率異方性を有する外側Aプレート24を配置する。それぞれのリターデーションの量としては、実施形態1と同じ量でよい。
【0063】
この場合、斜め視野方向で光が入射した場合、実施形態1と同様、入射側偏光板22を透過した光は、p’の方向に偏光が向いている。この後、Cプレート25及び外側Aプレート24を通過した光は、a’に直交する向きに偏光方向が回転される。
【0064】
領域IIでは、液晶層12a及びインセルリターダー10の屈折率異方性の短軸方向n2’がa’に一致する。そのため、これらを透過した光の偏光方向は変化しない。更に、この向きの偏光方向は出射側偏光板23において完全に吸収される偏光方向であるため、透過率を低く抑えることができる。
【0065】
領域Iでは、液晶層12a及びインセルリターダー10の屈折率異方性の短軸方向n1’がp’に一致する。そのため、これらを透過した光は、この主軸方向である常光方向に直交する異常光方向にリターデーションが生じる。しかしながら、実施形態1と同様、液晶層12a及びインセルリターダー10の合計のリターデーションを500〜600[nm]としてあるため、これらを透過した光は、異常光が常光に対して一波長分のリターデーションを受けることになるので、偏光方向がほぼp’の方向に戻ることになる。
【0066】
したがって、領域Iにおいても、インセルリターダー10を配置することにより、透過率を低く抑えることができ、斜め視野からでも良好な黒表示を得ることができる。この補償の効果は、実施形態1における領域IIでの斜め視野の黒表示の補償と等価となる。
【0067】
実際の画素としては領域Iと領域IIが1/2ずつで構成されているため、黒表示時の斜め視野からの透過率は領域Iと領域IIの平均で得られることになる。そのため、本実施形態3の場合、光学的配置としては実施形態1と等価になるため、実施形態1と同等の良好な黒表示の視野角特性が得られる。
【0068】
[実施形態4]
本発明の実施形態4について、
図11を用いて説明する。実施形態3では、
図10に示すように、入射側偏光板22と基板20との間に、入射側偏光板22側からCプレート25と外側Aプレート24を配置することにより、斜め視野からの光漏れを抑制する。このような外側Aプレート24とCプレート25とを重ねた位相補償は、この部分を
図11に示すように、二軸補償層32で置き換えた場合でも、同等の効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態4では、支持基板としてのTAC層33も含めて、実施形態2と同じパラメータを有する二軸補償層32を配置する。二軸補償層32の主軸の向きは、基板20面内方向で偏光板22の吸収軸26に平行な方向及びこれに垂直な方向、並びに基板20に垂直な方向とする。また、二軸の屈折率異方性の主軸の向きは、これと貼り合せる偏光板22の吸収軸26との関係が同じとなるようにする。
【0070】
本実施形態4によれば、光学的配置としては実施形態2と等価になるため、実施形態2と同等の良好な黒表示の視野角依存性が得られる。
【0071】
[実施形態5]
本発明の実施形態5について、
図12を用いて説明する。本実施形態5では、実施形態1と同様に、出射側偏光板23と基板21との間に、基板21側から外側Aプレート24とCプレート25を配置する。ただし、本実施形態5では、第1の光学補償層としてのインセルリターダー10r,10g,10bのリターデーション量を、それぞれRGB3色のカラーフィルタの色層18r、18g、18bに対応するサブ画素ごとに変える。
【0072】
液晶層12aのリターデーションを400[nm]として、Rサブ画素のインセルリターダー10rのリターデーションを220[nm]、Gサブ画素のインセルリターダー10gのリターデーションを150[nm]、Bサブ画素のインセルリターダー10bのリターデーションを60[nm]とする。これにより、Rサブ画素の液晶層12aとインセルリターダー10rの合計のリターデーションRrは620[nm]、Gサブ画素の液晶層12aとインセルリターダー10gの合計のリターデーションは550[nm]、Bサブ画素の液晶層12aとインセルリターダー10bの合計リターデーションは460[nm]とする。
【0073】
このように、RGBサブ画素でインセルリターダー10r,10g,10bのリターデーションの量をそれぞれ変えることで、透明絶縁性基板20,21間の液晶層12aと第1の光学補償層との合計のリターデーションを、各サブ画素の透過率スペクトルのピークから90%以内のところから選択した波長とほぼ同一にする。
【0074】
図5に示す実施形態1では、次の現象が生ずる。領域IIにおいて、入射側偏光板22を通過した光は、p’の方向に偏光軸を有する状態になり、更に液晶層12a及びインセルリターダー10を通過する際に、緑の波長ではほぼ1波長分のリターデーションを有する。しかし、青と赤の波長では、リターデーションと波長とが不整合となるため、若干の光漏れがある。
【0075】
これに対して、本実施形態5では、RGBの各サブ画素において、液晶層12aのリターデーションとインセルリターダー10r,10g,10bのリターデーションとの和が、各サブ画素の代表的波長と一致するため、斜め視野からの光漏れをより完全に抑制することができる。
【0076】
基板21と出射側偏光板23との間の外側Aプレート24を128[nm]とし、同じくCプレート25を68[nm]として、液晶層12aとインセルリターダー10とのリターデーションの和をRGBサブ画素で共通で550[nm]とした場合(実施形態1)の、領域IIの黒表示の視野角特性を
図13Aに示す。また、インセルリターダー10r,10g,10bのリターデーションをそれぞれ異なる値にすることにより、液晶層12aとの合計リターデーションをRGBサブ画素ごとに変えた場合(本実施形態5)の、領域IIの黒表示の視野角特性を
図13Bに示す。
図13Aでは黒表示の斜め視野からの最大値が0.30[cd/m
2]程度であるのに対して、
図13Bでは黒表示の斜め視野からの最大値が0.06[cd/m
2]程度である。このように、本実施形態5によれば、領域IIの黒表示の視野角特性を更に改善することができる。
【0077】
また、
図14には、本実施形態5において、1/2ずつの領域Iと領域IIとで1サブ画素を構成した場合の、黒表示の視野角特性を示す。この場合、黒表示の斜め視野からの輝度の最大値は0.04[cd/m
2]となり、
図7Cに示した実施形態1の黒表示の視野角特性に比べて、更に黒表示時の視野角特性を改善できる。
【0078】
液晶層とインセルリターダーとのリターデーションの合計をRGBサブ画素ごとに変えるには、本実施形態5のようにインセルリターダーのリターデーションをRGBごとに変える他に、液晶層の層厚をRGBごとに変えてもよい。
【0079】
液晶層の層厚を変える場合は、例えば、液晶層の屈折率異方性Δnを0.10に対して、Rサブ画素の液晶層厚を4.7[μm]、Gサブ画素の液晶層厚を4.0[μm]、Bサブ画素の液晶層厚を3.1[μm]とし、インセルリターダーのリターデーションはRGBサブ画素で共通で150[nm]とする。これにより、RGBサブ画素のそれぞれのトータルのリターデーションは、Rサブ画素で620[nm]、Gサブ画素で550[nm]、Bサブ画素で460[nm]となる。
【0080】
また、インセルリターダーのリターデーションを変える場合は、例えば、RGBサブ画素の液晶層の屈折率異方性Δnを0.10とし、液晶層厚をすべて3.5[μm]とし、RGBサブ画素のインセルリターダーをそれぞれ270[nm]、200[nm]、110[nm]とする。これにより、RGBサブ画素のそれぞれのトータルのリターデーションは、Rサブ画素で620[nm]、Gサブ画素で550[nm]、Bサブ画素で460[nm]となる。
【0081】
[実施形態6]
本発明の実施形態6について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は1画素の平面図である。
図16は、1画素内の表示領域における初期配向方向の分割を示したものである。
図15及び
図16に示すように、本実施形態6では、実施形態1と比べて、領域I及び領域IIにおけるストライプ状の画素電極5の延在方向及び液晶の初期配向方向29,31のみを変えている。画素の上半分の領域IIでは、水平方向(走査線3の延在方向)にストライプ電極を延在させ、画素の下半分の領域Iでは、これと直交させる方向にストライプ電極を延在させてある。
【0082】
図16の上半分の水平方向(走査線3の延在方向)にストライプ電極を延在させた領域IIでは、水平方向から時計周りに8°回転させた方向に初期配向方向31を設定する。このとき、TFTアレイ基板とカラーフィルタ基板の両方において、プレティルト角を0°とする。また
図16の下半分の縦方向(走査線3の延在方向に直交する方向)にストライプ電極を延在させた領域Iでは、縦方向から時計回りに8°回転させた方向を初期配向方向29に設定する。このとき、TFTアレイ基板とカラーフィルタ基板の両方において、プレティルト角を0°とする。ここで、
図16の上半分の領域IIの初期配向方向31と下半分の領域Iの初期配向方向29とは、直交するように角度を設定してある。
【0083】
その他の構成は、実施形態1と同様であり、入射側偏光板の吸収軸は領域Iの初期配向方向29に一致させ、出射側偏光板の吸収軸はこれに直交させる。また、出射側偏光板の偏光軸と基板との間に、基板側から外側AプレートとCプレートを配置してあり、領域I及び領域IIそれぞれにおいて、実施形態1と同様にインセルリターダーを形成し、液晶層及びインセルリターダーのリターデーションの合計を550[nm]とする。
【0084】
この構成の場合、黒表示の視野角特性は、
図7Cにおける特性を時計回りに8°回転させた特性と同一となり、良好な視野角特性を得ることができる。このような初期配向方向29,31の配置において、実施形態2から実施形態5までに示すような、光学的な要素を配置することも可能である。この場合も、それぞれ実施形態2から実施形態5までの各々の黒表示の視野角特性を時計回りに8°回転させた、良好な視野角特性が得られる。
【0085】
[実施形態7]
本発明の実施形態7について、
図17、
図18及び
図19を用いて説明する。すなわち、ここでの説明で用いる符号は、
図17乃至
図19のいずれかに開示されている。
図17は1画素の平面図である。
図18は、
図17のA−A’の断面図を示す。
図19は、1画素内の表示領域における初期配向方向の分割を示す。
【0086】
本実施形態7を、以下、作成順を追って、詳細に説明する。
【0087】
まず、第1のガラス基板からなる基板20上に、第1の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムに走査線3及び共通信号配線2のパタンを形成する。続いて、ゲート絶縁膜13として窒化シリコン(SiNx)を400[nm]成膜し、薄膜半導体層6として水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を200[nm]及びn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を50[nm]積層成膜し、画素のスイッチング素子としてのTFT部分にのみ薄膜半導体層6が残るパターニングをする。
【0088】
更に、第2の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムにデータ線4、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7d、並びに第2の金属層からなる画素電極34の一部のパタンを形成する。続いて、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7dをマスクとして、TFT部の薄膜半導体層6におけるn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を除去する。
【0089】
続いて、保護絶縁膜14として窒化シリコン(SiNx)を600[nm]成膜し、この窒化シリコンに画素電極34を接続するスルーホール38及び共通電極35を接続するスルーホール37を形成する。更に、この上に第2の透明電極としてITOを80[nm]成膜し、このITOに画素電極34のパタン及び共通電極35のパタンを形成する。画素電極34及び共通電極35は、ストライプ状のパタンを端部で接続し、櫛歯を噛み合わせた形状とする。画素電極34及び共通電極35のそれぞれの幅は3.5[μm]、画素電極34と共通電極35との間隔は7[μm]とする。
【0090】
画素電極34及び共通電極35のストライプパタンは、画素の上半分の領域IIでは縦方向(走査線3に垂直な方向)に延在し、画素の下半分の領域Iでは横方向(走査線3に平行な方向)に延在し、これらを互いに直交させる。更に、共通電極35の一部36は、データ線4、走査線3、及び、走査線3と共通信号配線2との間をシールドする。以上の方法により、TFTアレイ基板を形成する。
【0091】
図2に示す実施形態1では、平面状に形成された共通電極1と、その上にゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜14を介して配置されたストライプ状の画素電極5との間に形成されるフリンジ電界により、液晶12を面内で回転させる。これに対し、本実施形態7では、櫛歯状に形成された画素電極34と共通電極35との間に、横電界を発生させることにより、液晶12を面内で回転させる。
【0092】
本実施形態7では、領域I及び領域IIの液晶12の初期配向方向31,29を、櫛歯状の画素電極34及び共通電極35の延在方向に対して、15°時計回りに回転する方向に設定する。本実施形態7のその他の構成は実施形態1と同様であり、入射側偏光板22の吸収軸は領域Iの初期配向方向31に一致させ、出射側偏光板23の吸収軸はこれに直交させる。また、出射側偏光板23の偏光軸と基板21との間に、基板21側から外側Aプレート24とCプレート25を配置してある。領域I及び領域IIそれぞれにおいて、実施形態1と同様にインセルリターダー10を形成し、液晶層12aとインセルリターダー10とのリターデーションの合計を550[nm]とする。ここでは、液晶層12aの屈折率異方性をΔn=0.075、液晶層12aの厚さを4[μm]とすることにより、液晶層12aのリターデーションを300[nm]とし、これに合わせてインセルリターダー10のリターデーションを250[nmと]した。
【0093】
本実施形態7における黒表示の視野角特性は、
図7Cに示す実施形態1の黒視野の視野角特性を時計回りに15°回転させた特性と同一となり、良好な視野角特性を得ることができる。このような電極構成及び初期配向方向の配置においても、実施形態2から実施形態5までに示すような、光学的な要素を配置することも可能である。この場合も、それぞれ実施形態2から実施形態5までの各々の黒表示の視野角特性を時計回りに15°回転させた良好な視野角特性が得られる。
【0094】
[実施形態8]
本実施形態8では、画素の構成及び光学要素の配置を実施形態1と同様にして、
図20に示すように、透明絶縁性基板21と液晶層12aとの間に配置する第1の光学補償層としてのインセルリターダー58を、負の屈折率異方性を有するものとする。インセルリターダー58の異方軸の方向は、液晶12の初期配向方向に一致させる。インセルリターダー58のリターデーションの大きさは、液晶層12aのリターデーションに対して絶対値を等しく符号を反対とする。これにより、両者のリターデーションの合計を約0[nm]とする。
【0095】
この場合、領域IIにおいて、入射側偏光板22を通過したp’の方向の偏光が、液晶層12aとインセルリターダー58を通過する際に、合計で受けるリターデーションは、約0[nm]になる。そのため、常光と異常光の位相差が約0となることにより、この場合も、液晶層12a及びインセルリターダー58を通過した後の偏光方向は、ほぼp’の方向に戻る。したがって、Aプレート24とCプレート25によって、領域IIにおいても、斜め視野からみて良好な黒表示を得ることができるので、領域IIと領域Iを合わせて表示全体として黒表示の視野角特性が良好となる。
【0096】
本実施形態8によれば、
図21に示すように、斜め視野からの黒輝度の最大値は0.07[cd/m
2]程度となっており、更に完全な黒表示の視野角特性を得ることができる。
【0097】
このようにインセルリターダー58に負の一軸屈折率異方性を有するものを適用することは、実施形態3のような構成においても可能である。その場合の黒表示の視野角特性は、
図21で示される本実施形態8の特性と同等になる。本実施形態8ではインセルリターダー58と液晶層12aとのリターデーションの和を0[nm]としたが、検討結果によれば、そのリターデーションの和を−50[nm]〜50[nm]の間にすることにより、ほぼ同等の良好な特性を得ることができる。
【0098】
[実施形態9]
本実施形態9では、画素の構成及び光学要素の配置は、実施形態2と同様にして、
図22に示すように、透明絶縁性基板21と液晶層12aとの間に配置するインセルリターダー58を負の屈折率異方性を有するものとする。
【0099】
インセルリターダー58の異方軸の方向は、液晶12の初期配向方向に一致させる。インセルリターダー58のリターデーションの大きさは、液晶12のリターデーションに対して絶対値を等しく符号を反対とする。これにより、両者のリターデーションの合計を約0[nm]とする。
【0100】
本実施形態9によれば、
図23に示すように、斜め視野からの黒輝度の最大値が0.03[cd/m
2]程度となっており、実施形態8と同様、良好な黒表示の視野角特性を得ることができる。
【0101】
このようにインセルリターダー58に負の一軸屈折率異方性を有するものを適用することは、実施形態4のような構成においても可能である。その場合の黒表示の視野角特性は、
図23で示される本実施形態9の特性と同等になる。本実施形態9ではインセルリターダー58と液晶層12aとのリターデーションの和を0[nm]としたが、検討結果によれば、そのリターデーションの和を−50[nm]〜50[nm]の間にすることにより、ほぼ同等の良好な特性を得ることができる。
【0102】
[本発明の実施形態の効果]
次に、本発明の実施形態の効果について詳しく説明する。本発明の実施形態により、初期配向状態で液晶配向を直交させた二領域を有する横電界方式の液晶表示装置において、黒表示時に斜め視野から見た場合にも良好な表示が得られる視野角の広い良好な横電界方式の液晶表示装置が得られた。
【0103】
以下に本発明の実施形態により、初期配向状態で液晶配向を直交させた二領域を有する横電界方式の液晶表示装置において、黒表示時に斜め視野から見た場合にも良好な表示が得られる理由を、次の場合(
図1参照)について説明する。各々の領域で、液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層が、二枚の透明絶縁性の基板の少なくとも一方と液晶層との間に配置されている。出射側偏光板と基板との間に、出射側偏光板の吸収軸に平行な方向に一軸光学異方性を有する第2の光学補償層が配置されている。更に第2の光学補償層と出射側偏光板との間に、基板に垂直な方向に一軸光学異方性を有する第3の光学補償層が配置されている。
【0104】
初期配向方向が直交する二領域のうち、入射側偏光板の吸収軸に平行な初期配向方向を有する領域を領域I、これに直交する初期配向方向を有する領域を領域IIとする。領域I及び領域IIのいずれの領域でも、入射側偏光板の吸収軸と出射側偏光板の吸収軸とが直交し、これらの間に挟まれた液晶層の初期配向方向及び光学補償層の光学軸は、いずれかの吸収軸と平行であるか、又は基板に直交している。そのため、表示面を正面から見た場合には、透過率は低く抑えられ、良好な黒表示が得られる。
【0105】
次に、両方の偏光板の吸収軸と45°をなす方向の斜め視野から見込んだ場合について考える。ここで、入射側偏光板の吸収軸の方向の単位ベクトルをp、出射側偏光板の吸収軸の方向の単位ベクトルをa、領域Iのダイレクタの方向の単位ベクトルをn1、領域IIのダイレクタの単位ベクトルをn2、出射側偏光板と基板との間にある第2の光学補償層として出射側偏光板の吸収軸と平行な方向に正の一軸の屈折率異方性を有する位相補償層(Aプレート)の光学軸の向きをap、第3の光学補償層として基板に垂直な方向に正の一軸の屈折率異方性を有する位相補償層(Cプレート)の向きをcp、光線の向きをsとする。
【0106】
光線sに垂直な方向の、入射側偏光板の透過軸p’及び出射側偏光板の透過軸a’、領域Iのダイレクタの常光の軸方向をn1’、領域IIのダイレクタの常光の軸方向をn2’、Aプレートの常光の軸方向をap’、Cプレートの常光の軸方向をcp’とすると、
p’=p×s
a’=a×s
n1’=n1×s
n2’=n2×s
ap’=ap×s
cp’=cp×s
となる。
【0107】
まず、領域Iでは、入射側偏光板を透過した光の偏光軸はp’の方向となる。その偏光軸は、p=n1でありp’=n1’であるので、液晶層の配向方向及び第1の光学補償層としてセル内に配置したリターダー(インセルリターダー)の常光の向きと一致する。そのため、その光は液晶層及び第1の光学補償層をそのまま透過する。続いて、その光は、第2の光学補償層としてのAプレートを通過する際に、ap’の方向の一軸異方性によるリターデーションを受け、更に第3の光学補償層としてのCプレートを通過する際にcp’の方向の一軸異方性によるリターデーションを受ける。その結果、p’の方向の偏光軸は、出射側偏光板の透過軸a’に直交する偏光軸pp1’の方向に回転する。このため、出射側偏光板を透過する光は吸収を受けて透過率が低く抑えられるので、良好な黒表示を行うことができる。これは、関連技術2の光学補償層が、斜め視野からの黒表示の光漏れを抑制する原理と同じである。
【0108】
一方、領域IIにおいても、入射側偏光板を透過した光の偏光軸はp’の方向となるが、領域IIのダイレクタn2の方向はpに垂直であるので、n2’とp’は一致しない。そのため、液晶層を透過する光は、液晶のリターデーションにより、偏光軸が変化する。例えば、液晶層のリターデーションがλ/2相当であり、第1の光学補償層がない場合は、
図31Bに示すように、液晶層を透過した光はn2’を軸として対称な方向p''に変化する。通常、横電界方式の液晶表示装置では、液晶のダイレクタを回転させて表示を制御するため、リターデーションとしては300〜400[nm]程度が適当である。しかし、液晶層のリターデーションのみでは、可視光の波長に対してλ/2に近い値となる。したがって、液晶層のみでは、上述のように液晶層を通過する際に偏光方向が大きく変調を受けるため、これを通過した光に関連技術2のようなAプレートとCプレートとを配置しても、良好な黒表示の視野角特性が得られない。
【0109】
これに対して、本発明の実施形態では、液晶層の配向方向と同一方向の正の一軸光学異方性を有する第1の光学補償層としてのインセルリターダーを液晶セル内に配置することにより、液晶セル内に液晶層及びインセルリターダーを配置し、液晶層及びインセルリターダーの合計のリターデーションを500〜600[nm]とする。これにより、可視光の領域の中心となる緑の典型的波長であるところの550[nm]近辺において、液晶層とインセルリターダーとを通過する際に、常光に対して異常光はほぼ波長と同じ長さのリターデーションを有することになる。
【0110】
したがって、
図24に示すように、異常光は常光に対して2π相当の位相差が生じることになるため、液晶層及びインセルリターダーを通過した光の偏光方向59は、ほぼp’の方向に戻る。このため、出射側偏光板と基板との間に配置された第2の光学補償層としてのAプレート及び第3の光学補償層としてのCプレートを通過する光は、その偏光方向が領域Iと同じくpp1’の方向に回転するため、出射側偏光板で吸収を受けて、透過率が低く抑えられる。
【0111】
上述のようにして、本発明の実施形態の構造を用いることにより、領域IIにおいても斜め視野からみて良好な黒表示を得ることができるので、領域IIと領域Iを合わせて表示全体として黒表示の視野角特性が良好となる。
【0112】
更に、上記の液晶表示装置において、各画素が2色以上のカラーフィルタを有するサブ画素からなる場合、各サブ画素において、第1の光学補償層の有するリターデーションと液晶層の有するリターデーションとの和が、各カラーフィルタの透過率スペクトルのピークの90%以上のところから選択された波長に等しいことが望ましい。これにより、領域IIにおいて、p’の方向の偏光が、液晶層とインセルリターダーを通過する際に、各色のサブ画素においてより完全に常光と異常光との位相差が2πとなる。そのため、液晶層とインセルリターダーを通過した後の偏光方向59を、よりp’の方向に近づけることができる。したがって、上述の原理を完全に働かせることができるため、更に良好な黒表示の視野角特性を得ることができる。
【0113】
また、第1の光学補償層としてのインセルリターダーの屈折率異方性を負の一軸とし、インセルリターダーの異方軸の方向を液晶材の初期配向方向に一致させ、インセルリターダーのリターデーションの大きさを液晶のリターデーションに対して絶対値を等しく符号を反対とすることにより、両者のリターデーションの合計を約0[nm]とした場合は、次の効果を奏する。
【0114】
領域IIにおいて、入射側偏光板を通過したp’の方向の偏光は、液晶層とインセルリターダーを通過する際に、合計で受けるリターデーションが約0[nm]になるので、常光と異常光の位相差が約0となる。そのため、この場合も、液晶層及びインセルリターダー通過した光は、
図24に示すように、偏光方向59がほぼp’の方向に戻る。そのため、第2の光学補償層と第3の光学補償層により、領域IIにおいても斜め視野からみて良好な黒表示を得ることができるので、領域IIと領域Iとを合わせて表示全体として黒表示の視野角特性が良好となる。
【0115】
上述の説明では、出射側偏光板と基板との間に第2の光学補償層及び第3の光学補償層を配置した場合について述べた。同様のことは、入射側偏光板と基板との間に、入射側偏光板の吸収軸に平行な方向に一軸異方性を有する第2の光学補償層としてのAプレートを配置し、第2の光学補償層と入射側偏光板との間に、基板に垂直な方向に一軸光学異方性を有する第3の光学補償層としてのCプレートを配置した場合でも成立する。
【0116】
この場合、斜め視野方向で光が入射した場合、その光が入射側偏光板を透過した直後は、p’の方向に偏光が向いている。この後、Cプレート及び外側Aプレートを通過した光は、a’に直交する向きに偏光方向が回転される。
【0117】
領域IIでは、液晶層及びインセルリターダーの屈折率異方性の短軸方向n2’はa’に一致するため、これらを透過しても偏光方向は変化しない。更にこの向きの偏光方向は出射側偏光板において完全に吸収される偏光方向であるため、透過率を低く抑えることができる。
【0118】
領域Iでは、液晶層及びインセルリターダーの屈折率異方性の短軸方向n1’はp’に一致する。そのため、これらを透過する光は、この主軸方向である常光方向に対して、これに直交する異常光方向にリターデーションが生じる。しかし、液晶層及びインセルリターダーの合計のリターデーションを500〜600[nm]とすることにより、これらを透過した光は、異常光は常光に対して、一波長分のリターデーションを受けることになるので、偏光方向がほぼp’の方向に戻ることになる。したがって、領域Iにおいても、インセルリターダーを配置することにより、透過率を低く抑えることができ、斜め視野からでも良好な黒表示を得ることができる。
【0119】
上述の説明では、出射側偏光板と基板との間に第2の光学補償層としてのAプレートと第3の光学補償層としてのCプレートとを配置することにより、p’の方向の偏光方向からa’に直交する向きに偏光方向を回転させている。しかし、同様のことは、第2の光学補償層及び第3の光学補償層と等価の二軸の屈折率異方性を有する光学補償層を、第2の光学補償層及び第3の光学補償層の代わりに第4の光学補償層として配置することによっても、実現することができる。
【0120】
この場合、二軸性の光学異方性を有する第4の光学補償層の主軸は、基板に平行な面内で偏光板の吸収軸と平行な方向及びこれに垂直な方向、並びに基板に垂直な方向の三方向となる。この場合も、第1の光学補償層と液晶層との関係を、上述の通りとすることにより、斜め視野からでも良好な黒表示を得ることができる。
【0121】
また、上述のような、液晶の初期配向方向が直交する二領域を有する横電界方式の液晶表示装置において、二領域で発生する横電界の方向が互いに直交しており、液晶の配向方向と横電界の方向とのなす角を領域Iと領域IIとで略同一とすることにより、液晶ダイレクタは、領域Iと領域IIとにおいて、直交した状態のまま、回転する。この場合、二枚の基板の外側には、互いに直交した吸収軸を有する二枚の偏光板が配置されており、液晶の初期配向方向は、直交した吸収軸のいずれか一方に一致しており、各々の領域で、液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層が、少なくとも一方の基板と液晶層との間に配置されており、一方の基板とこの基板側に配置される偏光板との間には、第2の光学補償層及び第3の光学補償層、又は第4の光学補償層が配置されている。
【0122】
このため、関連技術1について
図25及び
図26を用いて示した、領域I及び領域IIがそれぞれ単独では問題となる、液晶の初期配向方向の斜め視野からの電圧−透過率特性のシフトは、両領域を同じ面積で配置することにより、互いの視野角特性が補償し合い顕著に抑制される。この場合、第1の光学補償層、第2の光学補償層、第3の光学補償層、第4の光学補償層は、いずれも光学軸が、二枚の偏光板の吸収軸のいずれかに一致するか、又は基板に垂直な方向となっているため、
図26に示す電圧−輝度特性に影響を与えることがなく、良好な電圧−輝度特性の視野角依存性を得ることができる。
【0123】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0124】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は以下の構成に限定されるものではない。
【0125】
[付記1]二枚の互いに平行な透明絶縁性の基板と、
これらの基板の間に挟持され、前記基板に略平行な方向に配向され前記基板に略平行な横電界が印加される液晶を有する液晶層と、
前記液晶の初期配向方向が互いに直交する領域I及び領域IIと、
前記二枚の基板のそれぞれの外側に一枚ずつ配置され、前記領域I及び領域IIのいずれかの前記初期配向方向に一致しかつ互いに直交する吸収軸を有する二枚の偏光板と、
前記基板の少なくとも一方と前記液晶層との間に配置され、前記液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層と、
前記基板の一方とこの基板側に配置された前記偏光板との間に配置され、当該偏光板の吸収軸に平行な方向に一軸光学異方性を有する第2の光学補償層と、
前記第2の光学補償層と直近の前記偏光板との間に配置され、前記基板に垂直な方向に一軸光学異方性を有する第3の光学補償層と、
を備えた横電界方式の液晶表示装置。
【0126】
[付記2]二枚の互いに平行な透明絶縁性の基板と、
これらの基板の間に挟持され、前記基板に略平行な方向に配向され前記基板に略平行な電界が印加される液晶を有する液晶層と、
前記液晶の初期配向方向が互いに直交する領域I及び領域IIと、
前記二枚の基板のそれぞれの外側に一枚ずつ配置され、前記領域I及び領域IIのいずれかの前記初期配向方向に一致しかつ互いに直交する吸収軸を有する二枚の偏光板と、
前記基板の少なくとも一方と前記液晶層との間に配置され、前記液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層と、
前記基板の一方とこの基板側に配置された前記偏光板との間に配置され、二軸性の光学異方性を有する第4の光学補償層と、を備え、
前記第4の光学補償層の主軸は、前記基板に平行な面内で前記偏光板の吸収軸と平行な方向及びこれに垂直な方向、並びに前記基板に垂直な方向である、
横電界方式の液晶表示装置。
【0127】
[付記3]前記第1の光学補償層が正の一軸屈折率異方性を有し、当該第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が500〜600[nm]の間にある、
付記1又は2記載の横電界方式の液晶表示装置。
【0128】
[付記4]カラーフィルタを有する複数のサブ画素からなる画素を更に備え、
前記サブ画素において、前記第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が、当該サブ画素の有する前記カラーフィルタの透過率スペクトルのピークの90%以上のところから選択された波長に等しい、
付記1又は2記載の横電界方式の液晶表示装置。
【0129】
[付記5]前記第1の光学補償層が負の一軸屈折率異方性を有し、当該第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が−50〜50[nm]の間にある、
付記1又は2記載の横電界方式の液晶表示装置。
【0130】
[付記6]前記領域Iと前記領域IIとで、発生する前記横電界の方向が互いに直交しており、前記液晶の方向と前記横電界の方向とのなす角が略同一である、
付記1乃至5のいずれか一つに記載の横電界方式の液晶表示装置。
【0131】
[付記11]二枚の透明絶縁性の基板の間に挟持され、前記基板に略平行な方位に配向させた液晶からなる液晶層を有し、これを前記基板に略平行な電界で変形させることで表示を制御する横電界方式の液晶表示装置において、
前記液晶の初期配向方向が直交する二領域を有し、
互いに直交した吸収軸を有する二枚の偏光板が前記二枚の基板のそれぞれの外側に一枚ずつ配置されており、
前記液晶の初期配向方向は、前記吸収軸のいずれかに一致しており、
前記二領域のそれぞれで、前記液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層が、少なくとも一方の前記基板と前記液晶層との間に配置されており、
一方の前記基板とこの基板側に配置される前記偏光板との間には、当該偏光板の吸収軸に平行な方向に一軸光学異方性を有する第2の光学補償層が配置されており、
更にこの第2の光学補償層と当該偏光板との間に、前記基板に垂直な方向に一軸光学異方性を有する第3の光学補償層を有している、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0132】
[付記12]二枚の透明絶縁性の基板の間に挟持され、前記基板に略平行な方位に配向させた液晶からなる液晶層を有し、これを前記基板に略平行な横電界で変形させることで表示を制御する横電界方式の液晶表示装置において、
前記液晶の初期配向方向が直交する二領域を有し、
互いに直交した吸収軸を有する二枚の偏光板が前記二枚の基板のそれぞれの外側に一枚ずつ配置されており、
前記液晶の初期配向方向は、前記吸収軸のいずれかに一致しており、
前記二領域のそれぞれで、前記液晶の初期配向方向と同一の方向に一軸光学異方性を有する第1の光学補償層が、少なくとも一方の前記基板と前記液晶層との間に配置されており、
一方の前記基板とこの基板側に配置される前記偏光板の間には、二軸性の光学異方性を有する第4の光学補償層が配置されており、
前記第4の光学補償層の主軸は、前記基板に平行な面内で前記偏光板の吸収軸と平行な方向及びこれに垂直な方向、並びに前記基板に垂直な方向である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0133】
[付記13]付記11又は12記載の横電界方式の液晶表示装置において、
前記第1の光学補償層が正の一軸屈折率異方性を有し、
前記第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が500〜600[nm]の間にある、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0134】
[付記14]付記11又は12記載の横電界方式の液晶表示装置において、
前記液晶表示装置の画素が2色以上のカラーフィルタを有するサブ画素からなり、
前記サブ画素において、前記第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が、前記各カラーフィルタの透過率スペクトルのピークの90%以上のところから選択された波長に等しい、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0135】
[付記15]付記11又は12記載の横電界方式の液晶表示装置において、
前記第1の光学補償層が負の一軸屈折率異方性を有し、
前記第1の光学補償層の有するリターデーションと前記液晶層の有するリターデーションとの和が−50〜50[nm]の間にある、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0136】
[付記16]付記11乃至15のいずれか一つに記載の横電界方式の液晶表示装置において、
前記二領域を領域I、領域IIとしたとき、
前記領域Iで発生する前記横電界の方位と前記領域IIで発生する前記横電界の方位とは互いに直交しており、
前記領域Iにおける前記液晶の方位と前記横電界の方位とのなす角と、前記領域IIにおける前記液晶の方位と前記横電界の方位とのなす角とが、略同一である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。