(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋳型内に形成されるキャビティ及び押湯空間にAl合金溶湯を注入して鋳造された、該キャビティに対応する製品と該押湯空間に対応する押湯部とを有するAl合金製鋳造品の冷却方法であって、
上記鋳型は、上記キャビティ用の第1空間と上記押湯空間用の第2空間と該第1空間を該第2空間側とは反対側に開放する第1開放部と該第2空間を該第1空間側とは反対側に開放する第2開放部とを有する鋳型本体部と、該鋳型本体部の第1開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記キャビティを形成する第1閉塞部と、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記押湯空間を形成する第2閉塞部とで構成されたものであり、
上記鋳型による上記Al合金製鋳造品の鋳造後に、該鋳型の第1閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第1開放部を通して該Al合金製鋳造品における上記製品の上記押湯部側とは反対側の面である第1面を露出させる第1閉塞部分離工程と、
上記第1閉塞部分離工程で露出した、上記Al合金製鋳造品の第1面に対して、該第1面に対向配置された製品側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングすることで、上記Al合金製鋳造品を焼入れ冷却する製品側シャワリング工程と、
上記製品側シャワリング工程の開始後に、上記鋳型の第2閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第2開放部を通して上記Al合金製鋳造品における上記押湯部の上記製品側とは反対側の面である第2面を露出させる第2閉塞部分離工程と、
上記第2閉塞部分離工程で露出した、上記Al合金製鋳造品の第2面に対して、該第2面に対向配置された押湯部側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングする押湯部側シャワリング工程とを含み、
上記押湯部側シャワリング工程は、上記製品側シャワリング工程の開始後でかつ終了前に、上記Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングを開始して、上記製品側シャワリング工程と共に該Al合金製鋳造品を焼入れ冷却する工程であり、
上記製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程の終了後、上記鋳型の第2閉塞部により上記鋳型本体部の第2開放部を再度閉塞して、該閉塞状態で、上記Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱により時効処理を行う時効処理工程を更に含むことを特徴とするAl合金製鋳造品の冷却方法。
鋳型内に形成されるキャビティ及び押湯空間にAl合金溶湯を注入して鋳造された、該キャビティに対応する製品と該押湯空間に対応する押湯部とを有するAl合金製鋳造品の冷却装置であって、
上記鋳型は、上記キャビティ用の第1空間と上記押湯空間用の第2空間と該第1空間を該第2空間側とは反対側に開放する第1開放部と該第2空間を該第1空間側とは反対側に開放する第2開放部とを有する鋳型本体部と、該鋳型本体部の第1開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記キャビティを形成する第1閉塞部と、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記押湯空間を形成する第2閉塞部とで構成されたものであり、
上記鋳型による上記Al合金製鋳造品の鋳造後に、上記鋳型の第1閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第1開放部を通して該Al合金製鋳造品における上記製品の上記押湯部側とは反対側の面である第1面を露出させる第1閉塞部分離装置と、
上記第1閉塞部分離装置による上記第1閉塞部の分離により露出した、上記Al合金製鋳造品の第1面に対して、該第1面に対向配置された製品側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングすることで、該Al合金製鋳造品を焼入れ冷却するように構成された製品側シャワリング装置と、
上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリングの開始後に、上記鋳型の第2閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第2開放部を通して上記Al合金製鋳造品における上記押湯部の上記製品側とは反対側の面である第2面を露出させるように構成された第2閉塞部分離装置と、
上記第2閉塞部分離装置による上記第2閉塞部の分離により露出した、上記Al合金製鋳造品の第2面に対して、該第2面に対向配置された押湯部側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングするように構成された押湯部側シャワリング装置とを備え、
上記押湯部側シャワリング装置は、上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリングの開始後でかつ終了前に、該Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングを開始して、上記製品側シャワリング装置と共に上記Al合金製鋳造品を焼入れ冷却するように構成され、
上記第2閉塞部分離装置は、上記鋳型本体部から分離した第2閉塞部を、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞した状態に戻すことが可能に構成されており、
上記冷却装置は、上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリング及び上記押湯部側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングの終了後に、上記第2閉塞部分離装置により上記第2閉塞部を上記鋳型本体部の第2開放部を閉塞した状態に戻すことで、上記Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱により時効処理を行うように構成されていることを特徴とするAl合金製鋳造品の冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1及び2では、鋳型のキャビティでエンジンのシリンダヘッドを鋳造した場合、そのシリンダヘッドの燃焼室側(反押湯側)の面のみに冷却媒体を接触させているが、このようにすると、シリンダヘッドが立体構造物であるため、シリンダヘッドが歪み易くなり、シリンダヘッドにおいて複数の気筒にそれぞれ対応する部位間で寸法バラツキが生じる。また、シリンダヘッド全体において強度バラツキも生じ易くなる。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋳型によりAl合金製鋳造品を鋳造後に焼入れ冷却する場合に、Al合金製鋳造品の製品全体において強度バラツキを出来る限り低減するとともに、製品において同じ寸法とすべき複数の部位間の寸法バラツキも出来る限り低減し、しかも、Al合金製鋳造品の時効処理を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、鋳型内に形成されるキャビティ及び押湯空間にAl合金溶湯を注入して鋳造された、該キャビティに対応する製品と該押湯空間に対応する押湯部とを有するAl合金製鋳造品の冷却方法を対象として、上記鋳型は、上記キャビティ用の第1空間と上記押湯空間用の第2空間と該第1空間を該第2空間側とは反対側に開放する第1開放部と該第2空間を該第1空間側とは反対側に開放する第2開放部とを有する鋳型本体部と、該鋳型本体部の第1開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記キャビティを形成する第1閉塞部と、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記押湯空間を形成する第2閉塞部とで構成されたものであり、上記鋳型による上記Al合金製鋳造品の鋳造後に、該鋳型の第1閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第1開放部を通して該Al合金製鋳造品における上記製品の上記押湯部側とは反対側の面である第1面を露出させる第1閉塞部分離工程と、上記第1閉塞部分離工程で露出した、上記Al合金製鋳造品の第1面に対して、該第1面に対向配置された製品側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングすることで、上記Al合金製鋳造品を焼入れ冷却する製品側シャワリング工程と、上記製品側シャワリング工程の開始後に、上記鋳型の第2閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第2開放部を通して上記Al合金製鋳造品における上記押湯部の上記製品側とは反対側の面である第2面を露出させる第2閉塞部分離工程と、上記第2閉塞部分離工程で露出した、上記Al合金製鋳造品の第2面に対して、該第2面に対向配置された押湯部側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングする押湯部側シャワリング工程とを含み、上記押湯部側シャワリング工程は、上記製品側シャワリング工程の開始後でかつ終了前に、上記Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングを開始して、上記製品側シャワリング工程と共に該Al合金製鋳造品を焼入れ冷却する工程であ
り、上記製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程の終了後、上記鋳型の第2閉塞部により上記鋳型本体部の第2開放部を再度閉塞して、該閉塞状態で、上記Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱により時効処理を行う時効処理工程を更に含むものとした。
【0012】
上記の冷却方法により、最初に、Al合金製鋳造品の第1面(製品の押湯部側とは反対側の面)にミスト状の冷却用液体をシャワリングすることで、製品は、押湯部側とは反対側の面から押湯部側に向かって冷却されていく。このとき、ミスト状の冷却用液体のシャワリングにより、Al合金製鋳造品の第1面の全体を均一にシャワリングすることができる。一方、製品の押湯部側の部分は、押湯部の熱により、製品の押湯部側とは反対側の部分に比べて冷却され難く、この結果、製品の押湯部側とは反対側と押湯部側とでは温度が均一になり難い。しかし、上記冷却方法では、Al合金製鋳造品の第2面(押湯部の製品側とは反対側の面)にもミスト状の冷却用液体をシャワリングするので、押湯部を介して、製品の押湯部側の部分も良好に冷却される。したがって、Al合金製鋳造品の製品全体において強度バラツキを低減することができるとともに、製品の歪みを小さくすることができて、製品において同じ寸法とすべき複数の部位間の寸法バラツキも低減することができる。また、押湯部側シャワリング工程の開始を、製品側シャワリング工程の開始後でかつ終了前に行うことで、製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程の終了時に、製品の押湯部側の面の温度が、製品の押湯部側とは反対側の面の温度よりも所定温度だけ高くなるようにすることができ、こうすることで、押湯部又は製品の押湯部側の部分の残留熱を利用して、Al合金製鋳造品の時効処理を行うことができる。したがって、焼入れ冷却されたAl合金製鋳造品を時効処理するために、炉に入れる等して加熱する必要はなく、Al合金製鋳造品の時効処理を容易に行うことができる。
【0013】
また、製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程の終了後、上記鋳型の第2閉塞部により上記鋳型本体部の第2開放部を再度閉塞して、該閉塞状態で、上記Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱により時効処理を行う
ことで、焼入れ冷却されたAl合金製鋳造品の時効処理を容易に行うことができる。すなわち、製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程の終了時に、製品の押湯部側の面の温度が、製品の押湯部側とは反対側の面の温度よりも所定温度だけ高くなるようにしておき、鋳型本体部の第2開放部を再度閉塞することで、押湯部又は製品の押湯部側の部分の残留熱が鋳型本体部の外側に逃げずに、製品の押湯部側とは反対側の部分へ良好に伝えられる。これにより、製品の押湯部側とは反対側の部分の温度が上昇してAl合金製鋳造品全体(特に製品全体)が略同じ温度になり、この状態でAl合金製鋳造品全体(製品全体)を時効処理することができる。したがって、Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱(特に、押湯部又は製品の押湯部側の部分の残留熱)により、時効処理を容易にかつ適切に行うことができる。この結果、時効処理されたAl合金製鋳造品の製品全体において強度バラツキをより一層低減することができるとともに、製品において同じ寸法とすべき複数の部位間の寸法バラツキもより一層低減することができる。
【0014】
上記Al合金製鋳造品の冷却方法において、上記製品側ノズル及び上記押湯部側ノズルは、各々、複数設けられており、上記製品側シャワリング工程は、上記各製品側ノズルに供給されるエア圧及び冷却用液体圧を制御しながら、該各製品側ノズルにより、上記Al合金製鋳造品の第1面に対して上記ミスト状の冷却用液体をシャワリングする工程であり、上記押湯部側シャワリング工程は、上記各押湯部側ノズルに供給されるエア圧及び冷却用液体圧を制御しながら、該各押湯部側ノズルにより、上記Al合金製鋳造品の第2面に対して上記ミスト状の冷却用液体をシャワリングする工程である、ことが好ましい。
【0015】
このことで、複数の製品側ノズル及び複数の押湯部側ノズルにより、Al合金製鋳造品の第1面全体及び第2面全体に対して、ミスト状の冷却用液体をより一層均一にシャワリングすることができる。また、各製品側ノズル及び各押湯部側ノズルへのエア圧及び冷却用液体圧の制御により、Al合金製鋳造品の第1面における各製品側ノズルにそれぞれ対応する部位、及び、Al合金製鋳造品の第2面における各押湯部側ノズルにそれぞれ対応する部位にミスト状の冷却用液体を適切にシャワリングすることができる。したがって、Al合金製鋳造品の部位毎に、緻密な冷却コントロールが可能となる。
【0016】
上記のように各製品側ノズル及び各押湯部側ノズルに供給されるエア圧及び冷却用液体圧を制御する場合において、上記Al合金製鋳造品の第1面及び第2面は、略長方形状をなし、上記複数の製品側ノズルは、上記Al合金製鋳造品の第1面の幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第1面の長手方向に延びる少なくとも3列の製品側ノズル列上に配置され、上記複数の押湯部側ノズルは、上記Al合金製鋳造品の第2面の幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第2面の長手方向に延びる少なくとも3列の押湯部側ノズル列上に配置され、上記少なくとも3列の製品側ノズル列のうち両端に位置する製品側ノズル列上の製品側ノズルに供給される冷却用液体圧に比べて、他の製品側ノズル列上の製品側ノズルに供給される冷却用液体圧が大きく設定される、ことが好ましい。
【0017】
このことにより、Al合金製鋳造品の製品は略直方体形状をなすことになり、その製品の幅方向中間部は、鋳型と接している幅方向両端部よりも冷却され難い。そこで、上記のような冷却用液体圧の関係にすることで、Al合金製鋳造品の第1面の幅方向中間部に対して幅方向両端部よりも多くの冷却用液体をシャワリングすることができ、この結果、Al合金製鋳造品の製品全体をより一層均一に冷却することができるようになる。
【0018】
上記Al合金製鋳造品の冷却方法において、上記製品側ノズル及び上記押湯部側ノズルからのミスト状の冷却用液体の粒径は、30μm以上50μm以下である、ことが好ましい。
【0019】
すなわち、ミスト状の冷却用液体の粒径が30μmよりも小さいと、ミスト状の冷却用液体が空気中で気化し易くなり、ミスト状の冷却用液体がAl合金製鋳造品の第1面又は第2面に接触する前に気化する可能性がある一方、上記粒径が50μmよりも大きいと、ミスト状の冷却用液体がAl合金製鋳造品の第1面又は第2面に接触しても気化するまでに時間がかかる可能性がある。そこで、上記粒径を30μm以上50μm以下とすることで、ミスト状の冷却用液体がAl合金製鋳造品の第1面又は第2面に接触しかつ該接触後直ぐに気化するようになり、この結果、Al合金製鋳造品を効率良く冷却することができるようになる。尚、製品側ノズルからのミスト状の冷却用液体の粒径は、製品側ノズルに供給されるエア圧及び冷却用液体圧の調整により、容易に調整することができ、押湯部側ノズルからのミスト状の冷却用液体の粒径は、押湯部側ノズルに供給されるエア圧及び冷却用液体圧の調整により容易に調整することができる。
【0020】
上記Al合金製鋳造品の冷却方法において、上記製品側シャワリング工程、上記第2閉塞部分離工程及び上記押湯部側シャワリング工程は、シャワリングルーム内で行われる、ことが好ましい。
【0021】
このことで、冷却用液体が気化した蒸気をシャワリングルーム外に飛散しないようにすることができる。特に、複数のAl合金製鋳造品に対して同時に焼入れ冷却する場合に、複数のAl合金製鋳造品を、それぞれ別々のシャワリングルーム内で、製品側シャワリング工程及び押湯部側シャワリング工程を行うようにすることで、各Al合金製鋳造品が、他のAl合金製鋳造品からの蒸気の飛散の影響を受けるのを防止することができる。また、第2閉塞部分離工程をシャワリングルーム内で行うことで、製品側シャワリング工程と押湯部側シャワリング工程との間で、Al合金製鋳造品をシャワリングルームに対して出し入れする必要がなく、製品側シャワリング工程、第2閉塞部分離工程及び押湯部側シャワリング工程を連続的に行うことができる。
【0022】
上記Al合金製鋳造品の冷却方法において、上記Al合金製鋳造品の上記製品が、エンジンのシリンダヘッドであり、上記Al合金製鋳造品の第1面が、上記シリンダヘッドの燃焼室側の面である、ことが好ましい。
【0023】
このことにより、エンジンのシリンダヘッドを、その全体において均一でかつ高い強度でもって精度良く製造することができ、特に高圧縮比のエンジンに好適に用いることができる。また、シリンダヘッドにおける複数の気筒にそれぞれ対応する部位(同じ寸法とすべき複数の部位)間の強度バラツキ及び寸法バラツキも小さくなり、振動が少なくて出力が安定する良好なエンジンが得られる。
【0024】
本発明の別の態様は、鋳型内に形成されるキャビティ及び押湯空間にAl合金溶湯を注入して鋳造された、該キャビティに対応する製品と該押湯空間に対応する押湯部とを有するAl合金製鋳造品の冷却装置の発明であり、この発明では、上記鋳型は、上記キャビティ用の第1空間と上記押湯空間用の第2空間と該第1空間を該第2空間側とは反対側に開放する第1開放部と該第2空間を該第1空間側とは反対側に開放する第2開放部とを有する鋳型本体部と、該鋳型本体部の第1開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記キャビティを形成する第1閉塞部と、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞することで、該鋳型本体部と共に上記押湯空間を形成する第2閉塞部とで構成されたものであり、上記鋳型による上記Al合金製鋳造品の鋳造後に、上記鋳型の第1閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第1開放部を通して該Al合金製鋳造品における上記製品の上記押湯部側とは反対側の面である第1面を露出させる第1閉塞部分離装置と、上記第1閉塞部分離装置による上記第1閉塞部の分離により露出した、上記Al合金製鋳造品の第1面に対して、該第1面に対向配置された製品側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングすることで、該Al合金製鋳造品を焼入れ冷却するように構成された製品側シャワリング装置と、上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリングの開始後に、上記鋳型の第2閉塞部を上記鋳型本体部から分離して上記鋳型本体部の第2開放部を通して上記Al合金製鋳造品における上記押湯部の上記製品側とは反対側の面である第2面を露出させるように構成された第2閉塞部分離装置と、上記第2閉塞部分離装置による上記第2閉塞部の分離により露出した、上記Al合金製鋳造品の第2面に対して、該第2面に対向配置された押湯部側ノズルによりミスト状の冷却用液体をシャワリングするように構成された押湯部側シャワリング装置とを備え、上記押湯部側シャワリング装置は、上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリングの開始後でかつ終了前に、該Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングを開始して、上記製品側シャワリング装置と共に上記Al合金製鋳造品を焼入れ冷却するように構成され
、上記第2閉塞部分離装置は、上記鋳型本体部から分離した第2閉塞部を、該鋳型本体部の第2開放部を閉塞した状態に戻すことが可能に構成されており、上記冷却装置は、上記製品側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第1面へのシャワリング及び上記押湯部側シャワリング装置による上記Al合金製鋳造品の第2面へのシャワリングの終了後に、上記第2閉塞部分離装置により上記第2閉塞部を上記鋳型本体部の第2開放部を閉塞した状態に戻すことで、上記Al合金製鋳造品に対して、該Al合金製鋳造品の残留熱により時効処理を行うように構成されているものである。
【0025】
この構成により、上記Al合金製鋳造品の冷却方法と同様に、Al合金製鋳造品の製品全体において強度バラツキを低減することができるとともに、製品において同じ寸法とすべき複数の部位間の寸法バラツキも低減することができ、しかも、Al合金製鋳造品の時効処理を容易に行うことができる
。
【0026】
上記Al合金製鋳造品の冷却装置において、上記製品側ノズル及び上記押湯部側ノズルは、各々、複数設けられており、上記製品側シャワリング装置は、上記各製品側ノズルにエア及び冷却用液体を、エア圧及び冷却用液体圧を制御しながら供給する製品側供給装置を有し、上記押湯部側シャワリング装置は、上記各押湯部側ノズルにエア及び冷却用液体を、エア圧及び冷却用液体圧を制御しながら供給する押湯側供給装置を有している、ことが好ましい。
【0027】
このようにすることで、Al合金製鋳造品の部位毎に、緻密な冷却コントロールが可能となる。
【0028】
上記のように、上記製品側シャワリング装置が上記製品側供給装置を有し、上記押湯部側シャワリング装置が上記押湯側供給装置を有している場合において、上記Al合金製鋳造品の第1面及び第2面は、略長方形状であり、上記複数の製品側ノズルは、上記Al合金製鋳造品の第1面の幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第1面の長手方向に延びる少なくとも3列の製品側ノズル列上に配置され、上記複数の押湯部側ノズルは、上記Al合金製鋳造品の第2面の幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第2面の長手方向に延びる少なくとも3列の押湯部側ノズル列上に配置され、上記製品側供給装置は、上記少なくとも3列の製品側ノズル列のうち両端に位置する製品側ノズル列上の製品側ノズルに供給される冷却用液体圧に比べて、他の製品側ノズル列上の製品側ノズルに供給される冷却用液体圧を大きく設定するように構成されている、ことが好ましい。
【0029】
このことで、Al合金製鋳造品の製品全体をより一層均一に冷却することができるようになる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明のAl合金製鋳造品の冷却方法及び冷却装置によると、Al合金製鋳造品の製品全体において強度バラツキを低減することができるとともに、製品の歪みを小さくすることができて、製品において同じ寸法とすべき複数の部位間の寸法バラツキも低減することができる。また、Al合金製鋳造品の時効処理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
図1は、Al合金製鋳造品を鋳造するための鋳型1を示す。この鋳型1内には、キャビティ5及び押湯空間6が上下方向に並んで形成される。鋳型1は、鋳型本体部2と第1閉塞部3と第2閉塞部3とで構成されており、これらは互いに分離可能に構成されている。
【0034】
鋳型本体部2は、キャビティ5用の第1空間2aと、押湯空間3用の第2空間2bと、第1空間2aを第2空間2b側とは反対側に開放する第1開放部2cと、第2空間2bを第1空間2a側とは反対側に開放する第2開放部2dと、第1空間2aと第2空間2bとを連通する複数の連通部2eとを有する。これら複数の連通部2eは、押湯空間6からAl合金溶湯9(
図2及び
図3参照)をキャビティ5に供給する溶湯供給路7を構成する。
【0035】
第1閉塞部3は、鋳型本体部2の第1開放部2cを閉塞することで、鋳型本体部2と共にキャビティ5を形成する。第2閉塞部4は、鋳型本体部2の第2開放部2dを閉塞することで、鋳型本体部2と共に押湯空間6を形成する。
【0036】
上記鋳型1内に形成されるキャビティ5及び押湯空間6にAl合金溶湯9を注入してAl合金製鋳造品10(
図4参照)を鋳造する。このAl合金製鋳造品10は、キャビティ5に対応する製品11と、押湯空間6に対応する押湯部12と、溶湯供給路7に対応する連結部13とを有することになる。押湯部12及び連結部13は、後述の如く、製品11から切り離されて、最終的に、所望の製品11が得られる。尚、
図1では、キャビティ5、押湯空間6及び溶湯供給路7を含めて鋳型1全体を概略的に描いており、詳細な形状は省略する。これに対応して、
図4等において、Al合金製鋳造品10も概略的に描いている。
【0037】
本実施形態では、上記製品11は、直列4気筒エンジンのシリンダヘッドであって、略直方体形状をなしている。また、押湯部12も略直方体形状をなしている。製品11と押湯部12とは、上記連結部13により連結されているが、Al合金製鋳造品10全体としても、略直方体形状をなしていると言える。尚、
図1の左右方向が、製品11(シリンダヘッド)の長手方向であって、気筒列方向に相当する。
【0038】
本実施形態では、上記鋳型1の鋳型本体部2及び第2閉塞部4は、砂型で構成され、第1閉塞部3は、金型で構成されている。この金型で構成された第1閉塞部3によって、製品11の押湯部12側とは反対側の面が形成されることになる。本実施形態では、製品11の押湯部12側とは反対側の面は、上記シリンダヘッドの燃焼室側の面であり、製品11の押湯部12側の面は、上記シリンダヘッドのヘッドカバー側の面である。以下、Al合金製鋳造品10における製品11の押湯部12側とは反対側の面を、Al合金製鋳造品10の第1面10aといい、Al合金製鋳造品10における押湯部12の製品11とは反対側の面を、Al合金製鋳造品10の第2面10bという。本実施形態では、Al合金製鋳造品10の第1面10a及び第2面10bは、略長方形状をなしている。Al合金製鋳造品10の第1面10aには、上記エンジンの4つの気筒内にそれぞれ形成される燃焼室のそれぞれの天井面となる4つの凹部11a(
図6にのみ示す)が形成されている。
【0039】
上記Al合金製鋳造品10を鋳造するには、先ず、
図2に示すように、鋳型1を、鋳型本体部2の上側に第1閉塞部3が位置しかつ下側に第2閉塞部4が位置するようにセットする。そして、押湯空間6に連通する不図示の湯口からAl合金溶湯9を押湯空間6に注入する。このAl合金溶湯9は、押湯空間6から溶湯供給路7を通って、押湯空間6の上側に位置するキャビティ5に注入される。ここで、押湯空間6がキャビティ5の上側に位置していたとすると、Al合金溶湯9が押湯空間6からキャビティ5へ落下することとなり、これにより、Al合金溶湯9の流れが乱流となって空気を巻き込んでしまう。しかし、上記のように、Al合金溶湯9を、下側の押湯空間6から上側のキャビティ5に供給することで、Al合金溶湯9の流れが層流となり、空気を巻き込むのを防止することができる。
【0040】
Al合金溶湯9のキャビティ5への注入が完了すると、
図3に示すように、鋳型1を、鋳型本体部2の上側に第2閉塞部4が位置しかつ下側に第1閉塞部3が位置するように反転する。この状態で放置して、Al合金溶湯9を凝固させる。キャビティ5内におけるAl合金溶湯9の凝固によりその体積が減少するに伴って、キャビティ5の上側に位置する押湯空間6内のAl合金溶湯9がキャビティ5内に自然に供給される。こうしてAl合金溶湯9が凝固することで、Al合金製鋳造品10が完成する。
【0041】
上記のようにして鋳造されたAl合金製鋳造品10は、その鋳造後に、冷却装置21(
図4及び
図5参照)によって、後述の如く、焼入れ冷却されるとともに、焼入れ冷却後に時効処理がなされる。冷却装置21は、Al合金製鋳造品10の鋳造後に、鋳型1の第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離して鋳型本体部2の第1開放部2cを通してAl合金製鋳造品10の第1面10aを露出させる第1閉塞部分離装置22(
図4参照)を備えている。この第1閉塞部分離装置22は、不図示の駆動装置により、鋳型1に対して接離可能に上下方向に移動する移動部22aと、この移動部22aに設けられ、第1閉塞部3を把持可能な把持部22bとを有している。移動部22aが鋳型1に接近する側(上側)に移動して、把持部22bが、鋳型1における下部に位置する第1閉塞部3を把持する。この把持状態で移動部22aが接近時とは反対側(下側)に移動することで、第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離する。
【0042】
冷却装置21は、
図5に示すように、第1閉塞部分離装置22による第1閉塞部3の分離により露出した、Al合金製鋳造品10の第1面10aに対して、該第1面10aに対向配置された複数の製品側ノズル24によりミスト状の冷却用液体(本実施形態では、冷却水)をシャワリングすることで、該Al合金製鋳造品10(特に製品11)を焼入れ冷却するように構成された製品側シャワリング装置23と、この製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリングの開始後に、鋳型の第2閉塞部4を鋳型本体部2から分離して鋳型本体部2の第2開放部2dを通してAl合金製鋳造品10の第2面10bを露出させるように構成された第2閉塞部分離装置25と、この第2閉塞部分離装置25による第2閉塞部4の分離により露出した、Al合金製鋳造品10の第2面10bに対して、該第2面10bに対向配置された押湯部側ノズル27によりミスト状の冷却用液体(本実施形態では、冷却水)をシャワリングするように構成された押湯部側シャワリング装置26とを更に備えている。
【0043】
押湯部側シャワリング装置26は、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリングの開始後でかつ終了前に、該Al合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングを開始して、製品側シャワリング装置26と共にAl合金製鋳造品10(特に製品11)を焼入れ冷却するように構成されている。
【0044】
製品側シャワリング装置23、第2閉塞部分離装置25及び押湯部側シャワリング装置26は、略密閉可能なシャワリングルーム31内に設けられている。このシャワリングルーム31は、第1室31aと第2室31bとに画成され、第1室31aと第2室31bとの間には、間仕切り32が設けられている。製品側シャワリング装置23の製品側ノズル24及び押湯部側シャワリング装置26の押湯部側ノズル27は、第1室31aに設けられている。また、第1室31aには、第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離した状態の鋳型1をセットするための不図示のセット台が設けられている。この鋳型1を、シャワリングルームの外側からそのセット台にセットする不図示のロボット装置が設けられている。上記ロボット装置により上記セット台にセットされた鋳型1においては、鋳型本体部2の上側に第2閉塞部4が位置している。
【0045】
シャワリングルーム31の第1室31aにおける第2室31bとは反対側の壁部には、開閉可能なシャッター33で覆われた開口部31cが形成されている。このシャッター33を開状態にして開口部31cを通して上記鋳型1を上記セット台にセットする。鋳型1を上記セット台にセットした後は、シャッター33を閉状態にして、シャワリングルーム31内を略密閉状態にする。尚、シャッター33の一部は透明部材で構成されており、この透明部材により、シャワリングルーム31の外側から第1室31a内の様子を観察することが可能になっている。
【0046】
第2閉塞部分離装置25は、シャワリングルーム31内の上部において第1室31a及び第2室31bに亘って略水平に配設されたレール25aと、不図示の駆動装置により、該レール25aに沿って、第1室31aと第2室31bとの間を移動する移動部25bと、この移動部25bに設けられ、移動部25bが第1室31aに位置するときに、上記セット台にセットされた鋳型1に対して接離可能に上下方向に移動しかつ第2閉塞部4を把持可能な把持部25cとを有している。この把持部25cが、鋳型1に接近する側(下側)に移動して第2閉塞部4を把持し、この把持状態で接近時とは反対側(上側)に移動することで、第2閉塞部4を鋳型本体部2から分離する。この分離後、把持部25cが第2閉塞部4を把持した状態で、移動部25b(及び把持部25c)が第1室31aから第2室31bに移動する。上記間仕切り32の上部には、移動部25bと第2閉塞部4を把持した把持部25cとが通過可能な開口32aが形成されている。
【0047】
また、第2閉塞部分離装置25は、鋳型本体部2から分離した第2閉塞部4を、該鋳型本体部2の第2開放部2dを閉塞した状態に戻すことが可能に構成されている。すなわち、移動部25b(及び把持部25c)が第2室31bに位置する状態から第1室31aに移動した後、第2閉塞部4を把持した把持部25cが下側に移動して第2閉塞部4の把持を解除することで、第2閉塞部4により鋳型本体部2の第2開放部2dを閉塞する。
【0048】
上記製品側シャワリング装置23の複数の製品側ノズル24は、
図6に示すように、上記セット台にセットされた鋳型1の下側位置において、該鋳型1内におけるAl合金製鋳造品10の第1面10aの幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第1面10aの長手方向に延びる3列の製品側ノズル列上に配置されている。上記3列の製品側ノズル列のうち両端に位置する製品側ノズル列上には、3つの製品側ノズル24がそれぞれ配置され、他の製品側ノズル列(つまり中央の製品側ノズル列)上には、4つの製品側ノズル24が配置されている。3列の製品側ノズル列のうち中央の製品側ノズル列上に配置された4つの製品側ノズル24は、Al合金製鋳造品10の第1面10aに形成された4つの凹部11aにそれぞれ対応して設けられている。3列の製品側ノズル列のうち両端に位置する製品側ノズル列上に配置された3つの製品側ノズル24は、中央の製品側ノズル列上の相隣る2つの製品側ノズル24間に対応する部分に存している。尚、製品側ノズル列は3列に限らず、各列の製品側ノズル24の数も3つ又は4つに限られるものではない。また、複数の製品側ノズル24を、必ずしも列上に配置する必要はなく、Al合金製鋳造品10の第1面10aの略全体がシャワリングされるように配置すればよい。
【0049】
上記製品側ノズル24は、その上側をノズルガード34により覆われており、このノズルガード34によって、製品側ノズル24及び押湯側ノズル27からの冷却水が製品側ノズル24にかからないようになされている。
【0050】
上記押湯部側シャワリング装置26の複数の押湯側ノズル27は、
図7に示すように、上記セット台にセットされた鋳型1の上側位置において、該鋳型1内におけるAl合金製鋳造品10の第2面10bの幅方向に互いに間隔をあけた状態で該第2面10bの長手方向に延びる3列の押湯部側ノズル列上に配置されている。上記3列の押湯部側ノズル列のうち両端に位置する押湯部側ノズル列上には、3つの押湯部側ノズル27がそれぞれ配置され、他の押湯部側ノズル列(中央の押湯部側ノズル列)上には、4つの押湯部側ノズル27が配置されている。3列の押湯部側ノズル列のうち両端に位置する押湯部側ノズル列上に配置された3つの押湯部側ノズル27は、中央の押湯部側ノズル列上の相隣る2つの押湯部側ノズル間に対応する部分に存している。尚、押湯部側ノズル列は3列に限らず、各列の押湯部側ノズル27の数も3つ又は4つに限られるものではない。また、複数の押湯部側ノズル27を、必ずしも列上に配置する必要はなく、Al合金製鋳造品10の第2面10bの略全体がシャワリングされるように配置すればよい。
【0051】
上記間仕切り32の下端部には、製品側ノズル24及び押湯部側ノズル27からの冷却水(第1室31aの下部に溜まる)を第1室31aから第2室31bへ流すための開口32bが形成されている。第2室32aへ流れた冷却水は、不図示の排水口からシャワリングルーム31の外側へ排水される。尚、第2室31bには、第2室31a内の水位が所定値以上になったことを検出するオーバーフロー検知器35が設置されており、例えば上記排水口が詰まることによって、オーバーフロー検知器35により第2室31b内の水位が所定値以上になったことが検出されたときには、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリング及び押湯部側シャワリング装置26によるAl合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングが停止されるようになっている。
【0052】
製品側シャワリング装置23は、各製品側ノズル24にエア(圧縮エア)及び冷却水を、エア圧及び冷却水圧を制御しながら供給する製品側供給装置41を有している。押湯部側シャワリング装置26は、各押湯部側ノズル27にエア(圧縮エア)及び冷却水を、エア圧及び冷却水圧を制御しながら供給する押湯部側供給装置71を有している。本実施形態では、同じ製品側ノズル列における製品側ノズル24へのエア圧が同じになるようにするとともに、同じ製品側ノズル列における製品側ノズル24への冷却水圧も同じになるようにしている。また、同じ押湯部側ノズル列における押湯部側ノズル27へのエア圧が同じになるようにするとともに、同じ押湯部側ノズル列における押湯部側ノズル27への冷却水圧も同じになるようにしている。このため、製品側供給装置41においては、各製品側ノズル列毎に、製品側ノズル24にエア及び冷却水を供給するためのエア供給部42及び冷却水供給部43が設けられている。これらエア供給部42及び冷却水供給部43の構成については、
図8に示されており、後に詳細に説明する。
図6には、各製品側ノズル列毎の後述のエア供給路44及び冷却水供給路45を含む供給管46が記載されている。また、押湯部側供給装置71においても、製品側供給装置41と同様に、各押湯部側ノズル列毎に、押湯部側ノズル27にエア及び冷却水を供給するためのエア供給部及び冷却水供給部が設けられている。これらエア供給部及び冷却水供給部は、エア供給部42及び冷却水供給部43とそれぞれ同様の構成であるので、詳細な図示は省略する。
図7には、供給管46と同様の供給管72が記載されている。
【0053】
図8は、3列の製品側ノズル列のうち中央の製品側ノズル列のエア供給部42及び冷却水供給部43の構成を示す。3列の製品側ノズル列のうち各端の製品側ノズル列のエア供給部42及び冷却水供給部43も、
図8と同様の構成である(製品側ノズル24の数が異なるだけである)。
【0054】
図8により、上記中央の製品側ノズル列のエア供給部及び冷却水供給部について詳細に説明する。
【0055】
エア供給部42は、エア供給源51からエア(圧縮エア)を製品側ノズル24へ供給するためのエア供給路44を有している。このエア供給路44には、上流側から順に、製品側ノズル24へ供給するエア圧を制御するエア圧制御レギュレータ52と、エア供給路44におけるエア中の異物を取り除くフィルタ53と、エア供給路44におけるエア流量を検出するエア流量計54と、エア供給路44におけるエア圧を検出するエア圧センサ55とが設けられている。エア圧制御レギュレータ52は、エア圧センサ55により検出されたエア圧に基づいて、製品側ノズル24へ供給するエア圧を制御する。
【0056】
冷却水供給部43は、冷却水供給源58から冷却水を製品側ノズル24へ供給するための冷却水供給路45を有している。この冷却水供給路45には、上流側から順に、製品側ノズル24へ供給する冷却水圧を制御する水圧制御レギュレータ59、冷却水供給路45における冷却水流量を検出する水流量計60、及び、冷却水供給路45における冷却水圧を検出する水圧センサ61が設けられている。
【0057】
水圧制御レギュレータ59は、該水圧制御レギュレータ59に供給される制御エア圧の変更によって、冷却水供給路45における冷却水圧を制御することが可能に構成されている。このため、水圧制御レギュレータ59には、該水圧制御レギュレータ59に、制御エア供給源65から制御エアを供給するための制御エア供給路64が接続されている。この制御エア供給路64には、上流側から順に、制御エア中の異物を取り除くフィルタ66と、制御エア中の水分を取り除くミストセパレータ67と、制御エア供給路64における制御エアの圧力を制御する圧力レギュレータ68とが設けられている。そして、圧力レギュレータ68は、水圧センサ61により検出された冷却水圧に基づいて、水圧制御レギュレータ59に供給する制御エアの圧力を制御し、これにより、水圧制御レギュレータ59は、冷却水供給路45における冷却水圧を制御することになる。
【0058】
上記製品側供給装置41は、上記3列の製品側ノズル列のうち両端に位置する製品側ノズル列上の製品側ノズル24に供給される冷却水圧に比べて、中央の製品側ノズル列上の製品側ノズルに供給される冷却水圧を大きく設定するように構成されている。これにより、中央の製品側ノズル列上の製品側ノズル24の数が、両端の製品側ノズル列上の製品側ノズル24の数と同じであったとしても、Al合金製鋳造品10の第1面10aの幅方向中間部に対して幅方向両端部よりも多くの冷却水をシャワリングすることができる。本実施形態では、中央の製品側ノズル列上の製品側ノズル24の数が、両端の製品側ノズル列上の製品側ノズル24の数よりも多いので、Al合金製鋳造品10の第1面10aの幅方向中間部に対して更に多くの冷却水をシャワリングすることができる。すなわち、Al合金製鋳造品10の製品11の幅方向中間部が、鋳型本体部2と接している幅方向両端部よりも冷却され難いので、第1面10aの幅方向中間部に多くの冷却水をシャワリングすることで、製品11全体を均一に冷却することができるようになる。尚、製品側ノズル列が4列以上の場合には、両端に位置する製品側ノズル列上の製品側ノズル24に供給される冷却水圧に比べて、他の製品側ノズル列上の製品側ノズル24に供給される冷却水圧を大きく設定するようにすればよい。
【0059】
3列の押湯部側ノズル列の冷却水圧は、主として連結部13(押湯供給路7)の位置によって決まり、必ずしも、両端に位置する押湯部側ノズル列上の押湯部側ノズル27に供給される冷却水圧に比べて、中央の押湯部側ノズル列上の押湯部側ノズル27に供給される冷却水圧を大きく設定する必要はない。
【0060】
尚、複数の製品側ノズル24を、列上に配置する場合であっても列上に配置しない場合であっても、エア供給部42及び冷却水供給部43は、各製品側ノズル24毎に設けるようにしてもよい(押湯部側供給装置71のエア供給部及び冷却水供給部についても同様)。或いは、上記同じ列上の製品側ノズル24へのエア供給部42及び冷却水供給部43と同様に、エア圧が同じでかつ冷却水圧が同じである製品側ノズル24へのエア供給部42及び冷却水供給部43を、共通に構成してもよい(押湯部側供給装置71のエア供給部及び冷却水供給部についても同様)。
【0061】
上記製品側ノズル24及び上記押湯部側ノズル27からのミスト状の冷却水の粒径は、30μm以上50μm以下であることが好ましい。すなわち、ミスト状の冷却水の粒径が30μmよりも小さいと、ミスト状の冷却水が空気中で気化し易くなり、ミスト状の冷却水がAl合金製鋳造品10の第1面10a又は第2面10bに接触する前に気化する可能性がある一方、上記粒径が50μmよりも大きいと、ミスト状の冷却水がAl合金製鋳造品10の第1面10a又は第2面10bに接触しても気化するまでに時間がかかる可能性がある。そこで、上記粒径を30μm以上50μm以下とすることで、ミスト状の冷却水がAl合金製鋳造品10の第1面10a又は第2面10bに接触しかつ該接触後直ぐに気化するようになり、この結果、Al合金製鋳造品10を効率良く冷却することができるようになる。
【0062】
製品側ノズル24からのミスト状の冷却水の粒径は、製品側ノズル24に供給されるエア圧及び冷却水圧の調整により、容易に調整することができ、押湯部側ノズル27からのミスト状の冷却水の粒径も、同様に、押湯部側ノズル27に供給されるエア圧及び冷却水圧の調整により容易に調整することができる。
【0063】
冷却装置21は、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリング及び押湯部側シャワリング装置26によるAl合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングの終了後に、第2閉塞部分離装置25により第2閉塞部4を鋳型本体部2の第2開放部2dを閉塞した状態に戻すことで、Al合金製鋳造品10(特に製品11)に対して、該Al合金製鋳造品10の残留熱により時効処理を行うように構成されている。この残留熱による時効処理を行うために、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリング及び押湯部側シャワリング装置26によるAl合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングの終了時に、製品11の押湯部12側の面の温度が、製品11の押湯部12側とは反対側の面(第1面10a)の温度よりも所定温度(例えば150℃〜200℃)だけ高くなるようにする。このようにするには、基本的には、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリングを先に開始し、その開始後でかつ終了前に、押湯部側シャワリング装置27によるAl合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングを開始する。本実施形態では、第1面10aへのシャワリング及び第2面10bへのシャワリングは、同時に終了するが、これには限られず、第1面10aへのシャワリング及び第2面10bへのシャワリングの終了時に、製品11の押湯部12側の面の温度が、製品11の押湯部12側とは反対側の面(第1面10a)の温度よりも上記所定温度だけ高くなるようにすればよい。
【0064】
次に、上記鋳型1により鋳造されたAl合金製鋳造品10に対して、冷却装置21により冷却する方法を説明する。
【0065】
図4に示すように、Al合金製鋳造品10の鋳造後に、第1閉塞部分離装置22により、鋳型1の第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離して鋳型本体部2の第1開放部2cを通してAl合金製鋳造品10の第1面10aを露出させる。
【0066】
その後、上記ロボット装置により、第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離した状態の鋳型1を、シャワリングルーム31の外側からシャワリングルーム31内の上記セット台にセットする。この後、シャッター33を閉状態にして、シャワリングルーム31内を略密閉状態にする。
【0067】
第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離した状態の鋳型1をセット台にセットした後、該鋳型1の第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離してからの経過時間が、予め設定された設定時間になるのを待つ。この設定時間は、製品側シャワリング装置23によるAl合金製鋳造品10の第1面10aへのシャワリングの開始時における該第1面10aの温度(Al合金製鋳造品10の冷却開始温度)を、Al合金製鋳造品10の製品11を焼入れするのに適切な温度(例えば500℃程度)にするためである。すなわち、第1閉塞部3が金型で構成されているので、Al合金溶湯9の凝固時にその熱が第1閉塞部3に奪われて、この結果、Al合金製鋳造品10の鋳造完了時には、製品11の押湯部12側とは反対側の部分(上記第1面10aを含む)の温度が、上記適切な温度よりも低下する(
図12参照)。一方、Al合金製鋳造品10の鋳造完了時における押湯部12又は製品11の押湯部12側の部分の温度は、上記適切な温度よりも高い。そして、第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離すると(
図12の時刻t1の時点)、第1面10aからの放熱が少なくなり、押湯部12又は製品11の押湯部12側の部分の熱が、製品11の押湯部12側とは反対側の部分に伝わることで、Al合金製鋳造品の製品の押湯部側とは反対側の部分(上記第1面を含む)の温度が、上記適切な温度になる。尚、
図12は、上記製品11(シリンダヘッド)の押湯部12側とは反対側の面(第1面10a)の中央部の温度及び製品11の押湯部12側の面の中央部の温度の変化の測定結果を示すグラフである。
【0068】
第1閉塞部3を鋳型本体部2から分離してからの経過時間が、上記設定時間になると(
図12の時刻t2の時点)、
図9に示すように、製品側シャワリング装置23を作動させて、Al合金製鋳造品10の第1面10aに対して製品側ノズル24によりミスト状の冷却用液体をシャワリングし、これにより、Al合金製鋳造品10を焼入れ冷却する。この第1面10aへのシャワリングにより、第1面10aを含めて製品11の押湯部12側とは反対側の部分の温度は急冷される(
図12参照)。
【0069】
上記第1面10aへのシャワリングの開始後に、第2閉塞部分離装置25により、第2閉塞部4を鋳型本体部2から分離して鋳型本体部2の第2開放部2dを通してAl合金製鋳造品10の第2面10bを露出させる。この第2閉塞部4の鋳型本体部2からの分離は、該分離後に行う、Al合金製鋳造品10の第2面10bへのシャワリングの開始のタイミングに間に合うように行う。
【0070】
続いて、
図10に示すように、押湯部側シャワリング装置26を作動させて、第2閉塞部4の分離により露出した、Al合金製鋳造品10の第2面10bに対して押湯部側ノズル27によりミスト状の冷却用液体をシャワリングする。この第2面10bへのシャワリングの開始は、上記第1面10aへのシャワリングの開始後でかつ終了前に行う。具体的には、上記第1面10aへのシャワリングにより製品11の押湯部12側とは反対側の部分の温度が急激に低下する状態からほぼ安定する状態に切り換わる(当該温度の低下速度が第1所定速度よりも大きい状態から、第1所定速度よりも小さい第2所定速度以下の状態に切り換わる)タイミング(
図12の時刻t3の時点)で行うことが好ましい。こうして上記第2面10bへのシャワリングにより、上記第1面10aへのシャワリングと共にAl合金製鋳造品10(特に製品11)を焼入れ冷却する。
【0071】
上記第1面10aへのシャワリングにより、Al合金製鋳造品10の製品11は、押湯部12側とは反対側の面(第1面10a)から押湯部12側に向かって冷却されていく。この第1面10aへのシャワリングのみでは、製品11の押湯部12側の部分は、押湯部12の熱により、製品11の押湯部12側とは反対側の部分に比べて冷却され難く、この結果、製品11の押湯部12側とは反対側と押湯部12側とでは温度が均一になり難い。しかし、本実施形態では、上記第2面10bへのシャワリングにより、押湯部12を介して、製品11の押湯部12側の部分も良好に冷却される。この結果、Al合金製鋳造品10の製品11全体において強度バラツキを低減することができるとともに、製品11の歪みを小さくすることができて、製品11において同じ寸法とすべき複数の部位(特に4つの凹部11a)間の寸法バラツキも低減することができる。
【0072】
上記第2面10bへのシャワリングの開始から第1所定時間経過した時点(
図12の時刻t4の時点)で、上記第1面10aへのシャワリング及び上記第2面10bへのシャワリングを同時に終了する。上記第1所定時間は、製品11の押湯部12側の面の温度が、上記第1面10aの温度よりも上記所定温度だけ高くなるような時間である。
【0073】
上記第1面10a及び上記第2面10bへのシャワリングの終了後、第2閉塞部分離装置25を直ちに作動させて、第2閉塞部4を鋳型本体部2の第2開放部2dを閉塞した状態に戻し(
図11参照)、しかる後、シャワリングルーム31のシャッター33を開状態にし、それから、上記ロボット装置により、第2閉塞部4により鋳型本体部2の第2開放部2dが閉塞された鋳型本体部2を、シャワリングルーム31の外側に取り出す。
【0074】
続いて、上記第2開放部2dの閉塞状態を第2所定時間継続させて、Al合金製鋳造品10(製品11)の時効処理を行う。第2閉塞部4による鋳型本体部2の第2開放部2dの閉塞状態では、押湯部12又は製品11の押湯部12側の部分の残留熱が鋳型本体部2の外側に逃げずに、製品11の押湯部12側とは反対側の部分へ良好に伝えられる。この結果、製品11の押湯部12側とは反対側の部分の温度が上昇してAl合金製鋳造品10全体(特に製品11全体)が略同じ温度になり(
図12の時刻t4以降を参照)、この状態でAl合金製鋳造品10全体(製品11全体)を略均一に時効処理することができる。したがって、時効処理されたAl合金製鋳造品10の製品11全体において強度バラツキをより一層低減することができるとともに、製品11において同じ寸法とすべき複数の部位(特に4つの凹部11a)間の寸法バラツキもより一層低減することができる。
【0075】
ここで、上記時効処理の際、鋳型本体部2の第1開放部2cが開放されていたとしても、Al合金製鋳造品10の第1面10aからの放熱は少なく、押湯部12又は製品11の押湯部12側の部分の残留熱が製品11の押湯部12側とは反対側の部分に伝えられることで、Al合金製鋳造品10(製品11)の時効処理を適切に行うことができる。特に、本実施形態のように第1閉塞部3を金型で構成した場合において、鋳型本体部2の第1開放部2cを第1閉塞部3で再度閉塞したとすると、製品11の押湯部12側とは反対側の部分に伝えられた熱が第1閉塞部3に逃げ易く、しかも、金型で構成された第1閉塞部3は熱変形し易いので、第1開放部2cを確実に閉塞できない可能性がある。これらのことを考慮すると、鋳型本体部2の第1開放部2cを開放しておくのがよい。尚、鋳型本体部2及び第2閉塞部4を砂型で構成することにより、Al合金製鋳造品10の保温性が良好になり、上記時効処理を良好に行うことができる。
【0076】
上記時効処理の終了後、砂型で構成された鋳型本体部2及び第2閉塞部4を崩壊してAl合金製鋳造品10を取り出す。そして、Al合金製鋳造品10に付着している砂を取り除いた後、押湯部12及び連結部13を製品11から切り離し、最後に製品11の仕上げ処理(バリ取り等)を行う。
【0077】
したがって、本実施形態では、Al合金製鋳造品10の製品11全体において強度バラツキを低減することができるとともに、製品11の歪みを小さくすることができて、製品11において同じ寸法とすべき複数の部位(特に4つの凹部11a)間の寸法バラツキも低減することができる。しかも、焼入れ冷却されたAl合金製鋳造品10を時効処理するために、炉に入れる等して加熱する必要はなく、Al合金製鋳造品の時効処理を容易に行うことができる。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、Al合金製鋳造品10の製品11をシリンダヘッドとしたが、これには限らず、例えばシリンダブロックやその他のAl合金製のものであってもよい。
【0080】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0081】
ここで、上記実施形態と同様にして得られたシリンダヘッド(以下、試料1という)において、その燃焼室側の面における第1気筒〜第4気筒に対応する部位(凹部)の硬さ(詳しくは、ブリネル硬さ(以下、同じ))を測定した。また、比較のために、鋳造後に第1閉塞部を鋳型本体部から分離した鋳型を、貯留水中に水没させる方法で冷却したシリンダヘッド(以下、試料2という)において、その燃焼室側の面における第1気筒〜第3気筒に対応する部位の硬さを測定した。試料2は、水没による焼入れ後に、炉に入れて時効処理を行ったものである。また、試料2は、試料1と同様の鋳型で鋳造したものである。
【0082】
上記測定結果を
図13に示す。
図13では、試料1の燃焼室側の面における第1気筒〜第4気筒に対応する部位を、それぞれ#1〜#4と記載し、試料2の燃焼室側の面における第1気筒〜第3気筒に対応する部位を、それぞれ#1〜#3と記載している。試料1では、燃焼室側の面における4つの気筒にそれぞれ対応する部位間で、硬さのバラツキが小さく、延いては強度バラツキが小さいと言える。
【0083】
続いて、試料1及び試料2におけるヘッドカバー側の面の中央部の硬さを測定した。この測定結果を
図14に示す。試料1では、ヘッドカバー側の面の硬さは、燃焼室側の面の硬さと略同じであり、試料1全体において強度バラツキが小さいと言える。一方、試料2では、水中に水没されているときに、ヘッドカバー側が水と接触しないために、十分に焼入れがなされず、硬さが低くなっている。したがって、燃焼室側の面のみに対してシャワリングしたとしても、ヘッドカバー側の面に対してシャワリングしない限り、試料2と同様の結果になると推測される。
【0084】
次いで、試料1における上記4つの凹部の最大深さを測定し、その4つの凹部の最大深さの測定値のうちの最大値と最小値との差δを求めた。また、比較のために、試料2における上記4つの凹部の最大深さの測定値のうちの最大値と最小値との差δを求めた。この結果を
図15に示す。試料1では、上記差δは極めて小さく、複数の凹部間の寸法バラツキがかなり小さいことが分かる。
【0085】
次に、製品側シャワリング装置によるAl合金製鋳造品の第1面へのシャワリング開始時における該第1面の温度(第1面の焼入れ開始温度)を変えて、該焼入れ開始温度毎に、該シャワリング後におけるAl合金製鋳造品の製品の押湯部側とは反対側の部分(第1面側の部分)の引張強度及び耐力を求めた。ここでも、上記製品は、上記実施形態と同様のシリンダヘッドである。
【0086】
上記第1面の焼入れ開始温度と上記製品の押湯部側とは反対側の部分の引張強度及び耐力との関係を
図16に示す。この結果、第1面の焼入れ開始温度を480℃〜500℃程度に設定すれば、シリンダヘッドとして所望の強度を確保することができる。