特許第5935982号(P5935982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935982
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】浸漬型膜分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20160602BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20160602BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B01D65/02 520
   B01D63/00
   C02F1/44 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-75275(P2012-75275)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202540(P2013-202540A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 好男
(72)【発明者】
【氏名】岡島 康信
(72)【発明者】
【氏名】新開 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】南里 一生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智彦
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−112936(JP,A)
【文献】 特開平11−057426(JP,A)
【文献】 特開2011−183364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 65/02、65/08
B01D 63/00、63/08
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬して上下に積層配置する複数の膜モジュールと、最下段の膜モジュールの下方に配置する散気装置を備え、
各膜モジュールは、分離膜の膜面を上下方向に向けて配置する複数の膜エレメントを有し、かつ隣接し合う膜エレメントの相互の膜面間に所定間隙の膜間流路を有してなり、
上位の膜モジュールと下位の膜モジュールは、上位の膜エレメントの下端部と下位の膜エレメントの上端部とを嵌合させて配置することを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
被処理水中に浸漬して上下に積層配置する複数の膜モジュールと、最下段の膜モジュールの下方に配置する散気装置を備え、
各膜モジュールは、分離膜の膜面を上下方向に向けて配置する複数の膜エレメントを有し、かつ隣接し合う膜エレメントの相互の膜面間に所定間隙の膜間流路を有してなり、
上位の膜モジュールの膜エレメントと下位の膜モジュールの膜エレメントの間に板材を有し、隣接し合う板材の相互間に上下の膜間流路に対応するつなぎ流路を有し、
上位の膜モジュールの膜エレメントと板材とを膜間流路の所定間隙より小さい距離内に近接させて配置し、下位の膜モジュールの膜エレメントと板材とを膜間流路の所定間隙より小さい距離内に近接させて配置することを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浸漬型膜分離装置に関し、分離膜の膜面を洗浄する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分離膜を有する膜カートリッジを上下に多段に配置する技術として、例えば特許文献1に記載するものがある。
これは、図11から図12に示すように、複数の膜ケースユニット(本発明の膜モジュールに相当)1の相互間に間隔ケース2を配置して複数の膜ケースユニット1を多段に配置するものである。膜ケースユニット1は上下が開口した膜ケース3の内部に複数の平板状膜カートリッジ4を有しており、平板状膜カートリッジ4は、その膜面を鉛直方向にし、かつ膜面間に一定間隙をおいて配列してある。最下段の膜ケースユニット1の下方には散気装置5を内設した散気ケース6を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−271452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成では、膜ケースユニット1の間に間隔ケース2が介在し、例えば250〜500mmの高さを有する間隔ケース2を配置して上下の膜ケース3の間に十分な間隔を確保することで、図12に示すように、気液混相の上向流を構成する気泡流7が間隔ケース2の開放空間で一旦拡散して気泡分布が均一化し、その後に気泡流7が上方の膜ケース3の膜カートリッジ4の間の間隙に均等に流入する。これによって、膜分離装置全体として気液混相の上向流が均一に分散して流れる状態を確保し、ケーキ層の局所堆積およびそれによる膜間閉塞を防止している。
【0005】
たしかに、上方の膜ケースと下方の膜ケースの間の間隙が不適切な距離であると、間隔ケース内での拡散が不十分となる。しかしながら、間隔ケースを高くする場合にはその分だけ装置高さが増加し、槽の水深の増加に伴って必要な曝気動力が増加する問題があり、また、より一層の装置のコンパクト化や膜充填密度の増大化を考えるうえで、上下の膜カートリッジ間に適切な距離を設定する必要がある。
【0006】
本発明者らは、気液混相の上向流が上方の膜ケースと下方の膜ケースの間の間隙において膜エレメントの配列方向に移動することに起因して上方の膜ケースと下方の膜ケースとにおいて流れに違いが生じることを抑制するには、上方の膜ケースと下方の膜ケースの間の間隙に必ずしも長い距離を必要としないことを、自ら行なった試行において知見として得た。そして、この知見に基づいて、逆に上方の膜ケースと下方の膜ケースの間の間隙を極端に短くすることにおいても、上方の膜ケースと下方の膜ケースとにおいて流れに違いが生じることを抑制できる浸漬型膜分離装置に想到した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の浸漬型膜分離装置は、被処理水中に浸漬して上下に積層配置する複数の膜モジュールと、最下段の膜モジュールの下方に配置する散気装置を備え、各膜モジュールは、分離膜の膜面を上下方向に向けて配置する複数の膜エレメントを有し、かつ隣接し合う膜エレメントの相互の膜面間に所定間隙の膜間流路を有してなり、上位の膜モジュールと下位の膜モジュールは、上位の膜エレメントの下端部と下位の膜エレメントの上端部とを嵌合させて配置することを特徴とする。
【0009】
本発明の浸漬型膜分離装置は、被処理水中に浸漬して上下に積層配置する複数の膜モジュールと、最下段の膜モジュールの下方に配置する散気装置を備え、
各膜モジュールは、分離膜の膜面を上下方向に向けて配置する複数の膜エレメントを有し、かつ隣接し合う膜エレメントの相互の膜面間に所定間隙の膜間流路を有してなり、
上位の膜モジュールの膜エレメントと下位の膜モジュールの膜エレメントの間に板材を有し、隣接し合う板材の相互間に上下の膜間流路に対応するつなぎ流路を有し、
上位の膜モジュールの膜エレメントと板材とを膜間流路の所定間隙より小さい距離内に近接させて配置し、下位の膜モジュールの膜エレメントと板材とを膜間流路の所定間隙より小さい距離内に近接させて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、生物処理を行う処理槽の被処理水中に浸漬型膜分離装置を浸漬設置した状態において、散気装置から散気する空気によって気液混相の気泡流からなる上向流を生じさせ、上向流を下位の膜モジュールの膜エレメント間に供給する。この上向流は下位の膜モジュールから上位の膜モジュールへ順次に流入し、膜エレメント間の膜間流路を通過し、各膜エレメントが分離膜の膜面に沿って流れる被処理水をクロスフロー濾過する。
【0011】
上向流が下位の膜モジュールから上位の膜モジュールへ流入するのに際して、上位の膜エレメントと下位の膜エレメントとが膜間流路の所定間隙より小さい距離内に近接していることで、下位の膜間流路を流れる上向流が上位の直上にない膜間流路へ流入することを抑制しながら、下位の膜間流路を流れる上向流が直上に位置する上位の膜間流路へスムーズに流れるので、気液混相の上向流が上位の膜モジュールと下位の膜モジュールとにおいて相違した状態で流れることを抑制できる。
【0012】
上位の膜エレメントと下位の膜エレメントの間に配置する板材で、上下の膜間流路に対応するつなぎ流路を形成することで、上向流の流れがスムーズとなる。
あるいは、上位の膜エレメントの下端部と下位の膜エレメントの上端部とをつき合わせて配置することで、下位の膜間流路と上位の膜間流路が連続した形状をなし、上向流の流れがスムーズとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1における浸漬型膜分離装置を示す断面図
図2】同実施例1における浸漬型膜分離装置を示す縦断面図
図3】本発明の実施例2における浸漬型膜分離装置を示す断面図
図4】同実施例2における浸漬型膜分離装置を示す縦断面図
図5】本発明の実施例1における要部を示す模式図
図6】本発明の実施例2における要部を示す模式図
図7】本発明の実施例3における要部を示す模式図
図8】本発明の効果を示す曝気流速の分布図
図9】比較対照の構成における効果を示す曝気流速の分布図
図10】従来の浸漬型膜分離装置を示す断面図
図11】同浸漬型膜分離装置を示す縦断面図
図12】同浸漬型膜分離装置の要部を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施例1
図1および図2において、浸漬型膜分離装置は、生物処理槽(図示省略)の被処理水中に浸漬して配置するものであり、複数の膜モジュール11を上下に積層配置しており、最下段の膜モジュール11の下方に散気装置12を備える散気ケース13を配置している。
【0015】
各膜モジュール11は、膜ケース14の内部に複数の膜エレメント15を充填したものである。膜エレメント15は板状もしくはシート状をなし、分離膜16の膜面を上下方向に向けて配置してあり、膜モジュール11は隣接し合う膜エレメント15の相互の膜面間に所定間隙L1の膜間流路17を有している。
【0016】
上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11は、双方を上下に積層した状態において上位の膜エレメント15と下位の膜エレメント15とが膜間流路17の所定間隙L1より小さい距離L2を隔てる位置に近接して配置される構造をなす。
【0017】
上記した構成において、生物処理を行う処理槽の被処理水中に浸漬型膜分離装置を浸漬設置した状態において、散気装置12から散気する空気によって気液混相の気泡流からなる上向流を生じさせ、上向流を下位の膜モジュールの膜エレメント間に供給する。この上向流は下位の膜モジュールから上位の膜モジュールへ順次に流入し、膜エレメント間の膜間流路を通過し、各膜エレメントが分離膜の膜面に沿って流れる被処理水をクロスフロー濾過する。
【0018】
上向流が下位の膜モジュール11から上位の膜モジュール11へ流入するのに際して、上位の膜エレメント15と下位の膜エレメント15とが膜間流路17の所定間隙L1より小さい距離L2内に近接していることで、図5に示すように、下位の膜間流路17を流れる上向流の気泡流18が上位の直上にない膜間流路17へ流入することを抑制しながら、下位の膜間流路17を流れる上向流が直上に位置する上位の膜間流路17へスムーズに流れ、気液混相の上向流が上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11とにおいて相違した状態で流れることを抑制できる。
【0019】
図8は本実施の形態における上位の膜モジュール11から流れ出る上向流の曝気流速の分布を示すもので、L1:7mm、L2:3mmに設定したものであり、図9は比較対照のための構造における上位の膜モジュール11から流れ出る上向流の曝気流速の分布を示すものである。比較対照のための構造は、上位の膜エレメント15と下位の膜エレメント15とが膜間流路17の所定間隙L1:7mmより大きく、ここでは25mmに離間して配置されたものである。
【0020】
ところで、浸漬型膜分離装置の周囲に十分な空間が存在する場合には、膜モジュールを流れる上向流がスムーズに下向流に反転して浸漬型膜分離装置の周囲を流れることで、後続の上向流がスムーズに流れるので、気液混相の上向流が上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11とにおいて相違した状態で流れることが抑制される。しかしながら、浸漬型膜分離装置の周囲の空間に余裕がない場合、例えば浸漬型膜分離装置を生物処理槽の壁面に近接して配置する場合には、浸漬型膜分離装置を生物処理槽の壁面との間が隘路となって下向流の流入を阻害するので、後続の上向流がスムーズに流れず、気液混相の上向流が上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11とにおいて相違した状態で流れることが起こり易くなる。
【0021】
図8および図9に示すものは、浸漬型膜分離装置を生物処理槽の壁面に近接して配置した状態の結果を示しており、困難な状況下で両者の作用効果の相違が顕著に表れている。
すなわち、図8に示すように、本実施の形態では曝気速度が概ね均一となり、気液混相の上向流が偏在せずに流れる様子が分かる。一方、図9に示すように、比較対照の構造では一側の曝気速度が極端に低下する傾向を示し、気液混相の上向流が偏在する様子が分かる。よって、本発明の有効性が明らかである。
実施例2
本発明は、図7に示す構造とすることも可能である。すなわち、上位の膜エレメント15の下端部と下位の膜エレメント15の上端部とをつき合わせて上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11を配置するものである。
【0022】
上位の膜エレメント15の下端部に凸状部31を形成し、下位の膜エレメント15の上端部に凹状部32を形成し、凸状部31と凹状部32が嵌合することで、上位の膜エレメント15と下位の膜エレメント15があたかも1枚の膜エレメントのように連続する構造をなす。
【0023】
この構成によれば、上向流の気泡流18の流れがスムーズとなる。なお、浸漬型膜分離装置では、気泡流18が膜面に沿って流れることで膜エレメント15が振動する。そのため、本実施例では膜エレメント15の相互の接触による磨耗や破損を防止するために、膜エレメント15が相互に当接もしくは接触する箇所にゴム等の耐磨耗性または衝撃吸収性の物質を介在させることが好ましい。
実施例3
本発明は、図3および図4に示す構造とすることも可能である。すなわち、上位の膜エレメント15と下位の膜エレメント15の間に板材20を配置し、隣接し合う板材20の相互間に上下の膜間流路17に対応するつなぎ流路21を形成する。
【0024】
このとき、上位の膜モジュール11の膜エレメント15と板材20とを膜間流路の所定間隙L1より小さい距離L2を隔てる位置に近接させて配置し、下位の膜モジュール11の膜エレメント15と板材20とを膜間流路の所定間隙L1より小さい距離L2を隔てる位置に近接させて配置する。
【0025】
この構成によれば、図6に示すように、上位の膜モジュール11と下位の膜モジュール11が上下の膜間流路17に対応するつなぎ流路21でつながることで、上向流の気泡流18の流れがスムーズとなる。
【0026】
実施例1および実施例3においては、膜エレメント15の相互間または膜エレメント15と板材20との間に距離L2が存在することで、膜エレメント15の相互の接触や膜エレメント15と板材20との接触による磨耗や破損を防止できる。
【符号の説明】
【0027】
11 膜モジュール
12 散気装置
13 散気ケース
14 膜ケース
15 膜エレメント
16 分離膜
17 膜間流路
18 気泡流
20 板材
21 つなぎ流路
31 凸状部
32 凹状部
L1 所定間隙
L2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図10
図11
図12
図8
図9