【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1のステアリング装置を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。ステアリング装置101は、ステアリングシャフト102を回動自在に軸支している。ステアリングシャフト102には、その上端(車体後方側)にステアリングホイール103が装着され、ステアリングシャフト102の下端(車体前方側)には、ユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105が連結されている。
【0021】
中間シャフト105にはその下端にユニバーサルジョイント106が連結され、ユニバーサルジョイント106には、ラックアンドピニオン機構等からなるステアリングギヤ107が連結されている。
【0022】
運転者がステアリングホイール103を回転操作すると、ステアリングシャフト102、ユニバーサルジョイント104、中間シャフト105、ユニバーサルジョイント106を介して、その回転力がステアリングギヤ107に伝達され、ラックアンドピニオン機構を介して、タイロッド108を移動し、車輪の操舵角を変えることができる。
【0023】
図2は本発明の実施例1のステアリング装置の要部を示す正面図、
図3は
図2のA−A断面図、
図4は
図2のステアリング装置から操舵補助部、車体取付けブラケット、ステアリングシャフト、クランプ装置を省略した状態を示す正面図である。
図5は
図4のステアリング装置の分解斜視図、
図6は
図5のアウターコラムにインナーコラムを嵌合して車体上方側から見た平面図である。
図7は本発明の実施例1のステアリング装置の分解斜視図であり、車体取付けブラケット、第1の摩擦板、第2の摩擦板及びディスタンスブラケットの車幅方向右側半分の分解斜視図である。
【0024】
図2から
図7に示すように、本発明の実施例1のステアリング装置101は、アッパー側車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)3、インナーコラム(ロアーコラム)2、操舵補助部51(電動アシスト機構)、アウターコラム(アッパーコラム)1等から構成されている。
【0025】
インナーコラム2の車体前方側(
図2の左側)には、操舵補助部(電動アシスト機構)51の右端が圧入によって固定される。操舵補助部51は、電動モータ511、減速ギヤボックス部512、出力軸513等から構成されている。操舵補助部51は、操舵補助部51の車体前方端に一体的に形成されたブラケット514が、車体(
図2、
図3参照)5に、チルト中心軸21を介してチルト位置調整可能に支持されている。
【0026】
図3に示すように、インナーコラム2の外周22には、アウターコラム1の内周12がテレスコピック位置調整(インナーコラム2の中心軸線に平行に摺動)可能に外嵌している。アウターコラム1には、上部ステアリングシャフト41が回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフト41の車体後方側(
図2の右側)端部には、ステアリングホイール103が固定されている。
【0027】
インナーコラム2には、図示しない下部ステアリングシャフトが回動可能に軸支され、下部ステアリングシャフトは上部ステアリングシャフト41とスプライン嵌合している。従って、アウターコラム1のテレスコピック位置に関わらず、上部ステアリングシャフト41の回転が下部ステアリングシャフトに伝達される。
【0028】
操舵補助部51は、下部ステアリングシャフトに作用するトルクを検出し、電動モータ511を駆動して、出力軸513を所要の操舵補助力で回転させる。この出力軸513の回転が、ユニバーサルジョイント104、中間シャフト105、ユニバーサルジョイント106を経由して、ステアリングギヤ107に伝達され、車輪の操舵角を変えることができる。
【0029】
アウターコラム1は、アッパー側車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)3によって車体5に取付けられている。
図3に示すように、アッパー側車体取付けブラケット3の上部には、このアッパー側車体取付けブラケット3を車体5に取付けるための左右一対のフランジ部31A、31Bが形成されている。フランジ部31A、31Bと一体に形成され、上下方向に延在する左右の側板32A、32Bの内側面321A、321Bには、ディスタンスブラケット6がテレスコ移動及びチルト移動可能に挟持されている。本発明の実施例では、左右の側板32A、32Bはフランジ部31A、31Bと一体に形成されているが、別体に形成してもよい。
【0030】
図3、
図5に示すように、ディスタンスブラケット6は、左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bで構成されている。左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る垂直平面に対して対称な形状を有し、鉄製の矩形板材を折り曲げて形成されている。左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bは、各々の下方の円弧状部61A、61Bが、アウターコラム1の外周11に巻き付けられ、外周11に溶接によって固定されている。
【0031】
左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bには、各々の上方に、側板32A、32Bに対して平行な平面部62A、62Bが形成されている。平面部62A、62Bは、第1の摩擦板7A、7Bと第2の摩擦板8A、8Bを介して、左右の側板32A、32Bの内側面321A、321Bに、テレスコ移動及びチルト移動可能に挟持されている。平面部62A、62Bには、軸方向(
図4の左右方向)に長いテレスコ用長溝(第1のテレスコ調整用長溝)63A、63Bが形成されている。
【0032】
左ディスタンスブラケット6Aの平面部62A、右ディスタンスブラケット6Bの平面部62Bには、平面部62A、62Bの車体前後方向の両端に、折り曲げ部64A、64Bが形成されている。折り曲げ部64A、64Bは、平面部62A、62Bから車幅方向の内側に向かって直角に折り曲げられている。また、平面部62A、62Bの上端には、平面部62A、62Bの車体前後方向の全長に渡って、折り曲げ部65A、65Bが形成されている。
【0033】
折り曲げ部64A、64Bには、車幅方向の内側面に、円弧状の左右一対の締付け部66A、66Bが形成されている。アウターコラム1には、車体後方側の締付け部66A、66Bが挿通される左右一対の貫通孔15A、15Bだけが形成されている。車体前方側の締付け部66A、66Bは、アウターコラム1の車体前方側の端面17よりも車体前方側に位置している。貫通孔15A、15Bは、アウターコラム1の軸方向に短く形成され、車体後方側の締付け部66A、66Bの車体前後方向の厚さよりも若干大きな寸法に形成されている。
【0034】
車体後方側の締付け部66A、66Bがこの貫通孔15A、15Bに挿通され、車体後方側の締付け部66A、66Bが、インナーコラム2の外周22を直接締付けている。また、車体前方側の締付け部66A、66Bは、貫通孔を経由せずに、インナーコラム2の外周22を直接締付けている。
【0035】
図3、
図7に示すように、第1の摩擦板7A、7Bは、車体取付けブラケット3の左右の側板32A、32Bとディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bとの間に各々挟持されている。また、第2の摩擦板8A、8Bは、ディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bと第1の摩擦板7A、7Bとの間に各々挟持されている。第1の摩擦板7A、7Bは、テレスコピック位置調整方向の長さが左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bとほぼ同一の長さに形成され、車体上下方向の長さは左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bよりも若干短く形成され、鉄製の矩形板材を折り曲げて形成されている。
【0036】
第1の摩擦板7A、7Bには、各々の上方に、ディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bに対して平行な平面部71A、71Bが形成されている。平面部71A、71Bの上端には、平面部71A、71Bから車幅方向の内側に向かって直角に折り曲げられた折り曲げ部72A、72Bが形成されている。折り曲げ部72A、72Bの下面は、ディスタンスブラケット6の折り曲げ部65A、65Bの上面に当接するとともに、平面部71A、71Bの車体前後方向の全長に渡って形成されている。
【0037】
平面部71A、71Bには、車体前後方向(
図3の紙面に直交する方向)に長いテレスコ用長溝(第2のテレスコ調整用長溝)76A、76Bが形成されている。また、平面部71A、71Bの車体下方側には、車幅方向の高さが波形状に連続的に変化する波形部73A、73Bが形成されている。波形部73A、73Bは、アウターコラム1の中心軸線近傍に形成されている。
【0038】
折り曲げ部72A、72Bには、折り曲げ部72A、72Bの車体前後方向の中間位置に、折り曲げ部72A、72Bから車幅方向の内側に向かって延びる延長部74A、74Bが形成されている。延長部74A、74Bの車幅方向内側の端部には、車体下方側に向かって一旦折り曲げられた後、車幅方向外側に向かって折り曲げられた折り返し部75A、75Bが形成されている。
【0039】
左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bの折り曲げ部65A、65Bには、車体前後方向の中間位置に、コの字形の切欠き溝67A、67Bが形成されている。この切欠き溝67A、67Bに第1の摩擦板7A、7Bの延長部74A、74Bが係合し、延長部74A、74Bと折り返し部75A、75Bによって、折り曲げ部65A、65Bを車体上下方向から挟持している。従って、第1の摩擦板7A、7Bは、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bに、車体前後方向及び車体上下方向に移動不能に係合している。
【0040】
第2の摩擦板8A、8Bは、鉄製の円盤状に形成され、中心に丸孔81A、81Bが形成されている。丸棒状の締付けロッド34が
図3の右側から挿通され、側板32A、32Bに形成したチルト用長溝33A、33B、第1の摩擦板7A、7Bのテレスコ用長溝76A、76B、第2の摩擦板8A、8Bの丸孔81A、81B、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bのテレスコ用長溝63A、63Bに挿入されている。側板32A、32Bのチルト用長溝33A、33Bは、チルト中心軸21を中心とする円弧状に形成されている。
【0041】
図3に示すように、締付けロッド34の右端には、頭部341が形成され、頭部341が側板32Bの外側面に当接している。頭部341の左側外径部には、チルト用長溝33Bの溝幅よりも若干幅の狭い矩形断面の回り止め部(図示せず)が形成されている。回り止め部はチルト用長溝33Bに嵌入して、締付けロッド34をアッパー側車体取付けブラケット3に対して回り止めすると共に、チルト位置調整時に、チルト用長溝33Bに沿って、締付けロッド34を摺動させる。
【0042】
締付けロッド34の左端外周には、固定カム343、可動カム344、スラスト軸受345、調整ナット346がこの順で外嵌され、調整ナット346の内径部に形成された雌ねじ348が、締付けロッド34の左端に形成された雄ねじ347にねじ込まれている。
可動カム344の左端面には操作レバー349が固定され、この操作レバー349によって一体的に操作される可動カム344と固定カム343によって、カムロック機構が構成されている。固定カム343はチルト用長溝33Aに係合して、アッパー側車体取付けブラケット3に対して非回転であり、チルト位置調整時に、チルト用長溝33Aに沿って固定カム343を摺動させる。
【0043】
チルト・テレスコピック締付け時に、操作レバー349が回動されると、固定カム343の山に可動カム344の山が乗り上げて、固定カム343を
図3の右側に押すと同時に、締付けロッド34を左側に引くことによって、側板32A、32Bを締付ける。側板32A、32Bの内側面321A、321Bが、第1の摩擦板7A、7B、第2の摩擦板8A、8Bを介してディスタンスブラケット6の平面部62A、62Bを締付ける。
【0044】
すると、締付けロッド34近傍の平面部62A、62Bが車幅方向内側に弾性変形し、ディスタンスブラケット6の折り曲げ部64A、64Bの左右一対の締付け部66A、66Bが、インナーコラム2の外周22を左右両側から締め付ける。また、第1の摩擦板7A、7Bの波形部73A、73Bが弾性変形して、アウターコラム1の中心軸線近傍の平面部62A、62Bが車幅方向内側に弾性変形し、アウターコラム1の中心軸線近傍を左右両側から締め付ける。
【0045】
チルト・テレスコピック解除時には、操作レバー349を逆方向に回動し、固定カム343の山に可動カム344の谷が入り込み、固定カム343を右側に押す力を解除する。同時に、締付けロッド34を左側に引く力を解除することによって、側板32A、32Bを離間させ、波形部73A、73B及び平面部62A、62Bの弾性変形を解除して、締付け部66A、66B及びアウターコラム1の中心軸線近傍の締め付けを解除する。これによって、アウターコラム1及びディスタンスブラケット6を、所望のチルト・テレスコピック位置で、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプ・アンクランプすることができる。
【0046】
ディスタンスブラケット6及びインナーコラム2をアッパー側車体取付けブラケット3に対してアンクランプした後、ステアリングホイール103を握ってアウターコラム1をインナーコラム2に対して軸方向に摺動し、所望のテレスコピック位置に調整する。この時、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6B、第1の摩擦板7A、7Bは、締付けロッド34に案内されて、アウターコラム1とともに軸方向に摺動する。
【0047】
また、ステアリングホイール103を握って、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6B、第1の摩擦板7A、7B、第2の摩擦板8A、8B、アウターコラム1を、チルト中心軸21を中心として所望のチルト位置に調整する。
【0048】
本発明の実施例1では、第1の摩擦板7A、7B及び第2の摩擦板8A、8Bを介してディスタンスブラケット6をアッパー側車体取付けブラケット3にクランプするため、クランプ時のアウターコラム1、インナーコラム2のクランプ力が大きくなり、二次衝突時に、ディスタンスブラケット6がテレスコピック方向及びチルト方向に移動しにくくなる。また、アウターコラム1の中心軸線近傍を左右両側から締め付けるため、ステアリング装置101の左右方向の曲げ剛性と振動剛性を大きくすることができる。
【0049】
また、ディスタンスブラケット6と第1の摩擦板7A、7Bの係合は、ディスタンスブラケット6の切欠き溝67A、67Bに第1の摩擦板7A、7Bの延長部74A、74Bが係合し、延長部74A、74Bと折り返し部75A、75Bによって、ディスタンスブラケット6の折り曲げ部65A、65Bを車体上下方向から挟持して行う。従って、ディスタンスブラケット6に対する第1の摩擦板7A、7Bの組付け作業が容易で、溶接や部品の追加無しで組付けできるため、製造コストを低減することが可能となる。
【0050】
さらに、ディスタンスブラケット6の左右一対の締付け部66A、66Bが、インナーコラム2の外周22を左右両側から直接締め付ける。従って、締付け力の左右のバランスが良く、ステアリングホイール103のテレスコ位置によって、アウターコラム1がインナーコラム2を締付ける締付け力が変動しない。
【実施例2】
【0051】
次に本発明の実施例2について説明する。
図8は本発明の実施例2のステアリング装置の断面図であり、実施例1の
図3相当図である。
図9は本発明の実施例2のステアリング装置の分解斜視図であり、実施例1の
図7相当図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0052】
実施例2は、第1の摩擦板の車体下方端を車体上方側に折り曲げて折り返し部を形成し、この折り返し部と第1の摩擦板との間に、締付けロッドに外嵌する第3の摩擦板を追加した例である。すなわち、
図8、
図9に示すように、実施例2のディスタンスブラケット6は、実施例1と同一形状の左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bで構成されている。
【0053】
左ディスタンスブラケット6Aと右ディスタンスブラケット6Bの平面部62A、62Bは、第1の摩擦板7A、7Bと第2の摩擦板8A、8B、第3の摩擦板9A、9Bを介して、左右の側板32A、32Bの内側面321A、321Bに、テレスコ移動及びチルト移動可能に挟持されている。
【0054】
図8、
図9に示すように、第1の摩擦板7A、7Bは、車体取付けブラケット3の左右の側板32A、32Bとディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bとの間に各々挟持されている。第1の摩擦板7A、7Bは、テレスコピック位置調整方向の長さが左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bとほぼ同一の長さに形成され、車体上下方向の長さは左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bよりも若干短く形成され、鉄製の矩形板材を折り曲げて形成されている。
【0055】
第1の摩擦板7A、7Bには、各々の上方に、ディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bに対して平行な平面部71A、71Bが形成されている。平面部71A、71Bの上端には、平面部71A、71Bから車幅方向の内側に向かって直角に折り曲げられた折り曲げ部72A、72Bが形成されている。折り曲げ部72A、72Bの下面は、ディスタンスブラケット6の折り曲げ部65A、65Bの上面に当接するとともに、平面部71A、71Bの車体前後方向の全長に渡って形成されている。平面部71A、71Bには、車体前後方向(
図8の紙面に直交する方向)に長いテレスコ用長溝(第2のテレスコ調整用長溝)76A、76Bが形成されている。
【0056】
また、平面部71A、71Bの車体下方端には、平面部71A、71Bから車幅方向の内側に向かって直角に折り曲げられた後、車体上方側に向かって折り曲げられた折り返し部77A、77Bが形成されている。折り返し部77A、77Bは、アウターコラム1の中心軸線近傍に形成され、締付けロッド34を超えて車体上方側に延びて形成されている。折り返し部77A、77Bには、車体前後方向(
図8の紙面に直交する方向)に長いテレスコ用長溝(第3のテレスコ調整用長溝)78A、78Bが形成されている。
【0057】
折り曲げ部72A、72Bには、折り曲げ部72A、72Bの車体前後方向の中間位置に、折り曲げ部72A、72Bから車幅方向の内側に向かって延びる延長部74A、74Bが形成されている。延長部74A、74Bの車幅方向内側の端部には、車体下方側に向かって一旦折り曲げられた後、車幅方向外側に向かって折り曲げられた折り返し部75A、75Bが形成されている。
【0058】
左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bの折り曲げ部65A、65Bには、車体前後方向の中間位置に、コの字形の切欠き溝67A、67Bが形成されている。この切欠き溝67A、67Bに第1の摩擦板7A、7Bの延長部74A、74Bが係合し、延長部74A、74Bと折り返し部75A、75Bによって、折り曲げ部65A、65Bを車体上下方向から挟持している。従って、第1の摩擦板7A、7Bは、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bに、車体前後方向及び車体上下方向に移動不能に係合している。
【0059】
第2の摩擦板8A、8Bは、ディスタンスブラケット6の左右の平面部62A、62Bと第1の摩擦板7A、7Bの折り返し部77A、77Bとの間に各々挟持されている。さらに、第3の摩擦板9A、9Bは、第1の摩擦板7A、7Bの左右の平面部71A、71Bと第1の摩擦板7A、7Bの折り返し部77A、77Bとの間に各々挟持されている。
【0060】
第2の摩擦板8A、8B及び第3の摩擦板9A、9Bは、鉄製の円盤状に形成され、中心に丸孔81A、81B、丸孔91A、91Bが形成されている。丸棒状の締付けロッド34が
図8の右側から挿通され、側板32A、32Bに形成したチルト用長溝33A、33B、第1の摩擦板7A、7Bのテレスコ用長溝76A、76B、第3の摩擦板9A、9Bの丸孔91A、91B、折り返し部77A、77Bのテレスコ用長溝78A、78B、第2の摩擦板8A、8Bの丸孔81A、81B、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6Bのテレスコ用長溝63A、63Bに挿入されている。
【0061】
チルト・テレスコピック締付け時に、操作レバー349が回動されると、固定カム343の山に可動カム344の山が乗り上げて、固定カム343を
図8の右側に押すと同時に、締付けロッド34を左側に引くことによって、側板32A、32Bを締付ける。側板32A、32Bの内側面321A、321Bが、第1の摩擦板7A、7Bの平面部71A、71B、第3の摩擦板9A、9B、第1の摩擦板7A、7Bの折り返し部77A、77B、第2の摩擦板8A、8Bを介してディスタンスブラケット6の平面部62A、62Bを締付ける。
【0062】
すると、締付けロッド34近傍の平面部62A、62Bが車幅方向内側に弾性変形し、折り曲げ部64A、64Bの左右一対の締付け部66A、66Bが、インナーコラム2の外周22を左右両側から締め付ける。また、第1の摩擦板7A、7Bの折り返し部77A、77Bが弾性変形して、アウターコラム1の中心軸線近傍の平面部62A、62Bが車幅方向内側に弾性変形し、アウターコラム1の中心軸線近傍を左右両側から締め付ける。
【0063】
チルト・テレスコピック解除時には、操作レバー349を逆方向に回動し、固定カム343の山に可動カム344の谷が入り込み、固定カム343を右側に押す力を解除する。同時に、締付けロッド34を左側に引く力を解除することによって、側板32A、32Bを離間させ、折り返し部77A、77B及び平面部62A、62Bの弾性変形を解除して、締付け部66A、66B及びアウターコラム1の中心軸線近傍の締め付けを解除する。これによって、アウターコラム1及びディスタンスブラケット6を、所望のチルト・テレスコピック位置で、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプ・アンクランプすることができる。
【0064】
ディスタンスブラケット6及びインナーコラム2をアッパー側車体取付けブラケット3に対してアンクランプした後、ステアリングホイール103を握ってアウターコラム1をインナーコラム2に対して軸方向に摺動し、所望のテレスコピック位置に調整する。この時、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6B、第1の摩擦板7A、7Bは、締付けロッド34に案内されて、アウターコラム1とともに軸方向に摺動する。
【0065】
また、ステアリングホイール103を握って、左ディスタンスブラケット6A、右ディスタンスブラケット6B、第1の摩擦板7A、7B、第2の摩擦板8A、8B、第3の摩擦板9A、9B、アウターコラム1を、チルト中心軸21を中心として所望のチルト位置に調整する。
【0066】
本発明の実施例2では、第1の摩擦板7A、7B、第2の摩擦板8A、8B及び第3の摩擦板9A、9Bを介してディスタンスブラケット6をアッパー側車体取付けブラケット3にクランプするため、クランプ時のアウターコラム1、インナーコラム2のクランプ力が実施例1よりも大きくなり、二次衝突時に、ディスタンスブラケット6がテレスコピック方向及びチルト方向に移動しにくくなる。
【0067】
上記実施例では、ディスタンスブラケットとアウターコタムを溶接によって固定しているが、ボルト止めやピン止め、またはカシメによって固定してもよい。また、上記実施例では、アウターコラム及びインナーコラムは円筒形に形成されているが、非円筒形でもよく、インナーコラムの外周形状に応じて、締付け部の形状を変更すればよい。
【0068】
上記実施例では、チルト位置調整とテレスコピック位置調整の両方が可能なチルト・テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した場合について説明したが、テレスコピック位置調整だけが可能なテレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用してもよい。また、上記実施例では、アウターコラムの車体前方側にインナーコラムが軸方向に摺動可能に嵌合しているが、インナーコラムの車体前方側にアウターコラムが軸方向に摺動可能に嵌合するステアリング装置に適用してもよい。また、上記実施例では、アウターコラムの車体上方側に締付けロッドが配置されているが、アウターコラムの車体下方側に締付けロッドを配置してもよい。