特許第5936096号(P5936096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936096
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   H01G9/02 311
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-135922(P2011-135922)
(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公開番号】特開2012-28753(P2012-28753A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-144139(P2010-144139)
(32)【優先日】2010年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162628
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 博
(74)【代理人】
【識別番号】100119286
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 操
(72)【発明者】
【氏名】中村康行
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−070044(JP,A)
【文献】 特開昭60−124814(JP,A)
【文献】 特開平03−257810(JP,A)
【文献】 特開2002−265989(JP,A)
【文献】 特開平06−208934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)、(b)、及び(c)成分を含有する、電解コンデンサ用電解液。
(a)式(1)で示される化合物
(b)極性溶媒
(c)有機酸、無機酸又はそれらの塩からなる群から選択される1種以上の電解質
R−O−(BO)−(EO)/(PO)−H (1)
(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。BOはオキシブチレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基である。aはオキシブチレン基の平均付加モル数であって3〜15を示す。bはオキシエチレン基の平均付加モル数であって45を示す。cはオキシプロピレン基の平均付加モル数であって23を示す。a/(a+b+c)は0.150.4であり、b/(b+c)は0.650.9である。(EO)/(PO)は、EOとPOのランダム状付加を表す。)
【請求項2】
電解質が、総炭素数10〜14のジカルボン酸又はその塩を含有する電解質である、請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ電解コンデンサは、高純度のアルミニウム箔からなる陽極に形成する酸化被膜を誘電体として利用するものであり、−40℃程度から100℃を超える温度までの幅広い温度領域において安定に使用できることが必須となる。近年のデジタル家電の普及や自動車の電装化にともないデジタル機器や車載機器用途での需要が拡がっているが、高電圧下で使用した場合にショート等の不具合を発生することがあり、火花発生電圧の向上が要求されている。
アルミ電解コンデンサに用いられる駆動用電解液としては、エチレングリコールやγ−ブチロラクトン等を主成分とする極性溶媒に、ホウ酸等の無機酸やアジピン酸、マレイン酸等の二塩基酸及びその塩を溶質とした駆動用電解液が知られている。しかしながら、溶質としてこれらのカルボン酸を使用した電解液は、電導性は高いものの火花発生電圧が低いことが問題となっていた。
【0003】
火花発生電圧を向上させる方法としては、ブチルオクタン二酸を使用する方法(例えば特許文献1)、5,6−デカンジカルボン酸を使用する方法(例えば特許文献2)等が報告されているが、このようなアルキル鎖長の長いカルボン酸を使用した電解液は、火花発生電圧の向上に有効であるものの、長鎖カルボン酸の極性溶媒への溶解性が低いために低温において結晶化して析出することがあり、その結果、火花発生電圧の低下や電導度の低下を引き起こすことがあった。
【0004】
火花発生電圧を向上させる方法としては、他に、電解液にポリアルキレングリコール系化合物を添加する方法が知られている。例えば、低級アルコールにエチレンオキシドと他のアルキレンオキシドをランダム状に付加した化合物(例えば特許文献3)が報告されている。この化合物は、アルミ電解コンデンサの陽極の化成性を高めることにより火花発生電圧の向上効果を奏する。しかしながら、この化合物はランダム状の共重合体であるために界面活性能が低く、低温における長鎖カルボン酸の分散性を向上させて結晶の析出を抑制するような効果は見られない。また、アルコールにエチレンオキシドとプロピレンオキシドを順にブロック状に付加した化合物(例えば特許文献4)等が報告されているが、このような化合物は火花発生電圧の向上に効果を有するものの、アルキル基−親水基−親油基のトリブロック型共重合体であり、溶媒への溶解に必要な親水基のブロック部位を末端にもたないために溶媒に配向しにくく、低温において長鎖カルボン酸を分散させて結晶の析出を抑制するような効果は見られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−13293号公報
【特許文献2】特公昭63−15738号公報
【特許文献3】特開平10−106892号公報
【特許文献4】特開平3−257810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、火花発生電圧の向上に十分な効果を有するとともに、比抵抗の上昇度に比べて火花発生電圧の向上度が高く、さらに低温におけるカルボン酸の結晶の析出を抑制することのできる電解コンデンサ用電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、炭素数1〜4のアルコールのブチレンオキシド−アルキレンオキシドブロック付加物を、電解コンデンサ用電解液に添加すれば、火花発生電圧を向上させるとともに、低温条件下でも、当該添加剤が分離することなく、カルボン酸結晶の析出も回避されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]次の(a)、(b)、及び(c)成分を含有する、電解コンデンサ用電解液、
(a)式(1)で示される化合物
(b)極性溶媒
(c)有機酸、無機酸又はそれらの塩からなる群から選択される1種以上の電解質
R−O−(BO)−(EO)/(PO)−H (1)
(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。BOはオキシブチレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基である。aはオキシブチレン基の平均付加モル数であって3〜15を示す。bはオキシエチレン基の平均付加モル数であって45を示す。cはオキシプロピレン基の平均付加モル数であって23を示す。a/(a+b+c)は0.150.4であり、b/(b+c)は0.650.9である。(EO)/(PO)は、EOとPOのランダム状付加を表す。)
]電解質が、総炭素数10〜14のジカルボン酸又はその塩を含有する電解質である、[1]記載の電解コンデンサ用電解液。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る式(1)で示される化合物は、それ自体、電解コンデンサ用電解液の火花発生電圧の向上効果を有し、低温領域で分離することもない耐電圧向上剤として有用である。また、比抵抗の上昇度に比べて火花発生電圧の向上度が高く、火花発生電圧向上剤として知られる長鎖カルボン酸の低温領域における結晶析出を抑制することができるため、当該耐電圧向上剤を含有する本発明の電解液は、幅広い温度域における安定性が求められる車載用コンデンサなど、各種用途に実用上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(a)式(1)で示される化合物
式(1)において、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、直鎖であっても分岐であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。Rは好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。Rの炭素数が4より大きいと、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下する。
式(1)において、aはオキシブチレン基の平均付加モル数で、3〜25、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜15である。aが3より小さいとカルボン酸の分散性が低下して低温で電解液にカルボン酸の結晶が析出し、25より大きいと式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下する。
式(1)において、bはオキシエチレン基の平均付加モル数で、3〜60、好ましくは4〜50、より好ましくは4〜45である。bが3より小さいと式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、60より大きいと低温で電解液に式(1)で示される化合物自身の結晶が析出しやすくなる。
式(1)において、cはオキシプロピレン基の平均付加モル数で、0〜30、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜23である。cが30より大きいと式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下する。
【0010】
式(1)において、a/(a+b+c)は0.1〜0.5であり、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.4である。a/(a+b+c)が0.1より小さいとカルボン酸の分散性が低下して低温で電解液にカルボン酸の結晶が析出し、0.5より大きいと式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下する。
式(1)において、b/(b+c)は0.6〜1であり、より好ましくは0.6〜0.95、より好ましくは0.65〜0.9である。b/(b+c)が0.6より小さいと式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下する。
式(1)において、(EO)/(PO)は、EOとPOのランダム状付加を表す。ブロック状付加であると、親油基−親水基−親油基のトリブロック型構造を形成する場合があり、カルボン酸の分散性が低下して低温で電解液中にカルボン酸の結晶が析出することがあるため好ましくない。
式(1)で示される化合物の分子量は、好ましくは500〜10,000であり、より好ましくは800〜4,000である。分子量が500より小さいと酸の分散に十分な効果が得られず、分子量が10,000より大きいと電解液の粘度が高くなり、泡立ちが高くなる傾向がある。
【0011】
式(1)で示される化合物は、親油基であるオキシブチレン基と、親水基であるオキシエチレン基、又はオキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム共重合体とのジブロック型界面活性剤である。式(1)で示される化合物を、極性溶媒、及び有機酸、無機酸又はそれらの塩とともに配合して電解コンデンサ用電解液として用いた場合、ポリオキシブチレン鎖により酸の親油性部位に吸着するとともに、オキシエチレン鎖、又はオキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム共重合鎖を極性溶媒側に配向して、カルボン酸の電解液中での分散性を向上させる。オキシブチレン基は分岐のエチル基を有するために分子間の立体斥力が大きく、高い分散効果を有する。これにより、低温でも電導度や火花発生電圧を低下させることなく、幅広い温度域で安定にコンデンサを使用することができる。
式(1)で示される化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、アルカリ触媒の存在下、炭素数1〜4のアルコールにブチレンオキシド、炭素数2及び3のアルキレンオキシドを順に付加重合させることによりアルコールのブチレンオキシド−アルキレンオキシドブロック付加物が得られる。
【0012】
(b)極性溶媒
本発明で使用する極性溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、N−メチルホルムアミド等のアミド系溶媒、水等が挙げられ、単独で使用してもよく2種類以上を混合して使用してもよい。後者の例としては、エチレングリコールと水又はγ−ブチロラクトンと水の混合溶媒が好ましい。
【0013】
(c)有機酸、無機酸又はそれらの塩からなる群から選択される1種以上の電解質
本発明で使用する無機酸としてはホウ酸等が挙げられ、有機酸としてはマレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ブチルオクタン二酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。これらは単体で使用しても2種類以上を混合して使用してもよく、塩基性化合物との中和塩として使用してもよい。有機酸は、好ましくは総炭素数10〜14のジカルボン酸であり、具体的にはセバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ブチルオクタン二酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。塩基性化合物としては、アンモニア、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミンのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。好ましくはアンモニア及びアンモニア水である。
【0014】
本発明の電解液において、式(1)で示される化合物の添加量は、0.1〜50質量%である。添加量が0.1質量%より少ないと火花発生電圧の向上効果が不十分であり、50質量%より大きいと、電解液の粘度が上昇する傾向にあるため適切でない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
[実施例1]
<合成例1>
メタノール32.0g(1.0モル)と触媒として水酸化カリウム3.5gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置よりブチレンオキシド360.5g(5.0モル)を滴下し、4時間撹拌した。その後、さらに滴下装置よりエチレンオキシド882.0g(20.0モル)とプロピレンオキシド232.4g(4.0モル)の混合物を滴下し、4時間撹拌した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095Mpa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、表1の化合物Aを得た。
【0016】
<電解液の調製>
表2に示す組成で混合し、60℃で均一になるまで撹拌して電解液を得た。
<外観の評価>
電解液50gをガラス瓶に入れ、25℃及び−40℃の恒温槽で1時間静置したときの分離の有無及び結晶の析出の有無を以下の基準で評価した。
○:分離、結晶の析出がなく均一である
×:式(1)で示される化合物が分離している、又は酸や式(1)で示される化合物の結晶が析出している
結果を表2に示す。
【0017】
<比抵抗の測定>
電気伝導度計(東亜電波工業(株)製CM−60S)により、電解液の30℃での比抵抗を測定した。結果を表2に示す。
<火花発生電圧の測定>
1L容量ステンレス製容器に電解液700gを入れ、60mm×10mmに切断した純度99.99%以上のアルミ箔を浸漬し、直流電源を繋げて25℃における電解液の火花発生電圧を測定した。火花発生電圧向上効果を次式にしたがって算出し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。

[火花発生電圧向上度(V)=(a)の化合物を添加した電解液の火花発生電圧
−(a)の化合物を添加していない電解液の火花発生電圧]

○:火花発生電圧向上度が30V以上
×:火花発生電圧向上度が30V未満
また、比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度を次式にしたがって算出し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。

[火花発生電圧向上度/比抵抗上昇度=((a)の化合物を添加した電解液の火花発生電圧−(a)の化合物を添加していない電解液の火花発生電圧)/((a)の化合物を添加した電解液の比抵抗−(a)の化合物を添加していない電解液の比抵抗)]

○:火花発生電圧向上度/比抵抗上昇度が1.20以上
×:火花発生電圧向上度/比抵抗上昇度が1.20未満
【0018】
[実施例2〜9]
実施例1と同様の方法で、表1に示す化合物B〜Gを合成し、表2に示す配合組成の電解液を調製して、外観及び電気特性の評価、を行った。結果を表2に示す。
[比較例1〜9]
実施例1と同様の方法で、表1に示す化合物H〜Nを合成し、下記の方法で化合物O及びPを合成して、表2に示す配合組成の電解液を調製し、分離の有無及び結晶析出の有無の評価を行った。また、比抵抗及び火花発生電圧を測定し、火花発生電圧向上度を算出して、火花発生電圧向上度の評価及び比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度の評価を行った。結果を表2に示す。なお、電解液の外観の評価において、25℃で均一でなかった場合には、−40℃での評価は行わなかった。
【0019】
<化合物Oの合成>
エタノール46.1g(1.0モル)と触媒として水酸化カリウム5.0gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置よりエチレンオキシド970.2g(22.0モル)とブチレンオキシド1009.4g(14.0モル)の混合物を滴下し、4時間撹拌した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095Mpa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、化合物Oを得た。化合物Oは、エタノール−EO22モル/BO14モルランダム付加物(分子量2000)である。
<化合物Pの合成>
メタノール32.0g(1.0モル)と触媒として水酸化カリウム6.0gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置よりエチレンオキシド1764.0g(40.0モル)を滴下し、4時間撹拌した。その後、さらに滴下装置よりプロピレンオキシド581.0g(10.0モル)を滴下し、4時間撹拌した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095Mpa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、化合物Pを得た。化合物Pは、メタノール−EO40モル−PO10モルブロック付加物(分子量2400)である。
【0020】
表2から明かなとおり、実施例1〜9の電解液は、分離することがなく、かつ低温において結晶が析出することがなく均一であった。また、火花発生電圧向上度が高く、さらに比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度が高いことが明らかとなった。この電解液をアルミ電解コンデンサに使用した場合、高い電導度を示すとともに、高い火花電圧向上効果を示すことが確認された。
【0021】
これに対し、比較例1の電解液はRの炭素数が本発明の範囲より大きいために、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離する結果となった。
比較例2は、a/(a+b+c)が本発明の範囲より大きいために、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離した。
比較例3は、aが本発明の範囲より大きいために、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離した。
比較例4は、a及びa/(a+b+c)が本発明の範囲より小さいために、酸の分散性が低下し、低温で電解液に酸の結晶が析出した。また、火花発生電圧向上度が十分でなく、比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度も不十分であった。
比較例5は、bが本発明の範囲より大きいために、低温で電解液に式(1)で示される化合物及び酸の結晶が析出し、また、比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度が不十分であった。
比較例6は、a/(a+b+c)が本発明の範囲より大きいために、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離した。
比較例7は、cが本発明の範囲より大きく、b/(b+c)が本発明の範囲より小さいために、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離した。
比較例8は、(a)成分が本発明の式(1)で示される化合物とは異なり、EOとBOがランダム付加であるため、式(1)で示される化合物の溶媒への溶解性が低下し、電解液が分離した。
比較例9は、(a)成分が本発明の式(1)で示される化合物とは異なり、BOが含まれていないため、酸の分散性が低下し、低温で電解液に酸の結晶が析出した。また、火花発生電圧向上度が十分でなく、比抵抗上昇度に対する火花発生電圧向上度も不十分であった。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】