特許第5935667号(P5935667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935667
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】車両用カバーの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20160602BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
   !B60H1/00 102E
   !B60H1/00 102L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-257643(P2012-257643)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104806(P2014-104806A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年4月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年7月2日 名古屋トヨペット株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西本 岳史
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−171482(JP,A)
【文献】 特開平10−217982(JP,A)
【文献】 特開2001−260634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられたダクトと、
ダクトが挿入される孔と上端において車体に取り付けられる端部とを有する可撓性を有するシート状のカバーと、を備え、
ダクトには、同ダクトと一体形成されてカバーの前記孔の下側に位置する下側縁を支持する支持壁が設けられるとともに、前記ダクトの下壁には、凹溝が形成されており、
前記支持壁は前側支持壁と後側支持壁とを有する前記凹溝によって構成され、これら支持壁は共に下壁から斜め前上方に向けて延びている、
車両用カバーの支持構造。
【請求項2】
カバーの前記孔の下側縁が分断されている、
請求項1に記載の車両用カバーの支持構造。
【請求項3】
前記下壁の一部には、後側支持壁の上端から斜め前下方に向けて延びる開放壁が形成されている、
請求項1に記載の車両用カバーの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カバーの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には一人乗りの電気自動車車両が開示されている。この車両にはフロントパネルやフロントガラスが設けられており、これらによって車室内への風や水の浸入が抑制されるようになっている。
【0003】
また、車体前部に車内へ空気を取り入れるためのダクトが設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―30706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした車両においてはフロントパネルやフロントガラスが設けられてはいるものの、これらの隙間等を通じて車内へ水が浸入するおそれがある。そこで、これらフロントガラスやフロントパネルの内側にカバーを設けることで水の浸入を抑制することが考えられる。しかしながら、前述したようなダクトが設けられている車両においては、前後に延びるダクトが邪魔になるため、車体に対してカバーを組み付けることが困難なものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、車体に対してカバーを容易に組み付けることができ、同カバーによって車内への水の浸入を好適に抑制することのできる車両用カバーの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための車両用カバーの支持構造は、車体に取り付けられたダクトと、ダクトが挿入される孔と上端において車体に取り付けられる端部とを有する可撓性を有するシート状のカバーと、を備え、ダクトには、同ダクトと一体形成されてカバーの前記孔の下側に位置する下側縁を支持する支持壁が設けられるとともに、前記ダクトの下壁には、凹溝が形成されており、前記支持壁は前側支持壁と後側支持壁とを有する前記凹溝によって構成され、これら支持壁は共に下壁から斜め前上方に向けて延びている
【0008】
同構成によれば、カバーが弾性変形されることで孔を広げることができるため、ダクトに対してカバーを容易に外嵌させることができる。
また、同構成によれば、ダクトの支持壁によってカバーの下側縁が支持されるため、カバーの下側縁が倒れ込まなくなる。このため、孔の下側縁とダクトとの間に隙間が生じにくくなり、下側縁とダクトとの間を通じた車内への水の浸入が抑制される。
【0009】
従って、本発明によれば、車体に対してカバーを容易に組み付けることができ、同カバーによって車内への水の浸入を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における車両の斜視構造を示す斜視図。
図2】同実施形態における車両について、外装パネルの非装着時におけるダクト及びカバーを中心とした斜視構造を示す斜視図。
図3】同実施形態のカバーを構成するカバー本体と補強部材との斜視構造を併せ示す分解斜視図。
図4】同実施形態のカバーの正面構造を示す正面図。
図5図4の5−5線に対応する位置でのカバー及びダクトを中心とした車両の断面構造を示す断面図。
図6図4の6−6線に対応する位置でのカバー及びダクトを中心とした車両の断面構造を示す断面図。
図7図4の7−7線に対応する位置でのカバー及びダクトを中心とした車両の断面構造を示す断面図。
図8】比較例におけるカバー及びダクトを中心とした車両の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図7を参照して、車両用カバーの支持構造を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、一人乗りの電気自動車の車体10にはルーフモジュール15が取り付けられており、このルーフモジュール15の開口にはフロントガラス16が嵌め込まれている。また、車体10においてルーフモジュール15の前方には車体前部を覆うフロントパネル11が取り付けられている。フロントパネル11の上部には左右一対の空気孔群12が形成されている。
【0012】
図5図7に示すように、車体10においてフロントガラス16の前部とフロントパネル11の後部との継ぎ目の内側には前後方向に延びる板状のカウル18が設けられている。
【0013】
また、図5図7に示すように、車体10においてカウル18の下方には車幅方向に沿って延びるリンフォース19が設けられている。
図2に示すように、車体10には、各空気孔群12に対応して左右一対のダクト20が取り付けられている。各ダクト20は前方に向けて開口する吸入口21を有するとともに同吸入口21から後方に向けて延びている。また、車体10には車体前部の隙間を覆うためのシート状のカバー30が取り付けられており、同カバー30は同カバー30の一対の孔においてこれら一対のダクト20に外嵌されている。
【0014】
図3及び図4に示すように、カバー30は、ゴム材料からなり可撓性を有するカバー本体31と、同ゴム材料よりも硬質の合成樹脂材料、例えばポリプロピレンからなるとともにカバー本体31に取り付けられる補強部材36とを備えている。
【0015】
カバー本体31は車幅方向に対して長い長尺状をなしており、上記一対のダクト20が挿入される一対の孔34が形成されている。カバー本体31の上端32には補強部材36を取り付けるための複数の取付孔31aが形成されている。また、カバー本体31の上端32及び下端33には複数の取付孔32a、33aが形成されている。
【0016】
また、カバー本体31における各孔34よりも下側の部位全体、すなわち下側縁35から下端33までの部位は上下に延びる分断線Lに沿って左右に分断されている。
補強部材36は車幅方向に対して長い長尺状をなしており、その内側面には複数の爪部37が突設されている。これら爪部37がカバー本体31の取付孔31aに係合されることで、図4に示すように、カバー本体31に対して補強部材36が取り付けられる。また、補強部材36の上端面には左右一対の取付片38が立設されており、これら取付片38には取付孔38aが形成されている。また、補強部材36にはカバー本体31の取付孔32aに対応する位置に取付孔39aが形成されている。
【0017】
図5及び図7に示すように、カウル18の前端部は下方に屈曲しており、同前端部には取付孔18aが形成されている。
図5に示すように、カウル18の取付孔18aに対して補強部材36、カバー本体31の各取付孔39a、32aを対応させた状態でこれらの取付孔39a、32a、18aにはクリップ41が前側から挿入されている。また、図7に示すように、補強部材36の取付片38及びカウル18の各取付孔38a、18aにはクリップ41が前側から挿入されている。このようにしてカバー30の上端がカウル18に取り付けられている。
【0018】
図5及び図6に示すように、同リンフォース19の前面には取付孔19aが形成されている。また、カバー本体31及びリンフォース19の各取付孔33a、19aにクリップ41が前側から挿入されることでカバー30の下端部がリンフォース19に取り付けられている。
【0019】
図6及び図7に示すように、ダクト20の下壁25には車幅方向に沿って凹溝26が一体形成されている。この凹溝26は、前側の傾斜面である前側支持壁26aと後側の傾斜面である後側支持壁26bとから形成されている。これら支持壁26a、26bは共に下壁25から斜め前上方に延びている。
【0020】
ここで、カバー本体31の孔34の上側縁34aはダクト20の上壁24に当接している。一方、カバー本体31の孔34の下側縁35の後側の面はダクト20の後側支持壁26bに当接している。
【0021】
図7に示すように、ダクト20の下壁25の一部には、前側支持壁26aに代えて、後側支持壁26bの上端から斜め前下方に向けて延びる開放壁26cが設けられている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0022】
シート状のカバー30によって車体前部の隙間が覆われることから、同カバー30によって車内への水の浸入が抑制される。ここで、前後に延びるダクト20がカバー30の組み付けの邪魔になる。この点、本実施形態では、カバー30がゴム製の可撓性を有するものとされ、ダクト20が挿入される孔34が形成され、更に孔34の下側の部位全体が左右に分断されているため、カバー30が弾性変形されることで孔34を広げることができる。従って、ダクト20に対してカバー30を容易に外嵌させることができ、車体10に対してカバー30を容易に組み付けることができる。
【0023】
ところで、カバー30は可撓性を有するものであり、カバー30における孔34の下側縁35が分断されている。そのため、図8に示す比較例のように、例えば車両の振動がカバー130に作用すると、下側縁135が自重に抗することができずに倒れ込むおそれがある。その結果、カバー130の下側縁135とダクト120との間に隙間が生じ、これら下側縁135とダクト120との間を通じて車内へ水が浸入するおそれがある。この点、本実施形態によれば、ダクト20の各支持壁26a,26bによってカバー30の下側縁35が前側及び後側から支持されるため、カバー30の下側縁35が前方及び後方に倒れ込まなくなる。このため、下側縁35とダクト20との間に隙間が生じにくくなり、下側縁35とダクト20との間を通じた車内への水の浸入が抑制される。
【0024】
以上説明した本実施形態に係る車両用カバーの支持構造によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)カバー30は可撓性を有するシート状のものであり、ダクト20が挿入される孔34と車体10に取り付けられる上端及び下端とを有している。また、カバー30の孔34の下側縁35が分断されている。こうした構成によれば、カバー30が弾性変形されることで孔34を広げることができるため、ダクト20に対してカバー30を容易に外嵌させることができる。また、ダクト20には下側縁35をカバー30の外側から支持する前側支持壁26aと内側から支持する後側支持壁26bとが設けられている。こうした構成によれば、カバー30の下側縁35が前方及び後方に倒れ込まなくなる。このため、下側縁35とダクト20との間に隙間が生じにくくなり、下側縁35とダクト20との間を通じた車内への水の浸入が抑制される。従って、車体10に対してカバー30を容易に組み付けることができ、同カバー30によって車内への水の浸入を好適に抑制することができる。
【0025】
(2)各支持壁26a,26bはダクト20と一体形成されているため、各支持壁が別体とされる構成に比べて、車両の部品点数を少なくすることができる。
(3)ダクト20の下壁25には凹溝26が形成されており、各支持壁26a,26bは凹溝26によって構成されている。こうした構成によれば、ダクト20の下壁25に形成された凹溝26によって各支持壁26a,26bが構成されるため、各支持壁26a,26bがダクト20の本体から突出することがなく、ダクト20の体格が増大しない。従って、ダクト20の体格を増大させることなく上記効果(1)を奏することができる。
【0026】
(4)ダクト20の下壁25の一部には、前側支持壁26aに代えて、後側支持壁26bの上端から斜め前下方に向けて延びる開放壁26cが設けられている。こうした構成によれば、開放壁26cが設けられることで前側支持壁26aが設けられていない空間が形成される。このため、車体10に対してカバー30を組み付ける際に、上記空間を通じてカバー30の下側縁35に指で触れることが容易にできるようになる。従って、カバー30の下側縁35を後側支持壁26bに対して押し付けることができ、カバー30の下側縁35が後側支持壁26bによって後側から確実に支持された状態とすることが容易にできる。
【0027】
尚、本発明に係る車両用カバーの支持構造は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0028】
・カバーの孔の下側縁のみが分断され、カバーの下端部が分断されない構成とすることもできる。この場合であっても、車体へのカバーの組み付けに際して、カバーが弾性変形されることで孔を広げることが容易にできるため、ダクトに対してカバーを容易に外嵌させることができる。
【0029】
・ダクトの下壁全体に前側支持壁と後側支持壁とからなる凹溝を形成することもできる。
・ダクトの下壁から下方に向けて支持壁を突設し、同支持壁によってダクトの孔の下側縁が外側或いは内側から支持されるようにしてもよい。更にこの場合、支持壁をダクト本体とは別体とすることもできる。
【0030】
・カバーの弾性変形のみによって孔を広げることができるのであれば、カバーの孔の縁部が分断されていない構成としてもよい。
・ダクトとカバーとが車体側部や車体後部に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…車体、11…フロントパネル、12…空気孔群、13…シート、15…ルーフモジュール、16…フロントガラス、18…カウル、18a…取付孔、19…リンフォース、19a…取付孔、20…ダクト、21…吸入口、24…上壁、25…下壁、26…凹溝、26a…前側支持壁、26b…後側支持壁、26c…開放壁、30…カバー、31…カバー本体、31a…係合孔、32…上端、32a…取付孔、33…下端部、33a…取付孔、34…孔、34a…上側縁、35…下側縁、36…補強部材、37…係合突起、38…取付片、38a…取付孔、39a…取付孔、41…クリップ。
図1
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図4
図5
図6
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