(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御トランジスタが、前記主面と平行な方向にp型領域とn型領域が隣接する構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
前記層間絶縁膜上に配置され、前記層間絶縁膜に設けられた開口部で前記制御トランジスタのソース電極と前記p型半導体層とに接続する配線層を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の半導体発光装置。
前記発光領域上方で前記積層体と前記層間絶縁膜間に配置され、前記p型半導体層と接する透明電極を更に備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の等価回路図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【
図5】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【
図6】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【
図7】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【
図8】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【
図9】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【
図10】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【
図11】本発明の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その8)。
【
図12】本発明の実施形態の変形例に係る半導体発光装置の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施形態に係る半導体発光装置1は、
図1に示すように、主面上に発光領域101と駆動装置領域102が定義された半導体基板10と、半導体基板10の主面上に配置された、n型半導体層21、活性層22及びp型半導体層23がこの順で積層された構造を有する積層体20と、積層体20上に配置された層間絶縁膜40と、積層体20の少なくとも一部及び層間絶縁膜40を介して駆動装置領域102の上方に配置された制御トランジスタ60と、層間絶縁膜40内で制御トランジスタ60と積層体20との間に配置された遮光膜50とを備える。積層体20は、半導体基板10の主面上に発光領域101から駆動装置領域102に渡って連続的に配置されている。n型半導体層21、活性層22及びp型半導体層23は、エピタキシャル成長によって形成された窒化物半導体からなる。
【0012】
層間絶縁膜40は、発光領域101上方から駆動装置領域102上方に渡り連続的に配置され、制御トランジスタ60の周囲は層間絶縁膜40により覆われている。遮光膜50は、層間絶縁膜40内に埋め込まれている。
図1に示した例では、遮光膜50は第1の遮光層51と第2の遮光層52を含む。後述するように、第1の遮光層51と第2の遮光層52は異なる工程で形成される。
【0013】
半導体発光装置1は、発光領域101の上方で積層体20と層間絶縁膜40間に配置され、p型半導体層23と接する透明電極30を更に備える。層間絶縁膜40上に配置されたアノード電極111は、層間絶縁膜40に形成した開口部において透明電極30と電気的に接続する。アノード電極111から、透明電極30に正孔が供給される。また、半導体基板10の積層体20が配置された主面と対向する裏面上に、カソード電極112が配置されている。
【0014】
カソード電極112から半導体基板10及びn型半導体層21を介して供給された電子と、アノード電極111から透明電極30及びp型半導体層23を介して供給された正孔とが、活性層22で再結合して光を発生する。つまり、発光領域101上に、出力光Lを発生する半導体発光素子100が形成されている。積層体20で発生した出力光Lは、透明電極30及び層間絶縁膜40を透過して、半導体発光装置1の外部に出力される。
【0015】
制御トランジスタ60は、積層体20を膜厚方向に流れる電流を制御して、半導体発光素子100での発光を制御する駆動装置として機能する。具体的には、制御トランジスタ60は、n型半導体層21を介した活性層22への電子の注入とp型半導体層23を介した活性層22への正孔の注入とを制御することによって、積層体20での発光を制御する。つまり、アノード電極111とカソード電極112間に所定の電圧を印加することにより、半導体発光素子100を駆動する。
【0016】
制御トランジスタ60には、主面と平行な方向である横方向にp型領域とn型領域が隣接し、且つ、積層体20と対向する下面に絶縁膜が配置される構造のトランジスタが使用される。制御トランジスタ60では、横方向に主電流が流れる。
【0017】
例えば薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)構造などの接合型電界効果トランジスタを、制御トランジスタ60に採用可能である。
図1に示した制御トランジスタ60は、第1のn型領域611、p型領域612及び第2のn型領域613がこの順で横方向に配置されたnpn構造61を有する。そして、少なくともp型領域612の全体を覆うようにnpn構造61上にゲート絶縁膜62が配置され、ゲート絶縁膜62を介してp型領域612と対向するようにゲート領域63が配置されている。なお、
図1に示した制御トランジスタ60では、第1のn型領域611がドレイン領域、第2のn型領域613がソース領域であるとする。npn構造61の下方には、層間絶縁膜40の膜厚方向の一部、及び積層体20の膜厚方向の一部が配置されている。
【0018】
層間絶縁膜40上に、ドレイン電極601、ソース電極602及びゲート電極603が配置されている。そして、第1のn型領域611がドレイン電極601と接続され、第2のn型領域613がソース電極602と接続され、ゲート領域63がゲート電極603と接続されている。制御トランジスタ60の各領域と各電極は、層間絶縁膜40に設けられた開口部及び第2の遮光層52に設けられた開口部においてそれぞれ接続されている。更に、
図1に示したように、制御トランジスタ60のソース電極602と半導体発光素子100のアノード電極111とが、層間絶縁膜40上に配置された配線層71によって接続されている。
【0019】
図1に示した半導体基板10は、シリコン基板11上にバッファ層12が配置され、積層体20がバッファ層12上に配置された構造である。ただし、バッファ層12を省略してもよい。
【0020】
バッファ層12には、例えば、Al
xM
yGa
1-x-yN(Mはインジウム(In)又はボロン(B)、0<x≦1、0≦y≦1、x+y=1)からなる第1のサブレイヤーと、AlaMbGa1-a-bN(MはIn又はB、0≦a<1、0≦b≦1、a+b=1、a<x)からなる第2のサブレイヤーとを交互に積層した多層構造を採用可能である。例えば、第1のサブレイヤーは膜厚0.5〜5nm程度の窒化アルミニウム(AlN)膜、第2のサブレイヤーは膜厚0.5〜200nm程度の窒化ガリウム(GaN)膜である。
【0021】
n型半導体層21は、例えばn型ドーパントとしてシリコン(Si)がドープされた膜厚5μm程度のGaN膜であり、活性層22に電子を供給する。p型半導体層23は、例えばp型ドーパントがドープされた膜厚0.2μm程度のGaN膜であり、活性層22に正孔(ホール)を供給する。p型ドーパントは、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、炭素(C)等である。
【0022】
活性層22は、例えばInGaN膜とGaN膜を交互に積層した多重量子井戸(MQW)構造を有する。InGaN膜とGaN膜の膜厚は、それぞれ数μm〜数十μm程度である。
【0023】
透明電極30及び層間絶縁膜40は、活性層22で発生する光が透過する材料からなる。透明電極30には、例えば酸化インジウム・スズ(ITO)膜などが採用可能である。ITO膜の膜厚は、50nm〜500nm程度である。層間絶縁膜40には、例えば膜厚150nm〜1500nm程度の酸化シリコン(SiO
2)膜などが採用可能である。
【0024】
遮光膜50には、例えばチタン(Ti)やタングステン(W)などが好適に使用される。半導体発光素子100から制御トランジスタ60方向に出射された光は、遮光膜50によって遮光され、制御トランジスタ60に光が当たらないようにしている。
図1に示すように、遮光膜50は、制御トランジスタ60の積層体20と対向する側面及び底面に配置されている。遮光膜50は層間絶縁膜40の内部に埋め込まれているため、遮光膜50が長時間大気や純水等にさらされることがほとんどない。このため、水蒸気などによる遮光膜50の劣化を抑制できる。
【0025】
アノード電極111及びカソード電極112には、例えば金(Au)などが採用可能である。
【0026】
図2に、アノード電極111の側からみた半導体発光装置1の平面図を示す。
図1は、
図2のI−I方向に沿った断面図である。
図2において、アノード電極111、ドレイン電極601、ソース電極602及びゲート電極603の内側に破線で示した領域が、各電極を透過してみた層間絶縁膜40の開口部である。
【0027】
図2に示すように、発光領域101の上方の全体に透明電極30が配置されている。また、透明電極30の全域に電流が流れるように、アノード電極111が透明電極30の外周に沿って配置されている。これにより、活性層22を流れる電流が均一化され、活性層22の広い範囲で光を発生させることができる。
【0028】
図3に、半導体発光装置1の等価回路図を示す。既に述べたように、制御トランジスタ60のソース電極602と半導体発光素子100のアノード電極111とが配線層71よって接続されている。半導体発光素子100のカソード電極112は接地されている。そして、制御トランジスタ60のドレイン電極601に所定のドレイン電圧V
DDを印加した状態で、ゲート電極603とソース電極602間にしきい値電圧以上のゲート電圧V
GSを印加することにより、制御トランジスタ60がオンする。その結果、半導体発光素子100のアノード電極111とカソード電極112間に電流が流れ、半導体発光素子100が発光する。例えば、ドレイン電圧V
DDは10V程度、ゲート電圧V
GSは4V程度である。制御トランジスタ60をオフすることにより、半導体発光素子100の発光は停止する。
【0029】
以上に説明したように、実施形態に係る半導体発光装置1では、半導体発光素子100を構成するエピタキシャル成長膜である積層体20上に、半導体発光素子100の駆動装置である制御トランジスタ60が配置される。この制御トランジスタ60には、横方向に主電流(ドレイン電流)が流れ、積層体20と対向する下面に絶縁膜が配置される構造を有する、例えばTFTなどの接合型電界効果トランジスタなどが、制御トランジスタ60に好適に使用される。このため、半導体発光装置1では、寄生トランジスタが発生しない。したがって、ゲート電圧V
GSで制御できない電流が流れたり、半導体基板10に電流を流す際にFET動作をしないなどの問題が発生しない。
【0030】
また、制御トランジスタ60を半導体発光素子100の一部である積層体20上に配置するため、シリコン基板11の他の領域に制御トランジスタ60を配置する場合に比べて、半導体発光装置1の面積を小さくできる。
【0031】
更に、遮光膜50が層間絶縁膜40の内部に形成され、半導体発光素子100から出射された光が当たらないように、遮光膜50によって制御トランジスタ60を覆っている。遮光膜50を層間絶縁膜40に埋め込むことにより、遮光と同時に制御トランジスタ60と半導体発光素子100間の絶縁も実現される。遮光膜50のための余分な領域が不要であるため、半導体発光装置1の面積の増大が抑制される。
【0032】
図4〜
図11を参照して、
図1に示した半導体発光装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体発光装置1の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0033】
まず、シリコン基板11上にバッファ層12を形成して半導体基板10を構成する。バッファ層12上に、n型半導体層21、活性層22及びp型半導体層23を順次にエピタキシャル成長法により積層して、
図4に示すように積層体20を形成する。次いで、
図5に示すように、ドライエッチング法などを用いて積層体20及びバッファ層12をチップサイズにエッチングし、素子分離を行う。
【0034】
図6に示すように、制御トランジスタ60を形成する領域において積層体20の上部の一部をエッチング除去する。
図6に示した例では、p型半導体層23と活性層22をすべて除去し、n型半導体層21の上部を除去している。なお、積層体20の除去した部分のエピタキシャル膜の側面には、層間絶縁膜40、配線層71、第1の遮光層51及び第2の遮光層52が形成される。このため、積層体20のエッチングにより露出された側面と上面との間には45度程度のテーパをつけることが好ましい。つまり、駆動装置領域102から発光領域101に向かって積層体20の膜厚が徐々に厚くなっている。
【0035】
図7に示すように、発光領域101のp型半導体層23上に透明電極30を形成した後、第1の絶縁層41を積層体20の全面に形成する。ついで、駆動装置領域102の第1の絶縁層41上に第1の遮光層51を形成する。なお、第1の遮光層51は、発光領域101以外の領域に配置され、発光領域101と駆動装置領域102間の境界である積層体20の側面上にも形成される。これにより、制御トランジスタ60に側面方向から入射される光が遮光される。
【0036】
全面に第2の絶縁層42を形成した後、
図8に示すように、駆動装置領域102の第2の絶縁層42上に制御トランジスタ60を形成する。例えば、npn構造61を形成するためには、350℃で熱処理するプラズマ化学気相成長(PE−CVD)法や650℃で熱処理する減圧化学気相成長(LP−CVD)法などを用いてポリシリコン層を形成する。LP−CVD法で行う650℃の加熱処理はp型不純物のマグネシウム(Mg)を活性化するにも有効なので、LP−CVD法でポリシリコン層を形成する方法について説明する。即ち、ポリシリコン層成長後、シリコン(Si)注入と、例えば600℃のレーザアニール処理を実施して、結晶粒の大きいアモルファスSiを形成する。ここに不純物のイオン注入を行って、第1のn型領域611、p型領域612及び第2のn型領域613を形成する。その後、ゲート絶縁膜62及びゲート領域63を形成する。ゲート領域63には、例えば不純物イオンが注入されたポリシリコン膜などを採用可能である。
【0037】
次いで、
図9に示すように、第3の絶縁層43を全面に形成した後、第2の遮光層52を駆動装置領域102の第3の絶縁層43上に形成する。更に、ドレイン領域である第1のn型領域611、ソース領域である第2のn型領域613、及びゲート領域63と、ドレイン電極601、ソース電極602、及びゲート電極603とをそれぞれ接続するための開口部を、第2の遮光層52に形成する。
【0038】
その後、
図10に示すように、第4の絶縁層44を全面に形成する。第1の絶縁層41〜第4の絶縁層44によって、
図1に示した層間絶縁膜40が構成される。そして、第1のn型領域611、第2のn型領域613、及びゲート領域63と、ドレイン電極601、ソース電極602、及びゲート電極603とをそれぞれ接続するための開口部を層間絶縁膜40に形成する。このとき、アノード電極111と透明電極30とを接続するための開口部も、層間絶縁膜40に形成する。
【0039】
次に、
図11に示すように、層間絶縁膜40及び第2の遮光層52に形成した開口部を埋め込むようにして、ドレイン電極601、ソース電極602、ゲート電極603、及びアノード電極111を形成する。配線層71も同時に形成される。その後、半導体基板10の裏面上にカソード電極112を形成して、
図1に示した半導体発光装置1が完成する。
【0040】
上記に説明した半導体発光装置1の製造方法では、エピタキシャル成長膜である積層体20をドライエッチングによってチップサイズにエッチングして、素子分離が行われる。制御トランジスタ60はエピタキシャル成長工程後に形成されるが、制御トランジスタ60の形成工程は650℃以下で行われ、半導体発光素子100の各層の成長温度よりも低温の工程である。このため、制御トランジスタ60の形成工程がエピタキシャル膜に悪影響を及ぼすことはほとんどない。
【0041】
なお、ゲート電極用の膜をエピタキシャル成長工程前に形成する場合には、その後の熱処理やエッチング処理によるダメージ、応力などによって、ゲート電極用の膜が破損するおそれがある。また、しきい値電圧Vthが変動する可能性がある。
【0042】
しかしながら、本発明の実施形態に係る半導体発光装置1の製造方法では、エピタキシャル成長工程後にゲート電極用の膜を形成する。このため、エピタキシャル成長時の応力によるゲート電極の膜の破損やしきい値電圧Vthの変動などを抑制できる。
【0043】
<変形例>
図1では、積層体20の発光領域101上における膜厚が、駆動装置領域102上における膜厚よりも厚い例を示した。
図1に示した構造によれば、発光領域101と駆動装置領域102における半導体発光装置1の高さを同等にすることができる。
【0044】
しかし、例えば
図12に示すように、制御トランジスタ60が配置される駆動装置領域102の積層体20の上部の一部を除去せずに、p型半導体層23上に制御トランジスタ60を配置してもよい。これにより、半導体発光装置1の製造工程を短縮することができる。
【0045】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。