【実施例】
【0014】
図1〜
図7に実施例の天井走行車システム2を示す。4は天井走行車で、天井走行車の軌道6に沿って走行し、8はローカル台車で、ローカル台車の軌道10に沿って走行する。ローカル台車の軌道10はロードポート16,17の周囲のみに設けられ、天井走行車の軌道6,ローカル台車の軌道10,ロードポート16,17の順に上下に重ねて配置されている。またローカル台車の軌道10は、
図2、
図3に示すように、通路18側のレール10bと処理装置13側のレール10aの、左右一対のレールより成る。レール10a,10b間の隙間は、物品14の
図2での左右の幅よりも広いので、物品14と後述の昇降台24,26はレール10a,10b間の隙間を上下に通過できる。なお処理装置13に1個あるいは3個以上のロードポートを設けても良い。
【0015】
12はバッファで、ローカル台車の軌道10の直下で、ロードポート16,17の直上部を除く位置に設けられ、FOUP等の物品14を載置する。これ以外の位置にバッファを設けても良いが、軌道10の直下のバッファ12以外は実施例とは直接の関係がない。また18は作業者等の通路で、ロードポート16,17を基準として、水平面内の一方が処理装置13側で、他方が通路18側である。さらにロードポート16,17の通路側が、下方監視センサ36の監視エリアである。
【0016】
天井走行車4は横移動装置20と回動装置21及びホイスト22を備え、横移動装置20は回動装置21及びホイスト22を軌道6に対し水平面内で直角な方向へ横移動させ、軌道6の左右に設けた図示しないバッファにアクセスできるようにする。回動装置21はホイスト22を旋回させて、物品14の向きを変化させる。ホイスト22は昇降台24を昇降させて、物品14をロードポート16,17及びバッファ12等との間で移載する。なお横移動装置20と回動装置21は設けなくても良い。25はベルトで昇降台24を支持し、例えば前後左右の4本のベルトから成り、ベルト25の代わりにワイヤ、ロープ等の他の吊持材を用いても良い。
【0017】
ローカル台車8は、レール10a,10b上を走行するための車輪と走行モータ等を備え、ホイスト27により昇降台26を昇降させ、バッファ12とロードポート16,17間で物品14を移載する。天井走行車システム2では、天井走行車4とローカル台車8が共にバッファ12とロードポート16,17に対して物品14を移載できる。しかし天井走行車4はバッファ12への物品14の搬入とロードポート16,17からの物品14の搬出を行い、ローカル台車8がバッファ12からロードポート16,17へ物品を搬入する等のように、天井走行車システム2を運用しても良い。
【0018】
軌道6,10は支柱28,30により例えば天井側から吊り下げられ、バッファ12は鉛直下向きの支柱32により軌道10から吊り下げられている。そしてバッファ12は、軌道6,10の長手方向(天井走行車4とローカル台車8の走行方向)に沿って、例えばロードポート16,17の上流側と下流側の双方に設けられているが、これらの一方にのみ設けても良い。またロードポート16,17の直上部には、水平なフレーム等のバッファ12の部材はなく、バッファ12がロードポートへの物品14の搬出入を妨げないようにしてある。
【0019】
ロードポート16,17毎に、その直上部に下方監視センサ36が設けられて、ロードポート16,17の通路側の障害物を監視する。障害物は例えばロードポート16,17へ腕、ヘルメット等を接近させている作業者で、下方監視センサ36は、例えば扇状にビーム37を投射して、障害物からの反射光を検出するレーザビームセンサである。
図1〜
図3にビーム37の形状を示し、ロードポート16,17への物品14の昇降経路及びロードポート16,17を除外して、ロードポート16,17よりも通路18寄りのエリアを監視する。天井走行車4はロードポート16,17の障害物を検出するため、同様の下方監視センサ38を備えているが、ローカル台車8の軌道10を誤検出する可能性が高い。そこでロードポート16,17に対しては、天井走行車4の下方監視センサ38の信号を無効とする。なお実施例では下方監視センサ36をロードポート16,17毎に設けているが、隣接するロードポート16,17を1個の下方監視センサで監視しても良い。
【0020】
ロードポート16,17から見て通路18側の障害物を監視する他に、昇降台24,26に支持された物品14の横揺れを検出する。即ち物品14はレール10a,10bの隙間を通過するので、ローカル台車の軌道10の長手方向と水平面内で直角な方向に横揺れすると、レール10a,10bに接触する可能性がある。特に物品14を上昇させる際に、4本のベルト25の巻き取りが同期しないと、横揺れが始まる可能性が高い。またロードポート16,17から物品14を上昇させる際に横揺れする可能性が高く、バッファ12から上昇させる際には横揺れの可能性は低い。そこで例えば軌道10の上下でかつ平面視でレール10aの内側端部と同じか僅かに内側の位置の監視ラインに、物品14が接触するか否かにより、横揺れを検出する。検出のため、発光素子と受光素子とを備えた投受光センサ40とミラー41とを監視ラインの両端に配置する。少なくともロードポート16,17の上部でローカル台車の軌道10の下部に監視ラインL1を設け、好ましくはローカル台車の軌道10の上部にも監視ラインL2を設ける。これ以外にバッファ12の上部でローカル台車の軌道10の下部に監視ラインL3を追加しても良い。
【0021】
図3は各センサ36,40の配置を示し、レール10b側の下方監視センサ36によりロードポート16,17の通路側のエリアをビーム37で監視する。またレール10aの内側の端部と、平面視で同じか僅かに内側(レール10b側)の監視ラインL2を投受光センサ40とミラー41とで監視する。さらに監視ラインL2と上下に重なるように、監視ラインL1を設けて、支柱32等に取り付けた投受光センサ40とミラー41とで監視する。なお投受光センサ40とミラー41との代わりに、発光素子と受光素子との組み合わせを用いても良い。さらに投受光センサ40とミラー41をレール10b側に設けても良い。また地面との間の静電容量を監視し、物品14が接近することを静電容量の変化から検出する近接センサ43等を、投受光センサ40とミラー41の代わりに用いても良い。例えばレール10aに上下方向を向いたポール43’を取り付け、このポール43’に近接センサ43を取り付けても良い。
【0022】
図1に示すように、軌道6の各移載位置には地上側端末42が設けられて、天井走行車4の通信端末と通信し、軌道10の各移載位置には地上側端末44が設けられて、ローカル台車8の通信端末と通信する。なお
図2,
図3では、端末42,44を省略する。
図4に、移載時の通信と監視とを示す。天井走行車4は通信端末56を備え、ローカル台車8は通信端末64を備えている。34はローカル台車コントローラでローカル台車とバッファへの物品の搬出入とを管理し、48は処理装置側コントローラで、ロードポートへの物品の搬出入を管理する。スイッチ46はバッファ及びロードポートの対毎に設けられて、コントローラ34,48と通信端末42,44を接続し、通信端末42,44の一方のみを天井走行車4あるいはローカル台車8と通信可能にする。また下方監視センサ36と上下の投受光センサ40の信号はスイッチ46へ入力され、これらのセンサのいずれかが障害物を検出すると、スイッチ46は通信端末42,44と天井走行車4及びローカル台車8との通信を禁止する。
【0023】
天井走行車4とローカル台車8は、バッファあるいはロードポートとの間で物品を移載する際に、端末42,44へ移載要求信号を送信する。これに対して移載確認信号(移載が許可された旨の信号)を受信すると、移載を開始できる。また移載の完了までの間、通信を維持し、この間に通信が途絶えると、昇降台の昇降を中止し、通信の再開を待つ。そして移載終了後まで、天井走行車4とローカル台車8は、端末42,44との間で信号を交換する。なお通信を遮断する代わりに、下方監視センサ36と上下の投受光センサ40の信号により、障害物検出信号を天井走行車4あるいはローカル台車8へ送信しても良いが、信号の種類が増すため、制御が複雑になる。
【0024】
図5は天井走行車4の制御系を示し、通信部50は図示しない天井走行車コントローラと通信して搬送指令を受信し、機上コントローラ51は天井走行車4に対する全体的な制御を行い、マップ52は軌道6の配置データを記憶し、このデータには、移載位置と、移載時の下方監視センサ38による監視の要否等が含まれている。そして下方監視センサ36が設けられたロードポート16,17に対して、マップ52のデータでは下方監視不要とされて、下方監視センサ38をオフしもしくはその信号を無視する。通信端末56は地上側端末42と通信し、移載のプロトコルに沿って信号を交換し、移載中は通信を維持する。走行制御部53は天井走行車4の走行を制御し、移載制御部54はホイスト22等を制御する。
【0025】
図6はローカル台車8の制御系を示し、通信部60はローカル台車コントローラ34と通信して指令を受信する。通信端末64は地上側端末44と通信し、移載のプロトコルに沿って信号を交換し、移載中は通信を維持する。走行制御部61はローカル台車8の走行を制御し、移載制御部62はホイスト27を制御する。
【0026】
図7に移載のプロトコルを示す。天井走行車4及びローカル台車8は、バッファ12及びロードポート16,17との移載前に、地上側端末42,44との通信を確立する(ステップ1)。以下では、地上側端末42,44は、同じバッファ12あるいは同じロードポート16,17に対する端末であるとする。スイッチ46は、地上側端末42,44の一方のみに対して通信を可能にするので、天井走行車4とローカル台車8が同時に同じバッファ12あるいは同じロードポート16,17に対して移載を開始することはない。またデフォールトでは、地上側端末42は通信可能、 地上側端末44は通信不能で、ローカル台車8が走行する範囲に対し、ローカル台車コントローラ34が地上側端末44と通信可能なようにスイッチ46の状態を切り替える。そして通信の開始から移載の終了まで、地上側端末42,44の通信の可否は変更不能である。このようにすると、天井走行車4が通信を開始している位置の下方へローカル台車8は進入できない。またローカル台車8が通信を開始している位置の上方では、天井走行車4は通信を要求できない。
【0027】
天井走行車4及びローカル台車8は、移載の開始前に地上側端末42,44との間で移載要求信号と移載確認信号とを交換し、次いで昇降台を下降させて移載を開始する。例えば移載の開始時に、ローカル台車の軌道10に取り付けた下方監視センサ36が監視を開始し(ステップ2)、ロードポート16,17へアクセスしようとする作業者等の障害物を検出すると、スイッチ46は地上側端末42,44の通信を禁止する。通信が遮断されると、天井走行車4及びローカル台車8は昇降台の昇降を停止し、下方監視センサ36が障害物を検出しなくなるのを待つ。またマップのデータにより、天井走行車4の下方監視センサ38をオフするか、あるいは天井走行車4が下方監視センサ38の信号を無視するようにされている。
【0028】
物品14がローカル台車の軌道10の上部を通過する際と下部を通過する際とに、投受光センサ40により物品の横揺れを監視し(ステップ3,4)、投受光センサが横揺れしている物品を検出すると、ホイストを停止させ、横揺れが収まるのを待つ。この監視は物品がローカル台車の軌道10に干渉することを防止するために行い、昇降台の下降時は軌道10の下部での監視を省略しても良い。なおバッファ12に対しては、上昇開始直後に軌道10を通過すること等のため、軌道10の下部での監視を省略しても良い。
【0029】
ロードポート16,17あるいはバッファ12に対して物品を受け渡しすると(ステップ5)、昇降台を上昇させる。下方監視センサ36による監視を継続し、物品がローカル台車の軌道10の下部を通過する際と上部を通過する際とに、投受光センサ40により物品の横揺れを監視する(ステップ3,4)。また昇降台の上昇時は軌道10の上部での監視は省略しても良い。
【0030】
昇降台が復帰すると下方監視センサによる監視を終了し(ステップ6)、天井走行車4及びローカル台車8は地上側端末42,44との間で、移載が終了した旨の信号を交換し、通信を終了する(ステップ7)。なお下方監視センサによる監視は、例えば物品が軌道10付近まで上昇した時等に終了しても良い。
【0031】
実施例では以下の効果が得られる。
1) ロードポート16,17の直上部にバッファ12のフレーム等がないので、物品14の移載が容易である。
2) レール10bに取り付けた下方監視センサ36により直下の障害物を検出するので、ロードポート16,17の通路側の障害物を確実に検出できる。
3) 天井走行車4の下方監視センサ38を用いないので、ローカル台車の軌道10等を障害物として誤検出することがない。
4) 物品14がローカル台車の軌道10を通過する前に、投受光センサ40により物品14の横揺れを検出するので、物品14がローカル台車の軌道10に接触することを防止できる。
5) 下方監視センサ36及び投受光センサ40を、天井走行車4とローカル台車8の双方のために用いることができる。
6) 下方監視センサ36が障害物を検出しても、投受光センサ40が横揺れを検出しても、いずれも地上側端末42,44の通信を禁止することにより、昇降台の昇降を停止できる。
7) 下方監視センサ36または投受光センサ40の信号により、コントローラ34,48を経由せずに、スイッチ46により通信を禁止する、従ってより確実に移載を停止させることができる。