特許第5936076号(P5936076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936076
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】モータ駆動制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/048 20060101AFI20160602BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F16K11/048 Z
   F16K31/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-157984(P2013-157984)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-28364(P2015-28364A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−181679(JP,A)
【文献】 特開平3−204487(JP,A)
【文献】 特開2011−190920(JP,A)
【文献】 特開2011−33088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/048
F16K 31/04 −31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に連通する1個の入水口と、この内部空間に連通する2個の出水口とを有するハウジング内に、モータによって進退され入水口から内部空間に流入する流量を増減する主弁を入水口と内部空間との間に備えたモータ駆動制御弁において、上記2個の出水口の一方と上記内部空間との間に、この出水口側から内部空間側に付勢された副弁を設け、上記主弁の閉弁方向の移動に連動して副弁を内部空間側から押して開弁させることを特徴とするモータ駆動制御弁。
【請求項2】
上記副弁の全開状態から上記モータにより主弁の開度を増加させる途中で、副弁を閉弁方向に付勢する付勢力に抗して上記内部空間内の水圧により副弁が開弁方向に押されて、開弁状態を維持することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給湯装置に組み込まれ、熱交換器に流れる水量を調節するモータ駆動制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置は熱交換器を備えており、この熱交換器に流れる水の流量と熱交換器を加熱するガスバーナの火力との双方を調節することにより所望する温度の湯を所望の水量で給湯するように構成されている。ただし、給湯温度が所定の温度以下になると、熱交換器自体の温度が低下し、そのため、ガスバーナの燃焼により生じた水蒸気が熱交換器内で結露してドレンが生じるという不具合が発生する。そのため、熱交換器から流出する湯温を所定温度以下にできない。
【0003】
ところが、使用者がその所定温度より低い温度の湯を要求する場合がある。このような場合には、熱交換器に供給する水の一部をバイパスして、熱交換器に通さずに、熱交換器から流出する高温の湯に混合することによって、ドレンの発生を防止しながら給湯温度を下げることが行われている。
【0004】
このような構成を採用する場合には、全体の水量を調節するためのモータ駆動制御弁と、バイパスする水量を調節するためのモータ駆動制御弁との2個のモータ駆動制御弁を必要とすることになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−36517号公報(図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のものでは、上述のように2個のモータ駆動制御弁を必要とするため、モータ駆動制御弁が占める容積が大きくなると共にコストが高くなるという不具合が生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、1個のモータで全水量の他にバイパス流量を必要に応じて変更することのできるモータ駆動制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるモータ駆動制御弁は、内部空間に連通する1個の入水口と、この内部空間に連通する2個の出水口とを有するハウジング内に、モータによって進退され入水口から内部空間に流入する流量を増減する主弁を入水口と内部空間との間に備えたモータ駆動制御弁において、上記2個の出水口の一方と上記内部空間との間に、この出水口側から内部空間側に付勢された副弁を設け、上記主弁の閉弁方向の移動に連動して副弁を内部空間側から押して開弁させることを特徴とする。
【0009】
上記構成では、主弁の開度を絞って全体の総流量を減少させるに伴って副弁の開度を上げ、副弁が設けられている方の出水口への流量を増加させる。例えば、この出水口をバイパス路に連結しておけば、全体の総流量が減少して給湯量が少なくなるほど、バイパス路側の流量比率を大きくして給湯温度を更に下げることができる。
【0010】
主弁が閉弁すれば副弁は全開状態になるが、上記副弁の全開状態から上記モータにより主弁の開度を増加させる途中で、副弁を閉弁方向に付勢する付勢力に抗して上記内部空間内の水圧により副弁が開弁方向に押されて、開弁状態を維持するように構成すれば、全体の総流量が増加した状態でバイパス路にある程度の水流を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、1個のモータで主弁を駆動すると共に、主弁の開度の変化に伴って副弁の開度を変えることができるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】主弁が閉弁している状態を示す断面図
図2】主弁が開弁した状態を示す断面図
図3】両出水口の流量変化を示す図
図4】両出水口の流量比と全水量との変化を示す図
図5】副弁の他の構成を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明によるモータ駆動制御弁の一例である。本モータ駆動制御弁1は樹脂製である中空のハウジング2を有している。このハウジング2の内部には空間21が形成されており、この空間21には1個の入水口22と2個の出水口として主出水口23及び副出水口24との3系統の通水口が連結されている。なお、10は入水口22から流入する水の総流量を検知する流量計部である。
【0014】
入水口22と空間21と間には主弁3が設けられている。この主弁3はステッピングモータ4によって進退駆動される。ステッピングモータ4の出力軸41はステッピングモータ4内で図示しないスプラインによって連結されており、従って、回転すると共に軸線方向(スラスト方向)に自由に移動することができる。そしてこの出力軸41は固定ブラケット11に対して台形ネジを介して螺合しており、出力軸41が1回転する毎に台形ネジのピッチに相当する距離だけ前進または後退することになる。なお、図1に示す状態では主弁3は前進端位置である閉弁位置に有り、従って、入水口22と空間21とは、この主弁3によって隔絶されている。従って,外部からの水は空間21内に流れ込むことはない。
【0015】
主出水口23は給湯装置の熱交換器6に連結されており、上記主弁3が開弁して入水口22から空間21に水が流入すると、その水を主出水口23から熱交換器6へと流すことになる。熱交換器6の下方には図示しないガスバーナが設けられており、熱交換器6内を流れる水をガスバーナの燃焼ガスで加熱して湯として流出させる。
【0016】
副出水口24は熱交換器6の出湯側に連結されている。そして、副出水口24と空間21との間には副弁5が配置されている。従って、この副弁5が開弁すると空間21内の水が熱交換器6をバイパスして、熱交換器6で加熱された湯と副出水口24からの水とが混合されて、台所のカランなどへ給湯されるように構成されている。
【0017】
副弁5は複数本の樹脂製の支持体51で支持され、かつ支持体51の弾性力によって弁座52に近づく方向へ付勢されている。この弾性力は空間21内の水圧に抗して副弁5を弁座52方向、すなわち閉弁方向に移動させるだけの大きさの付勢力となるように設定した。
【0018】
上記主弁3の中央を貫通してロッド31が設けられている。図1に示す状態では上述のように、主弁3は閉弁しているが、その状態ではロッド31も前進端位置に有り、ロッド31の先端で副弁5を開弁方向に押して強制的に開弁させるようにした。従って、図1に示す状態では副弁5は最大開度で開弁しているが、主弁3が閉弁しているため空間21内の水は主出水口23及び副出水口24のいずれからも出水されない状態にある。
【0019】
図2を参照して、ステッピングモータ4を駆動して主弁3を開弁させると、入水口22から空間21内に水が流入する。主弁3の開度が小さい状態では、副弁5は開度は減少しているが開弁状態であるので、空間21内の水は主出水口23及び副出水口24の双方から流出する。主弁3の開度をさらに大きくして全開状態にすると、ロッド31が後退して副弁5から離れるので、副弁5は支持体51の付勢力によって閉弁する。すると、空間21内に流れ込んだ水は全て主出水口23から熱交換器6へと流れることになる。
【0020】
この流量の変化を図3を参照して詳述する。主弁3の開度が図1に示す全閉状態、すなわち開度0の状態では、上述のように主出水口23および副出水口24のいずれからも出水されない。図3ではA1は主出水口23からの出水の流量を表し、A2は副出水口24からの出水の流量を表している。
【0021】
主弁3が開弁し出すと主弁3の開度の増加に伴って主出水口23および副出水口24からの出水流量が増加する。副出水口24からの出水流量は、当所は主弁3の開度の増加に伴って増加するが、副弁5の開度は主弁3の開度の増加に連動して減少するので、副弁5の開度がある程度まで減少すると、それ以降の減少に伴って副出水口24からの出水流量は減少して、最終的に副弁5が閉弁すると出水流量は0になる。ただし、副弁5を閉弁方向に付勢している付勢力を調節して、空間21内の水圧が副弁5を押圧する力より小さな付勢力で副弁5を付勢しておけば、破線のA21に示すように副弁5は完全に閉弁せず、途中から空間21内の水圧によって徐々に開度を広げて副出水口24からの出水流量が増加に転じることになる。
【0022】
さらに、図4を参照して、本図では主弁3を通過する水量、すなわち全水量をBで示し、Cは主出水口23および副出水口24からの各々の出水流量の比を表している。具体的には、(副出水口24からの出水流量)/(主出水口23からの出水流量)である。
【0023】
主弁3の開度が増加するのに伴って全水量も増加するが、途中で副弁5が閉弁するので全水量の増加速度は鈍る。また、主弁3が開弁を開始した時点では副出水口24からの出水流量と主出水口23からの出水流量とはほぼ1:1であるが、その後、副出水口24からの出水流量は減少し、主出水口23からの出水流量は増加するので、分配比は主弁3の開度の増加に伴って減少する。なお、上記図3でのA21と同様に副弁5に対する付勢力を調節することにより、分配比は0に収束せず、C1に示すように増加に転じさせることができる。
【0024】
上記構成であるので、例えば低温の湯を小流量で給湯する場合、主弁3の開度を小さくしてガスバーナの燃焼量を小さくするが、ガスバーナの燃焼量をあまり小さくすると熱交換器6でドレンが生じる。そのため、熱交換器6から送り出される湯温をある程度以下に下げることができないので、副弁5の開度を大きくして副出水口24から流出する水量を多くする。また、主弁3の開度を大きくすると熱交換器6に流れる流量が増加して熱交換器6が冷却されるので、やはりガスバーナの火力をある程度以上にしなければならない。その場合には副弁5を完全に閉弁させるのではなく、上記のように副弁5に対する付勢力を弱めておき、主弁3が全開時にも副弁5がある程度の開度を維持することが望ましい。
【0025】
ただし、副弁5に対する付勢力は上記の支持体51の本数や形状によって調節することになるが、その構造では付勢力の調節が比較的難しい場合には、図5に示すように、副弁5をバネ32で付勢するように構成してもよい。
【0026】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0027】
1 モータ駆動制御弁
2 ハウジング
3 主弁
4 ステッピングモータ
5 副弁
6 熱交換器
21 空間
22 入水口
23 主出水口
24 副出水口
31 ロッド
32 バネ
51 支持体
図1
図2
図3
図4
図5