(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施の形態に係る車高調整装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたは対応する部品を示す。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る車高調整装置は、緩衝器Dの外筒Tの外周に取り付けられるとともに上記緩衝器Dを伸長方向に附勢する懸架ばねS1の一方側端(
図1中上端)を支持する環状の可動ばね受け1と、この可動ばね受け1を上記緩衝器Dの軸方向に駆動する駆動手段Mとを備えている。
【0016】
さらに、上記車高調整装置は、上記可動ばね受け1を懸架ばね側(
図1中下側)に附勢する補助ばねS2と、上記外筒Tの外周に取り付けられて上記可動ばね受け1の懸架ばね側(
図1中下側)への移動を規制する車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を備えている。
【0017】
以下、詳細に説明すると、上記緩衝器Dは、車体側ブラケットB1を介して車体側に連結される外筒Tと、車輪側ブラケットB2を介して車輪側に連結されるピストンロッドRとを備えて、倒立型に設定されている。そして、上記ピストンロッドRは、外筒T内に軸方向に移動可能に挿入されており、ピストンロッドRが外筒T内に出没することで、緩衝器Dが伸縮する。
【0018】
また、緩衝器Dは、伸縮に伴い所定の減衰力を発生して懸架ばねS1の伸縮運動を抑制することができる。尚、緩衝器Dが減衰力を発生するための構成として、種々の提案があり、如何なる構成を採用してもよいため、ここでの緩衝器Dの詳細な構成の説明を省略する。また、本実施の形態において、緩衝器Dは倒立型に設定されている。しかし、図示しないが、ピストンロッドRが車体側に連結されるとともに外筒Tが車輪側に連結されて、緩衝器Dが正立型に設定されるとしてもよい。
【0019】
つづいて、上記緩衝器Dの外周には、懸架ばねS1が取り付けられており、本実施の形態において、懸架ばねS1はコイルスプリングからなる。さらに、懸架ばねS1は、車体側に連結される可動ばね受け1と車輪側に連結される固定ばね受け3との間に介装されており、可動ばね受け1と固定ばね受け3とを離間させる方向に附勢している。このため、懸架ばねS1はピストンロッドRが外筒Tから退出する伸長方向に緩衝器Dを附勢することができる。
【0020】
車体側に連結される上記可動ばね受け1は、上記したように、環状に形成されて、緩衝器Dの外筒Tの外周に軸方向に移動可能に取り付けられており、緩衝器Dを伸縮させて車高を調整するための車高調整装置を構成する。他方、上記固定ばね受け3は、環状に形成されており、車輪側ブラケットB2で支えられるとともに、懸架ばねS1で車輪側ブラケットB2に押し付けられて、軸方向に動かないようになっている。
【0021】
本実施の形態において、車高調整装置は、上記したように、上記可動ばね受け1と、この可動ばね受け1を緩衝器Dの軸方向に駆動する駆動手段Mと、可動ばね受け1を懸架ばね側に附勢する補助ばねS2と、上記外筒Tの外周に取り付けられて可動ばね受け1の懸架ばね側(
図1中下側)への移動を規制する車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を備えるとともに、筒状に形成されて上記外筒Tの外周に保持されるガイド筒4と、緩衝器Dの外筒Tに固定され上記外筒Tから外側に張り出す支持部材5とを備えている。
【0022】
そして、車高調整装置を構成する上記可動ばね受け1は、上記ガイド筒4の外周面に摺接することで、緩衝器Dの軸方向に移動可能とされており、ガイド筒4を介して緩衝器Dの外筒Tに取り付けられている。さらに、上記可動ばね受け1は、
図2に示すように、上記懸架ばねS1の車体側端(一方側端)を支持する環状の支承部10と、この支承部10の懸架ばね側面(
図2中下面)の内周縁から略垂直に起立する筒状のガイド部11とを備えており、このガイド部11で懸架ばねS1の車体側端部(一方側端部)内周を支えている。また、上記支承部10において、内周部10aの肉厚が外周部10bの肉厚よりも厚く形成されており、内周部10aが反懸架ばね側(
図2中上側)に突出している。
【0023】
つづいて、可動ばね受け1と同じく車高調整装置を構成し、可動ばね受け1を駆動する駆動手段Mは、ガイド筒4の外周で上記可動ばね受け1の反懸架ばね側(
図1、2中上側)に固定されるハウジング6と、このハウジング6とガイド筒4との間に形成されて作動流体が充填されるジャッキ室Jと、上記可動ばね受け1の反懸架ばね側(
図1、2中上側)に当接するとともにハウジング6とガイド筒4との間に移動可能に挿入されてジャッキ室Jの懸架ばね側(
図1、2中下側)開口を塞ぐジャッキピストン7と、ジャッキ室Jに作動流体を
給排するポンプP(
図1)とを備えている。
【0024】
そして、駆動手段Mを構成する上記ハウジング6は、
図2に示すように、有底筒状に形成されており、環状の底部60と、この底部60の懸架ばね側面(
図2中下面)から略垂直に起立する筒状の筒状部61とを備えており、底部60を支持部材側(
図2中上側)に向け、筒状部61を懸架ばね側(
図2中下側)に向けて配置されている。さらに、上記ハウジング6は、上記支持部材5に懸架ばねS1で押し付けられて固定されており、ハウジング6には、支持部材5が当接するハウジング6の合わせ面62から起立するピン63が取り付けられている。
【0025】
また、上記ハウジング6の筒状部61は、ガイド筒4の外周に所定の隙間をあけて配置されており、上記隙間に非圧縮性の液体からなる作動流体が収容されて環状のジャッキ室Jが形成されている。
【0026】
他方、上記ハウジング6の底部60は、内周部60aが上記筒状部61から内側に突出するとともに、内周に環状のシール64が取り付けられており、このシール64がガイド筒4の外周面に密着している。このため、上記底部60の内周部60aで上記ジャッキ室Jの反懸架ばね側(
図2中上側)開口を液密に塞ぎ、ジャッキ室Jの作動流体がハウジング6の底部60とガイド筒4との隙間から流出することを防ぐことができる。
【0027】
さらに、上記ハウジング6の底部60の支持部材側(
図2中上側)の内径が、他の部分と比較して大きく形成されており、底部60の内周面に段差65が形成されている。また、上記ハウジング6の底部60は、外周部60bが上記筒状部61から外側に張り出している。
【0028】
つづいて、上記ハウジング6と同じく、駆動手段Mを構成する上記ジャッキピストン7は、上記ハウジング6の筒状部61とガイド筒4との間に移動可能に挿入されてジャッキ室Jの懸架ばね側(
図2中下側)開口を塞ぐ環状のピストン部70と、このピストン部70の懸架ばね側(
図2中下側)に連なる延設部71とを備えている。
【0029】
そして、上記ピストン部70の内周及び外周には、それぞれ環状のシール72,73が取り付けられており、内周側のシール72がガイド筒4の外周面に摺接し、外周側のシール73が筒状部61の内周面に摺接している。このため、ジャッキピストン7は、内周側のシール72を介してガイド筒4の外周面に摺接するとともに、外周側のシール73を介して筒状部61の内周面に摺接し、ジャッキ室Jの懸架ばね側(
図2中下側)開口を液密に塞ぐことができる。
【0030】
また、ジャッキピストン7の正常可動範囲において、ジャッキピストン7がハウジング6内に最も進入している状態をジャッキ最小位置、ジャッキピストン7がハウジング6から最も退出している状態をジャッキ最大位置とすると、上記延設部71は、可動ばね受け1が最も後退するジャッキ最小位置においても、延設部71の懸架ばね側端部71aがハウジング6の筒状部61から下側に突出する。つまり、ジャッキピストン7は、延設部71の懸架ばね側端部71aが常にハウジング6から突出するように設定されている。
【0031】
また、同じく駆動手段Mを構成するポンプPは、
図1に示すように、ホースHを介して上記ジャッキ室Jに接続されており、図示しないモータで駆動されてジャッキ室Jに作動流体を
給排する。尚、作動流体を
給排するためのポンプPとして、種々の提案があり、如何なる構成を採用してもよいため、ここでのポンプPの詳細な構成の説明を省略する。また、本実施の形態において、ポンプPはモータで駆動される電動ポンプである。しかし、ポンプPが手動で駆動される手動ポンプであるとしてもよい。
【0032】
もどって、上記駆動手段Mとともに車高調整装置を構成する補助ばねS2は、本実施の形態において、コイルばねからなり、
図2に示すように、ハウジング6の筒状部61の外周に配置されるとともに、上記可動ばね受け1の支承部10の外周部10bと、上記ハウジング6の底部60の外周部60bとの間に介装されている。このため、補助ばねS2は、懸架ばねS1と直列に配置されるとともに、可動ばね受け1を懸架ばね側(
図2中下側)に附勢し、懸架ばねS1を圧縮させる方向に作用することができる。
【0033】
また、懸架ばねS1や補助ばねS2に作用する力のことを荷重とすると、車高調整装置及び懸架ばねS1が緩衝器Dに組み付けられた状態にあるとき、上記補助ばねS2の荷重は、可動ばね受け1が最も後退するジャッキ最小位置において最も大きくなる。以下、このときの補助ばねS2の荷重を補助ばねS2の組み付け時最大荷重とする。また、同じく、車高調整装置及び懸架ばねS1が緩衝器Dに組み付けられた状態にあるとき、懸架ばねS1の荷重は、ジャッキ最小位置で、且つ、緩衝器Dの最伸長時において、最も小さくなる。以下、このときの懸架ばねS1の荷重を懸架ばねの組み付け時最小荷重とする。
【0034】
そして、上記補助ばねS2の組み付け時最大荷重が上記懸架ばねS1の組み付け時最小荷重よりも小さくなるように設定されていることから、車高調整装置及び懸架ばねS1が緩衝器Dに組み付けられた状態にあるとき、補助ばねS2の荷重は、懸架ばねS1の荷重よりも常に小さくなる。このため、懸架ばねS1及び補助ばねS2が組み付けられた状態にあるとき、可動ばね受け1が懸架ばねS1で常にジャッキピストン7の懸架ばね側端部71aに押し付けられ、当接した状態に維持される。
【0035】
また、同じく車高調整装置を構成する上記ガイド筒4は、上記したように、筒状に形成されており、内側に緩衝器Dの外筒Tが挿入され、支持部材5の車輪側(
図1、2中下側)に配置されている。さらに、
図2に示すように、ガイド筒4の両端部外周には、周方向に沿う環状の溝(符示せず)がそれぞれ形成されるとともに、各溝にスナップリング2,40がそれぞれ取り付けられている。
【0036】
そして、車体側(
図2中上側)のスナップリング40は、上記ハウジング6の底部60の内周面に形成される段差65に引っ掛かるように設定されており、ガイド筒4が車体側のスナップリング40を介してハウジング6に吊り下げられた状態に保持される。
【0037】
また、ガイド筒4において、両スナップリング2,40の間に可動ばね受け1及びジャッキピストン7が摺接している。そして、本実施の形態において、車輪側のスナップリング2が本発明の車高調整装置を構成するストッパ部材であり、ガイド筒4を介して外筒Tの外周に取り付けられ、可動ばね受け1の懸架ばね側(
図2中下側)への移動を規制している。
【0038】
さらに、ストッパ部材である上記車輪側のスナップリング2は、懸架ばねS1と補助ばねS2の両方が組み付けられている状態において、可動ばね受け1が最も前進するジャッキ最大位置においても、可動ばね受け1と接触しない位置に設けられており、可動ばね受け1の移動の妨げにならないように設定されている。
【0039】
また、同じく車高調整装置を構成する支持部材5は、上記したように、緩衝器Dの外筒Tに固定され外筒Tから外側に張り出しており、外筒Tの車体側端部(
図1、2中上端部)に配置されている。尚、支持部材5は、外筒Tに動かないように固定されていればよく、支持部材5と外筒Tが螺合、溶接、嵌合、一体形成等、如何なる方法によって結合されていてもよい。さらに、
図2に示すように、支持部材5には、ハウジング6が当接する支持部材5の合わせ面50から開穿されるピン挿入穴51が形成されている。そして、ハウジング6に起立するピン63をピン挿入穴51に挿し込むことで、ハウジング6と支持部材5の回り止めをすることができ、本実施の形態においては、ピン63とピン挿入穴51とで回り止め手段を構成している。
【0040】
次に、本実施の形態に係る車高調整装置の組み付け方法について説明する。まず、
図3に示すように、ガイド筒4の外周に可動ばね受け1、補助ばねS2、スナップリング2,40、ハウジング6及びジャッキピストン7を取り付けて、ジャッキ組み立て体Aを構成する。このとき、可動ばね受け1が車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2で抜け止めされるとともに、ハウジング6も車体側のスナップリング40で抜け止めている。このため、可動ばね受け1とハウジング6が補助ばねS2で離間する方向に附勢されていても、可動ばね受け1及びハウジング6がガイド筒4から脱落することがなく、ジャッキ組み立て体Aとしての構造を維持することができる。
【0041】
そして、ジャッキ組み立て体Aを構成しているガイド筒4の内側に、支持部材5が固定された緩衝器Dの外筒Tを反支持部材側端(
図3中下端)から挿入し、ピン63をピン挿入穴51に挿し込む。
【0042】
つづいて、緩衝器DのピストンロッドRに固定された車輪側ブラケットB2に取り付けられる固定ばね受け3(
図1)と、ジャッキ組み立て体Aの可動ばね受け1との間に懸架ばねS1を介装する。このとき、ジャッキ組み立て体Aは、懸架ばねS1で支持部材5に押し付けられるため、懸架ばねS1のばね力でジャッキ組み立て体Aが緩衝器Dの外筒Tに固定される。
【0043】
次に、本実施の形態に係る車高調整装置の動作について説明する。ポンプPを駆動してジャッキ室Jに作動流体を供給すると、ジャッキピストン7がハウジング2から押し出される。このため、外筒Tが
図1中上側に押し上げられて緩衝器Dが伸長し、車高を上げることができる。
図1中、中心線Xの右側には、可動ばね受け1が最も前進するジャッキ最大位置における車高調整装置の状態が示されている。
【0044】
他方、ポンプPを駆動してジャッキ室Jから作動流体を排出させると、ジャッキピストン7がハウジング2内に押し込まれる。このため、外筒Tが
図1中下側に移動して緩衝器Dが圧縮され、車高を下げることができる。
図1中、中心線Xの左側には、可動ばね受け1が最も後退するジャッキ最小位置における車高調整装置の状態が示されている。
【0045】
次に、本実施の形態に係る車高調整装置の作用効果について説明する。本実施の形態に係る車高調整装置は、緩衝器Dの外筒Tの外周に取り付けられるとともに上記緩衝器Dを伸長方向に附勢する懸架ばねS1の一方側端(
図1中上端)を支持する環状の可動ばね受け1と、この可動ばね受け1を上記緩衝器Dの軸方向に駆動する駆動手段Mとを備えている。
【0046】
さらに、上記車高調整装置は、上記可動ばね受け1を懸架ばね側(
図1中下側)に附勢する補助ばねS2と、上記外筒Tの外周に取り付けられて上記可動ばね受け1の懸架ばね側(
図1中下側)への移動を規制する車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を備えている。
【0047】
このため、懸架ばねS1を組み付けるとき、補助ばねS2で可動ばね受け1が懸架ばね側(
図1中下側)に附勢されていたとしても、可動ばね受け1の移動をストッパ部材である車輪側のスナップリング2で規制することができる。したがって、懸架ばねS1を組み付けやすく、懸架ばねS1及び補助ばねS2の組み付け作業を容易にすることが可能となる。
【0048】
また、上記スナップリング(ストッパ部材)2は、可動ばね受け1とともにジャッキピストン7の懸架ばね側への移動も規制することができる。
【0049】
したがって、可動ばね受け1がスナップリング(ストッパ部材)2に当接し、可動ばね受け1にジャッキピストン7が当接した状態でも、ジャッキピストン7がハウジング6から外れないように設定することで、ジャッキ室Jに過剰に作動流体が供給され、ジャッキピストン7が正常可動範囲におけるジャッキ最大位置を超えてハウジング6から退出した場合においても、ジャッキピストン7がハウジング6から外れてジャッキ室Jから作動流体が漏れ出ることを抑制することができる。
【0050】
さらに、上記補助ばねS2を備えることで、懸架ばねS1の荷重が大きい場合においても、ジャッキ室Jに作動流体を供給しやすくすることができる。
【0051】
また、本実施の形態において、ストッパ部材である上記車輪側のスナップリング2は、上記懸架ばねS1及び上記補助ばねS2が組み付けられた状態にあるとき、上記可動ばね受け1と接触しない位置に設けられている。
【0052】
したがって、補助ばねS1及び懸架ばねS2の両方が組み付けられている組み付け完了状態において、車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2が可動ばね受け1の移動の妨げとならない。さらに、車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2は、懸架ばねS1が組み付けられていない状態において、可動ばね受け1の懸架ばね側(
図1中下側)への移動を規制することができる。
【0053】
また、本実施の形態において、車高調整装置は、筒状に形成されて上記外筒Tの外周に保持されるガイド筒4を備えるとともに、上記可動ばね受け1及び上記車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2が上記ガイド筒4を介して上記外筒Tに取り付けられている。
【0054】
つまり、ガイド筒4の外周面に可動ばね受け1が摺接するため、上記ガイド筒4の外周面を摺接面として滑らかに表面処理すればよく、外筒Tの外周面を摺接面として表面処理する場合と比較して、表面処理を容易にすることができる。
【0055】
また、本実施の形態のように、可動ばね受け1や車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を予め組み立ててジャッキ組み立て体Aを構成した後に、緩衝器Dの外筒Tに組み付ける場合、ガイド筒4を備えることで、ガイド筒4の外周に可動ばね受け1や車輪側のスナップリング2を保持させることができ、可動ばね受け1及び車輪側のスナップリング2をジャッキ組み立て体Aとして一体化することが容易に可能となる。したがって、本実施の形態のように、ジャッキ組み立て体Aを構成してから緩衝器Dの外筒Tに組み付ける場合において、特に有効である。
【0056】
さらに、ガイド筒4に車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を取り付けることで、ガイド筒4の摺接面が形成される範囲に可動ばね受け1を容易に維持することができる。したがって、可動ばね受け1がガイド筒4から外れ、ガイド筒4の内周面が疵付くことを抑制することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態において、上記駆動手段Mは、上記ガイド筒4の外周で上記可動ばね受け1の反懸架ばね側(
図1中上側)に固定されるハウジング6と、このハウジング6と上記ガイド筒4との間に形成されて作動流体が充填されるジャッキ室Jと、上記可動ばね1受けの反懸架ばね側(
図1中上側)に当接するとともに上記ハウジング6と上記ガイド筒4との間に移動可能に挿入されて上記ジャッキ室Jの懸架ばね側(
図1中下側)開口を塞ぐジャッキピストン7と、上記ジャッキ室Jに作動流体を
給排するポンプPとを備えている。
【0058】
したがって、上記ジャッキ室Jに作動流体を
給排することで、ジャッキピストン7をハウジング6内に出没させ、このジャッキピストン7を介して上記可動ばね受け1を容易に駆動することができる。
【0059】
また、本実施の形態のように、ジャッキピストン7が可動ばね受け1に当接し、可動ばね受け1と嵌合、接着等により結合されていない場合、可動ばね受け1が動きやすい。したがって、車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2を取り付け、可動ばね受け1の移動を規制することが特に有効である。
【0060】
また、本実施の形態において、車高調整装置は、上記外筒Tに固定され、上記外筒Tから外側に張り出す支持部材5を備えている。そして、上記ハウジング6が上記懸架ばねS1で上記支持部材5に押し付けられて、上記支持部材5を介して上記外筒Tに固定される。さらに、上記ガイド筒4が上記ハウジング6の内周に吊り下げられた状態に保持されており、上記ハウジング6を介して上記外筒Tに取り付けられている。
【0061】
したがって、懸架ばねS1のばね力で、ハウジング6及びガイド筒4を緩衝器Dの外筒Tに固定することができ、ハウジング6やガイド筒4を容易に組み付けることが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態において、回り止め手段(ピン63と、ピン挿入穴51)で上記ハウジング6と上記支持部材5が回り止めされている。
【0063】
したがって、懸架ばねS1のばね力で、ハウジング6を支持部材5に押し付けて固定し、当接のみでハウジング6と支持部材5が連なっている場合において、懸架ばねS1が伸縮に伴いハウジング6を支持部材5上で回転させようとしても、この回転を阻止することができ、ジャッキ室JとポンプPとを繋ぐホースHに負荷がかかることを抑制することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態において、上記ハウジング6は、有底筒状に形成されており、上記ガイド筒4の外周に液密に取り付けられる環状の底部60と、この底部60の懸架ばね側面(
図2中下面)から起立して上記ガイド筒4との間に上記ジャッキ室Jが形成される筒状の筒状部61とを備えている。さらに、上記底部60の外周部60bが上記筒状部61から外側に張り出しており、上記補助ばねS2が上記筒状部61の外周で、上記底部60の外周部60bと上記可動
ばね受け1との間に介装されている。
【0065】
したがって、補助ばねS2の組み付け作業を容易にすることが可能となる。また、ジャッキ室Jの外周に補助ばねS2が配置されることから、車高調整装置をコンパクトに形成することができる。
【0066】
また、補助ばねS2がハウジング6で支えられることから、補助ばねS2は、可動ばね受け1、車輪側のスナップリング(ストッパ部材)2、ガイド筒4、ハウジング6及びジャッキピストン7とともに予め組み立てられて一体化され、ジャッキ組み立て体Aを構成することができる。したがって、本実施の形態のように、ジャッキ組み立て体Aを構成してから緩衝器Dの外筒Tに組み付ける場合において、特に有効である。
【0067】
また、本実施の形態において、上記ガイド筒4の外周に上記可動ばね受け1、上記補助ばねS2、上記車体側のスナップリング(ストッパ部材)2、上記ハウジング6及び上記ジャッキピストン7を取り付けてジャッキ組み立て体Aを構成した後、上記ガイド筒4の内側に上記外筒Tを挿入し、上記懸架ばねS1の一方側端(
図1中上端)を上記可動ばね受け1に支持させて、上記ジャッキ組み立て体Aを上記懸架ばねS1で上記支持部材5に押し付けて上記外筒Tに固定する。
【0068】
したがって、緩衝器Dの外筒Tにガイド筒4を組み付けた後、可動ばね受け1、補助ばねS2、上記車体側のスナップリング(ストッパ部材)2、ハウジング6及びジャッキピストン7それぞれ組み付ける場合と比較して、組み付け作業を容易にすることが可能となる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0070】
例えば、上記実施の形態において、本発明に係るストッパ部材がスナップリング2からなるが、スナップリング以外の構成からなるとしてもよく、ガイド筒4や外筒Tに一体形成された凸部であってもよい。
【0071】
また、上記実施の形態においては、ガイド筒4の外周に可動ばね受け1、ストッパ部材(車輪側のスナップリング2)、ハウジング6やジャッキピストン7が取り付けられており、これらがガイド筒4を介して緩衝器Dの外筒Tの外周に取り付けられているが、上記外筒Tに直接取り付けられていてもよい。
【0072】
また、可動ばね受け1を駆動する駆動手段Mの構成や、駆動手段Mを構成するハウジング6やジャッキピストン7の構成及び形状も上記の限りではなく、可動ばね受け1を駆動することが可能な限りにおいて、適宜構成や形状を選択することができる。
【0073】
また、上記実施の形態において、緩衝器Dの外筒Tに固定される支持部材5を備え、懸架ばねS1でハウジング6を支持部材5に押し付けることで、ハウジング6を外筒Tに固定している。しかし、ハウジング6の固定方法は、この限りではなく、嵌合、螺合、溶接、一体形成等、如何なる方法でハウジング6が外筒Tに固定されるとしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、ハウジング6に起立するピン63を支持部材5に形成されるピン挿入穴51に挿入することで、ハウジング6と支持部材5の回り止めをしているが、ピン挿入穴51がハウジングに形成されるとともに、ピン63が支持部材5に起立するとしてもよい。さらに、ピン63とピン挿入穴51以外の方法によってハウジング6と支持部材5の回り止めをするとしてもよく、回り止め手段の構成は適宜選択することが可能である。
【0075】
また、上記実施の形態において、懸架ばねS1及び補助ばねS2がコイルばねからなるが、いずれか一方若しくは両方がエアばねからなるとしてもよい。さらに、補助ばねS2の取り付けられる位置も上記の限りではなく、ジャッキ室J内に補助ばねS2を配置するとしてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、可動ばね受け1、補助ばねS2、ストッパ部材(車輪側のスナップリング2)、ハウジング6及びジャッキピストン7がガイド筒4の外周に予め取り付けられて、ジャッキ組み立て体Aとして一体化されてから、緩衝器Dの外筒Tに組み付けられているが、この限りではなく、組み付け方法を適宜選択することができる。