(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935429
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】偽造防止媒体の識別方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/333 20140101AFI20160602BHJP
B42D 25/22 20140101ALI20160602BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20160602BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
B42D15/10 333
B42D15/10 220
B42D15/10 329
G02B5/18
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-64015(P2012-64015)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-193361(P2013-193361A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【審査官】
青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2010/110370(JP,A1)
【文献】
特開2011−224940(JP,A)
【文献】
特表2000−505738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00−25/485
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に偽造防止部材の設けられた偽造防止媒体の識別方法であって、
前記偽造防止部材は、少なくとも金属反射層が設けられた転写箔若しくはシール形状の部材であり、前記金属反射層には、幅および高さが0.25mm以下の微小文字または記号状に金属が除かれた部分が等間隔に配置されており、さらに前記微小文字または記号の集合体の配列によって文字または記号が形成されており、
前記偽造防止媒体において、前記偽造防止部材が添付されている部分に光をかざすことにより前記微小文字または記号で形成された集合体による文字または記号が出現し、かつ前記微小文字または記号の配列間隔と同じピッチで構成された凸レンズアレイを重ねることで、前記微小文字または記号が拡大されて出現することを特徴とする偽造防止媒体の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止策が必要な媒体に適用して好適な偽造防止部
材が貼付された偽造防止媒体の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に紙などに印刷された文字や画像を複写することができるようになった。特に最近のカラーデジタル複写機によれば、原稿か複写物か見分けが極めて困難な複写物さえも容易に作成することができるようになった。
【0003】
そのため、カラー複写機では再現不可能な特殊部分を有価証券など偽造防止が必要な媒体に設けておく技術が提案されている。このうち、ホログラム箔などのOVD(Optical Variable Device)箔(特許文献1、2参照)を有価証券等の表面上に設ける技術が既に実用化されている。これによれば、ホログラムの銀面の光が鏡面反射するため、Y(イエロー)、M(マジェンダ)、C(シアン)のカラートナーの掛け合わせでは再現できず、原稿で銀面だった部分が複写物では黒色に再現されるもの、あるいは、屈折率の異なるセラミックを適当な膜厚を持つ複数層に積層すると、見る角度によって色が変化する特殊な光学薄膜が形成され(特許文献1参照)、かかる性質は、複写物では得ることができないので、容易に真偽判定が可能であるもの、さらにまた、この方法で形成された薄膜を鱗片状に砕き、この破片をインキバインダーに混入して印刷を行う方法も提案されている。
【0004】
しかしながら、ホログラムはエンボス技術が発達したため、レリーフ型の回折光を用いた反射層の形成が以前より低難易度化していること、及び多層膜フィルムが一般の包装用フィルムとして販売され始めたことなどから、偽造防止効果が低下してきた。
【0005】
この為、近年のホログラムでは、回折光を発生させる領域を部分的に備え、例えば、ホログラムによるマイクロ文字やマイクロパターンを表現することで、偽造防止効果を向上させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
このような回折光を発生させる領域を部分的に備えるホログラムは、一般的にレリーフ型の回折構造に対し、パターン状の金属等の反射層を設ける方法で製造される。金属等の反射層のパターン化は、下記の4種の方法が一般的である(特許文献3参照)。
【0007】
1)水洗インキを基材状にポジパターンで印刷し、マスク剤で印刷されていない部分を腐食剤で腐食させることによりパターンを形成するエッチング加工。
2)金属反射層上にマスク剤をポジパターンで印刷し、マスク剤で印刷されていない部分を腐食剤で腐食させることによりパターンを形成するエッチング加工。
3)金属反射層の除去したい部分に強いレーザーを当てて金属等の反射層を選択的に破壊することによりパターンを形成するレーザー加工。
4)金属反射層上にフォトレジスト剤を全面に印刷し、ポジパターンでフォトレジストした後、ネガパターン部のフォトレジスト剤を溶解除去し、同時に、または別工程で金属反射層を腐食させることによりパターンを形成するフォトレジスト加工。
しかしながら、上記のようにパターン状の金属等の反射層の作製方法は様々なものがあることより、パターン形成による偽造防止効果が向上したとは一概に言えない。
【0008】
一方、紙等の基材に微小な孔を開け、微小孔を一定間隔の集合体としてパターン状に形成することにより、見た目では孔が見え難いが、光をかざしてみると微小孔を通して見える光が拡散し、形成されたパターンを目視にて見ることができる。微小孔を基材に開けるためには、針若しくはレーザーを用いるため、孔の形状は通常円形若しくは楕円形となるが、照射するレーザー光にマスクをすることで、任意の形状の孔を開け、それをルーペで見て真偽判定する方法がある(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、この方法において真偽判定にルーペを使う必要があり、特殊形状を施した目視ではわからない大きさの微小孔をルーペで見て形状を判断するためには、時間と技術が必要となり、作業に煩雑さを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−505158号公報
【特許文献2】特開2005−99090号公報
【特許文献3】特開2003―255115号公報
【特許文献4】特開2002−254868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は
、偽造防止部材を適用した媒体の真偽判定を比較的簡単に実施できる偽造防止媒体の識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成すべくなされた請求項1に係る発明は、基材上に偽造防止部材の設けられた偽造防止媒体の識別方法であって、前記偽造防止部材は、少なくとも金属反射層が設けられた転写箔若しくはシール形状の部材であり、前記金属反射層には、幅および高さが0.25mm以下の微小文字または記号状に金属が除かれた部分が等間隔に配置されており、さらに前記微小文字または記号の集合体の配列によって文字または記号が形成されており、前記偽造防止媒体において、
前記偽造防止部材が添付されている部分に光をかざすことにより
前記微小文字または記号で形成された集合体による文字または記号が出現し、かつ前記微小文字または記号の配列間隔と同じピッチで構成された凸レンズアレイを重ねることで、
前記微小文字または記号が拡大されて出現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば
、偽造防止部材を適用した媒体の真偽判定を比較的簡単に実施できる偽造防止媒体の識別方法を提供することができる。
【0017】
偽造防止媒体において基材上に貼付
された偽造防止部材は、見た目は金属光沢がある回折格子状のパッチ若しくはストライプであるが、光をかざして見ると金属光沢が除かれた微小孔から光が漏れて、通常では見えない微小孔が文字若しくは記号のパターンとして認識され、さらにこの状態で微小孔の配列と同じピッチで並べられたマイクロレンズアレイフィルムを重ねると、微小孔が形成している文字若しくは記号等の模様が浮かび上がる。これにより、簡単な検証方法による真偽判定を可能にし、さらに簡単な検証器を用いるこ
とで、さらなる真偽判定を可能にして、転写箔やシールとして、有価証券や証書に添付し、セキュリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態
にて用いられる偽造防止部材の一例を一部を拡大して示す平面図。
【
図2】上記実施形態
にて用いられる偽造防止部材を有価証券に貼付した一例を示す平面図。
【
図3】
図2に示す偽造防止媒体の真偽判定方法を説明するための概略図。
【
図4】上記実施形態に係る偽造防止部材の真偽判定に使用する検証フィルムの構造を示した概念図。
【
図5】
図2に示す偽造防止媒体の真偽判定方法を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0020】
本発明
に用いられる偽造防止部材の一形態は、金属反射層を有する転写箔若しくはシール形状の偽造防止部材であり、
図1に示した偽造防止部材1は、金属蒸着部12および窓開き部13から構成されている。さらに部材の形態によって、金属蒸着部12の上面若しくは下面に回折格子層、剥離保護層、粘着層若しくは接着層が設けることもできる(図示せず)。偽造防止部材1中に設けられた窓開き部13は、
図1の拡大図で示したように文字若しくは記号を形成しており、かつ窓開き部13は一定間隔で整列している。さらに整列された窓開き部13は偽造防止部材1の中でさらに文字若しくは記号を形成している。
【0021】
窓開き部13の形成方法は、従来の技術で説明した方法の他に、例えば特開2009−63703号公報に記載のように、微細隆起構造部を設けることにより撥水性を高めてマスク層が形成されない部分を作り、金属蒸着部12をエッチングする方法もある。
【0022】
窓開き部13の一つの文字または記号の大きさは幅、高さ共に0.25mm以下であり、これ以上大きい場合、目視でも窓開き部13が視認できてしまうため、信頼性の高い偽造防止効果が期待できない。逆に小さすぎる場合、強い光を照射しないと光が漏れてこないことより偽造防止部材1に隠された文字が出現しないか、金属蒸着部12が強い光のため遮蔽ができず、偽造防止部材1に隠された文字が視認できなくなる可能性がある。従って、窓開き部13の一つの大きさは、幅、高さ共に0.02〜0.25mmの範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる偽造防止部材の他の形態は、
図1に示した偽造防止部材1において、金属蒸着部12が回折格子となっているものである。回折格子を設けることで、目視による真偽判定機能も加わり、より偽造防止効果が高くなる。この回折格子として、レリーフ型エンボスホログラムが一般的に用いられているが、それ以外の方法でも目視による偽造防止効果が出るものであればよい。
【0024】
本発明に用いられる偽造防止媒体の一形態は、
図2に示した偽造防止媒体2において、基材上に印刷部21が設けられ、かつ偽造防止部材1が貼付された形態となっている。基材は、紙、プラスチックシート、ガラス、木材、ゴム等の単独若しくは組み合わせであれば特に指定はないが、真偽判定する際に基材の裏面から光を照射した際に表側に光が見え
るものである必要がある。
【0025】
本発明の実施形態は、
図3および
図5に示した偽造防止媒体2の真偽判定方法についてである。偽造防止媒体2は、通常の目視で見た場合、偽造防止部1は金属光沢若しくはホログラム等の回折格子を成した箔若しくはシールであり、目視による真偽判定が可能なものである。しかしながら従来の技術で説明したとおり、回折格子の製造が低難易度化していることより、さらなる真偽判定手段として、偽造防止媒体2は
図3に示したような方法で真偽判定が可能である。
図3において、偽造防止媒体2の裏面から光源31を照射する。その際、偽造防止部1の窓開き部13から光が漏れて金属蒸着部12との間で明暗のコントラストができ、窓開き部13で形成された文字パターンが出現する(裏面から光を当てた状態の見え方13a)。裏面を照射する光源31が無い場合、室内の照明や太陽光で代用することもできる。
【0026】
また、
図4は偽造防止媒体2のさらなる真偽判定を行う際に使用する検証フィルム4の概略図を示したもので、検証フィルム4の表面はある一定間隔で敷き詰められた凸レンズアレイ41で形成されている。この凸レンズアレイ41のピッチと窓開き部13のピッチを一致させることで、特許第2761861号明細書や特許第4907049号明細書で紹介されているような現象が起こり、
図5に示したように窓開き部13の形状が拡大されて目視で見えるようになる(検証フィルム4を重ね、裏面から光を当てた状態の見え方13b)。この窓開き部13の形状は、ルーペで拡大してみることもできるが、ピント合わせ等に時間がかかるため、一度に大量には検証できないが、本方式をとれば、比較的短時間に真偽判定が可能となる。
【実施例1】
【0027】
12μm厚の透明PET基材上にポリウレタン系樹脂を乾燥膜厚2μm塗工し、ホログラム形成層を作製した。次いで、ロールエンボス法により、レリーフ構造形成層の表面に回折格子を形成してホログラムエンボスを得た。次に真空蒸着法により純アルミを80nm蒸着した。このアルミ蒸着層を、YAGレーザーにて文字高さ75μm、線幅10μmでアルミを飛ばし、“¥”のマークを形成した。このマークを上下方向および左右方向で150μmピッチで形成し、また全体としては“T”の文字を形成し、その上からアクリル系粘着層を乾燥膜厚20μm塗布し、所定の大きさに切り、100g/m
2厚の上質紙に絵柄が印刷された印刷物上に貼付して偽造防止媒体を得た。
【0028】
実施例1の偽造防止媒体は、目視ではホログラムパッチが施されており、これにより真偽判定ができるが、この偽造防止媒体の裏面から光を照射すると、目視ではわからなかったホログラム上の窓開き部から光が漏れて、“T”の文字が視認できた。さらに裏面から光を当てた状態で、150μmピッチの凸レンズアレイがエンボスされた検証フィルムを重ねると、“¥”の文字が拡大されて視認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、偽造防止媒体において、目視による真偽判定の他に、複数の検証方法が可能
な偽造防止媒体の識別方法を提供する。
【0030】
目視での検証の他、簡単な方法でさらなる真偽判定ができることより、より一層の偽造防止効果が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
1…偽造防止部材、2…偽造防止媒体、4…検証フィルム、12…金属蒸着部、13…窓開き部、13a…裏面から光を当てた状態の見え方、13b…検証フィルムを重ね、裏面から光を当てた状態の見え方、21…印刷部、31…光源、41…凸レンズアレイ。