(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図9(a)に示すように、螺旋状の芯金100においてはN段の巻取りトラック101,102,103,104に段差が生じ、芯金100に対して線材(平角線)110が垂直に接するような接触面が確保されている。線材110は押圧ローラのガイド部材120により芯金100に押し当てられる。ガイド部材120が線材110を段差に押し付けるのでN段の巻取りトラック101,102,103,104の段差に線材110が乗り継いでしまい、段差により線材110に傷が付く。
図9(b)に示すように、傷が付かないように(線材110の乗り継ぎが生じない程度に)トラック幅Wを広くすると、軸方向での線材間の隙間が広がり完成したコイルの全長が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、線材に傷が付きにくいとともに巻取ったコイルの全長が長くなるのを回避することができるコイル巻取り装置の芯金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、線材を多角形状に巻取ってコイルを成形すべく、柱状をなし、コーナ部が断面R形状を有するコイル巻取り装置の芯金において、
前記芯金は、前記コーナ部が軸方向に連続した側面からなり、かつ、前記コーナ部が軸方向に螺旋状に形成され
、かつ、複数の芯金構成体から構成されており、前記芯金を構成する前記複数の芯金構成体は、螺旋状に形成された空隙を介して対向した状態で立設されていることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、芯金は、コーナ部が断面R形状を有し、コーナ部が軸方向に連続した側面からなり、かつ、コーナ部が軸方向に螺旋状に形成されているので、段差による線材の傷付きを防止することができる。また、段差による線材の傷付きを考慮する必要がないので、軸方向での線材間の隙間を狭くでき、巻取ったコイルの全長が長くなることを防止することができる。このようにして、線材に傷が付きにくいとともに巻取ったコイルの全長が長くなるのを回避することができる。
また、芯金構成体と芯金構成体との間の空隙は螺旋状に形成されているので、確実にコーナ部を螺旋状に形成することができるとともに、容易にコイルを芯金から取り外すことができる。
【0008】
請求項2に記載のように、請求項1に記載のコイル巻取り装置の芯金において
、巻取り後に前記コーナ部における前記線材との接触面が内側に離される構成となっているとよい。
【0009】
請求項3に記載のように、請求項
1又は2に記載のコイル巻取り装置の芯金において、
前記複数の芯金構成体からなる芯金は、2
つの前記芯金構成体からなるとよい。
請求項4に記載のように、請求項
1又は2に記載のコイル巻取り装置の芯金において、
前記複数の芯金構成体からなる芯金は、4
つの前記芯金構成体からなるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線材に傷が付きにくいとともに巻取ったコイルの全長が長くなるのを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0015】
図1に示すように、コイル巻取り装置1は、巻枠10を備えており、巻枠10は芯金20を有する。コイル巻取り装置1は、柱状をなす芯金20に線材としての平角線50を巻取ってコイルを成形する装置であり、線材としての平角線50を長方形状に巻取って長方形状のコイルを成形することができるようになっている。平角線50は、断面が長方形をなし、エッジワイズ曲げにより巻回してコイルが成形される。また、芯金20は回転できるようになっている。
【0016】
図2,3に示すように、芯金20は、4分割されており、第1の芯金構成体21と、第2の芯金構成体22と、第3の芯金構成体23と、第4の芯金構成体24により構成されている。
【0017】
芯金20は、全体構成として、四角柱状をなし、4つのコーナ部(角部)C1,C2,C3,C4には丸みがつけられている。即ち、芯金20における各コーナ部C1,C2,C3,C4が断面R形状をなしている。第1のコーナ部C1は第1の芯金構成体21により形成されている。また、第2のコーナ部C2は第2の芯金構成体22により形成されている。第3のコーナ部C3は第3の芯金構成体23により形成されている。また、第4のコーナ部C4は第4の芯金構成体24により形成されている。四角柱状の芯金20は軸線(中心線)L1を有している。
【0018】
各芯金構成体21,22,23,24はそれぞれ棒状をなしている。各芯金構成体21,22,23,24は、コーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向(L1)に連続した滑らかな側面からなり、かつ、コーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向(L1)に螺旋状に形成されている。
【0019】
また、
図3に示す第1の芯金構成体21と第2の芯金構成体22との間の空隙G1は、
図1に示すように螺旋状に形成されている。同様に、
図3に示す第2の芯金構成体22と第4の芯金構成体24との間の空隙G2、第1の芯金構成体21と第3の芯金構成体23との間の空隙G3、および、第3の芯金構成体23と第4の芯金構成体24との間の空隙G4についても、
図1に示すように螺旋状に形成されている。
【0020】
芯金20において分割した各芯金構成体21,22,23,24は、スライド機構(スライド方式)により芯金20の中心Oに対し接離する移動方向(α)に拡大・収縮可能に支持されている。これにより、平角線50の巻取り後に各芯金構成体21,22,23,24がαで示す移動方向にスライドすることによってコーナ部C1,C2,C3,C4における平角線50との接触面が内側に離される。
【0021】
図1に示すように、各芯金構成体21,22,23,24は下側のプレート部材(下ブロック)30の上面において立設した状態で配置されている。各芯金構成体21,22,23,24の上面には上側のプレート部材(上ブロック)31が配置されている。つまり、下側のプレート部材30と上側のプレート部材31との間に、各芯金構成体21,22,23,24が立設した状態で支持されている。
【0022】
図4に示すように、上側のプレート部材31は、水平方向に延びるアーム部32の先端部の下に位置し、ねじ33,34によりアーム部32と上側のプレート部材31とが締結されている。また、センタ軸35が下側のプレート部材30の中央部を貫通し、軸受36によりセンタ軸35の下側が下側のプレート部材30に上下動可能に支持されている。一方、センタ軸35が上側のプレート部材31の中央部を貫通し、軸受37によりセンタ軸35の上側が上側のプレート部材31で上下動可能に支持されている。
【0023】
下側のプレート部材30の上面にはガイド用突条38が設けられている。また、上側のプレート部材31の下面にはガイド用突条39が設けられている。そして、各芯金構成体21,22,23,24はガイド用突条38,39に案内されながら芯金20の中心Oに対し放射方向にスライド可能となっている。
【0024】
下側のプレート部材30の上面においてストッパ用突起40が、また、上側のプレート部材31の下面においてストッパ用突起41が形成されている。また、各芯金構成体21,22,23,24の中心部にはセンタ軸35が通っている。
【0025】
センタ軸35は拡径部35a,35c,35eと縮径部35b,35dを有する。詳しくは、下から上に向かって、拡径部35a、縮径部35b、拡径部35c、縮径部35d、拡径部35eとなっている。
【0026】
芯金20(芯金構成体21,22,23,24)における内周面には拡径部25,27,29と縮径部26,28が形成されている。詳しくは、下から上に向かって、拡径部25、縮径部26、拡径部27、縮径部28、拡径部29となっている。芯金20(芯金構成体21,22,23,24)における内周面とセンタ軸35の外周面とが当接するように、
図5に示すごとく外部アクチュエータにより内側に押圧されている。これにより、各芯金構成体21,22,23,24は縮小させることができる。
【0027】
センタ軸35は上下動する。そして、
図5に示すように、芯金20(芯金構成体21,22,23,24)における縮径部26,28とセンタ軸35の縮径部35b,35dとが当接している場合には各芯金構成体21,22,23,24は内側に位置している。一方、
図4に示すように、各芯金構成体21,22,23,24における縮径部26,28とセンタ軸35の拡径部35a,35cとが当接している場合には各芯金構成体21,22,23,24は外側に位置している。このとき、プレート部材30,31に形成したストッパ用突起40,41に芯金構成体21,22,23,24が当接する。
【0028】
つまり、センタ軸35が上昇すると、センタ軸35の段差によって芯金20(芯金構成体21,22,23,24)が拡大方向へ広げられて
図4に示す状態(拡大状態)になる。一方、この状態からセンタ軸35が下降すると、
図5に示すように、センタ軸35の拡径部35a,35c,35eが芯金20(芯金構成体21,22,23,24)の拡径部25,27,29に対応する部位に位置し、両者の間に隙間が生じる。その分、外部からアクチュエータで縮小されて縮小状態になる。
【0029】
よって、
図4の状態で線材の巻取りが行われ、線材の巻取り後は
図5の状態にして芯金20から巻取った線材(コイル)を取り外すことができる。
また、平角線50は図示しないガイド部材により、芯金20に対しガイドされた状態で配置される。この際、芯金20の表面(接触面)に対して断面長方形の平角線50の短辺が接するように押圧される。また、平角線50と芯金20とは、平角線50を巻取る際に、上下方向において相対位置が変わるようになっている。例えば、平角線50は所定の高さを保持し、芯金20が下動しつつ、平角線50の巻取りが行われる。
【0030】
次に、このように構成したコイル巻取り装置1(芯金20)の作用について説明する。
図4に示すように、センタ軸35が上動した状態において芯金20(芯金構成体21,22,23,24)の縮径部26,28とセンタ軸35の拡径部35a,35cとを当接させ、各芯金構成体21,22,23,24を外側に位置させる。
【0031】
この状態において、平角線50の一端を巻枠10の芯金20に固定する。そして、芯金20の側面に平角線50を押圧し、芯金20を回転させながら平角線50を芯金20の周囲にエッジワイズ曲げにより巻取ってコイルを成形する。
【0032】
ここで、芯金20は、平角線50を巻取るため外周面(側面)について各芯金構成体21,22,23,24の各コーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向に螺旋状に形成されている。
【0033】
そして、芯金20は、巻取った平角線50のスプリングバックを見込んで、予め螺旋状に捻じれた形状を有しているため、芯金20に巻き取られた平角線50は、螺旋状に捻じれた状態で巻取られる。そのため、芯金20から平角線50を取り外した後に、予め螺旋状に捻じれている分だけ、スプリングバックにより戻ることで、捻じれの無いコイルが成形される。
【0034】
そして、平角線50の巻取りが完了した後において、センタ軸35を下動させて
図5に示すように芯金20(芯金構成体21,22,23,24)における縮径部26,28とセンタ軸35の縮径部35b,35dとを当接させ、各芯金構成体21,22,23,24を内側に位置させる。よって、平角線50を巻取った後、各芯金構成体21,22,23,24を縮小方向に移動させることで、巻取った平角線50を芯金20から取り外すことができる。
【0035】
このように、スプリングバック分に対して、芯金20に回転軸中心(中心軸線)のひねりを加えることで巻き角度を補正する。そして、芯金20におけるコーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向において傾斜面が連続した滑らかな螺旋形状とすることで、
図9(a)を用いて説明したような段差による線材の傷付きがなく、また、
図9(b)を用いて説明したような完成コイルにおいて全長が長くなることが防止できる(コイルの全長伸びがなくなる)。即ち、芯金20のコーナ部(曲げR部)C1,C2,C3,C4は、曲げ成形したコイルが軸方向に滑る程度の連続した滑らかな傾斜面としており、段差による線材の傷付き、完成コイルの全長伸び、捻じれ(スプリングバック)がないコイルを成形することができる。
【0036】
また、成形したコイルはスプリングバックにより芯金(スパイラル巻枠)20に引っ掛り抜き取れなくなるため、芯金(巻枠)20を縮小させて抜き取る。
抜き取り後においては、芯金20の各芯金構成体21,22,23,24が拡大して復元する。
【0037】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コイル巻取り装置の芯金20の構成として、柱状をなし、コーナ部C1,C2,C3,C4が断面R形状を有する。また、コーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向に連続した側面からなり、かつ、コーナ部C1,C2,C3,C4が軸方向に螺旋状に形成されている。これにより、段差による線材(平角線50)の傷付きを防止することができる。また、段差による線材の傷付きを考慮する必要がないので、軸方向での線材間の隙間を狭くでき、巻取ったコイルの全長が長くなることを防止することができる。このようにして、線材に傷が付きにくいとともに巻取ったコイルの全長が長くなるのを回避することができる。
【0038】
(2)芯金20は、複数の芯金構成体21,22,23,24に分割され、巻取り後にコーナ部C1,C2,C3,C4における平角線50(線材)との接触面が内側に離される構成となっているので、巻取った線材(コイル)を容易に抜き取ることができる。
【0039】
(3)特に、4つの芯金構成体21,22,23,24に4分割されているので、より抜き取りやすい。詳しくは、4つのコーナ部C1,C2,C3,C4を有する芯金20において各コーナ部C1,C2,C3,C4を移動させて、巻取った線材(コイル)を抜き取ることができる。
【0040】
(4)複数の芯金構成体21,22,23,24における芯金構成体と芯金構成体との間の空隙G1,G2,G3,G4は螺旋状に形成されている。よって、確実にコーナ部C1,C2,C3,C4を螺旋状に形成することができるとともに、容易にコイルを芯金から取り外すことができる。
【0041】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・各芯金構成体21,22,23,24を縮小させる構成について、芯金20の駆動軌跡は芯金20の中心から放射状に限る必要はなく、内側へ逃げる軌跡であればよい。例えば、
図6において移動方向βで示すように、芯金構成体61,62,63,64は、芯金の中心O以外の方向に移動できる構成としてもよい。具体的には、
図6では、移動はβで示すように芯金の中心Oを通る放射状の線に対し内側に斜めに移動できる。
【0042】
要は、芯金の中心方向でなくてもよく、コイルが芯金に食いついた状態から内側に逃げるようにしてコイルが抜けるようにすればよく、元の寸法より内側に逃げて抜き取れればよい(接触面が内側に離れる構成であればよい)。
【0043】
また、複数の芯金構成体61,62,63,64における芯金構成体と芯金構成体との間の空隙G1,G2,G3,G4が螺旋状に形成されていると、芯金構成体61,62,63,64を芯金の中心Oに対し接離する方向(放射方向)ではない方向(β方向)に移動させる上で好ましい。
【0044】
・芯金20は4分割したが、これに限ることなく2分割等であってもよい。つまり、芯金20は2つ以上の芯金構成体から構成されていればよく、4つに限る必要はない。例えば、
図7に示すように、2つの芯金構成体71,72で芯金を構成してもよい。
【0045】
・拡大、縮小の機構は、スライド方式であったが、これに限ることなく、他にも、例えばリンク式、カム式などこの限りではなく、コイルが抜ける構成であればよい。リンク式の一例として、
図8に示すように、芯金構成体80(81)の下側においてピン90で芯金構成体80,81を回動可能に支持し、その下側においてピン91を介してシリンダ95の駆動により、芯金構成体80,81の上側を傾斜できる構成としてもよい。
【0046】
・線材は平角線に限ることなく、他の線材、例えば断面円形の線材等であってもよい。
・芯金20の形状、即ち、コイルの形状は、長方形状以外にも、他の四角形状、例えば、菱形であってもよく、さらに、他の多角形状であってもよい。
【0047】
・芯金は複数の芯金構成体に分割されていなくてもよい。