特許第5935941号(P5935941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935941
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】糖液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C13K 1/04 20060101AFI20160602BHJP
   C13B 20/16 20110101ALI20160602BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20160602BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C13K1/04
   C13B20/16
   B01D61/02 500
   B01D61/14 500
   B01D61/58
   B01D65/06
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-509234(P2015-509234)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2015052529
(87)【国際公開番号】WO2015119038
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-20055(P2014-20055)
(32)【優先日】2014年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】旭 裕佳
(72)【発明者】
【氏名】南野 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸本 淳平
(72)【発明者】
【氏名】日笠 雅史
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/183617(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/111794(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/067785(WO,A1)
【文献】 特開2003−259900(JP,A)
【文献】 特開2003−236350(JP,A)
【文献】 特開平10−304900(JP,A)
【文献】 特開平8−289687(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024954(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/024952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13K 1/04
B01D 61/02
B01D 61/14
B01D 61/58
B01D 65/06
C13B 20/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有バイオマス由来の糖化液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過する工程を含む糖液の製造方法において、ろ過後のナノ濾過膜および/または逆浸透膜を酸洗浄液で洗浄し、その後アルカリ洗浄液で洗浄する2段階洗浄工程を含む糖液の製造方法。
【請求項2】
前記2段階洗浄工程前に水洗浄工程を含む請求項1に記載の糖液の製造方法。
【請求項3】
前記糖化液を限外ろ過膜に通じてろ過して得られたろ液をナノろ過膜および/または逆浸透膜のろ過工程に供する請求項1または2に記載の糖液の製造方法。
【請求項4】
前記限外ろ過膜の分画分子量が50,000以下である請求項3記載の糖液の製造方法。
【請求項5】
前記糖化液がカルシウムを含む請求項1〜4のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項6】
前記酸洗浄液がpH3以下である請求項1〜5のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項7】
前記酸洗浄液が、硝酸、硫酸、クエン酸、リン酸、乳酸および酢酸からなる群から選択される1種類または2種類以上を含む請求項1〜6のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ洗浄液がpH9以上である請求項1〜7のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ洗浄液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニアからなる群から選択される1種類または2種類以上を含む請求項1〜8のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項10】
前記2段階洗浄工程を繰り返し行う請求項1〜9のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースから糖液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や石油資源の枯渇といった問題やカーボンニュートラルの観点から、バイオマスによる石油製品の代替が注目されており、その中でも、食料と競合しない非可食のセルロース含有バイオマスからのエタノールや化学品の生産が期待されている。
【0003】
セルロース含有バイオマスからエタノールや化学品を生産するためには、バイオマス中の多糖類であるセルロースやヘミセルロースを加水分解した単糖を発酵に用いる。セルロース含有バイオマス由来の糖液には、糖のほかに発酵阻害物質が含まれており、発酵産物の収率を低下させることが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
上記の発酵阻害物質を除去すると共に糖を濃縮し、発酵に適した精製糖液を得る方法として、ナノろ過膜や逆浸透膜によって透過側から除去する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜の目詰まりを洗浄し、効率的に発酵阻害物質を除去する方法として、高pHの温水で効果的に洗浄する方法が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】WO2010/067785号
【特許文献2】WO2012/111794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、長時間運転に伴って、膜の目詰まりが生じるという問題点がある。
【0007】
特許文献2では、温水をアルカリ性にして有機物の除去効果を高めたアルカリ洗浄が記載されている。しかし、セルロース含有バイオマス由来の糖化液をろ過処理した限外ろ過膜では、アルカリ洗浄で十分に洗浄できる場合でも、ナノろ過膜や逆浸透膜では、同等の効果が得られないことがあり、繰り返しの使用によって、洗浄の効果が減少していくという問題があることが見出された。
【0008】
これは、ナノろ過膜や逆浸透膜では限外ろ過膜とは違い、セルロース含有バイオマス由来の無機イオンも一次側に濃縮し、目詰まり物質になり得るためと考えられるが、一般的に有機物を多く含む溶液を処理した膜の洗浄では、アルカリ洗浄後に酸洗浄を行うことが知られているが、セルロース含有バイオマス由来の糖化液を処理したナノろ過膜および逆浸透膜では、洗浄の効果が得られなかった。
【0009】
本発明は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を利用してセルロース含有バイオマス由来糖化液の発酵阻害物質を除去して精製糖液を得る方法において、有機物および無機イオンの影響による膜の目詰まりを洗浄する方法を提供することによって、膜を繰り返し利用し、効率的に発酵阻害物質を除去する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の糖液の製造方法は、上述の課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、
セルロース含有バイオマス由来の糖化液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過する工程を含む糖液の製造方法において、ろ過後のナノろ過膜および/または逆浸透膜を酸洗浄液で洗浄し、その後アルカリ洗浄液で洗浄する2段階洗浄工程を含む糖液の製造方法、である。
【0011】
本発明の糖液の製造方法は、前記2段階洗浄工程前に水洗浄工程を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の糖液の製造方法は、前記糖化液を限外ろ過膜に通じてろ過して得られたろ液をナノろ過膜および/または逆浸透膜のろ過工程に供することが好ましい。
【0013】
本発明の糖液の製造方法は、前記限外ろ過膜の分画分子量が50,000以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の糖液の製造方法は、前記糖化液がカルシウムを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の糖液の製造方法は、前記酸洗浄液がpH3以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の糖液の製造方法は、前記酸洗浄液が、硝酸、硫酸、クエン酸、リン酸、乳酸および酢酸からなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の糖液の製造方法は、前記アルカリ洗浄液がpH9以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の糖液の製造方法は、前記アルカリ洗浄液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニアからなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の糖液の製造方法は、前記2段階洗浄工程を繰り返し行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、セルロース含有バイオマス由来の糖化液に特有の不純物によるナノろ過膜、逆浸透膜の目詰まりを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】アルカリ洗浄後の逆浸透膜に目詰まりした析出物を示すSEM画像である。
図2】アルカリ洗浄後の逆浸透膜の目詰まりした析出物のカルシウムの分布を示すSEM−エネルギー分散型X線分光法(以下、SEM−EDX)によるマッピングである。
図3】アルカリ洗浄後の逆浸透膜の目詰まりした析出物の炭素の分布を示すSEM−EDXによるマッピングである。
図4】アルカリ洗浄後の逆浸透膜の目詰まりした析出物の酸素の分布を示すSEM−EDXによるマッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における糖化液とは、セルロース含有バイオマスである木質や草本のバイオマスを加水分解して得られた液成分である。セルロース含有バイオマスの加水分解の方法は特に限定されないが、爆砕処理、水熱処理、酸処理、アルカリ処理、アンモニア処理、によって前処理したセルロース含有バイオマスを酵素糖化する方法が好ましい。
【0023】
本発明では、前記糖化液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過し、発酵阻害物を除去した糖液を製造する。糖化液のろ過については、WO2010/067785号に記載の方法に準じて実施することができる。また、本発明で使用されるナノろ過膜・逆浸透膜に関しても、WO2010/067785号に記載の内容のものを使用することができる。
【0024】
セルロース含有バイオマス由来の糖化液をナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過する場合、その長期使用に伴って糖化液に含まれる不純物である有機物や無機イオンによる分離膜の目詰まりがおこってしまう。本発明は、膜の目詰まりを、酸洗浄とその後のアルカリ洗浄による2段階洗浄によって除去することを特徴とする。一方、酸洗浄またはアルカリ洗浄の単独、あるいはアルカリ洗浄とその後の酸洗浄による2段階洗浄では本発明で得られるような効果は得られない。
【0025】
本発明における酸洗浄またはアルカリ洗浄とは、酸性水溶液(以下、酸洗浄液という。)またはアルカリ性水溶液(以下、アルカリ洗浄液という。)を膜に接触させ、その後、水を用いて酸性水溶液またはアルカリ水溶液を除去する工程までを示す。酸洗浄液またはアルカリ洗浄液の除去は、水が中性になることによって確認することが好ましい。酸洗浄液またはアルカリ洗浄液は、膜の一次側(非透過側)のみを通水させてもよく、膜の一次側(非透過側)から二次側(透過側)にクロスフローろ過をするように通水してもよく、膜を浸漬させるようにしてもよいが、膜の一次側(非透過側)から二次側(透過側)にクロスフローろ過をするように通水することが好ましい。
【0026】
酸洗浄液に用いる酸の好ましい例としては、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸やクエン酸、乳酸、酢酸などの有機酸があげられる。これらの酸は、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合してもよい。
【0027】
酸洗浄液のpHは、pH3以下であることが好ましく、より好ましくはpH2である。酸洗浄液のpHが低いほど洗浄の効果は上がるが、pH2より低pHで酸洗浄を行うと膜が劣化する恐れがあるためである。膜の種類によって、洗浄に使用できるpHが決まっているため、膜にあったpHで洗浄する必要がある。
【0028】
アルカリ洗浄液に用いるアルカリの好ましい例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアがあげられる。これらのアルカリは、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合してもよい。
【0029】
アルカリ洗浄液のpHは、pH9以上であることが好ましく、より好ましくはpH12である。アルカリ洗浄液のpHが高いほど洗浄の効果は上がるが、pH12より高pHでアルカリ洗浄を行うと膜が劣化するおそれがあるためである。膜の種類によって、洗浄に使用できるpHが決まっているため、膜にあったpHで洗浄する必要がある。
【0030】
酸洗浄、アルカリ洗浄の2段階洗浄の前の操作は、特に限定されず、糖化液のろ過後すぐに2段階洗浄を行っても良いが、水洗浄を行うことが好ましい。あらかじめ水洗浄を行うことによって、糖液と酸が混合し、酸性になることで糖液中の有機物が不溶化し、新たに目詰まりすることを防ぐと共に、水洗浄による膜面の有機物除去の効果も期待できる。
【0031】
また、2段階洗浄を複数回繰り返すことも洗浄効果を向上させるという観点において好ましい態様のひとつである。
【0032】
洗浄効果の評価は、未使用膜の純水透過流束と目詰まり膜および洗浄後の膜の純水透過流束を比較することによって評価できる。すなわち、目詰まり膜および洗浄後の膜の純水透過流束を未使用膜の純水透過流束で除した値を純水透過流束比(%)と定義し、洗浄による回復の度合いを評価し、洗浄によって未使用膜と同じ状態まで回復した場合、純水透過流束比(%)は100%となる。本発明では、純水透過流束比が80%以上に回復しない場合、処理速度の低さゆえ実用に不適であるとみなした。
【0033】
前記糖化液には固形分などの水不溶性の成分が含まれている場合があるが、その場合は前記ろ過工程の前に固液分離によって水不溶性の成分を除去することが好ましい。糖化液の固液分離の方法としては、フィルタプレス、遠心分離、精密ろ過膜によるろ過などの手法があるが、精密ろ過膜によるろ過は、ミクロンオーダーの水不溶性成分まで除去することができるため、本発明におけるセルロース由来糖化液は、後段の分離膜によるろ過に加えて、精密ろ過膜によりあらかじめろ過されることが好ましい。なお、精密ろ過膜については、WO2010/067785号に記載のものを使用することができる。
【0034】
また、前記糖化液は限外ろ過膜によりろ過されたろ液であることが好ましく、限外ろ過膜の分画分子量は50,000以下であることがより好ましい。限外ろ過膜とは、分画分子量が1,000〜200,000となる膜のことであり、ウルトラフィルトレーション、UF膜などと略称されるものである。限外ろ過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡等で計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤 (1993 共立出版)P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように、限外濾過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。これは、糖化液中のセルロース含有バイオマス由来のタンパク質や酵素糖化のために添加した酵素などの高分子量の成分が除去され、酸によって変性するものが減少するためと考えられるからであり、特に分画分子量50,000以下の限外ろ過膜では、酵素糖化に用いた酵素を除去しやすく、洗浄の効果が大きくなる。なお、本発明で用いられる限外ろ過膜としては特に制限はなく、例えばWO2010/067785号に記載のものを使用することができる。
【0035】
前記糖化液はカルシウムが含まれることが好ましい。カルシウムが含まれるとは高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)でカルシウムイオンが検出されることをいう。前記糖化液にカルシウムが含まれている場合は、酸洗浄がより効果的に働く。なお、セルロース含有バイオマスにカルシウムが含まれる場合は、通常得られる糖化液にカルシウムが含まれるが、糖化処理の前処理後のセルロース含有バイオマスを水で洗浄するなどの処理をした場合にはカルシウムを含まない糖化液が得られることがある。
【実施例】
【0036】
(参考例1)カルシウム濃度の測定方法
カルシウムイオン濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
【0037】
カラム:Ion Pac CS12A(DIONEX社製)
移動相:20mM メタンスルホン酸(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
【0038】
(参考例2)爆砕処理籾殻糖化液の調製方法
セルロース含有バイオマスとして籾殻を使用した。籾殻2kgを爆砕装置(反応容器30L、日本電熱(株)製)を用いて水蒸気爆砕処理した。その際の圧力は2.5MPa、処理時間は2.5分であった。爆砕処理籾殻の含水率を測定後、前記の絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が15重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン(株)製)を添加し、50℃で24時間反応させ、糖化した。
【0039】
糖化処理物についてフィルタプレス処理(薮田産業(株)製、MO−4)を行い、未分解セルロースあるいはリグニンを分離除去し、細孔径0.22μmの精密ろ過膜に供することにより、ミクロンオーダーの不溶性粒子を除去した糖化液を得た。糖化液中のカルシウムイオンの濃度を参考例1の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
(参考例3)洗浄した爆砕処理籾殻からの糖化液の調製方法
参考例2の方法で調製したセルロース含有バイオマスの水蒸気爆砕処理物を、バイオマスの重量に対して10倍量の水を用いて洗浄した。洗浄した水蒸気爆砕処理物を固形分濃度が15重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン(株)製)を添加し、50℃で24時間反応させて糖化処理した後、参考例2と同様にフィルタプレス処理と精密ろ過膜処理に供して糖化液を得て、糖化液中のカルシウムイオン濃度を参考例1の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0042】
(参考例4)パルプ糖化液の調製方法
広葉樹材の未晒しクラフトパルプであるシートウェットパルプ(兵庫パルプ工業(株)製)の含水率を測定し、絶乾換算で固形分濃度が5%となるようにRO水を添加し、酢酸ナトリウム緩衝液を加えてpH5付近とし、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン(株)製)を添加し、50℃で24時間反応させ糖化した。
【0043】
糖化処理物についてフィルタプレス処理(薮田産業(株)製、MO−4)を行い、未分解セルロースあるいはリグニンを分離除去し、細孔径0.22μmの精密ろ過膜に供することにより、ミクロンオーダーの不溶性粒子を除去した糖化液を得た。糖化液中のカルシウムイオンの濃度を参考例1の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0044】
(参考例5)アンモニア処理バガス糖化液の調製方法
バガスを小型反応器(耐圧硝子工業(株)製、TVS−N230mL)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、資料を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバスにて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで減圧し、乾燥させた。アンモニア処理バガスの含水率を測定後、絶乾換算で固形分濃度が10重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン(株)製)を添加し、50℃で24時間反応させ、糖化した。
【0045】
糖化処理物についてフィルタプレス処理(薮田産業(株)製、MO−4)を行い、未分解セルロースあるいはリグニンを分離除去し、細孔径0.22μmの精密ろ過膜に供することにより、ミクロンオーダーの不溶性粒子を除去した糖化液を得た。糖化液のカルシウムイオンの濃度を参考例1の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0046】
(参考例6)希硫酸処理コーンコブ糖化液の調製方法
コーンコブ((株)日本ウオルナット)を1%希硫酸に浸漬し、120℃で20分オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理後は、溶液成分と固形分に固液分離し、固形分として希硫酸処理コーンコブを得た。希硫酸処理コーンコブの含水率を測定後、絶乾換算で固形分濃度が10重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン(株)製)を添加し、50℃で24時間反応させ、糖化した。
【0047】
糖化処理物についてフィルタプレス処理(薮田産業(株)製、MO−4)を行い、未分解セルロースあるいはリグニンを分離除去し、細孔径0.22μmの精密ろ過膜に供することにより、ミクロンオーダーの不溶性粒子を除去した糖化液を得た。糖化液のカルシウムイオンの濃度を参考例1の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0048】
(参考例7)セルロース含有バイオマスの糖化液の限外ろ過膜ろ液の調製方法
セルロース含有バイオマスの糖化液を、操作温度50℃、膜面線速度20cm/sec、透過流束0.5m/dayの条件で限外ろ過膜によりクロスフローろ過することで限外ろ過膜ろ液を調製した。
【0049】
(参考例8)限外ろ過膜の目詰まり膜の作製方法
糖化液約20Lを、参考例7と同様の条件で限外ろ過膜でろ過し、操作圧が0.3MPaまで達したところで、圧力を固定した。圧力を固定したままろ過を続け、非透過液側の濃縮液量が原液の1/15まで濃縮された時点で運転を停止し、限外ろ過膜の目詰まり膜を回収した。
【0050】
(参考例9)ナノろ過膜・逆浸透膜の目詰まり膜の作製方法
糖化液を参考例7の条件で限外ろ過膜に通じてろ過して得られたろ液をそれぞれナノろ過膜または逆浸透膜に通じてろ過した。ろ過条件は操作温度50℃、膜面線速度20cm/sec、透過流束0.5m/dayとし、操作圧力が6MPaまで達したところで、圧力を固定した。圧力を固定したままろ過を続け、透過流束が0.05m/dayまで低下したところで運転を停止し、目詰まり膜を回収した。
【0051】
(参考例10)平膜の目詰まり膜の作製方法
ナノろ過膜のスパイラルエレメントから平膜を切り出した。膜処理には、膜分離装置“SEPA CF II”(膜有効面積:140cm、GEオスモニクス社製を用いた。糖化液のろ過条件は、操作温度30℃、膜面線速度20cm/sec、透過流束0.5m/dayとし、操作圧が6MPaまで達したところで圧力を固定した。圧力を固定したままろ過を続け、透過流束が0.05m/dayまで低下したところで運転を停止し、目詰まり膜を回収した。
【0052】
(参考例11)純水透過流束の測定方法
限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜の純水透過流束は、操作温度25℃、膜面線速度20cm/secの条件で、操作圧力は、限外ろ過膜の場合0.1MPa、ナノろ過膜または逆浸透膜の場合1MPaの条件で、それぞれ純水をクロスフローろ過することで測定した。
【0053】
(参考例12)純水透過流束比%の算出
参考例11の方法で未使用膜、洗浄前目詰まり膜、洗浄後目詰まり膜の純水透過流束を測定した。未使用膜との純水透過流束比%を算出することで、目詰まりの度合いと目詰まりの回復度合いを評価した。式1に純水透過流束比%の算出方法を示す。
【0054】
純水透過流束比%=目詰まり膜の純水透過流束/未使用膜の純水透過流束×100 ・・・ (式1)。
【0055】
(実施例1)爆砕処理籾殻糖化液を処理したナノろ過膜および逆浸透膜の酸洗浄、アルカリ洗浄
爆砕処理籾殻糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。
【0056】
酸性水溶液の酸としては、硝酸、クエン酸、乳酸の3種類の酸をそれぞれ用いた。酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液ともに操作温度50℃、膜面線速度20cm/secでポンプの吐出圧によるクロスフローろ過を行った。ろ液は、供給槽に戻し、酸洗浄は60分間、アルカリ洗浄は30分間行った(洗浄1)。洗浄1後に参考例9の方法で目詰まりさせ、同様の洗浄を再度実行し(洗浄2)、合計2回の洗浄を行った。未使用膜、洗浄1前後、洗浄2後の目詰まり膜に対して参考例11の方法で純水透過流束を測定後に参考例12の方法で純水透過流束比%を算出し、洗浄1、2それぞれの効果を評価した。結果を表2に示した。洗浄1でナノろ過膜、逆浸透膜ともに純水透過流束比%が95%を超え、未使用膜とほぼ同等の透過流束まで回復した。さらに、洗浄2でも同様の効果が保持されていた。また、酸性水溶液の中でも硝酸水溶液が最も洗浄効果が高かった。
【0057】
(参考例13)爆砕処理籾殻糖化液を処理した限外ろ過膜のアルカリ洗浄
爆砕処理籾殻糖化液を用いて、参考例8の方法で調製した限外ろ過膜(シンダー社“SPE30”、分画分子量30,000)の目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。操作温度50℃、膜面線速度20cm/secでポンプの吐出圧によるクロスフローろ過を行った。ろ液は、供給槽に戻し、30分間全循環運転によって洗浄した。純水透過流束の評価を実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。洗浄前の純水透過流束比%は73%であったが、水酸化ナトリウム洗浄によって未使用膜とほぼ同等の98%まで回復した。また、洗浄2後も98%であり、洗浄の効果が保持されていた。
【0058】
(比較例1)爆砕処理籾殻糖化液を処理したナノろ過膜および逆浸透膜のアルカリ洗浄
爆砕処理籾殻糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。洗浄およびその評価は実施例1と同様に行った。結果は表2に示すとおりで、洗浄1でナノろ過膜、逆浸透膜ともに純水透過流束比%が80%を下回り、洗浄の効果が低かった。また、洗浄2では洗浄の効果がほとんど得られなかった。
【0059】
(参考例14)爆砕処理籾殻糖化液を処理後にアルカリ洗浄後逆浸透膜の膜面観察
限外ろ過膜の洗浄(参考例13)で効果の高かったアルカリ洗浄がナノろ過膜および逆浸透膜のスパイラルエレメントの洗浄(比較例1)では効果が低かったため、比較例1の洗浄後の逆浸透膜のスパイラルエレメントを解体し、膜面の観察を行った。分析方法としてはSEM−EDX法を用いた(SEM:(株)日立製作所製“S−4800”、EDX検出:(株)堀場製作所製“EMAX ENERGY EX−220”)。分析時の印加電圧は20kVとし、物質のチャージ防止のため、5秒間試料に白金をスパッタリングした後、分析を行った。膜面には、図1に示した析出物が目詰まりしており、図2〜4に示したように構成成分がカルシウム、炭素、酸素であった。このことから、アルカリ洗浄後逆浸透膜の膜面には炭酸カルシウムが目詰まりしていると推察された。
【0060】
(比較例2)爆砕処理籾殻糖化液を処理したナノろ過膜および逆浸透膜の酸洗浄
爆砕処理籾殻糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して、水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。酸性水溶液の酸としては、硝酸、クエン酸、乳酸の3種類の酸をそれぞれ用いた。洗浄およびその評価は実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。ナノろ過膜、逆浸透膜ともに比較例2よりも効果があったが、洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、比較例2と同様に洗浄2では著しく洗浄効果が低下した。
【0061】
(比較例3)爆砕処理籾殻糖化液を処理したナノろ過膜および逆浸透膜のアルカリ洗浄、酸洗浄
爆砕処理籾殻糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して、水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)によるアルカリ洗浄を行い、その後pH2の酸性水溶液(洗浄液2)による酸洗浄を行った。酸洗浄液の酸としては、硝酸、クエン酸、乳酸の3種類の酸をそれぞれ用いた。洗浄とその評価は実施例1と同様に行った。結果は表2に示すとおりで、洗浄1ではナノろ過膜、逆浸透膜ともに比較例1よりも効果があったが、純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄2の洗浄効果の低下も比較例1よりも小さかったが、洗浄の効果を保持することはできなかった。
【0062】
【表2】
【0063】
(実施例2)限外ろ過膜処理がナノろ過膜洗浄および逆浸透膜洗浄に与える影響
参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を調製した。目詰まり膜の調製には、参考例2の爆砕処理籾殻糖化液(限外ろ過膜処理なし)、参考例2の爆砕処理籾殻糖化液を限外ろ過膜1(アルファラバル社製“UFpHtシリーズGR40PP”、分画分子量100,000)で処理したろ液、参考例2の爆砕処理籾殻糖化液を限外ろ過膜2限外ろ過膜2(アルファラバル社製“UFpHtシリーズGR51PP”、分画分子量50,000)で参考例7の条件で処理したろ液をそれぞれ用いた。3種類の目詰まり膜について、水洗浄後にpH2の硝酸水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。洗浄及びその評価は実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。本結果と実施例1の結果の比較から、糖化液を限外ろ過膜で処理することによって酸洗浄後にアルカリ洗浄するという2段階洗浄の効果がより高くなり、さらに分画分子量50,000以下の限外ろ過膜で処理することで2段階洗浄の効果がさらに高くなることが示された。
【0064】
【表3】
【0065】
(実施例3)糖化液にカルシウムが含まれない場合のナノろ過膜および逆浸透膜の目詰まりの洗浄効果
参考例3で調製した糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して、水洗浄後にpH2の硝酸水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。洗浄および評価は実施例1と同様に行った。結果は表4に示すとおりで、実施例1よりもやや効果は劣るものの、純水透過流束比%が80%を上回り、十分な洗浄効果が得られた。
【0066】
【表4】
【0067】
(実施例4)糖化液ろ過後の水洗浄がナノろ過膜および逆浸透膜の洗浄に与える影響
爆砕処理籾殻糖化液を参考例6の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例8の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)および逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して、水洗浄をすることなく、pH2の硝酸水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。洗浄およびその評価は実施例1と同様に行った。結果は表5に示すとおりで、実施例1よりやや効果は劣るものの、ろ過後に水洗浄を行わなくとも、洗浄効果が得られた。
【0068】
【表5】
【0069】
(実施例5)パルプ糖化液を処理した逆浸透膜の酸洗浄、アルカリ洗浄
パルプ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。
【0070】
酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液ともに操作温度50℃、膜面線速度20cm/secでポンプの吐出圧によるクロスフローろ過を行った。ろ液は、供給槽に戻し、酸洗浄は60分間、アルカリ洗浄は30分間行った(洗浄1)。洗浄1後に参考例8の方法で目詰まりさせ、同様の洗浄を再度実行し(洗浄2)、合計2回の洗浄を行った。未使用膜、洗浄1前後、洗浄2後の目詰まり膜に対して参考例11の方法で純水透過流束を測定後に参考例12の方法で純水透過流束比%を算出し、洗浄1、2それぞれの効果を評価した。結果を表6に示した。洗浄1で純水透過流束比%が95%を超え、未使用膜とほぼ同等の透過流束まで回復した。さらに、洗浄2でも同様の効果が保持されていた。
【0071】
【表6】
【0072】
(比較例4)パルプ糖化液を処理した逆浸透膜のアルカリ洗浄
パルプ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。洗浄およびその評価は実施例5と同様に行った。結果を表6に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、洗浄の効果が低かった。また、洗浄2では洗浄の効果がほとんど得られなかった。
【0073】
(比較例5)パルプ糖化液を処理した逆浸透膜の酸洗浄
パルプ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄およびその評価は実施例5と同様に行った。結果を表6に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄2では著しく洗浄効果が低下した。
【0074】
(比較例6)パルプ糖化液を処理した逆浸透膜のアルカリ洗浄、酸洗浄
パルプ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)によるアルカリ洗浄を行い、その後pH2の酸性水溶液(洗浄液2)による酸洗浄を行った。酸洗浄液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄とその評価は実施例5と同様に行った。結果を表6に示した。洗浄1では純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄の効果を保持することはできなかった。
【0075】
(実施例6)アンモニア処理バガス糖化液を処理したナノろ過膜の酸洗浄、アルカリ洗浄
アンモニア処理バガス糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例10の方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)から切り出した平膜の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。洗浄においても膜分離装置“SEPA CF II”(膜有効面積:140cm、GEオスモニクス社製を用いた。
【0076】
酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液ともに操作温度50℃、膜面線速度20cm/secでポンプの吐出圧によるクロスフローろ過を行った。ろ液は、供給槽に戻し、酸洗浄は60分間、アルカリ洗浄は30分間行った(洗浄1)。洗浄1後に参考例9の方法で目詰まりさせ、同様の洗浄を再度実行し(洗浄2)、合計2回の洗浄を行った。未使用膜、洗浄1前後、洗浄2後の目詰まり膜に対して参考例11の方法で純水透過流束を測定後に参考例12の方法で純水透過流束比%を算出し、洗浄1、2それぞれの効果を評価した。結果を表7に示した。洗浄1で純水透過流束比%が95%を超え、未使用膜とほぼ同等の透過流束まで回復した。さらに、洗浄2でも同様の効果が保持されていた。
【0077】
【表7】
【0078】
(比較例7)アンモニア処理バガス糖化液を処理したナノろ過膜のアルカリ洗浄
アンモニア処理バガス糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例10方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)から切り出した平膜の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。洗浄およびその評価は実施例6と同様に行った。結果を表7に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、洗浄の効果が低かった。また、洗浄2では洗浄の効果がほとんど得られなかった。
【0079】
(比較例8)アンモニア処理バガス糖化液を処理した逆浸透膜の酸洗浄
アンモニア処理バガス糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例10方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)から切り出した平膜の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄およびその評価は実施例6と同様に行った。結果を表7に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄2では著しく洗浄効果が低下した。
【0080】
(比較例9)アンモニア処理バガス糖化液を処理したナノろ過膜のアルカリ洗浄、酸洗浄
アンモニア処理バガス糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例10方法でナノろ過膜(ROPUR社製“FR60−2514”)から切り出した平膜の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)によるアルカリ洗浄を行い、その後pH2の酸性水溶液(洗浄液2)による酸洗浄を行った。酸洗浄液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄とその評価は実施例6と同様に行った。結果を表7に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄2では著しく洗浄効果が低下した。
【0081】
(実施例7)希流酸処理コーンコブ糖化液を処理した逆浸透膜の酸洗浄、アルカリ洗浄
希流酸処理コーンコブ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による酸洗浄を行い、その後pH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液2)によるアルカリ洗浄を行った。
【0082】
酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液ともに操作温度50℃、膜面線速度20cm/secでポンプの吐出圧によるクロスフローろ過を行った。ろ液は、供給槽に戻し、酸洗浄は60分間、アルカリ洗浄は30分間行った(洗浄1)。洗浄1後に参考例8の方法で目詰まりさせ、同様の洗浄を再度実行し(洗浄2)、合計2回の洗浄を行った。未使用膜、洗浄1前後、洗浄2後の目詰まり膜に対して参考例11の方法で純水透過流束を測定後に参考例12の方法で純水透過流束比%を算出し、洗浄1、2それぞれの効果を評価した。結果は表8に示すとおりで、洗浄1で純水透過流束比%が95%を超え、未使用膜とほぼ同等の透過流束まで回復した。さらに、洗浄2でも同様の効果が保持されていた。
【0083】
【表8】
【0084】
(比較例10)希流酸処理コーンコブ糖化液を処理した逆浸透膜のアルカリ洗浄
希流酸処理コーンコブ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。洗浄およびその評価は実施例5と同様に行った。結果を表8に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、洗浄の効果が低かった。また、洗浄2では洗浄の効果がほとんど得られなかった。
【0085】
(比較例5)希流酸処理コーンコブ糖化液を処理した逆浸透膜の酸洗浄
希流酸処理コーンコブ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH2の酸性水溶液(洗浄液1)による洗浄を行った。酸性水溶液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄およびその評価は実施例5と同様に行った。結果を表8に示した。洗浄1で純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄2では著しく洗浄効果が低下した。
【0086】
(比較例6)希流酸処理コーンコブ糖化液を処理した逆浸透膜のアルカリ洗浄、酸洗浄
希流酸処理コーンコブ糖化液を参考例7の方法で限外ろ過膜(シンダー社製“SPE30”分画分子量30,000)でろ過し、そのろ液を用いて参考例9の方法で逆浸透膜(ROPUR社製“FRH−2514”)の目詰まり膜を作製した。この目詰まり膜に対して水洗浄後にpH12の水酸化ナトリウム水溶液(洗浄液1)によるアルカリ洗浄を行い、その後pH2の酸性水溶液(洗浄液2)による酸洗浄を行った。酸洗浄液の酸としては、硝酸を用いた。洗浄とその評価は実施例5と同様に行った。結果は表8に示すとおりで、洗浄1ではナノろ過膜、逆浸透膜ともに比較例1よりも効果があったが、純水透過流束比%が80%を下回り、十分な洗浄効果は得られなかった。また、洗浄の効果を保持することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の糖液の製造方法は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を通じてろ過する工程を含む糖液の製造方法において、有機物および無機イオンの影響による膜の目詰まりを洗浄する方法を提供する。したがって、膜を繰り返し利用し、効率的に精製糖液を得ることができる。
図1
図2
図3
図4