【文献】
TANAKA S. et al.,Dullard is required for mouse primordial germ cell formation,Program Abstr Book Annu Meet Jpn Soc Dev Biol,2010年 7月 6日,Vol.43,p.226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、系統樹立の目的となる第一の多能性幹細胞と、生殖細胞形成能が欠如又は低下した第二の多能性幹細胞(ヘルパー細胞)と、胚との集合体を宿主動物に移植することを特徴とするキメラ動物の作製方法であり、ヘルパー細胞を使用することにより多能性幹細胞から効率良く動物系統を樹立することができるものである。
ES細胞単独ではキメラ率の高い動物(例えばキメラマウス)を得ることが出来ないことが多いが、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞と、精子形成能力が無い、あるいは精子形成能力が低いES細胞(ヘルパーES細胞)とを胚に混ぜて宿主動物に移植することにより、効率良くキメラ動物を樹立することができる。
本発明の方法は、系統樹立の目的の多能性幹細胞と、ヘルパー細胞と、正常胚の3種類の細胞を混ぜてキメラ動物(例えばキメラマウス)を作製する方法である。ヘルパー細胞の寄与により、個体発生は正常に進み、キメラ率の高いキメラ胚を得ることが出来る。そして、このキメラマウス(オス)を正常メスマウスと交配することにより、精子形成能に異常の無い目的とするES細胞由来の仔を効率良く得ることが出来、マウス系統を樹立できる。
【0009】
2.第一の多能性幹細胞
本発明において使用される第一の多能性幹細胞は、キメラ動物を作製する際に胚の中に注入される細胞であり、系統樹立の目的となる細胞である。「系統樹立」とは、細胞が生殖系列(germline)に入って動物の形質が次世代に引き継がれるようになることを意味する。
第一の多能性幹細胞の種類は特に限定されるものではなく、例えば、正常胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞、遺伝子が改変された細胞などが挙げられる。
ES細胞として、TT2細胞、AB-1細胞、J1細胞、R1細胞などを適宜選択して使用することができるが、本発明においては、これらのES細胞に、さらに改良を加えたものを用いることもできる。例えば、TT2 ES細胞を、フィーダー細胞が無くても維持できるように改良した細胞(KTPU10 ES細胞、KTPU8 ES細胞など)が挙げられる。
【0010】
iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は、人工多能性幹細胞又は誘導多能性幹細胞と呼ばれており、線維芽細胞などの体細胞へ数種類の転写因子遺伝子を導入することにより、ES細胞と同等の分化多能性を獲得した細胞である。
マウスのiPS細胞は、マウス線維芽細胞にOct3/4、Sox2、c-Myc及びKlf4の4つの遺伝子を導入することにより樹立されたものであり(Takahashi K. et al., Cell 126:663-676, 2006)、ヒトのiPS細胞も樹立されている(Takahashi K. et al., Cell 131, 861-872, 2007)。
【0011】
また、所定の目的遺伝子の機能が野生型と比較して低下するように、又は当該目的遺伝子がノックアウトされるように操作(ターゲティング)された細胞も、本発明の系統樹立の目的となる多能性幹細胞として使用することができる。目的遺伝子を改変する(遺伝子をターゲティングする)には、通常のノックアウト手法、遺伝子トラップ法などを採用することができる。遺伝子トラップ法とは、トラップベクターを多能性幹細胞に導入すると、ランダムに動物の内在性遺伝子に組込まれることを利用するものであり、トラップベクターがゲノム上の特定の遺伝子に入り込んで、当該特定の遺伝子を捕まえる手法である(例えば、Araki K. et al., Cellular and Molecular Biology 45(5), 737-750, 1999を参照) 。
【0012】
3.第二の多能性幹細胞
第二の多能性幹細胞は、生殖能が無い、あるいは野生型と比較して生殖能が低い多能性幹細胞であり、上記第一の多能性幹細胞とミックスして胚と集合体を形成させるものである。第一の多能性幹細胞単独では系統樹立効率の高いキメラ動物を得ることが困難である場合でも、第二の多能性幹細胞を導入することで、第一の多能性幹細胞の系統樹立効率を高くすることができる。従って、第二の多能性幹細胞を「ヘルパー細胞」(ES細胞を使用したときは「ヘルパーES細胞」)という。
【0013】
ヘルパー細胞は、生殖能が無い又は低い性質を有する限り限定されるものではない。本発明においては、精子形成能力が無いもの又は精子形成能力が低いものであることが好ましい。ヘルパー細胞の種類は第一の多能性幹細胞と同様にES細胞、iPS細胞などの多能性幹細胞である。
ヘルパーES細胞として、Ayu21-16 ES 細胞株、Ayu21-16EG4 ES 細胞株、あるいはCTB28 ES細胞株を使用することができる。Ayu21-16 ES細胞は、一般的にノックアウトマウス作製によく用いられているTT2 ES細胞(Yagi T. et al., Anal. Biochem., 214, 70-76, 1993)をフィーダー細胞が無くても維持できるように改良したKTPU10 ES細胞に、可変型遺伝子トラップベクターを導入して得られたトラップクローンのひとつであり、マウス染色体9番上にあるheat shock protein 8 (Hspa8)という遺伝子をトラップしている。
【0014】
Ayu21-16 ES細胞は、「Ayu21-16」と称し、2010年8月25日付(受領日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 NITEバイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター)にブダペスト条約に基づき国際寄託した。その受託番号は、「NITE BP-973」である(原寄託日:2010年8月25日)。
Ayu21-16 ES細胞の詳細情報はデータベースEGTC[http://egtc.jp]で公開しており、一部抜粋して列記する。
【0015】
<Ayu21-16>
DDBJ/GenBank/EMBL Accession Number ; AB187233
Gene Name ; heat shock protein 8
Gene Symbol ; Hspa8
Genomic Location ; chr9:40,609,200-40,613,500
Synonyms ; Hspa10, Hsc73, Hsc70, Hsc71, 70kDa, Hsp73
NCBI Gene ID ; 15481
MGI ID ; 105384
IGTC ID ; 12489
KEGG Pathway ; mmu03040 Splicesome
mmu04010 MAPK signaling pathway
mmu04144 Endocytosis
mmu04612 Antigen processing and presentation
CARD ID ; 687
【0016】
また、本発明においては、上記Ayu21-16ES 細胞株にレポーター遺伝子を導入した細胞株、あるいは、Ayu21-16ES 細胞株に含まれるレポーター遺伝子を他のレポーター遺伝子に入れ替えた細胞株をヘルパー細胞として使用することができる。例えば、Ayu21-16ES 細胞株のトラップベクター内にあるレポーター遺伝子β-geoを、別のレポーター遺伝子であるEGFP遺伝子に置換した細胞株(「Ayu21-16EG4ES」という)を用いることができる。
導入する遺伝子は上記レポーター遺伝子に限定されるものではなく、RFP遺伝子、DsRed遺伝子などを導入することができる。これにより、蛍光を指標として他の細胞と区別することができる。
【0017】
Ayu21-16 EG4 ES細胞は、「Ayu21-16EG4」と称し、2011年8月25日付(受領日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒 292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 NITEバイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター)にブダペスト条約に基づき国際寄託した。その受領番号(受領書に記載)は、「NITE ABP-1135」である。
【0018】
また、CTB28 ES細胞はTT2 ES細胞(Yagi T. et al., Anal. Biochem., 214, 70-76, 1993)をフィーダー細胞が無くても維持できるように改良したKTPU8 ES細胞に、所定遺伝子がノックアウトされるようにターゲティングベクターを導入して得ることができる。
CTB28 ES細胞は、「CTB28」と称し、2011年8月25日付(受領日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒 292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 NITEバイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター)にブダペスト条約に基づき国際寄託した。その受領番号(受領書に記載)は、「NITE ABP-1136」である。
【0019】
本発明の第二の多能性幹細胞、特にヘルパーES細胞はエピジェネティックな性質を有するヘルパー細胞である。
ここで、「エピジェネティック」とは、DNAの塩基配列の変化を伴わず、遺伝子の発現を活性化又は不活性化する修飾を意味し、ゲノム自身の変異以外のメカニズムで遺伝子の発現に影響を与える現象である。このような修飾として、一般には、例えばDNAのメチル化、ヒストンのアセチル化又はメチル化、あるいはリン酸化などが挙げられる。本発明においては、生殖細胞形成能が欠如または低下しているという第二の多能性幹細胞の特徴は、エピジェネティックな性質に由来するものであり、次世代以降に受け継がれないものである。
【0020】
4.キメラ動物の作製
キメラ動物の作製は標準的な方法で行うことができる。本発明において使用される動物の種類は非ヒト哺乳動物であり、特に限定されるものではない。例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどのげっ歯類動物、ウサギ、イヌ、ネコ、サル等の実験動物、あるいはヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ等の家畜が用いられる。本発明においては、取り扱いが容易で繁殖もしやすい点でマウス又はラットが好ましい。
以下、説明の便宜上、マウスを例に説明する。
系統樹立の目的となる多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞等)及びヘルパー細胞を、胚内に入れる。この細胞移植胚を偽妊娠仮親の子宮内に移植して出産させることによりキメラマウスを作製する。
ここで、「胚」とは、個体発生における受精から出生までの段階の個体を意味し、2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚、桑実期胚、胚盤胞などを包含する。
【0021】
多能性幹細胞を胚内に入れて集合体を作製する方法として、マイクロインジェクション法、凝集法などの公知手法を用いることができる。「集合体」とは、第一及び第二の多能性幹細胞並びに胚が同一空間内に集まって形成する集合体を意味し、第一及び第二の多能性幹細胞が胚に注入された形態、胚を個々の細胞にばらして、第一及び第二の多能性幹細胞とともに凝集する形態のいずれをも意味する。
キメラ胚の作製は、まず、ホルモン剤により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウスと交配させる。その後、8細胞期胚を用いる場合には受精から2.5日目に、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、それぞれ卵管又は子宮から初期発生胚を回収する。回収した胚に、第一の多能性幹細胞(系統樹立の目的細胞)及び第二の多能性幹細胞(ヘルパー細胞)を注入し、キメラ胚を作製する。第一の多能性幹細胞と第二の多能性幹細胞の混合比率は、1:9〜9:1であり、好ましくは1:1である。
【0022】
マイクロインジェクション法を採用する場合は、回収した胚に、第一及び第二の多能性幹細胞を注入して細胞の集合体を作製する。
また、凝集法を採用する場合は、第一及び第二の多能性幹細胞をミックスして、透明帯を除去した正常胚にふりかけて凝集させればよい。
一方、仮親にするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠マウスに対して、上述の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、その後出産させることによりキメラマウスを作製することができる。
このようなキメラマウスの中から、多能性幹細胞移植胚由来の雄マウスを選択する。選択した雄のキメラマウスが成熟した後、このマウスを純系マウス系統の雌マウスと交配させる。そして、誕生した子マウスに、第一の多能性幹細胞に由来するマウスの被毛色が現れることにより、多能性幹細胞がキメラマウスの生殖系列へ導入されたことを確認することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
Ayu21-16 ES細胞(NITE BP-973)は、得られるキメラマウスが100%キメラ(ES細胞の寄与率がほぼ100%であると毛色から判断されるマウス)である確率が高く、かつ生まれるキメラマウスの匹数も多い。しかし得られたキメラマウスのオスにおいて、交配時(生後8週以降)までに精巣の萎縮等による精子形成不全が見られ、仔(F1)が得にくいという特徴がある。偶然得ることができたF1マウスにおいては精子形成異常が観察されず、特に問題なくマウスラインを樹立することができた(CARD R-BASEにも寄託済み)。
従って、キメラマウスオスにおいて観察される精子形成不全は、ノックアウトされた遺伝子(Hspa8)の影響ではなく、このES 細胞に特有な性質(エピジェネティックな性質)と考えられる。
このAyu21-16 ES細胞のトラップベクター内にあるレポーター遺伝子:β-geoを、別のレポーター遺伝子であるEGFP遺伝子に置換し、これをAyu21-16EG4 ES 細胞株(ヘルパーES細胞株)とした。なお、レポーター遺伝子の置換は、可変型遺伝子トラップ法の特徴を生かして、公開している方法で行った(例えば、Taniwaki T. et al., Dev. Growth Differ., 47, 163-172, 2005を参照)。
【0024】
このES細胞及びその分化した細胞は、レポータータンパク質GFP(green fluorescence protein)を発現するため、紫外線を照射すると緑色の蛍光を発し、蛍光顕微鏡下でそれ以外の細胞から容易に識別することが出来る。
通常の方法でキメラ率の高いキメラマウスを得ることが出来ず、系統を樹立する事ができなかったES細胞株と、Ayu21-16EG4 ES 細胞株(ヘルパーES細胞)とを混合してキメラマウスを作製した。また、オスのキメラマウスを正常メスマウスと交配させ、目的とするES細胞由来の精子が受精して仔が得られたかどうか、すなわちキメラマウスにおいて目的とするES細胞が生殖系列(Germline)に入ったかどうかを検討し、その成績を表1に示した。
異なる10系統のES細胞株について実験を行ない、6系統(60%)において目的とするES細胞由来のF1マウスを得ることが出来た(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
Ayu21-B196について、その詳細な実験データを記載する。
Ayu21-B196 ES細胞は、TT2 ES細胞をフィーダーフリー化したKTPU8 ES細胞に、可変型遺伝子トラップベクターpU-21Bを導入して得られたトラップクローンのひとつである。
Ayu21-B196 ES細胞は、マウス染色体6番上にあるadiponectin receptor 2 (Adipor2)という遺伝子をトラップしている。その詳しい情報についてもEGTCで公開しているが、一部抜粋して列記する。
【0027】
<Ayu21-B196>
DDBJ/GenBank/EMBL Accession Number ; AB299416
Gene Name ; adiponectin receptor 2
Gene Symbol ; Adipor2
Genomic Location ; chr6:119,302,000-119,370,000
Synonyms ; D6Ucla1e
NCBI Gene ID ; 68465
MGI ID ; 93830
IGTC ID ; 287
KEGG Pathway ; mmu04920 Adipocytokine signaling pathway
CARD ID ; 1437
【0028】
このAyu21-B196 ES細胞を用いて、まず通常の方法でキメラマウスの作製を試みた。過排卵処理後、オスマウスと交配しプラグが得られたICRメスマウスを購入し、卵管灌流により2細胞期胚を回収した。KSOM培地を用いて一晩培養し、4細胞期胚または桑実胚まで発生が進んだ正常胚を用いてアグリゲーション法によりキメラマウス作製を行なった。
正常胚の透明帯を除去した後、胚1個に対して数十個のAyu21-B196 ES細胞を振りかけて凝集させ、一晩培養して融合した胚145個を、仮親(偽妊娠状態にしたICRメスマウス)5匹に移植した。17日後帝王切開を行なったが、発生途中で死亡した胚ばかりで、生きているキメラマウスを得ることは出来なかった。
【0029】
そこで本発明の方法を用いてキメラマウス作製を試みた。通常の方法と同様に、過排卵処理後、オスマウスと交配しプラグが得られたICRメスマウスを購入し、卵管灌流により2細胞期胚を回収した。KSOM培地を用いて一晩培養し、4細胞期胚または桑実胚まで発生が進んだ正常胚を用いてアグリゲーション法によりキメラマウス作製を行なった。
Ayu21-B196 ES細胞とヘルパーES細胞(Ayu21-16EG4 ES 細胞株)とをミックスし、透明帯を除去した正常胚に振りかけて凝集させ、一晩培養して融合した胚125個を、仮親5匹に移植した。
17日後仮親3匹は自然分娩しており、合計10匹の仔が生まれ、そのうち8匹は黒目で2匹が白目であった。残り2匹の仮親について帝王切開を行なったが、生きている仔はいなかった。毛色から判断した100%キメラオスマウスが3匹得られたので、B6メスマウスと交配し、その仔(F1)の遺伝型を調べたところ、レポーター遺伝子geoを持っているマウス、即ちAyu21-B196 ES細胞由来のマウスがいることを確認した。つまり、通常の方法ではキメラマウスさえ生まれなかったAyu21-B196 ES細胞に関して、ヘルパーES細胞を使用することにより、100%キメラマウスを得ることが出来、生殖系列に入ることを確認した。
【0030】
本発明の方法を用いることにより、単独ではマウスラインを樹立することが出来なかった10系統のES細胞に関して、6系統のマウスラインを樹立することが出来た。
精子形成に重要な働きをしている遺伝子は、Ar (androgen receptor), Kit (kit oncogene), Tex11 (testis expressed gene 11)など多数報告されている。ジャクソン研究所が公開しているデータベースMGI (Mouse Genome Informatics)には、様々なマウスの表現型を集めたMammalian Phenotype Ontology Annotationsというデータベースが含まれている。その中には、「arrest of spermatogenesis」(精子形成不全)という表現型を示すマウスライン(200系統)が示されている。そのリストは、ウェブサイトから容易に入手することができるhttp://www.informatics.jax.org/javawi2/servlet/WIFetch?page=mpAnnotSummary&id=MP:0001155)。
今後、このような精子形成に重要な遺伝子をノックアウトしたES細胞をヘルパーES細胞として利用することにより、さらに好成績を収めることも出来る。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同様に、通常の方法でキメラ率の高いキメラマウスを得ることが出来ず、系統を樹立する事ができなかったES細胞株と、CTB28 ES 細胞株(ヘルパーES細胞、NITE ABP-1136)とを混合してキメラマウスを作製した。また、オスのキメラマウスを正常メスマウスと交配させ、目的とするES細胞由来の精子が受精して仔が得られたかどうか、すなわちキメラマウスにおいて目的とするES細胞が生殖系列(Germline)に入ったかどうかを検討し、その成績を表2に示した。
異なる3系統のES細胞株について実験を行ない、全ての系統(100%)において目的とするES細胞由来のF1マウスを得ることが出来た(表2)。
【0032】
【表2】