(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ほぼ90度の電気長の第1の端末線路に接続される出力端子と、導体または誘電体を含んで構成される伝送媒体と電気的に結合する出力端子とを備える送信機、および、ほぼ90度の電気長の第2の端末線路に接続される入力端子と、前記伝送媒体と電気的に結合する入力端子とを備える受信機を備える伝送システムにて信号または電力を伝送する伝送方法であって、
前記送信機が、前記2個の出力端子から前記第1の端末線路と前記伝送媒体とに、それぞれ大きさが同じで符号が反対の電流を供給するステップと、
前記送信機が、前記伝送媒体を介して、前記受信機に高周波信号または電力を伝送するステップと、
を含むことを特徴とする伝送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高周波信号または高周波電力を、差動信号、またはシングルエンド信号として伝送させる従来技術では、送受信機が2本の伝送線路によって接続され、閉回路を形成する必要がある。
【0007】
しかしながら、高周波信号または電力の送信機を既設の伝送線路に接続し、高周波信号または電力を伝送線路に重畳して、伝送経路に接続された受信機に高周波信号または電力を伝送する場合、送信機と受信機との間で閉回路を構成するために、送信機と受信機とが2本の伝送線路によって接続される必要がある。すると、ケーブルが増加するという問題が生じる。
【0008】
また、人体を通信媒体とする通信技術においては、送信機と受信機との間で、人体を通信媒体とする第一の通信路と、空間を経由して結合する第二の通信路の2つの通信路とを、閉回路として設ける必要がある。しかし、空間を経由して送受信機を電気的に結合する場合、伝送効率が低く不安定なため、近傍にある金属や、電磁ノイズの飛込みといった外部環境の影響によって、安定した通信を行うことが困難になるという問題が生じる。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、簡便な構成で外部環境の影響を受けにくい伝送装置、伝送方法、および伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の観点に係る伝送装置は、
2個の入出力端子を備える通信機と、
第1の入出力端子に接続された、ほぼ90度の電気長の端末線路と、を備える伝送装置において、
第2の入出力端子が導体または誘電体を含んで構成される伝送媒体と電気的に結合 することにより、前記伝送媒体に電気的に結合した他の伝送装置に 高周波信号または電力を伝送する。
【0011】
また、第2の観点に係る伝送装置は、
前記
第2の入出力端子は、結合電極に接続され、前記結合電極と前記伝送媒体の表面との間で形成される静電容量によって、前記伝送媒体と電気的に結合する。
【0012】
また、第3の観点に係る伝送装置は、
前記
第2の入出力端子は、インダクタを介して結合電極に接続され、前記結合電極と前記伝送媒体の表面との間で形成される静電容量と前記インダクタの直列共振とによって、前記伝送媒体と電気的に結合する。
【0013】
また、第4の観点に係る伝送方法は、
ほぼ90度の電気長の第1の端末線路に接続される出力端子と、導体または誘電体を含んで構成される伝送媒体と電気的に結合する出力端子とを備える送信機、および、ほぼ90度の電気長の第2の端末線路に接続される入力端子と、前記伝送媒体と電気的に結合する入力端子とを備える受信機を備える伝送システムにて信号または電力を伝送する伝送方法であって、
前記送信機が、前記2個の出力端子から前記第1の端末線路と前記伝送媒体とに、それぞれ大きさが同じで符号が反対の電流を供給するステップと、
前記送信機が、 前記伝送媒体を介して、前記受信機に高周波信号または電力を伝送するステップと、を含む。
【0014】
また、第5の観点に係る伝送システムは、
ほぼ90度の電気長の第1の端末線路に接続される出力端子と、導体または誘電体を含んで構成される伝送媒体と電気的に結合する出力端子とを備える送信機と、
ほぼ90度の電気長の第2の端末線路に接続される入力端子と、前記伝送媒体と電気的に結合する入力端子とを備える受信機と、を備え、
前記送信機が、前記伝送媒体を介して、前記受信機に高周波信号または電力を伝送する。
【発明の効果】
【0015】
第1の観点に係る伝送装置によれば、伝送装置10は、伝送媒体50と結合したときには高周波信号または電力の伝送を行い、結合していないときには伝送を行わないため、設計が容易で、簡便な構成で外部環境の影響を受けにくく、安定性の高い伝送装置を提供することができる。
【0016】
また、第2の観点に係る伝送装置によれば、送信機としての機能を有する送受信機30の結合電極と、受信機としての機能を有する送受信機30の結合電極とが、伝送媒体50に近接しないときは、高周波信号または電力の伝送は行われず、送信機としての機能を有する送受信機30の結合電極と、受信機としての機能を有する送受信機30の結合電極とが、伝送媒体50に近接したとき、送信機としての機能を有する送受信機30から受信機としての機能を有する送受信機30に高周波信号または電力が伝送媒体50経由で伝送される。
【0017】
また、第3の観点に係る伝送装置によれば、LC直列共振をさせるため、LC直列共振をもちいずに容量結合のみによって結合する場合に比べて、より強く入出力端子20bと伝送媒体50とが結合し、高周波信号または電力を効率的に伝送することができる。
【0018】
また、第4の観点に係る伝送方法によれば、伝送装置10は、伝送媒体50と結合したときには高周波信号または電力の伝送を行い、結合していないときには伝送を行わないため、設計が容易で、簡便な構成で外部環境の影響を受けにくく、安定性の高い伝送方法を提供することができる。
【0019】
また、第5の観点に係る伝送システムによれば、伝送装置10は、伝送媒体50と結合したときには高周波信号または電力の伝送を行い、結合していないときには伝送を行わないため、設計が容易で、簡便な構成で外部環境の影響を受けにくく、安定性の高い伝送システムを提供することができる。
【0020】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に関連する高周波信号または高周波電力の伝送技術において、伝送経路の一部を構成する送信機、受信機、または送受信機が備える2個の入出力端子には、差動信号、またはシングルエンド信号が提供される。送信機、受信機、または送受信機の入出力端子の一方は、高周波信号または電力を伝送する媒体となる伝送媒体に接続される。差動信号の場合、送信機、受信機、または送受信機の2個の端子には大きさが同じで符号が逆の電圧が印加され、大きさが同じで向きが逆の電流が流れる。また、シングルエンド信号の場合、送信機、受信機、または送受信機の2個の端子のうち信号線につながる端子には信号電圧が印加され、グランドにつながる端子はゼロ電位になるが、電流は差動信号のときと同様に、送信機、受信機、または送受信機の2個の端子には大きさが同じで向きが逆の電流が流れる。
【0023】
このように、差動信号またはシングルエンド信号のいずれの場合も、2個の入出力端子には、常に大きさが同じで向きが逆の電流が流れる。そのため、1個の端子が伝送経路の一部を構成する伝送媒体に接続され、電流を流す準備ができていても、もう1個の端子に電流が流れなければ、伝送媒体にも電流を流すことができない。
【0024】
そのため、伝送媒体に電流を流し、伝送媒体を介して高周波信号または電力を伝送することができるかどうかは、伝送媒体に接続されないもう1個の端子側に電流を流すことができるかどうかに依存する。
【0025】
送信機と受信機の、伝送媒体に結合していないほうの端子同士が、もう1個の伝送媒体に接続される場合(すなわち、送信機と受信機との2個の入出力端子が2個の伝送媒体を介して接続される場合)、送信機と受信機とのそれぞれ2個の端子の両方に電流が流れ、高周波信号または電力を伝送することができる。しかし、この場合、送信機と受信機とを同時に2本の線で接続する必要があるので、設計の制約が増え、利用しにくい。
【0026】
また、送信機と受信機との、伝送媒体に結合していないほうの端子同士が、結合電極を介して空間で容量結合をする場合、結合電極に正と負の電荷が交互に帯電し、結合電極に接続された端子に高周波電流が流れる。そのため、送信機と受信機とのそれぞれ2個の端子の両方に電流が流れ、高周波信号または電力が伝送される。しかし、この場合、結合電極間の容量結合は外部環境の影響を受けやすく、周辺の金属や電磁ノイズの影響によって、安定した通信を行うことが難しい。
【0027】
2本の伝送媒体、または1本の伝送媒体および1組の結合電極を介した空間での容量結合によって送信機と受信機とを接続して、全体で閉回路を構築して高周波信号または電力を伝送する方法は、2本の伝送経路を同時に確立しなければならない。つまり、伝送媒体と結合したときには高周波信号または電力の伝送を行い、結合していないときには伝送を行わないという、直感的な操作を目的とした高周波伝送装置においては、通信時に同時に2つの通信路を安定的に確立しなければいけない。このことが、高周波伝送装置の設計の制約となり、通信を行うための利用環境を制限する。
【0028】
例えば、人体を通信媒体として、電極に触ったときに通信が確立する、いわゆる人体通信システムの場合、人体を伝送媒体とする第一の通信路に比べて、空間を経由して結合する第二の通信路の伝送効率が低く不安定なので、第二の通信路の近傍にある金属や、電磁ノイズの飛込みによって影響を受け、安定した通信を行うことが困難である。
【0029】
以下、図面を参照しながら説明する本発明の一実施形態では、1個の伝送媒体を介して、一つの通信路のみで構成させる開回路で送信機から受信機へ高周波信号または電力を伝える。そうすることによって、設計が容易で、外部環境の影響を受けにくく、安定性の高い伝送装置、伝送方法、および伝送システムが提供される。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波伝送システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、高周波伝送システム100は、2つの高周波伝送装置11および12を有する。高周波伝送装置11および12は、伝送媒体50により電気的に接続される。高周波伝送システム100において、一方の高周波伝送装置11は伝送媒体50を介して高周波信号または電力を送信し、他方の高周波伝送装置12は伝送媒体50を介して高周波信号または電力を受信する。送信側の高周波伝送装置11は送信機60を備え、受信側の高周波伝送装置12は受信機70を備える。なお、高周波伝送装置11および12は、それぞれ送信機60または受信機70に代えて、送信機能および受信機能の双方の機能を有する送受信機を備えていてもよい。この場合、送受信機が送信機能または受信機能のいずれかの機能を行うことにより、高周波伝送装置11および12は、それぞれ送信および受信の動作を行う。
図1に示すように、送信機60は両端に、出力端子61aおよび61bを備え、受信機70は、両端に入力端子71aおよび71bを備える。ここで、送信機、受信機、および送受信機は、本願発明における「通信機」に対応する。
【0031】
図2は、高周波伝送システムにおける高周波伝送装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2では、
図1における高周波伝送装置11および12が、まとめて高周波伝送装置10として示される。また、
図2では、高周波伝送装置10は、送信機能および受信機能を有する送受信機30を備えるものとして示される。
図2における入出力端子20aは、
図1における出力端子61aおよび入力端子71aに対応し、
図2における入出力端子20bは、
図1における出力端子61bおよび入力端子71bに対応する。
【0032】
高周波伝送装置10は、2個の入出力端子20aおよび20bを備える送受信機30と、端末線路40とを備える。入出力端子20aは、端末線路40に接続され、入出力端子20bは、金属等の導体または誘電体からなる伝送媒体50と電気的に結合(以下、単に「結合」という)される。
【0033】
送受信機30は、送受信機30における送受信動作を制御する送受信部31を備える。送受信機30は、伝送媒体50に結合した他の高周波伝送装置10との間で、伝送媒体50を介した高周波信号または電力の伝送を行う。
【0034】
送受信機30が送信機として機能する場合、端末線路40に接続された送受信機30の入出力端子20aから端末線路40に電流が流れる。これと同時に、端末線路40に流れる電流と大きさが同じで向きが逆の電流が、もう1個の入出力端子20bから伝送媒体50に流れ、送受信機30は、高周波信号または電力を伝送媒体50に送り出す。
【0035】
また送受信機30が受信機として機能する場合、伝送媒体50と結合した入出力端子20bから送受信機30に電流が流れる。これと同時に、送受信機30に流れる電流と大きさが同じで向きが逆の電流が端末線路40からもう1個の入出力端子20aに流れ、送受信機30は、高周波信号または電力を伝送媒体50から受け取る。
【0036】
端末線路40は、90度の電気長を有する。90度の電気長とは、入出力端子20aに接続された端部40aからもう一方の端部40bまでの線路の長さが、伝送する高周波信号の波長の4分の1の長さ、すなわち、入出力端子20aに接続された端部40aからもう一方の端部40bまでに至るあいだに、伝送する高周波信号の位相が90度進む長さである。
【0037】
したがって、入出力端子20aに接続された端部40aから端末線路40側に流れる電流が、端末線路40のもう一方の端部40bで反射し、一往復してふたたび入出力端子20aに接続された端部40aに戻ると、それまでの間に2分の1波長分の距離を経て、位相が180度進む。
【0038】
このとき、端末線路40に接続された入出力端子20aは、後に
図4において詳述するが、仮想的にグランドに接続された短絡端子とみなすことができ、入出力端子20aから端末線路40に電流が流れる。
【0039】
伝送媒体50は、送受信機30間で、高周波信号または電力を伝送する媒体となる。伝送媒体50は導体もしくは誘電体、または導体と誘電体との組合せを含んで構成される。高周波伝送装置10と伝送媒体50との結合方法の例について、
図3を参照して説明する。
【0040】
伝送媒体50が導体の場合、例えば
図3(a)に示すように、伝送媒体50と送受信機30の入出力端子20bの結合は、入出力端子20bが伝送媒体50に接触して、導通することによって実現される。この場合、送信機としての機能を有する送受信機30の入出力端子20b(つまり送信機60の出力端子61b)と、受信機としての機能を有する送受信機30の入出力端子20b(つまり受信機70の入力端子71b)とが、伝送媒体50に接触しないときは、高周波信号または電力の伝送は行われない。送信機としての機能を有する送受信機30の入出力端子20b(つまり送信機60の出力端子61b)と、受信機としての機能を有する送受信機30の入出力端子20b(つまり受信機70の入力端子71b)とが伝送媒体50に接触したときに、送信機としての機能を有する送受信機30から受信機としての機能を有する送受信機30に、高周波信号または電力が伝送媒体50経由で伝送される。
【0041】
伝送媒体50が導体または誘電体の場合、例えば
図3(b)に示すように、伝送媒体50と送受信機30の入出力端子20bの結合は、送受信機30の入出力端子20bに結合電極21を設け、結合電極21と伝送媒体50が近接したときに結合電極21と伝送媒体50の表面が容量結合することによって実現されてもよい。この場合、送信機としての機能を有する送受信機30の結合電極21と、受信機としての機能を有する送受信機30の結合電極21とが、伝送媒体50に近接しないときは、高周波信号または電力の伝送は行われない。一方、送信機としての機能を有する送受信機30の結合電極21と、受信機としての機能を有する送受信機30の結合電極21とが、伝送媒体50に近接したとき、送信機としての機能を有する送受信機30から受信機としての機能を有する送受信機30に、高周波信号または電力が伝送媒体50経由で伝送される。
【0042】
伝送媒体50が導体または誘電体で、伝送媒体50と送受信機30の入出力端子20bの結合が、送受信機30の入出力端子20bに設けられた結合電極21と伝送媒体50の表面との間の容量結合によって実現される場合、
図3(c)に示すように、結合電極21と送受信機30の入出力端子20bとの間にさらにコイルを設置してもよい。この場合、コイルのインダクタンス(L)と、結合電極21および伝送媒体50の表面の間のキャパシタンス(C)とによって、LC直列共振が生じる。
【0043】
伝送する高周波信号または電力の周波数をfとすると、LC直列共振をさせるときのインダクタンスLとキャパシタンスCとの値は以下の式(1)をみたす。
【0045】
この場合、送信機の機能を有する送受信機30の結合電極21と、受信機の機能を有する送受信機30の結合電極21とが伝送媒体50に近接しないときは、高周波信号または電力の伝送は行われない。一方、送信機の機能を有する送受信機30の結合電極21と、受信機の機能を有する送受信機30との結合電極21が伝送媒体50に近接したとき、送信機の機能を有する送受信機30から受信機の機能を有する送受信機30に高周波信号または電力が伝送媒体50経由で伝送される。このときLC直列共振をさせる場合には、LC直列共振をもちいずに容量結合のみによって結合する場合に比べて、より強く入出力端子20bと伝送媒体50とが結合し、高周波信号または電力を効率的に伝送することができる。
【0046】
ここで、本実施形態の高周波伝送装置10の動作の仕組みについて説明する。
【0047】
図4に示すように、電気長が90度、すなわち長さが伝送する高周波信号の波長の4分の1で、端部40bが開放された端末線路40に、送受信機30が高周波信号を入力すると、端部40bの電圧振幅が最大で電流振幅がゼロ、端部40aの電圧振幅がゼロで電流振幅が最大の定在波が端末線路40に発生し、端部40aに電流が流れる。このとき、端部40aの電圧振幅がゼロである一方、電流が流れるので、
図5に模式的に示すように、端部40aは、仮想的にグランドに短絡されたように動作する。
【0048】
図4に示すように、端末線路40の電気長が90度、すなわち、端末線路40の、送信機60の出力端子61aおよび受信機70の入力端子71aに接続される端部40aから入力された信号がもう一方の端部40bで反射して一往復してくる反射波の位相が180度のとき、出力端子61aおよび入力端子71aに流れる電流が最大になる。そのため、端末線路40の電気長が90度の場合、高周波伝送システム100は最も効果的に動作する。ただし、高周波伝送システム100は、端末線路40の電気長が90度を中心に±45度の範囲内、つまり反射波の位相が90度より大きく270度より小さい範囲内で動作しても、高周波を伝送するための所定の効果を生じる。従って、端末線路40は、90度を中心に±45度の範囲内を含む、ほぼ90度の電気長を有していればよい。
【0049】
ここで、端末線路40の構造は、高周波信号または電力の周波数に応じて、適宜決定することができる。例えば、高周波信号または電力を伝える周波数が13.56MHzのとき、波長はおよそ22mとなり、4分の1波長の長さは5mを超える。この場合に、例えば
図6(a)に示すように端末線路40を折り曲げてメアンダライン構造にしたり、らせん状のヘリカル構造にしたりしてもよい。これにより、端末線路40の電気長を90度に保ちながら物理的な長さを短くして、高周波伝送装置10のサイズを小型化することができる。また、例えば
図6(b)に示すように端末線路40の先端に面積の広い導体をつけて容量装荷の効果を利用することによっても、同様の効果が得られる。さらに、例えば
図6(c)に示すように導体でできた端末線路40を誘電率の高い材質(高誘電率材)41で覆ったり、あるいは端末線路40自体を高誘電率材41で作って波長短縮の効果を利用したりすることによっても小型化を実現し得る。
【0050】
図7は、
図5で説明した高周波伝送装置10の動作を、
図1の高周波伝送システム100に拡張して説明する図である。
図7に示すように、
図5を参照して説明したのと同様に、送信機60の出力端子61aが、90度の電気長の端末線路40によって仮想的にグランドに短絡し、受信機70の入力端子71aが、もう1個の90度の電気長の端末線路40によって仮想的にグランドに短絡する。また、送信機60の出力端子61bと受信機70の入力端子71bとが伝送媒体50と結合することで、伝送媒体50を介して接続される。高周波伝送システム100は、実際には1個の伝送媒体50を介した1個の通信路のみで構成させる開回路でありながら、全体として、仮想的なグランドを介して、あたかも閉回路のように動作することによって、送信機60から受信機70へ高周波信号または電力を安定的に伝送することができる。
【0051】
このように、送信機60に接続された端末回路、送信機60、受信機70、および受信機に接続された端末回路を備えた本実施形態に係る高周波伝送システム100によれば、1個の伝送媒体50を介して、1つの通信路のみで構成させる開回路で送信機60から受信機70へ高周波信号または電力を伝えることが出来る。
【0052】
これにより、高周波伝送装置10は、伝送媒体50と結合したときには高周波信号または電力の伝送を行い、結合していないときには伝送を行わないので、設計が容易で、簡便な構成で外部環境の影響を受けにくく、安定性の高い高周波伝送システムを提供することができる。
【0053】
次に、高周波伝送システム100を使用した具体的なシステムの例について、
図8を参照して説明する。
【0054】
図8に示すシステム200は、ID(identification)情報を埋め込んだICチップを含むID回路62を備える高周波伝送装置13と、ID情報を読み取るリーダ回路72を備える高周波伝送装置14とを含む。ID回路62の1個の出力端子61aおよびリーダ回路72の1個の入力端子71aには、ほぼ90度の電気長の端末線路40が接続される。
【0055】
図8(a)では、ID回路62の出力端子61bが伝送媒体50に接続されないので、高周波伝送装置13と14とが接続されない。この状態では、高周波伝送装置14から出力された読取信号が高周波伝送装置13に伝送されず、高周波伝送装置13と14との間で信号が伝送されない。
【0056】
図8(b)では、ID回路62の出力端子61bが伝送媒体50に接続されており、高周波伝送装置13と14とが接続される。この場合、高周波伝送装置13と14との間で信号が伝送され、ID情報を有する信号が高周波伝送装置13から高周波伝送装置14に伝送される。高周波伝送装置14では、ID情報を有する信号をリーダ回路72が読み取ることができる。このようにして、高周波伝送装置14は、リーダ回路72において、伝送媒体50を介して伝送されたICチップのID情報を読み取ることができる。
【0057】
また、高周波伝送装置14は、
図8(b)に示すように高周波伝送装置13と14とが接続された状態において、伝送媒体50を介して、読取信号とともに電力を伝送してもよい。この場合、読取信号とともに伝送された電力に基づいて、ICチップが動作し、伝送された信号の反射波にID情報を載せてもよい。これにより、リーダ回路72は伝送媒体50を介して伝送された反射に含まれるICチップのID情報を読み取ることができる。
【0058】
また、高周波伝送システム100は、例えば人体を通信媒体にして、人体が電極に触ったときに通信が確立する人体通信システムとしても使用できる。高周波伝送システム100を人体通信システムとして構成する場合、高周波伝送システム100における、伝送媒体50が送受信機を取り囲むように設けられていても通信可能であるという性質を利用することができる。
【0059】
人体を通信媒体とする人体通信システムでは、伝送媒体としての人体を介する伝送経路の他に、空中を介して結合するもう1つの伝送経路を必要とするので、送信機または受信機を手等で包み込むと、空中の伝送経路が確立されなくなり、通信を行うことが出来ない。しかしながら、本実施形態における高周波伝送システム100は、送信機と受信機との間が1個の伝送経路でつながれていれば、仮想的なグランドにより通信可能であり、2つ目の伝送経路によって閉回路を構成する必要がない。そのため、高周波伝送システム100では、送信機または受信機を手等の伝送媒体で完全に包み込んでも通信を行うことができる。つまり、例えば
図9に模式的に示すように、高周波伝送システム100において送受信機30が伝送媒体で覆われていても、送受信機30同士で、伝送媒体50を介して信号を伝送することができる。
【0060】
従って、例えば、高周波伝送装置10を医療用カプセルに内蔵し、体内に飲み込んだ後で、医療用カプセルを飲み込んだ人体が、別の高周波伝送装置10に触れることで、体を通信媒体として、体内と体外の間で通信を行うことができる。
【0061】
また、このように、高周波伝送システム100を、人体を伝送媒体とする人体通信システムに応用することにより、接触によって高周波伝送装置10同士の通信が確立されるので、近傍にある金属や、電磁ノイズの飛込みによる影響を受けにくくなる。そのため、高周波伝送システム100によれば、安定した通信を実現可能な人体通信システムを提供することができる。
【0062】
以上、実施形態を参照しながら、本発明について詳説した。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者であれば、該実施形態の修正や代用を成し得る。すなわち、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形又は変更が可能である。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0063】
また、本明細書の記載は、本明細書に記載される発明の全てを意味するものではない。換言すれば、本明細書の記載は、この出願では請求されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加されたりする発明の存在を否定するものではない。
【0064】
本明細書においては、例示という形態で本発明を開示したのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。
【解決手段】伝送装置10は、2個の入出力端子20aおよび20bを備える通信機30と、第1の入出力端子20aに接続された、ほぼ90度の電気長の端末線路40と、を備える伝送装置10であって、第2の入出力端子20bが導体または誘電体を含んで構成される伝送媒体50と電気的に結合することにより、伝送媒体50に電気的に結合した他の伝送装置に高周波信号または電力を伝送する。