(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る防眩性フィルムは、基材フィルム上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、当該防眩層の表面の算術平均粗さRa(nm)と前記定義式で定義される相関長Ic(μm)とが、前記関係式(1)を満たすことを特徴とする。この特徴は、本発明の他の実施形態にも共通する技術的特徴である。
【0015】
前記防眩性フィルムは、本発明の効果発現の観点から、前記防眩層の表面の算術平均粗さRaと前記相関長が、下記関係式(2)を満たすことが好ましい。
【0016】
また、前記防眩性フィルムは、前記防眩層の表面の算術平均粗さRaが、350〜1300nmの範囲内であることが好ましい。
【0017】
また、前記防眩性フィルムは、前記防眩層の内部散乱に起因するヘイズが、0〜0.5%の範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、前記防眩性フィルムは、前記防眩層が、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有していることが好ましい。
【0019】
また、前記防眩性フィルムは、前記防眩層が、微粒子を含有し、前記微粒子及び前記活性線硬化型樹脂に対し非相溶性である樹脂を実質的に含有していないことが好ましい。
【0020】
また、前記防眩性フィルムは、前記防眩層の表面が、長手方向に周期を持たない不規則な突起形状を有していることが好ましい。
【0021】
また、本発明の他の一実施形態は、前記防眩性フィルムを製造する防眩性フィルムの製造方法であって、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂と、エステル類、グリコールエーテル類、及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種の溶剤とを含有する防眩層塗布組成物を、基材フィルム上に塗布する塗布工程と、減率乾燥区間の温度を90〜160℃の範囲内に維持して、前記防眩層塗布組成物を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた前記防眩層塗布組成物を硬化させて、前記基材フィルム上に防眩層を形成する硬化工程とを備えることを特徴とする防眩性フィルムの製造方法である。
【0022】
本実施形態に係る防眩性フィルムは、偏光板、画像表示装置、及びタッチパネル用部材に好適に具備することができる。
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0024】
本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、「表面ヘイズ値」及び「内部ヘイズ値」は、それぞれ、単に「表面ヘイズ」、「内部ヘイズ」とも表現する。
【0025】
(防眩性フィルムの概要)
本願でいう「防眩性フィルム」とは、反射した像や外光の輪郭をぼかす層、すなわち、防眩層をフィルム基材の表面に設けることで、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に、外光や反射像の映り込みを抑制したフィルムをいう。
【0026】
<表面形状>
本発明の実施形態に係る防眩性フィルムは、基材フィルム上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、当該防眩層の表面の算術平均粗さRa(nm)と下記定義式で定義される相関長Ic(μm)とが、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする。
関係式(1):0 ≦ Ic ≦ 21−8×exp((215−Ra)/40)−13×exp((215−Ra)/400)
定義式:相関長Ic = 二乗平均平方根粗さRq(μm)/二乗平均平方根傾斜Δq×2
1/2
【0027】
このような防眩性フィルムは、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立を達成できる。
【0028】
ここで、防眩層の表面の「算術平均粗さ(Ra)」、「二乗平均平方根粗さ(Rq)」、及び「二乗平均平方根傾斜(Δq)」は、JIS B0601:1994に記載されている定義等に準拠するものである。すなわち、当該JIS規格に基づき、防眩層の表面について得た粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)等である。具体的には、以下の方法で求めることができる。
【0029】
まず、防眩層の表面状態を、JIS B0601:1994に準じて、光学干渉式表面粗さ計(例えば、RST/PLUS、WYKO社製、Zygo社製 New View 5030)でフィルムの一定面積(本実施形態においては、約0.36mm×0.27mm)を測定し、表面形状マップを作成する。このマップは、例えば、320ピクセル×240ピクセルの画像であり、各ピクセルに高さデータを保持している粗さ曲面データである。
【0030】
例えば、算術平均粗さ(Ra)は、このマップの平均面から粗さ曲線までの高さ偏差の絶対値を全ピクセルについて合計し、平均することにより求められる。
【0031】
二乗平均平方根粗さ(Rq)は、高さ偏差の二乗を全ピクセルについて合計して平均し、平方根をとることにより求められる。
【0032】
二乗平均平方根傾斜(Δq)は、隣接するピクセルの傾きデータの二乗を全ピクセルについて合計して平均し、平方根をとることにより求められる。
【0033】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記防眩層の表面の算術平均粗さRa(nm)と相関長Ic(μm)とが、下記関係式(2)を満たすことが好ましい。
関係式(2): 0 ≦ Ic ≦17−6×exp((225−Ra)/40)−11×exp((225−Ra)/400)
【0034】
なお、関係式(1)と関係式(2)との右辺(指数関数で表現した式)は、光の波動性を考慮したランダムな凹凸面での光の散乱強度計算法(「光・電波解析の基礎」コロナ社参照)によって直線透過方向への光強度がある一定値以下となる点をプロットして求められた曲線の近似曲線である。粗さがあまり大きくない凹凸面では、光の波動性のために、凹凸面で実質的には散乱されない成分が生じるが、この成分の強度が一定値以下であればモアレ縞の解消度合(モアレ縞の低減度合)が高くなることを示している。
【0035】
本実施形態においては、前記防眩層の表面の算術平均粗さRaが、350〜1300nmの範囲内であることが好ましい。更に好ましくは、400〜1000nmの範囲内である。このような範囲内にすることによりモアレ縞の発生をより低減できる。よって、モアレ縞の解消を一層改良することができる。すなわち、モアレ縞の問題をより解消できる。
【0036】
本実施形態においては、前記防眩層の表面が、長手方向に周期を持たない不規則な突起形状を有していることが、視認性の観点から、好ましい。
【0037】
前記範囲の算術平均粗さRaとするため突起形状の高さは、20nm〜6μmが好ましい。また突起形状の幅は50nm〜300μm、好ましくは、50nm〜100μmである。上記突起形状の高さ、及び幅は断面観察から求めることができる。よりわかりやすくするために、
図1に突起の説明図を示した。
【0038】
次に突起形状について説明する。
図1に示されているように、断面観察の画像に中心線aを引き、山の麓を形成する線b、cと中心線aとの二つの交点の距離を、突起サイズの幅tとした。また、山頂と中心線aまでの距離を突起サイズの高さhとして求められる。
【0039】
本実施形態においては、防眩性フィルムの防眩層の10点平均粗さRzは、算術平均粗さ(中心線平均粗さ)Raの10倍以下、平均山谷距離Smは5〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差は0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面は10%以上が好ましい。このように設計することで、白呆け抑制効果が得られる。
【0040】
本実施形態において、二乗平均平方根粗さ(Rq)は、モアレ縞の低減の観点から、400〜1700nm(0.4〜1.7μm)であることが好ましい。
【0041】
二乗平均平方根傾斜(Δq)は、白呆け抑制の観点から、0.01〜0.3であることが好ましい。
【0042】
したがって、相関長は、両者の観点から、2〜240μmであることが好ましい。
【0043】
前記Ra、Sm、Rz、Rq、及びΔqは、JIS B0601:1994に準じて光学干渉式表面粗さ計(たとえば、RST/PLUS、WYKO社製、Zygo社製 New View 5030)で測定した値である。
【0044】
本実施形態に係る防眩性フィルムは、前記防眩層の内部散乱に起因するヘイズが、0〜1.0%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内にすることにより、視認性を一層改良することができる。
【0045】
前記した突起形状を形成する際、前記範囲の内部ヘイズにコントロールし、かつ突起形状の算術平均粗さRaを前記範囲に制御し、防眩層が微粒子及び活性線硬化型樹脂に対し非相溶性である樹脂を実質的に含有しないことで、本発明の目的効果が良好に発揮される。内部ヘイズとしては、更に好ましくは0〜0.5%である。
【0046】
内部ヘイズは、以下の手順で測定することができる。防眩性フィルムの表面及び裏面にシリコーンオイルを数滴滴下し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)二枚で、裏表より挟む。表裏をガラスで挟み込んだ防眩性フィルムを、完全に二枚のガラス板と光学的に密着させ、この状態でヘイズ(Ha)をJIS−K7105及びJIS K7136に準じて測定する。次に、ガラス板二枚の間にシリコーンオイルのみ数滴滴下して挟みこんでガラスヘイズ(Hb)を測定する。そして、防眩性フィルムをガラスで挟み込んだヘイズ(Ha)から、ガラスヘイズ(Hb)を引きくことで、内部ヘイズ(Hi)は算出できる。また、表面ヘイズ(フィルムの表面散乱に起因するヘイズ)は3〜40%であることが好ましい。表面ヘイズは、全ヘイズから内部ヘイズを引くことで求められる。全ヘイズは3〜40%であることが好ましい。
【0047】
本実施形態に係る防眩性フィルムは、防眩層が表面凹凸を形成する突起形状を有し、その突起形状が長手方向に不規則な形状の突起であり、その配置も不規則な配置であることが好ましい。このような突起形状を有することで、本発明の目的効果が良好に発揮される。
【0048】
本実施形態に係る防眩性フィルムの防眩層が有する「不規則な形状の突起」とは、表面凹凸が型押しにより形成された長さ方向に周期的に規則的な形状を持たず、形も大きさも定まらない様々な形状の突起をさす。これらに限定はされないが、例えば、
図2に示すような、防眩層1の表面上に形成される形状の突起2が挙げられる。すなわち、
図2に示す幅も高さも異なる突起2が、不規則な形状の突起として例示される。また、「不規則な配置」とは、前記不規則な傾向の突起が規則的に(例えば、等間隔などで)配置されているのではなく、ランダムな間隔で不規則に配置されており、等方的であっても、異方的であってもよいことをさす。
【0049】
なお、上述したような特徴を有する防眩層は、詳細については後述するが、上記表面形状は、例えば、防眩層塗布組成物の乾燥工程における減率乾燥区間の処理温度を高温制御し、樹脂の塗膜対流を発生させ、防眩層表面に不均一な状態を作り、この不均一な表面状態で硬化し、塗膜を形成する方法などによって得ることができる。このような方法で塗膜を形成することで、防眩層の膜強度が向上する。また、防眩層塗布組成物の乾燥工程における減率乾燥区間の処理温度を高温条件に制御する方法は、本発明の目的効果に加えて、生産性にも優れる点で好ましい。
【0050】
<製造方法>
また、前記防眩性フィルムの製造方法は、基材フィルム上に防眩層を有し、上記関係式(1)を満たすものを製造することができれば、特に限定されない。この製造方法は、具体的には、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂と、エステル類、グリコールエーテル類、及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種の溶剤とを含有する防眩層塗布組成物を、基材フィルム上に塗布する塗布工程と、減率乾燥区間の温度を90〜160℃の範囲内に維持して、前記防眩層塗布組成物を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた前記防眩層塗布組成物を硬化させて、前記基材フィルム上に防眩層を形成する硬化工程とを備える製造方法が挙げられる。このような製造方法によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立を達成できる防眩性フィルムが得られる。前記塗布は、硬化後の厚みが所定の厚みになるように、基材フィルム上に防眩層塗布組成物を塗布できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、後述するような塗布方法が挙げられる。乾燥及び硬化は、上記の条件を満たし、基材フィルム上に防眩層を形成できる方法であれば、特に限定されず、後述する方法が挙げられる。
【0051】
<防眩層を構成する樹脂等>
本実施形態に係る防眩層は、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有していることが好ましい。このような範囲内にすることにより、所望の表面形状を作製しやすくなる。すなわち、得られた防眩性フィルムの防眩層の表面形状が、所望の形状により近いものとなる。よって、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立をより図ることができる。
【0052】
さらに、当該防眩層が、微粒子及び前記活性線硬化型樹脂に対し非相溶性である樹脂を実質的に含有していないことが、視認性の観点から、好ましい。
【0053】
なお、本願において、「非相溶性」とは、二種類以上の樹脂の溶融混合物の融解温度Tm又はガラス転移点Tgを測定・観察したときに、当該溶融混合物を構成する樹脂それぞれ単独のピークが観察されるものをいう。また、透過型電子顕微鏡観察においてそれぞれの相が実質的に観察されるものをいう。一方、「相溶性」とは、同種又は二種類以上の樹脂の溶融混合物の融解温度Tm又はガラス転移点Tgを測定・観察したときに、当該溶融混合物のピークが一個以下観察されるものをいう。
【0054】
本実施形態において、活性線硬化型樹脂(詳細は後述する。)に対し非相溶性である樹脂としては、(メタ)アクリル系やアクリル系の単量体を重合又は共重合して得られる樹脂やポリエステル樹脂、更に、後述する基材フィルムにおいて用いられる熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂などが挙げられる。
【0055】
微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子といった微粒子が挙げられ、具体的には無機微粒子としては、酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、などを挙げることができる。また、有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、又はメラミン系樹脂粉末等を添加することができる。
【0056】
なお、本願において、「実質的に含有しない」とは、融解温度Tm又はガラス転移点Tgを測定・観察したときに、上記相溶性に影響を及ぼす最低限の量より少ない含有量であることをいう。当該最低限の量は、粒子や非相溶性である樹脂の種類・性質によって異なるが、例えば、一般的には、ハードコート層中の含有量が、フィルム基材からの抽出物成分を除き、0.01質量%以下である。
【0057】
本実施形態に係る防眩層は、活性線硬化樹脂を含有すること、すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう。)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層とすることが好ましい。
【0058】
活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。
【0059】
活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
【0060】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0061】
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に二個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に一個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、同一分子内に三個以上のエチレン性不飽和基及び一個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。
【0062】
これらの市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、ライトアクリレートTMP−A、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。
【0063】
また、単官能アクリレートを用いても良い。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
【0064】
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=70:30〜99:2で含有することが好ましい。活性線硬化樹脂は、単独又は二種以上混合しても良い。また、25℃における活性線硬化樹脂の粘度は、好ましくは20mPa・s以上、3000mPa・s以下、更に好ましくは20mPa・s以上、2000mPa・s以下である。このような低粘度の活性線硬化樹脂を用いることで、前述した突起形状と算術平均粗さRaが得られやすい。また、活性線硬化樹脂の粘度が20mPa・s以上の粘度であれば高官能数のモノマーを用いることが出来て、十分高い硬化性が得られ、3000mPa・s以下の粘度であれば、乾燥工程において活性線硬化樹脂の十分な流動性が得られやすい。
【0065】
なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃の条件にて測定した値である。
【0066】
防眩層には、活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及び、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
【0067】
また、防眩層には、帯電防止性を付与するために導電剤を含有しても良い。好ましい導電剤としては、π共役系導電性ポリマーやイオン液体などを挙げることができる。
【0068】
防眩層には、塗布性の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素−シロキサングラフト化合物、或いはHLB値が3〜18の化合物を含有しても良い。HLB値が3〜18の化合物について説明する。HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、親水性−親油性−バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
【0069】
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。或いはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、これに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。
【0070】
花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、KF−6004(5)。
【0071】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンなどを挙げることができ、上記信越化学工業社製のKFシリーズなどを挙げることができる。アクリル系界面活性剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−350、BYK−352などの市販品化合物を挙げることができる。フッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック RSシリーズ、メガファックF−444、メガファックF−556などを挙げることができる。フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。防眩層は、上記した防眩層を形成する成分を溶剤で希釈して防眩層塗布組成物として、この防眩層塗布組成物を以下の方法でフィルム基材上に塗布、乾燥、硬化して防眩層を設けることが好ましい。溶剤としては、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルコール類(エタノール、メタノール、ブタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール)、炭化水素類(トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン)、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなど)などを好ましく用いることができる。また、これら溶剤の中でもグリコールエーテル類或いはアルコール類を前記活性線硬化樹脂100質量部に対して、20〜200質量部の範囲で用いることで、防眩層塗布組成物を基材フィルムに塗布後、防眩層塗布組成物の溶剤が蒸発しながら、防眩層を形成していく過程で、樹脂の対流が生じやすく、その結果、防眩層で、不規則な表面粗れが発現しやすく、前記算術平均粗さRaに制御しやすいため好ましい。
【0072】
防眩層の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは2〜15μmである。
【0073】
防眩層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。これら塗布方法を用いて防眩層を形成する防眩層塗布組成物を塗布し、塗布後、乾燥し、活性線を照射(UV硬化処理とも言う)し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理することで形成できる。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、鉛筆硬度に優れた防眩層を得ることができる。
【0074】
乾燥は、減率乾燥区間の温度を90℃以上の高温処理で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は90℃以上、160℃以下である。減率乾燥区間の温度を高温処理とすることで、防眩層の形成時に塗膜樹脂の対流が生じやすくなるため、その結果、防眩層表面に不規則な表面粗れが発現しやすく、前記算術平均粗さRaに制御しやすいため好ましい。
【0075】
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量はすべて塗膜表面の溶剤蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていき、塗膜の活性線硬化型樹脂の温度が上昇する。これにより、活性線硬化型樹脂の粘度が低下し、流動性が増すことで、塗膜樹脂の対流が生じると考えられる。
【0076】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0077】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm
2、好ましくは50〜300mJ/cm
2である。
【0078】
活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は二軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
【0079】
また防眩層は、後述する基材フィルムで説明する紫外線吸収剤をさらに含有しても良い。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成としては、防眩層が二層以上で構成され、かつ基材フィルムと接する防眩層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0080】
紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:防眩層構成樹脂=0.01:100〜10:100で含有することが好ましい。二層以上設ける場合、基材フィルムと接する防眩層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。二層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に二層以上の防眩層をwet on wetで塗布して、防眩層を形成することである。第1防眩層の上に乾燥工程を経ずに、第2防眩層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
【0081】
なお、本実施形態に係る防眩性フィルムは、硬度の指標で有る鉛筆硬度がH以上、より好ましくは3H以上である。3H以上であれば、液晶表示装置の偏光板化工程で、傷が付きにくいばかりではなく、屋外用途で用いられることが多い、大型の液晶表示装置や、デジタルサイネージ用液晶表示装置の表面保護フィルムとして用いた際も優れた機械特性を示す。鉛筆硬度は、作製した防眩性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。次いで、基材フィルムについて説明する。
【0082】
<基材フィルム>
基材フィルムは、製造が容易であること、防眩層と接着し易いこと、光学的に等方性であることが好ましい。また、本実施形態では、基材フィルムを偏光板保護フィルムとして使用する。
【0083】
上記性質を有した基材フィルムであれば何れでもよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を使用することができる。これらの内、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、及びKC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本実施形態においては、セルロースエステルフィルムが防眩層で上記した突形状が得られやすいこと、製造性、コスト面から好ましい。基材フィルムの屈折率は、1.30〜1.70であることが好ましく、1.40〜1.65であることがより好ましい。屈折率は、アタゴ社製 アッペ屈折率計2Tを用いてJIS K7142の方法で測定する。
【0084】
次に、基材フィルムとして好ましいセルロースエステルフィルムについてより詳細に説明する。
【0085】
(セルロースエステルフィルム)
セルロースエステルフィルムは、上記基材フィルムとしての特徴を有するものであれば特に限定はされないが、セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステルともいう。)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0086】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
【0087】
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0〜56.0%が好ましく用いられる。また、市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
【0088】
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0089】
平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
【0090】
セルローストリアセテートとしては、アセチル基置換度が、2.80〜2.95であって数平均分子量(Mn)が125000以上155000未満、重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量(Mn)が155000以上180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。さらに、セルローストリアセテートAとセルローストリアセテートBを併用する場合には、質量比でセルローストリアセテートA:セルローストリアセテートB=100:0〜20:80までの範囲であることが好ましい。セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
【0091】
特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
【0092】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
【0093】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0094】
(セルロースエステル樹脂・熱可塑性アクリル樹脂含有フィルム)
基材フィルムとしては、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含有し、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であるフィルムを用いても良い。
【0095】
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0096】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは、110000〜500000の範囲内である。
【0097】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、測定条件含めて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。また、市販品も使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は二種以上を併用することもできる。また、アクリル樹脂には、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体に(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体を用いてもよい。前記グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体がコア(core)を構成し、その周辺に前記(メタ)アクリル系樹脂がシェル(shell)を構成するコア−シェルタイプのグラフト共重合体であることが好ましい。
【0098】
基材フィルムにおけるアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、基材フィルムの55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。
【0099】
(アクリル粒子)
基材フィルムは、脆性の改善に優れる点から、アクリル粒子を含有しても良い。アクリル粒子とは、前記熱可塑性アクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有する基材フィルム中に粒子の状態(非相溶状態ともいう。)で存在するアクリル成分を表す。
【0100】
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”及びクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし二種以上を用いることができる。基材フィルムにアクリル粒子を添加する場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂との混合物の屈折率とアクリル粒子の屈折率が近いことが、透明性が高いフィルムを得る点では好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0101】
アクリル微粒子は、該フィルムを構成するアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量に対して、含有質量比でアクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂総質量=0.5:100〜30:100の範囲で含有させることで、目的効果がより良く発揮される点から好ましく、更に好ましくは、アクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量=1.0:100〜15:100の範囲である。
【0102】
〔微粒子〕
基材フィルムは、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましく用いられる。
【0103】
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0104】
(その他の添加剤)
基材フィルムには、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することもできる。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0105】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。またポリエステル系可塑剤の好ましくは、芳香族末端エステル系可塑剤である。芳香族末端エステル系可塑剤としては、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸及び少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールとを反応させた構造を有するエステル化合物が好ましく、最終的な化合物の構造としてアジピン酸残基及びフタル酸残基を有していればよく、エステル化合物を製造する際には、ジカルボン酸の酸無水物又はエステル化物として反応させてもよい。
【0106】
ベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、安息香酸であることが最も好ましい。また、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0107】
炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられる。これらの中では特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用してもよい。
【0108】
芳香族末端エステル系可塑剤は、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは350〜3000の範囲である。また酸価は、1.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基価(水酸基価)は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基価(水酸基価)は15mgKOH/g以下のものである。
【0109】
可塑剤は、基材フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。具体的には、以下に示す化合物(B−1〜B−10)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
さらに、基材フィルムには、糖エステル化合物が含有されていても良い。糖エステル化合物とは、下記単糖、二糖、三糖又はオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物であり、より具体的な例示としては、一般式(1)で表される化合物などをあげることができる。
【0111】
(式中、R
1〜R
8は、置換又は無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R
1〜R
8は、同じであっても、異なっていてもよい。)
【0112】
以下に一般式(1)で示される化合物をより具体的(化合物1−1〜化合物1−23)に示すが、これらに限定はされない。なお、下表中のRは、R
1〜R
8のいずれかを表す。また、下表中の「平均置換度」は、R
1〜R
8の置換度を示す。例えば、平均置換度が6.0であれば、R
1〜R
8のうち、下記のRの何れかで置換されている個数が、平均6個であることを示す。そして、一般式(1)で示される化合物におけるR
1〜R
8は、Rに置換されたもの以外は、無置換、すなわち、水素原子が結合されている。
【0113】
基材フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0114】
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0115】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0116】
これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類を好ましく使用できる。さらに、基材フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、基材フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0117】
基材フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0118】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0119】
基材フィルムは、より高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、基材フィルムの張力軟化点が、105〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断でき好ましく、特に110〜130℃が好ましい。
【0120】
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、光学フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/分の昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0121】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0122】
液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして基材フィルムが用いられる場合は、吸湿による寸法変化によりムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色むらといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。このため、寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。基材フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0123】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0124】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0125】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0126】
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
【0127】
また、基材フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。基材フィルムの厚さは、10μm以上であることが好ましい。より好ましくは20μm以上である。厚さの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚さは用途により適宜選定することができる。
【0128】
基材フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0129】
(基材フィルムの製膜)
基材フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
【0130】
セルロースエステル樹脂やアクリル樹脂を溶解に用いた溶媒の残留抑制の点からは溶融流延製膜法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出し法が好ましい。また、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは流延法による溶液製膜が好ましい。また、フィルム形成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラム上又はエンドレスベルト上に押出し製膜する方法も溶融流延製膜法として含まれる。
【0131】
〔有機溶媒〕
基材フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0132】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0133】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の三種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0134】
〔溶液流延法〕
基材フィルムは、溶液流延法によって製造することができる。溶液流延法では、樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0135】
ドープ中のセルロースエステル、及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0136】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0137】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0138】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0139】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0140】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
【0141】
残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
【0142】
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0143】
また、セルロースエステルフィルム或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0144】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0145】
〔延伸工程〕
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次又は同時に延伸することができる。互いに直交する二軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0146】
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120〜200N/mが好ましく、140〜200N/mがさらに好ましい。140〜160N/mが最も好ましい。
【0147】
延伸する際は、基材フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
【0148】
基材フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本実施形態の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。
【0149】
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0150】
延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れる為、好ましい。フィルム表面を粗らすことは、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特に防眩層の密着性が向上するため好ましい。
【0151】
〔溶融製膜法〕
基材フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
【0152】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0153】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し一軸や二軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることによりできる。
【0154】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0155】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、こと前に混合しておくことが好ましい。
【0156】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0157】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0158】
上記ペレットを一軸や二軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0159】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0160】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0161】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0162】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0163】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
【0164】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0165】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0166】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0167】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0168】
(基材フィルムの物性)
本実施形態における基材フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は、10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
【0169】
本実施形態に係る基材フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは、1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0170】
また、基材フィルムの算術平均粗さRaは、好ましくは2.0〜4.0nm、より好ましくは2.5〜3.5nmである。
【0171】
<機能性層>
本実施形態に係る防眩性フィルムは、バックコート層、反射防止層等の機能性層を設けることができる。
【0172】
(バックコート層)
本実施形態に係る防眩性フィルムは、基材フィルムの防眩層を設けた側と反対側の面に、カールや防眩性フィルムを巻き状で保管した際のくっつき防止の為に、バックコート層を設けてもよい。
【0173】
バックコート層は、上記目的のため、微粒子を含有することが好ましく、微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。また、前記微粒子を分散する目的や後述するバインダーを溶解して塗布組成物とするために、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、防眩層で説明した溶剤が好ましい。バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下である。またバインダーとして、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0174】
(反射防止層)
本実施形態に係る防眩性フィルムは、防眩層上に直接又は他の層を介して反射防止層である低屈折率層を設けることで、低屈折率層と防眩層との密着性に優れ、更に低屈折率層の斑点ムラの発生を良好に抑制でき、優れた外観が得られる点から、防眩性反射防止フィルムに本実施形態に係る防眩性フィルムを用いることが好ましい。低屈折率層からなる反射防止層は、低屈折率層のみの単層構成でもよいが、多層でも良い。具体的には、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したりできる。また、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体又は防眩層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されても良い。更に、二層以上の高屈折率層と二層以上の低屈折率層とを交互に積層した四層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。反射防止層の好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
【0175】
基材フィルム/防眩層/低屈折率層
基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に、更に防汚層を設けることもできる。防汚層としては、含フッ素有機化合物が好ましく用いられる。
【0176】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。また、上記層構成では、適宜中間層を設けてもよく、例えば導電性ポリマー微粒子(例えば架橋カチオン微粒子)又は金属酸化物微粒子(例えば、SnO
2、ITO等)を含む帯電防止層等は好ましい。
【0177】
〈低屈折率層〉
低屈折率層では、基材フィルムの屈折率より低い層を形成し、該屈折率は23℃、波長550nm測定で、屈折率が1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0178】
また、低屈折率層の膜厚は、特に限定されるものではないが、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。また、低屈折率層は、中空球状シリカ系微粒子を用いることが屈折率調整や機械強度の点から好ましい。
【0179】
(中空球状シリカ系微粒子)
中空球状微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。なお、低屈折率層には(I)複合粒子又は(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
【0180】
なお、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
【0181】
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
【0182】
複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al
2O
3、B
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、CeO
2、P
2O
3、Sb
2O
3、MoO
3、ZnO
2、WO
3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF
2、NaF、NaAlF
6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al
2O
3、B
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、CeO
2、P
2O
3、Sb
2O
3、MoO
3、ZnO
2、WO
3等との一種又は二種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO
2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO
2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO
2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO
2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。このような中空球状微粒子は、以下の第1〜第3工程から製造できる。
【0183】
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、又は、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
【0184】
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウム又は有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩又は有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0185】
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
【0186】
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2又はZrO
2等の無機酸化物又はこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
【0187】
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、又は、シード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
【0188】
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOX)に換算し、MOX/SiO
2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOX/SiO
2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
【0189】
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、又は、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
【0190】
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
【0191】
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液又は加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。なおシリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
【0192】
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
【0193】
また、空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
【0194】
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)
4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0195】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0196】
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、又は有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
【0197】
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物又はケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物又はケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
【0198】
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)
4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0199】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0200】
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、又は有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
【0201】
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物又はケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物又はケイ酸液は添加される。
【0202】
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体又は多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
【0203】
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
【0204】
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。また、市販の上記SiO
2微粒子を用いることができる。市販の粒子の具体例としては、触媒化成工業社製P−4等が挙げられる。
【0205】
外殻層を有し、内部が多孔質又は空洞である中空球状シリカ系微粒子Aの低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0206】
(テトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物)
低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物が含有されることが好ましい。低屈折率層用の素材として、前記無機珪素酸化物以外に有機基を有する珪素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることができる。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。特にテトラアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。
【0207】
また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。特にフッ素含有のシラン化合物を用いることは、層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましい。
【0208】
上記テトラアルコキシシランを加水分解する際には、前記無機微粒子を混合することが膜強度を高める上で好ましい。低屈折率層は、前記珪素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0209】
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0210】
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
【0211】
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0212】
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
【0213】
二種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
【0214】
また低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むこともできる。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマー又は(3)のバインダーポリマーであることが好ましい。(2)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時又は塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。上記(1)〜(3)のうちの二つ又は全てを組み合わせて実施することが好ましく、(1)と(3)の組み合わせ、又は(1)〜(3)全ての組み合わせで実施することが特に好ましい。(1)表面処理、(2)シェル及び(3)バインダーについて順次説明する。
【0215】
(1)表面処理
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、又は物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子がSiO
2からなる場合は、前述のシランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施できる。
【0216】
カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施できる。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、又はこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
【0217】
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖又は側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーが更に好ましい。ポリアクリル酸エステル又はポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸又はポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことが更に好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0218】
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例としては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレン及びその誘導体(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例えば、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられる。
【0219】
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。但し、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5〜90体積%含まれていることが好ましく、15〜80体積%含まれていることが更に好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
【0220】
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わり又はそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシ基、メチロール基及び活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基は、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応及び架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0221】
バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時又は塗布後に重合反応(必要ならば更に架橋反応)により形成することが好ましい。低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0222】
また、低屈折率層が、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう。)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。
【0223】
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることができる。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシ基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう一つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入できることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシ、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の組み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
【0224】
また、上記モノマーに加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
【0225】
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
【0226】
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることができる。
【0227】
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することができる。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
【0228】
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
【0229】
(カチオン重合性化合物)
低屈折率層は、バインダーとしてカチオン重合性化合物を含有しても良い。カチオン重合性化合物としては、エネルギー活性線照射や熱によってカチオン重合を起こして樹脂化するものであればいずれも使用できる。具体的には、エポキシ基、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル化合物、ビニルオキソ基等が挙げられる。中でもエポキシ基やビニルエーテル基などの官能基を有する化合物が本実施形態においては、好適に用いられる。エポキシ基又はビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0230】
また、オキセタン化合物も挙げることができる。オキセタン化合物としては、分子中に少なくとも一個のオキセタン環を有する化合物であればよい。
【0231】
更に、必要に応じて水素結合形成基を有するモノマーを含む(共)重合体で、主鎖や側鎖にオキセタニル基を有する数平均分子量が2万以上の反応性ポリマーなども使用できる。上記したカチオン重合性化合物は、低屈折層塗布組成物中では固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが、低屈折率層塗布組成物の安定性の点から、好ましい。
【0232】
(カチオン重合促進剤)
カチオン重合性化合物の重合を促進する化合物として、公知の酸や光酸発生剤を挙げることができる。光酸発生剤としては、カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。具体的には、例えば、オニウム化合物、有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物が挙げられ、好ましくは、オニウム化合物である。オニウム化合物としては、以下の各式に示されるジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などが好適に使用される。
【0233】
ArN
2+Z
−、
(R)
3S
+Z
−、
(R)
2I
+Z
−
式中、Arはアリール基を表し、Rはアリール基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、一分子内にRが複数回現れる場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Z
−は非塩基性でかつ非求核性の陰イオンを表す。
【0234】
上記各式において、Ar又はRで表されるアリール基も、典型的にはフェニルやナフチルであり、これらは適当な基で置換されていてもよい。また、Z
−で表される陰イオンとして具体的には、テトラフルオロボレートイオン(BF
4−)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン(B(C
6F
5)
4−)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF
6−)、ヘキサフルオロアーセネートイオン(AsF
6−)、ヘキサフルオロアンチモネートイオン(SbF
6−)、ヘキサクロロアンチモネートイオン(SbCl
6−)、硫酸水素イオン(HSO
4−)、過塩素酸イオン(ClO
4−)などが挙げられる。
【0235】
その他のオニウム化合物としては、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩、ホウ素塩等が挙げられる。
【0236】
中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0237】
これら化合物の多くは市販されているので、そのような市販品を用いることができる。市販の開始剤としては、例えば、ダウケミカル日本(株)から販売されている“サイラキュアUVI−6990”(商品名)、各々(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマーSP−150”(商品名)、“アデカオプトマーSP−300”(商品名)、ローディアジャパン(株)から販売されている“RHODORSIL PHOTOINITIAOR2074”(商品名)などが挙げられる。
【0238】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、又は酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等のブレンステッド酸、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等のルイス酸が挙げられる。
【0239】
ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、フタル酸、無水フタル酸などの芳香族多価カルボン酸又はその無水物やマレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸などの脂肪族多価カルボン酸又はその無水物なども挙げられる。
【0240】
酸としては、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの酸や光酸発生剤は、カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.1〜20質量部の割合が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量部の割合で添加することである。添加量が上記範囲において、硬化性組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0241】
(ラジカル重合性化合物)
また、低屈折率層は、バインダーとしてラジカル重合性化合物を含有することもできる。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。また、ラジカル重合性化合物としては、分子内に二個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ラジカル重合性化合物の添加量は、低屈折層塗布組成物中では固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが、低屈折層塗布組成物の安定性の点から、好ましい。
【0242】
(ラジカル重合促進剤)
ラジカル重合性化合物の硬化促進のために、光重合開始剤をラジカル重合性化合物と併用して用いることが好ましい。光重合開始剤とラジカル重合性化合物とを併用して用いる場合には、光重合開始剤とラジカル重合性化合物とを質量比で20:100〜0.01:100含有することが好ましい。
【0243】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0244】
低屈折率層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、低屈折率層を形成する上記塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで形成される。
【0245】
塗布量は、ウェット膜厚として、0.05〜100μmが適当で、好ましくは、0.1〜50μmである。また、ドライ膜厚が上記膜厚となるように塗布組成物の固形分濃度は調整される。
【0246】
また、低屈折率層を形成後、温度50〜160℃で加熱処理を行う工程を含んでもよい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば50℃であれば、好ましくは3日間以上30日間未満の期間、160℃であれば10分間以上1日間以下の範囲が好ましい。硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、紫外線等の光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、更に好ましくは80〜150℃である。光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm
2〜1J/cm
2であることが好ましく、100〜500mJ/cm
2がより好ましい。
【0247】
ここで、照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0248】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
高屈折率層及び中屈折率層には、金属酸化物微粒子が含有されることが好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあってもよい。また、これらの混合物でもよい。中でも有機チタン化合物、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
【0249】
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
【0250】
高屈折率層の屈折率は、具体的には、基材フィルムの屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.5〜2.3の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的である為、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.85〜2.50であることが更に好ましい。
【0251】
中屈折率層の屈折率は、基材フィルムの屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。具体的には中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。
【0252】
高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30〜100nmであることが最も好ましい。
【0253】
高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0254】
高屈折率層及び中屈折率層のバインダーポリマーとしては架橋ポリマーが好ましい。架橋ポリマーの例として、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。ポリマーの重合反応は、光重合反応又は熱重合反応を用いることができる。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる後述する熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0255】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液(モノマーを含む無機微粒子の分散液)を加熱して、モノマー(又はオリゴマー)の重合を促進してもよい。また、塗布後の光重合反応の後に加熱して、形成されたポリマーの熱硬化反応を追加処理してもよい。
【0256】
中及び高屈折率層は、上記した中及び高屈折率層を形成する成分を、溶剤で希釈して塗布層組成物として、防眩層上に塗布、乾燥、硬化して設けることができる。硬化の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射光量は20mJ/cm
2〜1J/cm
2が好ましく、更に好ましくは、100〜500mJ/cm
2である。
【0257】
(反射防止層の反射率)
防眩性反射防止フィルムの反射防止層は、450〜650nmにおける平均反射率が、1.5%以下が好ましく、特に好ましくは1.2%以下である。また、この範囲における最低反射率は0.00〜0.5%にあることが好ましい。
【0258】
反射防止層の屈折率と膜厚は、分光反射率の測定より計算して算出することができる。また、作製した反射防止層を有する防眩性反射防止フィルムの反射光学特性は、分光光度計を用い、5度正反射の条件にて反射率を測定することができる。この測定法において、反射防止層が塗布されていない側の裏面を粗面化した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行う、或いは黒色アクリル板の貼り付け等して光吸収処理を行ってから、フィルム裏面光の反射を防止して、反射率が測定できる。測定に際しては、透過率550nmにおける透過率を分光光度計を用いて空気を参照として測定を行う。
【0259】
また、本実施形態に係る防眩性反射防止フィルムは、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。また反射色相は、反射防止層の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、画像表示装置等の表面に使用する場合は、ニュートラルな色調が好まれる。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で0.17≦x≦0.27、0.07≦y≦0.17である。また、xy平面上の(x、y)=(0.31、0.31)の距離Δxyが、0.05以下となる範囲がより色味がないニュートラルに近いため好ましく、0.03以下が更に好ましい。色調は、各層の屈折率より、反射率、反射光の色味を考慮して膜厚を常法に従って計算できる。
【0260】
<偏光板>
本実施形態に係る防眩性フィルムを用いた本実施形態に係る偏光板について述べる。本実施形態に係る偏光板は、本実施形態に係る防眩性フィルムが具備されているものである。このような偏光板は、前記防眩性フィルムを備えるので、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立したものである。前記偏光板は、例えば、偏光膜と、前記偏光膜の表面上に配置された透明保護フィルム(偏光板保護フィルム)とを備え、前記透明保護フィルムが、本実施形態に係る防眩性フィルムであるものが挙げられる。より具体的には、
図4に示すように、偏光板10は、偏光膜14の、視認される側の表面上に、防眩層12が外側となり、基材フィルム13が内側となるように、防眩性フィルム11が配置されるものが挙げられる。また、偏光板10は、偏光膜14の、視認側表面とは反対側の表面上に、光学フィルム15が配置され、その外側に、他の部材に貼り付け可能な貼着剤層16が配置されたものが挙げられる。なお、光学フィルム15としては、特に限定されないが、例えば、後述する偏光板保護フィルム等が挙げられる。
【0261】
また、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本実施形態に係る防眩性フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した防眩性フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0262】
もう一方の面に該防眩性フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本実施形態に係る防眩性フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは、前述した基材フィルムであるセルローストリアセテートフィルムや熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を含有し、該熱可塑性アクリル樹脂と該セルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50である保護フィルムを用いることが好ましい。構成の詳細は前述の通りであり、具体的には、リターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムが一例として挙げられる。
【0263】
また、他に面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いて、視野角拡大可能な偏光板とすることもできる。又は、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方性層を有している光学補償フィルムを用いることが好ましい。また、好ましく用いられる市販の偏光板保護フィルムとしては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が挙げられる。
【0264】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。すなわち、偏光膜は、入射光を偏光に変えて射出する光学素子である。現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本実施形態に係る防眩性フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0265】
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるために保護フィルムの片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
【0266】
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化せしめることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
【0267】
<画像表示装置>
本実施形態に係る防眩性フィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性に優れた性能が発揮される。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、有機エレクトルミネッセンス素子を有する表示装置やプラズマディスプレイ等が挙がられる。
【0268】
これら画像表示装置の中でも液晶表示装置の偏光板に本実施形態に係る防眩性フィルムを用いることで、視認性に優れる点から好ましい。本実施形態に係る偏光板を
図4に示す。また、
図5に示すような液晶パネルを備える液晶表示装置の液晶セル(
図6)のリヤ側(バックライト側)に本実施形態に係る防眩性フィルムから構成される偏光板を用いることで、モアレ縞の発生防止に優れる点で好ましい。
【0269】
すなわち、本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る防眩性フィルムが具備されているものである。このような画像形成装置は、前記防眩性フィルムを備えるので、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立したものである。前記画像形成装置は、例えば、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、前述の本実施形態に係る偏光板であるものが挙げられる。より具体的には、
図5に示すように、液晶パネル20は、液晶セル21の、リア(バックライト)側(視認側表面とは反対側)の表面上に、防眩性フィルム25が外側となるように、偏光板28が配置されるものが挙げられる。また、液晶パネル20は、液晶セル21の、視認側の表面上に、前記偏光板28とは別の偏光板27が配置されたものが挙げられる。前記偏光板27としては、例えば、防眩性フィルムの代わりに、クリアハードコートフィルム24を備える偏光板等が挙げられる。
【0270】
なお、液晶セルとは、一対の電極間に液晶物質が充填されたものであり、この電極に電圧を印加することで、液晶の配向状態が変化され、透過光量が制御される。具体的には、液晶セル30は、
図6に示すように、配向膜32とカラーフィルタ33とガラス基板34とを積層した積層体2枚を、スペーサ35を介して、配向膜32が内側になるように配置し、配向膜32間に、液晶31を充填したもの等が挙げられる。また、液晶セル30は、液晶31に電圧を印加するための透明電極を、配向膜32とカラーフィルタ33との間に配置してもよい。
【0271】
また、本実施形態に係る防眩性フィルムは、タッチパネル用部材に用いてもよい。本実施形態に係るタッチパネル部材は、本実施形態に係る防眩性フィルムが具備されているものである。このようなタッチパネル用部材は、前記防眩性フィルムを備えるので、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立したものである。具体的には、
図7に示すような、導電性膜付き防眩性フィルム等が挙げられる。この導電性膜付き防眩性フィルム40は、タッチパネル用部材であり、基材フィルム41の表面上に、防眩層42を備える防眩性フィルムを備える。その防眩性フィルムは、基材フィルム41の両面に防眩層42を備える。そして、導電性膜付き防眩性フィルム40は、この防眩性フィルムの一表面上に、透明導電性薄膜(ITO層)43を備える。
【0272】
このように、タッチパネル付き画像表示装置のタッチパネル用部材に本実施形態に係る防眩性フィルムを用いた場合、視認性やペン入力に対する耐久性(摺動による傷等)にも優れる点で好ましい。
【0273】
<タッチパネル>
本実施形態に係る防眩性フィルムをタッチパネル付き画像表示装置に用いた場合の一例を示す。
【0274】
図8は、本実施形態に係る防眩性フィルムをタッチパネルに用い抵抗膜方式タッチパネル付き液晶表示装置50の概略図である。導電性防眩性フィルム(導電性膜付き防眩性フィルム)40を透明導電性薄膜52が形成されたガラス基板53と、透明導電性薄膜同士が向き合うように対向させ、透明導電性薄膜間にスペーサ51を介することによって、一定の間隔をあけることにより、抵抗膜方式のタッチパネルを構成することができる。導電性防眩性フィルム40、及びガラス基板53の端部には不図示の電極が配置されている。抵抗膜方式のタッチパネルは、ユーザが導電性防眩性フィルム40を指やペン等で押下することにより、導電性防眩性フィルム40の透明導電性薄膜が、ガラス基板53上の透明導電性薄膜52と接触する。この接触を端部の電極を介して電気的に検出することにより、押下された位置が検出される仕組みである。ガラス基板53の透明導電性薄膜52上には、必要に応じてドット状のスペーサ51が配置される。また、タッチパネルを液晶表示装置(LCD)54上に搭載することにより、タッチパネル付き画像表示装置50を構成することができる。
【0275】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0276】
本発明の一局面は、基材フィルム上に防眩層を有する防眩性フィルムであって、
当該防眩層の表面の算術平均粗さRa(nm)と、下記定義式で定義される相関長Ic(μm)とが、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする防眩性フィルムである。
関係式(1):0 ≦ Ic ≦ 21−8×exp((215−Ra)/40)−13×exp((215−Ra)/400)
定義式:相関長Ic = 二乗平均平方根粗さRq(μm)/二乗平均平方根傾斜Δq×2
1/2
【0277】
このような構成によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立を達成できる防眩性フィルムを提供することができる。
【0278】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の表面の算術平均粗さRa(nm)と、前記相関長Ic(μm)とが、下記関係式(2)を満たすことが好ましい。
関係式(2):0 ≦ Ic ≦ 17−6×exp((225−Ra)/40)−11×exp((225−Ra)/400)
【0279】
このような構成によれば、モアレ縞の発生をより低減できる。よって、モアレ縞の問題をより解消できる。
【0280】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の表面の算術平均粗さRaが、350〜1300nmの範囲内であることが好ましい。
【0281】
このような構成によれば、モアレ縞の発生をより低減できる。よって、モアレ縞の問題をより解消できる。
【0282】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の内部散乱に起因するヘイズが、0〜0.5%の範囲内であることが好ましい。
【0283】
このような構成によれば、視認性をより高めることができる。
【0284】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層が、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有していることが好ましい。
【0285】
このような構成によれば、防眩層の表面形状が、所望の形状により近いものとなる。よって、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立をより図ることができる。
【0286】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層が、微粒子を含有し、前記微粒子及び前記活性線硬化型樹脂に対し非相溶性である樹脂を実質的に含有していないことが好ましい。
【0287】
このような構成によれば、視認性をより高めることができる。
【0288】
また、前記防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の表面が、長手方向に周期を持たない不規則な突起形状を有していることが好ましい。
【0289】
このような構成によれば、視認性をより高めることができる。
【0290】
また、本発明の他の一局面は、前記防眩性フィルムを製造する防眩性フィルムの製造方法であって、25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂と、エステル類、グリコールエーテル類、及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種の溶剤とを含有する防眩層塗布組成物を、基材フィルム上に塗布する塗布工程と、減率乾燥区間の温度を90〜160℃の範囲内に維持して、前記防眩層塗布組成物を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた前記防眩層塗布組成物を硬化させて、前記基材フィルム上に防眩層を形成する硬化工程とを備えることを特徴とする防眩性フィルムの製造方法である。
【0291】
このような構成によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減の両立を達成できる防眩性フィルムの製造方法を提供することができる。
【0292】
また、本発明の他の一局面は、前記防眩性フィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板である。
【0293】
このような構成によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立した偏光板が得られる。
【0294】
また、本発明の他の一局面は、前記防眩性フィルムが、具備されていることを特徴とする画像表示装置である。
【0295】
このような構成によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立した画像形成装置が得られる。
【0296】
また、本発明の他の一局面は、前記防眩性フィルムが、具備されていることを特徴とするタッチパネル用部材である。
【0297】
このような構成によれば、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立したタッチパネル部材が得られる。そして、このようなタッチパネル部材を用いて、タッチパネル液晶表示装置等を製造すると、視認性の向上とモアレ縞の低減とを両立したタッチパネル液晶表示装置が得られる。
【実施例】
【0298】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0299】
実施例1
<基材フィルム1の作製>
(二酸化珪素分散液の調製)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径7nm
) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
【0300】
〈基材フィルム1の作製〉
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート 90質量部
(Mn=148000、Mw=310000 アセチル基置換度2.92)
芳香族末端エステル系可塑剤(2−4) 10質量部
チヌビン900(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
【0301】
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.3倍、MD方向の延伸倍率は1.01倍で延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、基材フィルム1を得た。基材フィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
【0302】
<防眩性フィルム1の作製>
上記作製した基材フィルム1上に、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した下記防眩層塗布組成物1を、押出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度80℃、減率乾燥区間温度97℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm
2で、照射量を0.25J/cm
2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚8μmの防眩層を形成した。
【0303】
防眩層を形成後、ロール状に巻き取り、防眩性フィルム1を作製した。防眩性フィルム1の防眩層表面を光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)で観察した結果、
図3のように不規則な突起形状が不規則に長手方向及び幅方向に配列していることが分かった。
【0304】
[防眩層塗布組成物1]
下記防眩層塗布組成物1をディスパーにて撹拌混合し、防眩層塗布組成物1を得た。
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 100質量部
【0305】
上記防眩層塗布組成物1の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、550mPa・sであった。
【0306】
<防眩性フィルム2の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物2とした以外は同様にして、防眩性フィルム2を作製した。
【0307】
[防眩層塗布組成物2]
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 60質量部
メチルエチルケトン(MEK) 40質量部
【0308】
<防眩性フィルム3の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物3とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を100℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム3を作製した。
【0309】
[防眩層塗布組成物3]
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
100質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
メチルアルコール(MeOH) 100質量部
【0310】
<防眩性フィルム4の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物4とした以外は同様にして、防眩性フィルム4を作製した。
【0311】
[防眩層塗布組成物4]
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)90質量部
t−ブチルアクリレート(TBA、大阪有機化学工業(株)製)
10質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 100質量部
【0312】
<防眩性フィルム5の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物5とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を95℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム5を作製した。
【0313】
[防眩層塗布組成物5]
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)80質量部
4−ヒドロキシブチルアクリレート
(4HBA、大阪有機化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
メチルアルコール(MeOH) 100質量部
【0314】
<防眩性フィルム6の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物6とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を100℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム6を作製した。
【0315】
[防眩層塗布組成物6]
(活性線硬化型樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)90質量部
ヒドロキシエチルアクリレート
(HEA、大阪有機化学工業(株)製) 10質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 100質量部
【0316】
<防眩性フィルム7の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を防眩層塗布組成物2とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を87℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム7を作製した。
【0317】
<防眩性フィルム8の作製>
防眩性フィルム1の作製において、乾燥工程における減率乾燥区間の温度を88℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム7を作製した。
【0318】
<防眩性フィルム9の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物7とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を80℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム9を作製した。
【0319】
[防眩層塗布組成物7]
(活性線硬化型樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート 80質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業(株)製)
アクリル酸イソステアリル(ISTA) 20質量部
(大阪有機化学工業(株)製)
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−889、信越化学工業社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 60質量部
メチルエチルケトン(MEK) 40質量部
【0320】
<防眩性フィルム10の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を下記防眩層塗布組成物8とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を80℃に変更した以外は、同様にして防眩性フィルム10を作製した。
【0321】
[防眩層塗布組成物8]
(活性線硬化型樹脂)
ルシフラールNAG(日本ペイント(株)製) 100質量部
【0322】
<防眩性フィルム11の作製>
防眩性フィルム1の作製において、防眩層塗布組成物1を特開2008−225195号公報の実施例1を参考にして調製した防眩層塗布組成物9に変更し、更に乾燥温度を特開2008−225195号公報の実施例1と同じ70℃とした以外は防眩性フィルム1と同様にして、防眩性フィルム11を作製した。
【0323】
[防眩層塗布組成物9]
下記防眩層塗布組成物9をディスパーにて撹拌混合し、防眩層塗布組成物9を得た。
【0324】
(活性線硬化型樹脂)
サイクロマーP(ACA)320
(不飽和基含有アクリル樹脂混合物、ダイセル化学工業(株)製)
47質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 53質量部
(非相溶性樹脂)
ポリメタクリル酸メチル
(重量平均分子量480000;三菱レイヨン(株)製、BR88)
7.5質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 4.2質量部
(溶剤)
メチルエチルケトン(MEK) 0.84質量部
ブタノール 45質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 7.4質量部
【0325】
《ヘイズ及び算術平均粗さRa等の測定》
上記作製した防眩性フィルム1〜11について、ヘイズ測定を行い、内部ヘイズ(Hi)を求めた。また、算術平均粗さRa等についても下記条件で測定した。
【0326】
得られた内部ヘイズ(Hi)及び算術平均粗さRa等について、結果を表1に示した。
【0327】
《内部ヘイズ(Hi)》
各防眩性フィルムの表裏面にシリコーンオイルを数滴滴下した。次にシリコーンオイルを滴下した防眩性フィルムを厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)二枚で裏表より挟み、完全に二枚のガラス板と得られた防眩性フィルムを光学的に密着させた。この光学的に密着させ、表面ヘイズを除去したサンプルのヘイズ(Ha)を日本電色工業(株)製の測定機(NDH2000)を用いて測定した。
【0328】
次いで、ガラス板二枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんでガラスヘイズ(Hb)測定した。Haから、Hbを引き、防眩性フィルムの内部ヘイズ(Hi)を算出した。
【0329】
《算術平均粗さRa等の測定》
各防眩性フィルムの防眩層の算術平均粗さRaを、光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)を用いて10回測定し、その測定結果の平均から各防眩性フィルムの算術平均粗さRaを求めた。
【0330】
なお、二乗平均平方根粗さ(Rq)、二乗平均平方根傾斜(Δq)は、前述のようにして求めた。相関長は、前記定義式に基づき計算した。
【0331】
<偏光板の作製>
耐久試験後の各防眩性フィルム1〜11と下記偏光子と裏面側に下記手順で作製した光学フィルム1とを長手方向を合わせるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせて偏光板を各々作製した。偏光板の概略図を
図4に示す。
【0332】
(光学フィルム1の作製)
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)
11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0333】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
【0334】
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0335】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
アセチル基置換度2.4のセルロースアセテート(Mn80000)
100質量部
糖エステル化合物(1−23) 10質量部
芳香族末端エステル系可塑剤(2−23) 2.5質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928(BASFジャパン(株)製))
2.3質量部
微粒子添加液1 1.0質量部
【0336】
上記組成物を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0337】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0338】
その後170℃に設定されたテンターにより幅手方向に1.4倍の延伸を行い、次いで130℃に設定された乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、両端部のトリミングを行い、かつ端部に幅1cm、高さ6μmのナーリングを有する膜厚40μmの光学フィルム1を作製し、幅1.49m、3900mで巻き取った。光学フィルム1の面内リターデーション値Roは50nm、厚さ方向リターデーションRtは130nmであった。
【0339】
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と各防眩性フィルム1〜11と裏面側に光学フィルム1を長手方向で合わせるようにして、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせて各偏光板1〜11を作製し、更に工程6で粘着層をそれぞれの偏光板1〜11に貼り合わせた。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した防眩性フィルム1〜11と光学フィルム1を得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した防眩性フィルム1〜11と裏面側には光学フィルム1をのせて配置した。
工程4:工程3で積層したフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と各防眩性フィルム1〜11と、光学フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、ロール状に巻き取り偏光板1〜11を各々作製した。
工程6:工程5で作製した各偏光板の光学フィルム1に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるようにそれぞれ塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。この偏光を裁断(打ち抜き)し、偏光板1〜11を作製した。
【0340】
<液晶表示装置の作製>
SONY製32型ディスプレイBRAVIA KDL−32EXの予め貼合されていたパネル前側の偏光板を剥がして、上記作製した各偏光板1〜11の粘着層をそれぞれ液晶セルのガラス面の前面に貼合した。その際、その偏光板の貼合の向きは、防眩性フィルムの防眩層表面が、視認側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置1〜11を各々作製した。
【0341】
《液晶表示装置の評価》
(視認性評価)
上記作製した各液晶表示装置1〜11について、80℃の条件で250時間放置した後、23℃、55%RHに戻し、視認性を評価した。評価者30人で画像の視認性の官能評価を行い、その平均点を求めた。10点が最も良好で、写り込みが少なく、鮮鋭性も高い。1点が最も劣る。7点以上が許容レベルである。
【0342】
上記防眩性フィルム1〜11についてのヘイズ及び算術平均粗さRa等測定結果及び液晶表示装置1〜11についての視認性評価結果をまとめて表1に示す。
【表1】
【0343】
表1に示した結果から明らかなように、防眩層が、微粒子や活性線硬化型樹脂に対して非相溶性である樹脂を実質的に含有せず、防眩層の表面の算術平均粗さ(Ra)と相関長とが、関係式(1)を満たし、かつ防眩層の内部ヘイズが0〜1.0%である本実施形態に係る防眩性フィルムを用いて作製した偏光板を液晶表示装置に用いることで、視認性に優れることが判る。
【0344】
中でも、算術平均粗さRaが、350〜1300nmである本実施形態に係る防眩性フィルムは、液晶表示装置に用いた際の視認性に特に優れている。
【0345】
25℃における粘度が20〜3000mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂をPGMEやEPGEといったグリコールエーテル類、或いはエタノールやメタノールといったアルコール類で希釈した防眩層塗布組成物を、少なくとも塗布工程、乾燥工程及び硬化工程を経由して形成され、かつ乾燥工程の減率乾燥区間温度を90〜160℃に維持した条件下で処理することで、防眩層の算術平均粗さRaと内部ヘイズを本発明の範囲内に容易に制御でき、かつ本発明の目的効果が良好に得られることから、好ましいことがわかる。
【0346】
更に防眩層の内部ヘイズが0〜0.5%である本発明の防眩性フィルムは、本発明の目的効果が良好に得られるため、好ましいことが判る。
【0347】
本実施形態に係る防眩性フィルムについて、防眩層表面を光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)で観察した結果、防眩性フィルム1のように不規則な突起形状が不規則に長手方向及び幅方向に配列していた。
【0348】
また、防眩性フィルム1〜11について、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で防眩層表面を5回繰り返し引っ掻き、鉛筆硬度を評価した結果、本実施形態に係る防眩性フィルムは全て3H以上であり、良好なハードコート性も有していた。
【0349】
実施例2
<クリアハードコートフィルム1の作製>
実施例1で作製した基材フィルム1上に孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した下記クリアハードコート塗布組成物1を、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度80℃、減率乾燥区間温度80℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm
2で、照射量を0.25J/cm
2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚5μmのクリアハードコート層を形成した。
【0350】
クリアハードコート層を形成後、ロール状に巻き取り、クリアハードコートフィルム1を作製した。クリアハードコートフィルム1の全ヘイズを日本電色工業(株)製の測定機(NDH2000)を用いて測定した結果、0.3%であり、非常にクリア性に優れていた。
【0351】
[クリアハードコート層塗布組成物1]
下記クリアハードコート層塗布組成物1をディスパーにて撹拌混合し、クリアハードコート層塗布組成物1を得た。
【0352】
(活性線硬化型樹脂)
ジペンタエリスリトールポリアクリレート 100質量部
(NKエステルA−9550、新中村化学工業(株)製)
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
(レベリング剤)
アクリル共重合物(BYK−350、ビックケミー・ジャパン社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 10質量部
メチルエチルケトン 45質量部
酢酸メチル 45質量部
【0353】
<偏光板の作製>
クリアハードコートフィルム1と下記偏光子と裏面側に実施例1で作製した光学フィルム1とを長手方向を合わせるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせて偏光板100を作製した。
【0354】
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。次いで、工程1〜5に従って偏光子とクリアハードコートフィルム1と裏面側に光学フィルム1を長手方向で合わせるようにして、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせて偏光板を作製し、更に工程6で粘着層を貼り合わせた。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化しクリアハードコートフィルム1と光学フィルム1を得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したクリアハードコートフィルム1と裏面側には光学フィルム1をのせて配置した。
工程4:工程3で積層したフィルムを圧力20〜30N/cm
2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とクリアハードコートフィルム1と、光学フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、ロール状に巻き取り偏光板100を作製した。
工程6:工程5で作製した偏光板の保護フィルムに市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。この偏光を裁断(打ち抜き)し、偏光板100を作製した。
【0355】
<液晶表示装置101の作製>
実施例1で作製した偏光板1を
図5に示したように、粘着剤層の剥離性保護フィルムを剥し、液晶セルのガラスを介在してリヤ側に貼合した。更に、上記作製した偏光板100の粘着剤層の剥離性保護フィルムを剥し、フロント側に貼合し、液晶パネル101を作製し、この液晶パネル101をSONY製ノート型PC VAIO TYPE Bのパネルを外してはめ込み、液晶表示装置101を作製した。
【0356】
<液晶表示装置102〜111の作製>
液晶表示装置101の作製において、リヤ側の偏光板1を偏光板2〜11に、それぞれ変更した以外は同様にして液晶表示装置102〜111を作製した。
【0357】
上記作製した液晶表示装置101〜111について、モアレ縞の観察を行い、以下の基準で評価した。
【0358】
《表示装置の評価》
(モアレ縞評価)
××:モアレ縞の発生が明確に確認できる。
×: モアレ縞の存在が確認できる。実用上問題のあるレベル。
△: ぼんやりであるがモアレ縞の存在が容易に確認できる。
○: 注視すると僅かにモアレ縞の存在が確認できる。
◎: モアレ縞の存在が全く確認できない。
【0359】
上記評価結果を表2に示す。
【表2】
【0360】
表2に示した結果から明らかなように、本実施形態に係る防眩性フィルムから構成される偏光板を用いたリヤ側に用いた液晶表示装置は、モアレ縞が観察されず、モアレ縞の発生防止に優れていることが判る。
【0361】
実施例3
<導電性膜付き防眩性フィルム1の作製>
防眩性フィルム1の作製において、両面に防眩層塗布層組成物1を塗設した以外は同様にして、両面防眩性フィルム1を作製した。
【0362】
次いで、防眩層の片面に表面抵抗率が約200Ωである酸化インジウム錫(ITO)の透明導電性薄膜を、スパッタリング法を用いて設け、
図7に示した導電性膜付き防眩性フィルム1を作製した。
【0363】
<導電性膜付き防眩性フィルム2〜11の作製>
防眩性フィルム2〜11の作製において、両面防眩性フィルム1と同じように、両面に防眩層を塗設した以外は同様にして、両面防眩性フィルム2〜11を作製した。
【0364】
次いで、導電性膜付き防眩性フィルム1の作製と同様にして、両面に防眩層を設けた後、防眩層の片面に表面抵抗率が約200ΩであるITOの透明導電性薄膜を、スパッタリング法を用いて設け、導電性膜付き防眩性フィルム2〜11を作製した。
【0365】
<抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置201の作製>
市販の抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置(型名:LCD−USB10XB−T、I−O DATA社製)の導電性膜付きフィルムを剥がし、上記作製した導電性膜付き防眩性フィルム1を
図8のように貼合して、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置201を作製した。
【0366】
<抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置202〜211の作製>
抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置1の作製において、導電性膜付き防眩性フィルム1を導電性膜付き防眩性フィルム2〜11に変更した以外は同様にして抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置202〜211を作製した。
【0367】
《表示装置の評価》
実施例1と同様にして、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置201〜211の視認性を評価した。
【0368】
(視認性評価)
上記作製した抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置201〜211について、80℃の条件で250時間放置した後、23℃、55%RHに戻し、視認性を評価した。
【0369】
評価者30人で画像の視認性の官能評価を行い、その平均点を求めた。10点が最も良好で、写り込みが少なく、鮮鋭性も高い。1点が最も劣る。7点以上が許容レベルである。
【0370】
《フィルム評価》
(耐ペン摺動性)
導電性膜付き防眩性フィルム1〜11については、以下の条件で耐ペン摺動性について評価した。得られた結果を表4に示した。
【0371】
抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置に用いた各導電性膜付き防眩性フィルムの防眩層を先端部が0.08mmφのポリアセタール製のペンを使用し、荷重500g、ペン摺動速度100mm/秒で直線40mmを15万回往復し、往復後の防眩層の傷つき及び剥れを目視により評価した。
【0372】
上記評価結果を表3に示す。
【表3】
【0373】
表3に示した結果から明らかなように、本実施形態に係る導電性膜付き防眩性フィルム及び、当該フィルムを使用した抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置は、視認性及び耐ペン摺動性に優れていることが判る。