(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935705
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】自立パウチ及びそのエア抜き方法
(51)【国際特許分類】
B65D 75/52 20060101AFI20160602BHJP
B65D 30/22 20060101ALI20160602BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
B65D75/52
B65D30/22 F
B65D30/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-12073(P2013-12073)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-141286(P2014-141286A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 淳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】柳内 幹雄
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−036213(JP,A)
【文献】
特開2007−118961(JP,A)
【文献】
特開2006−176207(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0023976(US,A1)
【文献】
実開平03−017044(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3073049(JP,U)
【文献】
特開2006−044796(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3137430(JP,U)
【文献】
特開2002−019795(JP,A)
【文献】
特開2009−012800(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/063589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/00,75/52
B65D 30/02,30/16,30/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側面フィルムと、第2の側面フィルムと、これらの間に挟まれた底フィルムとを有し、これらの周縁部がシールされており、シールされた前記周縁部に囲まれた部分が収納部となり、前記底フィルムが前記収納部の下方底面となる自立パウチであって、
前記第1の側面フィルムおよび前記第2の側面フィルムの側端の周縁部においてシールされた領域である側縁部の内部には、上下方向に所定の長さにわたってシールされていない領域である未シール領域が設けられており、前記未シール領域にエアが注入されてエア層が形成され、
前記側縁部には、前記エア層の上端から上方向に15mm以内の位置において、当該位置から前記エア層にかけて、前記第1の側面フィルムおよび前記第2の側面フィルムの切断を誘導する切断誘導部が形成されており、
前記切断誘導部は、前記第1の側面フィルムおよび前記第2の側面フィルムを貫通する、左右方向および上下方向にそれぞれ延びる、長さ1mm以上の2つの切り込みによって形成された十字形状のスリットである、自立パウチ。
【請求項2】
前記第1の側面フィルムおよび前記第2の側面フィルムの少なくとも一方には、前記切断誘導部またはその近傍において、前記切断誘導部の位置を示す表示がされている、請求項1に記載の自立パウチ。
【請求項3】
前記第1の側面フィルムと前記第2の側面フィルムとの間に挟まれシールされたスパウトをさらに備える、請求項1または2に記載の、自立パウチ。
【請求項4】
請求項1に記載の自立パウチの前記エア層のエア抜き方法であって、
前記パウチを、前記スリットの左右方向に延びる切り込みに沿って折り曲げて、折り目上に前記スリットの上下方向に延びる切り込みを露出させる第1の工程と、
前記第1の工程によって折り目上に露出した前記スリットの上下方向に延びる切り込みをきっかけとして、前記自立パウチを引き裂いて、切り込みを少なくとも前記エア層まで延伸することにより、前記エア層を開放する第2の工程とを含む、自立パウチのエア抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立パウチとそのエア抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、粘体、粉体、個体等の内容物を包装するための包装袋として、フィルムを重ね合わせてその周縁部をシールして形成したパウチが知られている。
【0003】
図11に特許文献1が開示する自立性のパウチ900の平面図を示す。パウチ900は、第1の側面フィルム901と第2の側面フィルム902との間に2つ折りにした底フィルム903を折り目側から挿入し、互いに接するフィルム間の周縁部をシールすることによって製造される。また、第1の側面フィルム901と第2の側面フィルム902との間に内容物を取り出すためのスパウト904が挟まれてシールされ取り付けられる。各フィルムの周縁部を除く領域が、内容物を収納する収納部905を構成する。各フィルムがシールされた領域の内部には、高さ方向に所定の長さにわたってシールされていない未シール領域906が設けられており、この領域にエアが注入されてエア層907が形成されている。底フィルム903を広げて第1の側面フィルム901と第2の側面フィルム902とを底部において筒形状とすることにより、パウチ900は自立させることが可能である。
【0004】
エア層907によって、第1の側面フィルム901および第2の側面フィルム902はエア層907およびその近傍において、折れ曲がりにくくなっている。このため、パウチ900を自立させる際、パウチ900全体の形も崩れにくく自立性が保たれやすくなっている。また、パウチ900を運搬したり内容物を取り出したりする際には、エア層907近傍が取っ手として機能するため、この部分をつかむことによって、パウチ900が持ちやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−123931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エア層907を設けたパウチ900は、内容物を取り出した後であっても、エア層907があることによってパウチ900を丸めることが困難であり、パウチ900を廃棄する際に嵩張り、廃棄しにくいという課題があった。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、自立性および持ちやすさに優れ、かつ、廃棄時に嵩張りにくいパウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の側面フィルムと、第2の側面フィルムと、これらの間に挟まれた底フィルムとを
有し、
これらの周縁部
がシール
されており、シールされた周縁部に囲まれた部分が収納部
となり、底フィルムが収納部の下方底面となる自立パウチであって、第1の側面フィルムおよび第2の側面フィルムの側端の周縁部においてシールされた領域である側縁部の内部には、上下方向に所定の長さにわたってシールされていない領域である未シール領域が設けられており、未シール領域にエアが注入されてエア層が形成され、側縁部には、エア層
の上端から上方向に15mm以内の位置において、当該位置からエア層にかけて、第1の側面フィルムおよび第2の側面フィルムの切断を誘導する切断誘導部が形成されている。切断誘導部は、第1の側面フィルムおよび第2の側面フィルムを貫通する、
左右方向および上下方向に
それぞれ延びる
、長さ1mm以上の2つの切り込みによって形成され
た十字形状のスリットである。
【0009】
また、第1の側面フィルムおよび第2の側面フィルムの少なくとも一方には、切断誘導部またはその近傍において、切断誘導部の位置を示す表示がされていることが好ましい。
【0014】
また、第1の側面フィルムと第2の側面フィルムとの間に挟まれシールされたスパウトをさらに備えることが好ましい。
【0016】
本発明は、また、上述のような自立パウチのエア層のエア抜き方法である。エア抜き方法は、パウチを
スリットの左右方向に延びる切り込みに沿って折り曲げて、折り目上に
スリットの上下方向に延びる切り込みを露出させる
第1の工程と、
第1の工程によって折り目上に露出したスリットの上下方向に延びる切り込みをきっかけとして、自立パウチを引き裂いて、切り込みを少なくともエア層まで延伸することにより、エア層を開放する
第2の工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自立性および持ちやすさに優れ、かつ、廃棄時に嵩張りにくいパウチを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るパウチの平面図
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るパウチのエア抜き方法を示す図
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るパウチの部分拡大図
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るパウチの平面図
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るパウチの変形例の部分拡大図
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るパウチのエア抜き方法を示す図
【
図8】本発明の第3の実施形態に係るパウチの平面図
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るパウチのエア抜き方法を示す図
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るパウチの変形例の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1に本実施形態に係るパウチ100の平面図を示し、
図2に、
図1に示すA−A´線に沿ったパウチ100の断面図を示す。パウチ100は、第1の側面フィルム101と、第2の側面フィルム102と、これらの間に2つ折りにした底フィルム103とを重ね合わせて形成される。これらのフィルムの互いに接するフィルム間の周縁部をシールすることで、収納部105が形成される。底フィルム103を広げ、第1の側面フィルム101と第2の側面フィルム102とを底フィルム103がシールされた側である底部において筒形状とすることにより、底フィルム103を底面としてパウチ100を自立させることが可能である。
【0020】
自立した状態のパウチ100における鉛直方向を上下方向とし、水平方向を左右方向と呼ぶ。第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の周縁部のシールされた領域のうち、左右方向の端部である側縁部108には、上下方向に所定の長さにわたって、シールされていない領域である未シール領域106が設けられている。未シール領域106には、エアが注入されてエア層107が形成され、
図2に示すように、未シール領域106において第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102は筒形状に膨らんでいる。第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102には、内容物を取り出すためのスパウト104がこれらのフィルムに挟まれてシールされている。スパウトは、なくてもよい。
【0021】
パウチ100においては、エア層107によって、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102はエア層107とその近傍において、折れ曲がりにくくなっている。このため、パウチ100を自立させる際、パウチ100全体の形も崩れにくく自立性が保たれやすくなっている。また、パウチ100を運搬したり内容物を取り出したりする際には、エア層107の周囲の第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102が取っ手として機能するため、この部分をつかむことによって、パウチ100は持ちやすくなっている。パウチ100は、形状が崩れにくく、安定的に保持できるため、内容物が少量であっても、取り出す際に取り出し口の位置を安定させ、意図した位置に内容物を移動することができる。
【0022】
側縁部108には、エア層107に近接する位置に、当該位置からエア層107にかけて、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の切断を誘導する切断誘導部として、十字形状のスリット111が形成されている。スリット111は、エア層107の上端近傍に設けられ、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を貫通して左右方向および上下方向に延びる2つの切り込みによって形成される。
【0023】
スリット111は、内容物を取り出した後のパウチ100を丸める際に、エア層107のエアを抜くために用いられる。
図3を参照してエアを抜く手順を説明する。まず
図3の(a)に示すように、スリット111の左右方向に延びる切り込みに沿って、パウチ100を折り曲げる。これによって、スリット111の上下方向に延びる切り込みが、折り目上に露出する。次に
図3の(b)に示すように、スリット111の上下方向に延びる切り込みをきっかけとして、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を引き裂いて、切り込みをエア層107まで延伸することにより、エア層107を開放する。これによりエア層107のエアが抜けるようになり、パウチ100を容易に丸めることができ、廃棄時に嵩張らないようにすることができる。また、パウチ100を折り曲げてから引き裂く必要があるため、通常の荷扱いにおいて不用意にスリット111からパウチ100が引き裂かれる可能性は低い。
【0024】
スリット111は、切り込みの延伸がエア層107に到達しやすいよう、エア層107の上端から上方向に15mm以内の位置に設けられることが好ましい。また、スリット111は、パウチ100の折り曲げがしやすいよう、左右方向の切り込みの長さが1mm以上あることが好ましく、引き裂きのきっかけとなりやすいよう、上下方向の切り込みの長さが1mm以上あることが好ましい。
【0025】
第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の少なくとも一方には、スリット111またはその近傍において、その存在、位置等を示す表示がされている。
図4に示す例では、エア抜きスポットの位置が円と文字とにより表示されている。また、スリット111の左右方向に設けられた切り込みに沿って、点線が表示され、点線に沿って折り曲げることを誘導している。なお、表示はこの例に限られず、多様な色、図形、記号等によって実施可能である。また、この表示に加えて、パウチ100の任意の位置に上述のエアを抜く手順を詳細に記載してもよい。
【0026】
パウチ100は、まず底部側の周縁部と側縁部108とをシールし、未シール領域106にエアを注入してエア層107を形成し、次に内容物を充填してから上端側の周縁部をシールすることによって製造される。未シール領域106へのエア層107の形成は、例えば未シール領域106の上端に、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を貫通する切り込みを設け、一方の側面フィルム側からエアノズルをあてがい、他方側にエアノズルの受け部材をあてがった状態で、エアノズルからエアを注入し、切り込みより下方の領域を含む所定範囲において未シール領域106を部分的にシールして、未シール領域106を縮小することによって行う。このように切り込みを形成してエア注入を行う場合、切り込みを上述の位置、形状および大きさで設けることにより、本実施形態におけるスリット111として用いることもできる。
【0027】
(第2の実施形態)
図5に本実施形態に係るパウチ200の平面図を示す。パウチ200はパウチ100と、切断誘導部において異なる。パウチ200において、切断誘導部は、エア層107の収納部105側の近傍において、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を貫通する、切り込み211である。切り込み211は、例えば、収納部105側に向かって凸形状となる曲線である。
図6の(a)に切り込みの他の例を示す。
図6の(a)に示す例では、切り込み212は上下方向に所定の長さで設けられた直線と、その両端部からエア層107に向かってそれぞれ延びる円弧とからなる形状である。また、切り込み211、212の代わりに、
図6の(b)に示すように、例えば、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を楕円形に切り抜いた孔213を設けてもよい。
【0028】
図7を参照して
図5に示すパウチ200のエア層107のエアを抜く手順を説明する。
図7の(a)に示すように、まず切り込み211に指を掛け、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を折り曲げる。次に
図7の(b)に示すように、切り込み211をきっかけとして、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を引き裂いて、切り込みをエア層107まで延伸することにより、エア層107を開放する。
図6の(a)に示す切り込み212を設けた場合も同様である。これによりエア層107のエアが抜けるようになり、パウチ100を容易に丸めることができ、廃棄時に嵩張らないようにすることができる。また、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を折り曲げてから引き裂く必要があるため、通常の荷扱いにおいて不用意に切り込み211からパウチ200が引き裂かれる可能性は低い。また、
図7の(c)に示すように、切り込みをさらにパウチ100の外縁まで延伸し、パウチ100のエア層107の一部を含む部分を引きちぎって分離してもよい。
【0029】
パウチ200に孔213が設けられている場合も、孔213に指を掛けて、孔213から少なくともエア層107に達するまで、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を引き裂くことにより、エア層107のエアを抜くことができる。
【0030】
切り込み211または切り込み212は、より確実にエア層107を引き裂くことができるよう、エア層107の上下方向の端部を除く中間部に近接して形成することが好ましい。また、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の少なくとも一方には、切り込み211、212、孔213、あるいはこれらの近傍において、その存在、位置等を示す表示がされていてもよい。
【0031】
(第3の実施形態)
図8に本実施形態に係るパウチ300の平面図を示す。パウチ300はパウチ100と、未シール領域および切断誘導部において異なる。パウチ300において、未シール領域306は、下端を含む所定の範囲において、左右方向に3mm以上の幅を有し、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の外縁から5mm以上離れている。また、パウチ300において、切断誘導部は、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の外縁から、上述の所定の範囲に形成されたエア層307にかけて、所定の範囲に表面に微細な傷を多数設けた易カット部311により形成されている。
【0032】
図9に示すように、易カット部311に沿って、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を引き裂いて、切り込みをエア層107まで延伸することにより、エア層107を開放することにより、エア層107のエアが抜けるようになり、パウチ100を容易に丸めることができ、廃棄時に嵩張らないようにすることができる。
【0033】
未シール領域306は、易カット部311の近傍領域が、外縁から5mm以上離れているため、エア層307の膨らみが外縁から離れており、易カット部311の形成のための傷加工が行ないやすく、また、易カット部311をつまみやすく引き裂きがしやすくなる。また、未シール領域306が、易カット部311の近傍領域において左右方向に3mm以上の幅を有するため、全幅にわたって疑似溶着することを防止し、エア層307を確実に形成できる。なお、
図8に示すように、未シール領域306の、易カット部311の近傍領域以外における左右方向の幅は、近傍領域における幅よりも大きくし、エア層307の膨らみをより大きくすることが好ましい。
【0034】
あるいは、
図10に示す例のように、未シール領域306は、左右方向に一様な幅を有するものとし、エア層307の下端より下方の外縁から、エア層307の下端にかけて、湾曲する形状の領域に設けた易カット部312を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、自立パウチ等に有用であり、とくに、自立性、持ちやすさ、廃棄しやすさ等の向上に有用である。
【符号の説明】
【0036】
100、200、300 パウチ
101 第1の側面フィルム
102 第2の側面フィルム
103 底フィルム
104 スパウト
105 収納部
106、306 未シール領域
107、307 エア層
108 側縁部
111 スリット
211、212 切り込み
213 孔
311、312 易カット部
900 パウチ
901 第1の側面フィルム
902 第2の側面フィルム
903 底フィルム
904 スパウト
905 収納部
906 未シール領域
907 エア層