(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るIC付き冊子を示す模式図である。
図2は、
図1に記載のIC付き冊子の、ICチップを横切り、第一の中綴じ基材11の主面と直交する断面(S−S’)を示す断面模式図である。
図1及び2に係るIC付き冊子100では、2以上の中綴じ基材を重ねて中綴じされている。冊子の背側を外面として、最内面の中綴じ基材11(第一の中綴じ基材)の綴じ部11a(
図1では中綴じ部材13に重なる領域)の少なくとも一部が光透過性を有する。中綴じ部材13には偽造防止処理を施してある。第一の中綴じ基材11は、その見開きにICチップ141及びICチップ141に対して非接触で通信するためのアンテナ142を備えたインレット14が挟み込まれて貼り合わせられている。言い換えると、第一の中綴じ基材11は、中綴じ糸(中綴じ部材13)で縫われた中心線13a(のど)を中心に二つ折りして貼り合わせられ、貼り合わせられた第一の中綴じ基材11(例えば、光透過性フィルム)の間に、インレットが挟みこまれている。
【0013】
本発明に係る各実施形態における中綴じとは、偽造防止手段を備えた綴じ手段(中綴じ部材13)によりシート状の第一の中綴じ基材11の略中心線部分が第二の中綴じ基材12と接合されていることを意味する。従って、第一の中綴じ基材11を貼り合わせる前の段階では、綴じられた部分を結ぶ線分(綴じ部11a)を中心として第一の中綴じ基材11が見開きを構成する。本発明に係る各実施形態の構成によれば、冊子体において第一の中綴じ基材11を中綴じして貼り合わせた状態でも、第一の中綴じ基材11の綴じ部11aの少なくとも一部が光透過性であるので、中綴じ部材13の少なくとも一部が視覚的に露出する。したがって、偽造防止手段を検証することが可能である。冊子体は単独で、あるいはカバー等の一般的な冊子類構成要素と組み合わせて本発明の冊子を構成する。
【0014】
本発明に係る各実施形態では、少なくとも綴じ部11aの一部を光透過性として、中綴じしたシート状の中綴じ基材(第一の中綴じ基材11)を備えていれば、複数の冊子体から構成された冊子としても良い。例えば少なくとも綴じ部の一部を光透過性としたシート状の中綴じ基材を中綴じした一つの冊子体を含む複数の冊子体を順に積層して一つの冊子にしても良い。
図3A及び3Bに示すように、第二の冊子体21の任意の見開きに少なくとも綴じ部の一部を光透過性とした中綴じ基材11を中綴じした冊子としても良い。例えば
図3Aの構成では、中綴じ基材11としての光透過性フィルムが第二の冊子体21の所定の見開きに中綴じされており、光透過性フィルムと隣接する第二の冊子体の見開きページが第二の中綴じ基材12に相当する。
図3Bでは、第一の中綴じ基材11としての光透過性フィルムと第二の中綴じ基材12とを第二の冊子体21に中綴じした構成である。
なお、
図1は第一の中綴じ基材11として光透過性フィルムが用いられているIC付き冊子100を示している。同図では、中綴じ基材11が光透過性を有するため、第一の中綴じ基材11に挟まれている中綴じ部材13及びインレット14が見えるように描かれている。
図3A,3B及び
図8でも同様である。
以下では、一つの中綴じされた冊子体で構成された冊子を例として説明するが、これに限られるものではなく、各実施形態で上述のような各種の冊子構成を適用することができる。
【0015】
本発明に係る各実施形態では、偽造防止手段を備えた綴じ手段を用いて、第一の中綴じ基材を中綴じしている。綴じ手段は、一般的な中綴じ糸その他の中綴じ部材を用いることができる。本発明に係る偽造防止手段は、視覚情報により真贋判定が可能なものであれば特に制限はない。その具体例としては、紫外線の照射により蛍光を発光する材料を含有し、紫外線の光源を照射することにより検証することが可能な綴じ糸や、マイクロ文字が印字され、拡大視認により検証することが可能な糸を挙げることができる。予め前記のような偽造防止処理が施された材料を用いて冊子状に綴じても良いし、特許文献1に記載されているように、綴じた後に綴じ糸に偽造防止処理を施しても良い。さらに、一度綴じた後に、分解して綴じなおしすることが困難なように、特殊な綴じ方を用いた綴じ手段を用いても良い。
綴じ糸を用いた中綴じ方法の例としては、工業用のミシンを用いて公知一般の縫い方で中綴じする方法が挙げられる。基材の端まで縫いきるチェーン方式、及び、基材の端まで縫わず、基材の途中で縫い止めするインターロック方式のいずれを採用しても良い。チェーン方式よりもインターロック方式の方が綴じ糸はほつれにくい。ただし、チェーン方式でも、接着層や第一の中綴じ基材との融着により綴じ糸の端部が固定されるので、チェーン方式を採用しても問題はない。
また、中綴じする前に第一の中綴じ基材上に接着層を形成しておくと、縫う際に中綴じ基材の破損を抑制する基材保護層として当該接着層が機能する。
【0016】
中綴じ基材のうち、最内面すなわち中綴じ部材13が露出する面を構成する第一の中綴じ基材11には、前述のように中綴じ部材13が視認できるように光透過性を備える必要があるため、光透過性のフィルムを用いることが好ましい。ただし第一の中綴じ基材11全体を光透過性フィルムで構成する必要はなく、
図4A及び4Bに示すように中央部分のみに光透過性フィルムを用い、その両端に別のフィルム基材112を貼り合わせても良い。別のフィルム基材として隠蔽性(不透過)の基材を用いれば、後述するように、インレット14を隠蔽する隠蔽層とすることができる。第一の中綴じ基材11の光透過性の領域の幅は、少なくとも中綴じ部材13の幅よりも大きくする。中綴じ部材として糸を用いた場合、光透過性の領域の幅は、糸の太さ(糸径R)に依存し、綴じ部11aの中心線13aからの距離dがπR/2よりも大きいことが好ましい。
【0017】
第一の中綴じ基材11に用いる光透過性フィルムを構成する材料としては、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材等の一般的なプラスチックフィルムを用いることができる。また、印字性、接着性の向上や、帯電防止のための機能層を積層した多層構造のフィルムを用いても良い。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。特にレーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料を中綴じ基材11として用いると、ユニークID等の印字を中綴じ基材11に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
本実施形態における「光透過性」とは、必ずしも可視光域の光波長の全てについて高透過率である必要はなく、着色していても良い。少なくとも中綴じ部材13(中綴じ糸)が視認可能である程度の透過率を所定の光波長で備えていれば良い。しかし後述のように、特に潜像及び光機能層を設ける場合には、潜像の表現に影響を与えないために、可視光の波長域(約400〜800nm)で90%以上の光透過率であることが好ましい。また、中綴じ部材13(中綴じ糸)に紫外線を照射して検証を行う場合には、紫外線を透過する光透過性フィルムを用いる。この場合、照射する紫外線に対する透過率が50%以上であることが好ましい。
【0018】
第二の中綴じ基材12としては、糸綴じできる強度を有する基材を、適宜採用することができる。一般的なパルプ紙や合成紙等の繊維性基材や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材等の各種のプラスチックフィルムを用いることができる。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。また、レーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料を中綴じ基材12として用いると、ユニークID等の印字を中綴じ基材12に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
中綴じ基材には、同一又は複数種の材料を重ね合わせた基材を用いることができる。例えば、背側の中綴じ基材には強度を向上させるために、内側の中綴じ基材よりも膜厚の大きい材料や、剛性の高い材料を採用することができる。また前述のように、他の冊子体を第二の中綴じ基材12として用いることもできる。
【0019】
中綴じされた第一の中綴じ基材11の見開きの間に挟み込むインレット14は、少なくともICチップ141と、アンテナ142とを含み、ICチップに非接触で情報の書き込み及び又は読み取りをすることが可能なICとして機能する。
図5A及び5Bは、インレット14の一構成例を示す模式図であり、
図5Aはアンテナパターン形成面、
図5Bはその裏面である。
図5A及び5Bの例では、インレット基材143上にアンテナパターン142を形成し、パターンの交差部で裏面にジャンパー線144を設けてアンテナ142両端の接続部145間を接続し、アンテナを形成している。
【0020】
インレット基材143としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材を用いることができる。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。またレーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料をインレット基材143として用いると、ユニークID等の印字をインレット基材143に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
また紙基材を用いてもよい。紙基材としては、特に限定するものではないが例えば圧縮固着紙を用いた硬質紙基材を用いることができる。具体的には、天然素材のセルロースを原料とするバルカナイズドファイバーを複数積層したものなどがあげられる。
【0021】
アンテナ142のパターンは、エッチング法、メッキ法、印刷法またはパターン蒸着法により形成することができる。エッチング法では、アンテナ基材上にアルミ、銅などの金属箔を貼り合せ、またはアルミ、銅などの金属薄膜を蒸着法、スパッタリング法などによりアンテナ基材上に形成し、得られた金属箔・金属薄膜上にマスクパターンを形成し、エッチングによりアンテナ形状のパターンを得ることができる。印刷法では、導電性インキを印刷する。印刷法としては、微細パターニングできる方法であれば特に限定するものではないが、スクリーン印刷法を好適に用いることができる。アンテナ基材として紙基材を用いる場合、アンテナの形成法としては印刷法を好適に用いることができる。メッキ法では、触媒層をパターニング形成し、その後電解または無電解メッキにより、アンテナを形成する。パターン蒸着法では、開口部を有するマスクを用い、パターン状に蒸着又はスパッタリング等を行うことにより、アンテナパターンを形成する。裏面にジャンパー線144を設ける代りに、アンテナパターンの交差する部分に絶縁基材と導電部材とからなる配線を貼り合せ、この配線の両端をアンテナ142と導通させても良い。また、金属線をコイル状に固着配置してアンテナを形成しても良い。アンテナの巻き数、形状などは、通信周波数、その他の特性に応じて適宜設定することができる。この構成は特に片面にアンテナ及び配線を形成した場合に用いることができる。
【0022】
ICチップ141とアンテナ142は、アンテナ142の終端とICチップ141に接続するバンプまたは接続パッドとを溶接や接着剤で貼り合せることにより接続できる。接着剤としては導電性の接着剤を好適に用いることができる。
【0023】
またインレット14は、
図6の構成例に示すように、インレット基材143を設けずに、直接光透過性フィルム11上に形成しても良い。またICチップ141の保護、ならびに、ICチップ141形成部とアンテナ142及びアンテナ形成面との膜厚差解消のために、保護層を設けても良い。例えば、封止機能を有する保護層や、ICチップに対応する領域に開口部を設けた保護層をICチップの実装前あるいは後に、アンテナ形成面に積層することができる。
【0024】
ICチップ141を露出させないために、インレット14の少なくとも一部を覆う隠蔽層を設けても良い。この場合、ICチップ141を隠蔽するように設けることがセキュリティ上好ましい。隠蔽層の構成例を
図7A〜7Dに示す。
図7A〜7Dの各図では、インレット14と第一の中綴じ基材11の断面模式図のみを記し、その他の部分は省略している。
図7Aでは第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の露出面(外側)に隠蔽層16を設けている。
図7Bでは第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の内側に隠蔽層16を設けている。
図7Cでは、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の内側に隠蔽層16を設け、隠蔽層16上にICチップ141及びアンテナ142(インレット)を形成している。
図7A〜7Cでは、第一の中綴じ基材11(透明フィルム)に隠蔽層を設けているので、中綴じする前に予め隠蔽層16を設けた第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を用いることができる。いずれの構成においても、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を介して中綴じ部材13(中綴じ糸)が確実に視認できるように、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)上で、二つ折りの折り線(中心線13a)から少なくとも0.5mm、より好ましくは1mm以上、インレット14及び隠蔽層16を中綴じ部材13から離して配置することが好ましい。
図7Dでは、インレットに隠蔽層16を設けている。また、上記
図7A〜7Dの隠蔽層16の配置を組み合わせて用いても良い。
【0025】
遮蔽層16として、文字、絵柄等の遮光性のパターンを、第一の中綴じ基材11やインレット14等に直接設けることができる。あるいは基材に上述のようなパターンを設けて遮光層16を形成し、これを第一の中綴じ基材11やインレット14等に貼り合わせることもできる。上述のパターンは、例えば白色や黒色などの有色顔料、染料を有するインキを用いて印刷法により形成することができる。
【0026】
上述のようにインレット14を、シート状の第一の中綴じ基材11の見開きの間に配置した後、当該第一の中綴じ基材の見開きの左右頁を貼り合わせることで本発明の各実施形態に係る冊子が作成される。見開きの一方のページにインレット14を固定した後に第一の中綴じ基材の貼り合わせを行っても良いし、第一の中綴じ基材の貼り合わせと同時にインレット14を挿入しても良い。貼り合せのための接着層15には、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)系、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)系、ポリエステル系、ポリウレンタン系等の公知の接着剤を用いることができる。また、接着剤を塗布する代わりに、上記の接着剤に用いられる樹脂からなる接着シートを第一の中綴じ基材11(例えば、光透過性フィルム)とインレット14との間に挟んで用いることもできる。また、予め貼り合わせられる面に接着層を形成した第一の中綴じ基材11を用意して用いても良い。特にホットメルト接着剤を用いれば、熱圧着によって容易に貼り合せを行う事ができ、貼り合せ後の第一の中綴じ基材11の平坦性も保持することができる。
さらに、第一の中綴じ基材11として熱可塑性を有する基材が用いられている場合、上記のような接着層15を用いずに、熱圧着により貼合せを行うことができる。熱圧着で貼合せを行うと、インレット14と第一の中綴じ基材11とが一体化するため、たとえば、ICチップ141の入れ替えによる偽造がより困難になる。
また、インレット基材143として記号や文字等が印字された樹脂材料用い、第一の中綴じ基材11に同じ樹脂材料を用いてこれら第一の中綴じ基材11及びインレット14を熱圧着により一体化すると、印字された記号や文字等を偽造することは困難となる。これにより、冊子100のセキュリティ性をより高めることができる。特に、発色用の添加物を加えた発色性の樹脂材料をインレット基材143に用い、発色用の添加物を含まない同じ樹脂材料を第一の中綴じ基材11に用いれば、中綴じ基材11の透明性を生かして中綴じ基材11の貼合せを行った後にインレット14への印字を行うことができる。むろんインレット14への印字を一体化前に行っても良い。
【0027】
図8は、本発明に係るIC付き冊子の他の実施形態を示す模式図である。
図9は、
図8に記載のIC付き冊子の、ICチップ141を横切り、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の主面と直交する断面(S−S’)を示す断面模式図である。
図8及び9に係るIC付き冊子200では、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)に光学機能層31が設けられている。さらに第一の中綴じ基材11と隣り合うページ(第二の中綴じ基材12)の、光学機能層31と対向する位置に、光学機能層31を作用させることにより顕現する潜像32が設けられている。なお「光学機能層を作用させる」とは、潜像領域で反射した光が、観察者により視認されるまでの間で光学機能層を通過していることを意味する。上記のような構成により、自己検証が可能な偽造防止手段を冊子に設けることができ、セキュリティ性、検証容易性を備えた冊子を提供することができる。
【0028】
光学機能層31は、具体的には偏光子、位相差板、光学マスク、又はこれらの組み合わせ等として機能する。光学機能層31は、潜像の検証フィルタとして機能するように、潜像の種類によって選択される。
【0029】
潜像32を印刷潜像とする場合、所定のピッチで配置された万線または網点で描かれた背景画像の中に、上記ピッチとは異なるピッチで描かれた潜像画像を形成することができる。この潜像を顕像化するための検証フィルタである光学機能層31として、前述の背景画像のピッチに合わせた万線ストライプパターンが形成されたものを用いることができる。印刷潜像画像と機能層とを重ねることで機能層が背景画像を隠蔽し、背景画像とは異なるピッチで描かれた潜像画像が認識できる。
【0030】
印刷潜像は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法など公知の印刷手法を用いて形成できる。印刷潜像に対する検証フィルタである光学機能層31は、アンテナ142形成時にアンテナ142と同じ材料で形成することもできる。なお、検証フィルタである光学機能層31が銅やアルミなどの金属で形成される場合、金属光沢が顕像化の邪魔にならないように、機能層を黒化処理してもよい。具体的には機能層以外の部分を樹脂などからなる保護マスクで覆い、酸処理等を施すことにより、機能層となる金属パターンの表面を黒化すればよい。これにより、顕像化した画像を視認しやすくなる。
【0031】
潜像32を偏光潜像とする場合、背景部と潜像部とで異なる偏光方向を有する偏光層により形成することができる。また、偏光方向の揃った偏光層上に、背景部と潜像部とで位相差の異なる位相差層を形成してもよい。偏光潜像は公知の手法を用いて形成することができる。例えば、潜像形成領域に配向層を設け、配向層の配向パターンにより潜像を形成する。配向層には光配向硬化型の液晶等を用いることができる。光配向硬化型液晶の層において配向のパターンを形成することで潜像を形成する。あるいは偏光又は配向を生ずるように光配向硬化型液晶の層に回折格子を設けても良い。ここで、光配向硬化型液晶とは、光配向性を有する光硬化型液晶をいう。
【0032】
上記偏光潜像を顕像化するための検証フィルタである光学機能層31として、偏光フィルタ(偏光フィルム)を用いることができる。この場合、背景部及び潜像部からの光が異なる偏光方向を有するため、偏光フィルタを通すと、背景部及び潜像部のうちの一方からの光が遮断され、他方からの光が透過する。このように、偏光フィルタを通すと背景部と潜像部との間でコントラスト差ができるため、潜像画像を認識することができる。このような偏光フィルタとしては、一般的な樹脂偏光板や、1mmあたり1千本以上のストライプパターンを形成したワイヤーグリッド偏光子を用いることができる。ストライプパターンの本数は、対象とする光の周波数などに応じて任意に設定できる。可視光域の偏光光を選択的に透過させるのであればストライプパターンの本数を1mmあたり5千本〜1万本程度とすればよい。
【0033】
また偏光潜像を顕像化する光学機能層32として、位相差板を組み合わせた偏光子を用いても良い。位相差層を設けた潜像の場合、潜像に対する偏光子と位相差板の積層順序によって、顕像化する像を異ならしめることができる。従って、見開きの両ページの、光学機能層31に対向する位置に潜像を形成し、左右で異なる潜像パターンを顕現することができる。
【0034】
検証フィルタである光学機能層31として、ワイヤーグリッド偏光子を用いる場合、前述と同様、アンテナ142形成時にアンテナ142と同じ材料で形成することができる。なお、検証フィルタである光学機能層31が銅やアルミなどの金属で形成される場合、金属光沢が顕像化の邪魔にならないように、機能層を黒化処理してもよい。具体的には機能層以外の部分を樹脂などからなる保護マスクで覆い、酸処理等を施すことにより、機能層となる金属パターンの表面を黒化すればよい。これにより、顕像化した画像を視認しやすくなる。
【0035】
光学機能層31は、
図9に示すように、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)のインレット14を挟んだ側(内側)に設けても良いし、
図10のように第一の中綴じ基材11の外側に設けても良い。特に、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の内側の、インレット14が配置されていない領域に光学機能層31を設ける場合、インレット14のアンテナ142の形成と同時に、あるいは第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)にインレット14を挟み込むと同時に光学機能層31(光機能層フィルム)を挟み込むことが可能であるため、製造が容易である。一方、第二の中綴じ基材12の見開きの片側に潜像32として偏光潜像を配置する場合、潜像32の直上に光学機能層31が配置されるように、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)外側の潜像32に対応する位置に光学機能層31を配置すれば(
図10参照)、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)に光異方性がある材料を用いた場合でも、光学機能層31の機能が第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)に影響されることがない。
【0036】
なお、隠蔽層16を設ける場合には、光学機能層31の潜像32と対応する領域を隠蔽層16が覆わないようにする。しかし、光学機能層31の、潜像32に対応しない領域(潜像に作用しない領域)は、当然ながら意匠性等のために隠蔽層で覆うことも可能である。また、中綴じ部材13として一般的な綴じ糸を用いる場合には、前述の中綴じ部材13(綴じ手段)が確実に視認できるように、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の二つ折りの折り線(綴じ部11a)から少なくとも0.5mm、より好ましくは1mm以上離して中綴じ部材13を配置することが好ましい。あるいは、光学機能層31が中綴じ部材部分を含むのど領域を覆う場合には、光学機能層31に紫外線の透過率の高い材料を用いることが好ましい。
【0037】
潜像32は、中綴じ基材11(光透過性フィルム)に隣り合う第二の中綴じ基材12の見開きの一方の頁に形成しても良いし、見開きの両方の頁に形成しても良い。インレット14の配置領域33の外に光学機能層31を設けるため、
図11Aのように第二の中綴じ基材12の周辺部に潜像32を設けるか、
図11Bのように第二の中綴じ基材12の中央部に潜像32を設けることが好ましい。特に
図11Bのように第二の中綴じ基材12の中央部に潜像32を設ける場合には、潜像32が二つ折りの折り線、すなわち中綴じ部材13(中綴じ糸)の一部を跨いで連続的に形成することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の上記実施形態に係る実施例について説明する。
<実施例1>
PETフィルム(東レ株式会社製 ルミラー T60 100μm)を第一の中綴じ基材として用いた。このフィルム上にホットメルト接着剤を7μm膜厚で塗布した。第二の中綴じ基材である本紙に接着剤が塗布されたフィルム(接着剤塗布フィルム)を重ねて、これらを2重ミシンのチェーン方式で中綴じした。綴じ糸には、蛍光材料を含むポリエステル糸を用いた。
アルミのエッチングにより形成したアンテナとこのアンテナに接続されたICチップを用いてインレットを形成した。中綴じされた本紙及び接着剤塗布フィルムの対向するPETフィルム面同士の間にインレットを配置し、ロール転写機を用いて下記の条件で貼合せを行った。
[貼り合わせ条件]
温度:160℃〜200℃
ロール転写速度:30mm/s〜60mm/s
最後に、本紙に表紙を水のりで貼り合わせてIC付冊子が得られた。得られた冊子を開いて、その中綴じ部分に暗室でブラックライトを照射した結果、綴じ糸が蛍光を発するのが確認できた。
【0039】
<実施例2>
第一の中綴じ基材として厚み100μmの透明ポリカーボネートを用い、インレット基材として発色ポリカーボネートを用いた。第二の中綴じ基材である本紙に透明ポリカーボネート(接着剤塗布なし)を重ねて、実施例1と同様にこれらを中綴じした。
インレット基材として発色ポリカーボネートを用いたことを除き、実施例1と同様にインレットを形成した。
中綴じされた本紙及び透明ポリカーボネートの、対向する透明ポリカーボネート面同士の間にインレットを配置し、ロール転写機を用いて下記の条件で貼合せを行った。
[貼り合わせ条件]
温度:200℃〜250℃
ロール転写速度:30mm/s〜60mm/s
その後、実施例1と同様にしてIC付冊子が得られた。得られた冊子を開いて、その中綴じ部分に暗室でブラックライトを照射した結果、綴じ糸が蛍光を発するのが確認できた。また、得られた冊子のインレット基材面にレーザ印字が可能であることを確認した。
【0040】
本発明の上記実施形態によれば、偽造防止処理を施した中綴じ部材13(中綴じ糸)で中綴じして冊子を形成し、さらに第一の中綴じ機材11の綴じ部11aの少なくとも一部が光透過性であり、第一の中綴じ基材11の間にICチップ141及びアンテナ142を含むインレット14を挟み込むことで、容易にIC付き冊子を形成することができる。またICチップ141と、綴じ部11a越しに検証可能な偽造防止検証用の中綴じ部材13(綴じ糸)を同時に備えるセキュリティ性の高い冊子を提供することができる。さらに、第一の中綴じ機材11(光透過性フィルム)に光学機能層31が設けられ、第一の中綴じ機材11(光透過性フィルム)に隣り合う第二の中綴じ基材12の、光学機能層31と対向する位置に光学機能層31を作用させて顕現させることができる潜像32が設けられているので、容易に自己検証可能である。すなわち、製造が容易でさらにセキュリティ性の高い冊子を提供することができる。