(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ガイドリングは、合成樹脂製であって、上記コントロールスプリングが上記ガイドリングを介して上記シャッタを押圧することを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
上記シャッタは、筒状であって中間外周に外側へ突出する鍔部を備え、上記コントロールスプリングは、上記ガイドリングを上記鍔部に衝合させて上記シャッタを押圧することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝器Dは、
図1に示すように、シリンダ1と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入され当該シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿通されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、ピストン2に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路としての伸側ピストン通路2aおよび圧側ピストン通路2bと、伸側ピストン通路2aおよび圧側ピストン通路2bを迂回するとともにピストンロッド3内を介して伸側室R1と圧側室R2とを連通するバイパス路Bと、ピストンロッド3に対しピストンロッド3の軸方向へ移動自在に装着されてバイパス路Bを開閉するシャッタ4と、バイパス路Bを開放する方向へシャッタ4を附勢する附勢部材としてのコイルスプリング5と、一端がシリンダ1に固定される円錐コイルスプリングであるコントロールスプリング6と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるとともにコントロールスプリング6の小径側端に装着されてシャッタ4の
図1中下端に対向するガイドリング7とを備えて構成されており、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝器Dが伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝器Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
【0014】
また、この緩衝器Dにあっては、シリンダ1の外周を覆う有底筒状の外筒10を備えており、シリンダ1および外筒10の上端開口端には環状のヘッド部材11が装着され、シリンダ1の下端はバルブケース12によって閉塞されている。そして、外筒10とシリンダ1との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。伸側室R1および圧側室R2内には、作動油などの液体が充填され、リザーバR内には上記液体と気体が封入されている。
【0015】
そして、ピストンロッド3の上端は、ヘッド部材11によって摺動自在に軸支されてシリンダ1外へ突出され、緩衝器Dは、所謂、片ロッド複筒型の緩衝器とされている。なお、ピストンロッド3と外筒10との間はヘッド部材11に積層された環状のシール部材13で密にシールされている。図示したところでは、緩衝器Dがいわゆる片ロッド型に設定されているため、緩衝器Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド3の体積は、リザーバRからシリンダ1内へ液体を供給、或いは、シリンダ1からリザーバRへ液体を排出することで補償される。そのため、シリンダ1の下端を閉塞するバルブケース12には、シリンダ1からリザーバRへの液体の排出を可能とする排出通路12aと、リザーバRからシリンダ1内へ液体の供給を可能とする吸込通路12bとが設けられている。また、排出通路12aには、シリンダ1からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容し、この液体の流れに抵抗を与えて緩衝器Dの収縮作動の際にシリンダ1内の圧力を上昇せしめるベースバルブ14が設けられ、吸込通路12bには、リザーバRからシリンダ1内へ向かう液体の流れのみを許容し、緩衝器Dの伸長作動の際に開弁してシリンダ1での液体の吸込を可能とする逆止弁15が設けられている。なお、リザーバRは、外筒10とシリンダ1との間に設けるほか、シリンダ1とは別個にタンクを設けて当該タンクでリザーバRを形成するようにしてもよい。また、上記した伸側室R1、圧側室R2およびリザーバR内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。また、緩衝器Dが片ロッド型ではなく、両ロッド型に設定されてもよい。
【0016】
ピストンロッド3は、
図1に示すように、その下端側に小径部3aが形成されるとともに、小径部3aの先端外周には螺子部3bが形成されている。また、ピストンロッド3には、小径部3aの先端から開口しピストンロッド3の軸方向に沿って設けられた縦孔3cと、小径部3aの外周から開口して縦孔3cに通じる第一横孔3dおよび第二横孔3eとが設けられている。
【0017】
ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド3の小径部3aが挿入されている。また、このピストン2には、上述したように伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路として伸側ピストン通路2aと圧側ピストン通路2bが設けられている。伸側ピストン通路2aは、ピストン2の
図1中下面に積層される伸側リーフバルブ16によって開閉されるようになっており、圧側ピストン通路2bもまた、ピストン2の
図1中上面に積層される圧側リーフバルブ17によって開閉されるようになっている。
【0018】
この伸側リーフバルブ16および圧側リーフバルブ17は、共に環状に形成され、内周がピストンロッド3の小径部3aに固定されて、外周側の撓みが許容されており、撓んだ状態になるとそれぞれ対応する伸側ピストン通路2aと圧側ピストン通路2bを開放する。
【0019】
そして、伸側リーフバルブ16は、緩衝器Dの伸長作動時に上昇する伸側室R1の圧力によって撓んで開弁し伸側ピストン通路2aを開放して伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝器Dの収縮作動時には伸側ピストン通路2aを閉塞する。他方の圧側リーフバルブ17は、伸側リーフバルブ16とは反対に緩衝器Dの収縮作動時に圧側ピストン通路2bを開放して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、伸長作動時には圧側ピストン通路2bを閉塞する。すなわち、伸側リーフバルブ16は、緩衝器Dの伸長作動時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の圧側リーフバルブ17は、緩衝器Dの収縮作動時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素である。なお、図示はしないが、伸側リーフバルブ16および圧側リーフバルブ17がそれぞれ伸側ピストン通路2aおよび圧側ピストン通路2bを閉じた状態にあっても、図示はしない周知のオリフィスやチョークによって伸側室R1と圧側室R2とが連通されるようになっており、オリフィスやチョークは、たとえば、伸側リーフバルブ16および圧側リーフバルブ17の外周に切欠を設けることで形成されるか、ピストン2に設けられる。
【0020】
さらに、ピストンロッド3の小径部3aの外周であって伸側リーフバルブ16の
図1中下方には、当該伸側リーフバルブ16の撓み量を規制する環状のバルブストッパ29が積層され、また、ピストンロッド3の小径部3aの外周であって圧側リーフバルブ17の
図1中上方には、当該圧側リーフバルブ17の撓み量を規制する環状のバルブストッパ18が積層される。
【0021】
またさらに、このバルブストッパ18の上方であってピストンロッド3の小径部3aには、底部に上記小径部3aが挿通される有底筒状のケース19と、筒状であって小径部3aの外周に装着される環状のスペーサ20と、伸側減衰バルブ21と、小径部3aの外周に装着されるとともにケース19の上端開口端に嵌合される環状の仕切部材22と、圧側減衰バルブ23とが、
図1中下から順に、積層されて組み付けられている。
【0022】
スペーサ20は、上端内周に小径部3aの外周に嵌合するフランジ20aと、内外を連通する通孔20bとを備えており、ケース19の底部にスペーサ20を積層して、これらを小径部3aに固定すると、スペーサ20内がピストンロッド3に設けた第一横孔3dに対向し、通孔20bを介して縦孔3cをケース19内に連通できるようになっている。
【0023】
仕切部材22は、環状であって、小径部3aの外周に嵌合されるとともに、外周下端がケース19の開口端に嵌合するようになっていて、ケース19内と伸側室R1とを区画している。そして、仕切部材22は、伸側ポート22aと圧側ポート22bとを備えていて、これら伸側ポート22aと圧側ポート22bとでケース19内を伸側室R1に連通している。
【0024】
伸側減衰バルブ21は、この場合、環状のリーフバルブであって、仕切部材22の
図1中下面に積層されて、内周が小径部3aの外周に固定されており、伸側ポート22aの
図1中下端を閉じていて、外周側が撓むことで伸側ポート22aを開放するようになっている。したがって、伸側減衰バルブ21は、伸側室R1からケース19内へ向かう液体の流れのみを許容し、この液体の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0025】
圧側減衰バルブ23は、この場合、環状のリーフバルブであって、仕切部材22の
図1中上面に積層されて、内周が小径部3aの外周に固定されており、圧側ポート22bの
図1中上端を閉じていて、外周側が撓むことで圧側ポート22bを開放するようになっている。したがって、圧側減衰バルブ23は、ケース19内から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容し、この液体の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0026】
ピストンロッド3の小径部3aには、上記した圧側減衰バルブ23、仕切部材22、伸側減衰バルブ21、スペーサ20、ケース19、バルブストッパ18、圧側リーフバルブ17、ピストン2、伸側リーフバルブ16、バルブストッパ29および環状のストッパ33の各部材が順に組み付けられた後、螺子部3bに螺着されるピストンナット24によって、上記各部材がピストンロッド3の小径部3aの外周に固定される。
【0027】
なお、この実施の形態では、ピストンロッド3の小径部3aの圧側減衰バルブ23の
図1中上方には、緩衝器Dの伸切位置を規制するクッション30を支持する環状のクッションストッパ31が装着されていて、このクッションストッパ31も上記各部材とともにピストンナット24によって固定することができ、当該クッションストッパ31を溶接などの手間がかかる加工を要せずにピストンロッド3に固定できるようになっている。
【0028】
戻って、ピストンナット24は、シャッタ保持部材として機能しており、筒部24aと底部24bとを備えて有底筒状とされていて、筒部24aの内周に設けられてピストンロッド3の小径部3aの外周に設けた螺子部3bに螺着する螺子部24cと、筒部24aの
図1中下方の外周に設けたフランジ24dと、筒部24aの螺子部24cよりも上方に設けられて筒部24aの内外を連通する透孔24eとを備えて構成されている。
【0029】
そして、ピストンナット24をピストンロッド3の螺子部3bに螺着して、上記したピストンロッド3に組み付けられる各部材をピストンナット
24に固定した状態で、透孔24eはピストンロッド3の第二横孔3eに対向するようになっていて、透孔24eを介して縦孔3cを圧側室R2に連通することができるようになっている。なお、ピストンナット24は、底部24bを有しているので、ピストンロッド3の下端から開口する縦孔3cを透孔24e以外を介して直接に圧側室R2に連通させないようにしている。
【0030】
上記したところから、ピストンロッド3に設けた縦孔3cは、ケース19内、伸側ポート22aおよび圧側ポート22bを介して伸側室R1に通じ、透孔24eを介して圧側室R2に通じている。つまり、伸側ポート22aおよび圧側ポート22b、ケース19内、第一横孔3d、縦孔3c、第二横孔3eおよび透孔24eは、減衰通路としての伸側ピストン通路2aおよび圧側ピストン通路2bを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通しており、バイパス路Bを形成している。そして、透孔24eは、バイパス路Bの出口端を形成している。
【0031】
つづいて、ピストンナット24の筒部24aの外周には、シャッタ4がピストンロッド3の軸方向である
図1中上下方向に摺動自在に装着されており、当該シャッタ4はピストンロッド3にピストンナット24を介して取り付けられている。
【0032】
シャッタ4は、この場合、筒状であって、上端側の小径筒部4aと、下端側の大径筒部4bと、小径筒部4aの内外を連通する絞り通路4cとを備えて構成されており、小径筒部4aをピストンナット24の筒部24aの外周であってフランジ24dよりも上方に摺接させるとともに大径筒部4bをフランジ24dの外周に摺接させることでピストンナット24の外周に装着されている。
【0033】
シャッタ4は、小径筒部4aをピストンナット24のフランジ24dよりも上方に配置してピストンナット24に装着されるため、シャッタ4の
図1中下方への移動限界がフランジ24dと小径筒部4aの内周下端との衝合によって規制され、ピストンナット24から脱落することがないようになっている。また、シャッタ4は、バルブストッパ29の
図1中下方に積層されてピストンナット24によってピストンロッド3に固定される環状のストッパ33の
図1中下面に衝合するまで移動すると、ピストンナット24に対してそれ以上の
図1中上方への移動が規制されるようになっている。なお、ストッパ33は、ピストン2に積層する伸側リーフバルブ16、圧側リーフバルブ17、仕切部材22に積層する伸側減衰バルブ21および圧側減衰バルブ23の積層枚数によって変化してしまうピストンロッド3に対するピストンナット24の軸方向の位置を調節することに利用することができるので、この場合、ストッパ33を設けているが、シャッタ4の
図1中上方の移動限界の規制については、ストッパ33を省略して、バルブストッパ29によって行うようにしてもよい。
【0034】
そして、シャッタ4は、ピストンナット24に対して軸方向へ移動して、小径筒部4aでピストンナット24に設けた透孔24eを完全に覆うとバイパス路Bを閉鎖でき、また、小径筒部4aが透孔24eよりも
図1中下方に位置する状態では透孔24eと圧側室R2とを連通させてバイパス路Bを開放することができるようになっている。
【0035】
また、シャッタ4の内周とピストンナット24の外周との間には、小径筒部4aの内周下端とピストンナット24のフランジ24dの
図1中上面とが遠近することで容積が拡縮される油溜室Cが形成されている。この油溜室Cは、シャッタ4の小径筒部4aの内周とピストンナット24の筒部24aとの摺動隙間と、絞り通路4cを介して圧側室R2内に連通される。なお、絞り通路4cは、直接、透孔24eとは対向しない位置に設けられている。
【0036】
さらに、シャッタ4は、附勢部材としてのコイルスプリング5によって、
図1中下方へ附勢されている。具体的には、コイルスプリング5は、シャッタ4の大径筒部4bの外周上端とバルブストッパ29との間に圧縮状態で介装されていて、シャッタ4を常に
図1中下方へ附勢している。
【0037】
そして、シャッタ4は、詳しくは後述するコントロールスプリング6に当接しない状態では、ピストンナット24のフランジ24dと小径筒部4aの内周下端とが衝合してシャッタ4がそれ以上ピストンナット24に対して
図1中下方へ移動できない最下方へ位置決めている。このように、シャッタ4が油溜室Cを最圧縮する状態では、シャッタ4は、透孔24eに対向せず、バイパス路Bを開放する。なお、バイパス路Bの出口端をピストンナット24に設けているのでピストンナット24を介してシャッタ4をピストンロッド3に取り付けるようにしているが、ピストンナット24を必要とせず、ピストンロッド3にバイパス路Bの出口端を設けるような場合には、ピストンロッド3に直接シャッタ4をピストンロッド3の軸方向へ摺動可能に取り付けるようにすることも可能である。
【0038】
コントロールスプリング6は、一端である
図1中下端が拡径された円錐コイルスプリングであって、この一端がシリンダ1の内周に圧入されていて、シリンダ1の下端に固定されている。そして、コントロールスプリング6の他端である
図1中上端の内周には、ガイドリング7が装着されている。
【0039】
ガイドリング7は、合成樹脂で形成されていて、コントロールスプリング6の上端内周に圧入される筒状の圧入部7aと、当該圧入部7aの一端から外側へ向けて突出してシリンダ1の内周に摺接するとともにコントロールスプリング6の小径側端である上端に支承されるガイド部7bと、ガイド部7bに周方向に等間隔をもって設けた複数の切欠7cを備えて構成されている。また、ガイドリング7の圧入部7aの内径は、ピストンナット24の筒部24aの下端外径よりも大径に設定されていて、ガイドリング7がピストンナット24と干渉しないように配慮されている。さらに、ガイドリング7のガイド部7bの上端がシャッタ4の大径筒部4bの
図1中下端に対向している。なお、ガイド部7bに切欠7cを設けているのは、ガイド部7bとシャッタ4との衝合の際に、当該ガイド部7bとシャッタ4とで圧側室R2の下方に閉鎖空間が形成されてしまって、緩衝器Dの作動に支障をきたさないようにするためである。
【0040】
したがって、コントロールスプリング6の上端に装着したガイドリング7のガイド部7bがシャッタ4の大径筒部4bに衝合するまで緩衝器Dが収縮して、さらに、コントロールスプリング6がシャッタ4をピストンナット24に対して
図1中上方へ押し上げて、当該シャッタ4の小径筒部4aが透孔24eを覆うようになるとバイパス路Bが遮断されるようになる。そして、この場合、ピストン2がシリンダ1に対して所定位置を超えて圧側室R2側へ変位すると、シャッタ4がガイドリング7に当接するようになっており、この所定位置は、コントロールスプリング6の長さとシャッタ4の長さによって調節することができる。反対に、ガイドリング7がシャッタ4に当接しない場合、コントロールスプリング6によってシャッタ4が押圧されることが無いので、上記したように、コイルスプリング5によってシャッタ4が
図1中下方へ押し下げた状態に維持され、バイパス路Bが開放される。
【0041】
また、ガイドリング7は、シリンダ1の内周に摺接しており、コントロールスプリング6の上端をシリンダ1内で径方向に位置決めるので、緩衝器Dに振動等が入力されても、コントロールスプリング6の上端が振れることがなく、コントロールスプリング6がシリンダ1の内周に干渉することを防止している。また、ガイド部7bの形状は、環状とされずともよく、シリンダ1に対してコントロールスプリング6の上端を径方向に位置決めることができる形状であればよい。
【0042】
緩衝器Dは、以上のように構成され、つづいて、緩衝器Dの作動について説明する。まず、ガイドリング7がシャッタ4に当接しない状態、つまり、ピストン2がシリンダ1に対して圧側室R2側へ所定位置以内の範囲でストロークする場合、シャッタ4はコントロールスプリング6によって押圧されないため、バイパス路Bは常に開放状態となる。
【0043】
すると、この場合、緩衝器Dの伸縮に伴って、伸側室R1と圧側室R2とを液体が行き来するが、バイパス路Bが開放状態に維持されるため、伸長作動時には、液体は、伸側リーフバルブ16を開いて減衰通路としての伸側ピストン通路2aを通過するだけでなく、伸側減衰バルブ21をも開いてバイパス路Bを介しても伸側室R1から圧側室R2へ移動する。反対に、収縮作動時には、液体は、圧側リーフバルブ17を開いて減衰通路としての圧側ピストン通路2bを通過するだけでなく、圧側減衰バルブ23をも開いてバイパス路Bを介しても圧側室R2から伸側室R1へ移動する。
【0044】
このように、ピストン2がシリンダ1に対して圧側室R2側へ所定位置以内の範囲でストロークする場合、緩衝器Dは、バイパス路Bを介しても液体を伸側室R1と圧側室R2とを行き来させるので、低い減衰力を発揮することができる。
【0045】
つづいて、緩衝器Dが適用された車両へ積荷が多く積み込んで積載荷重が大きくなり、ピストン2がシリンダ1に対して所定位置を超えて圧側室R2側へ変位するようになると、コントロールスプリング6がシャッタ4を押し上げて、バイパス路Bが閉塞される。この場合に緩衝器Dが伸縮すると、伸長作動時には、液体は、伸側リーフバルブ16を開いて減衰通路としての伸側ピストン通路2aのみを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動し、収縮作動時には、液体は、圧側リーフバルブ17を開いて減衰通路としての圧側ピストン通路2bのみを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動することになる。したがって、この場合、緩衝器Dは、バイパス路Bが開放されている状態で出力する減衰力よりも高い減衰力を発揮することになる。よって、緩衝器Dは、積載荷重が大きくなると自動的に減衰力を大きくでき、自動的に減衰特性を調節することができる。
【0046】
また、緩衝器Dが伸縮する際に、特に、ピストン2がシリンダ1に対して
図1中上方へ移動する伸長作動時においては、コントロールスプリング6がシャッタ4から離れて押圧せず、収縮作動時においては、コントロールスプリング6がシャッタ4を押圧するような状況では、シャッタ4がコントロールスプリング6によって上方へ押圧される状態とコイルスプリング5によって下方へ押圧される状態が繰り返されることになり、シャッタ4とピストンナット24との間に形成される油溜室Cが拡縮を繰り返す。油溜室Cがシャッタ4の小径筒部4aの内周とピストンナット24の筒部24aとの摺動隙間と、絞り通路4cを介して圧側室R2内に連通されているため、この摺動隙間と絞り通路4cが液体の急峻な流れを抑制するため油溜室Cの拡縮が抑制されて、ピストンナット24に対するシャッタ4の急峻な変位も抑制される。
【0047】
したがって、積載荷重によってピストン2がシリンダ1に対して所定位置を超えて圧側室R2側へ変位した際のピストン位置を中心として緩衝器Dが振動する場合、バイパス路Bがシャッタ4によって閉塞されるのが常態であるので、緩衝器Dの伸長作動によってシャッタ4がコイルスプリング5によって押圧されてもシャッタ4の変位が緩慢となってバイパス路Bが開放されてしまうことを抑制でき、減衰特性が切り替わって減衰力が低くなることが抑制される。また、積載荷重が軽く、ピストン2がシリンダ1に対して所定位置よりも伸側室R1側の範囲にあり、そのピストン位置を中心として緩衝器Dが振動する場合、バイパス路Bが開放されるのが常態であるので、緩衝器Dの収縮作動によってシャッタ4がコントロールスプリング6によって押圧されてもシャッタ4の変位が緩慢となってバイパス路Bが閉塞されてしまうことを抑制でき、減衰特性が切り替わって減衰力が高くなることが抑制される。
【0048】
そして、この緩衝器Dによれば、コントロールスプリング6が、他端側を小径にした円錐コイルスプリングであり圧縮時に膨径してもシリンダ1に干渉しないだけでなく、コントロールスプリング6の小径側端にシリンダ1の内周に摺接するガイドリング7を装着していてコントロールスプリング6が振れてその外周がシリンダ1の内周に干渉することも皆無となる。このように、この緩衝器Dにあっては、ピストン2が摺動する摺動面であるシリンダ1の内周を傷つけることがないから、シリンダ1の内周にできた傷でピストン2を跨いで伸側室R1と圧側室R2とが連通されてしまうことが無くなり、長期間にわたって狙い通りの減衰力を安定して発揮することができ、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
【0049】
また、ガイドリング7が合成樹脂製であって、コントロールスプリング6がガイドリング7を介してシャッタ4を押圧するようにすることで、コントロールスプリング6とシャッタ4との直接の衝合を回避でき、接触音を軽減することができる。なお、接触音の軽減を要しない場合、ガイドリング7をコントロールスプリング6へシリンダ1との干渉を回避するように装着すれば足りるため、コントロールスプリング6で直接にシャッタ4を押圧するようにすることも可能である。
【0050】
さらに、バイパス路Bに伸側減衰バルブ21と圧側減衰バルブ23を設けたので、積載荷重が軽い状態でバイパス路Bが開放されて緩衝器Dが低い減衰力を発揮する状態において、伸長作動時の減衰特性と収縮作動時の減衰特性を別個独立して設定することができ、より車両に適した減衰特性を実現でき、車両における乗り心地を向上させることができる。
【0051】
そしてさらに、シャッタ保持部材をピストンナット24とし、伸側リーフバルブ16および圧側リーフバルブ17をピストンロッド3にこのピストンナット24で固定する際に、シャッタ4も同時にピストンロッド3に組付けることができ、組付加工が非常に簡単となる。
【0052】
なお、ガイドリング71の構造は、
図2に示した一実施の形態の一変形例における緩衝器D1のようにしてもよい。なお、ガイドリング71以外の部材は、緩衝器Dと同じ部材を使用しており、同じ部材については説明が重複するので同じ符号を付すこととして詳しい説明を省略する。この場合、ガイドリング71は、コントロールスプリング6内に挿入される筒状の連携部71aと、当該連携部71aの一端から外側へ向けて突出してシリンダ1の内周に摺接するとともにコントロールスプリング6の小径側端に支承されるガイド部71bと、連携部71aの他端から内側へ向けて突出してシャッタ4の
図2中下端に対向する衝合部71cとを備えて構成されている。なお、この場合、衝合部71cは、環状であって、内径はピストンナット24の下端外径よりも大径に設定されていて、ガイドリング71とピストンナット24とが干渉しないようになっている。なお、この実施の形態の場合、ガイド部71bに切欠71dが設けてあり、ガイド部71bとシャッタ4との衝合の際に、当該ガイド部71bとシャッタ4とで圧側室R2の下方に閉鎖空間が形成されてしまって、緩衝器D1の作動に支障をきたさないようにしている。
【0053】
このようにすることで、コントロールスプリング6を上述した緩衝器Dに比較してシリンダ1に対して上方へ配置することできるようになるから、その分、シリンダ1の下方側を短くすることができ、同じストローク長を確保するのであれば、緩衝器D1の全長を緩衝器Dの全長よりも短くすることができる。
【0054】
さらに、シャッタ41の構造は、
図3に示した一実施の形態の他の変形例における緩衝器D2のようにしてもよい。なお、シャッタ41以外の部材は、緩衝器Dと同じ部材を使用しており、同じ部材については説明が重複するので同じ符号を付すこととして詳しい説明を省略する。この場合、シャッタ41は、筒状であって中間外周に外側へ突出する鍔部41aを備えている。より詳しくは、シャッタ41は、上端側の小径筒部41bと、小径筒部41bに連なる下方側の大径筒部41cと、大径筒部41cの上端外周から外側へ突出する鍔部41aと、小径筒部41bの内外を連通する絞り通路41dとを備えて構成されており、小径筒部41bをピストンナット24の筒部24aの外周であってフランジ24dよりも上方に摺接させるとともに大径筒部41cをフランジ24dの外周に摺接させることでピストンナット24の外周に装着されている。
【0055】
このようにシャッタ41の中間部の外周に鍔部41aを設けて、この鍔部41aにガイドリング7のガイド部7bを衝合させるようにし、圧入部7aの内周を大径筒部41cの外周に摺接させるか、圧入部7aの内径を大径筒部41cの外径よりも大径に設定してあって、ガイドリング7が鍔部41aに衝合することを可能としている。
【0056】
このようにすることで、コントロールスプリング6を上述した緩衝器Dに比較してシリンダ1に対して上方へ配置することできるようになるから、その分、シリンダ1の下方側を短くすることができ、同じストローク長を確保するのであれば、緩衝器D2の全長を緩衝器Dの全長よりも短くすることができる。なお、コイルスプリング5を大径筒部41cと小径筒部41bの間の段部41eとバルブストッパ29との間に介装しているので、鍔41aを大径筒部41cの外周に設けているが、附勢部材を小径筒部41bの上端とバルブストッパ29との間に介装する皿ばね等とする場合には、小径筒部41bの外周に鍔41aを設けることも可能である。
【0057】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。