特許第5935584号(P5935584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935584アダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935584
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】アダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/30 20060101AFI20160602BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20160602BHJP
   C07D 303/16 20060101ALI20160602BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   C07D301/30
   B01J31/02 102X
   C07D303/16
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-174747(P2012-174747)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34518(P2014-34518A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 祥一
(72)【発明者】
【氏名】西村 喜男
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 博康
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−274159(JP,A)
【文献】 特開2003−321530(JP,A)
【文献】 特開昭55−115423(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0167254(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/079470(WO,A1)
【文献】 Journal of general chemistry of the USSR,1990年,60(12),2442-2446
【文献】 Pharmaceutical chemistry Journal,1990年,24(5),339-343
【文献】 Journal of organic chemistry of the USSR (,1991年,27(6),1089-1092
【文献】 Macromolecules,2003年,36(10),3570-3579
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/00
C07D 303/00
B01J 31/00
C07B 61/00
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物と、エピクロロヒドリン及び/又はエピブロモヒドリンとを反応させて、一般式(II)で表されるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を製造する方法において、一般式(III)で表されるアミジン化合物を少なくとも一種類共存させ、かつ反応温度が−10〜60℃の範囲にあるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、ハロゲン基を示し、mは0〜3、カルボキシル基は橋頭位炭素に結合し、nは1〜3の整数を示す)
【化2】
(式中、R1、m及びnは一般式(I)と同じ。)
【化3】
(式中、R2、R3、R4及びR5、はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基を示し、R2とR4は結合して環構造を形成しても良く、R3とR5は結合して環構造を形成して良い。)
【請求項2】
一般式(III)で表わされるアミジン化合物が一般式(IV)又は一般式(V)で表わされる化合物である請求項1記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【化4】
【化5】
【請求項3】
一般式(III)で表されるアミジン化合物を一般式(I)で表わされるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシル基に対して0.1〜10.0当量用いる、請求項1又は2に記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項4】
エピブロモヒドリンを一般式(I)で表わされるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシル基に対して1〜20当量用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項5】
エピクロロヒドリンを一般式(I)で表わされるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシル基に対して1〜100当量用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項6】
アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2,6−ルチジン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、クロロホルムからなる群のうちいずれか一種以上の反応溶媒を用いる、請求項1〜のいずれか一項に記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(II)で表わされるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物が、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルである、請求項1〜6のいずれかに記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(II)で表わされるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物が、1,3、5−アダマンタントリカルボン酸トリグリシジルである、請求項1〜のいずれかに記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(II)で表わされるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物が、5,7−ジメチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルである、請求項1〜のいずれかに記載のアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性や耐熱性などに優れ、半導体封止剤や、架橋型樹脂、光ファイバや光導波路、光ディスク基板などの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品に好適なアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは剛直な構造を有し、透明性、耐熱性、高屈折率を有し、その誘導体は特異な機能を示すことから、高機能樹脂材料(特許文献1)や医薬中間体、光学材料、フォトレジストなどに有用であることが知られている。
【0003】
特許文献1では、アダマンタンジカルボン酸と、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物からなる硬化物が、耐熱性エポキシ樹脂硬化物として開示されている。
【0004】
特許文献2では、アダマンタンエステルを構造単位に含む共重合体が、光伝送用ファイバ用材料等に使用可能な、耐熱性、光学特性に優れた光学用樹脂として開示されており、その原料であるアダマンタンジカルボン酸グリシジルエステルの製造方法が開示されている。
【0005】
このようにアダマンタン骨格を含むエポキシ樹脂硬化物は、優れた高機能樹脂材料としての特性が期待されている。しかしながら、その原料となるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物は、収率や取り扱いの面で満足のいく製造方法が未だ開発されていない。特許文献2には、アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルの製造例が開示されているが、開示の製造例は収率が低く、工業的に未だ満足のいくものではない。また非特許文献1では、エポキシ樹脂原料としてアダマンタンカルボン酸グリシジルの製造方法が開示されている。しかしながら開示の製造方法では、出発物質にアダマンタンカルボン酸ナトリウム塩を必要としており、ナトリウム塩が市販されていない場合、別途調製する必要がある。さらに調製不備もしくは吸湿により反応系へ水が混入しやすく、副生成物が生成しやすいといった問題点を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−115423号公報
【特許文献2】特開2003−321530号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of General Chemistry USSR,60,2725(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、工業的に有用なアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を、簡便かつ高収率に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、アダマンタンカルボン酸化合物に、エピクロロヒドリン及び/又はエピブロモヒドリンを反応させ、アダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を製造する際に、特定の有機アミンを共存させることにより、簡便かつ高収率に目的物を得られることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物と、エピクロロヒドリン及び/又はエピブロモヒドリン(以下、エピクロロ(ブロモ)ヒドリンとする)とを混合して、一般式(II)で表されるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を製造する際に、一般式(III)で表されるアミジン化合物を少なくとも一種類共存させることを特徴とする、アダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の製造方法である。
【0010】
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、ハロゲン基を示し、mは0〜3、カルボキシル基は橋頭位炭素に結合し、nは1〜3の整数を示す)
【0011】
【化2】
(式中、R、m及びnは一般式(I)と同じ。)
【0012】
【化3】
(式中、R、R、R及びR、はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基を示し、RとRは結合して環構造を形成しても良く、RとRは結合して環構造を形成して良い。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体封止材料や、光伝送用ファイバ用材料、光導波路、光ディスク基板、架橋型樹脂等に使用可能な、耐熱性、光学特性に優れた光学用樹脂原料として工業的に有用なアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の、高収率で簡便な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1において最終的に得られた白色固体のH−NMRスペクトルを示すグラフである。
図2】実施例1において最終的に得られた白色固体の13C−NMRスペクトルを示すグラフである。
図3】実施例4において最終的に得られた白色固体のH−NMRスペクトルを示すグラフである。
図4】実施例4において最終的に得られた白色固体の13C−NMRスペクトルを示すグラフである。
図5】実施例5において最終的に得られた白色固体のH−NMRスペクトルを示すグラフである。
図6】実施例5において最終的に得られた白色固体の13C−NMRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明に用いられるアダマンタンカルボン酸化合物は、一般式(I)で表される。アダマンタン骨格の橋頭位炭素にカルボキシル基が1〜3個結合している事を特徴とする。具体的には、1−アダマンタンカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、3−メチル−1−アダマンタンカルボン酸、3−エチル−1−アダマンタンカルボン酸、5−メチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−エチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、5,7−ジメチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、3−ブロモ−1−アダマンタンカルボン酸、5−ブロモ−1,3−アダマンタンジカルボン酸、3−メトキシ−1−アダマンタンカルボン酸、3−エトキシ−1−アダマンタンカルボン酸、3−プロポキシ−1−アダマンタンカルボン酸、3−ブトキシ−1−アダマンタンカルボン酸などが挙げられる。
【0016】
本発明において、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンは、いずれも好適に使用できる。エピブロモヒドリンの量は、一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシ基に対して、1〜20当量、好ましくは2〜10当量、さらに好ましくは3〜7当量である。1当量以上であれば二量体などの副生物が生成しにくくなる。20当量以下であれば経済的であると同時に、精製工程に要する手間が少なくて済み、好ましい。エピクロロヒドリンはエピブロモヒドリンに対して、反応性が劣るため添加するべき量が多い。添加するエピクロロヒドリンの量は、一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシ基に対して、1〜100当量、好ましくは5〜50当量、さらに好ましくは10〜30当量である。また反応終了後、減圧蒸留などの精製工程から回収したエピクロロ(ブロモ)ヒドリンも再利用可能である。
【0017】
本発明に用いられる一般式(III)で表されるアミジン化合物は、具体的には一般式(IV)で表わされる1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、一般式(V)で表わされる1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンが挙げられる。添加するアミジン化合物の量は、一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物のカルボキシ基に対して、0.1〜10.0当量、好ましくは0.5〜5.0当量、さらに好ましくは0.8〜3.0当量である。0.1当量以上であればハロゲンを含む副生物が生成しにくくなり収率が向上し、使用量が10.0当量以下であれば経済的に好ましい。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
一般式(I)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物と、エピクロロ(ブロモ)ヒドリンとを一般式(III)のアミジン化合物の存在下で反応させて、一般式(II)で表されるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を製造する方法において、それぞれを混合する順番に制限はない。例えば、反応溶媒中で、アダマンタンカルボン酸化合物とエピクロロ(ブロモ)ヒドリンを混合しておいたのち、アミジン化合物を添加してもよいし、アダマンタンカルボン酸化合物とアミジン化合物を混合しておいたのち、エピクロロ(ブロモ)ヒドリンを添加してもよいし、エピクロロ(ブロモ)ヒドリンとアミジン化合物を混合しておいたのち、アダマンタンカルボン酸化合物を添加してもよい。添加する際には、そのまま添加してもよいし、また反応溶媒の一部で希釈して添加しても構わない。その中で、先にアダマンタンカルボン酸化合物とアミジン化合物を反応溶媒中で混合したのちに、エピクロロ(ブロモ)ヒドリンに添加する混合順序が、液温の上昇を制御しやすいことや、アダマンタンカルボン酸化合物が溶液として取り扱え操作が簡便になること、副反応の進行が抑えられることからが好ましい。
【0021】
本発明における反応溶媒は、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2,6−ルチジン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒が好ましいが、クロロホルムなどの疎水性溶媒でも実施可能である。さらに無溶媒でも実施可能であるが、取り扱い、反応制御の容易さの観点から、溶媒を用いることが望ましい。その中でも、アセトニトリルを用いると、基質を十分に溶解させ、また反応選択率も高いので好ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒量は、アダマンタンカルボン酸化合物1質量部に対して、0.1〜100質量部好ましくは1〜20質量部の割合で使用する。
【0022】
溶媒を用いる場合には、溶媒中に水を多く含有すると、エポキシ環への水付加反応が生起し、選択率が低下することから、溶媒をモレキュラーシブスなどで脱水処理したのち用いることが望ましい。溶媒中の水分量は、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%まで低減させると選択率が向上するので好ましい。
【0023】
反応温度は、−78〜150℃で行われ、好ましくは−20〜100℃で、さらに好ましくは−10〜60℃程度で行うことが好ましい。この範囲内であればカルボキシ基のグリシジルエステル化が十分進行し、副反応の進行も少ない。反応時間は、0.5〜1000時間、好ましくは1〜100時間である。反応時間は反応温度、溶媒量に依存するので、上記の範囲に限定されるものではない。また、反応圧力は特に制限されず、常圧または加圧下で行なうことができる。
【0024】
反応終了後、目的とする一般式(II)で表されるアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物を反応液中より精製して得る。精製方法には特に制限を受けないが、特に次の方法がアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物の収率が高く、不純物の少ないものが得られる。
(i)反応終了後、クロロホルムなどの疎水性で、かつ目的とするアダマンタンカルボン酸グリシジルエステル化合物が溶解する溶媒を反応液に添加し、純水で洗浄する。
(ii)洗浄後の有機層を濃縮し、シリカゲルカラムや活性炭、活性アルミナなどで着色成分を取り除く。
(iii)回収した溶液を、窒素気流下で真空濃縮する。
【0025】
本製造法においては、一般式(II)においてnが2又は3の場合は、一部グリシジルエステル化が進行しない副生成物(一般式(VI)や、系中に存在するハロゲン化物イオンや水の付加副生成物(一般式(VII))、多量化副生成物(一般式VIII)を含む場合がある。
【0026】
【化6】
(式中、R、m及びnは一般式(I)と同じ。aは1又は2を示し、a<nである。)
【0027】
【化7】
(式中、R、m及びnは一般式(I)と同じ。Xは水酸基、塩素又は臭素を示し、bは2又は3を示し、b≦nである。)
【0028】
【化8】
(式中、R、m及びnは一般式(I)と同じ。)
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0030】
実施例1
<1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルの製造>
撹拌機、温度計を備えた1Lジャケット付セパラブル三口フラスコに、1、3−アダマンタンジカルボン酸22.41g(0.10mol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン48.71g(0.32mol)、エピブロモヒドリン109.58g(0.8mol)、アセトニトリル100mlを仕込み、20℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム200mlを加え、イオン交換水200mlを用いた洗浄操作を三回、0.5%硫酸ナトリウム水溶液を用いた洗浄操作を三回実施した。硫酸ナトリウム10gを加え脱水、5Cろ紙によりろ過後、溶媒を減圧留去した。得られた粘調液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98/2、Rf=0.4)により分画精製した。窒素気流下、2mmHg、100℃の条件で濃縮して、目的物を淡黄色粘調液体として26.94gを得た(収率80%)。Hおよび13C−NMR、より構造を確認した(チャート1〜2参照)。H−NMRスペクトル:δ1.6〜2.2ppm(14H、アダマンタン)、2.6ppm、2,8ppm(4H、グリシジル基3位)、3.2ppm(2H、グリシジル2位)、3.9ppm、4.4ppm(4H、グリシジル1位)。13C−NMRスペクトル:27〜41ppm(アダマンタン)、44ppm(グリシジル基3位)、49ppm(グリシジル基2位)、64ppm(グリシジル基1位)、176ppm(カルボニル)。
【0031】
実施例2
<1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルの製造>
撹拌機、ジムロート冷却器、温度計を備えた300ml三口フラスコに、1、3−アダマンタンジカルボン酸11.21g(0.05mol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン27.40g(0.18mol)、エピクロロヒドリン148.03g(1.6mol)、アセトニトリル50ml仕込、40℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム200mlを加え、イオン交換水200mlを用いた洗浄操作を三回、0.5%硫酸ナトリウム水溶液を用いた洗浄操作を三回実施した。硫酸ナトリウム10gを加え脱水、5Cろ紙によりろ過後、溶媒を減圧留去した。得られた粘調液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98/2、Rf=0.4)により分画精製した。窒素気流下、2mmHg、100℃の条件で濃縮して、目的物を淡黄色粘調液体として12.62gを得た(収率75%)。Hおよび13C−NMR、より構造を確認した。
【0032】
実施例3
<1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルの製造>
撹拌機、温度計を備えた1Lジャケット付セパラブル三口フラスコに、1、3−アダマンタンジカルボン酸11.21g(0.05mol)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン21.11g(0.17mol)、エピブロモヒドリン54.80g(0.4mol)、アセトニトリル100ml仕込、30℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム200mlを加え、イオン交換水200mlを用いた洗浄操作を二回、0.5%硫酸ナトリウム水溶液を用いた洗浄操作を二回実施した。硫酸ナトリウム10gを加え脱水、5Cろ紙によりろ過後、溶媒を減圧留去した。得られた粘調液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98/2、Rf=0.4)により分画精製した。2mmHg、100℃の条件で濃縮して、目的物を淡黄色粘調液体として12.29gを得た(収率73%)。Hおよび13C−NMR、より構造を確認した。
【0033】
実施例4
<1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリグリシジルの製造>
撹拌機、温度計を備えた1Lジャケット付セパラブル三口フラスコに、1、3、5−アダマンタントリカルボン酸13.41g(0.05mol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン36.54g(0.24mol)、エピブロモヒドリン82.20g(0.6mol)、アセトニトリル100ml仕込、30℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム200mlを加え、イオン交換水200mlを用いた洗浄操作を三回実施した。硫酸ナトリウム10gを加え脱水、5Cろ紙によりろ過後、溶媒を減圧留去した。得られた粘調液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=15/1、Rf=0.2)により分画精製した。2mmHg、100℃の条件で濃縮して、目的物を淡黄色粘調液体として11.3gを得た(収率52%)。Hおよび13C−NMR、より構造を確認した(チャート3〜4参照)。H−NMRスペクトル:δ1.7〜2.3ppm(13H、アダマンタン)、2.6ppm、2,8ppm(6H、グリシジル基3位)、3.2ppm(3H、グリシジル2位)、3.9ppm、4.4ppm(6H、グリシジル1位)。13C−NMRスペクトル:27〜41ppm(アダマンタン)、44ppm(グリシジル基3位)、49ppm(グリシジル基2位)、65ppm(グリシジル基1位)、175ppm(カルボニル)。
【0034】
実施例5
<5,7−ジメチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸ジグリシジルの製造>
撹拌機、温度計を備えた1Lジャケット付セパラブル三口フラスコに、5、7−ジメチル−1、3−アダマンタンジカルボン酸12.62g(0.05mol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン27.40g(0.18mol)、エピブロモヒドリン54.80g(0.4mol)、アセトニトリル50ml仕込、20℃で5時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム200mlを加え、イオン交換水200mlを用いた洗浄操作を三回実施した。硫酸ナトリウム10gを加え脱水、5Cろ紙によりろ過後、溶媒を減圧留去した。得られた粘調液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/2、Rf=0.4)により分画精製した。2mmHg、100℃の条件で濃縮して、目的物を淡黄色粘調液体として14.87gを得た(収率82%)。Hおよび13C−NMR、より構造を確認した(チャート5〜6参照)。H−NMRスペクトル:δ0.9ppm(6H、メチル基)、1.1〜1.9ppm(12H、アダマンタン)、2.6、2.8ppm(4H、グリシジル基3位)、3.2ppm(2H、グリシジル2位)、3.9ppm、4.4ppm(4H、グリシジル1位)。13C−NMRスペクトル:30ppm(メチル基)31〜44ppm、49ppm(アダマンタン)、44ppm(グリシジル基3位)、49ppm(グリシジル基2位)、64ppm(グリシジル基1位)、176ppm(カルボニル)。
【0035】
比較例1
撹拌機、温度計を備えた300L三口フラスコに、1、3−アダマンタンジカルボン酸11.21g(0.05mol)、ピリジン12.65g(0.16mol)、エピブロモヒドリン54.80g(0.40mol)、アセトニトリル100ml仕込、50℃で撹拌、経時的にHPLCにより反応を追跡した。反応開始から6時間経過後に目的物の反応収率は24%に達して以降、上昇は確認されなかった。
【0036】
比較例2
ピリジンの添加量を7.91g(0.10mol)に変更したほかは、比較例1と同様に実施した。反応開始から6時間経過後に目的物の反応収率は22%に達して以降、上昇は確認されなかった。
【0037】
比較例3
撹拌機、温度計を備えた300L三口フラスコに、1、3−アダマンタンジカルボン酸11.21g(0.05mol)、カリウムt−ブトキサイド12.34g(0.11mol)をアセトニトリル100ml中で混合し、エピブロモヒドリン54.80g(0.40mol)をアセトニトリル100mlに溶解させた溶液に添加し、25℃で撹拌、経時的にHPLCにより反応を追跡した。反応開始から18時間確認したが、目的物の生成は確認されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6