特許第5935718号(P5935718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935718
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】毛髪変色剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20160602BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20160602BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/86
   A61K8/37
   A61K8/31
   A61K8/44
   A61K8/22
   A61K8/19
   A61Q5/10
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-39840(P2013-39840)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-152173(P2014-152173A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591028980
【氏名又は名称】山栄化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古澤 利光
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−126661(JP,A)
【文献】 特開2009−161491(JP,A)
【文献】 特開2010−150180(JP,A)
【文献】 特開2008−290949(JP,A)
【文献】 特開2009−062293(JP,A)
【文献】 特開2004−083454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する粘度10000mPa・s以上の第I剤と、下記第II剤とから少なくとも成り、第I剤と第II剤とを同重量にて混合して使用する、ことを特徴とする毛髪変色剤。
[高級アルコール、非イオン性界面活性剤、液状脂肪酸エステル、液状炭化水素、両性界面活性剤、及び酸化剤を含有し、粘度が2000〜5000mPa・sである第II剤]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、毛髪変色剤(染毛剤及び毛髪脱色剤等)、に関する。
【背景技術】
【0002】
2剤式染毛剤において、第II剤の粘度を2000〜5000mPa・s、と低くした場合、第I剤と第II剤とが混ぜ易くなる一方、混合物が垂れ落ち易くなる、という問題があった。
【0003】
従来、上記混ぜ易さと垂れ落ち防止とを両立させる方法として、第I剤の改良技術が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−12528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、第I剤の改良でなく、第II剤の改良を行なうことで、第II剤の粘度が2000〜5000mPa・s、と低い場合に、混ぜ易さと垂れ落ち防止とが両立され、しかも延びに優れ塗布し易い混合物を与える、第I剤と第II剤から少なくとも成る毛髪変色剤、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、本願発明を成すに到った。
【0008】
即ち、願発明は、アルカリ剤を含有する粘度10000mPa・s以上の第I剤と、下記第II剤とから少なくとも成り、第I剤と第II剤とを同重量にて混合して使用する、ことを特徴とする毛髪変色剤、を提供する。
[高級アルコール、非イオン性界面活性剤、液状脂肪酸エステル、液状炭化水素、両性界面活性剤、及び酸化剤を含有し、粘度が2000〜5000mPa・sである第II剤]
【発明の効果】
【0009】
本願発明により、第II剤の粘度が2000〜5000mPa・s、と低い場合に、混ぜ易さと垂れ落ち防止とが両立され、しかも延びに優れ塗布し易い混合物を与える、第I剤と第II剤から少なくとも成る毛髪変色剤、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明を、最良の実施形態に基づき、詳述する。
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、高級アルコールを含有する。高級アルコールとしては、具体的にはセトステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、(イソ)ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。高級アルコールとしては、C12〜22アルコールが好ましい。
【0011】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、非イオン性界面活性剤を含有する。非イオン性界面活性剤としては、具体的にはPOE(イソ)セチルエーテル、POE(イソ)ステアリルエーテル、POEセトステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEオレイルセチルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEブチルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEセチルフェニルエーテル等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテルが好ましい。上記「POEアルキル」において、EO重合度は10〜60、アルキルはC12〜22のもの、が好ましい。
【0012】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、液状脂肪酸エステルを含有する。液状脂肪酸エステルとしては、具体的にはパルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸イソステアリル等が挙げられる。液状脂肪酸エステルとしては、C12〜22脂肪酸とC3〜12アルコールとのエステルが好ましい。液状脂肪酸エステルの融点は、15℃以下が好ましい。
【0013】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、液状炭化水素を含有する。液状炭化水素としては、具体的には流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。液状炭化水素の融点は、0℃以下が好ましい。
【0014】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、両性界面活性剤を含有する。両性界面活性剤としては、具体的にはヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシホスホベタイン、ヤシ油アルキル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボン酸型、特にベタイン型のものが好ましい。
【0015】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、酸化剤を含有する。酸化剤としては、具体的には過酸化水素等が挙げられる。
【0016】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、上記成分以外に、添加剤を含有してよい。添加剤としては、例えば液状シリコーン[デカメチル(シクロ)ペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等]、固状炭化水素(具体的には融点40℃以上のもの、パラフィン等)、脂肪酸トリグリセリド(ヤシ油脂肪酸トリグリセリド等)、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン等)、カチオン性界面活性剤(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等)、キレート剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0017】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、高級アルコール1〜6(特に2〜4)重量%、非イオン性界面活性剤0.3〜3.0(特に0.5〜2.0)重量%、液状脂肪酸エステル0.1〜5.0(特に0.3〜4.0)重量%、液状炭化水素0.1〜5.0(特に0.3〜4.0)重量%、両性界面活性剤0.01〜3.0(特に0.1〜2.0)重量%、及び酸化剤0.5〜6.5(特に2.0〜6.0)重量%、それぞれ含有するのが好ましい。
【0018】
本願発明に係る毛髪変色剤第II剤においては、粘度2000〜5000(好ましくは2500〜4500)mPa・sである。粘度が高過ぎると、第I剤と第II剤とが混ぜにくくなる虞がある。
【0019】
本願発明に係る毛髪変色剤においては、毛髪変色剤第I剤と上記本願発明に係る毛髪変色剤第II剤とから少なくとも成り、第I剤と第II剤とを同重量にて混合して使用する。「毛髪変色剤」は、酸化染料を含有する場合は所謂、「染毛剤」と呼ばれるものに該当し、酸化染料を含有しない場合は所謂、「毛髪脱色剤」と呼ばれるものに該当する。
【0020】
毛髪変色剤第I剤においては、アルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、具体的にはアンモニア水等が挙げられる。
【0021】
毛髪変色剤第I剤においては、酸化染料を含有してよい。酸化染料としては、具体的には染料前駆体(o−又はp−フェニレンジアミン、o−又はp−アミノフェノール等)、染料前駆体と組み合わせられるカップラー(5−アミノ−o−クレゾール、レゾルシン、m−フェニレンジアミン、m−アミノフェノール、多価フェノール類)等が挙げられる。
【0022】
毛髪変色剤第I剤においては、上記成分以外に、添加剤を含有してよい。添加剤としては、前記毛髪変色剤第II剤において、「添加剤」、「高級アルコール」、「非イオン性界面活性剤」、及び「液状脂肪酸エステル」として例示したもの、等が挙げられる。
【0023】
毛髪変色剤第I剤においては、例えばアルカリ剤をpHが7.5〜13.0(特に8.0〜12.0)となる量、酸化染料を0重量%以上(特に0.1〜6.0)重量%、それぞれ含有してよい。
【0024】
毛髪変色剤第I剤においては、粘度10000mPa・s以上(典型的には20000〜60000)mPa・sである。
【実施例】
【0025】
<染毛剤第I剤の調製>
表1に示す配合組成に従って、各配合成分を均一混合して、染毛剤第I剤を調製した。
【0026】
【表1】
【0027】
<染毛剤第II剤の調製>
表2に示す配合組成に従って、各配合成分を均一混合して、染毛剤第II剤を調製した(各実施例1及び2、並びに比較例3〜6)。
【0028】
尚、比較例1及び2は、2層分離し、乳化物にならなかったため、染毛剤第II剤を調製することができなかった。
【0029】
【表2】
【0030】
<粘度測定方法>
・染毛剤第I剤の粘度測定条件:B型粘度計、測定温度25℃、測定時間1分、測定範囲5000〜50000mPa・s、ロータNo.4、12rpm。
・染毛剤第II剤の粘度測定条件:B型粘度計、測定温度25℃、測定時間1分、測定範囲1000〜10000mPa・s、ロータNo.3、12rpm。
【0031】
<効能評価試験>
染毛剤の第I剤20gと第II剤20gとを、ヘアカラー用カップに入れた。そして、ヘアカラー用ブラシを用い、均一になる迄(まで)、撹拌混合した。この際、第I剤と第II剤との混ぜ易さを、下記3段階評価基準に照らし、評価した。
【0032】
この混合物をブラシで適量、取り出し、市販ウィッグの毛髪へ塗布し、更に均一に延ばし広げる作業を行なった。この際、混合物の延び及び垂れ落ち防止を、下記3段階評価基準に照らし、評価した。
【0033】
「第I剤と第II剤との混ぜ易さ」の評価基準:均一になるのに要した時間が、「○」は「30秒未満」、「△」は「30〜60秒」、「×」は「60秒超過」。
【0034】
「混合物の垂れ落ち防止」の評価基準:延ばし広げる際に混合物が、「○」は「全く垂れない」、「△」は「やや垂れる」、「×」は「非常に垂れる」。
【0035】
「混合物の延び」の評価基準:「○」は「延び易く、毛髪への付着性も高い」、「△」は「延び及び付着性が適度にある」、「×」は「延びにくい」。