(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、燃焼排気の既定温度を決定するにあたり、各流体の流量(供給量)に基づいて設定されている。そのため、各流体の流量が精度良く検出できることが前提となる。各流体の流量の測定はそれぞれに精度の高い流量計を付けることで可能になるが必要なコストが高くなる。また、流量計は長期間にわたる使用により耐久や劣化が進行し真値から外れることも想定され、その場合には安定した水自立運転が成立しない場合も想定される。
【0006】
特許文献2によると、回収水タンクの水位を検知し、水位が低下した場合にカソードガス流量を減少させることで回収水量を増加させて水位上昇を図ることは可能である。そして、前述したように流量計の耐久などにより各流体の供給量が正確に測定できない場合や貯湯槽が湯で満水の時などの場合において回収水量が減るような条件に至ったとしてもカソードガス流量を補正することにより回収水量を増加させて水自立運転を確立することが可能である。
【0007】
しかしながら、流量計が正確では無くなっている場合には各流体の流量の真値からのズレを検出/補正することは困難である。そのような場合、カソード及びアノードの各ガスの量が充分でなくなってスタックに不具合が生じることも考えられる。また、適正な運転状況にあるかどうかが保証できなくなって低効率のポイントで運転され続けることも想定される。
【0008】
このように燃料電池システムにて供給されている各流体の流量を正確に測定することにより適正な水自立運転や効率の高い領域での運転が実現できる。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、水自立運転を行う燃料電池システムについて、各流体の流量を測定する流量計の正確さが向上可能な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池システムは、アノードガスが供給されるアノード及びカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、原料ガスを改質させて前記アノードガスを生成させる改質器と、前記カソードガスおよび前記原料ガスおよび改質用の水を供給するポンプと、前記改質器および前記燃料電池で発生する水蒸気を含んだ排ガスを冷却し前記排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収する凝縮器と、前記燃料電池からの排ガスを冷却し前記排ガスに含まれる水を凝縮して回収する凝縮器と、前記改質器及び/又は前記燃料電池に対して必要に応じて水を供給できるように前記凝縮器から回収される水を貯める水タンクと、前記凝縮器から回収される水量を測定する水量計と、前記凝縮器を通過する前記排ガスの温度を測定乃至推定する排ガス温度計と、前記原料ガス流量を測定する原料ガス流量検知手段と、前記カソードガス流量を測定するカソードガス流量検知手段と、前記改質用の水を測定する流量検知手段と前記ガスおよび改質水流量及び前記排ガス温度から演算した演算水収支と前記水量から算出される実測水収支との差から、原料ガス流量検知手段及びカソードガス流量検知手段の少なくとも一方を較正する較正手段と、を有する。
【0011】
改質器および燃料電池から回収できる水の量は、原料ガス流量、カソードガス流量、改質水流量、及び凝縮器から排出される排ガス温度から正確に推定・算出することが可能である。つまり、原料ガス流量とカソードガス流量と改質水流量とから生成する水の絶対量が算出でき、凝縮器から排出される排ガス温度から生成した水のうち、どの程度の水が凝縮されるかが算出できる。
【0012】
従って、回収できた水の量を実際に測定して推測値と比較することにより原料ガスやカソードガスなどの流量を測定する流量検知手段較正を行うことができる。
【0013】
ここで排ガス温度計は流量検知手段とは異なりその耐久は問題になりにくいため、回収した水の量が理論値からずれているのは流量検知手段の耐久、劣化に由来する真値からのずれに起因するものとして扱うことが可能である。このように流量検知手段の較正を行うことができるため、水自立運転を適正に行うことができると共に、原料ガス及びカソードガスの流量を正確に制御することが可能になって適正な条件に近づけて設定することができるので高効率条件での運転が実現できる。
【0014】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池システムは、アノードガスが供給されるアノード及びカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、原料ガスを改質させて前記アノードガスを生成させる改質器と、前記カソードガスおよび前記原料ガスおよび改質用の水を供給するポンプと、前記改質器および前記燃料電池で発生する水蒸気を含んだ排ガスを冷却し前記排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収する凝縮器と、前記燃料電池からの排ガスを冷却し前記排ガスに含まれる水を凝縮して回収する凝縮器と、前記改質器及び/又は前記燃料電池に対して必要に応じて水を供給できるように前記凝縮器から回収される水を貯める水タンクと、前記凝縮器から回収される水量を測定する水量計と、前記凝縮器を通過する前記排ガスの温度を測定乃至推定する排ガス温度計と、前記原料ガス流量を測定する原料ガス流量検知手段と、前記カソードガス流量を測定するカソードガス流量検知手段と前記ガスおよび改質水流量及び前記排ガス温度から演算した演算水収支と前記水量から算出される実測水収支との差から、前記原料ガス流量検知手段及び前記カソードガス流量検知手段の少なくとも一方を較正する較正手段と、を有する。
【0015】
様相1のように、改質器および燃料電池から回収できる水の量は原料ガス流量、カソードガス流量、改質水流量及び凝縮器から排出される排ガス温度から正確に推定・算出することが可能である。しかし、凝縮し回収した量と供給した改質水の差分(水収支)は、改質水量で変化しないため、原料ガス流量、カソードガス流量及び排ガス温度で推定・算出が可能である。つまり、改質水量を検知しなくとも、凝縮した水の絶対量は分からないものの、凝縮した水量と供給した改質水量の差分である水タンクの水量を算出できる。
【0016】
従って、水タンクの水量の変化を実際に測定して推測値と比較することにより原料ガスやカソードガスなどの流量を測定する流量検知手段較正を行うことができる。
【0017】
ここで排ガス温度計は流量検知手段とは異なりその耐久は問題になりにくいため、回収した水の量が理論値からずれているのは流量検知手段の耐久、劣化に由来する真値からのずれに起因するものとして扱うことが可能である。このように流量検知手段の較正を行うことができるため、水自立運転を適正に行うことができると共に、原料ガス及びカソードガスの流量を正確に制御することが可能になって適正な条件に近づけて設定することができるので高効率条件での運転が実現できる。
【0018】
(3)本発明の様相3は、様相1または2において流量検知手段が流量計である燃料電池システムである。
【0019】
ここで、流量計などの流量検知手段が耐久、劣化に由来するずれについての意味について説明する。流体の量を直接測定する流量計などであって目的とする指示量(必要量)についてフィードバック制御を行うようなシステムにおいては、流量検知手段のドリフト等による真値と流量検知手段の出力値の差が大きくなった場合を示す。
【0020】
(4)本発明の様相4に係る燃料電池は、様相1又は2において直接、流体の量を測定する流量計の計測値に直接基づかず、各流体の指示量に対し、流体を供給するポンプの運転条件(ポンプを駆動する際のポンプの回転数や、ポンプのモータに供給する電力の大きさ(デューテイ比など)を流量に関連する値とする)を予め設定したマップなどに基づき変化させて制御するシステムにおいては、燃料電池等の圧損増大等により指示量と回転数マップやデューテイ比マップなどとがずれた場合を示す。つまり流量検知手段はポンプの運転条件を検知する手段である。
【0021】
(5)本発明の様相5に係る燃料電池システムは、様相1〜4のうちの何れかにおいて、前記較正手段は前記排ガス温度が第1所定温度よりも高いときに前記カソードガス流量検知手段を較正し、前記排ガス温度が第2所定温度よりも低いときに前記原料ガス流量検知手段を較正する。
【0022】
原料ガスの流量変化により回収水量が変化する大きさと、カソードガスの流量変化により回収水量が変化する大きさとは、双方共に排ガス温度によって変化することが分かっている。そして、原料ガスとカソードガスとでその変化の程度は異なっている。そのため、原料ガス流量を測定する原料ガス流量検知手段の較正が精度良くできる排ガスの温度範囲と、カソードガス流量を測定するカソードガス流量検知手段の較正が精度良くできる排ガスの温度範囲とが異なる温度範囲として存在する。特に排ガス温度が高い範囲においてはカソードガスを測定するカソードガス流量検知手段の較正を精度良く行うことが可能になり、低い温度範囲においては原料ガスを測定する原料ガス流量検知手段の較正の較正を精度良く行うことが可能になることが分かっている。
【0023】
(6)本発明の様相6に係る燃料電池システムは、様相1〜5のうちの何れかにおいて、前記凝縮器は冷却水と前記排ガスとの間で熱交換を行う手段であり、前記冷却水の温度又は量を変化させることができる冷却水温度可変手段を備え、前記較正手段は、前記原料ガス流量検知手段を較正するときには前記冷却水の温度又は量を変化させて排ガス温度を低下させ、前記カソードガス流量検知手段を較正するときには前記冷却水の温度又は量を変化させて排ガス温度を上昇させる。
【0024】
様相5にて述べたように、原料ガスを測定する流量検知手段と、カソードガスを測定する流量検知手段とは、較正するのに適した排ガスの温度範囲が異なっている。そのため、凝縮器として冷却水を流すことで排ガスと冷却水との間での熱交換を行う構成を採用し、その冷却水の温度又は量を変化させることで排ガスの温度を適正な温度範囲に制御できるような構成としたものである。
【0025】
(7)本発明の様相7に係る燃料電池システムは、様相1〜6のうちの何れかにおいて、前記水量計は前記水タンクの少なくとも2つの水位を通過したことを測定できる水位測定手段である。
【0026】
水量の変化を測定するために水タンクの水位を測定する水位測定手段を採用することができるが、水位測定手段としては最低限2つの水位を通過したことを測定できるものであれば良い。そのような水位測定手段としては2つの水位に対応した位置に電極を設けその電極に回収した水が触れることでその水位に達していることを測定する手段、表面に抵抗体からなる皮膜を形成してその皮膜が水に接する位置により抵抗値が変化することで水位を測定する手段、光学的に水位を連続的乃至断続的に測定できる手段、超音波などで水面の高さを測定する手段、水タンクの重さを測定する手段などどのような手段を採用しても良い。
【0027】
(8)本発明の様相8に係る燃料電池システムは、様相7において、前記水タンクは排水手段を備え、前記較正手段は前記2つの水位のうちの低い水位にまで前記水タンク中の水位を前記排水手段により下げた後にシステム運転による水収支により高い水位にまで増加させて較正を行う。
【0028】
燃料電池システムとしては、一般的な運転状態を採用すると、燃料電池システム内での水の必要量よりも、水タンクへの水の回収量の方が多くなる運転状態の方が多くなる。そのため、そのままでは回収した水は水タンクから溢れ出すことになり水タンクに設けた水位測定手段は常に水タンク内でいっぱいになった状態を検出し続けることになる。そこで、流量検知手段の較正を行う際には水位測定手段が水タンク内における水位を測定できるようにある程度の水位(様相5において水位測定手段に設定した2つの測定できる水位のうちの低い方)にまで排水することで回収した水の量を測定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る燃料電池システムによれば、水自立運転を行う燃料電池システムについて、各流体の流量を検知する流量検知手段の正確さが向上可能になる。それは、簡易に測定できる回収水量に基づき、原料ガスやカソードガスを検知する流量検知手段を較正することが可能になるからである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料(原料ガス)を改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜める水タンク4と、これらを収容する筐体5とを有する。
【0032】
燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(運転温度:例えば400℃以上)とされている。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3及び蒸発部2は改質部2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。発電モジュール18内には、改質部3,蒸発部2を加熱する燃焼部105が設けられている。アノード10側から排出されたアノード排ガスは、流路103を介して燃焼部105に供給される。カソード11側から排出されたカソード排ガスは、流路104を介して燃焼部105に供給される。起動時には、燃焼部105は、アノード10から供給された改質前の原料ガスを、カソード11から供給されたカソードガスで燃焼させ、蒸発部2及び改質部3を加熱させる。
【0033】
燃焼部105から排出される排ガスは排ガス通路75を通じて排出される。排ガス通路75は凝縮器76に接続されている。凝縮器76では冷却水との間での熱交換により排ガスを冷却し排ガスに含まれる水を凝縮して回収する。凝縮器76から回収された水は回収水を貯めることができる水タンク4に流れるようになっている。水タンク4内の水は、ポンプ80によって適宜発電モジュール18に供給される。
【0034】
凝縮器76には冷却水を流す冷却水供給装置77〜79が設けられている。冷却水供給装置77〜79は貯湯槽77と貯湯通路78と貯湯ポンプ79とから構成される。貯湯通路78は往路78a及び復路78cをもつ。往路78aにおいて凝縮器76に入る直前には凝縮器76内に供給される冷却水の温度を測定する温度センサ36が設けられている。凝縮器76は供給される冷却水の温度により概ね排ガスとの間で熱交換を行う限界の温度が決定される。つまり、凝縮器76に入った排ガスは供給される冷却水の温度にまで冷却されて凝縮器76から排出されるため、凝縮器76から排出される排ガス温度は凝縮器76に供給される冷却水の温度で代用できる。なお、凝縮器76から排出される排ガス温度を測定する温度センサ37を排ガス通路75(凝縮器76を通過した後の部位)に設けて直接排出される排ガス温度を測定しても良い。
【0035】
貯湯槽77の低温の水(冷却水)は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、凝縮器76に至り、凝縮器76により加熱される。反対に凝縮器76を通過した排ガスは冷却水により熱を奪われて排出される。凝縮器76で加熱された温水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、凝縮器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮器76から排出される排ガスは排ガス通路75を通じて排出される。凝縮水は、凝縮器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製剤43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応に使用される。
【0036】
水タンク4には水位測定手段としての水位センサ46が設けられている。水位センサ46としては電気抵抗型、静電容量型、超音波式、圧力式など汎用されているものがそのまま採用できる。水位センサ46としては、水タンク4内の水位を連続的に測定可能なものであるのが望ましいが、水タンク4内の水位について2つの異なる水位に至ったことをそれぞれ独立して検知できるものであれば充分である。水タンク4の底部には排水路47が接続されている。排水路47の途中には電気的に開閉可能な排水弁48が設けられている。なお、水タンク4はいっぱいになると上部より水が溢れ出すことができるようになっている。
【0037】
発電運転時には、燃焼部105はアノード10から排出されたアノード排ガスを、カソード11から排出されたカソード排ガスと燃焼させ、蒸発部2及び改質部3を加熱させる。燃焼部105には燃焼排ガス路75が設けられ、燃焼部105における燃焼後のガスが燃焼排ガス路75を介して大気中に放出される。改質部3の温度を検出する温度センサ33が設けられている。着火させるヒータである着火部35が燃焼部105に設けられている。着火部35は着火できるものであれば何でも良い。外気の温度を検出する外気温度センサ57が設けられている。
【0038】
システムの発電運転時には、改質部2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、アノード10側から排出されたアノード排ガスとカソード11側から排出されたカソード排ガスが燃焼部105で燃焼するため、改質部3及び蒸発部2は、発電モジュール18の内部において同時に加熱される。
【0039】
原料ガスは原料ガス通路6を通じて供給される。原料ガスは都市ガス、その他LPG等でも良い。原料ガス通路6は、原料ガス源63から原料ガスを改質器2Aに供給させるものであり、ポンプ60、脱硫装置200、原料ガス流量計300、逆止弁500をもつ。配置順は特に限定されない。
【0040】
燃料電池1のカソード11へはカソードガス(酸素を含むガス。空気など)がカソードガス通路70を介して供給される。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用の搬送源として機能するカソードポンプ71と、カソードガスの供給量(流量)を測定するカソードガス流量計72とが設けられている。
【0041】
温度センサ33,36,37,57の信号、原料ガス流量計300の信号、カソードガス流量計72の信号、そして水位センサ46の信号はそれぞれ制御部100Xに入力される。制御部100Xはポンプ60、カソードポンプ71、ポンプ80、貯湯ポンプ79の駆動を制御する。また、制御部100Xは警報器102に警報を出力する。
【0042】
筐体5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3及び蒸発部2と共に発電モジュール18を形成し、筐体5の上側つまり上室空間52に収容されている。筐体5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜める水タンク4が収容されている。水タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、水タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100Xからの指令に基づいて、水タンク4の水は加熱部40により所定温度以上に加熱され、凍結が抑制される。
図1に示すように、下室空間53側の水タンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管として筐体5内に設けられている。給水通路8は、水タンク4内に溜められている水を水タンク4から蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、水タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。
【0043】
さてシステムの起動時において、ポンプ60が駆動すると、原料ガス通路6から原料ガスが蒸発部2,改質部3,アノードガス通路73,燃料電池1のアノード10,流路103を介して燃焼部105に流れる。カソードポンプ71によりカソードガス(空気)がカソードガス通路70、カソード11,流路104を介して燃焼部105に流れる。この状態で着火部35が着火すると、燃焼部105において燃焼し、改質部3及び蒸発部2が加熱される。このように改質部3及び蒸発部2が加熱された状態で、ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は水タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。原料ガスは改質部3において水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。アノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、ケース5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。アノード10から排出されたアノードオフガス、カソード11から排出されたカソードオフガスは、流路103,104を通過し、燃焼部105に至り、燃焼部105で燃焼される。排ガスは、排ガス通路75を介してケース5の外方に排出される。
【0044】
上記したシステムの発電運転時において、ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は、水タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。なお燃料がメタン系である場合には、水蒸気改質によるアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。但し燃料はメタン系に限定されるものではない。
【0045】
(1)…CH
4+2H
2O→4H
2+CO
2
CH
4+H
2O→3H
2+CO
生成されたアノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。燃料電池1で排出された高温の排ガスは、排ガス通路75を介して筐体5の外方に排出される。
【0046】
・流量計の較正について
上述の燃料電池システムの制御は制御部100Xにより温度センサ33,36,37,57の信号、原料ガス流量計300の信号、カソードガス流量計72の信号、そして水位センサ46の信号を取得した上で、それらの信号がもつ情報に従い、ポンプ60、カソードポンプ71、ポンプ80、貯湯ポンプ79の駆動を制御することで行う。従って、それらのセンサ、流量計などの情報が正しくないと燃料電池システムの適正な運転を実現することが困難になる。特に流量計は機械的に作動する部分があるなど長期間の使用により流量の値がずれることがあるため特に較正を行うことが望まれる。また、本構成では原料ガス流量計300とカソードガス流量計72とを有しているが、ポンプ60,71を調節することで原料ガスやカソードガスの流量を制御してそれを流量計による測定値に代える構成を採用することもできる。その場合には各ポンプ60,71の変化やそれらのガスの通路の変化により同じような制御を行っても供給されるガスの流量が同じになるとは限られないため、流量計の較正と同様にポンプ60,71の吐出量の較正を行うことができる。
【0047】
そこで、各流量計(直接流量を測定する装置のみならず、ポンプの吐出量を運転条件から算出する手段も含む。つまり、ポンプの制御により吐出量の制御をポンプを駆動するモータに供給する電力の制御により行うことで流量を決定する場合は決定された流量を取得する手段を含む。)を較正する手段を制御部100Xに備えている。構成を行う頻度としては特に限定しない。例えば、特に較正を行う間隔などを考慮せずに、較正を行うことができる条件が揃った場合に較正を実行したり、所定の間隔毎(例えば3ヶ月おき、6ヶ月おきなど)で行ったりすることができる。
【0048】
制御部100Xが流量計の較正を行う方法について
図2に基づき説明する。以下の説明では原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72の指示値と各流量との関係を示すテーブルを作成し、そのテーブルを用いて原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72の指示値が、目的の流量に対応する値になるようにポンプ60,71を作動させる態様を採用している。
【0049】
<実測水収支取得ステップS1>
水位センサ46により実測水収支に相当する水位変化量A1を取得する。水位センサ46が連続的な水位変化を取得可能な手段であれば、水位センサ46が適正な精度で測定可能であって、適正な精度で流量計の較正が可能になる程度のガスの流量に対応する水位変化を予め算出しておき、そのような水位変化が生じたことを測定する。2つの異なる水位を検知するセンサを採用する場合にはその2つの異なる水位としては適正な精度で流量計の較正が可能になる程度のガスの流量に対応する水位変化が測定できるように設定されている。なお、本ステップS1を行う前に、目的の水位変化が測定可能であるかを判断し、測定可能でない場合には排水弁48を開いて測定可能になるまで水タンク4内に貯まった水を排水することが望ましい。具体的には連続的に水位変化を測定できる水位センサ46を採用した場合には目的の大きさの水位変化が測定可能になる程度にまで水を排水し、2つの異なる水位を測定できる水位センサ46である場合には水位センサ46により検知可能な水位のうち低い方に至るまで水を排水した後に本ステップS1を実行する。そうでなければ、水位が水位変化を測定可能である場合に本ステップS1を実行する。また、本ステップS1の実行時にポンプ80の作動を考慮する。例えば、作動することを前提として回収水量から蒸発部2に供給した水量を減じた量として水位変化を定義したり、実測した水位変化の値に蒸発部2に供給した水の量を加えて補正したものを水位変化として補正したりできる。
【0050】
<演算水収支算出ステップS2>
原料ガス流量計300が指示する流量(X1)及びカソードガス流量計72が指示する流量(Y1)及び改質水流量、温度センサ36又は37の指示値を取得し、その値から理論的に求めるか又は予め作成したテーブルにて算出する回収水量から演算水収支に相当する水位変化量の理論値B1を求める。水位変化量理論値B1(cm/分)は、演算水収支量(cm
3/分)を水タンクの断面積(cm
2)で割ることにより算出される。原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72は各ガスの流量に関連する大きさをもつ信号を出力する。制御部100Xは、その信号の大きさと各ガスの流量との関係をマップMとして保持しており、信号の大きさに応じた各ガスの流量を指示値として算出する。
【0051】
これらの値は運転状況の変化に伴って変化する値であるため、これらのセンサからの指示値が変化することも考慮して逐次算出した回収水量を積分して水位変化量を算出することが好ましい。原料ガス及びカソードガスの流量からは生成する水の量の理論値が算出できる。そして、生成した水の量の理論値と排ガスの温度とから凝縮器76により回収できる水量の理論値が算出できる。
【0052】
<判定ステップS3>
実測した水位変化A1の値と理論値B1とのずれの程度を判定する。本実施形態では水位変化A1が理論値B1から一定の範囲内(例えば理論値B1−αから理論値B1+βまでの範囲)に収まっているかどうかを判断し、その範囲に収まっている場合にはそのまま較正を終了し、収まっていない場合には較正を行う次のステップS4に行くとの判定を行う。更には本ステップS3では実測した水位変化A1の値と理論値B1とのずれがある程度の大きさである場合だけ較正を行うようにしているが、特にこのような判断を行わずに全ての場合にステップS4にて較正を行うようにしても良い。
【0053】
<原料ガス流量及びカソードガス流量の算出ステップS4>
実測した水位変化A1の値から原料ガスの流量(X2)またはカソードガスの流量(Y2)を算出する。
【0054】
具体的な算出方法としては水位変化A1から水収支(回収水量−改質水供給量)を算出し、その水収支量と排ガス温度とから、排ガス中の水蒸気分率(露点)を求める。水蒸気分率から原料ガスまたはカソードガス量を算出する。
【0055】
<マップ較正ステップS5>
ステップS4にて算出した原料ガスの流量(X2)またはカソードガスの流量(Y2)を用いてマップMを較正する。つまり、較正前には原料ガスの流量(目標)をX1にしたときに実際の原料ガスの流量はX2になっていることが判明したため、目標とする流量がX1であるときにマップMがもっていた原料ガス流量計300が出力する信号の大きさを目標とする流量(X2)に対応するようにマップM全体を較正する。マップM全体を較正する方法としては原料ガス流量計300の特性に応じて適正な方法を選択する。例えば原料ガス流量計300が出力する信号の大きさと流量との関係が線形である場合にはマップMにおける対応関係を全ての領域において一定量だけ増減させることで較正可能であるなど、信号の大きさと流量との関係に応じた補正を行うことにより適正な較正を行うことができる。なお較正を行うにあたり、信号の大きさと流量との関係を適正に較正するために複数の流量における信号の大きさを用いることが望ましい。複数の流量における信号の大きさを用いるために今回測定して算出した値を用いると共に、以前に算出した値を用いて較正を行うこともできる。カソードガス流量計72についても原料ガス流量計300と同様に較正することができる。
【0056】
<原料ガス流量及びカソードガス流量の変化と水位変化の変化との関係について>
原料ガス流量及びカソードガス流量の変化と水位変化(回収水量−蒸発部2に供給した水量)の変化との関係について検討した結果を以下説明する。具体的には、(a)カソードガスとしての空気が利用される割合である空気利用率(Ua)、原料ガスが利用される割合である燃料利用率(Uf)、及び原料ガスに含まれる炭素に対する水蒸気のモル比であるスチーム/カーボン比(S/C)のうちの1つと、(b)排ガス温度とを変化させたときの水タンク4内の水量変化(回収水量−蒸発部2に供給した水量)の速度を計算により求め、それぞれ
図3(Ua)、
図4(Uf)、そして
図5(S/C)にプロットした。
【0057】
Uaの制御は空気の流量(カソードポンプ71)を変化させて行った。Ufの制御は原料ガスの流量(ポンプ60)を変化させて行った。S/Cの制御は水の供給量(ポンプ80)を変化させて行った。
【0058】
図4より明らかなように、原料ガスの流量の変化に対する水量変化は排ガス温度の変化に関わらずほぼ一定であることが分かった。
【0059】
図5より明らかなように、S/Cの値はsc1〜sc2の範囲で変化させても水タンク4内の水量変化の速度に変わりは無かった。
【0060】
このように、水タンク4内の水量変化の速度は原料ガスの供給量とカソードガスの供給量との変動により変わり、蒸発部2への水の供給量の変動には影響されないことが明らかになった。従って、水タンク4内の水を蒸発部2に供給するポンプ80に起因する流量のバラツキは水タンク4内の水量変化の速度には影響を与えないため、水タンク4内の水量変化を測定・考慮することによって、カソードガスを吐出するカソードポンプ71の流量と、原料ガスを吐出するポンプ80の流量とを較正することが可能になることが分かった。
【0061】
(変形態様1)
本変形態様の燃料電池システムは制御部100Xが原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72を較正する方法が異なる以外、実施形態と同じ構成をもつ。そのため、制御部100Xの動作についてのみ説明を行う。
【0062】
制御部100Xは凝縮器76から排出される排ガスの温度により原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72のうちのいずれの流量計を較正するかを判断する。実施形態にて説明を行ったように、排ガス温度が高いときの方がカソードガス流量の変化に対して水量変化の速度の変化が大きいため、カソードガス流量の変化を高い精度で検知することが可能になる。従って排ガス温度が相対的に高い場合(例えば予め設定された温度である第1所定温度以上であるとき。第1所定温度としては15℃、20℃などの値が採用できる)にはカソードガス流量計72の較正を行うことが望ましい。反対に排ガス温度が低い場合には水量変化の速度の大きさはカソードガス流量の変化に影響されがたくなる。従って排ガス温度が相対的に低い場合(例えば予め設定された温度である第2所定温度より小さいとき。第2所定温度としては15℃、20℃などの値が採用できる)には原料ガス流量計300の較正をカソードガス流量の変化にあまり影響されずに行うことができる。但し、排ガス温度の大きさによらずカソードガス流量計72及び原料ガス流量計300の較正を行うことは妨げない。例えば流量計の較正がある所定期間ごとに行うことが望ましい場合にその期間内に較正を行うのに好ましい温度範囲に排ガス温度が至らないか又は制御できない場合には、排ガス温度が好ましい温度範囲ではなくても較正を行うことができる。
【0063】
(変形態様2)
本変形態様の燃料電池システムは制御部100Xが原料ガス流量計300及びカソードガス流量計72を較正する方法が異なる以外、実施形態又は変形態様1と同じ構成をもつ。そのため、制御部100Xの動作についてのみ説明を行う。
【0064】
変形態様1にて説明を行ったように、カソードガス流量計72と原料ガス流量計300とでは較正を行うのに適した排ガス温度が異なっている。変形態様1では排ガス温度が自然に好ましい温度範囲になったときに較正を行うものであったが、本変形態様では凝縮器76に供給する冷却水の温度や量を調節することにより積極的に望ましい排ガス温度になるようにするものである。本変形態様では貯湯槽77内の温度が低い場合や高い場合に貯湯ポンプ79による冷却水の供給量を増加させて排ガス温度を積極的に制御するものである。また、凍結防止用のヒータ等が貯湯槽に搭載されているような構成においては、凍結状態有無に関わらず、過渡的にヒータに通電し凝縮器に供給される冷却水の温度を可変するようにしても良い。
【0065】
(変形態様3)
本変形態様の燃料電池システムは、
図1に示す実施形態の燃料電池システムにおける、原料ガス流量計300とカソードガス流量計72とを有さず、原料ガス流量の調整はポンプ60に供給する電力を調整してポンプ60の吐出量を調整することで制御し、カソードガス流量の調整はカソードポンプ71に供給する電力を調整してカソードポンプ71の吐出量を調整することで制御するものである。従って、本変形態様にて較正を行うのはポンプ60の吐出量とカソードポンプ71の吐出量とである。それ以外の構成については、実施形態、変形態様1又は変形態様2と同じ構成をもつ。このような構成の違いがあるため、本変形態様では、制御部100Xの動作が一部異なるものになっている。具体的には制御部100Xは
図6に示すような制御を行っている。この制御のうち実施形態と異なる部分は実施形態ではマップ較正ステップS5であったものが、本変形態様ではデューテイマップ較正ステップS6になっている点である。以下、異なるステップであるデューテイマップ較正ステップS6ついてのみ説明する。
【0066】
<デューテイマップ較正ステップS6>
ステップS4にて算出した原料ガスの流量(X2)及びカソードガスの流量(Y2)を用いてデューテイマップDMを較正する。つまり、較正前には原料ガスの流量(目標)をX1にしたときに実際の原料ガスの流量はX2になっていることが判明したため、目標とする流量がX2であるときにマップDMがもっていたポンプ60に出力するデューテイ(D1)を較正前の流量(X1)に相当する値に対応するようにマップDM全体を較正する。マップDM全体を較正する方法としてはポンプ60の特性に応じて適正な方法を選択する。例えば入力されるデューテイと流量との関係が線形である場合にはマップDMにおける対応関係を全ての領域において一定量だけ増減させることで較正可能であるなど、信号の大きさと流量との関係に応じた補正を行うことにより適正な較正を行うことができる。なお較正を行うにあたり、デューテイの大きさと流量との関係を適正に較正するために複数の流量におけるデューテイの大きさを用いることが望ましい。複数の流量におけるデューテイの大きさを用いるために今回測定して算出した値を用いると共に、以前に算出した値を用いて較正を行うこともできる。カソードポンプ71についてもポンプ60と同様に較正することができる。
【0067】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態及び適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。ポンプ60や原料ガス流量計300は脱硫装置200の下流に限らず、上流に配置されていても良い。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池に限定されず、場合によっては、固体高分子電解質形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、溶融炭酸塩形燃料電池でも良い。要するに、原料ガスを脱硫させる第1脱硫部及び第2脱硫部を直列に有する燃料電池システムであれば良い。原料ガスも特に制限されず、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPGガス、CNGガス等を例示できる。