特許第5935984号(P5935984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935984
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】可搬式作業台
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/34 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   E04G1/34 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-79133(P2012-79133)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209803(P2013-209803A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】安倍 倫史
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−226149(JP,A)
【文献】 特開2005−232708(JP,A)
【文献】 特開2011−169069(JP,A)
【文献】 特開2004−257146(JP,A)
【文献】 特開2005−290763(JP,A)
【文献】 特開2008−255586(JP,A)
【文献】 特開2012−193504(JP,A)
【文献】 米国特許第05080192(US,A)
【文献】 米国特許第06076635(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形板状の作業床と、
前記作業床の相対する一対の短辺部からそれぞれ下方に向けて延出し、前記作業床を所定の高さ位置において支持可能な梯子状の脚部と、
前記作業床のコーナー部、又は、その近傍部位から上方に向けて突出する手掛かり棒とを備える可搬式作業台において、
前記作業床の各短辺部の両端部のうち少なくとも一方の端部に対応して設けられた前記手掛かり棒には、その上端部、又は、上端部近傍部位から、前記作業床の短辺部に沿って、一端部側が支持され他端部側が前記作業床の上方エリアの空中に突出する報知バーが設けられ、
前記報知バーは、突出方向の少なくとも一部が弾性を有し、前記作業床と前記脚部との間を昇降する作業者に圧接されることで、該作業者の通行を許容するようにして撓むとともに、該作業者が離間することで、元の前記作業床の短辺部に沿って延びる状態に復帰することを特徴とする可搬式作業台。
【請求項2】
前記手掛かり棒は前記作業床の4隅、又は、その近傍部位から上方に向けて突出し、
前記報知バーは、前記作業床の各短辺部の両端部に対応して設けられる一対の前記手掛かり棒からそれぞれ前記作業床の上方エリアに突出するとともに、当該一対の手掛かり棒は、前記作業床の短辺部に沿った方向において、互いに離間していることを特徴とする請求項1に記載の可搬式作業台。
【請求項3】
前記報知バーの少なくとも突出方向先端部は、前記作業床の短辺部よりも前記作業床の長手方向中央部側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬式作業台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場等において、比較的高所への作業に際して用いられる可搬式作業台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事現場等において、天井や天井裏等の比較的高所への作業に際して、略矩形板状の作業床と、作業床の相対する一対の短辺部からそれぞれ下方に延出し、作業床を所定の高さ位置において支持可能な梯子状の脚部とを備える可搬式作業台を用いることが知られている。また、可搬式作業台には、作業床の4隅近傍から上方に延出する手掛かり棒を設け、作業床と脚部との間の昇降に際しての安全性を高めたものがある。さらに、作業床の各短辺部の両端部に対応して設けられた一対の手掛かり棒の上端部間に架け渡すようにして端部感知バーを設け、作業床で作業する作業者は、端部感知バーに接触することで、作業床の端部近傍に位置していることを認知することができるといった技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−169069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている端部感知バーを使用するためには、一対の手掛かり棒の一方から他方にかけて端部感知バーを架け渡す作業を必要とし、作業床と脚部との間の昇降に際しては、端部感知バーの横架状態を解除する作業を必要としてしまう。従って、作業床と脚部との間をスムースに昇降することが困難になってしまう上、かかる作業の煩わしさから、或いは、失念してしまうことによって、作業者に端部感知バーの使用を徹底してもらえないといった事態を招くことも懸念される。
【0005】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、安全性の向上を図りつつ、スムースな昇降をも図ることのできる可搬式作業台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.略矩形板状の作業床と、
前記作業床の相対する一対の短辺部からそれぞれ下方に向けて延出し、前記作業床を所定の高さ位置において支持可能な梯子状の脚部と、
前記作業床のコーナー部、又は、その近傍部位から上方に向けて突出する手掛かり棒とを備える可搬式作業台において、
前記作業床の各短辺部の両端部のうち少なくとも一方の端部に対応して設けられた前記手掛かり棒には、その上端部、又は、上端部近傍部位から、前記作業床の短辺部に沿って、一端部側が支持され他端部側が前記作業床の上方エリアの空中に突出する報知バーが設けられ、
前記報知バーは、突出方向の少なくとも一部が弾性を有し、前記作業床と前記脚部との間を昇降する作業者に圧接されることで、該作業者の通行を許容するようにして撓むとともに、該作業者が離間することで、元の前記作業床の短辺部に沿って延びる状態に復帰することを特徴とする可搬式作業台。
【0008】
手段1によれば、作業床の各短辺部の両端部のうち少なくとも一方の端部に対応して設けられた手掛かり棒の上端部、又は、上端部近傍部位には、作業床の上方エリアに突出する報知バーが設けられている。このため、作業床上で作業する作業者は、作業床の短辺部近傍に位置することで、体の一部が報知バーに接触することとなり、作業床を目視せずとも、自身が作業床の短辺部近傍に位置していることを把握することができる。従って、天井や天井裏等の比較的高所への作業を、作業床の長手方向に沿って移動しながら行う際に、作業者が知らぬ間に作業床の短辺部を通り越して、作業床を踏み外してしまうといった事態を回避することができる。
【0009】
また、報知バーは、突出方向の少なくとも一部が弾性を有しており、作業床と脚部との間を昇降する作業者に圧接されることで、該作業者の通行を許容するようにして追従的に撓むとともに、該作業者が離間することで、元の作業床の短辺部に沿って延びる状態に復帰することとなる。このため、作業者は、報知バーが設けられていない場合と同様にして、作業床と脚部との間の昇降動作を行うだけで、特段の作業を強いられることなく、報知バーを押し退けて作業床の短辺部を通行することができる。さらに、作業者が作業床の短辺部を通過した後は、報知バーが自身の弾性力によって元の状態に復帰するため、作業者が報知バーを元の機能する状態に復帰させるための作業を行う必要がない。従って、上記のように安全性を確保しつつ、作業床と脚部との間を比較的スムースに昇降可能とすることができる。
【0010】
手段2.前記手掛かり棒は前記作業床の4隅、又は、その近傍部位から上方に向けて突出し、
前記報知バーは、前記作業床の各短辺部の両端部に対応して設けられる一対の前記手掛かり棒からそれぞれ前記作業床の上方エリアに突出するとともに、当該一対の手掛かり棒は、前記作業床の短辺部に沿った方向において、互いに離間していることを特徴とする手段1に記載の可搬式作業台。
【0011】
手段2によれば、各報知バーの長さを極力短く、ひいては、極力軽くすることができる。これにより、報知バーが垂れ下がる等して作業者に位置を報知するための機能が低下してしまう、或いは、垂れ下がりを防止するべく報知バーを硬くし過ぎてしまい、報知バーを押し退けての通行が比較的困難になってしまうといった事態を抑止することができる。
【0012】
手段3.前記報知バーの少なくとも突出方向先端部は、前記作業床の短辺部よりも前記作業床の長手方向中央部側に位置していることを特徴とする手段1又は2に記載の可搬式作業台。
【0013】
手段3によれば、体の正面を作業床の一方の長辺部側に向けるとともに、肩幅以上に足を開いて作業している作業者と報知バーとが接触するよりも前に、該作業者の足が報知バーの下方を潜って作業床の短辺部よりも外方に踏み外してしまうといった事態をより確実に防止することができる。尚、報知バーは、上記のように少なくとも一部が弾性を有して追従的に変形し得るため、報知バーが作業床の短辺部よりも内側に配置されている場合であっても、作業床の短辺部を目視して把握した作業者は、報知バーを若干押し退けつつ、作業床の短辺部近傍部位まで足を運ぶことができ、報知バーに阻害されることなく、作業床の短辺部近傍部位まで足場として利用することができる。当然、このときも報知バーを手で押しやる等の必要はなく、作業床の短辺部近傍部位を足場として利用する際の作業性の低下を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】可搬式作業台の正面図である。
図2】可搬式作業台の側面図である。
図3】位置報知機構等を示す斜視図である。
図4】位置報知機構等の分解斜視図である。
図5】別の実施形態における位置報知機構等を示す斜視図である。
図6】別の実施形態における位置報知機構等を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1等に示すように、可搬式作業台1は、略矩形板状の作業床2と、作業床2の相対する一対の短辺部2aからそれぞれ下方に向けて延出し、作業床2を所定の高さ位置において支持可能な梯子状の脚部3と、作業床2の4隅に対応して上方に向けて突出する手掛かり棒4とを備えている。図2に示すように、脚部3は、一対の支柱部6と、一対の支柱部6の間に横架された複数の踏桟7とを備えている。各脚部3は、作業床2の短辺部2aに対して回動可能に連結されており、作業床2の下面側へ折り畳み可能に構成されている。
【0016】
尚、本実施形態では、可搬式作業台1の起立状態において、作業床2の下面と脚部3とのなす角度が約100度となっている。また、踏桟7の上面、及び、作業床2の上面の長手方向両端部付近には、図示しない滑り止めテープが貼着されている。さらに、図示は省略するが、作業床2の上面の長手方向両端部付近、及び、脚部3の下部には、赤色の塗装が施されている。これらの2つの策により、作業者への不注意落下の予防や注意喚起等がもたらされている。
【0017】
手掛かり棒4は、略四角筒状をなすとともに、脚部3の支柱部6の上部に対して上下にスライド可能に取付けられている。より具体的には、各脚部3の一対の支柱部6には、上部の側面から外方(脚部3の側方)に向けて突出する略筒状のスライド係止部8が設けられるとともに、手掛かり棒4が当該スライド係止部8の内側に挿通状態とされることで、手掛かり棒4が支柱部6の延在方向に沿ってスライド可能に構成されている。また、手掛かり棒4の上部及び下部にはそれぞれ側面から外方に突出するようにして取付けられた規制ねじ9が設けられている。そして、手掛かり棒4は、上側の規制ねじ9とスライド係止部8の上辺部とが当接し、手掛かり棒4の上端部が支柱部6の上端部よりも下方に位置して、全体が支柱部6と並行して延びる没入位置と、下側の規制ねじ9とスライド係止部8の下辺部とが当接し、手掛かり棒4の大部分が支柱部6の上端部、ひいては、作業床2の上面よりも上方に突出する突出位置との間で変位可能に構成されている。本実施形態では、少なくとも手掛かり棒4を没入位置と突出位置とにおいてそれぞれ保持できるように構成されている。手掛かり棒4を上方へ伸長させた際は、下側の規制ねじ9が抜け止めとして機能し、スライド係止部8の上辺に載置される図示しない手掛かり棒貫通ボルト及びそれに係合されるナットにより、手掛かり棒4がスライド係止部8内を落下することなく保持される。
【0018】
さて、図3等に示すように、本実施形態では、各脚部3に取付けられた一対の手掛かり棒4の上端部に対してそれぞれ位置報知機構11が取付けられている。位置報知機構11は、下方に開口する略四角箱状の連結部12と、連結部12の上面に溶接固定される取付板13と、取付板13に対して回転可能に取付けられる報知バー14とを備えている。尚、本実施形態では、4つの手掛かり棒4にそれぞれ取付けられる4つの位置報知機構11は、いずれも同じものとなっている。
【0019】
図4に示すように、連結部12の内寸は、手掛かり棒4の上端部の外寸よりも大きく構成されている。さらに、連結部12の相対する一対の側壁部には、その厚み方向に貫通する孔がそれぞれ形成されているとともに、該孔に合わせてそれぞれナット15が溶接固定されている。そして、連結部12を手掛かり棒4の上端部に被せてから、一対のナット15に対してそれぞれボルト16を螺着し、一対のボルト16によって手掛かり棒4を挟持させることによって、位置報知機構11が手掛かり棒4に取付固定されている。
【0020】
取付板13は、連結部12の上面の一辺部から外方に張り出す張り出し部18を備えており、位置報知機構11は、張り出し部18が脚部3の側方に突出する向きで手掛かり棒4に取付けられる。さらに、張り出し部18は、張り出し方向先端側の辺部の中央部において切欠き部19が形成されることで、平面視略コ字状をなしている。また、張り出し部18の上面側には、切欠き部19を挟んで一対で設けられ、略円筒状をなす軸受21が溶接固定されている。さらに、各軸受21の内側には、円筒状のスリーブ22(図4参照)が回転自在に設置されている。
【0021】
報知バー14は、略四角柱状をなし、その全体が弾性を有するゴム材料により構成されている。また、報知バー14の一端部側には、厚み方向に貫通する軸孔24(図4参照)が形成されている。そして、報知バー14の軸孔24が形成された一端部側を一対の軸受21の間に位置させるとともに、一対の軸孔24にそれぞれ挿入されたスリーブ22、及び、報知バー14の軸孔24に対し、一端部側に頭部が設けられ、他端部側がねじ切りされている軸ピン26を挿通させ、軸ピン26の挿通先の端部にナット27を固定する。これにより、報知バー14の端部にスリーブ22及び軸ピン26が取付けられ、報知バー14は、スリーブ22を介して軸ピン26に軸支されることとなる。
【0022】
以上のようにして、報知バー14は、手掛かり棒4に対して、手掛かり棒4の延在方向、及び、作業床2の短辺部2aの延在方向に対して直交する方向を回転軸線方向として、回転可能に取付けられている。本実施形態では、報知バー14は、軸ピン26から脚部3の内方(脚部3の横幅方向中央側)に向けて、作業床2の短辺部2aに沿ってほぼ水平に延びる機能位置と、軸ピン26から取付板13の切欠き部19を介して下方に延び、手掛かり棒4の外面に並設される収納位置(図3の二点鎖線参照)との間を回動可能に構成されている。尚、本実施形態では、報知バー14を挟む一対のスリーブ22が、軸ピン26及びナット27によって加締められることで、報知バー14の端部に固定されることとしたが、軸ピン26は軸受21に対して回転不可能に固定され、報知バー14が軸ピン26に対して回転可能に軸支されるように構成してもよい。
【0023】
また、機能位置にある報知バー14は、下面が取付板13に支持されるとともに、大部分が取付板13から脚部3の内方に突出して、作業床2の上方エリアに位置している。本実施形態では、機能位置にある報知バー14の取付板13からの突出長は約200mmとなっている。さらに、作業床2の各短辺部2aに対応して設けられる一対の位置報知機構11の機能位置とされた報知バー14間の距離が約150mmとなっている。細身の作業者で身体の側部が報知バー14に面する場合、身体の足の太ももがレベル的に報知バー14に当たることになっても、150mmの報知バー14の間隔ならば必ず服を介して少なくともどちらかの報知バー14に接触し、報知バー14との接触を感知することができる。また、上記のように、脚部3は可搬式作業台1の起立状態において作業床2の下面に対して約100度の角度をなし、かつ、手掛かり棒4は脚部3の支柱部6の延在方向に沿って作業床2よりも上方に延出している。このため、手掛かり棒4の上端部に設けられた位置報知機構11の報知バー14は、作業床2の短辺部2aよりも作業床2の長手方向中央部側に位置している。
【0024】
以上のように構成された可搬式作業台1の作業床2に載って作業を行う作業者は、作業床2の短辺部2a近傍に位置することで、体の一部が報知バー14に接触することとなり、接触に気付くと、作業床2の短辺部2aから足を踏み外さないように注意して作業を行うこととなる。また、報知バー14は弾性を有して追従的に変形可能に構成されているため、作業床2での作業を終えて作業床2を降りる作業者は、報知バー14を収納位置へと変位させることなく、機能位置にある報知バー14をそのまま体で押し退けて作業床2の短辺部2aを通過し、脚部3を降りることとなる。さらに、再度、作業床2上での作業を行うこととなった作業者は、報知バー14を収納位置に変位させてから機能位置に戻すといった作業を行わなくても、機能位置にある報知バー14をそのまま体で押し退けて作業床2に上るとともに、作業者が作業床2の短辺部2aを通過する際に追従変形させられた報知バー14は、作業者から離間すると、自身の弾性力によって機能位置にて静止した状態に復帰することとなる。
【0025】
尚、報知バー14は、作業者に当接すると撓みながら、その撓み量に従って大きくなる弾性力により作業者の押し退け力に抗する。例えば、報知バー14が仮に殆ど撓まないバーであって、かつ、軸ピン26部分にヒンジがあると仮定した場合、そのヒンジ部分において、押し退け力に抗する力としての回転トルクが発生すると考えると、作業者の押し退け力が報知バー14の先端部に掛かるものとして、回転トルクは、5Nm〜50Nmの範囲であることが望ましい。
【0026】
以上詳述したように、本実施形態によれば、作業床2の各短辺部2aの両端部に対応して設けられた一対の手掛かり棒4の上端部には、それぞれ作業床2の上方エリアに突出する報知バー14が設けられている。このため、作業床2上で作業する作業者は、機能位置にある報知バー14と接触することにより、作業床2を目視しなくても、自身が作業床2の短辺部2a近傍に位置していることを認識することができる。従って、天井や天井裏等の比較的高所への作業を、作業床2の長手方向に沿って移動しながら行う際に、作業者が知らぬ間に作業床2の短辺部2aを通り越して、作業床2を踏み外してしまうといった事態を回避することができる。
【0027】
また、報知バー14は弾性を有するゴム材料によって構成されており、作業床2と脚部3との間を昇降する作業者に圧接されることで、該作業者の通行を許容するようにして追従的に撓むとともに、該作業者が離間することで、元の作業床2の短辺部2aに沿って延びる状態(機能位置)に復帰することとなる。このため、作業者は、報知バー14が設けられていない場合と同様にして、作業床2と脚部3との間の昇降動作を行うだけで、特段の作業を強いられることなく、報知バー14を押し退けて作業床2の短辺部2aを通行することができる。さらに、作業者が作業床2の短辺部2aを通過した後は、報知バー14が自身の弾性力によって元の状態に復帰するため、作業者が報知バー14を機能位置に復帰させるための作業を行う必要がない。従って、上記のように安全性を確保しつつ、作業床2と脚部3との間を比較的スムースに昇降可能とすることができる。
【0028】
さらに、報知バー14は、作業床2の各短辺部2aの両端部に対応して設けられる一対の手掛かり棒4からそれぞれ作業床2の上方エリアに突出するとともに、当該一対の手掛かり棒4は、作業床2の短辺部2aに沿った方向において、互いに離間して設けられている。このため、各報知バー14の長さを極力短く、ひいては、極力軽くすることができる。これにより、報知バー14が垂れ下がる等して作業者に位置を報知するための機能が低下してしまう、或いは、垂れ下がりを防止するべく報知バー14を硬くし過ぎてしまい、報知バー14を押し退けての通行が比較的困難になってしまうといった事態を抑止することができる。加えて、一対の報知バー14の先端部間が短辺部2aの延在方向において離間していることから、作業者が作業床2から降りる際に、作業者に押し退けられて弾性変形させられた後、機能位置において静止するまで振動することとなる報知バー14が作業者の顔等に接触してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、一対の報知バー14の先端部間が短辺部2aの延在方向において離間していることによって、作業者が短辺部2aの中央部を通行した場合の報知バー14の撓み量が小さくなることから、報知バー14の劣化等を極力抑制することができる。
【0029】
また、報知バー14は、作業床2の短辺部2aよりも作業床2の長手方向中央部側に位置している。このため、体の正面を作業床2の一方の長辺部側に向けるとともに、肩幅以上に足を開いて作業している作業者と報知バー14とが接触するよりも前に、該作業者の足が報知バー14の下方を潜って作業床2の短辺部2aよりも外方に踏み外してしまうといった事態をより確実に防止することができる。尚、報知バー14は弾性を有して追従的に変形し得るため、報知バー14が作業床2の短辺部2aよりも内側に配置されていても、作業床2の短辺部2aを目視して把握した作業者は、報知バー14を若干押し退けつつ、作業床2の短辺部2a近傍部位まで足を運ぶことができ、報知バー14に阻害されることなく、作業床2の短辺部2a近傍部位まで足場として利用することができる。当然、このときも報知バー14を手で押しやる等の必要はなく、作業床2の短辺部2a近傍部位を足場として利用する際の作業性の低下を招くこともない。
【0030】
加えて、本実施形態では、報知バー14が機能位置と収容位置との間で緊急回避的に回動変位可能に構成されている。このため、作業床2の短辺部2a上を介して作業床2上に対し比較的大きな荷物を上げ下げする際の作業性を向上させることができる。さらには、手掛かり棒4を没入位置としたり、可搬式作業台1を折り畳んだりする場合に、報知バー14をより好適に収納することができる。
【0031】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0032】
(a)上記実施形態では、作業床2の短辺部2aの両端部にそれぞれ対応して設けられた一対の手掛かり棒4の両方に位置報知機構11が設けられているが、少なくとも一方に設けられていればよい。また、上記実施形態では、手掛かり棒4が作業床2の4隅に対応して設けられているが、作業床2の各短辺部2aの両端部のうち少なくとも一方に設けられていればよい。但し、位置報知機構11を短辺部2aの一方の端部側だけに設ける場合には、報知バー14を比較的長く構成して、取付板13から比較的長い距離を張り出させる必要がある。この場合、報知バー14が垂れ下がったり、或いは、報知バー14が硬くなり過ぎたりするおそれがあるため、上記実施形態のように、位置報知機構11を短辺部2aの両端部に対応して設けることが望ましい。
【0033】
(b)上記実施形態において、収納位置にある報知バー14を検知するバー検知手段(センサやスイッチ等)と、報知音発生手段とを設け、可搬式作業台1を起立状態としてからバー検知手段によって報知バー14が検知されている間は報知音発生手段によって報知音が発生されるように構成してもよい。この場合、報知バー14の使用がより徹底されることとなる。尚、作業床2の短辺部2a近傍に位置した作業者をセンサで検知して報知音を発生させる構成も考えられるが、騒音が大きな工事現場等では報知音を聴き取れないおそれがあるため、上記実施形態のように、報知バー14を設けて接触によって作業者に報知を行うことが望ましい。
【0034】
(c)さらに、上記実施形態では、報知バー14が機能位置と収納位置との間を変位可能に構成されているが、作業床2の上方エリアに突出した位置のままとなるように構成してもよい。この場合、可搬式作業台1を使用する場合には、報知バー14が必ず使用されることとなり、より安全性を確保することができる。
【0035】
尚、上記実施形態では、機能位置にある報知バー14がほぼ水平に延びているが、上下に傾いていてもよい。また、上記実施形態では、報知バー14が作業床2の短辺部2aに沿って延びているとあるが、必ずしも平面視した場合に平行にならなくてもよく、例えば、作業床2の長手方向中央側に向けて傾いていてもよい。この場合、報知バー14の先端部をより作業床2の長手方向中央側として作業者により早い段階で作業床2の短辺部2aを知らせるとともに、作業者が作業床2から降りる際に弾性変形させられたことで振動する報知バー14が作業者の顔に当たってしまうといった事態を抑制することができる。
【0036】
(d)上記実施形態では、手掛かり棒4が脚部3の長手方向に沿って相対的にスライド可能に構成されているが、例えば、脚部3の上端付近を回転中心として、手掛かり棒4を回転可能に構成したり、手掛かり棒4をボルト等の取付部材を用いて脚部3に相対変位不可能に取付けたりしてもよい。加えて、手掛かり棒4を作業床2に対して取付けることも可能である。但し、上記実施形態ように、手掛かり棒4を脚部3の長手方向に沿ってスライド可能に取付ける場合には、手掛かり棒4の変位に際して報知バー14がばたついてしまうといった事態を回避することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、手掛かり棒4は脚部3の長手方向に沿って作業床2の長手方向中央部側に傾斜して延びているが、手掛かり棒4の延在方向と脚部3の延在方向とが異なっていてもよく、例えば、手掛かり棒4を鉛直に延在させてもよい。但し、作業者が足を広げて作業をした場合に作業者の足が報知バー14の下方を通過して作業床2を踏み外さないように、報知バー14の位置は、作業床2の短辺部2aよりも作業床2の長手方向中央部側に位置することが望ましい。
【0038】
(e)上記実施形態において、作業床2の各長辺部に沿って延び、作業床2の長辺部の両端部に対応して設けられる一対の手掛かり棒4の上部間を連結する手摺りを設けることとしてもよい。また、手掛かり棒4の上端部に対して手摺り等が取付けられる場合等においては、手掛かり棒4の上端部近傍に位置報知機構11を取付可能に構成したり、手掛かり棒4の上端部に位置報知機構11及び手摺りの両方を取付可能に構成したりすることも可能である。例えば、手掛かり棒4の上端部に取付けられる取付部と、手摺りの一端部を係止する手摺り係止部と、位置報知機構11が取付けられる被取付部とを備える中継部材を設けたり、位置報知機構11の取付板13に対して、手摺りの一端部を係止する手摺り係止部を設けたりすることとしてもよい。尚、手摺りが設けられる場合には、報知バー14を手摺りに対して取付可能に構成してもよい。
【0039】
(f)上記実施形態において、位置報知機構11を手掛かり棒4に取付けるための構成は特に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、取付板13の下面から下方に突出し、先端部に係止爪42を有する一対の係止片41を設けるとともに、一般に手掛かり棒4の上端部に被せられているキャップを取り外し、四角筒状の手掛かり棒4の内側に一対の係止片41を挿入させ、前記キャップの内側面に形成されている爪部を係止するために手掛かり棒4に形成されている係止孔44に対して係止爪42を係止させることで、位置報知機構11を取付けてもよい。
【0040】
尚、上記実施形態のように、下方に開口する略箱状の連結部12を手掛かり棒4の上端部に被せる構成を採用することで、手掛かり棒4の上端部に被せられているキャップを取外す必要がない。
【0041】
(g)上記実施形態では、報知バー14の全体がゴムによって構成されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、報知バー14の長手方向の少なくとも一部が弾性を有するように構成されていればよい。例えば、図6に示すように、報知バー14を、コイルばね51と、コイルばね51の一端部側に設けられたゴム部52とにより構成するとともに、当該コイルばね51の前記ゴム部52が設けられた側とは反対側を、取付板13に固定されたエルボ管状の固定部53に片持ち支持させるように構成してもよい。
【0042】
尚、少なくとも報知バー14の先端部の表面は比較的柔らかい材料で構成されることが望ましい。この場合、作業者が作業床2の短辺部2aを通過する際に弾性変形させられたことに起因して振動する報知バー14が作業者に衝突したとしても、作業者への衝撃を低減させることができる。一方、報知バー14のうち、取付板13の上面に当接して支持される部位や軸孔24が形成される部位は、擦れて削れることを抑制するべく、比較的硬質な材料で構成されることとしてもよい。但し、報知バー14をその長手方向において弾性を有する素材(ゴムやばね等)で構成される弾性部と、それ程弾性のない素材(例えば硬質樹脂等)で構成される否弾性部とによって構成する場合には、弾性部への負担を極力軽減しつつ、先端側を比較的大きく変形させることができるように、少なくとも報知バー14のうち長手方向中央部よりも付根側(軸ピン24側)の部位の一部が弾性部によって構成されることが望ましい。
【0043】
また、作業者の通行に際して報知バー14が作業者に引っ掛かってしまうといった事態を抑止するため、報知バー14の表面は比較的摺動性の高い材料(摩擦が小さい)であることが望ましい。さらに、報知バー14は極力軽い方が望ましく、例えば、報知バー14を中空状(筒状、或いは、下方に開口するとともに、側壁部間を連結する補強リブを所々に設ける)に構成してもよい。
【0044】
(h)上記実施形態において、報知バー14の(先端の)高さ位置を調節可能に構成してもよい。例えば、報知バー14の角度を保ったまま上下にスライド可能に構成したり、報知バー14の角度を変更可能に構成したりするとともに、報知バー14を所望の高さ(角度)で保持可能に構成してもよい。この場合、報知バー14の高さを作業者の身長等に適した高さに調節することができ、例えば、作業者が工具袋等を腰に装着する等していた場合に、報知バー14の高さが工具袋等を避けた高さ位置となるように設定することもできる。
【0045】
(i)上記実施形態において、1つの手掛かり棒4に対して複数の報知バー14を上下に並ぶようにして設けることとしてもよい。また、作業床2の短辺部2aの両端部に対応して設けられる一対の報知バー14の高さを変えたり、傾きを変えたりすることとしてもよい。これらの構成を採用する場合、報知バー14が、作業者に対して、作業着のポケットやベルト等の接触を感知し難い部位にだけ接触してしまうといった事態を防止することができ、報知バー14が作業者に触れたことをより確実に認識させることができる。
【0046】
さらに、上記実施形態では、短辺部2aの両端部に対応して設けられた一対の報知バー14の先端部同士が短辺部2aに沿った方向において互いに離間するように構成されているが、略接触していてもよいし、一部重なっていてもよい。但し、報知バー14を極力短くして、報知バー14を硬くしなくても、報知バー14の垂れ下がりを抑止しつつ、短辺部2aを通行する作業者に押圧されてスムースに追従変形可能とするといった観点からすると、作業者が報知バー14に触れずに短辺部2aを通行してしまうといった事態が生じないように考慮しつつ、一対の報知バー14の先端部間を短辺部2aの長手方向において離間させることが望ましい。尚、作業者が横向き(肩幅の向きが作業床2の長手方向に一致するような向き)で報知バー14に触れることなく通過してしまうといった事態を回避するべく、一対の報知バー14の先端部間の間隔は300mm以下とするのが望ましく、200mm以下とするのがより望ましく、さらには、150mm以下とするのが望ましい。
【0047】
(j)上記実施形態において、取付板13の上面から上方に向けて突出し、作業者の作業床2への昇降に際して追従変形させられる報知バー14の付根側(軸ピン26側)の変形量を制限する付根側変形量制限凸部を設けることとしてもよい。この場合、報知バー14の付根側の変形を抑制することができ、報知バー14のうち、軸孔24の周縁部や、軸受21との接触部位等の損傷や劣化等を抑制することができる。
【0048】
また、上記実施形態では特に言及していないが、報知バー14を機能位置とした状態のまま、手掛かり棒4を没入位置に変位させる場合に、報知バー14の下辺部が作業床2の上面に案内されて収納位置側に回転してしまうような構成であると、手掛かり棒4の上部を握って手掛かり棒4を押し下げている作業者の手を挟む等の不具合が発生するおそれがある。このため、手掛かり棒4を没入位置としても、報知バー14は作業床2よりも上方に位置するように構成したり、報知バー14が作業床2に案内されて回転するにしても、報知バー14に対してワイヤを介して連結された重りの作用によって回転が極力ゆっくりになるように(自動で安全に報知バー14を収納することができる)構成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…可搬式作業台、2…作業床、2a…短辺部、3…脚部、4…手掛かり棒、11…位置報知機構、14…報知バー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6