(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフレーム本体1の断面を示す。本実施形態では、このフレーム本体1は、車両車体のセンターピラーを構成するものであって、
図1の紙面に垂直な方向(車体に設けられた状態では上下方向に相当する)に延びている。尚、本発明の車両用フレーム構造は、センターピラーの上下方向の略全体に適用してもよく、センターピラーの上下方向の一部(例えば、乗員の特に上半身を保護する観点から、センターピラーの上側部分、又は、車両側突時に衝撃荷重が入力され易い下側部分(特に後部ドアをセンターピラーに取り付けるための上下2つのドア取付用ブラケット(
図15の符号31参照)の間の部分)に適用してもよい。
【0022】
上記フレーム本体1は、車体外側に位置するアウタパネル2と、車体内側に位置するインナパネル3と、これらアウタパネル2及びインナパネル3間に設けられたレインフォースメント4(アウタレインフォースメントとも呼ばれる)とを有している。アウタパネル2及びインナパネル3は閉断面を構成し、インナパネル3及びレインフォースメント4も閉断面を構成する。また、アウタパネル2及びレインフォースメント4も閉断面を構成する。
【0023】
アウタパネル2は、本体部2aと、該本体部2aの幅方向(
図1の左右方向)の両端部にそれぞれ接続されたフランジ部2bとを有する。インナパネル3は、本体部3aと、該本体部3aの幅方向(
図1の左右方向)の両端部にそれぞれ接続されたフランジ部3bとを有する。レインフォースメント4は、本体部4aと、該本体部4aの幅方向(
図1の左右方向)の両端部にそれぞれ接続されたフランジ部4bとを有する。アウタパネル2、インナパネル3及びレインフォースメント4は、プレス成形によりそれぞれ形成したものであり、プレス成形後にフランジ部2b,3b,4bを互いに重ね合わせて接合することで、フレーム本体1が完成する。
【0024】
本実施形態では、インナパネル3及びレインフォースメント4に対して本発明の車両用フレーム構造を適用している。アウタパネル2は、基本的には、意匠的な観点から設けられたものであって、本体部2aがレインフォースメント4の車体外側を覆っている。レインフォースメント4は、引張強度が980MPa以上でありかつ板厚が1.0mm以上2.5mm以下である高強度鋼板が好ましく、熱間プレス成形により形成することが好ましい。尚、後述の低強度部17では、板厚が1.0mm以上1.5mm以下となることが好ましく、高強度部18では、板厚が1.5mmを超え2.5mm以下となることが好ましい。
【0025】
上記フレーム本体1は、車体外方を向く第1面部11と、該第1面部11と対向するように第1面部11の車体内側に位置し、該第1面部11よりも幅広である第2面部12と、第1面部11と第2面部12との幅方向の一側端部同士及び他側端部同士をそれぞれ繋いで、第1面部11及び第2面部12と共に閉断面を構成する2つの側面部13とを有している。第1面部11及び2つの側面部13は、レインフォースメント4の本体部4aで構成され、第2面部12は、インナパネル3の本体部3aで構成されている。インナパネル3のフランジ部3bとレインフォースメント4のフランジ部4bとが互いに接合されることで、第2面部12と側面部13とが繋がることになる。本実施形態では、フレーム本体1の断面において、第2面部12(本体部3a)及び2つのフランジ部3bは同じ直線上に位置し、第1面部11(後述のビード15を除く部分)は、この直線と平行な直線上に位置している。
【0026】
第1面部11の幅方向の中央部には、第1面部11、第2面部12及び側面部13による閉断面(以下、単に閉断面という)の内側に突出しかつフレーム本体1長手方向に延びるビード15が形成されている。このビード15は、第1面部11におけるフレーム本体1長手方向の少なくとも一部(例えば、センターピラーの上側部分、又は、車両側突時に衝撃荷重が入力され易い下側部分(特に上下2つのドア取付用ブラケットの間の部分))にあればよい。尚、ビード15は、必須のものではなく、なくすことも可能である。また、ビード15は、上記閉断面の外側に突出するものであってもよい。
【0027】
上記各側面部13は、フレーム本体1の断面において、第1面部11と第2面部12との間の中間位置にて屈曲する1つの屈曲部14(特定屈曲部に相当)を有している。この屈曲部14は、フレーム本体1の断面において、閉断面内側に突出するように屈曲している。そして、側面部13において屈曲部14よりも第1面部11側の部分を外側部13aとして、フレーム本体1の断面において、第1面部11と外側部13aとの間の閉断面内側のなす角度αが、略90度又は90度よりも大きい値に設定されている。ここで、略90度の範囲は、90度を含み、90度に対してプレス成形による通常の誤差を加減した範囲である。上記角度αが、基本的に90度以上であれば、プレス成形により第1面部11及び2つの側面部13を一体的に形成することが容易にできる。
【0028】
レインフォースメント4のプレス成形の観点から、フレーム本体1の断面において、第1面部11と側面部13の外側部13aとの角部が、円弧部で構成されていてもよく、また、側面部13における屈曲部14よりも第2面部12側の部分である内側部13bとフランジ部4bとの角部が円弧部で構成されていてもよい。外側部13a及び内側部13bは、フレーム本体1の断面において、それぞれ直線状に延びている。
【0029】
上記各側面部13は、第2面部12側の低強度部17と、第1面部11側の高強度部18とからなり、各側面部13において、低強度部17と高強度部18との境界が、強度変化部19となる。この強度変化部19は、屈曲部14よりも第2面部12側に位置している。
【0030】
本実施形態では、低強度部17と高強度部18とで板厚が互いに異なっており、高強度部18の板厚が低強度部17の板厚よりも大きくされて、高強度部18の強度が低強度部17の強度よりも高くなるようになされている。第1面部11の板厚は、高強度部18の板厚と同じにされ、フランジ部4bの板厚は、低強度部17と同じにされている。すなわち、レインフォースメント4は、圧延成形時に2種類の厚みになるように成形した板材(幅方向両側の部分の厚みが中央部よりも薄い板材)を用いてプレス成形することにより得られたものである。尚、第1面部11の全体が高強度部18と同じ厚みである必要はない。特に、第1面部11の幅方向中央部(ビード15が形成されている部分)は、低強度部17と同じ厚みであってもよい
(図1では、この形態を記載)。また、第1面部11における、第1面部11と側面部13の外側部13aとの角部ないしその近傍は、高強度部18と同じ厚みであることが好ましい
(図1参照)。
【0031】
本実施形態では、上記のように、低強度部17及び高強度部18を、その板厚を互いに異ならせることよって構成したが、これには限られない。例えば、
図2に示すように、板厚が一定の板材の高強度部18となる部分に、補強部材20を接合することによって、高強度部18を構成し、補強部材20を接合しない部分を低強度部17としてもよい。
図2では、側面部13の高強度部18となる部分と、第1面部11における、第1面部11と側面部13の外側部13aとの角部ないしその近傍との閉断面内側(閉断面外側であってもよい)に、補強部材20を溶接により接合している。この補強部材20の接合は、プレス成形前の板材に対して行う。
【0032】
或いは、
図3に示すように、側面部13の高強度部18となる部分と、第1面部11における、第1面部11と側面部13の外側部13aとの角部ないしその近傍との閉断面外側の部分とアウタパネル2との間の隙間に、充填材21を充填することによって、高強度部18を構成し、充填材21を充填しない隙間に対応する部分を低強度部17としてもよい。上記充填材21は、例えば加熱発泡材とすればよい。この加熱発泡材は、未発泡の状態でシート状をなしていて、接着剤により、レインフォースメント4の閉断面外側の面における、充填材21を充填する箇所に貼られる。そして、そのシート状の加熱発泡材は、車体全体が電着液に浸漬された後の乾燥工程で加熱発泡して、上記隙間に充填されることになる。
【0033】
或いは、板厚が一定の板材の高強度部18となる部分に焼入れを施すことによって、高強度部18を構成し、焼入れを施さない部分を低強度部17としてもよい。
【0034】
或いは、本実施形態の高強度部18の板厚と同程度でかつ一定の板厚を有する板材の低強度となる部分に、複数の貫通孔を開けることによって、低強度部17を構成し、貫通孔を開けない部分を高強度部18としてもよい。上記貫通孔は、フレーム本体1の組付用の孔や、フレーム本体1への他の部品の組付用の孔等として利用することができる。
【0035】
車両の側突により、第1面部11におけるフレーム本体1長手方向の中間部に外部入力荷重(フレーム本体1を、その長手方向の中間部が両端部に対して車体内側に突出するように湾曲させる衝撃荷重)が作用して、フレーム本体1が湾曲したときにおいて、第1面部11と第2面部12との曲率半径が相違することになり、これに伴って第1面部11側(圧縮側)と第2面部12側(引張側)とで周長差が生じるが、この周長差を小さくしようとする力が働き、これにより、第1面部11と第2面部12とが互いに近付こうとする。また、第1面部11においてその外部入力荷重が作用した部分が外部入力荷重により凹むことによっても、第1面部11と第2面部12とが互いに近付こうとする。この結果、上記外部入力荷重が作用した部分の近傍における側面部13の第1面部11側の端部ないしその近傍に、側面部13をフランジ部4bを支点として閉断面外側へ倒す力(閉断面外向きに作用する力)が生じて、当該部分を局所的に座屈させようとする(当該部分を局所的に閉断面外側に膨出させようとする)。このような局所的な座屈が生じると、フレーム本体1の曲げに対する強度が低下する。
【0036】
しかし、本実施形態では、側面部13に、閉断面内側に突出する屈曲部14が設けられており、この屈曲部14には、上記閉断面外向きの力を打ち消すように閉断面内向きの力が生じる。これにより、第1面部11に大きな外部入力荷重が作用しても、その外部入力荷重が作用した部分の近傍における側面部13の第1面部11側の端部が局所的に座屈し難くなる。したがって、外部入力荷重によるフレーム本体1の曲げに対する強度を確保することができ、車両の側突性能が向上する。
【0037】
しかも、側面部13において屈曲部14を含む第1面部11側のみを高強度部18とするので、上記局所的な座屈の発生を効果的に抑制することができるとともに、側面部13の第2面部12側を軽量化することができる。したがって、フレーム本体1の軽量化を図りつつ、フレーム本体1の曲げに対する強度を向上させることができる。
【0038】
また、第1面部11にビード15が形成されているので、そのビード15が形成された部分に外部入力荷重が作用すると、第1面部11における外部入力荷重が作用した部分が変形し難くなり、これに伴って、その外部入力荷重が作用した部分の近傍における側面部13の第1面部11側の端部において、局所的な座屈がより一層生じ難くなる。
【0039】
上記屈曲部14(特定屈曲部)は、第1面部11に垂直な方向において、フレーム本体1の断面における重心G(
図1参照)よりも第1面部11側に位置し、強度変化部19は、第1面部11に垂直な方向において、上記重心Gよりも第2面部12側に位置していることが好ましい。
【0040】
屈曲部14が、第1面部11に垂直な方向において、上記重心Gよりも第1面部11側に位置することで、第1面部11に上記外部入力荷重が作用したときに、上記閉断面外向きの力を良好に打ち消すことができる。すなわち、第1面部11に上記外部入力荷重が作用したとき、フレーム本体1には、重心Gの位置を境界にして、第1面部11側に圧縮力が作用し、第2面部12側に引張力が作用する。上記閉断面外向きの力は、圧縮力が作用する部分に生じるので、この力を打ち消すための屈曲部14も、圧縮力が作用する部分に位置することが好ましい。そこで、屈曲部14を、圧縮力が作用する位置、つまり上記重心Gよりも第1面部11側に位置させることで、上記閉断面外向きの力を良好に打ち消すことができる。また、強度変化部19が、第1面部11に垂直な方向において、上記重心Gよりも第2面部12側に位置していることで、上記局所的な座屈を抑制するのに有効な、圧縮力が作用する部分の全体を高強度にすることができる。さらに、上記局所的な座屈が生じる直前には、第1面部11が第2面部12に近付くため、重心Gの位置が、座屈直前に荷重入力前の初期位置から少しだけ第2面部12側に移動するが、このように重心Gの位置が移動しても、強度変化部19が重心Gの初期位置よりも第2面部12側に位置していることで、圧縮力が作用する部分全体を高強度にすることができるようになる。
【0041】
図4に示すように、フレーム本体1の断面において、側面部13の第1面部11側の端部P1と第2面部12側の端部P2とを接続する第1仮想直線L1が、上記閉断面の外側に位置している。すなわち、屈曲部14が第1仮想直線L1に対して閉断面内側に位置している。第1仮想直線L1は、屈曲部14がない側面部13に相当する。尚、第1面部11と側面部13の外側部13aとの角部及び内側部13bとフランジ部4bとの角部が円弧部で構成されている場合であっても、ここでは、P1及びP2の位置は、
図3に示す如く、円弧部がない場合の尖った角部と同じ位置とする。
【0042】
フレーム本体1の断面において、側面部13の第1面部11側の端部P1と第2面部12側の端部P2との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離をHとし、屈曲部14と側面部13の第2面部12側の端部P2との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離をhとし、第1仮想直線L1と屈曲部14を通りかつ第1面部11に平行な第2仮想直線L2との交点P3と、屈曲部14との間の距離をδとし、第1仮想直線L1が第1面部11に垂直な方向に対してなす鋭角側の角度(第1仮想直線L1と、P1を通りかつ第1面部11に垂直な第3仮想直線L3との間の鋭角側の角度)をθとしたとき、
0.5≦δ/(H−h)tanθ≦1.0 …(1)
を満たすことが好ましい。
【0043】
更に好ましいのは、
0.8≦δ/(H−h)tanθ≦1.0 …(2)
を満たすことである。
【0044】
フレーム本体1の断面において、上記交点P3と、第2仮想直線L2と第3仮想直線L3との交点P4との間の距離が(H−h)tanθとなるので、δ/(H−h)tanθ(=Mとする)の値は、屈曲部14が、P3とP4との間の距離に対して、P3から閉断面内側にどの程度入り込んでいるかを示すものであり、M=0(δ=0)であれば、側面部13に屈曲部14がなく、M>0であれば、側面部13に、閉断面内側に突出するように屈曲する屈曲部14が存在することになる。また、M=1.0であれば、屈曲部14が交点P4に位置することになり、このとき、上記角度αが90度になる。これにより、M≦1.0であれば、上記角度αが90度以上になる。したがって、少なくともMの値は0を超え1.0以下であればよい。但し、屈曲部14がない場合に対して、フレーム本体1の曲げに対する強度を良好に向上させる観点からは、式(1)(特に式(2))を満たすようにすることが好ましい(
図6及び
図7参照)。特に、M=1.0、つまり上記角度αが略90度であれば、フレーム本体1の曲げに対する強度を最大限に向上させることができる(
図6及び
図7参照)。
【0045】
また、フレーム本体1の断面において、第1面部11(ビード15を除く直線状の部分)と第2面部12における第1面部11から最も離れた部分との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離をHa(本実施形態では、Hと略等しい)とし、屈曲部14(特定屈曲部)と第2面部12における第1面部12から最も離れた部分との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離をha(本実施形態では、hと略等しい)としたとき、
0.55≦ha/Ha≦0.90…(3)
を満たすことが好ましい。
【0046】
更に好ましいのは、
0.60≦ha/Ha≦0.85…(4)
を満たすことである。
【0047】
すなわち、屈曲部14の第1面部11に垂直な方向の位置によって、フレーム本体1の曲げに対する強度が変化し、式(3)(特に式(4))を満たせば、フレーム本体1の曲げに対する強度を良好に向上させることができる(
図8及び
図9参照)。尚、ha及びHaについて第2面部12における第1面部12から最も離れた部分を基準とするのは、外部入力荷重によるフレーム本体1の湾曲時にその部分に最大引張応力が発生するため、この部分を基準とするのが適切と考えられるからである。
【0048】
上記フレーム本体1の断面において、第1面部11と上記外側部13aとの間の閉断面内側のなす角度αが、略90度である場合、強度変化部19と第2面部12における第1面部11から最も離れた部分との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離をAa(本実施形態では、強度変化部19と、側面部13の第2面部12側の端部P2との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離A1(
図4参照)に略等しい)としたとき、上記式(3)(好ましくは式(4))を満たすことに加えて、
0.40≦Aa/ha≦0.66…(5)
を満たすことが好ましい。
【0049】
上記のように、上記式(3)(好ましくは式(4))を満たせば、フレーム本体1の曲げに対する強度を良好に向上させることができる。これに加えて、強度変化部19の位置を、0.40≦Aa/ha≦0.66を満たすようにすることで、フレーム本体1の曲げに対する強度を良好に向上させることができる。
【0050】
尚、上記角度αが略90度である場合において、上記式(3)(好ましくは式(4))を満たすことに加えて、
0.40≦Aa/ha≦0.53…(6)
を満たすようにしてもよい。
【0051】
こうすることで、強度変化部19を、第1面部11に垂直な方向において、上記重心Gよりも第2面部12側に位置させることが容易にできるとともに、フレーム本体1の曲げに対する強度を良好に向上させることができる。
【0052】
ここで、先ず、側面部13に屈曲部14を設けた場合の効果を調べるために、側面部13に屈曲部14を設けた試験フレーム本体A及びBと屈曲部14を設けていない試験フレーム本体Cとに対して3点曲げ試験を行った。試験フレーム本体A〜Cにおいては、側面部13に強度変化部19は設けられていない。
【0053】
試験フレーム本体Aは、
図6におけるM=1.00の試験フレーム本体と同じであって、側面部13に屈曲部14が設けられているが、第1面部11にビード15は設けられていない。試験フレーム本体Bは、試験フレーム本体Aに対して、第1面部11の幅方向の略中央における試験フレーム本体長手方向の全体にビード15を設けたものである。このビード15は、閉断面内側に突出している。試験フレーム本体Cは、
図6におけるM=0の試験フレーム本体と同じであって、側面部13に屈曲部14を設けていないものである(
図10の試験フレーム本体A〜Cの閉断面形状を参照)。これら試験フレーム本体A〜Cは、上記フレーム本体1と同様に、センターピラーを構成するものであるが、試験フレーム本体A〜Cには、アウタパネル2は設けていない(後述の他の試験フレーム本体も同様)。
【0054】
上記各試験フレーム本体A〜Cに対して、第2面部12の両端部を支持した状態で、第1面部11における長手方向中間部に、第1面部11の幅方向に沿って延びる円柱状の圧子を押圧して、そのときの圧子の押圧ストロークと、外部入力荷重としての押圧荷重(曲げ荷重)との関係を調べた結果が、
図4である。
【0055】
押圧荷重が最大となったときに局所的な座屈が生じていると考えられ、押圧荷重はそれよりも大きくはならない。すなわち、押圧荷重の最大値(Fmax)が大きいほど、試験フレーム本体の曲げに対する強度が高いことになる。側面部13に屈曲部14が設けられた試験フレーム本体A及びBでは、屈曲部14が設けられていない試験フレーム本体Cよりも、フレーム本体の曲げに対する強度が向上することになる。また、第1面部11にビード15が設けられた試験フレーム本体Bでは、フレーム本体の曲げに対する強度がより一層向上することになる。
【0056】
続いて、δの値(つまりMの値)を変化させた種々の試験フレーム本体に対して上記3点曲げ試験を行い、押圧荷重の最大値Fmaxをフレーム本体の質量で割った値(以下、Fmax質量効率という)の向上率を求めた。このFmax質量効率の向上率は、側面部13に屈曲部14がない場合(δ=0つまりM=0である場合)を基準にした向上率である。ここでは、h/H(本実施形態では、ha/Haと略等しい)は0.75と一定にしている。また、P1及びP2の位置並びに第1仮想直線L1の角度θの値も一定である。また、δの値(Mの値)の正負については、屈曲部14が第1仮想直線L1に対して閉断面内側に位置する場合を+とし、閉断面外側に位置する場合をを−とする。つまり、δ(M)が負である場合には、屈曲部14が閉断面外側に突出するように屈曲していることになる。また、Mの値が1を超えると、屈強部14が第3仮想直線L3よりも閉断面内側に位置することになる(上記角度αが90よりも小さくなる)。尚、ここでは、δの値を変化させても、試験フレーム本体の質量は顕著には変化しないので、Fmax質量効率の向上率は、Fmaxの、側面部13に屈曲部14がない場合に対する向上率と殆ど同じであるが、軽量化の観点から、Fmax質量効率の向上率を厳密に求めている。
【0057】
Mの値とFmax質量効率の向上率との関係を
図6及び
図7に示す。また、
図6では、Mの値に応じた閉断面形状を併せて示す。
【0058】
図7から分かるように、Mの値が0を超えれば(屈曲部14が閉断面内側に突出するように屈曲していれば)、Fmax質量効率が向上するが、Mの値が0.5以上1.0以下、特に0.8以上1.0以下であれば、Fmax質量効率を良好に向上させることができる。特に、M=1.0、つまり上記角度αが略90度であれば、Fmax質量効率の向上率が最大となる。
【0059】
次いで、h/Hの値(ha/Haの値と同じと見做せる)を変化させた種々の試験フレーム本体に対して上記3点曲げ試験を行い、Fmax質量効率の向上率を求めた。このFmax質量効率の向上率は、側面部13に屈曲部14がない場合(h/H=1.0である場合)を基準にした向上率である。ここでは、Mの値は1.00(α=90度)と一定である。また、P1及びP2の位置並びに第1仮想直線L1の角度θの値も一定である。尚、
図8におけるh/H=1.00の試験フレーム本体は、
図6におけるM=0の試験フレーム本体(側面部13に屈曲部14がない試験フレーム本体)と同じである。当該試験フレーム本体のh/Hの値は0であるとも言える。また、
図8におけるh/H=0.75の試験フレーム本体は、
図6におけるM=1.00の試験フレーム本体と同じである。
【0060】
h/Hの値とFmax質量効率の向上率との関係を
図8及び
図9に示す。また、
図8では、h/Hの値に応じた閉断面形状を併せて示す。
【0061】
図9から分かるように、h/Hの値が0を超え1.00未満であれば、Fmax質量効率が向上するが、h/Hの値が0.55以上0.90以下、特に0.60以上0.85以下であれば、Fmax質量効率を良好に向上させることができる。すなわち、屈曲部14の第1面部11に垂直な方向の位置を適切に設定することで、側面部13の第1面部11側の端部ないしその近傍に生じる閉断面外向きの力を良好に打ち消すことができる。
【0062】
次に、最初の3点曲げ試験で用いた試験フレーム本体A〜CのFmax質量効率の向上率(側面部13に屈曲部14がない試験フレーム本体Cを基準にした向上率)を求めた。この結果を
図10に示す。これにより、図
5と共に、第1面部11にビード15を設ける効果が分かる。
【0063】
以上の試験で用いた試験フレーム本体においては、側面部13に強度変化部19は設けられていない。
【0064】
次に、側面部13に強度変化部19が設けられた試験フレーム本体に対して3点曲げ試験を行った。ここでは、h/Hの値とFmax質量効率の向上率との関係を調べたときと同じ閉断面形状の試験フレーム本体を用いて、その側面部13に強度変化部19を設けた。すなわち、低強度部17と高強度部18とで板厚を異ならせ、低強度部17の板厚を1mmとし、高強度部18の板厚を2mmとした。また、第1面部11の板厚を、高強度部18の板厚と同じにし、フランジ部4bの板厚を、低強度部17と同じにした。第1面部11にはビード15を設けた。その他の点は、h/Hの値とFmax質量効率の向上率との関係を調べたときの試験フレーム本体と同様である。
【0065】
そして、h/Hの値(ha/Haの値と略等しい)が、0.55、0.75及び0.90となる各試験フレーム本体において、強度変化部19の位置(A1/hの値)のみを変化させて上記3点曲げ試験を行い、Fmax質量効率の向上率を求めた。ここでは、A1の値は、強度変化部19と、側面部13の第2面部12側の端部P2との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離である(
図4参照)。Fmax質量効率の向上率は、側面部13に強度変化部19が設けられていない場合(A1=0である場合)を基準にした向上率である。H(Ha)の値は76.5mmと全試験フレーム本体で同じである。
【0066】
h/Hの値が0.55である場合の、A1/hの値(Aa/haの値と略等しい)とFmax質量効率の向上率との関係を
図11に、h/Hの値が0.75である場合の、A1/h(Aa/ha)の値とFmax質量効率の向上率との関係を
図12に、h/Hの値が0.90である場合の、A1/h(Aa/ha)の値とFmax質量効率の向上率との関係を
図13にそれぞれ示す。各図のグラフにおいて、一点鎖線で示すA1/hの値は、各試験フレーム本体の断面における重心の位置に相当する値である。A1/hの値が、この重心の位置に相当する値よりも小さければ、強度変化部19が、第1面部11に垂直な方向において、上記重心よりも第2面部12側に位置していることになる。
【0067】
図11〜
図13から分かるように、A1/hの値が0.40以上0.53以下であれば、A1/hの値が上記重心の位置に相当する値よりも小さくなるとともに、Fmax質量効率の向上率を良好に向上させることができる。
【0068】
また、A1/hの値を0.40以上0.66以下とした場合には、強度変化部19が、第1面部11に垂直な方向において、上記重心よりも第1面部12側に位置する場合があるが、Fmax質量効率の向上率としては高レベルにすることが可能である。
【0069】
A1/h(Aa/ha)の値が小さくなり過ぎる(強度変化部19が第2面部12に近くなり過ぎると)と、試験フレーム本体の曲げに対する強度は向上するものの、試験フレーム本体の重量が大きくなる一方、A1/h(Aa/ha)の値が大きくなり過ぎる(強度変化部19が屈曲部14に近くなり過ぎる)と、試験フレーム本体は軽くなるものの、試験フレーム本体の曲げに対する強度は低下する。したがって、フレーム本体1の軽量化を図りつつ、フレーム本体1の曲げに対する強度を向上させるには、強度変化部19の位置の好ましい範囲があり、上記式(5)又は上記式(6)を満たすようにすればよいことになる。
【0070】
上記実施形態では、各側面部13に1つの屈曲部14しか設けていないが、各側面部13に複数の屈曲部14を設けるようにしてもよい。この場合、各側面部13において複数の屈曲部14のうち最も第1面部11側の屈曲部14よりも第1面部11側の部分を外側部13aとして、フレーム本体1の断面において、第1面部11と上記外側部13aとの間の閉断面内側のなす角度が、略90度又は90度よりも大きい値に設定され、各側面部13の複数の屈曲部14のうち最も第2面部12側の屈曲部14(特定屈曲部に相当)が、閉断面内側に突出するように屈曲していればよい。残りの屈曲部14は、閉断面外側に突出していてもよく、閉断面内側に突出していてもよい。すなわち、側面部13の第1面部11側の端部と最も第2面部12側の屈曲部14(特定屈曲部)との間に、閉断面外側に突出する屈曲部14が存在していて、側面部13の第1面部11側の端部ないしその近傍に生じる閉断面外向きの力に加えて、該閉断面外側に突出する屈曲部14に閉断面外向きの力が生じても、これらの力を、最も第2面部12側の屈曲部14(特定屈曲部)に生じる閉断面内向きの力によって打ち消すことができるようになる。
【0071】
このように各側面部13に複数の屈曲部14を設ける場合も、屈曲部14が1つである場合と同様に、側面部13が、第2面部12側の低強度部17と、第1面部11側の高強度部18とからなり、側面部13において、低強度部17と高強度部18との境界である強度変化部19が、上記特定屈曲部よりも第2面部12側に位置していればよい。
【0072】
また、上記特定屈曲部は、第1面部11に垂直な方向において、フレーム本体1の断面における重心Gよりも第1面部11側に位置し、強度変化部19は、第1面部11に垂直な方向において、上記重心Gよりも第2面部12側に位置していることが好ましい。
【0073】
さらに、上記式(3)(特に式(4))を満たすことが好ましい。この場合、haは、上記特定屈曲部と第2面部12における第1面部11から最も離れた部分との間の第1面部11に垂直な方向に沿った距離となる。
【0074】
ここで、各側面部13に2つの屈曲部14が設けられた試験フレーム本体D〜Fに対して上記3点曲げ試験を行い、試験フレーム本体D及びEのFmax質量効率の、試験フレーム本体Fに対する向上率を求めた。但し、試験フレーム本体D〜Fにおいては、側面部13に強度変化部19は設けられていない。
【0075】
試験フレーム本体Dでは、上側(第1面部11側)の屈曲部14が閉断面内側に突出するように屈曲し、下側(第2面部側)の屈曲部14も閉断面内側に突出するように屈曲している。試験フレーム本体Eでは、上側の屈曲部14が閉断面外側に突出するように屈曲し、下側の屈曲部14が閉断面内側に突出するように屈曲している。試験フレーム本体Fでは、上側の屈曲部14が閉断面内側に突出するように屈曲し、下側の屈曲部14が閉断面外側に突出するように屈曲している。試験フレーム本体D〜Fの断面形状は、屈曲部14が1つである場合の上記試験フレーム本体の断面形状に対して、側面部13の形状のみが異なる。
【0076】
試験フレーム本体D〜Fの上側及び下側の各屈曲部14について、屈曲部14が1つである場合に計算したM及びh/Hの値を同様にして求めた。その際の第1仮想直線L1は、屈曲部14が1つである場合の第1仮想直線L1と同じである。その結果と閉断面形状を
図14に示す(閉断面形状において屈曲部14を黒丸で示す)。また、
図14には、試験フレーム本体D及びEのFmax質量効率の向上率(フレーム本体Fに対する向上率)も示す。
【0077】
試験フレーム本体Fのように下側の屈曲部14が閉断面外側に突出している場合よりも、試験フレーム本体D及びEのように少なくとも下側の屈曲部14が閉断面内側に突出している場合の方が、Fax質量効率が向上することが分かる。
【0078】
このように各側面部13に複数の屈曲部14が設けられた場合でも、1つの屈曲部14の場合と同様に、強度変化部19を、最も第2面部側の屈曲部14(特定屈曲部)よりも第2面部12側に位置させることで、側面部13において特定屈曲部を含む第1面部11側のみを高強度部とするので、局所的な座屈の発生を効果的に抑制することができるとともに、側面部13の第2面部12側を軽量化することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、2つの側面部13が共に、低強度部17と高強度部18とからなる(強度変化部19を有する)が、一方の側面部13(特に強度が必要な側の側面部13)のみが強度変化部19を有し、他方の側面部13は強度変化部19を有していなくてもよい。この場合、軽量化の観点から、上記他方の側面部13全体が、上記一方の側面部13の低強度部17と同じ低強度部となる(例えば上記他方の側面部13の板厚が、上記一方の側面部13の低強度部17と同じ板厚となる)ことが好ましい。
【0080】
図15及び
図16に示すように、センターピラー30(フレーム本体)の第1面部11の車体外側の面における上下方向中央部の下側寄りの部分及び下部には、不図示の後部ドアをセンターピラー30に取り付けるためのドア取付用ブラケット31が、アウタパネル2を介してそれぞれ取り付けられている。各ドア取付用ブラケット31は、基部31aと、この基部31の上下両側の端部から車幅方向外側にそれぞれ突出する突出部31bとを有している。基部31aは、不図示のボルト及びナットによって、第1面部11にアウタパネル2を介して取付固定されている。尚、第1面部11は、ドア取付用ブラケット31が取り付けられる上下方向の位置で、アウタパネル2に当接している(
図16参照)。
【0081】
上記基部31aの車体後側端部は、車体前後方向において車体後側の側面部13の近傍に位置し、突出部31bは、車体前後方向において車体後側の側面部13の近傍位置にて車幅方向に延びている。突出部31bの基部31a側の端部は、
図15及び
図16の例では、車体前側に拡がって、基部31aの上下両側の端部における後部及びその前側部分に接続されているが、基部31aの上下両側の端部における少なくとも後部に接続されていればよい。
【0082】
2つの突出部31bの先端部には、該2つの突出部31b間に配設された回動部材32が、上下方向に延びる軸33回りに回動可能に取り付けられれており、この回動部材32が上記後部ドアに固定され、これにより、後部ドアが、ドア取付用ブラケット31を介して、上記軸33回りに回動可能にセンターピラー30に取り付けられることになる。
【0083】
そして、2つの側面部13のうち車体後側の側面部13のみが強度変化部19を有し、車体前側の側面部13は強度変化部19を有していない。すなわち、車体後側の側面部13は、第2面部12側の低強度部17と、第1面部11側の高強度部18とからなり、高強度部18の板厚が低強度部17の板厚よりも大きい。第1面部11及び車体前側の側面部13の板厚は、車体後側の側面部13における低強度部17の板厚と同じにされている。
【0084】
このような構成の場合、外部入力荷重が上記後部ドア及びドア取付用ブラケットを介してセンターピラー30に入力したとき、ドア取付用ブラケット31の突出部31bが、基部31a側の端部を中心にして車体後側に倒れ、このとき、上記外部入力荷重が第1面部11の車体後側寄りの部分に入力されることになる。これにより、2つの側面部13のうち車体後側の側面部13に局所的な座屈が生じ易くなるので、車体後側の側面部13において特定屈曲部を含む第1面部11側を高強度にすればよいことになる。車体前側の側面部13には特定屈強部が設けられているので、これだけでも閉断面外向きの力を打ち消すことができ、局所的な座屈の発生を十分に抑制することができる。この結果、センターピラー30をより一層軽量化することができる。
【0085】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、本発明の車両用フレーム構造を、インナパネル3及びレインフォースメント4に適用したが、アウタパネル2及びインナパネル3に適用することも可能である。この場合、第1面部11及び側面部13をアウタパネル2の本体部2aで構成すればよく、レインフォースメント4はあってもなくてもよい
。
【0087】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。