(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935972
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報抽出装置、情報処理方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
H04N1/387
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-202061(P2011-202061)
(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公開番号】特開2013-65945(P2013-65945A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】皆本 晃弥
【審査官】
鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−017287(JP,A)
【文献】
Baolong GUO, Leida LI, Jeng-Shyang PAN, Liu YANG, Xiaoyue WU,Robust Image Watermarking Using Mean Quantization in DTCWT Domain,Intelligent Systems Design and Applications, 2008. ISDA '08. Eighth International Conference on,IEEE,2008年11月,Volume:2,p.19 - 22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理手段と、 前記変換処理手段が生成した変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化手段と、 前記変換処理手段の周波数変換により生成され、前記平滑化手段により平滑化された複数の前記変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込手段と、 前記変換処理手段が行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成手段とを備え、 前記変換処理手段が、前記複数の変換対象成分を生成する過程の演算において、一部又は全部の演算を区間演算で行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記画像情報が2値の画像情報であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置を用いて生成された前記画像埋込情報から、埋め込まれている前記画像情報を抽出する情報抽出装置であって、
前記画像埋込手段が前記画像情報を埋め込む対象とした前記一又は複数の変換対象成分を特定する成分特定情報を記憶する成分特定情報記憶手段と、
前記画像埋込情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う抽出用変換処理手段と、
前記抽出用変換処理手段により生成された複数の抽出用変換対象成分のうち、前記成分特定情報記憶手段に記憶された前記成分特定情報から特定される、前記画像情報が埋め込まれた前記抽出用変換対象成分を選択する抽出用成分選択手段と、
選択された前記抽出用変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化して抽出用平滑化変換対象成分を生成する抽出用平滑化手段と、
選択された前記抽出用変換対象成分と平滑化された前記抽出用平滑化変換対象成分との差分に基づいて、埋め込まれた前記画像情報を抽出する画像抽出手段とを備えることを特徴とする情報抽出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報抽出装置において、
前記画像情報が2値の画像情報であり、
前記画像抽出手段が、前記抽出用変換対象成分と前記抽出用平滑化変換対象成分との差分の符号及び予め設定された閾値に応じて、前記画像情報を抽出することを特徴とする情報抽出装置。
【請求項5】
周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理手段と、
前記変換処理手段の周波数変換により生成された変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化手段と、
平滑化された前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込手段と、
前記変換処理手段が行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが、
周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理ステップと、
前記変換処理ステップで生成された変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化ステップと、
前記変換処理ステップでの周波数変換により生成され、前記平滑化ステップにより平滑化された複数の前記変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込ステップと、
前記変換処理ステップが行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成ステップとを実行し、
前記変換処理ステップが、前記複数の変換対象成分を生成する過程の演算において、一部又は全部の演算を区間演算で行うことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理手段、
前記変換処理手段が生成した変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化手段、
前記変換処理手段の周波数変換により生成され、前記平滑化手段により平滑化された複数の前記変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込手段、
前記変換処理手段が行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成手段としてコンピュータを機能させ、
前記変換処理手段が、前記複数の変換対象成分を生成する過程の演算において、一部又は全部の演算を区間演算で行うことを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル情報に透かし画像を埋め込む情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル情報に対する透かしの埋め込み技術で多くの手法が提案されている。透かし技術は、透かしを検出する際に、オリジナルのデジタル情報を参照するかしないか(Blind/Non−Blind)に大きく大別することができる。Non−Blindは、検出時にオリジナルのデジタル情報が必要であり、Blindは、検出時にオリジナルのデジタル情報が不要である。実際には、検出時にオリジナルのデジタル画像が利用できない場合があるので、Non−Blindに比べて、Blindの方が便利である。
【0003】
透かし技術の大部分は、空間領域又は変換領域のいずれかのアルゴリズムに分類することができる。空間領域の手法は、一般的な画像処理操作で透かしを除去することができるように、画素値を直接変更することで透かしを埋め込む。対照的に、変換領域は信号処理の攻撃に対してよりロバストである。透かし技術でよく使われる変換は、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)や離散ウェーブレット変換(DWT:Discrete Wavelet Transform)のような周波数領域に基づく変換である。
【0004】
これまで、画像圧縮技術は、DCTベースのJPEGからDWTベースのJPEG2000に代わりつつある。それにともない、多くのDWTベースの透かし手法が提案されてきた。それらのほとんどは、非特許文献1に示すような、ダウンサンプリング型のウェーブレット変換を用いている。しかしながら、これらの提案の欠点は、シフト不変性に欠けることである。このような背景から、近年、2重ツリーの複素離散ウェーブレット変換(DT−CDWT:Dual−Tree Complex Discrete Wavelet Transform)をベースにした手法が提案されている(例えば、非特許文献2−4を参照)。DT−CDWTはシフト不変であり、信号がm次元のとき2
mの冗長度を有する。
【0005】
非特許文献2に示す技術は、6つの高周波成分や低周波成分に透かしを埋め込むBlind型の手法である。非特許文献3に示す技術は、低周波成分に透かしを埋め込むNon−Blind型の手法である。非特許文献4に示す技術は、オリジナル画像から抽出されたサブイメージがDT−CDWTを使って変換され、透かしは擬似乱数行列を用いてそれぞれの低周波成分に埋め込まれる。
【0006】
また、透かしに関する技術として特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、対象データに対して区間演算により時間周波数変換を行うことで、当該対象データが有する冗長部を拡張し、その拡張された冗長部に透かしを埋め込むことでHVS(Human Visual System)等を意識しなくても任意の成分(高周波成分を含む全ての成分)に透かしを埋めることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−17287号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Daubechies, I.: Ten Lectures on Wavelets. SIAM(1992)
【非特許文献2】Baolong, G., Leida, L., Jeng-Shyang, P., Liu, Y., and Xiaoyue, W. "Robust Image Watermarking Using Mean Quantization in DTCWT Domain" Eighth International Conference on Intelligent System Design and Applications, 19-22(2008)
【非特許文献3】Lee, J.J., Kim, W., Lee, N.Y., and Kim G.Y "A new incremental watermarking based on dual-tree complex wavelet transform" The Journal of Supercomputing, Vol.33, 133-140(2005)
【非特許文献4】Mabtoul, S., Ibn-Elhaj, E., and Aboutajdine, D. "A Blind Chaos-Based Complex Wavelet-Domain Image Watermarking Technique" IJCSNS International Journal of Computer Science and Network Security, Vol.6, No.3, March, 134-139(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献2に示す技術は、50%のJPEG圧縮に耐性があるが、回転に対してロバストではない。非特許文献3に示す技術は、透かし画像の品質と使用されるパラメータの決定方法に言及されていないが、埋め込み画像の品質が相対的に低いものである。非特許文献4に示す技術は、Blind型の手法で、いくらかの攻撃に対して耐性を有しているが、回転に対する耐性を有するためには、透かしの再構築において直交軸と同期を取る必要がある。
【0010】
特許文献1に示す技術は、区間演算により対象データの冗長部を拡張することで、透かしを任意の位置に埋め込むことができ、HVS等を意識しなくても秘匿性が高く、高画質な埋め込み画像を生成することができるが、通常のウェーブレット変換では埋め込む成分が4つしかなく、秘匿性が十分でないと共に、回転に対する耐性が考慮されていない。また、検出時にはオリジナルのデジタル情報が必要となる。
【0011】
本発明は、DT−CDWTに基づく新しいBlind型の透かし技術である。本発明においては、前記非特許文献2−4に記載のDT−CDWTとは異なるDT−CDWTを用いる。このDT−CDWTは、変換に冗長性を挿入することで再構築を可能とし、完全なシフト不変性を実現する。また、DT−CDWTの演算に区間演算を用いる。DT−CDWTと区間演算は、低周波成分を含んだ高周波成分を生み出すことができ、オリジナルの情報の冗長性を拡張させる。
【0012】
本発明は、透かし画像が埋め込まれた埋込情報であって、秘匿性を高めつつ高画質で様々な攻撃に対して耐性を有し、抽出時にはオリジナルの情報を必要としない埋込情報を生成する情報処理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理手段と、前記変換処理手段の周波数変換により生成された複数の変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込手段と、前記変換処理手段が行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成手段とを備え、前記変換処理手段が、前記複数の変換対象成分を生成する過程の演算において、一部又は全部の演算を区間演算で行うものである。
【0014】
このように、本発明に係る情報処理装置においては、処理対象情報に対して区間演算を用いた複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行い、変換された複数の成分のうち任意の一又は複数の成分に画像情報を埋め込むため、区間演算により各成分の冗長性が拡張され、すなわち変換後の全ての成分に低周波成分が含まれるこことなり、HVS等を考慮した複雑な処理による埋め込み処理を行うことなく、任意の成分に画像情報を埋め込むことが可能になるという効果を奏する。また、複素離散ウェーブレット変換により処理対象情報が16に分割され、その中の一又は複数の成分に任意に画像情報を埋め込むことができるため、様々な攻撃に対する耐性と情報の秘匿性を従来に比べて格段に高めることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る情報処理装置は、前記変換処理手段が生成した前記変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化手段を備え、前記埋込情報生成手段が、平滑化された前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込むものである。
【0016】
このように、本発明に係る情報処理装置においては、シフト不変性を有する複素離散ウェーブレット変換による周波数変換された成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行うため、回転に対する耐性を有することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る情報処理装置は、前記画像情報が2値の画像情報であるものである。
このように、本発明に係る情報処理装置においては、画像情報が2値の画像情報であるため、画像を抽出する際に符号のみを意識すればよく、処理を単純化することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る情報抽出装置は、前記情報処理装置を用いて生成された前記画像埋込情報から、埋め込まれている前記画像情報を抽出する情報抽出装置であって、前記画像埋込手段が前記画像情報を埋め込む対象とした前記一又は複数の変換対象成分を特定する成分特定情報を記憶する成分特定情報記憶手段と、前記画像埋込情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う抽出用変換処理手段と、前記抽出用変換処理手段により生成された複数の抽出用変換対象成分のうち、前記抽出用成分特定情報記憶手段に記憶された前記成分特定情報から特定される、前記画像情報が埋め込まれた前記抽出用変換対象成分を選択する抽出用成分選択手段と、選択された前記抽出用変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化して抽出用平滑化変換対象成分を生成する抽出用平滑化手段と、選択された前記抽出用変換対象成分と平滑化された前記抽出用平滑化変換対象成分との差分に基づいて、埋め込まれた前記画像情報を抽出する画像抽出手段とを備えるものである。
【0019】
このように、本発明に係る情報抽出装置においては、画像情報が埋め込まれた画像埋込情報に対して離散ウェーブレット変換を行って複数の成分に変換し、画像情報が埋め込まれている成分を選択して所定のブロック領域単位で平滑化し、それぞれの差分を取って埋め込まれている画像を抽出するため、画像情報を抽出する際にオリジナルの処理対象情報が不要となり、作業を効率化することができるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係る情報抽出装置は、前記画像情報が2値の画像情報であり、前記画像抽出手段が、前記抽出用変換対象成分と前記抽出用平滑化変換対象成分との差分の符号及び予め設定された閾値に応じて、前記画像情報を抽出するものである。
【0021】
このように、本発明に係る情報抽出装置においては、画像情報が2値の画像情報であり、抽出用変換対象成分と前記抽出用平滑化変換対象成分との差分の符号及び予め設定された閾値に応じて画像情報を抽出するため、画像情報を抽出する処理を簡略化することができるという効果を奏する。
【0022】
本発明に係る情報処理装置は、周波数分解が可能な情報であって、画像情報を埋め込む対象となる処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行う変換処理手段と、前記変換処理手段の周波数変換により生成された変換対象成分のうちの一又は複数の任意の前記変換対象成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行う平滑化手段と、平滑化された前記変換対象成分に前記画像情報を埋め込む画像埋込手段と、前記変換処理手段が行う周波数変換の逆変換を行って、前記処理対象情報に前記画像情報が埋め込まれた画像埋込情報を生成する埋込情報生成手段とを備えるものである。
【0023】
このように、本発明に係る情報処理装置においては、処理対象情報に対して複素離散ウェーブレット変換による周波数変換を行い、変換された複数の成分のうち任意の一又は複数の成分に所定のブロック領域単位で平滑化を行って画像情報を埋め込むため、回転に対する耐性を有することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】第1の実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る情報処理装置の複素離散ウェーブレット変換の処理を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る情報処理装置における平滑化処理を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態に係る情報処理装置の処理を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る情報抽出装置の機能ブロック図である。
【
図9】第2の実施形態に係る情報抽出装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施形態に係る情報抽出装置の処理を示す図である。
【
図11】実験に使用した処理対象画像及び透かし画像を示す図である。
【
図12】実験において攻撃されていない場合の埋込画像と透かし画像を示す図である。
【
図13】マーキング攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図14】クリッピング攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図15】メディアンフィルタを用いて攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図16】ガウシアンホワイトノイズを用いて攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図17】ゴマ塩ノイズ用いて攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図18】JPEG圧縮、JPEG2000圧縮で攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【
図19】回転攻撃を行った場合の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0026】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る情報処理装置について、
図1ないし
図7を用いて説明する。
図1は、電子透かし技術の概要を示す図、
図2は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成図、
図3は、本実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図、
図4は、本実施形態に係る情報処理装置の複素離散ウェーブレット変換の処理を示す模式図、
図5は、本実施形態に係る情報処理装置における平滑化処理を示す図、
図6は、本実施形態に係る情報処理装置の動作を示すフローチャート、
図7は、本実施形態に係る情報処理装置の処理を示す図である。
【0027】
電子透かしは、
図1に示すように、オリジナルの情報に透かし情報を埋め込んでおき、透かし情報の有無や状態により不正利用や改竄等を検出して、オリジナルの情報の著作権を主張するための技術であり、現在多くの手法が研究・開発されている。電子透かし技術に重要な要素として、画質、埋込データ量及び透かしの強さ(耐性)が要求されるが、その全てを同時に満たすのは難しい。
【0028】
本実施形態に係る情報処理装置は、上記特許文献1に示す区間演算を用いて画像や音声情報の冗長な部分を拡張し、その拡張された冗長部に透かし情報を埋め込む。その際にシフト不変なウェーブレット変換(参考文献1:Toda, H., and Zhang, Z. "Perfect translation invarience with a wide range of shapes of Hilbert transform pairs of wavelet bases" International Journal of Wavelets, Multiresolution and Information Processing, Vol.8, No.4, 501-520(2010))を用いる。また、変換後の成分に対して平滑化を行って透かし画像を埋め込むものである。以下、本実施形態に係る情報処理装置について詳細を説明するが、ここでは、オリジナルの画像情報(処理対象画像とする)に2値の透かし画像を埋め込み、処理対象画像に透かし画像が埋め込まれた埋込画像を生成する情報処理装置について説明する。
【0029】
図2に、情報処理装置1のハードウェアの構成を示す。情報処理装置1は、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラム(例えば、情報処理プログラム、情報抽出プログラム等)が格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。通信I/F15は、他の装置(例えば、サーバ、上位装置等)と通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやディスプレイ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16としてUSBやRS232C等が用いられる。また、必要に応じて、光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスクに対応したドライブを接続することができる。
【0030】
図3に、情報処理装置1の機能ブロック図を示す。情報処理装置1は、処理対象画像30aに対して、区間演算による2重ツリー複素離散ウェーブレット変換(DT−CDWT)を用いて16の成分情報30bに変換する変換処理部31と、変換された成分情報30bのうち、任意の一又は複数の成分情報30b(透かし画像を埋め込む対象となる成分情報30b)に、所定のブロック単位で平滑化を行う平滑化処理部32と、平滑化した成分に対して透かし画像30cを埋め込むと共に、埋め込みの対象となった成分の情報を成分特定情報記憶部34に書き込む画像埋込部33と、全ての成分情報30bに対して、変換処理部31が行った変換の逆変換を行って埋込画像30dを生成する埋込情報生成部35とを備える。以下に、各処理部の処理について説明する。
【0031】
変換処理部31が行うDT−CDWT及び区間演算(IA:Interval arithmetic)について説明する。参考文献1によれば、任意のデジタル信号{f
l}の実スケーリング関数φ
R(t−k)、複素スケーリング関数φ
I(t−k)、k∈Zによる補間は次のように表せる。
【0032】
【数1】
【0033】
関数f(t)はデジタル信号{f
l}を補間する。つまり、f
n=f(n),n∈Zが成立する。ただし、φ(t) ̄は、φ(t)の複素共役を表し、Zは整数の集合である。このとき、DT−CDWTは、次の分解アルゴリズムによって計算される。
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、{a
Rn,b
Rn}は実分解数列で、{a
In,b
In}は複素分解数列である。また、{a
Rn,a
In}はローパスフィルタで、{b
Rn,b
In}はハイパスフィルタである。
逆DT−CDWTは、次の再構成アルゴリズムによって計算される。
【0036】
【数3】
【0037】
ここで、{g
Rn,h
Rn}は実再構成数列で、{g
In,h
In}は複素再構成数列である。(3)と(1)とを用いれば、分解数列から原信号{f
n}を求めることができる。
【0038】
次に、区間演算について説明する。Rを実数の集合とするとき、区間とはA=[a
1,a
2]={t|a
1≦t≦a
2,a
1,a
2∈R}の形をした集合である。区間Aの下限と上限をそれぞれinf(A)=a
1,sup(A)=a
2と表し、区間Aの幅をw(A)=a
2−a
1と定義する。2つの区間A=[a
1,a
2]とB=[b
1,b
2]の四則演算は、
【0039】
【数4】
【0040】
と定義する。区間ベクトルや区間行列については、成分ごとに計算するものとする。四則演算の定義(4)より、一般的には計算量が増えれば増えるほど区間の幅が大きくなり、これを区間拡張と呼ぶ。
【0041】
次に、IAを利用したDT−CDWTについて説明する。IAを利用したDT−CDWTを次式で定義する。
【0042】
【数5】
【0043】
ここで、I(Δk)=[1−Δk,1+Δk],Δkは正の実数である。全ての演算をIAで行うと、c
Rj−1,n⊂I(c
Rj−1,n),d
Rj−1,n⊂I(d
Rj−1,n),c
Ij−1,n⊂I(c
Ij−1,n),d
Ij−1,n⊂I(d
Ij−1,n)が成立する。つまり、IAに基づいたDT−CDWTによる成分は、通常のDT−CDWTによる成分を含む。この意味で、IAに基づいたDT−CDWTは、原信号から冗長成分を作り出している。実際の計算では、分解(5)を計算するときに、上記参考文献1に示された分解数列を使い、実装するときには区間演算ソフトを利用するようにしてもよい。
【0044】
画像の場合は、(2)又は(5)を水平方向と垂直方向に適用する。画像に対してDT−CDWTを実行した場合の図を
図4に示す。
図4に示すように、処理対象画像C
0に対して垂直方向の補間を行いC
R成分とC
I成分とする。それぞれの成分を垂直方向に高周波成分(C
RH,C
IH)と低周波成分(C
RL,C
IL)に分解する。各成分に対して水平方向の補間を行い(C
RHR,C
RHI,C
IHR,C
IHL)成分と(C
RLR,C
RLI,C
ILR,C
ILI)成分とする。各成分を水平方向に高周波成分と低周波成分に分解することで、
図4に示すような16成分(C
RR−1,D
RR−1,・・・,F
II−1)に分解される。上記演算に区間演算を用いることで冗長部が拡張され、分解された全ての成分に低周波成分が含まれることとなり、全ての成分を対象として透かし画像を埋め込むことが可能となる。すなわち、全ての成分に対して、透かし画像を埋め込む領域(低周波領域)が存在するように演算することができ、HVS等を考慮した複雑な処理を行う必要がなく、任意の一又は複数の成分を選択して透かし画像を埋め込むことが可能となる。
【0045】
なお、この変換処理は、全ての演算を区間演算で行ってもよいし、一部の演算のみを区間演算で行うようにしてもよい。一部の演算のみを区間演算にすることで、その演算パターン自体を秘匿情報として利用することが可能である。その場合、一部の演算を区間演算とし、それにより分解された区間成分のうちの一部のみに、透かし画像を埋め込むようにしてもよい。
【0046】
平滑化処理部32は、変換処理部31の処理で分解された16の成分のうち、透かし画像を埋め込む対象とする一又は複数の成分に所定のブロック単位(例えば、n画素×n画素のブロック単位(nは処理対象画像の最大画素数未満))で平滑化を行う。この平滑化の処理を模式的に示したものを
図5に示す。ここでは、25×25画素の画像に対して、21×21画素のブロック単位で平滑化を行う処理の一部を示している。図に示すように、対象画素の画素値をブロックにおける全ての画素値の平均値で置き換える。これを全ての画素値について行うことでブロック単位での平滑化を行う。
【0047】
画像埋込部33は、ブロック単位で平滑化された成分に透かし画像30cを埋め込む。このとき、透かし画像30cを抽出する際に必要な情報となる、埋め込みの対象となった成分に関する情報を成分特定情報記憶部34に書き込んでおく。埋込情報生成部35は、分解された各成分を変換処理部31の変換と逆の変換を行うことで、透かし画像30cが埋め込まれた埋込画像30dを生成する。
【0048】
以下に、本実施形態に係る情報処理装置の動作について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6に情報処理装置の動作をフローチャートを示す。ここでは、透かし画像30c(Wとする)は‐1と1からなる2値画像とする。なお、議論を簡単にするために、レベル0から‐1のみについて考えることとする。まず、変換処理部31が、処理対象画像30aの水平方向に対してIAに基づいたDT−CDWTを適用し(S61)、垂直方向に通常のDT−CDWTを適用する(S62)ことで、
図4の各成分C
RR−1,D
RR−1,・・・,F
II−1に対応した区間成分I(C
RR−1),I(D
RR−1),・・・,I(F
II−1)が得られる。すなわち、
図7に示すように、処理対象画像30aが16個の(区間)成分情報30bに分解される。
【0049】
16個の(区間)成分情報30bから一又は複数の成分を選び(S63)、これをI(S
i)(i=1,2,・・・,N,1<N<16)と表す。
図7においては、I(D
RR−1)、I(D
RI−1)、I(F
II−1)の3つの成分が選択され、それぞれI(S
2)、I(S
4)、I(S
16)と表す。このときの成分の選び方は、例えば利用者が任意に選択してもよいし、装置内でランダムに選択するようにしてもよい。また、一部の成分のみが区間成分として分解されている場合は、区間成分であるものの中から一又は複数の成分が選択される。
【0050】
S’
i=sup(I(S
i))とし、選択された区間成分における上限値を求める(S64)。
図7においては、I(S
2)、I(S
4)、I(S
16)から、S’
2、S’
4、S’
16が得られる。なお、ここでは区間成分の上限値を求めているが、区間成分内であればどの値を取得してもよい。また、選択された(区間)成分情報30b以外の他の(区間)成分情報30bについては、浮動小数点演算でDT−CDWTを行って得られた成分情報30bと置き換える。
【0051】
平滑化処理部32が、選択された(区間)成分情報30bの上限値について、ブロック単位で平滑化処理(ブロック形式のスライディング・ウインドウ)を行う(S65)。計算式を以下に示す。
【0052】
【数6】
【0053】
このとき、k,lは固定された自然数(例えば、k=10,l=10)であり、また
【0054】
【数7】
【0055】
である。
図7においては、S’
2、S’
4、S’
16から
S2、
S4、
S16が得られる。画像埋込部33が、次式を使って透かし画像30c(W)を埋め込む(S66)。
【0056】
【数8】
【0057】
ここで、0<α<1は、攻撃耐性を調整するパラメータである。埋込情報生成部35が、求めたS〜
i(以下、「〜」は直前の文字のチルダとする)を用いて(選択された成分以外を浮動小数点演算で求めた値に置き換えている場合は、これらの成分も用いて)、
図7に示すような逆DT−CDWT変換を行い、埋込画像30d(C〜
0)を生成して(S67)、透かし画像30cの埋込処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態に係る情報処理装置によれば、区間演算により各成分の冗長性が拡張され、すなわち変換後の全ての成分に低周波成分が含まれるこことなり、HVS等を考慮した複雑な処理による埋め込み処理を行うことなく、任意の成分に画像情報を埋め込むことが可能になる。また、複素離散ウェーブレット変換により処理対象情報が16に分割され、その中の一又は複数の成分に任意に画像情報を埋め込むことができるため、様々な攻撃に対する耐性と情報の秘匿性を従来に比べて格段に高めることができる。
【0059】
さらに、シフト不変性を有する複素離散ウェーブレット変換による周波数変換された成分に対して、所定のブロック領域単位で平滑化を行うため、回転に対する耐性を有することができる。
【0060】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る情報抽出装置について、
図8ないし
図10を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る情報抽出装置の機能ブロック図、
図9は、本実施形態に係る情報抽出装置の動作を示すフローチャート、
図10は、本実施形態に係る情報抽出装置の処理を示す図である。
【0061】
なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明については省略する。また、本実施形態に係る情報抽出装置は、第1の実施形態に係る情報処理装置と一体的な装置として構成してもよいし、異なる装置として構成してもよい。
【0062】
図8において、本実施形態に係る情報抽出装置100は、埋込画像30dに対して、DT−CDWTを用いて16の抽出用成分情報80bに変換する抽出用変換処理部81と、成分特定情報記憶部34に記憶されている情報を読み込んで、抽出用成分情報80bから透かし画像30cが埋め込まれている成分を選択する抽出用成分選択部82と、選択した抽出用成分情報80bに対して所定のブロック単位で平滑化を行う抽出用平滑化処理部83と、平滑化された抽出用成分情報80bと平滑化されていない抽出用成分情報80bとの差分から透かし画像30cを抽出する透かし画像抽出部84とを備える。以下に、各処理部の処理について説明する。
【0063】
抽出用変換処理部81は、埋込画像30dに対してDT−CDWTを用いて周波数変換を行うが、変換処理部81と異なり区間演算を用いる必要はない。抽出用成分選択部82は、成分特定情報記憶部34から読み込んだ情報に基づいて、透かし画像30cが埋め込まれている抽出用成分情報80bを選択する。成分特定情報記憶部34には、
図3における画像埋込部33が書き込んだ情報で、透かし画像30cが埋め込まれている成分の情報が書き込まれている。抽出用平滑化処理部83は、
図3における平滑化処理部32と同様の処理を行う。透かし画像抽出部84は、抽出用平滑化処理部83が平滑化した抽出用成分情報80bと、それに対応する抽出用変換処理部81が変換処理した抽出用成分情報80b(平滑化処理がされていない抽出用成分情報80b)との差分の符号を演算し、演算結果を所定の閾値により2値化して透かし画像30cを抽出する。
【0064】
以下に、本実施形態に係る情報抽出装置の動作について
図9及び
図10を用いて説明する。
図9に情報処理装置の動作をフローチャートで示す。透かし画像を抽出する際には、どこの成分に透かし画像が埋め込まれているかが分かっていればよい。まず、抽出用変換処理部81が、埋込画像30dに対してDT−CDWTを適用して周波数変換を行う(S91)。すなわち、埋込画像30d(C〜
0)を16個の抽出用成分情報80b(C〜
RR−1,D〜
RR−1,・・・,F〜
II−1)に分解する(
図10を参照)。
【0065】
抽出用成分選択部82が、成分特定情報記憶部34に記憶されている情報を読み出して、分解された抽出用成分情報80bのうち、透かし画像30cが埋め込まれている成分(S〜
i)を選択する(S92)。
図10においては、透かし画像30cが埋め込まれたS〜
2、S〜
4、S〜
16が選択されている。
【0066】
抽出用平滑化処理部83が、選択された抽出用成分情報80bに対して、埋込処理時に行った平滑化と同様の平滑化処理を行う(S93)。
図10においては、S〜
2、S〜
4、S〜
16が平滑化されて
S〜
2、
S〜
4、
S〜
16が得られる。
【0067】
透かし画像抽出部84が、以下の式により、選択した抽出用成分情報80bと平滑化された抽出用成分情報80bとの差分の符号を取得し、その合計値を演算する(S94)。
【0068】
【数9】
【0069】
W〜
eを閾値によって2値化して透かし画像30c(W〜)を抽出して(S95)、処理を終了する。つまり、W〜を抽出する際に、透かし画像30cが埋め込まれた画像W
iを足し合わせるため、攻撃耐性を高めることができる(
図10を参照)。
【0070】
このように、本実施形態に係る情報抽出装置によれば、透かし画像を抽出する際にオリジナルの処理対象情報が不要となり、作業を効率化することができる。また、上述したように攻撃耐性を高めて透かし画像を確実に抽出することができる。
【0071】
なお、上記各実施形態において、透かし画像を埋め込む対象を処理対象画像としたが、音声情報や動画情報のように、周波数分解が可能な情報であれば本発明を適用することができる。例えば、1次元の情報であれば、所定の長さで区切って2次元に配列することで本発明の適用が可能となる。
【実施例】
【0072】
本発明に係る情報処理装置及び情報抽出装置について実験を行った。通常、電子透かし技術は、透かし画像のロバスト性と品質の間でトレードオフの関係を伴う。低周波成分に透かしを埋め込むことによりロバスト性が向上するが、画像を表現する重要な要素の大半が低周波成分に含まれるため透かし画像を埋め込むことで画像の品質が低下する。画質を維持するために、高周波成分に透かしを埋め込む必要があるが、そうすることでロバスト性が低下してしまう。しかしながら、区間演算により得られた高周波成分には低周波成分が含まれている。したがって、本願の手法を用いることで、高周波成分に透かしを埋め込む場合であってもロバスト性が維持されることを期待できる。
【0073】
本実験では、4つの成分(I(D
RR−1),I(D
RI−1),I(D
IR−1),I(D
II−1))に透かし画像を埋め込む。また、デシベル単位のPSNR(Peak Signal to noise ratio)が大幅に減少しないように、(5)式のΔ
k=0.02、(6)式のk=l=10、(8)式のα=0.9にパラメータを設定した。PSNRは、以下の式で演算される。
【0074】
【数10】
【0075】
N
xとN
yは、それぞれ水平方向と垂直方向の画像のサイズである。処理対象画像は、
図11に示すように、256階調の256×256画素のレナ、女性、ボート、ペッパーの画像を用い、透かし画像は、128×128画素の2値画像を用いた。また、区間演算がサポートされているMATLABツールボックスのINTLABを実装して、本実験を行った。
【0076】
図12は、本発明の手法で得られたPSNRと、攻撃を受けていない埋込画像から抽出された透かし画像を示している。これらの埋込画像は非常に高品質で、埋め込まれた透かし画像は肉眼で確認されない。
【0077】
図13−
図17は、マーキング、クリッピング、メディアンフィルタ、ガウシアンホワイトノイズ、ゴマ塩ノイズで攻撃した場合の結果を示す。
図13は、埋込画像にマーキングをして透かし画像を抽出した結果、
図14は、埋込画像を190×190のサイズに切り取って透かし画像を抽出した結果、
図15は、埋込画像をメディアンフィルタでフィルタリングして透かし画像を抽出した結果、
図16は、埋込画像に平均値0、分散値0.001のガウシアンホワイトノイズを付加して透かし画像を抽出した結果、
図17は、埋込画像にノイズ密度が0.005のゴマ塩ノイズを付加して透かし画像を抽出した結果を示す。各結果において、抽出された透かし画像は劣化しているが、一目で透かし画像の有無を識別することができる。
【0078】
図18は、埋込画像をJPEGとJPEG2000で攻撃した場合に透かし画像を抽出した結果を示す。
図18(A)は、表示している圧縮率でJPEG圧縮を行った場合の結果で、左からレナ、女性、ボート、ペッパーから抽出した透かし画像を示す。
図18(B)は、表示している圧縮率でJPEG2000圧縮を行った場合の結果で、左からレナ、女性、ボート、ペッパーから抽出した透かし画像を示す。透かし画像は劣化しているが、透かし画像の有無を識別することができ、これらの結果は、参考文献2(Minamoto, T., and AOKI, K., "A blind digital image watermarking method using interval wavelet decomposition" international Journal of Signal Processing, Image Processing and Pattern Recognition Vol.3, No.2, 59-72(2010))や上記に示した非特許文献2のものより優れている。
【0079】
図19は、埋込画像に回転の攻撃を付加して透かし画像を抽出した結果を示す。上段に示す結果が、回転角度が1度、5度、10度、15度に回転された埋込画像から透かし画像を抽出した結果を示す、下段に示す結果が、回転角度が20度、25度、30度、45度に回転された埋込画像から透かし画像を抽出した結果を示す。図からわかるように、透かし画像の有無を一目で識別することができる。また、上記に示した非特許文献4の手法と異なり、透かし画像を再構築するために直交軸と同期を取る必要がない。DWTに基づく手法では実現できない回転耐性が、DT−CDWTにより実現できた。
【0080】
以上の結果から、本発明の手法を用いることで、JPEG圧縮、JPEG2000圧縮、クリッピング、メディアンフィルタ、ガウシアン白色ノイズ、ゴマ塩ノイズの付加、回転等の攻撃に対してロバストで、より質の高い埋込画像を実現できることが証明された。また、
図14の結果から明らかなように、切り取られた埋込画像の位置と透かし画像の位置は一致している。すなわち、埋込画像に対して改竄が行われた位置を特定することができる。例えば、車のナンバープレートの位置に透かし画像が検出されなかった場合は、車のナンバープレートが改竄されたと特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 情報処理装置
10 CPU
11 RAM
12 ROM
13 HD
14 通信I/F
15 入出力I/F
30a 処理対象画像
30b 成分情報
30c 透かし画像
30d 埋込画像
31 変換処理部
32 平滑化処理部
33 画像埋込部
34 成分特定情報記憶部
35 埋込情報生成部
80b 抽出用成分情報
81 抽出用変換処理部
82 抽出用成分選択部
83 抽出用平滑化処理部
84 透かし画像抽出部
100 情報抽出装置