特許第5935977号(P5935977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935977連続式焼成炉による焼成方法および連続式焼成炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935977
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】連続式焼成炉による焼成方法および連続式焼成炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/26 20060101AFI20160602BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20160602BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20160602BHJP
   F27B 9/30 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F27B9/26
   F27B9/24 R
   F27D3/12 E
   F27B9/30
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-13844(P2012-13844)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-152059(P2013-152059A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219750
【氏名又は名称】東海高熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(72)【発明者】
【氏名】小谷津 勝好
(72)【発明者】
【氏名】麻生 和也
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳昭
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−012823(JP,A)
【文献】 特開平08−219652(JP,A)
【文献】 特開平08−226774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00−9/40
F27D 3/12
C21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成品をプッシャーにより搬送するプッシャー炉体部と、被焼成品をローラにより搬送するローラハース炉体部を備えた連続式焼成炉であって、プッシャー炉体部においては、被焼成品を載せたトレーがそれぞれ鉢状のカプセルで覆われ、各カプセルが台板に載置されて、台板がプッシャーによりプッシャー炉体部の床面を滑動できるよう構成されており、プッシャー炉体部内の各カプセルの位置には、その位置にあるカプセル内の雰囲気を調整するためのガスを導入するガス導入管とガスを排出するガス排出管がそれぞれ配置され、各カプセルの位置の床面にはそれぞれ貫通穴が設けられ、該貫通穴に前記ガス導入管とガス排出管が接続され、各カプセルが位置する台板にも貫通穴が設けられてなり、台板の貫通穴と床面の貫通穴とが一致したとき、貫通穴を介してガス導入管からカプセル内に雰囲気ガスが導入されてカプセル内が設定された雰囲気に調整されるとともに、加熱された被焼成品から発生したガスをガス排出管から炉体外に排出して脱ガス処理されるよう構成され、プッシャー炉体部とローラハース炉体部との間には台板を取り除くための装置が配設され、脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルがローラハース炉体部に送られ、搬送ローラにより搬送されて、被焼成品が加熱、焼成されるよう構成されたことを特徴とする連続式焼成炉。
【請求項2】
前記プッシャー炉体部と前記ローラハース炉体部とが、プッシャー炉体部の出口部とローラハース炉体部の入口部とを直接接続させて並設されてなることを特徴とする請求項記載の連続式焼成炉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された連続式焼成炉により被焼成品を焼成する方法であって、プッシャー炉体部においては、被焼成品を載せたトレーをそれぞれ独立した鉢状のカプセルで覆い、各カプセルを台板に載置し、台板がプッシャーによりプッシャー炉体部の床面を滑動して被焼成品を搬送し、被焼成品はカプセル内で加熱され、加熱された被焼成品から発生したガスは炉体部外に排出されて脱ガス処理され、続いて、カプセルを載置した台板を取り除き、プッシャー炉体部で脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルのみがローラハース炉体部に送られ、ローラハース炉体部において搬送ローラにより搬送して、被焼成品をカプセル内で加熱、焼成することを特徴とする連続式焼成炉による焼成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材からなる電子部品、炭素系材からなる二次電池負極材などの連続式焼成炉による焼成方法、詳しくは、プッシャー炉体部とローラハース炉体部を備えた炉を使用し、加熱した被焼成品から発生したガスを脱ガス処理した後、被焼成品を加熱、焼成する連続式焼成炉による焼成方法、および連続式焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材からなる電子部品や、炭素系材からなる二次電池負極材など(以下、被焼成品)を連続して焼成する炉として、プッシャー炉およびローラハース炉が用いられている。プッシャー炉は、台板に載せた被焼成品を加熱するための発熱体を配設した炉本体内に、台板に載せた被焼成品を入口部からプッシャーにより炉本体内へ搬送し、出口部から取り出すよう構成されており、ローラハース炉は、同じく被焼成品を加熱するための発熱体を配設した炉本体内に、被焼成品をローラにより搬送して加熱する方式である。
【0003】
焼成される被焼成品には、被焼成品の成形時に必要なバインダーを含まれており、被焼成品の加熱、焼成時に蒸発して炉内に排出されるから、蒸発したバインダーを除去するための脱ガス処理が必要となるが、従来のプッシャー炉やローラハース炉を用いて、脱ガス、焼成を一貫して行うためには、炉長、排気方法、温度制御などの点で問題があり、これまで一つの炉内で脱ガス処理と焼成を一貫して行うことはできなかった。
【0004】
炉の前半をプッシャー方式、後半をローラハース方式とした焼成炉も提案されているが、いずれも炉の後半にローラハース方式の冷却帯を配置し、搬送ローラの回転速度を調整して冷却速度を制御するためのものであり、脱ガス、焼成を一貫して行うことを意図したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4264928号公報
【特許文献2】特開平8−42975号公報
【特許文献3】特開2011−12823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被焼成品をプッシャーにより搬送して加熱するプッシャー炉体部と、被焼成品をローラにより搬送して加熱するローラハース炉体部を組み合わせた連続式焼成炉により、被焼成品の焼成における脱ガスと焼成を一貫して行うことを可能とする連続式焼成炉による焼成方法および連続式焼成炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための請求項1による連続式焼成炉による焼成方法は、被焼成品をプッシャーにより搬送して加熱するプッシャー炉体部と、被焼成品をローラにより搬送して加熱するローラハース炉体部を備えた連続式焼成炉により被焼成品を焼成する方法であって、プッシャー炉体部においては、被焼成品を載せたトレーをそれぞれ独立した鉢状のカプセルで覆い、各カプセルを台板に載置し、台板がプッシャーによりプッシャー炉体部の床面を滑動して被焼成品を搬送し、被焼成品はカプセル内で加熱され、加熱された被焼成品から発生したガスは炉体部外に排出されて脱ガス処理され、続いて、カプセルを載置した台板を取り除き、プッシャー炉体部で脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルのみがローラハース炉体部に送られ、ローラハース炉体部において搬送ローラにより搬送して、被焼成品をカプセル内で加熱、焼成することを特徴とする。
【0008】
請求項2による連続式焼成炉は、被焼成品をプッシャーにより搬送するプッシャー炉体部と、被焼成品をローラにより搬送するローラハース炉体部を備えた連続式焼成炉であって、プッシャー炉体部においては、被焼成品を載せたトレーがそれぞれ鉢状のカプセルで覆われ、各カプセルが台板に載置されて、台板がプッシャーによりプッシャー炉体部の床面を滑動できるよう構成されており、プッシャー炉体部内の各カプセルの位置には、その位置にあるカプセル内の雰囲気を調整するためのガスを導入するガス導入管とガスを排出するガス排出管がそれぞれ配置され、各カプセルの位置の床面にはそれぞれ貫通穴が設けられ、該貫通穴に前記ガス導入管とガス排出管が接続され、各カプセルが位置する台板にも貫通穴が設けられてなり、台板の貫通穴と床面の貫通穴とが一致したとき、貫通穴を介してガス導入管からカプセル内に雰囲気ガスが導入されてカプセル内が設定された雰囲気に調整されるとともに、加熱された被焼成品から発生したガスをガス排出管から炉体外に排出して脱ガス処理されるよう構成され、プッシャー炉体部とローラハース炉体部との間には台板を取り除くための装置が配設され、脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルがローラハース炉体部に送られ、搬送ローラにより搬送されて、被焼成品が加熱、焼成されるよう構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3による連続式焼成炉は、請求項2において、前記プッシャー炉体部と前記ローラハース炉体部とが、プッシャー炉体部の出口部とローラハース炉体部の入口部とを近接させて並設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前段に配置したプッシャー炉体部において脱ガス処理を行い、後段に配置したローラハース炉体部において焼成を行うことにより、一つの連続式焼成炉内において脱ガス、焼成を一貫して行うことが可能となる。プッシャー炉体部とローラハース炉体部とを連続して配置するから、脱ガスと焼成を個々の装置で行っていた従来方式に比べ、脱ガス後の降温に要する時間、焼成時に、室温から脱ガス温度への昇温に要する電力が不要となる。さらに、プッシャー炉体部における脱ガス処理後、カプセルを載置した台板を取り除き、プッシャー炉体部で脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルのみをローラハース炉体部に送って、加熱、焼成するようにしたので、ローラハース炉体部での加熱における台板分の熱容量が減少して、熱容量が小さくなり、ローラハース炉体部での加熱に要する使用電力が削減される。
【0011】
プッシャー炉体部は、被焼成品を載せたトレーが台板に載置され、台板がプッシャーによりプッシャー炉体部の床面を滑動できるよう構成されているが、本発明においては、被焼成品を載せたトレーがそれぞれ鉢状のカプセルで覆われ、プッシャー炉体部内の各カプセルの位置には、その位置にあるカプセル内の雰囲気を調整するためのガスを導入するガス導入管とガスを排出するガス排出管がそれぞれ配置され、カプセル内に雰囲気ガスが導入されてカプセル内が設定された雰囲気に調整されるとともに、加熱された処理品から発生したガスをガス排出管から炉体外に排出して脱ガス処理されるよう構成されているから、必要に応じて、各カプセル内の雰囲気を調整して、蒸発したバインダーなどを含むガスを炉材を損傷することなく効果的に炉外に排出して脱ガス処理することができる。
【0012】
ローラハース炉体部においては、プッシャー炉体部で脱ガス処理された被焼成品を載せたトレーとトレーを覆うカプセルのみがローラハース炉体部に送られ、搬送ローラにより搬送されて、被焼成品がカプセル内で加熱、焼成され、搬送ローラの回転速度の調整により加熱速度を調整し、効率的に焼成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の連続式焼成炉の構成を示す概略平面断面図である。
図2】同じく概略縦断面図である。
図3】プッシャー炉体部内における被焼成品を載せたトレー、トレーを覆う鉢状のカプセルおよび台板を示す図である。
図4】ローラハース炉体部における搬送ローラ上の被焼成品を載せたトレーおよびカプセルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の連続式焼成炉および連続式焼成炉による焼成方法の具体的な実施形態を図面により説明する。
【0015】
本発明による連続式焼成炉1は、図1〜2に示すように、被焼成品4をプッシャー(図示せず)により搬送するプッシャー炉体部2と、被焼成品4をローラ8により搬送するローラハース炉体部3から構成される。
【0016】
プッシャー炉体部2には、被焼成品4を加熱するための炭化珪素質発熱体などの発熱体(図示せず)が配設され、図3に示すように、被焼成品4を載せたトレー7がそれぞれ鉢状のカプセル5で覆われ、各カプセル5が台板6に載置されて、台板6がプッシャーによりプッシャー炉体部2の床面9を滑動できるよう構成されている。鉢状のカプセル5は、台板6に碗をふせたように載置されている。
【0017】
台板6、カプセル5の材質は、好ましくは見掛け気孔率20%以下のムライト、アルミナ、炭化珪素などのセラミック材料や黒鉛が好ましく、この材質選択により、カプセル5内のガス雰囲気を設定された雰囲気に維持することができる。カプセル5は、その重力で台板6に密着し、そのために、台板6とカプセル5との接触面を研磨し、隙間が生じないようにすることが望ましい。台板6が滑って移動するプッシャー炉体部の床面9と台板6との接触面を研磨してもよい。
【0018】
台板6に載置された被焼成品4は、プッシャー炉体部の入口部(炉体部の左端部)からプッシャーにより炉体部の右方向(矢印A方向)へ搬送され、出口部(炉体部の右端側面部)からローラハース炉体部3の入口部(炉体部の左端側面部)から矢印Bのように炉体部内へ移行するようになっている。
【0019】
プッシャー炉体部2内の各カプセルの位置には、その位置にあるカプセル5内の雰囲気を調整するためのガスを導入するガス導入管10とガスを排出するガス排出管11がそれぞれ独立して配置される。各カプセルの位置の床面9にはそれぞれ貫通穴12、13が設けられ、該貫通穴12、13に前記ガス導入管10とガス排出管11が接続され、各カプセルが位置する台板6にも貫通穴が設けられており、台板6がプッシャーにより移動し、台板6の貫通穴14、15と床面の貫通穴12、13とが一致したとき、貫通穴を介してガス導入管10からカプセル5内に雰囲気ガスが導入されてカプセル5内が設定された雰囲気に調整されるとともに、加熱された被焼成品4から発生したガスは台板6の貫通穴15、床面9の貫通穴13を通して、ガス排出管11に流入し、炉体外に排出され脱ガス処理されるようになっている。
【0020】
そのために、台板6の貫通穴14、15と床面9の貫通穴12、13とが一致したとき、台板をしばらくその位置で待機させ、その後再び台板6の貫通穴と床面9の貫通穴とが次に一致する位置までプッシャーにより台板6を移動させるという間歇的な移動を行うようにすることができる。
【0021】
プッシャー炉体部2とローラハース炉体部3との間には台板6を取り除くための装置が配設され、被焼成品がプッシャー炉体部2の出口部からローラハース炉体部3へ移行する時点で、台板6が取り除かれ、被焼成品4、被焼成品4を載せたトレー7、トレー7を覆うカプセル5のみがローラハース炉体部3へ移行し、耐火材からなる搬送ローラ8により搬送されるようになっている(図1〜2、図4)。台板6、トレー7、カプセル5および被焼成品4の合計重量のうち、台板6の重量が占める割合は大きく、台板6が取り除くことによって、重量が半分以下に軽減されるから、駆動負荷が減ると共に、熱容量も大きく減少して、被焼成品をローラハース炉体部3内において加熱するために要する使用電力が削減される。取り除かれた台板6は、矢印Dのようにプッシャー炉体部2へ戻される。
【0022】
ローラハース炉体部3には、プッシャー炉体部2と同様に、被焼成品を加熱するための炭化珪素質発熱体などの発熱体(図示せず)が配設され、また、炉内雰囲気ガスの投入口、炉内雰囲気ガスの排出口(何れも図示せず)が設けられ、炉体内の雰囲気を所定の雰囲気に調整できるようになっており、脱ガス処理された被焼成品4は、ローラハース炉体部3内を矢印Cのように移行して、所定の雰囲気で加熱、焼成され、出口部(炉体部の右端部)から取り出される。
【0023】
本発明による連続式焼成炉は、図1〜2に示すように、プッシャー炉体部2とローラハース炉体部3とが、プッシャー炉体部2の出口部(図1においては、炉体部の右端下側部)とローラハース炉体部3の入口部(図1においては、炉体部の左端上側部)とを近接させて並設されるよう配置するのが好ましく、この構成により、炉の設置長さを短縮して処理品の脱ガス、焼成を能率的に行うことができる。
【0024】
また、プッシャー炉体部2内において、台板6を連続的に搬送しても、カプセル内への雰囲気ガスの導入、処理品から発生したガスの排出を可能とするために、台板6の貫通穴14、15を台板6の搬送方向(矢印Aの方向)に延びる縦長形状とすることもできる。この構成により、台板6の貫通穴14、15と床面9の貫通穴12、13とが一致する時間が長くなり、台板6の搬送中、カプセル内へのガス導入、カプセル内からのガス排気の時間をより長くすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 連続式焼成炉
2 プッシャー炉体部
3 ローラハース炉体部
4 被焼成品
5 カプセル
6 台板
7 トレー
8 搬送ローラ
9 プッシャー炉体部の床面
10 ガス導入管
11 ガス排出管
12 床面の貫通穴
13 床面の貫通穴
14 台板の貫通穴
15 台板の貫通穴
図1
図2
図3
図4