(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935991
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】搬送台車用カバー及びカバー付き搬送台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
B62B5/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-107189(P2012-107189)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233970(P2013-233970A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】597053038
【氏名又は名称】中村被服株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】山本 公也
(72)【発明者】
【氏名】野中 健次
(72)【発明者】
【氏名】松田 正
(72)【発明者】
【氏名】関谷 朋巳
【審査官】
藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3115738(JP,U)
【文献】
特開平11−139317(JP,A)
【文献】
特開平09−263245(JP,A)
【文献】
実開昭61−100669(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第0376857(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00 − 5/08
B65D 19/00 −19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を備えた台車本体と当該台車本体の前後両端から立設された前後一対の側枠を備えた搬送台車に、前記前後一対の側枠間の荷収納空間を覆うように装着される搬送台車用カバーであって、前記側枠の内側に沿う前後一対の側面材と、この前後一対の側面材の上端間をつなぐ天面材と、この天面材の左右両側辺に連設された左右一対の開閉面材とを備え、前記天面材は、中間位置に折り線を持たない一枚板状のものであり、前後一対の側面材は、それぞれの外側に隣接する搬送台車の側枠に対して着脱自在に取り付けられ、左右一対の開閉面材の垂直側辺と前後一対の側面材の垂直側辺との間には、この両者間を開閉するファスナーが設けられ、前記天面材に左右一対の開閉面材をそれぞれ折り畳んで重ねると共に当該天面材に一方の側面材を重ねた状態の天面材を他方の側面材の内側に重ねるように垂下させたとき、互いに重なる面材全体を垂下姿勢に保持する保持手段が設けられている、搬送台車用カバー。
【請求項2】
前記一方の側面材と前記天面材とには、当該一方の側面材を天面材に重ねた状態に保持するための係着手段が設けられている、請求項1に記載の搬送台車用カバー。
【請求項3】
前記他方の側面材は、この他方の側面材の外側に隣接する搬送台車の側枠の上端部に被せる袋状部分を上端部に備え、当該他方の側面材の両垂直側辺を搬送台車の前記側枠に締結するための緊縛具が設けられている、請求項1又は2に記載の搬送台車用カバー。
【請求項4】
前記天面材には、一枚板状態を保持させるための補強用板状体が装着されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送台車用カバー。
【請求項5】
前記保持手段は、互いに係着又は緊縛される一対の部材から成り、この一対の部材の内、一方の部材は、天面材の外側に左右一対の開閉面材を折り畳んで重ねたとき、当該左右一対の開閉面材の内外両面の内、これら各開閉面材の折り畳み状態で外側になる面のそれぞれに取り付けられている、請求項1〜4の何れか1項に記載の搬送台車用カバー。
【請求項6】
前記他方の側面材の下端には、前記台車本体の荷台上に重なる底面材が、当該他方の側面材の内側へ折り畳み自在に連設され、一方の側面材の下側辺及び左右一対の開閉面材の下側辺とこれら三下側辺に隣接する前記底面材の三側辺との間には、互いに係脱自在な係着手段が設けられている、請求項1〜5の何れか1項に記載の搬送台車用カバー。
【請求項7】
前記底面材の三側辺の内、一方の側面材の下側辺に隣接する側辺に設けられた前記係着手段は、この底面材を他方の側面材の内側に重ねるように折り畳んだ起立折り畳み姿勢を保持するために当該他方の側面材との間に設けられた係着手段を兼用している、請求項6に記載の搬送台車用カバー。
【請求項8】
異なる面材どうしを互いに係着させる前記係着手段及び保持手段は、係着手段及び保持手段ごとに異なる色に着色された部分を有する、請求項2、5、6、及び7の何れか1項に記載の搬送台車用カバー。
【請求項9】
車輪を備えた台車本体と当該台車本体の前後両端から立設された前後一対の側枠を備え、前記台車本体は、一方の側枠の内側に重なる起立姿勢と水平姿勢との間で起伏自在に軸支された荷台を備え、この荷台を起立姿勢にした状態において前記台車本体を、外側になる搬送台車の荷台が重ならない他方の側枠の内側に、内側になる搬送台車の前記他方の側枠の一部が入り込むように、水平方向入れ子式にネスティング可能に構成された搬送台車において、前記カバーの前後一対の側面材のうち、前記カバーの折り畳み状態において前記天面材が内側に重なる側の側面材は、搬送台車の前記他方の側枠の内側に装着され、前記カバーの天面材、折り畳まれた左右一対の開閉面材、及び搬送台車の前記一方の側枠の内側に位置する側面材を、搬送台車の前記他方の側枠の内側に位置する側面材の内側に互いに重ねるように折り畳まれた前記カバーが、ネスティング状態の各搬送台車における前記他方の側枠間に形成される空間内に位置するように構成されている、請求項1〜8の何れか1項に記載のカバーを備えたカバー付き搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車上の荷収納空間を覆うための搬送台車用カバーと、当該カバーを備えた搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、車輪を備え且つ荷台を構成する台車本体と、この台車本体の前後両端から立設された前後一対の側枠から成る搬送台車に、前記前後一対の側枠間の荷収納空間を覆うカバー、例えば荷収納空間の保温性(断熱性)や防塵性を高めるための折り畳み自在なカバーが装着されたカバー付き搬送台車が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−301119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の折り畳み可能なカバーの構成では、前後一対の側枠間の側面で使用時に開閉される大きな開閉面材を、折り畳み時には、通常の開閉時のように天面材の上に折り畳むのではなく、平坦な底面を形成させた紙袋を平坦に折り畳むときのように、山形の折り目を利用して前後一対の側面材間に折り畳む必要があり、カバー全体の折り畳みの手順が複雑であり、折り線が明確になるような工夫を取り入れる必要もあって、実用性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送台車用カバーを提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る搬送台車用カバーは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、車輪(8)を備えた台車本体(3)と当該台車本体(3)の前後両端から立設された前後一対の側枠(4a,4b)を備えた搬送台車(1)に、前記前後一対の側枠(4a,4b)間の荷収納空間を覆うように装着される搬送台車用カバー(2)であって、前記側枠(4a,4b)の内側に沿う前後一対の側面材(15,16)と、この前後一対の側面材(15,16)の上端間をつなぐ天面材(17)と、この天面材(17)の左右両側辺に連設された左右一対の開閉面材(18,19)とを備え、前記天面材(17)は、中間位置に折り線を持たない一枚板状のものであり、前後一対の側面材(15,16)は、それぞれの外側に隣接する搬送台車の側枠(4a,4b)に対して着脱自在に取り付けられ、左右一対の開閉面材(18,19)の垂直側辺と前後一対の側面材の垂直側辺との間には、この両者間を開閉するファスナー(20a〜20d)が設けられ、前記天面材(17)に左右一対の開閉面材(18,19)をそれぞれ折り畳んで重ねると共に当該天面材(17)に一方の側面材(15)を重ねた状態の天面材(17)を他方の側面材(16)の内側に重ねるように垂下させたとき、互いに重なる面材全体を垂下姿勢に保持する保持手段(34)が設けられた構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記一方の側面材(15)と前記天面材(17)とには、当該一方の側面材(15)を天面材(17)に重ねた状態に保持するための係着手段(31)を設けることが出来る。又、請求項3に記載のように、前記他方の側面材(16)には、この他方の側面材(16)の外側に隣接する搬送台車の側枠(4b)の上端部に被せる袋状部分(21)を上端部に設け、当該他方の側面材(16)の両垂直側辺を搬送台車の前記側枠(4b)に締結するための緊縛具(25)を設けることが出来る。
【0007】
又、請求項4に記載のように、前記天面材(17)には、一枚板状態を保持させるための補強用板状体(29)を装着することが出来る。又、一方の側面材(15)における天面材(17)に重なる領域にも、一枚板状態を保持させるための補強用板状体(30)を装着することが出来る。又、請求項5に記載のように、前記保持手段(34)は、紐状体、面ファスナー、釦、鉤ホック、スナップなどの互いに係着又は緊縛される一対の部材(23a,23b)から構成し、この一対の部材(23a,23b)の内、一方の部材(24)は、天面材(17)の外側に左右一対の開閉面材(18,19)を折り畳んで重ねたとき、当該左右一対の開閉面材(18,19)の内外両面の内、これら各開閉面材(18,19)の折り畳み状態で外側になる面のそれぞれに取り付けておくことが出来る。
【0008】
更に、請求項6に記載のように、前記他方の側面材(16)の下端には、台車本体(3)の荷台(5)上に重なる底面材(20)を、当該他方の側面材(16)の内側へ折り畳み自在に連設し、一方の側面材(15)の下側辺及び左右一対の開閉面材(18,19)の下側辺とこれら三下側辺に隣接する前記底面材(20)の三側辺との間には、面ファスナーやスナップなどの互いに係脱自在な係着手段(27)を設けることが出来る。この場合、請求項7に記載のように、前記底面材(20)の三側辺の内、一方の側面材(15)の下側辺に隣接する側辺に設けられた前記係着手段(27)は、この底面材(20)を他方の側面材(16)の内側に重ねるように折り畳んだ起立折り畳み姿勢を保持するために当該他方の側面材(16)との間に設けられた係着手段(28)を兼用させることが出来る。
【0009】
又、請求項2、5、6、及び7に記載の構成を組み合わせて実施する場合、複数の係着手段(27,28,31)及び保持手段(34)が混在する。これら各係着手段(27,28,31)及び保持手段(34)は、異なる面材どうしを互いに係着するものであって、それぞれ一対の部材から構成されるが、折り畳んでいる状態のカバー(2)を展開して組み立てる場合のことを考慮して、請求項8に記載のように、係着手段(27,28,31)及び保持手段(34)ごとに異なる色に着色された部分を有せしめることが出来る。
【0010】
本発明は又、以上のように構成されたカバーを備えた、水平方向入れ子式にネスティング可能な搬送台車も提案する。この本発明に係るカバー付き搬送台車は、請求項9に記載のように、車輪(8)を備えた台車本体(3)と当該台車本体(3)の前後両端から立設された前後一対の側枠(4a,4b)を備え、前記台車本体(3)は、一方の側枠(4a)の内側に重なる起立姿勢と水平姿勢との間で起伏自在に軸支された荷台(5)を備え、この荷台(5)を起立姿勢にした状態において前記台車本体(3)を、外側になる搬送台車(1)の荷台(5)が重ならない他方の側枠(4b)の内側に、内側になる搬送台車(1)の前記他方の側枠(4b)の一部が入り込むように、水平方向入れ子式にネスティング可能に構成された搬送台車(1)において、前記カバー(2)の前後一対の側面材(15,16)のうち、前記カバー(2)の折り畳み状態において前記天面材(17)が内側に重なる側の側面材(16)は、搬送台車(1)の前記他方の側(4b)の内側に装着され、前記カバー(2)の天面材(17)、折り畳まれた左右一対の開閉面材(18,19)、及び搬送台車(1)の前記一方の側枠(4a)の内側に位置する側面材(15)を、搬送台車(1)の前記他方の側枠(4b)の内側に位置する側面材(16)の内側に互いに重ねるように折り畳まれた前記カバー(2)が、ネスティング状態の各搬送台車(1)における前記他方の側枠(4b)間に形成される空間内に位置するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、展開状態のカバーが前後一対の側枠間の荷収納空間を覆う使用状態においては、前記荷収納空間に対して荷を出し入れする場合、左右何れ側からもファスナーを開動させて開閉面材を上に捲り上げると共に、その捲り上げる方向に適当に折り畳んで天面材上に載置することにより、左右何れ側の側面も容易に全開することが出来るのであるが、このとき折り畳み状態の開閉面材を支持することになる天面材は、従来のように折り線を持つ折り畳み自在なものではなくて一枚板状態のものであるから、支持する折り畳み状態の開閉面材の重みで折り線に沿って垂れ下がるような変形を伴うことが抑制され、見栄えが良いばかりでなく、矩形の側面全体を完全に開放することが出来、荷の出し入れも容易に行える。
【0012】
しかも前記カバーを折り畳むときは、荷の出し入れ作業時と全く同様に、左右両開閉面材を捲り上げるようにして天面材の外側(又は内側)に折り畳んで重ねた後、一方の側面材を搬送台車の一方の側枠から離脱させた状態で捲り上げて天面材の内側(又は外側)に重ね、この後、互いに重なる折り畳み状態の開閉面材と天面材、及び一方の側面材の全体を垂下させ、最後に互いに重なる面材全体を保持手段により垂下姿勢に保持させれば良い。このようにして、全ての面材を搬送台車の他方の側枠の内側に重ねてコンパクトに保持することが出来るのであるが、カバーの折り畳みに際して、従来のように山形の折り線に沿った複雑な折り畳みが不要であり、各面材の巾方向に沿った単純な折り線で折り曲げるだけで良いので、カバーの折り畳みが容易且つ迅速に行える。又、折り畳み状態の開閉面材と天面材とが最後に下向きに折り畳まれるものであるから、このカバーの折り畳み状態を保持するための保持手段も、上向きに捲り上げた面材を垂直姿勢に保持させなければならない場合と比較して、簡単なもので済むと共に作業性も良い。
【0013】
尚、請求項2に記載の構成によれば、カバーの折り畳みに際して、一方の側面材を搬送台車の一方の側枠から離脱させた状態で捲り上げて天面材に重ねたとき、係着手段によりその一方の側面材を天面材に重ねた状態に保持できるので、係る状態を手で保持しなければならない場合と比較して作業性を高めることが出来る。又、請求項3に記載の構成によれば、カバーの折り畳み時にも搬送台車の他方の側枠から外されることのない他方の側面材は、その上端に形成された袋状部分を前記他方の側枠の上端に被せるだけで、他方の側枠に対する取付け位置と形状が確定するので、両側辺を緊縛具で前記他方の側枠に締結する作業も簡単容易に行える。
【0014】
又、請求項4に記載の構成によれば、天面材が補強用板状体により一枚板状態に保持されているので、荷の出し入れ作業時に開閉面材を天面材の上に捲り上げて載せたときに、天面材が下方に撓んで荷の出し入れに悪影響を及ぼす恐れもなく、軽量な物であれば天面材の上に荷を一時載せておくことも出来、荷の出し入れ作業が容易に行える。又、カバーを折り畳むとき、一枚板状態に補強されている天面材が芯材となるので、カバーの折り畳みが容易になるばかりでなく、折り畳んだカバー全体の形状が美麗且つコンパクトに確定する。特に、一方の側面材における天面材に重なる領域も補強用板状体により一枚板状態に保持させる作業を容易に行えると共に、カバーを一層美麗且つコンパクトに折り畳むことが容易になる。
【0015】
又、請求項5に記載の構成によれば、カバーを折り畳むために左右両開閉面材を折り畳んで天面材の上に重ねるとき、何れ側の開閉面材を先に折り畳んでも、最終的に外側になる折り畳み面材の外側に位置する保持手段の構成部材を利用して、他方の側面材の内側で垂下する面材全体を容易に保持させることが出来る。換言すれば、左右両開閉面材に天面材上への折り畳み順序が決まっている場合と比較して、カバーの折り畳み作業が容易且つ迅速に行える。
【0016】
更に、請求項6に記載の構成によれば、カバーの底部が解放されている場合よりも、カバーによる保温性(断熱性)や防塵性を高めることが出来、特に係着手段として面ファスナーを使用すれば、カバーによる保温性(断熱性)や防塵性を一層高めることが出来る。この場合、請求項7に記載の構成によれば、カバーの底面材を他方の側面材の内側に重ねるように折り畳んだ起立折り畳み姿勢を保持させることが出来るので、この起立折り畳み姿勢にあるカバーの底面材を手で保持した状態で、天面材の内外に重ねた他の面材(左右一対の開閉面材及び一方の側面材)を垂下させる作業を行わなければならない場合と比較して作業性が向上し、カバーの美麗な折り畳み作業が容易且つ迅速に行える。しかも必要な係着手段の点数を少なくしてコストダウンを図ることが出来る。更に、請求項8に記載の構成によれば、複数の係着手段や保持手段が混在している状況において、折り畳まれたカバーを展開して組み立てる場合、各係着手段及び保持手段の互いに係着させるべき一対の部材を視覚により簡単かつ正確に認識することが出来、カバーの展開組立て作業を能率よく行える。
【0017】
尚、特開2011−5970号公報に記載されたような水平方向入れ子式にネスティング可能に構成された搬送台車に上記構成の折り畳み自在なカバーを採用してカバー付き搬送台車を構成する場合、請求項9に記載の構成によれば、搬送台車の前後一対の側枠の内、荷台を起立させる側とは反対側の側枠の内側にカバーを折り畳んで垂下させるので、折り畳んだカバーに邪魔されずに搬送台車を水平方向入れ子式にネスティングすることが出来る。換言すれば、搬送台車のネスティングのためにカバーそのものを搬送台車から取り外す必要がなくなり、カバーの管理も容易になる。この場合、折り畳んだカバーの存在で、ネスティング時に内外に隣り合う搬送台車間の間隔を広げることにならないように、折り畳まれたカバー全体の厚さは、カバーのない状態での搬送台車のネスティング時における、荷台が隣接しない側の側枠間の空間内に収まる範囲に抑えることにより、カバー付きのままでネスティングしても、カバーのない状態での搬送台車のネスティング効率を維持出来るのであるが、本発明のカバーは以上に説明したように、しっかりと且つコンパクトに折り畳むことが出来る構成であるから、このカバーを備えた搬送台車は、カバー付きのままでネスティングしたときにネスティング効率を低下させないで済むように構成することが容易である。特に後述する本発明の実施例で示すように、左右両開閉面材に折り畳み用(三つ折り用)の折り線を設けることは、嵩張る左右両開閉面材を容易に、しかもしっかりと且つコンパクトに折り畳むことが出来るようになるので、ネスティング効率を低下させないで済むカバー付き搬送台車の構成要件として効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは、カバーを使用している状態の搬送台車の側面図であり、
図1Bは、カバーを折り畳んだ状態の搬送台車の側面図である。
【
図2】
図2Aは、カバーを使用している状態の搬送台車の左側面図であり、
図2Bは、同右側面図である。
【
図3】
図3Aは、カバーを取り付ける前の搬送台車の側面図であり、
図3Bは、同搬送台車の右側面図である。
【
図5】
図5は、同上搬送台車の荷台を起立姿勢に切り換えた状態の側面図である。
【
図6】
図6は、同上搬送台車のネスティング状態を説明する平面図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、カバーに組み込まれる緊縛手段、係着手段、及び保持手段に使用される面ファスナーの種類を説明する図である。
【
図9】
図9は、組み立てられたカバーの左側からの斜視図である。
【
図11】
図11は、同上カバーの折り畳み第一段階を説明する左側からの斜視図である。
【
図12】
図12は、同上カバーの折り畳み第二段階を説明する左側からの斜視図である。
【
図13】
図13は、同上カバーの折り畳み第三段階を説明する左側からの斜視図である。
【
図14】
図14は、同上カバーの折り畳み完了状態を説明する右側からの斜視図である。
【
図15】
図15は、同上カバーの左右両開閉面材の別の折り畳み方法を説明する概略斜視図である。
【
図16】
図16は、同上カバーの片側の側面材の別の折り畳み方法を説明する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び
図2において、1は搬送台車であり、2は折り畳み自在なカバーである。搬送台車1は、
図3〜
図6にも示すように、台車本体3、前後一対の側枠4a,4b、及び荷台5から構成されている。台車本体3は、前後一対の台車単体6a,6bとこれら両台車単体6a,6bの中央部どうしを連結一体化する前後方向連結部材7から構成された平面形状がH形のもので、両台車単体6a,6bの底部には左右一対の自在車輪8が取り付けられている。又、前後方向連結部材7は、その前後両端部が台車単体6a,6bの中央部上面より少し高い位置に取り付けられている。
【0020】
前後一対の側枠4a,4bは、各台車単体6a,6bの中央部で前後方向連結部材7の前後両端外側に隣接するように立設された支持部材9a,9bに着脱自在に取り付けられたもので、門形外枠材10と当該門形外枠材10の内側に架設された上下複数段の水平枠材11、及び支持部材9a,9bに挿脱自在に内嵌固定される支柱部材12から構成されている。荷台5は、側枠4aを支持する支持部材9aに左右水平支軸13の周りに上下起伏自在に一端部が軸支されたもので、倒伏姿勢では、前後方向連結部材7に覆い被さった状態でその前後両端部が台車本体3の前後一対の台車単体6a,6b上に当接支持され、側枠4aの内側に沿う起立姿勢では、当該側枠4aの所定高さの水平枠材11に設けられている荷台係止具14により係止されて、当該起立姿勢に保持される。尚、この搬送台車1自体は、先に説明した特開2011−5970号公報によって周知のものである。
【0021】
カバー2は、使用目的に適合した材質のシート材から縫製されるものであって、例えば保温(断熱)のためのカバーであるときは、断熱性のあるシート材を二枚合わせにして縫製することが出来る。而してこのカバー2は、
図9〜
図11にも示されるように、搬送台車1の前後一対の側枠4a,4bの内側に沿って位置する前後一対の側面材15,16、この側面材15,16の上端どうしを連結する水平の天面材17、この天面材17の左右両側辺から連設されて垂下する左右一対の開閉面材18,19、及び側面材16の下側辺から連設されて搬送台車1の倒伏姿勢にある荷台5の上に重なる底面材20を備えている。この底面材20を備えている側面材16の上端外側には、この側面材16を搬送台車1の側枠4bの内側に取り付ける取付け手段の一部として、当該側枠4bの上端部に外嵌する袋状部分21が設けられている。
【0022】
前後一対の側面材15,16の垂直側辺とこれに隣接する左右一対の開閉面材18,19の垂直側辺とは、下端側が解放端となる向きのファスナー22a〜22dによって開閉自在に連結されている。又、カバー2の組み立てには、
図8Aに示すように雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとの組み合わせか又は、
図8Bに示すようにテープ素材の一方の面に雌用面ファスナー部24aが設けられると共に他方の面に雄用面ファスナー部24bが設けられた1本のテープ状面ファスナー24が利用される。即ち、袋状部分21が設けられている側面材16の左右両側辺の上下2箇所には、適当長さのテープ状面ファスナー24を、その面ファスナー部が外側になる向きに二本重ねた状態で一端部を縫着して構成した緊縛具25が取り付けられている。
【0023】
底面材20の自由三側辺には折曲自在な舌片部26a〜26cが各辺の全長にわたって連設され、これら舌片部26a〜26cの外側面には、雌用面ファスナー23a(又は雄用面ファスナー23b)が側辺長さ方向に沿って縫着されると共に、側面材15の下側辺及び左右一対の開閉面材18,19の下側辺のそれぞれ内側には、雄用面ファスナー23b(又は雌用面ファスナー23a)が側辺長さ方向に沿って縫着されて、互いに係脱自在な係着手段27が構成されている。又、底面材20を側面材16の内側に重ねるように折り畳んだとき、底面材20の内側に重ねるように折り畳んだ舌片部20aの雌用面ファスナー23a(又は雄用面ファスナー23b)と係着する雄用面ファスナー23b(又は雌用面ファスナー23a)が側面材16の内側に巾方向に沿って縫着されて、互いに係脱自在な係着手段28が構成されている。
【0024】
天面材17を構成する二枚重ねのシート材の間には、一枚板状態を維持出来るだけの剛性を持たせるために、例えばプラスチック製段ボール(通称、段プラ)のような補強用板状体29が内装され、側面材15には、この側面材15を天面材17の下側に重ねるように折曲したとき、天面材17の下側に重なる上側領域15aに、一枚板状態を維持出来るだけの剛性を持たせるために上記と同様の補強用板状体30が内装されている。そしてこの側面材15の上側領域15aの天面材17から遠い側の端部内側面には、雌用面ファスナー23a(又は雄用面ファスナー23b)が巾方向に沿って縫着されると共に、当該側面材15の上側領域15aを天面材17の下側に重ねたときに前記雌用面ファスナー23a(又は雄用面ファスナー23b)と対面する天面材17の一端下側面には、雄用面ファスナー23b(又は雌用面ファスナー23a)が巾方向に沿って縫着されて、互いに係脱自在な係着手段31が構成されている。
【0025】
側面材16を搬送台車1の側枠4bの内側に着脱自在に取り付ける取付け手段は、先に説明した通り、袋状部分21と4つの緊縛具25によって構成されているが、側面材15を搬送台車1の側枠4aの内側に着脱自在に取り付ける取付け手段は、当該側面材15の上端外側面に取り付けられた左右一対の緊縛具32と、当該側面材15の下端近傍の巾方向中央部に取り付けられた緊縛具33とによって構成されている。2つの緊縛具32のそれぞれは、上下方向に配置した所要長さのテープ状面ファスナー24の一端部を側面材15の上端外側面に縫着して、その遊端部を側面材15から上方に延出させることにより構成され、緊縛具33は、左右方向に配置した所要長さのテープ状面ファスナー24の長さ方向中央部を側面材15の下端近傍の巾方向中央部に縫着して構成されている。
【0026】
上記カバー2は、搬送台車1における前後一対の側枠4a,4b間の荷収納空間のサイズに合わせて構成されるもので、図示の実施例では、天面材17(底面材20)の前後方向長さ(開閉面材18,19の前後方向巾)は、当該天面材17の左右横巾(側面材15,16の左右横巾)の2倍近くあり、前後一対の側面材15,16及び左右一対の開閉面材18,19の高さは、天面材17の左右横巾(側面材15,16の左右横巾)の3倍近くある。従って、左右一対の開閉面材18,19には、これらを外巻き三つ折りにして天面材17の上側に載置するための2本の折り線18a,18b及び19a,19bが、2枚のシート材を縫着する縫着線によって形成されている。勿論、天面材17と前後一対の側面材15,16との間、天面材17と左右一対の開閉面材18,19との間、側面材16と底面材20との間、及び底面材20と各舌片部26a〜26cとの間にも、縫着線によって折り線が形成されるが、側面材15の上側領域15aと下側領域15bとの間にも、縫着線によって折り線15cが形成されている。
【0027】
又、カバー2を搬送台車1の側枠4bの内側に沿う状態に折り畳んだ状態を保持するための保持手段34が設けられている。この保持手段34は、左右両開閉面材18,19を折り線18a,18b及び19a,19bに沿って外巻き三つ折りに折り畳んだときに最外側に位置することになる領域、即ち、天面材17に隣接する領域の内側面で、側面材15に近い側の側辺近傍の中央位置に縫着した雌用面ファスナー23a(又は雄用面ファスナー23b)と、底面材20の底面に取り付けられた雄用面ファスナー23b(又は雌用面ファスナー23a)によって構成されている。この雄用面ファスナー23b(又は雌用面ファスナー23a)は、前後方向に配置され且つその面ファスナー部が底面材20に対面する向きに配置された所要長さのテープ状のもので、その側面材16に近い側の一端部が底面材20の底面の巾方向の中央付近に縫着され、遊端部が側面材15のある側に延出している。
【0028】
以上のように構成されたカバー2は、次のようにして搬送台車1に取り付けることが出来る。即ち、側面材16の上端の袋状部分21を搬送台車1の側枠4bの上端部に被せて、当該側面材16を側枠4bの内側に沿って垂下させ、当該側面材16の左右両側辺を緊縛具25により側枠4bの門形外枠材10に緊縛させる。具体的には、緊縛具25を構成する2本のテープ状面ファスナー24を、側枠4bの門形外枠材10における左右両垂直枠部に両側から巻き付け、当該2本のテープ状面ファスナー24の雌用面ファスナー部24aと雄用面ファスナー部24bとを互いに重ねて係着させる。側面材15は、搬送台車1の側枠4aの内側に沿わせた状態で、その上端部を左右一対の緊縛具32により、側枠4aの門形外枠材10に緊縛させる。具体的には、緊縛具32を構成するテープ状面ファスナー24を、側枠4bの門形外枠材10における上端水平枠部に内側から巻き付けて、その下向きに延出する遊端部の内側に位置する雌用面ファスナー部24a(又は雄用面ファスナー部24b)を、当該テープ状面ファスナー24の縫着端部の外側に位置する雄用面ファスナー部24b(又は雌用面ファスナー部24a)に重ねて互いに係着させる。そして側面材15の下端側は、緊縛具33によって側枠4aの下端部中央に位置する支柱部材12に緊縛させる。具体的には、緊縛具33を構成するテープ状面ファスナー24の両遊端部を、側枠4aの下端部中央に位置する支柱部材12に左右両側から巻き付け、当該テープ状面ファスナー24の両遊端部の内外両面に位置する雌用面ファスナー部24aと雄用面ファスナー部24bとを互いに重ねて係着させる。
【0029】
以上のように前後一対の側面材15,16を搬送台車1の前後一対の側枠4a,4bの内側に取り付けることにより、一枚板状態の天面材17は、前後一対の側枠4a,4bの上端部間に水平に架設された状態になり、この天面材17の左右両側辺から前後一対の側面材15,16が垂下することになる。底面材20は、その自由三側辺の舌片部26a〜26cを起立させた状態で搬送台車1の荷台5の上側に載置すると共に、側面材15の下側辺と舌片部26aとを、それぞれが備える係着手段27の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを互いに重ねて係着させる。最後に、左右一対の開閉面材18,19の垂直側辺とこれに隣接する前後一対の側面材15,16の垂直側辺とをファスナー22a〜22dによって互いに接合して閉じ、これら左右一対の開閉面材18,19の下側辺と底面材20の舌片部26b,26cとを、それぞれが備える係着手段27の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを互いに重ねて係着させる。
【0030】
以上のようにしてカバー2を搬送台車1に取り付けることにより、この搬送台車1の荷台5上で前後一対の側枠4a,4b間の荷収納空間がカバー2によって完全に囲まれ、当該荷収納空間に対する所期のカバー効果、例えば保温(断熱)効果を期待することが出来る。前記荷収納空間に対して荷を出し入れするときは、左右一対の開閉面材18,19の内、作業者の立つ側にある開閉面材、例えば開閉面材18(又は開閉面材19)を、その両側辺のファスナー22a,22b(又はファスナー22c,22d)を上方に開動した後、開閉面材18(又は開閉面材19)の下側辺とこの内側に隣接する底面材20側の舌片部26b(又は舌片部26c)とを互いに係着している係着手段27の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを互いに引き離した状態で、当該開閉面材18(又は開閉面材19)を上方に捲り上げ、荷収納空間の左右の片側を開けば良い。勿論、必要に応じて荷収納空間の左右両側を開くことも出来る。上方に捲り上げた開閉面材18,19は、天面材17の上に載置することが出来るが、当該天面材17は補強用板状体29によって補強されて一枚板状態を確実に維持するので、開閉面材18,19の載置によって天面材17が垂れ下がることも無い。このように、補強用板状体29によって補強されている方が使い勝手が良いが、特に補強されていなくとも、前記のように開閉面材18(又は開閉面材19)を天面材17の上に捲り上げて使用することは可能である。
【0031】
上記のカバー2は、搬送台車1への取付け作業時の手順を逆に実行して搬送台車1の前後一対の側枠4a,4bから上方に引き抜いて搬送台車1から取り外すことも出来るが、取り外さないで折り畳み、
図1Bに示すように、搬送台車1の側枠4bの内側に垂直姿勢で保持させることが出来る。即ち、
図11に示すように、左右一対の開閉面材18,19を任意の順番で先に説明した要領で上方に捲り上げて天面材17の上に載置するのであるが、この場合開閉面材18,19は、折り線18a〜19bの位置で外巻三つ折りにして、天面材17の上に丁度重なる大きさの平らな状態に折り畳んだ状態で、天面材17の上に任意の順番で積み重ねる。次に、底面材20の先端の舌片部26aと側面材15の下側辺とを係着している係着手段27の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを互いに引き離した状態で、底面材20を上方に折り畳み、
図12に示すように側面材16の内側に重ねる。このとき、底面材20の自由三側辺の各舌片部26a〜26cは底面材20の内側に重ねるように折り畳んでおき、底面材20の先端の舌片部26aと側面材16の内側面とを、係着手段28の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを重ね合わせて互いに係着することにより、底面材20を側面材16の内側に沿った折り畳み姿勢で保持させることが出来る。
【0032】
次に、側面材15の下端側と搬送台車1の側枠4aとを結合している緊縛具33のテープ状面ファスナー24における雌用面ファスナー部24aと雄用面ファスナー部24bとの係着を引き剥がした後、
図13に示すように、側面材15を天面材17の下側に向かって持ち上げ、その上側領域15aを天面材17の下側に重ねるようにして、係着手段31の雌用面ファスナー23aと雄用面ファスナー23bとを重ね合わせて互いに係着することにより、当該側面材15の下側領域15bは側面材16の内側で垂下させた状態で、当該側面材15の上側領域15aを天面材17の下側に係着させる。このとき、当該側面材15の上側領域15aは、補強用板状体30によって一枚板状態に維持されているので、当該側面材15の上側領域15aの全体を天面材17の下側に確実に重ねて当該天面材17と一体化することが容易に行える。
【0033】
この後、側面材15の上端側と搬送台車1の側枠4aとを結合している緊縛具32のテープ状面ファスナー24における雌用面ファスナー部24aと雄用面ファスナー部24bとの係着を引き剥がし、
図14に示すように、上側に三つ折りにされた左右一対の開閉面材18,19を支持すると共に下側に側面材15の上側領域15aを保持した天面材17を、側面材16の内側に重ねるように垂下させる。このとき、側面材16の内側で垂下している側面材15の下側領域15bは、側面材15の上側領域15aと側面材16とで挟み込まれ、側面材16の内側に重なっている底面材20は、折り畳み状態の側面材15と側面材16との間に挟み込まれるが、折り畳み状態の側面材15より底面材20の下半部が下方に露出しており、この露出している底面材20の底面に前記保持手段34のテープ状の雄用面ファスナー23bが取り付けられているので、最後に、その保持手段34のテープ状の雄用面ファスナー23bを、天面材17の外側に重なって折り畳まれている開閉面材18,19の内、外側に重なっている開閉面材の保持手段34の雌用面ファスナー23aに重ね合わせて互いに係着することにより、カバー2を構成する全ての面材15〜20を、搬送台車1の側枠4bとほぼ同じ大きさに折り畳んだ状態で、当該側枠4bの内側に沿わせて保持手段34により保持することが出来る。
【0034】
以上のようにしてカバー2を折り畳み且つ搬送台車1の側枠4bの内側に沿わせた状態に保持させた状態では、当該折り畳み状態のカバー2が保持されない側の側枠4aの内側に荷台5を起立させることが出来る。勿論、折り畳まれて側枠4bの内側に保持されているカバー2の下端部、即ち、側面材16の下端部とこれに重なっている底面材20の一端部とが荷台5の持ち上げに多少邪魔になることも考えられるが、このような場合には、荷台5の持ち上げに先だって、側面材16の下端部を側枠4bの締結している緊縛具25を解いて、上記の側面材16の下端部とこれに重なっている底面材20の一端部とを持ち上げることが出来る。尚、図示の実施例のように、荷台5(天面材17)の前後方向長さよりも側枠4a,4bの高さ(側面材15,16の高さ)が1.5倍ほど大きいときは、
図1Bに示すように、カバー2を側枠4bの内側に重ねるように折り畳んだとき、当該側枠4bの内側全体に重なっている側面材16とその内側に重なっている底面材20に対し、大きく内側に膨らんだ状態で重なっている面材群(天面材17、折り畳まれた左右両開閉面材18,19、及び折り畳まれた側面材15)は、側枠4bの下端からその全高の1/3ほど上がった位置にあるので、この大きく内側に膨らんだ状態で重なっている面材群が荷台5の持ち上げ軌跡内に入り込むことは無い。このとき、側面材15や開閉面材18,19を折り線15c,18a〜19bに沿って直線状に正確に折り畳むときには、前記面材群(天面材17、折り畳まれた左右両開閉面材18,19、及び折り畳まれた側面材15)の厚さを薄くすることが出来、荷台5の持ち上げに対する影響を確実に無くすことが出来る。
【0035】
尚、カバー2の底面材20は本発明に必須のものではない。例えば防塵や防雨対策としてのカバーであれば、底面材20はなくとも良い。又、搬送台車1として、起伏自在に軸支された荷台5を備えたネスティング可能な搬送台車1を示したが、前後方向連結部材7に代わって荷台5の下側に車輪が設けられ且つ荷台5の前後両端上に側枠4a,4bが立設された、一般的な搬送台車に対しても本発明を適用実施することが出来る。更に、緊縛具25,32,33、係着手段27,28,31及び保持手段34に面ファスナーを利用したが、互いに締結可能な一対の紐状体、釦穴と釦の組み合わせ、鉤ホック、スナップなどの周知の各種のものが利用出来る。勿論、これらを利用する場合も、その構成部材の少なくとも一方は、一端がカバーに縫着されたテープ部材の遊端に設けることが出来る。
【0036】
又、天面材17や側面材15の上側領域15aを一枚板状態に構成するために補強用板状体29,30を使用する場合、これら補強用板状体29,30は、天面材17や側面材15を構成するシート材の内側に添着しても良いし、場合によっては、これら天面材17や側面材15の上側領域15aそのものを補強用板状体29,30で構成することも可能である。
【0037】
又、上記実施例では、カバー2の折り畳みに際して、左右両開閉面材18,19を天面材17の上に折り畳んで重ねるように説明したが、
図15に示すように、左右両開閉面材18,19を天面材17の下側に折り畳んで重ねる折り畳み方法を採用することも出来る。この場合、図示のように、左右両開閉面材18,19を天面材17の下側に折り畳んで重ねた状態を保持するための、前記保持手段34と同様の保持手段35を、外側に重なる一方の開閉面材、例えば開閉面材18(又は開閉面材19)と天面材17とに設けることが出来る。勿論、折り畳まれて互いに重なる両開閉面材18,19の対接面に、互いに係着自在な面ファスナー利用の係着手段を設けることも出来る。又、左右両開閉面材18,19の内、一方の開閉面材を天面材17の外側に折り畳んで重ねると共に、他方の開閉面材を天面材17の内側に折り畳んで重ねるようにしても良い。
【0038】
更に、上記実施例では、カバー2の折り畳みに際して、側面材15を天面材17の内側に折り畳んで重ねるように説明したが、
図16に示すように、側面材15を折り畳んで天面材17の上側に重ねることも出来る。この場合、上記実施例において側面材15に設けた折り畳み用の折り線15cと補強用板状体30を利用して、側面材15の折り畳みを容易にするのが望ましいが、これら折り線15cと補強用板状体30は必須ではないし、二つ折りに限定されるものでもない。又、この場合も、天面材17の外側に折り畳んで重ねられた側面材15を保持するための係着手段や保持手段を併用することが出来るが、上記実施例のように、天面材17の外側に左右両開閉面材18,19を折り畳んで重ねるときは、先に側面材15を折り畳んで天面材17の上側に重ね、その側面材15の外側に左右両開閉面材18,19を折り畳んで重ねるようにすれば、折り畳んだカバーの全体を保持手段34により保持することが出来る。
【0039】
又、上記実施例では、カバー2の折り畳みに際して、側面材16の内側に重ねた垂直姿勢の底面材20の外側に、外側又は内側に左右両開閉面材18,19が折り畳まれて重ねられている天面材20を重ねるように説明したが、この逆に、外側又は内側に左右両開閉面材18,19が折り畳まれて重ねられている垂直姿勢の天面材20の外側に底面材20を重ねるようにしても良い。
【0040】
更に、上記本発明の実施例では、それぞれ異なる面材どうしを係着させるための複数の係着手段27,28,31及び保持手段34,35が使用されている。これら複数の係着手段27,28,31及び保持手段34,35は、異なる面材どうしを互いに係着するものであるからそれぞれ一対の部材(雌雄各面ファスナー23a,23b)から構成されるが、1つの係着手段及び保持手段を構成する一対の部材は同一の色とするが、異なる係着手段27,28,31及び保持手段34,35ごとに異なる色に着色することが出来る。この場合、係着手段及び保持手段を構成する一対の部材全体を、係着手段27,28,31及び保持手段34,35ごとに異なる色に着色しても良いし、係着手段及び保持手段を構成する一対の部材の一部分のみ、色を変えても良い。例えば、面ファスナーの場合で面ファスナーを構成する雌雄面材をテープ材に縫着して構成する場合、雌雄面材はすべて同一色とし、テープ材のみ色を変えても良いし、この逆にテープ材はすべて同一色とし、雌雄面材のみ色を変えても良い。
【0041】
又、本発明のカバーは、特にネスティング可能な搬送台車に組み合わせて、ネスティング可能なカバー付き搬送台車を構成する場合に好適なものであるが、本発明のカバーを組み合わせるネスティング可能な搬送台車は、上記実施例で示した4輪台車に限定させるものではなく、6輪台車など、前後一対の側枠とその一方の側枠に沿うように起立させることが出来る荷台を備えたネスティング可能な台車であれば、如何なる構成の搬送台車であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の搬送台車用カバーは、使用しない時に簡単容易に折り畳むことが出来る、保温(断熱)や防塵などのためのカバー、特にネスティング可能な搬送台車の荷収納空間のカバーとして活用出来る。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送台車
2 折り畳み自在なカバー
3 台車本体
4a,4b 前後一対の側枠
5 荷台
6a,6b 前後一対の台車単体
7 前後方向連結部材
8 自在車輪
9a,9b 支持部材
15,16 前後一対の側面材
15a 側面材15の上側領域
15c,18a〜19b 折り線
17 天面材
18,19 左右一対の開閉面材
20 底面材
21 袋状部分
22a〜22d ファスナー
23a,23b 雌雄各面ファスナー
24 テープ状面ファスナー
24a,24b 雌雄各面ファスナー部
25,32,33 緊縛具
26a〜26c 舌片部
27,28,31 係着手段
29,30 補強用板状体
34,35 保持手段