(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正の固有複屈折を有するポリマーが、炭素数2〜4のアシル基、または、炭素数2のアシル基および炭素数3〜4のアシル基で置換され、かつ、アシル基総置換度が1.0以上2.4以下であり、アシル置換基の総炭素数が4.4以上のセルロースエステル樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
前記負の固有複屈折を有するポリマーにおける前記ビニル化合物由来の構成単位および前記芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比が、80:20〜95:5(ビニル化合物由来の構成単位:芳香族マレイミド由来の構成単位)である、請求項6に記載のIPSモード型液晶表示装置。
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムが、それぞれ、セルロースエステル樹脂および/またはアクリル樹脂を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムが、それぞれ、アクリル樹脂およびセルロースエステル樹脂を95:5〜30:70(アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂)の質量比で、かつ相溶状態で含有する、請求項10に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
本発明の一形態は、IPSモード型液晶セルと、当該IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板とを有するIPSモード型液晶表示装置である。当該第1の偏光板は、液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備える。そして、第2の偏光板は、液晶セルの視認側とは反対の側に位置し、かつ、視認側から第3の偏光板保護フィルム、偏光子、および第4の偏光板保護フィルムを備える。つまり、本発明の一形態に係るIPSモード型液晶表示装置は、視認側から、以下の構成を有する。
【0028】
[第1の偏光板]
第1の偏光板保護フィルム
偏光子
第2の偏光板保護フィルム
[IPSモード型液晶表示セル]
[第2の偏光板]
第3の偏光板保護フィルム;
偏光子;
第4の偏光板保護フィルム。
【0029】
そして、第4の偏光板保護フィルムの視認側とは反対の側には、通常、バックライトが配置される。なお、本発明の技術的範囲が上述した形態のみに限定されるわけではなく、従来公知のその他の部材が含まれていてもよいことはもちろんである。以下、本形態のIPS型液晶表示装置の構成要素について、より詳細に説明する。
【0030】
[IPSモード型液晶セル]
IPSモード型液晶表示装置における液晶パネルの液晶層は、初期状態で基板面と平行なホモジニアス配向で、かつ基板と平行な平面で液晶層のダイレクターは電圧無印加時で電極配線方向と平行または幾分角度を有し、電圧印加時で液晶層のダイレクターの向きが電圧の印加に伴い電極配線方向と垂直な方向に移行し、液晶層のダイレクター方向が電圧無印加時のダイレクター方向に比べて45°電極配線方向に傾斜したとき、当該電圧印加時の液晶層は、まるで1/2波長板のように偏光の方位角を90°回転させ、出射側偏光板の透過軸と偏光の方位角が一致して白表示となる。
【0031】
一般に、液晶層の厚みは一定であるが、横電界駆動であるため、液晶層の厚みに若干凹凸を設ける方がスイッチングに対する応答速度を上げることができるとも考えられるが、液晶層の厚みが一定でない場合であっても、その効果を最大限生かすことができるものであり、液晶層の厚みの変化に対して影響が少ない。液晶層の厚みは、2〜6μmであって、好ましくは3〜5.5μmである。本形態に係る液晶表示装置は、大型の液晶テレビに用いられるほか、タブレット型表示装置やスマートフォンなどの携帯用機器にも好ましく用いられうる。
【0032】
なお、IPSモード型液晶セルの詳細について特に制限はなく、従来公知の他の技術的事項(例えば、特開2010−3060号公報など)を参照することで、本発明を実施してももちろんよい。
【0033】
[偏光板(第1の偏光板および第2の偏光板)]
本形態に係るIPS型液晶表示装置は、液晶セルの両面に、それぞれ偏光板を有している。第1の偏光板は、液晶セルの視認側に配置される偏光板であり、視認側から、第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備えるものである。また、第2の偏光板は、液晶セルの視認側とは反対の側に配置される偏光板であり、視認側から、第3の偏光板保護フィルム、偏光子、および第4の偏光板保護フィルムを備えるものである。
【0034】
(偏光子)
偏光子は、偏光板の主たる構成要素であり、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0035】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられうる。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に5〜20μmであることが好ましい。
【0036】
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。なかでも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少ないという利点がある。
【0037】
なお、偏光子は、第1の偏光板および第2の偏光板のそれぞれに備えられるが、これらの2つの偏光子の構成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
(第1、第3、第4の偏光板保護フィルム)
第1、第3、第4の偏光板保護フィルムは、膜厚が10〜30μmであること以外は特に制限はなく、従来公知の偏光板保護フィルムがこれらの偏光板保護フィルムとして用いられうる。本発明では、これらの偏光板保護フィルムの膜厚が10μm未満であると、偏光子の収縮を抑えることができず、偏光板が必要以上に収縮し、パネル点灯時の熱によるムラが発生する虞がある。一方、これらの偏光板保護フィルムの膜厚が30μmを超えると、パネル両面でのバランスが悪くなり、パネルが反ってしまう虞がある。なお、これらの偏光板保護フィルムの膜厚は、好ましくは15〜25μmであり、より好ましくは20〜25μmである。
【0039】
なお、第1、第3、第4の偏光板保護フィルムの構成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
これらの偏光板保護フィルムとしては、例えば、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂などの1種または2種以上を含有するものが用いられる。これらの樹脂を含有するフィルムであれば、偏光板保護フィルムに求められる透明性、耐熱性、耐湿性などの各種特性に優れる。なかでも、好ましい実施形態では、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とを95:5〜30:70の質量比で、かつ相溶状態で含有する光学フィルムが用いられる。かような構成とすることにより、表示装置の視認性が向上しうる。以下、かような形態について説明するが、下記の形態のみに限定されるわけではない。
【0041】
本形態に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0042】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0043】
これらのなかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0044】
アクリル樹脂(A)は、特に光学フィルムとしての脆性の改善およびセルロースエステル樹脂(B)と相溶した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80000以上であることが好ましい。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が80000を下回ると、十分な脆性の改善が得られずにセルロースエステル樹脂(B)との相溶性が劣化する虞がある。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることがさらに好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
【0045】
なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0046】
アクリル樹脂(A)の製造方法としては、特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いてもよい。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁重合または乳化重合では30〜100℃、塊状重合または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0047】
アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0048】
セルロースエステル樹脂(B)について、特に脆性の改善やアクリル樹脂(A)と相溶させたときの透明性の観点から、アシル基総置換度(T)が好ましくは2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度は好ましくは1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は好ましくは2.0〜3.0である。すなわち、セルロースエステル樹脂(B)は、好ましくは、炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
【0049】
セルロースエステル樹脂(B)の、アシル基総置換度が2.0を下回る場合、すなわち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0を上回る場合には、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とが十分に相溶せず偏光板保護フィルムとして用いる場合にヘーズが問題となる虞がある。また、アシル基総置換度が2.0以上であっても、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、やはり十分な相溶性が得られないか、脆性が低下する虞がある。例えば、アシル基総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数2のアシル基(すなわち、アセチル基)の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、相溶性が低下してヘーズが上昇する虞がある。また、アシル基総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数8以上のアシル基の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を下回る場合は、脆性が劣化し、所望の特性が得られない虞がある。
【0050】
セルロースエステル樹脂(B)のアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、すなわち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。また、セルロースエステル樹脂(B)のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることがさらに好ましい。
【0051】
なお、前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していてもよく、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
【0052】
セルロースエステル樹脂(B)が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.2〜3.0となるように留意が必要である。例えば、ベンゾイル基は炭素数が7になるため、炭素を含む置換基を有する場合は、ベンゾイル基としての炭素数は8以上となり、炭素数が3〜7のアシル基には含まれないこととなる。
【0053】
さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上のとき、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0054】
セルロースエステル樹脂(B)としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
【0055】
なお、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。また、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0056】
セルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂(A)との相溶性、脆性の改善の観点から好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることがさらに好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分に得られない虞がある。本発明では2種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
【0057】
本発明の光学フィルムにおいて、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)は、95:5〜30:70の質量比で、かつ相溶状態で含有されるが、好ましくは95:5〜50:50であり、さらに好ましくは90:10〜60:40である。アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂(A)が多くなると、セルロースエステル樹脂(B)による効果が十分に得られない虞があり、同質量比が30:70よりもアクリル樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる虞がある。
【0058】
上述した光学フィルムにおいては、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とが相溶状態で含有される必要がある。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成するためである。なお、アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とが相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
【0059】
また、「アクリル樹脂(A)やセルロースエステル樹脂(B)を相溶状態で含有する」とは、上述したように各々の樹脂(ポリマー)を混合することで、結果として相溶された状態となることを意味しており、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂(B)に混合させた後に重合させることにより混合樹脂とされた状態は含まれないものとする。
【0060】
例えば、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂(B)に混合させた後に重合されることにより混合樹脂を得る工程は、重合反応が複雑であり、この方法で作成した樹脂は、反応の制御が困難であり、分子量の調整も困難となる。また、このような方法で樹脂を合成した場合は、グラフト重合、架橋反応や環化反応が生じることが多く、溶媒に溶解しいケースや、加熱により溶融できなくなることが多く、混合樹脂中におけるアクリル樹脂を溶離して重量平均分子量(Mw)を測定することも困難であるため、物性をコントロールすることが難しく光学フィルムを安定に製造する樹脂として用いることはできない。
【0061】
アクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とは、それぞれ非結晶性樹脂であることが好ましく、いずれか一方が結晶性高分子、あるいは部分的に結晶性を有する高分子であってもよいが、本発明においてアクリル樹脂(A)とセルロースエステル樹脂(B)とが相溶することで、非結晶性樹脂となることが好ましい。
【0062】
本発明の光学フィルムにおけるアクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)やセルロースエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)や置換度は、両者の樹脂の溶媒に対して溶解性の差を用いて分別した後に、それぞれ測定することにより得られる。樹脂を分別する際には、いずれか一方にのみ溶解する溶媒中に相溶された樹脂を添加することで、溶解する樹脂を抽出して分別することができ、このとき加熱操作や環流を行ってもよい。これらの溶媒の組み合わせを2工程以上組み合わせて、樹脂を分別してもよい。溶解した樹脂と、不溶物として残った樹脂を濾別し、抽出物を含む溶液については、溶媒を蒸発させて乾燥させる操作によって樹脂を分別することができる。これらの分別した樹脂は、高分子の一般の構造解析によって特定することができる。上述した光学フィルムが、アクリル樹脂(A)やセルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を含有する場合も同様の方法で分別することができる。
【0063】
また、相溶された樹脂の重量平均分子量(Mw)がそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
【0064】
また、相溶した樹脂をGPCによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々GPCによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
【0065】
なお、上述した光学フィルムは、偏光板保護フィルムとしての機能を損なわない限り、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていてもよい。アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)以外の樹脂を含有する場合、添加される樹脂が相溶状態であっても、溶解せずに混合されていてもよい。また、上述した光学フィルムにおけるアクリル樹脂(A)およびセルロースエステル樹脂(B)の総質量は、光学フィルムの55質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
【0066】
以上、好ましい実施形態としてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とのブレンドの形態からなる偏光板保護フィルムについて説明したが、本形態に係るIPS型液晶表示装置では、第1、第3、第4の偏光板保護フィルムは、いわゆる「ゼロ位相差フィルム」であることが好ましい。これらの偏光板保護フィルムがゼロ位相差フィルムであることにより、カラーシフト(黒表示時における斜めからの漏れ光の着色現象)を抑制できるという利点が得られる。なお、これを定量的に表現すれば、第1の偏光板保護フィルム、第3の偏光板保護フィルム、および第4の偏光板保護フィルムは、下記数式(1)および下記数式(2):
【0068】
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【0070】
を満足することが好ましい。Roは、より好ましくは−3〜3であり、特に好ましくは−1〜1である。また、Rthは、より好ましくは−3〜3であり、特に好ましくは−1〜1である。なお、これらのRoおよびRthを上述した範囲内の値に制御するには、これらの偏光板保護フィルムの製造時において、フィルムの組成や延伸条件、リターデーション調整剤の種類や添加量などを適宜調節すればよい。
【0071】
(第2の偏光板保護フィルム)
第2の偏光板保護フィルムは、液晶セルの視認側に位置する偏光板(第1の偏光板)の、液晶セル側に配置されるフィルムである。
【0072】
本発明において、第2の偏光板保護フィルムの第1の特徴は、膜厚が30〜60μmである点にある。第2の偏光板保護フィルムの膜厚が30μm未満であると、偏光子の収縮を抑えることができず、偏光板が必要以上に収縮し、パネル点灯時の熱によるムラが発生する虞がある。一方、第2の偏光板保護フィルムの膜厚が60μmを超えると、パネル点灯時の熱による位相差変動が生じ、視野角が変化してしまう虞がある。
【0073】
また、第2の偏光板保護フィルムの第2の特徴は、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有する点にある。なお、本発明の要件を満たす限り、第2の偏光板保護フィルムが第1および第2の光学異方性層以外の層をさらに有していてもよい。また、第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とは、いずれが視認側(つまり、第1の偏光板の偏光子側)に位置するように配置されてもよいが、第1の光学異方性層が後述するようにセルロースエステル樹脂を含む場合には、第1の光学異方性層のアルカリケン化処理によりポリビニルアルコール水溶液等を用いた偏光子との貼合が容易となることから、第1の光学異方性層が視認側(第1の偏光板の偏光子側)に位置するようにこれら2つの光学異方性層が配置されることが好ましい。以下、この第2の特徴について、より詳細に説明する。
【0074】
〈ポリマーの複屈折性試験法〉
本明細書において、ポリマーが延伸方向に対して正の固有複屈折または負の固有複屈折を有するものであるかについては、下記の試験法により判断することができる。
【0075】
ポリマーを単独で溶媒に溶解しキャスト製膜した後、加熱乾燥し、透過率80%以上のフィルムについて複屈折性の評価を行う。
【0076】
アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行い、上記フィルムを幅手方向に延伸したときに、延伸方向の屈折率をNx、また直交する面内方向の屈折率をNyとする。590nmの各々の屈折率について、(Nx−Ny)>0であるフィルムについて、該ポリマーは延伸方向に対して正の固有複屈折を有すると判断する。同様にして(Nx−Ny)<0である場合、負の固有複屈折を有すると判断する。
【0077】
〈第1の光学異方性層(正の固有複屈折を有するポリマー)〉
第2の偏光板保護フィルムを構成する第1の光学異方性層は、正の固有複屈折を有するポリマーを含む。正の固有複屈折を有するポリマーは、延伸時に延伸方向の屈折率が大きくなる特性を有するポリマーであれば特に限定されないが、透明性が高く熱可塑性のあるものが好ましい。なお、複数の材料を含んだ混合物として正の固有複屈折を発現できるのであれば、第1の光学異方性層における質量分率や体積分率で最も多い成分が正の複屈折性を有している必要はない。正の固有複屈折を有するポリマーの例として、具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等のセルロース樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂や、これらの混合物等が挙げられる。なかでもセルロース樹脂が好ましく、セルロースエステル樹脂がより好ましい。特に、セルロースエステル樹脂として、炭素数2〜4のアシル基、または、炭素数2のアシル基および炭素数3〜4のアシル基で置換され、かつ、アシル基総置換度が1.0以上2.4以下であり、アシル置換基の総炭素数が4.4以上のものが、正の固有複屈折を有するポリマーの好ましい形態として採用されうる。
【0078】
なお、正の固有複屈折を有するポリマーがセルロースエステル樹脂を含む場合、当該セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム強度(脆性、機械強度)の観点から好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることがさらに好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。
【0079】
また、正の固有複屈折を有するポリマーがセルロースエステル樹脂を含む場合、第1の光学異方性層は重量平均分子量(Mw)が500〜30000のアクリルポリマーを添加剤として含有することが好ましい。かような構成とすることにより、第2の光学異方性層との密着性が向上しうる。なかでも分子内に芳香環および親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaを重合して得られた重量平均分子量500〜30000のポリマーX
1、または、分子内に芳香環および親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量500〜30000のポリマーX
2を含有することが好ましい。ここで、分子内に芳香環および親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaとしては、後述するような(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチル(MMA)が特に好ましい。また、分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとしては、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。X
2におけるXa由来の構成単位とXb由来の構成単位との含有比率について特に制限はないが、Xa由来の構成単位:Xb由来の構成単位のモル比として、50:50〜95:5が好ましく、60:40〜90:10がより好ましく、70:30〜80:20が特に好ましい。
【0080】
なお、上述したアクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1500〜20000であり、より好ましくは2000〜10000であり、特に好ましくは2500〜5000である。アクリルポリマーの重量平均分子量がかような範囲内の値であれば、セルロースエステルとの相溶性がよいという利点が得られる。
【0081】
また、上述したアクリルポリマーの含有量は、正の固有複屈折を有するポリマーとの合計100質量%に対して、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは20〜30質量%である。
【0082】
第2の偏光板保護フィルムの膜厚が30〜60μmの範囲内の値となるのであれば、第1の光学異方性層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜40μmであり、より好ましくは15〜30μmである。
【0083】
〈第2の光学異方性層(負の固有複屈折を有するポリマー)〉
第2の偏光板保護フィルムを構成する第2の光学異方性層は、負の固有複屈折を有するポリマーを含む。負の固有複屈折を有するポリマーは、延伸時に延伸方向と直交方向の屈折率が大きくなる特性を有するポリマーであれば特に限定されないが、複数の材料を含んだ結果として負の固有複屈折を発現すればよいことは、上述した正の固有複屈折を有するポリマーと同様である。特に透明性が高く熱可塑性のあるものが好ましい。さらに好ましくは、負の固有複屈折を有するポリマーは、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである。
【0084】
ここで、ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。なかでも、ビニル化合物として、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または芳香族ビニル化合物が用いられることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルおよび芳香族ビニル化合物が用いられることが特に好ましい。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、以下の式(1)に示す構成単位である。式(1)におけるR
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は、炭素数1〜18の直鎖または環状のアルキル基である。当該アルキル基の一部が、水酸基または芳香族基により置換されていてもよい。この芳香族基は、アリール基(置換基を有していてもよい)のほか、複素芳香族基をも含む。
【0087】
式(1)の構成単位を構成しうる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸カルバゾイルエチルなどが挙げられる。なかでも、高い透明性および優れた機械的特性を有する光学異方性層が得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。また、MMAは、弱いながら、ポリマーに負の固有複屈折を与える作用を有しており、(メタ)アクリル酸エステルがMMAである場合、ポリマーの固有複屈折が負に大きくなることで、第2の光学異方性層の光学的設計の自由度がさらに向上する。
【0088】
芳香族ビニル化合物由来の構成単位は、ポリマーの固有複屈折を負に大きくする作用を有する。このため、ポリマーが構成単位として芳香族ビニル化合物由来の構成単位を有することにより、大きな位相差を示す偏光板保護フィルムの実現が可能となり、その光学的な設計の自由度が向上する。
【0089】
芳香族ビニル化合物由来の構成単位は、以下の式(2)に示す構成単位である。式(2)におけるR
3は芳香族基であり、R
4は水素原子であり、R
5およびR
6は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
【0091】
R
3が芳香族基の場合、R
3はアリール基(置換基を有していてもよい)のほか、複素芳香族基であってもよい。
【0092】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン、ビニルトルエン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられるなかでも、高い透明性および大きな位相差を示す偏光板保護フィルムが得られることから、スチレンが好ましい。
【0093】
芳香族ビニル化合物由来の構成単位は、上記式(2)に示すように、複素芳香族ビニル化合物単位であってもよく、例えば、ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルチオフェンなどの重合により形成される構成単位であってもよい。
【0094】
芳香族マレイミド由来の構成単位は、芳香族ビニル化合物由来の構成単位ほど強くはないが、ポリマーの固有複屈折を負に大きくする作用を有する。このため、ポリマーが芳香族マレイミド由来の構成単位を有することにより、大きな位相差を示す偏光板保護フィルムの実現が可能となり、その光学的な設計の自由度が向上する。
【0095】
また、芳香族マレイミド由来の構成単位は、芳香族ビニル化合物由来の構成単位によるポリマーのTgの低下を補償し、偏光板保護フィルムの耐熱性を向上させる作用を有する。
【0096】
芳香族マレイミド単位は、以下の式(3)に示す構成単位である。式(3)におけるAr基は、置換基を有していてもよいアリール基である。
【0098】
芳香族マレイミドとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミドなどが挙げられる。なかでも、高いTgおよび大きな位相差を発現可能な偏光板保護フィルムが得られることから、N−フェニルマレイミドが好ましい。
【0099】
上述したように、第2の光学異方性層に含まれる、負の固有複屈折を有するポリマーは、好ましくはビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである。かような形態において、負の固有複屈折を有するポリマーにおけるこれらの構成単位の含有比率について特に制限はないが、ビニル化合物由来の構成単位:芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比として、好ましくは80:20〜95:5であり、より好ましくは88:12〜92:8である。かような構成とすることにより、フィルムの黄色度を低下させることが可能となる。また、やはり上述したように、ビニル化合物としては(メタ)アクリル酸エステルおよび芳香族ビニル化合物が用いられることが特に好ましい。かような形態において、負の固有複屈折を有するポリマーにおけるこれらの構成単位((メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、芳香族マレイミドをそれぞれ由来とする構成単位)の含有比率について特に制限はない。ただし、好ましい一実施形態として、負の固有複屈折を有するポリマーにおける(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の質量比は、好ましくは45〜85質量%であり、より好ましくは55〜82質量%である。また、負の固有複屈折を有するポリマーにおける芳香族ビニル化合物由来の構成単位の質量比は、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは15〜35質量%である。さらに、負の固有複屈折を有するポリマーにおける芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比は、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。
【0100】
なお、負の固有複屈折を有するポリマーは、固有複屈折が負である限り、上述した(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位、芳香族ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。当該単位の含有率は、例えば5質量%未満である。ポリマーにおける構成単位の含有率は、公知の手法、例えば
1H核磁気共鳴(
1H−NMR)または赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
【0101】
負の固有複屈折を有するポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000〜300000である。重量平均分子量が100000以上であれば、第2の光学異方性層の可撓性が十分に確保される。一方、重量平均分子量が300000以下であれば、フィルム成形時の流動性を確保でき、第2の光学異方性層の形成が容易である。なお、負の固有複屈折を有するポリマーの重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは140000〜200000である。
【0102】
上述したような負の固有複屈折を有するポリマーの製造方法について特に制限はなく、従来公知の方法により製造が可能である。例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物および芳香族マレイミドを含む単量体成分を重合して、負の固有複屈折を有するポリマーを製造することができる。単量体成分の重合には、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などの各種の重合法を適用できる。なかでも、得られたポリマーにおける芳香族マレイミドの残存量を低減できることから、溶液重合が好ましい。溶液重合は公知の手法に従って行えばよい。溶液重合に用いる重合溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアルデヒド、2−メチルピロリドン、メチルエチルケトンなどの一般的な重合溶媒を適宜選択して用いることができる。
【0103】
第2の偏光板保護フィルムの膜厚が30〜60μmの範囲内の値となるのであれば、第2の光学異方性層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜40μmであり、より好ましくは18〜30μmである。
【0104】
以上、第2の偏光板保護フィルムの好ましい構成について説明したが、第2の偏光板保護フィルムはIPS型液晶表示装置において視認側に位置する偏光板(第1の偏光板)の液晶セル側に配置されるものである。したがって、視野角を拡大するという作用を発揮するためには、面内レターデーションが比較的大きく、一方で厚み方向のレターデーションは小さいことが好ましい。これを定量的に表現すると、第2の偏光板保護フィルムは、下記数式(1)および下記数式(2):
【0106】
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【0108】
を満足するものであることが好ましい。Roは、より好ましくは110〜140であり、特に好ましくは115〜135である。また、Rthは、より好ましくは−30〜0であり、特に好ましくは−30〜−10である。なお、これらのRoおよびRthを上述した範囲内の値に制御するには、第2の偏光板保護フィルムの製造時において、フィルムの組成や延伸条件、位相差調整剤の種類や添加量などを適宜調節すればよい。
【0109】
〈第2の偏光板保護フィルムの製造方法〉
第2の偏光板保護フィルムの製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。第2の偏光板保護フィルムの製造方法の一例を挙げると、まず、正の固有複屈折を有するポリマーを溶融流延法または溶液流延法により製膜・延伸して基材層を得る。次いで、この基材層の上に負の固有複屈折を有するポリマーを積層して積層体を得る。その後、得られた積層体を基材層の延伸方向(第1の延伸方向)に対して直交方向(第2の延伸方向)に延伸する。これにより、第2の偏光板保護フィルムを製造することができる。以下、この製造方法について詳細に説明するが、本発明において第2の偏光板保護フィルムは、他の製造方法により製造されたものであってもよい。
【0110】
基材層(延伸処理を施していない、正の固有複屈折を有するポリマーを含む層)は、溶融流延法または溶液流延法によって製造されるが、位相差値の制御しやすさという観点からは、溶融流延法により製造されることが好ましい。基材層は、その後の負の固有複屈折を有するポリマーを含む層の付与や延伸操作が行われることを考慮して、適切な膜厚および複屈折異方性を持ったフィルムとして作製される。この複屈折異方性を調整する手段としては、公知の手段が用いられる。
【0111】
基材層上への負の固有複屈折を有するポリマーを含む層の付与は、逐次押出法や塗布法などにより行われうるが、特に溶融押出による逐次押出法が好ましく採用される。
【0112】
延伸については、負の固有複屈折を有するポリマーの付与前における延伸の方向(第1の延伸方向)と、負の固有複屈折を有するポリマーの付与後における延伸の方向(第2の延伸方向)とが直交していれば限定はされない。なお、本発明における「直交方向」とは、角度を0〜90度で表すと、基準となる方向とのなす角が87〜90度であることを意味し、好ましくは89〜90度、さらに好ましくは89.5〜90度である。
【0113】
また、本発明における「延伸方向」とは、最終的に延伸前の状態に対して、いずれの方向に伸びたかを定義しているものであり、複数段階の延伸の組み合わせで達成してもよい。特に、異なる延伸倍率、速度、温度条件で構成された複数段階を経ることが、フィルムの遅相軸方向(配向角)を均一にする手段として好ましい。例えば長尺フィルムの製膜の場合、基材層の製膜後、搬送方向(MD方向)に縦延伸した後に、テンターを用いて搬送方向と直交方向(TD方向)に横延伸してもよい。同じ方向の延伸が複数段階あってもかまわない。ただし、いずれかの方向における延伸倍率が大きく、フィルムの遅相軸が搬送方向または搬送方向に直交方向に向いている必要がある。前者の場合には、第2の延伸では主に横延伸を行い、後者の場合には、第2の延伸では主に縦延伸を行う。第2の延伸が、複数の延伸操作の組み合わせであってもよいことも第1の延伸と同様である。第1の延伸方向と第2の延伸方向とは、所望の位相差フィルムを得るために、適宜選択される。
【0114】
縦延伸の方法としては、ロールの組み合わせで構成された所謂縦延伸機での延伸で行えばよい。縦延伸における幅収縮については、所望の位相差値とフィルム幅によって、収縮度合いについては、適宜選択し、フィルム張力、処理温度、フィルム−ロール幅比を変化させることによって調整できる。収縮させることにより、厚み方向の位相差値の絶対値を下げることができるが、フィルム幅は狭くなる。横延伸についても公知のピンテンター、クリップテンターなどを用いて行うことができる。
【0115】
好ましい実施形態では、基材層の製膜後、搬送方向(MD方向)に縦延伸した後に、テンターを用いて搬送方向と直交方向(TD方向)に横延伸を行い、長尺フィルムの形態として第2の偏光板保護フィルムが製造される。この際、MD方向およびTD方向の双方の好ましい延伸条件として、延伸温度は、好ましくは120〜160℃であり、より好ましくは130〜150℃である。また、延伸倍率は、好ましくは10〜50%であり、より好ましくは20〜40%であり、更に好ましくは25〜35%である。
【0116】
上述した製造方法によれば、正の固有複屈折を有するポリマーを含む基材層に対しては合計2回の延伸がなされる。一方、負の固有複屈折を有するポリマーを含む層に対しては積層体形成後の第2の延伸のみである。ここで、第2の延伸の倍率は、負の固有複屈折を有するポリマーを含む層に要求される位相差を考慮して決定される。したがって、第1の延伸がない場合、基材層の位相差は負の固有複屈折を有するポリマーを含む層の位相差によって一義的に決まってしまう。しかしながら、上述した製造方法では、基材層に対して予め第1の延伸を施す工程を含んでいることで、基材層のみの位相差を調節することができるため、基材層(第1の光学異方性層)の位相差と負の固有複屈折を有するポリマーを含む層(第2の光学異方性層)の位相差とを独立して制御することが可能となる。その結果、上述した製造方法によれば、それぞれの層が任意の位相差を持った積層体を一体成形することができる。
【0117】
例えばこのようにして得られる第1の光学異方性層と第2の光学異方性層との積層構成を有する第2の偏光板保護フィルムにおいて、第2の偏光板保護フィルムが全体として所望の位相差を示すのであれば、それぞれの光学異方性層のレターデーションは特に制限されない。ただし、それぞれの光学異方性層のレターデーションの好ましい一例を挙げると、第1の光学異方性層(正の固有複屈折を有するポリマーを含み、基材層が延伸されてなる層)は、下記数式(1)および下記数式(2):
【0119】
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【0121】
を満足するものであることが好ましい。かような構成とすることにより、表示装置の視認性が向上しうる。Roは、より好ましくは−5〜5であり、特に好ましくは0〜5である。また、Rthは、より好ましくは80〜110であり、特に好ましくは80〜100である。なお、これらのRoおよびRthを上述した範囲内の値に制御するには、第2の偏光板保護フィルムの製造時において、基材層を構成するドープの組成や第1および第2の延伸条件などを適宜調節すればよい。
【0122】
また、第2の光学異方性層(負の固有複屈折を有するポリマーを含み、基材層上に形成された後に延伸されてなる層)は、上記数式(1)および数式(2)でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【0124】
を満足するものであることが好ましい。かような構成とすることにより、表示装置の視認性が向上しうる。Roは、より好ましくは100〜140であり、特に好ましくは100〜120である。また、Rthは、より好ましくは−140〜−100であり、特に好ましくは−120〜−100である。なお、これらのRoおよびRthを上述した範囲内の値に制御するには、第2の偏光板保護フィルムの製造時において、基材層上に設けられる負の固有複屈折を有するポリマーを含む層を構成するドープの組成や第2の延伸条件などを適宜調節すればよい。
【0125】
なお、基材層(第1の光学異方性層)と負の固有複屈折を有するポリマーを含む層(第2の光学異方性層)との密着性をさらに高めたい場合は、二つの層の間に易接着層を設けてもよい。易接着層の材料としては特に限定はなく、公知の材料を適宜用いることができる。易接着層の膜厚は、1μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5μm以下である。
【0126】
(添加剤)
第2の偏光板保護フィルムがアクリルポリマーを添加剤として含むことが好ましいことは上述した通りであるが、第1〜第4の偏光板保護フィルムは、それぞれ、その他の添加剤を含みうる。このようなその他の添加剤としては、例えば、可塑剤や紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、マット剤、着色剤などが挙げられる。
【0127】
〈可塑剤〉
偏光板保護フィルムは、可塑剤を含んでもよい。可塑剤の具体的な形態について特に制限はないが、例えば、ポリエステル系可塑剤や糖エステル系化合物などが挙げられる。
【0128】
〈ポリエステル系可塑剤〉
ポリエステル系可塑剤の具体的な構造について特に制限はなく、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤が用いることができる。ポリエステル系可塑剤としては、例えば、下記一般式(4)で表されるポリエステル化合物が挙げられる。
【0130】
で表されるポリエステル化合物が挙げられる。
【0131】
一般式(4)において、Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、または、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す。
【0132】
一般式(4)で表されるポリエステル化合物は、芳香環(炭素数6〜14)または直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基(ともに炭素数2〜6)を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとの交互共重合により得られる交互共重合体である。芳香族ジカルボン酸と、直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、偏光板保護フィルムを構成する主成分の樹脂(例えば、セルロースエステル樹脂)との相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
【0133】
芳香環(炭素数6〜14)を有するジカルボン酸、つまり、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。
【0134】
直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基(炭素数2〜6)を有するジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
【0135】
また、炭素数が2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとしては、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。そのなかでも、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
【0136】
なかでも、Aが置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環であることが、可塑性付与性能に優れるという観点から好ましい。ここで、ベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環が有しうる「置換基」とは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0137】
ポリエステル化合物の両末端を封止する、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸が挙げられる。そのなかでも好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸である。
【0138】
芳香族ポリエステル化合物は、常法により上述したジカルボン酸とアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成することができる。さらに、上述した芳香族モノカルボン酸を加えることで、両末端が封止されたポリエステル化合物を合成することができる。
【0139】
以下に、本発明において用いられうる芳香族ポリエステル化合物を例示する。
【0146】
偏光板保護フィルムは、一般式(4)で表されるポリエステル化合物以外の可塑剤をさらに含有することができる。
【0147】
一般式(4)で表されるポリエステル化合物以外の可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
【0148】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0149】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
【0150】
一般式(a): R
11−(OH)
n
(式中、R
11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、および/またはフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
【0151】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
【0153】
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0154】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0155】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0156】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0157】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0158】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0159】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0160】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0161】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0162】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
【0167】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
【0168】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0169】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0170】
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0171】
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0172】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0173】
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
【0174】
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
【0175】
一般式(b):R
12(COOH)
m1(OH)
n1
式中、R
12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシ基、OH基はアルコール性またはフェノール性ヒドロキシ基を表す。
【0176】
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
【0178】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
【0179】
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
【0180】
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
【0181】
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性のヒドロキシ基(水酸基)を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0182】
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
【0183】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
【0184】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0185】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
【0186】
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0187】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
【0188】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
【0189】
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
【0190】
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0191】
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
【0192】
可塑剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、5〜20質量%の量で含まれることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。なお、第2の偏光板保護フィルムに可塑剤が含まれる場合には、第1の光学異方性層にセルロースエステル樹脂とともに含まれることが好ましい。この場合、第1の光学異方性層における可塑剤の含有量は、セルロースエステル樹脂100質量%に対して、好ましくは5〜10質量%である。
【0193】
〈糖エステル化合物〉
偏光板保護フィルムがセルロースエステル樹脂を含む場合には、糖エステル化合物をさらに含むことで、セルロースエステル樹脂の加水分解が防止されることから、フィルムの耐水性が向上しうる。また、偏光板を構成する際の偏光子との貼合時には、フィルム表面がケン化処理されるが、このケン化処理時におけるセルロースエステル樹脂の加水分解とそれに伴うアルカリケン化液への溶出も防止されうる。
【0194】
糖エステル化合物の一例としては、下記一般式(5):
【0197】
一般式(5)において、Qは、単糖類または二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基または芳香族基を表し、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である。
【0198】
一般式(5)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、lの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本形態のようなセルロースアシレートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し一般式(5)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記のm=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
【0199】
上記一般式(5)において、Qは単糖類または二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
【0200】
以下に、一般式(5)で表される、単糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0202】
二糖類の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
【0203】
以下に、一般式(5)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0205】
一般式(5)において、Rは、脂肪族基または芳香族基を表す。ここで、脂肪族基および芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
【0206】
また、一般式(5)において、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+l≦8であることが必要であり、4≦m+l≦8であることが好ましい。また、l≠0である。なお、lが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
【0207】
Rの定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
【0208】
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
【0209】
次に、一般式(5)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0212】
(合成例:一般式(5)で表される化合物の合成例)
【0214】
撹拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10
2Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、例示化合物1、例示化合物2、例示化合物3、例示化合物4、および例示化合物5の混合物を得た。得られた混合物をHPLCおよびLC−MASSで解析したところ、例示化合物1が7質量%、例示化合物2が58質量%、例示化合物3が23質量%、例示化合物4が9質量%、例示化合物5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%の例示化合物1、例示化合物2、例示化合物3、例示化合物4、および例示化合物5を得た。
【0215】
糖エステル化合物は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、5〜20質量%の量で含まれることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。なお、第2の偏光板保護フィルムに糖エステル化合物が含まれる場合には、第1の光学異方性層にセルロースエステル樹脂とともに含まれることが好ましい。この場合、第1の光学異方性層における糖エステル化合物の含有量は、セルロースエステル樹脂100質量%に対して、好ましくは5〜10質量%である。
【0216】
〈ポリエステル〉
偏光板保護フィルムは、下記のポリエステルを含有することも好ましい。
【0217】
(一般式(d)または(e)で表されるポリエステル)
本形態に係るセルロースアシレートフィルムは、下記一般式(d)または(e)で表されるポリエステルを含有することが好ましい。
【0219】
(式中、B1はモノカルボン酸を表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
【0221】
(式中、B2はモノアルコールを表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(d)、(e)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは2価のアルコール成分を表し、Aは2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、B2、G、Aはいずれも芳香環を含まないことが特徴である。m、nは繰り返し数を表す。
【0222】
B1で表されるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。
【0223】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0224】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖のまたは側鎖を有する脂肪酸が好ましく用いられうる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸とを混合して用いることも好ましい。
【0225】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0226】
B2で表されるモノアルコール成分としては、特に制限はなく公知のアルコール類が用いられうる。例えば、炭素数1〜32の直鎖のまたは側鎖を有する脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールが好ましく用いられうる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
【0227】
Gで表される2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられるが、これらのうちエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、さらに、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0228】
Aで表される2塩基酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸が好ましく、脂肪族2塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、特に、脂肪族ジカルボン酸としては炭素数4〜12のもの、これらから選ばれる少なくとも1つのものが使用されうる。つまり、2種以上の2塩基酸を組み合わせて使用してもよい。
【0229】
m、nは繰り返し数を表し、1以上で170以下が好ましい。
【0230】
(一般式(f)または(g)で表されるポリエステル)
偏光板保護フィルムは、下記一般式(f)または(g)で表されるポリエステルを含有することも好ましい。
【0232】
(式中、B1は炭素数1〜12のモノカルボン酸を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
【0234】
(式中、B2は炭素数1〜12のモノアルコールを表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(f)、(g)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコール成分を表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。m、nは繰り返し数を表す。なお、B1、B2は、前述の一般式(d)または(e)におけるB1、B2と同義である。また、G、Aは、前述の一般式(d)または(e)におけるG、Aの中で炭素数2〜12のアルコール成分または2塩基酸成分に相当する。
【0235】
ポリエステルの数平均分子量は1000以上10000以下である。数平均分子量が1000未満では、高温高倍率延伸で破断が生じやすく、10000より大きいと相分離起因の白化が増加しやすい。
【0236】
ポリエステルの重縮合は常法によって行われる。例えば、上記2塩基酸とグリコールとの直接反応、上記の2塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば2塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応のいずれかの方法により容易に合成することができるが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応により合成することが好ましい。
【0237】
低分子量側に分布が高くあるポリエステルはセルロースアシレートとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースアシレートフィルムを得ることができる。分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法を用いる場合には、これらの1価の原料化合物の添加量を調整することで分子量を調節することができる。この場合、1価の酸の添加量を調整することが、ポリマーの安定性の観点から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられるが、重縮合反応中には系外に留去されず、停止して反応系外に除去するときには留去し易いものを選ぶことが好ましい。なお、この目的で複数の化合物を混合使用してもよい。また、直接反応の場合には、反応中に生成する水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても重量平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコールまたは2塩基酸のモル数を偏らせることによっても分子量の調節が可能であるし、反応温度をコントロールして分子量を調節することもできる。
【0238】
ポリエステルは、偏光板保護フィルム100質量%に対して、5〜20質量%の量で含まれることが好ましく、5〜15質量%の量で含まれることがより好ましい。
【0239】
〈紫外線吸収剤〉
偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。なお、本発明に係る位相差フィルムが紫外線吸収剤を含む場合、当該紫外線吸収剤は2種以上含まれることが好ましい。
【0240】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0241】
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・ジャパン株式会社製の市販品であり好ましく使用できる。
【0242】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。このほか、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0243】
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。また、無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加すればよい。
【0244】
紫外線吸収剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.5〜5質量%の量で含まれることが好ましく、0.5〜3質量%の量で含まれることがより好ましい。
【0245】
〈赤外線吸収剤〉
偏光板保護フィルムは、赤外線吸収剤を含んでもよい。かような構成とすることにより、フィルムの逆波長分散性が調整されうる。
【0246】
赤外線吸収剤は、750〜1100nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、800〜1000nmの波長領域に最大吸収を有することがさらに好ましい。また、赤外線吸収剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0247】
赤外線吸収剤としては、赤外線吸収染料または赤外線吸収顔料を用いることが好ましく、赤外線吸収染料を用いることが特に好ましい。
【0248】
赤外線吸収染料には、有機化合物と無機化合物が含まれる。有機化合物である赤外線吸収染料を用いることが好ましい。有機赤外線吸収染料には、シアニン化合物、金属キレート化合物、アミニウム化合物、ジイモニウム化合物、キノン化合物、スクアリリウム化合物およびメチン化合物が含まれる。赤外線吸収染料については、色材、61〔4〕215−226(1988)、および化学工業、43−53(1986、5月)に記載がある。
【0249】
赤外線吸収機能あるいは吸収スペクトルの観点で染料の種類を検討すると、ハロゲン化銀写真感光材料の技術分野で開発された赤外線吸収染料が優れている。ハロゲン化銀写真感光材料の技術分野で開発された赤外線吸収染料には、ジヒドロペリミジンスクアリリウム染料(米国特許5380635号明細書および特願平8−189817号明細書記載)、シアニン染料(特開昭62−123454号、同3−138640号、同3−211542号、同3−226736号、同5−313305号、同6−43583号の各公報、特願平7−269097号明細書および欧州特許0430244号明細書記載)、ピリリウム染料(特開平3−138640号、同3−211542号の各公報記載)、ジイモニウム染料(特開平3−138640号、同3−211542号の各公報記載)、ピラゾロピリドン染料(特開平2−282244号記載)、インドアニリン染料(特開平5−323500号、同5−323501号の各公報記載)、ポリメチン染料(特開平3−26765号、同4−190343号の各公報および欧州特許377961号明細書記載)、オキソノール染料(特開平3−9346号明細書記載)、アントラキノン染料(特開平4−13654号明細書記載)、ナフタロシアニン色素(米国特許5009989号明細書記載)およびナフトラクタム染料(欧州特許568267号明細書記載)が含まれる。これらの赤外線吸収剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0250】
赤外線吸収剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.5〜5質量%の量で含まれることが好ましく、0.5〜3質量%の量で含まれることがより好ましい。
【0251】
〈マット剤(微粒子)〉
偏光板保護フィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などの微粒子をマット剤として含有させることが好ましい。なかでも二酸化珪素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
【0252】
微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは5〜16nmであり、特に好ましくは5〜12nmである。
【0253】
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してフィルム中に含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
【0254】
本発明に用いられる微粒子の平均一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、平均一次粒子径とする。
【0255】
微粒子の見かけ比重としては、70g/リットル以上が好ましく、さらに好ましくは90〜200g/リットルであり、特に好ましくは100〜200g/リットルである。見かけ比重が大きいほど、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0256】
1次粒子の平均径が20nm以下、見かけ比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジルR812、アエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0257】
上記記載の見かけ比重は、二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、このときの重さを測定し、下記式で算出したものである。
【0259】
マット剤(微粒子)は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.1〜2質量%の量で含まれることが好ましく、0.1〜1質量%の量で含まれることがより好ましい。
【0260】
〈着色剤〉
偏光板保護フィルムは、着色剤を含んでもよい。「着色剤」とは、染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものが特に好ましい。着色剤としては各種の染料や顔料が使用可能であるが、特に、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
【0261】
着色剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、1〜15質量ppmの量で含まれることが好ましく、1〜10質量ppmの量で含まれることがより好ましい。
【0262】
上述したように、本発明によれば、IPS型液晶セルの視認側に配置された偏光板の液晶セル側の偏光板保護フィルムとして位相差フィルムを採用したIPS型液晶表示装置において、表示装置の製造時における当該位相差フィルムのリワーク性を向上させることができる。なお、本発明の構成とすることによりこのような効果が得られるメカニズムは完全には明らかではないが、一般にリワーク性の発揮にはフィルムとしての強さ(破断点張力)が大きいことが好ましいとされている。ここで、通常の積層形態の光学フィルムで十分なリワーク性を発揮させるためには積層フィルム全体としての膜厚を大きくせざるを得ない。
しかしながら、積層フィルムの膜厚を大きくすると、積層された各フィルム間の物性の違いが顕在化しやすくなり、積層界面での剥離が起こる虞がある。一方、本発明のように積層フィルムの形態を取りながらも比較的薄い(膜厚が30〜60μm)偏光板保護フィルムとすることで、積層された各フィルム間での物性の違いが顕在化しにくくなる。その結果、フィルム全体の強度がそれほど強くなくても、良好なリワーク性が発揮されるものと考えられる。ただし、上述したメカニズムによって本発明の技術的範囲は何ら影響を受けるものではない。
【実施例】
【0263】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0264】
≪材料≫
<正の固有複屈折を有するポリマー>
本実施例では、正の固有複屈折を有するポリマーとして、下記の表1に示す樹脂A1〜A5を用いた。
【0265】
【表1】
【0266】
なお、樹脂A5の樹脂ペレット1(ラクトン環アクリル)は、以下の手法により合成した。
【0267】
(樹脂ペレット1の合成例)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)5200g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2500g、メタクリル酸ベンジル(BzMA)2300g、トルエン10000gを仕込んだ。次に、上記反応釜に窒素を流しながら、反応釜の内容物を105℃まで昇温させ、還流開始後に、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソノナノエート(商品名:ルパゾール570、アトフィナ吉富(株)製)6.0gを添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート12.0gおよびトルエン100gからなる開始剤溶液を6時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエート・トルエン溶液の滴下後、さらに2時間熟成を行った。
【0268】
得られた重合体の反応率は96.4%であり、重合体中のMHMA構造単位の含有量は25.1質量%であり、BzMA構造単位の含有量は23.2質量%であった。
【0269】
得られた上記重合体溶液に、リン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−8)20gを加え、還流下(約80〜105℃)で2時間環化縮合反応を行い、さらに240℃の熱媒を用いて、オートクレーブ中で加圧下(ゲージ圧が最高約1.6MPaまで)、240℃で1.5時間環化縮合反応を行った。
【0270】
上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮とを行い、押出すことにより、透明な樹脂ペレット1(樹脂A5)を得た。
【0271】
得られた樹脂ペレット1中のBzMA構造単位の含有量は23.6質量%であり、プレスフィルムを作製して測定した屈折率は1.517であった。
【0272】
<負の固有複屈折を有するポリマー>
本実施例では、負の固有複屈折を有するポリマーとして、下記の表2に示す樹脂B1〜B4を用いた。
【0273】
【表2】
【0274】
なお、樹脂B1およびB2は、以下の手法により合成した。
【0275】
(樹脂B1の合成例)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、単量体としてN−フェニルマレイミド(PMI)70質量部およびメタクリル酸メチル(MMA)490質量部と、重合溶媒としてトルエン620質量部とを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として1.1質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加した。ここに、スチレン(St)140質量部、トルエン50質量部およびt−アミルパーオキシイソノナノエート2.1質量部の混合溶液を2時間かけて滴下させ、さらに6時間、溶液重合を進行させた。
【0276】
次に、このようにして得た重合溶液を、減圧下240℃で1時間乾燥させて、MMA単位、St単位およびPMI単位からなる透明な樹脂B1を得た。樹脂B1の組成は、MMA:St:PMI=70質量%:20質量%:10質量%である。
【0277】
(樹脂B2の合成例)
単量体として420質量部のMMAおよび210質量部のStを用いた以外は、樹脂B1の合成例と同様にして、溶液重合を進行させた。
【0278】
次に、このようにして得た重合溶液を、減圧下240℃で1時間乾燥させて、MMA単位、St単位およびPMI単位からなる透明な樹脂B2を得た。樹脂B2の組成は、MMA:St:PMI=60質量%:30質量%:10質量%である。
【0279】
<重量平均分子量(Mw)が500〜10000のアクリルポリマー>
本実施例では、重量平均分子量(Mw)が500〜10000のアクリルポリマーとして、下記の表3に示す樹脂D1〜D3を用いた。
【0280】
【表3】
【0281】
<偏光板保護フィルム101〜107>
本実施例では、以下の偏光板保護フィルム101〜107を用いた。なお、以下の偏光板保護フィルム101〜107は、第1の偏光板保護フィルム、第3の偏光板保護フィルム、または第4の偏光板保護フィルムのいずれかとして用いられるものである。
【0282】
(偏光板保護フィルム101の作製)
下記素材を真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、二軸式押出機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
【0283】
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル/アクリロイルモルホリン=80/20(モル比);Mw=100000;90℃で3時間乾燥し水分率1000ppm) 70質量部
セルロースエステル樹脂(セルロースアセテートプロピオネート:アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000、100℃で3時間乾燥し水分率500ppm) 30質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 1.1質量部
アデカスタブ PEP−36(株式会社ADEKA製) 0.25質量部
イルガノックス1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
スミライザーGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.27質量部
得られたペレットを、70℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、100℃の温度を保ったまま、次工程の一軸式押出機に導入した。
【0284】
上記ペレットを、一軸押出機を用いてTダイから表面温度が90℃の第1冷却ロール上に溶融温度240℃でフィルム状に溶融押し出しし、120μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
【0285】
得られたフィルムをまずロール周速差を利用した延伸機によって175℃で搬送方向に60%延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に175℃で70%延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚20μmの偏光板保護フィルム101を得た。
【0286】
(偏光板保護フィルム102の作製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0287】
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0288】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら完全に溶解した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0289】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル樹脂(セルローストリアセテート:アセチル基置換度2.9、Mw=180000、100℃で3時間乾燥し水分率500ppm) 86質量部
アクリルポリマー(メチルアクリレートの単独重合体、Mw=1000)10質量部
ポリエステル(フタル酸/アジピン酸/1,2−プロパンジオール/安息香酸=25/25/25/25(モル比)) 4質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。
【0290】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したフィルムを、165℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に15%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
【0291】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、膜厚40μmの偏光板保護フィルム102を得た。
【0292】
(偏光板保護フィルム103の作製)
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら完全に溶解した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0293】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル樹脂(セルローストリアセテート:アセチル基置換度2.9、Mw=180000、100℃で3時間乾燥し水分率500ppm) 90質量部
ポリエステル(テレフタル酸/アジピン酸/エチレングリコール/プロピレングリコール=25/25/25/25(モル比)) 10質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。
【0294】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した(剥離時の残留溶媒は15%;延伸処理はせず)。剥離したフィルムを、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、膜厚60μmの偏光板保護フィルム103を得た。
【0295】
(偏光板保護フィルム104)
デルペット80N(旭化成ケミカルズ(株)製、Mw=100000、膜厚25μm)を、偏光板保護フィルム104として用いた。
【0296】
(偏光板保護フィルム105)
FX4727(JSR(株)製、Mw=100000、膜厚20μm)を、偏光板保護フィルム105として用いた。
【0297】
(偏光板保護フィルム106の作製)
まず、以下のドープ組成物を調製した。
【0298】
セルローストリアセテート(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
エステル化合物 10質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ組成物を調製した。なお、エステル化合物および二酸化珪素分散希釈液は、以下のようにして合成・調製した。
【0299】
〈エステル化合物の合成〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物を得た。得られたエステル化合物の酸価は0.10であり、数平均分子量は450であった。
【0300】
〈二酸化珪素分散希釈液の調製〉
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製;一次粒子の平均径7nm) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、二酸化珪素分散液を得た。得られた二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、さらに微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過して、二酸化珪素分散希釈液を調製した。
【0301】
続いて、上記で調製したドープ組成物を、ベルト流延装置のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離したウェブ中の溶剤を、35℃にて蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターで幅保持し160℃の乾燥温度(熱処理温度、延伸温度ともいう)で乾燥させた。
【0302】
乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、偏光板保護フィルム106を得た。得られた偏光板保護フィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は25μm、巻数は6000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向(搬送方向)の延伸倍率は1.10倍(10%の延伸倍率)であった。
【0303】
(偏光板保護フィルム107)
偏光板保護フィルム107としては、コニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製;膜厚40μm)をそのまま用いた。
【0304】
<偏光板保護フィルム201〜215>
本実施例では、以下の偏光板保護フィルム201〜215を用いた。なお、以下の偏光板保護フィルム201〜215は位相差フィルムであり、第2の偏光板保護フィルムとして用いられるものである。
【0305】
(偏光板保護フィルム201の作製)
上記の表1に記載の樹脂A1 70モル、および、上記の表3に記載の樹脂D1 30モルを真空ナウターミキサーで80℃、133Paで3時間混合しながら、さらに乾燥した。この際、以下の添加剤をさらに添加して、混合を行った。
【0306】
アデカスタブ PEP−36(株式会社ADEKA製) 0.25質量部
イルガノックス1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
スミライザーGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.27質量部
得られた混合物を、二軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。このペレット(水分率50ppm)を、一軸押し出し機を用いてTダイから表面温度が90℃の第1冷却ロール上に溶融温度240℃でフィルム状に溶融押し出しし、55μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
【0307】
得られたフィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に150℃で30%延伸した。その後、クリップ把持部を裁ち落として膜厚が20μmのフィルムとして基材層を得た。なお、得られたフィルムについて、アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行い、延伸方向の屈折率をNxとし、延伸方向に直交する面内方向の屈折率をNyとしたときに(Nx−Ny)>0であり、正の固有複屈折を有していた。
【0308】
続いて、上記の表2に記載の樹脂B2 100質量部を真空ナウターミキサーで80℃、133Paで3時間乾燥した。
【0309】
乾燥後の樹脂を、二軸式押し出し機を用いて270℃で溶融混合しペレット化した。このペレット(水分率50ppm)を、一軸押し出し機を用いてTダイから、上記で作製した基材層上に、膜厚25μmとなるようにフィルム状に溶融押し出しして、積層体を得た。
【0310】
得られた積層体を、150℃で加熱しながら縦延伸機にて搬送方向に30%延伸して、偏光板保護フィルム201を得た。なお、後延伸後の第1の光学異方性層(正の固有複屈折を有するポリマーを含む、基材層由来の層)の膜厚は15μmであった。また、後延伸後の第2の光学異方性層(負の固有複屈折を有するポリマーを含む層)の膜厚は18μmであった。
【0311】
(偏光板保護フィルム202〜210の作製)
正の固有複屈折を有するポリマーおよび負の固有複屈折を有するポリマーの種類、正の固有複屈折を有するポリマーとアクリルポリマーとの組成比、第1および第2の延伸の延伸条件(延伸温度、延伸倍率)を下記の表4に示すように変更したこと以外は、上述した偏光板保護フィルム201の作製と同様にして、偏光板保護フィルム202〜210を作製した。
【0312】
(偏光板保護フィルム211〜213の作製)
正の固有複屈折を有するポリマーおよび負の固有複屈折を有するポリマーの種類、正の固有複屈折を有するポリマーとアクリルポリマーとの組成比、第1および第2の延伸の延伸条件(延伸温度、延伸倍率)を下記の表4に示すように変更した。
【0313】
なお、負の固有複屈折を有するポリマーとしては、上記の表2に示す樹脂B3(N−ビニルカルバゾールとアクリル酸イソボルニルとの35:65(質量比)の共重合体)を用いたが、この樹脂B3を含む層の基材層上への形成とそれによる積層体の作製は以下のように行った。
【0314】
まず、N−ビニルカルバゾール35質量部、アクリル酸イソボルニル65質量部、および光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF・ジャパン社製、イルガキュア184D)3質量部を混合して、無溶剤型の重合硬化性組成物を得た。
【0315】
次に、予め作製しておいた基材層の表面に、上記で得られた重合硬化性組成物を塗布膜厚が20μmとなるようにバーコーターにより塗布した。次いで、窒素雰囲気下において上記重合硬化性組成物に紫外線を照射して当該組成物を光重合させて、後延伸の前の状態の積層体を得た。なお、紫外線の照射には、ウシオ電機社製紫外線照射装置を用いた。
【0316】
(偏光板保護フィルム214の作製)
偏光板保護フィルム214の作製では、正の固有複屈折を有するポリマーとして上記の表1に記載の樹脂A5を用い、また、アクリルポリマーを用いなかった。また、第1の光学異方性層および第2の光学異方性層の膜厚がそれぞれ50μmおよび10μmとなるようにした。これら以外の点については、上述した偏光板保護フィルム213の作製と同様にして、偏光板保護フィルム214を得た。
【0317】
(偏光板保護フィルム215の作製)
偏光板保護フィルム215の作製では、負の固有複屈折を有するポリマーとして上記の表1に記載の樹脂B4を用いた。また、第2の光学異方性層の膜厚が15μmとなるようにした。なお、樹脂B4を含む層の基材層上への形成とそれによる積層体の作製は以下のように行った。
【0318】
スクリューを有するTダイ付き押し出し機により樹脂B4を溶融押し出しし、幅110mmのTダイから押し出し、予め作製しておいた基材層の表面に塗膜を形成して、積層体を得た。
【0319】
これら以外の点については、上述した偏光板保護フィルム214の作製と同様にして、偏光板保護フィルム215を得た。
【0320】
【表4】
【0321】
<第2の偏光板保護フィルムのリターデーション(Ro、Rth)>
上記で作製した(第2の)偏光板保護フィルム201〜215について、第1の光学異方性層および第2の光学異方性層のそれぞれの面内方向リターデーション(Ro1、Ro2)および厚み方向のリターデーション(Rt1、Rt2をそれぞれ測定した。また、Ro1とRo2とを足し合わせて積層体の面内方向リターデーションの値を算出し、Rt1とRt2とを足し合わせて積層体の厚み方向のリターデーションの値を算出した。結果を下記の表5に示す。
【0322】
【表5】
【0323】
≪偏光板のリワーク性評価≫
上記で作製・準備した偏光板保護フィルム101〜107および201〜215を、下記の表6に示すように組み合わせて、2つの偏光子のそれぞれを挟持するようにポリビニルアルコール水溶液を用いて貼合し、偏光板を作製した。
【0324】
上記で作製した第2の偏光板保護フィルムのリワーク性は以下のようにして評価した。結果を下記の表6に示す。
【0325】
(粘着剤層付偏光板の作製方法)
まず、以下の要領で粘着剤層付偏光板を作製した。
【0326】
具体的には、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート74.9部、ベンジルアクリレート20部、アクリル酸5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み(モノマーの濃度50%)、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)204万、Mw/Mn=3.2のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0327】
上記で得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製のコロネートL,トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)0.45部およびベンゾイルパーオキサイド(日油社製,ナイパーBMT)0.1部、およびシランカップリング剤(信越化学工業(株)製のKBM403)0.1部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液(固形分11%)を調製した。
【0328】
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施した、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥処理して粘着剤層を形成した。
【0329】
偏光板側に、それぞれ、ワイヤーバーにて下塗り剤を塗布して、下塗り層(厚さ100nm)を形成した。下塗り剤には、チオフェン系ポリマーを含む溶液(ナガセケムテックス社製,商品名「デナトロンP521−AC」)を水とイソプロピルアルコールの混合溶液で希釈し、固形分濃度が0.6重量%となるように調製したものを用いた。次いで、下塗り層に、上記粘着剤層を形成したシリコーン処理を施したPETフィルムを転写し粘着剤層付偏光板を作製した。
【0330】
(粘着剤層付偏光板を用いた評価)
上記の要領で得られた粘着剤層付偏光板を、ガラス板にラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理したものを試験サンプルとした。偏光板を1つの角より対角線方向に90度方向に剥離し、判定を下記の基準で行った。
【0331】
(リワーク性の評価基準)
◎:フィルム同士が密着した状態で剥離でき、ガラス板表面に曇りや粘着剤の残りなどが認められない。
【0332】
○:フィルム同士が密着した状態で剥離できガラス板表面に曇りや粘着剤の残りなどがほとんど認められない。
【0333】
△:コーナー部でのフィルム間での剥離がやや見られる。
【0334】
×:フィルム間での剥離がみられる。
【0335】
【表6】
【0336】
表6に示す結果から、本発明によれば、IPS型液晶セルの視認側に配置された偏光板の液晶セル側の偏光板保護フィルム(第2の偏光板保護フィルム)として位相差フィルムを採用したIPS型液晶表示装置において、表示装置の製造時における当該位相差フィルムのリワーク性を向上させることができることが示された。