(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、HCV感染の治療を最適化することである。
【0035】
さらなる目的は、フラビウイルス科ウイルス感染を治療するための2’−分枝ヌクレオシド、特に2’−分枝ピリミジンヌクレオシドの最適な投与を提供することである。
【0036】
本発明のもう一つの目的は、2’−分枝ピリミジンヌクレオシド単独の投与に勝る利点、すなわち改善された薬物動態、生体内分布、代謝、耐性または他のパラメータを示す、ペスチウイルス、フラビウイルスまたはヘパシウイルスに感染している患者を治療するための2’−分枝ヌクレオシドを含む方法および組成物を提供することである。
【0037】
本発明のさらにもう一つの目的は、2’−分枝ヌクレオシド、特に2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを、ウイルスに対して2’−分枝ピリミジンヌクレオシドと相乗的にまたは2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを伴って有利に作用する1つ以上の化合物と併用および/または交代で投与する、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0038】
本発明の尚もう一つの目的は、ペスチウイルス、フラビウイルスまたはヘパシウイルスの薬物耐性形に感染している患者を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0039】
本発明の目的は、フラビウイルス科ウイルスの突然変異株を同定するための方法およびキットを提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
(発明の要約)
2’−分枝ヌクレオシド、例えば下に示す2’−分枝ヌクレオシド、特に、2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(化合物β−D−2’−CH
3−リボCなど)または2’−分枝プリンヌクレオシド(化合物β−D−CH
3−リボアデノシンまたはβ−2’−分枝リボ−6−N−メチルアミノアデノシンを含む)の長期使用は、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存配列XRXSGXXXT内においてセリンをコードしているヌクレオチド(
図11)における突然変異を伴い、この突然変異に起因して、前記アミノ酸残基セリンが、別のアミノ酸、例えばトレオニンに変化する。このドメインは、HCVゲノムのNS5B領域ならびに他のフラビウイルスのゲノムにおいて見出させる。この領域は、ヘパシウイルスゲノム、ペスチウイルスゲノムおよびフラビウイルスゲノムすべての間で高度に保存されている(
図11、Laiら,J Virol.1999,73,10129−36)。
【0041】
本発明の一つの実施態様において、2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0042】
【化1】
(式中、
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えられるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上により場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
4は、水素、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2であり;および
塩基は、本明細書でさらに説明するようなプリンまたはピリミジンである。)
ものまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩である。
【0043】
第二の実施態様において、2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0044】
【化2】
(式中、
塩基は、本明細書で定義するようなプリンまたはピリミジン塩基であり;
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩を含む);直鎖、分枝鎖または環状アルキル(低級アルキルを含む);アシル(低級アシルを含む);CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、CO−アリールオキシアルキル、CO−置換アリール、スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上により場合により置換されているベンジル;アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
6は、アルキル(低級アルキルおよびハロゲン化アルキルを含む)、CH
3、CF
3、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、2−Br−エチル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、CF
3、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;
R
7は、水素、OR
3、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり、
Xは、O、S、SO
2またはCH
2であり、
塩基は、本明細書でさらに説明するようなプリンまたはピリミジンである。)
のものまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩である。
【0045】
本発明の第三の実施態様において、2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0046】
【化3】
(式中、
塩基は、本明細書で定義するようなプリンまたはピリミジン塩基であり;
R
6は、アルキル(低級アルキルおよびハロゲン化アルキルを含む)、CH
3、CF
3、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、2−Br−エチル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、CF
3、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;
R
7は、OR
2、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、ハロ−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり、
R
9は、水素、OR
3、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;
R
10は、H、アルキル(低級アルキルを含む)、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり;
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩を含む);直鎖、分枝鎖または環状アルキル(低級アルキルを含む);アシル(低級アシルを含む);CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、CO−アリールオキシアルキル、CO−置換アリール、スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上により場合により置換されているベンジル;アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
Xは、O、S、SO
2またはCH
2である。)
のものである。
【0047】
BVDV感染の場合、2’−分枝ヌクレオシド、特に、化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、BVDVのRNAポリメラーゼの第1214位残基におけるグアニン(G)からシチジン(C)への突然変異を誘発し、それに起因して前記酵素の第405位におけるアミノ酸残基セリンがチオニンへと変化する。このセリン残基は、RNAポリメラーゼのドメインBの保存コンセンサス配列(XRXSGXXXT)(
図5および11)内に位置し、それは突然変異分析によって同定されている(Lai V.C.,Kao C.C.,Ferrari E.,Park J.,Uss A.S.,Wright−Minogue J.,Hong Z.,and J.Y.Lau.「ウシウイルス性下痢ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの突然変異分析(Mutational analysis of bovine viral diarrhea virusRNA−dependent RNA polymerase)」J Virol.1999,73,10129−36)。
【0048】
HCV感染の場合、2’−分枝ヌクレオシド、特に、化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内におけるセリン
282をコードしているヌクレオチド(
図11)において突然変異を誘発し、それに起因してセリンがトレオニンなどの別のアミノ酸に変化する。
【0049】
さらに、2’−分枝ヌクレオシドおよびインターフェロンが相乗的に作用して、フラビウイルス科ウイルスを阻害することを発見している。特に、併用および/または交代で投与された化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドまたは化合物β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノアデノシンなどの2’−分枝プリンヌクレオシドと、インターフェロンアルファ−2bは、相乗的に作用して、フラビウイルス科ウイルスを阻害する。さらに、2’−分枝ヌクレオシド治療後、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC治療後に出現する耐性ウイルス集団は、インターフェロンでのその後の治療に対して感受性増大を示すことを発見した。従って、2’−分枝ヌクレオシドとインターフェロンの逐次および/または併用療法は、フラビウイルス科ウイルス感染を実質的に低下させることができる。
【0050】
本発明の一つの側面は、フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、2’−分枝ヌクレオシド、例えば2’−分枝ピリミジンヌクレオシド、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC、またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の治療有効量を、こうした療法が必要なヒトなどの宿主に投与することにより、フラビウイルス科ウイルス感染を治療する方法を提供する。この高保存セリン残基は、BVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸に対応する。これは、HCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位アミノ酸にも対応する(
図11、Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)。
【0051】
本発明のもう一つの側面は、インターフェロンの治療有効量を投与することによる、フラビウイルス科ウイルスの保存セリン残基(
図11)、例えばBVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸またはHCVのRNAポリメラーゼの第282位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。特定の実施態様では、インターフェロンアルファ−2bを投与して、突然変異フラビウイルス科ウイルスに起因する感染を治療する、および/または実質的に治癒させる。
【0052】
本明細書において開示する本発明は、少なくとも次の実施態様も最小限含む。
【0053】
(i)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外、例えば、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチド(GからC)もしくは第405位SerからThr、またはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチド(GからC)、またはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位SerからThr以外の位置(
図11;Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、2’−分枝ヌクレオシド、例えば、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、またはこの医薬適合性の塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な医薬組成物。
【0054】
(ii)インターフェロンと併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な医薬組成物。インターフェロンには、次のものが挙げられる:ScheringによるIntron−A(インターフェロンアルファ−2b)、ScheringによるPEG−INTRON(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2b)、RocheによるRoferon−A(インターフェロンアルファ−2a)、RocheによるPEGASYS(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2a)、InterMuneによるINFERGEN(インターフェロンアルファコン−1)、ViragenによるOMNIFERON(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON、Ares−SeronoによるREBIF(インターフェロンベータ−1a)、BioMedicineによるオメガインターフェロン(Omega Interferon)、アマリロバイオサイエンス(Amarillo Biosciences)による経口インターフェロンアルファ(Oral Interferon Alpha)、およびInterMuneによるインターフェロンガンマ−1b(Interferon gamma−1b)。
【0055】
(iii)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグを含むプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグを含むプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドの2’、3’および/または5’−プロドラッグあるいはその医薬適合性の塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な医薬組成物。
【0056】
(iv)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域の高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外、例えば、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチド(GからC)または第405位SerからThr、またはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチド(GからC)、またはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位SerからThr以外の位置(
図11;Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/または塩の有効量をヒトに投与することを含む、ヒトなどの宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療するための方法。
【0057】
(v)インターフェロンと併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)のような2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の有効量を宿主に投与することを含む、ヒトなどの宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療するための方法。インターフェロンには、次のものが挙げられる:ScheringによるIntron−A(インターフェロンアルファ−2b)、ScheringによるPEG−INTRON(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2b)、RocheによるRoferon−A(インターフェロンアルファ−2a)、RocheによるPEGASYS(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2a)、InterMuneによるINFERGEN(インターフェロンアルファコン−1)、ViragenによるOMNIFERON(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON、Ares−SeronoによるREBIF(インターフェロンベータ−1a)、BioMedicineによるオメガインターフェロン(Omega Interferon)、アマリロバイオサイエンス(Amarillo Biosciences)による経口インターフェロンアルファ(Oral Interferon Alpha)、およびInterMuneによるインターフェロンガンマ−1b(Interferon gamma−1b)。
【0058】
(vi)場合によりウイルス量を実質的に消去する方式で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、インターフェロンの有効量を投与することを含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドまたはその医薬適合性の塩に対して耐性であるフラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0059】
(iv)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドの2’、3’および/または5’−プロドラッグあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与することを含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0060】
(v)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を患者に投与すること、
(b)この患者の血液をアッセイして、野生型ウイルスから突然変異ウイルスへの血清変換ついて検査すること、
(c)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、インターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0061】
(vi)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンをコードしているコドン(
図11)に相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(b)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、および
(c)前記プローブの前記配列へのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルをアッセイする方法。
【0062】
(vii)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(b)このプローブをその配列にハイブリダイズさせること、および
(c)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへのこのプローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、または3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルをアッセイする方法。
【0063】
(viii)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(b)この患者からウイルスサンプルを得ること、
(c)このウイルスの複製適性を決定すること、
(d)このサンプルにおけるウイルスの複製適性が、野生型ウイルスの複製適性より低い(これは、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対する耐性を示す。)かどうか決定すること、
(e)β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0064】
(ix)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、または3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(b)この患者からウイルス培養サンプルを得ること、
(c)このサンプルを培養し、このサンプルと野生型ウイルスの間でプラーク成長を比較すること、
(d)このサンプルのプラーク成長が、野生型のプラーク成長ようり小さい(これは、2’−分枝ヌクレオシドに対する耐性を示す。)かどうか決定すること、および
(e)β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0065】
(x)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むと推測されるサンプルを得ること、
(b)フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンをコードしているコドン(
図11)と相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとこのサンプルを接触させること、
(c)前記プローブを前記配列にハイブリダイズすること、および
(d)前記プローブの前記配列へのハイブリダイゼーションを検出して、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を決定することを
を含む、患者体内の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を診断するための方法。
【0066】
(xi)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むと推測されるサンプルを得ること、
(b)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとこのサンプルを接触させること、
(c)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、および
(d)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへのこのプローブのハイブリダイゼーションを検出して、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、あるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を決定すること
を含む、患者体内の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、あるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を診断するための方法。
【0067】
開示する併用および/または交代治療方式は、BVDV、BDV、CSFV、DHF、黄熱病ウイルス、ショック症候群、日本脳炎ウイルスおよびHCVを含むフラビウイルス科ウイルス感染の予防および治療に有用である。
【0068】
加えて、2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応診断用のフラビウイルス科ウイルスマーカーの対応するアミノ酸配列は、フラビウイルス科ウイルスヌクレオチド配列例から決定することができる。
【0069】
2’−分枝ヌクレオシドの失敗に関係するフラビウイルス科ウイルス株の同定を目的とするウイルスマーカーの同定に加えて、本発明は、2’−分枝ヌクレオシド療法に反応するフラビウイルス科ウイルス株の同定にも利用することができる。この関連で、2’−分枝ヌクレオシド療法と相関するウイルスマーカーの不在を利用して、2’−分枝ヌクレオシド療法の失敗と相関するウイルスマーカーを欠くフラビウイルス科ウイルスを保有する個体ためのモダリティーとして2’−分枝ヌクレオシドを含む治療コースを処方することができる。
【0070】
もう一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス核酸配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドを提供する。一つの実施態様において、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも14ヌクレオチドの長さであり、それを、療法の失敗に相関するマーカーを含むヌクレオチド配列に、配列特異的でストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせる。
【0071】
プライマーのハイブリダイズ領域として使用されるオリゴヌクレオチド配列は、プローブのハイブリダイズ領域としても使用することができる。プローブとしての使用に対するプライマー配列の適性は、このプライマーのハイブリダイゼーション特性に依存する。同様に、プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、プライマーとして使用することができる。
【0072】
加えて、本発明は、2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応を予測させるアミノ酸(本明細書に広範に記載されているようなもの)を含有する蛋白質、ペプチドもしくはペプチドフラグメント、またはこうした蛋白質、ペプチドもしくはペプチドフラグメントの抗体を検出する方法、材料およびキットを提供する。宿主の血清または組織は、便宜およびおそらく診断材料の濃度に依存して、蛋白質もしくはペプチド、または蛋白質もしくはペプチドの抗体のいずれについて検査してもよい。
【0073】
蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントは、例えばウエスタンブロット法を用い、抗体、好ましくはモノクローナル抗体との反応により確認することができる。また、蛋白質またはペプチドは、2D PAGEを含むこの分野において公知のいずれかの手段によって、単離および配列または別様に同定することができる。一つの実施態様において、反応性抗体は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内、例えばBVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位またはHCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位に、セリンではなくトレオニンを含むフラビウイルス科ウイルス蛋白質またはペプチド配列に結合する。
【0074】
もう一つの実施態様において、反応性抗体は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内に、例えばBVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位またはHCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位に、セリンではなくトレオニンを含む(これは、療法の失敗に相関するフラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域の特異的点突然変異を象徴する。)ペプチド配列に、特異的に結合する。
【0075】
特定の実施態様において、配列番号1から31の核酸配列によりコードされた少なくとも一つのペプチドまたはペプチドフラグメントに結合する抗体を使用する。
【0076】
特定の実施態様において、配列番号32から64の核酸配列によりコードされた少なくとも一つのペプチドまたはペプチドフラグメントに結合する抗体を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
(発明の詳細な説明)
2’−分枝ヌクレオシド、例えば下に示す2’−分枝ヌクレオシド、特に化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドの延長使用は、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域(
図11)のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内にセリンをコードしているヌクレオチドにおける突然変異に関連し、この突然変異に起因してアミノ酸残基セリンは、別のアミノ酸、例えばトレオニンに変化することを発見した。このドメインは、HCVゲノムのNS5B領域、ならびに他のフラビウイルスのゲノムにおいて見出される。このドメインは、ヘパシウイルスゲノム、ペスチウイルスゲノムおよびフラビウイルスゲノムすべての間で高度に保存されている(
図11、Laiら,J Virol.1999,73,10129−36)。
【0079】
BVDV感染の場合、2’−分枝ヌクレオシド、特に化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位残基におけるグアニン(G)からシチジン(C)への突然変異を誘発し、それに起因して、この酵素の第405位におけるアミノ酸残基セリンがトレオニンに変化する。このセリン残基は、RNAポリメラーゼドのメインBの保存コンセンサス配列(XRXSGXXXT)内に位置し(
図5および11)、それは突然変異分析(Lai V.C.,Kao C.C.,Ferrari E.,Park J.,Uss A.S.,Wright−Minogue J.,Hong Z.,and J.Y.Lau.「ウシウイルス性下痢ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの突然変異分析(Mutational analysis of bovine viral diarrhea virusRNA−dependent RNA polymerase)」J Virol.1999,73,10129−36)によって同定される。
【0080】
HCV感染の場合、2’−分枝ヌクレオシド、特に化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXTにおけるセリン
282(
図11)をコードしているヌクレオチドにおける突然変異を誘発し、セリンからトレオニンなどの別のアミノ酸に変化をもたらす。
【0081】
さらに、2’−分枝ヌクレオシドとインターフェロンが相乗的に作用して、フラビウイルス科ウイルスを阻害することを発見した。詳細には、併用および/または交代で投与された化合物β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドとインターフェロンアルファ−2bは、相乗的に作用して、フラビウイルス科ウイルスを阻害する。さらに、2’−分枝ヌクレオシド治療、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC治療後に出現する耐性ウイルス集団は、インターフェロンでのその後の治療に対する感受性増大を示すことを発見した。従って、2’−分枝ヌクレオシドとインターフェロンの逐次および/または併用療法によって、フラビウイルス科ウイルス感染を実質的に低下させることができる。
【0082】
本発明の一つの側面は、フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、2’−分枝ヌクレオシド、例えば2’−分枝ピリミジンヌクレオシド、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC、またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の治療有効量を、こうした療法が必要なヒトなどの宿主に投与することにより、フラビウイルス科ウイルス感染を治療する方法を提供する。この高保存セリン残基は、BVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸に対応する。これは、HCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位アミノ酸にも対応する(
図11、Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)。
【0083】
本発明のもう一つの側面は、インターフェロンの治療有効量を投与することによる、フラビウイルス科ウイルスの保存セリン残基(
図11)、例えばBVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸またはHCVのRNAポリメラーゼの第282位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。特定の実施態様では、インターフェロンアルファ−2bを投与して、突然変異フラビウイルス科ウイルスに起因する感染を治療する、および/または実質的に治癒させる。
【0084】
本明細書において開示する本発明は、少なくとも次の実施態様も最小限含む:
(i)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外、例えば、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチド(GからC)もしくは第405位SerからThr、またはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチド(GからC)、またはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位SerからThr以外の位置(
図11;Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、2’−分枝ヌクレオシド、例えば、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、またはその医薬適合性の塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な医薬組成物。
【0085】
(ii)インターフェロンと併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な組成物。インターフェロンには、次のものが挙げられる:ScheringによるIntron−A(インターフェロンアルファ−2b)、ScheringによるPEG−INTRON(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2b)、RocheによるRoferon−A(インターフェロンアルファ−2a)、RocheによるPEGASYS(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2a)、InterMuneによるINFERGEN(インターフェロンアルファコン−1)、ViragenによるOMNIFERON(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON、Ares−SeronoによるREBIF(インターフェロンベータ−1a)、BioMedicineによるオメガインターフェロン(Omega Interferon)、アマリロバイオサイエンス(Amarillo Biosciences)による経口インターフェロンアルファ(Oral Interferon Alpha)、およびInterMuneによるインターフェロンガンマ−1b(Interferon gamma−1b)。
【0086】
(iii)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併せて、場合により医薬適合性担体または希釈剤中に、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグを含むプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグを含むプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドの2’、3’および/または5’−プロドラッグあるいはその医薬適合性の塩の有効量を含む、ヒトなどの宿主におけるフラビウイルス科ウイルス感染の治療に有効な医薬組成物。
【0087】
(iv)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域の高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外、例えば、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチド(GからC)または第405位SerからThr、またはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチド(GからC)、またはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位SerからThr以外の位置(
図11;Laiら,J Virol.,1999,73,10129−36)で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/または塩の有効量をヒトに投与することを含む、ヒトなどの宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療するための方法。
【0088】
(v)インターフェロンと併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)のような2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の有効量を宿主に投与することを含む、ヒトなどの宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療するための方法。インターフェロンには、次のものが挙げられる:ScheringによるIntron−A(インターフェロンアルファ−2b)、ScheringによるPEG−INTRON(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2b)、RocheによるRoferon−A(インターフェロンアルファ−2a)、RocheによるPEGASYS(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2a)、InterMuneによるINFERGEN(インターフェロンアルファコン−1)、ViragenによるOMNIFERON(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON、Ares−SeronoによるREBIF(インターフェロンベータ−1a)、BioMedicineによるオメガインターフェロン(Omega Interferon)、アマリロバイオサイエンス(Amarillo Biosciences)による経口インターフェロンアルファ(Oral Interferon Alpha)、およびInterMuneによるインターフェロンガンマ−1b(Interferon gamma−1b)。
【0089】
(vi)場合によりウイルス量を実質的に消去する方式で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、インターフェロンの有効量を投与することを含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドまたはその医薬適合性の塩に対して耐性であるフラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0090】
(iv)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接または間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドの2’、3’および/または5’−プロドラッグあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与することを含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0091】
(v)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を患者に投与すること、
(b)前記患者の血液をアッセイして、野生型ウイルスから突然変異ウイルスへの血清変換ついて検査すること、
(c)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、インターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0092】
(vi)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンをコードしているコドン(
図11)に相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(b)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、および
(c)前記プローブの前記配列へのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルをアッセイする方法。
【0093】
(vii)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(b)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、および
(c)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへの前記プローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、または3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルをアッセイする方法。
【0094】
(viii)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(b)この患者からウイルスサンプルを得ること、
(c)このウイルスの複製適性を決定すること、
(d)このサンプルにおけるウイルスの複製適性が、野生型ウイルスの複製適性より低い(これは、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対する耐性を示す。)かどうか決定すること、
(e)β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0095】
(ix)(a)場合により医薬適合性担体または希釈剤中の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、または3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(b)この患者からウイルス培養サンプルを得ること、
(c)このサンプルを培養し、このサンプルと野生型ウイルスの間でプラーク成長を比較すること、
(d)このサンプルのプラーク成長が、野生型のプラーク成長より小さい(これは、2’−分枝ヌクレオシドに対する耐性を示す。)かどうか決定すること、および
(e)β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法。
【0096】
(x)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むと推測されるサンプルを得ること、
(b)フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンをコードしているコドン(
図11)と相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとこのサンプルを接触させること、
(c)前記プローブを前記配列にハイブリダイズすること、および
(d)前記プローブの前記配列へのハイブリダイゼーションを検出して、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を決定することを
を含む、患者体内の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシドあるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を診断するための方法。
【0097】
(xi)(a)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むと推測されるサンプルを得ること、
(b)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとこのサンプルを接触させること、
(c)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、および
(d)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへのこのプローブのハイブリダイゼーションを検出して、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、あるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を決定すること
を含む、患者体内の、β−D−2’−分枝ピリミジンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボC、またはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)またはβ−D−2’−分枝プリンヌクレオシド(例えば、β−D−2’−CH
3−リボAもしくはβ−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリン、またはこの3’−バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグ)などの2’−分枝ヌクレオシド、あるいはその医薬適合性の塩に対して耐性のフラビウイルス科ウイルスの存在を診断するための方法。
【0098】
開示する併用および/または交代治療方式は、BVDV、BDV、CSFV、DHF、黄熱病ウイルス、ショック症候群、日本脳炎ウイルスおよびHCVを含むフラビウイルス科ウイルス感染の予防および治療に有用である。
【0099】
加えて、2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応診断用のフラビウイルス科ウイルスマーカーの対応するアミノ酸配列は、フラビウイルス科ウイルスヌクレオチド配列例から決定することができる。
【0100】
2’−分枝ヌクレオシドの失敗に関係するフラビウイルス科ウイルス株の同定を目的とするウイルスマーカーの同定に加えて、本発明は、2’−分枝ヌクレオシド療法に反応するフラビウイルス科ウイルス株の同定にも利用することができる。この関連で、2’−分枝ヌクレオシド療法と相関するウイルスマーカーの不在を利用して、2’−分枝ヌクレオシド療法の失敗と相関するウイルスマーカーを欠くフラビウイルス科ウイルスを保有する個体ためのモダリティーとして2’−分枝ヌクレオシドを含む治療コースを処方することができる。
【0101】
もう一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス核酸配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドを提供する。一つの実施態様において、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも14ヌクレオチドの長さであり、それを、療法の失敗に相関するマーカーを含むヌクレオチド配列に、配列特異的でストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせる。
【0102】
プライマーのハイブリダイズ領域として使用されるオリゴヌクレオチド配列は、プローブのハイブリダイズ領域としても使用することができる。プローブとしての使用に対するプライマー配列の適性は、このプライマーのハイブリダイゼーション特性に依存する。同様に、プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、プライマーとして使用することができる。
【0103】
加えて、本発明は、2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応を予測させるアミノ酸(本明細書に広範に記載されているようなもの)を含有する蛋白質、ペプチドもしくはペプチドフラグメント、またはこうした蛋白質、ペプチドもしくはペプチドフラグメントの抗体を検出する方法、材料およびキットを提供する。宿主の血清または組織は、便宜およびおそらく診断材料の濃度に依存して、蛋白質もしくはペプチド、または蛋白質もしくはペプチドの抗体のいずれについて検査してもよい。
【0104】
蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントは、例えばウエスタンブロット法を用い、抗体、好ましくはモノクローナル抗体との反応により確認することができる。また、蛋白質またはペプチドは、2D PAGEを含むこの分野において公知のいずれかの手段によって、単離および配列または別様に同定することができる。一つの実施態様において、反応性抗体は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内、例えばBVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位またはHCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位に、セリンではなくトレオニンを含むフラビウイルス科ウイルス蛋白質またはペプチド配列に結合する。
【0105】
もう一つの実施態様において、反応性抗体は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内に、例えばBVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第405位またはHCVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第282位に、セリンではなくトレオニンを含む(これは、療法の失敗に相関するフラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域の特異的点突然変異を象徴する。)ペプチド配列に、特異的に結合する。
【0106】
特定の実施態様において、配列番号1から31の核酸配列によりコードされた少なくとも一つのペプチドまたはペプチドフラグメントに結合する抗体を使用する。
【0107】
特定の実施態様において、配列番号32から64の核酸配列によりコードされた少なくとも一つのペプチドまたはペプチドフラグメントに結合する抗体を使用する。
【0108】
I.定義
ここで用いる用語「耐性ウイルス」は、天然ウイルスと比較して3倍、さらに典型的には5倍またはそれ以上のEC
50の増加を示すウイルスを指す。
【0109】
用語「アミノ酸」は、天然および合成α、β、γまたはδアミノ酸を包含し、また限定ではないが、蛋白質において見出されるアミノ酸、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アルパルテート、グルタメート、リシン、アルギニンおよびヒスチジンを包含する。好ましい実施態様において、アミノ酸は、L配置であるが、D配置であってもよい。また、アミノ酸は、アラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、トレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタロイル、リシニル、アルギニニル、ヒスチジニル、β−アラニル、β−バリニル、β−ロイシニル、β−イソロイシニル、β−プロリニル、β−フェニルアラニニル、β−トリプトファニル、β−メチオニニル、β−グリシニル、β−セリニル、β−トレオニニル、β−システイニル、β−チロシニル、β−アスパラギニル、β−グルタミニル、β−アスパルトイル、β−グルタロイル、β−リシニル、β−アルギニニルまたはβ−ヒスチジニルの誘導体であってもよい。
【0110】
本明細書に使用されているアミノ酸の略記を表1に記す。
【0112】
「増幅剤」は、選択された増幅手順を実施するために使用される様々なバッファ、酵素、プライマー、デオキシヌクレオシド三リン酸(従来型と非従来型の両方)およびプライマーを指す。
【0113】
「増幅すること」または「増幅」は、一般には標的核酸の「指数」増加を指すが、ここでは、核酸の選択標的配列数の線形増加と指数増加の両方を説明するために用いる。
【0114】
「実質的に結合する」は、オリゴヌクレオチドと標的配列の間の相補的ハイブリダイゼーションを指し、またこのハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを低下させて、PCRポリメラーゼに対する望ましいプライミングをまたはハイブリダイゼーションシグナルの検出を達成することにより対処することができる、少数のミスマッチを包含する。
【0115】
「ハイブリダズする」は、相補塩基対を介する2つの一本鎖核酸の結合を指す。
【0116】
「核酸」は、1本鎖形または2本鎖形いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、別様に限定されていなければ、天然ヌクレオチドと同様に機能することができる天然ヌクレオチドの公知類似体を包含する。
【0117】
「ヌクレオチドポリメラーゼ」は、ヌクレオシド三リン酸前駆体からのDNAまたはRNAの合成を触媒することができる酵素を指す。増幅反応において、このポリメラーゼは、テンプレート依存性であり、典型的には生産されるポリマーの3’末端にヌクレオチドを付加させる。このポリメラーゼは、米国特許第4,889,818号および同第5,079,352号に記載されているように、熱安定性であり得る。
【0118】
用語「オリゴヌクレオチド」は、プライマー、プローブ、検出すべき核酸フラグメント、および核酸対照などの、デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシド2つ以上から成る分子を指す。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、多数の因子、およびこのオリゴヌクレオチドの根本的な機能または用途に依存する。オリゴヌクレオチドは、例えば、適切な配列のクローニングおよび制限酵素処理、ならびにNarangら,Meth.Enzymol.1979,68:90−99のリン酸トリエステル法、Brownら,Meth.Enzymol.,1979,68:109−151のリン酸ジエステル法、Beaucageら,Tetrahedron Lett.,1981,22:1859−1862のジエチルホスホルアミダイト法、および米国特許第4,458,066号の固体支持法などの方法による直接化学合成を含む、あらゆる適切な方法によって調製することができる。
【0119】
用語「プライマー」は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下で、すなわち、適切なバッファ中、適温で4つの異なるヌクレオシド三リン酸および重合剤(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)が存在する状態で、DNA合成の開始点として作用することができる、天然のまたは合成の、オリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、好ましくは1本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーの適切な長さは、このプライマーの所期の用途に依存するが、典型的には約14または15から25または30ヌクレオチドの範囲である。一般に、短いプライマー分子ほど、テンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために要する温度がより低い。プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするために十分相補的でなけらばならない。
【0120】
用語「プライマー」は、特に、増幅すべき標的領域の一方または両方の末端に関する情報にあるあいまいさがある場合、1つ以上のプライマーを指す。例えば、ある集団においてある領域が有意なレベルの多形性を示す場合、交互配列を増幅することになるプライマー混合物を調製してもよい。所望される場合には、プライマーは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段または化学的手段により検出可能な標識を組み込むことによって、標識することができる。例えば、有用な標識には、
32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(ELISAにおいて通常使用されるようなもの)、ビオチン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体を利用することができるハプテンおよび蛋白質が挙げられる。標識は、このプライマーを「捕捉」して、固体支持体上のプライマーまたはプライマー伸長産物(増幅DNAなど)の固定化を助長するために使用することもできる。
【0121】
「プローブ」は、相補塩基対により標的核酸の副配列に結合するオリゴヌクレオチドを指す。一般に、プローブが、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存して、このプローブ配列との完全相補性を欠く標的配列に実質的に結合することは、当業者に理解されるだろう。好ましくは、プローブは、同位元素などで直接標識するか、ストレプタビジン複合体が後で結合できるビオチンなどで間接的に標識する。プローブの存在または不在についてアッセイすることにより、この標的の存在または不在を検出することができる。
【0122】
「副配列」は、より長い核酸配列の一部を含む核酸配列を指す。
【0123】
用語「標的領域」は、分析すべき核酸の領域を指し、多形領域を包含し得る。
【0124】
ここで用いる用語「アルキル」は、別様に特定しなければ、一般にはC
1からC
10の飽和直鎖、分枝鎖または環状第一、第二または第三級炭化水素を指し、具体的には、メチル、CF
3、CCl
3、CFCl
2、CF
2Cl、エチル、CH
2CF
3、CF
2CF
3、プロピル、イロプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルを包含する。この用語は、置換アルキル基と非置換アルキル基の両方を包含し、特にハロゲン化アルキル基、さらにいっそう特にフッ素化アルキル基を包含する。アルキル基を置換することができる部分は、ハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェートまたはホスホネート(これらは非保護であるか、必要な場合には、当業者に公知のとおり、例えば、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991において教示されているように保護されている。)から成る群より選択される。前記文献は、本明細書に参照により組込まれる。
【0125】
ここで用いる用語「低級アルキル」は、別に特定しなければ、C
1からC
4飽和直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、または適切な場合には、飽和形と不飽和形の両方を含む環状アルキル基(例えば、シクロプロピル)を指す。本出願では、特に別様に述べなければ、アルキル基が適する部分である場合、低級アルキルが好ましい。同様に、アルキルまたは低級アルキルが適する部分である場合、非置換アルキルまたは低級アルキルが好ましい。
【0126】
用語「アルキルアミノ」または「アリールアミノ」は、それぞれ、1個または2個のアルキルまたはアリール置換基を有するアミノ基を指す。
【0127】
ここで用いる用語「保護されている」は、別様に定義しなければ、さらなる反応を防止するため、または他の目的で、酸素、窒素またはリン原子に付加させる基を指す。多種多様な酸素および窒素保護基が有機合成技術分野の当業者に公知である。
【0128】
ここで用いる用語「アリール」は、別様に特定しなければ、フェニル、ビフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルを指す。この用語は、置換部分と非置換部分の両方を包含する。アリール基は、ハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェートまたはホスホネート(これらは非保護であるか、必要な場合には、当業者に公知であるように、例えば、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991において教示されているように保護されている。)から成る群より選択される1つ以上の部分で置換されていてもよい。
【0129】
用語「アルカリール」または「アルキルアリール」は、アリール置換基を有するアルキル基を指す。用語「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アルキル置換基を有するアリール基を指す。
【0130】
ここで用いる用語「ハロ」は、クロロ、ブロモ、ヨードおよびフルオロを包含する。
【0131】
用語「塩基」は、限定ではないが以下のものを含むあらゆるプリンまたはピリミジン塩基を指す: グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリン、6−クロロプリン、N
6−アルキルプリン、N
6−アシルプリン(ここにおいて、アシルは、C(O)(アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル)である。)、N
6−ベンジルプリン、N
6−ハロプリン、N
6−ビニルプリン、N
6−アセチレン性プリン、N
6−アシルプリン、N
6−ヒドロキシアルキルプリン、N
6−チオアルキルプリン、N
2−アルキルプリン、N
2−アルキル−6−チオプリン、チミン、シトシン、5−フルオロシトシン、5−メチルシトシン、6−アザピリミジン(6−アザシトシンを含む)、2−および/または4−メルカプトピリミジン、ウラシル、5−ハロウラシル(5−フルオロウラシルを含む)、C
5−アルキルピリミジン、C
5−ベンジルピリミジン、C
5−ハロピリミジン、C
5−ビニルピリミジン、C
5−アセチレン性ピリミジン、C
5−アシルピリミジン、C
5−ヒドロキシアルキルプリン、C
5−アミドピリミジン、C
5−シアノピリミジン、C
5−ニトロピリミジン、C
5−アミノピリミジン、N
2−アルキルプリン、N
2−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザ−ウラシリル、チアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、ならびに式:
【0132】
【化4】
(式中、
GおよびLは、各々独立して、CHまたはNであり;
Dは、N、CH、C−CN、C−NO
2、C−C
1−3アルキル、C−NHCONH
2、C−CONQ
11Q
11、C−CSNQ
11Q
11、CCOOQ
11、C−C(=NH)NH
2、C−ヒドロキシ、C−C
1−3アルコキシ、C−アミノ、C−C
1−4アルキル−アミノ、C−ジ(C
1−4アルキル)アミノ、C−ハロゲン、C−(1,3−オキサゾール−2−イル)、C−(1,3−チアゾール−2−イル)またはC−(イミダゾール−2−イル)(この場合のアルキルは、非置換であるか、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC
1〜3アルコキシから独立して選択される1から3個の基で置換されている。)
であり;
Eは、NまたはCQ
5であり;
Wは、O、SまたはNRであり;
Rは、H、OH、アルキルであり;
Q
6は、H、OH、SH、NH
2、C
1〜4アルキルアミノ、ジ(C
1〜4アルキル)アミノ、C
3〜6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C
1〜4アルキル、C
1〜4アルコキシまたはCF
3であり;
Q
5は、H、C
l−6アルキル、C
2−6アルケニル、C
2−6アルキニル、C
1−4アルキルアミノ、CF
3、ハロゲン、N、CN、NO
2、NHCONH
2、CONQ
11Q
11、CSNQ
11Q
11、COOQ
11、C(=NH)NH
2、ヒドロキシ、C
1−3アルコキシ、アミノ、C
1−4アルキルアミノ、ジ(C
1−4アルキル)アミノ、ハロゲン、1,3−オキサゾール−2−イル、1,3−チアゾール−2−イルまたはイミダゾール−2−イル(アルキルは、非置換であるか、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC
1〜3アルコキシから独立して選択される1から3個の基で置換されている。)
であり;
Q
7およびQ
14は、H、CF
3、OH、SH、OR、SR、C
1〜4アルキル、アミノ、C
1〜4アルキルアミノ、C
3〜6シクロアルキルアミノおよびジ(C
1〜4アルキル)アミノから成る群より各々独立して選択され;
Q
11は、独立してHまたはC
1〜6アルキルであり;
Q
8は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C
1−4アルキルオキシカルボニル、N
3、アミノ、C
1−4アルキルアミノ、ジ(C
1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C
1−6アルコキシ、C
1−6アルキルチオ、C
1−6アルキルスルホニル、(C
1−4アルキル)
0−2アミノメチル、NH
2、CN、NO
2、C
1−3アルキル、NHCONH
2、CONQ
11Q
11、CSNQ
11Q
11、COOQ
11、C(=NH)NH
2、1,3−オキサゾール−2−イル、1,3−チアゾール−2−イルまたはイミダゾール−2−イル(この場合のアルキルは、非置換であるか、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC
1〜3アルコキシから独立して選択される1から3個の基で置換されている。)
である。)
の塩基;
式:
【0133】
【化5】
(式中、
T
1およびT
2は、N、CHまたはC−Q
16から独立して選択され;
Q
16、UおよびYは、H、OH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、シクロアルキル、CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、OR
4、NR
4R
5またはSR
5、Br−ビニル、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−アリール、−O−アラルキル、−O−アシル、−O−シクロアルキル、NH
2、NH−アルキル、N−ジアルキル、NH−アシル、N−アリール、N−アラルキル、NH−シクロアルキル、SH、S−アルキル、S−アシル、S−アリール、S−シクロアルキル、S−アラルキル、CN、N
3、COOH、CONH
2、CO
2−アルキル、CONH−アルキル、CON−ジアルキル、OH、CF
3、CH
2OH、(CH
2)
mOH、(CH
2)
mNH
2、(CH
2)
mCOOH、(CH
2)
mCN、(CH
2)
mNO
2、(CH
2)
mCONH
2、C
1−4アルキルアミノ、ジ(C
1−4アルキル)アミノ、C
3−6シクロアルキルアミノ、C
1−4アルコキシ、C
1−4アルコキシカルボニル、C
1−6アルキルチオ、C
1−6アルキルスルホニル、(C
1−4アルキル)
0−2アミノメチルまたは−NHC(=NH)NH
2から独立して選択され;
R
4およびR
5は、水素、アシル(低級アシルを含む)またはアルキル(メチル、エチル、プロピルおよびシクロプロピルが挙げられるが、これらに限定されない)から独立して選択され;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
Zは、S、SO、SO
2、C=OまたはNQ
20であり;
Q
20は、Hまたはアルキルであり;および
V
1およびV
2は、CHまたはNから独立して選択される。)
の塩基;および
式:
【0134】
【化6】
(式中、
T
3およびT
4は、NまたはCQ
22から独立して選択され;
Q
22は、H、OH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、シクロアルキル、CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、OR
4、NR
4R
5またはSR
5、Br−ビニル、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−アリール、−O−アラルキル、−O−アシル、−O−シクロアルキル、NH
2、NH−アルキル、N−ジアルキル、NH−アシル、N−アリール、N−アラルキル、NH−シクロアルキル、SH、S−アルキル、S−アシル、S−アリール、S−シクロアルキル、S−アラルキル、CN、N
3、COOH、CONH
2、CO
2−アルキル、CONH−アルキル、CON−ジアルキル、OH、CF
3、CH
2OH、(CH
2)
mOH、(CH
2)
mNH
2、(CH
2)
mCOOH、(CH
2)
mCN、(CH
2)
mNO
2、(CH
2)
mCONH
2、C
1−4アルキルアミノ、ジ(C
1−4アルキル)アミノ、C
3−6シクロアルキルアミノ、C
1−4アルコキシ、C
1−4アルコキシカルボニル、C
1−6アルキルチオ、C
1−6アルキルスルホニル、(C
1−4アルキル)
0−2アミノメチルまたは−NHC(=NH)NH
2から独立して選択され;
T
5は、NHであり;
R
4およびR
5は、水素、アシル(低級アシルを含む)またはアルキル(メチル、エチル、プロピルおよびシクロプロピルが挙げられるが、これらに限定されない)から独立して選択され;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
T
6、T
7、T
8、T
9、T
10、T
11およびT
12は、NまたはCHから独立して選択され;
U
2は、H、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル、CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、OR
4、NR
4R
5またはSR
5であり;
Y
2は、O、S、NH、NRまたはCQ
24Q
26(ここにおいて、Rは、H、OHまたはアルキルである)であり;
Q
24およびQ
26は、H、アルキル、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル、CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、OR
4、NR
4R
5またはSR
5から独立して選択される。)
の塩基。
【0135】
プリン塩基のさらなる例には、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリン、6−クロロプリンおよび6−N−メチルアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。塩基上の酸素および窒素官能基は、必要な場合、または所望される場合には保護することができる。適する保護基は当業者によく知られており、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基およびアシル基(アセチルおよびプロピオニルなど)、メタンスルホニルならびにp−トルエンスルホニルが挙げられる。
【0136】
用語「アシル」または「O−結合エステル」は、式C(O)R’の基を指し、この式中のR’は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル(低級アルキルを含む)、アミノ酸、アリール(フェニルを含む)、アルカリール、アラルキル(ベンジルを含む)、アルコキシアルキル(メトキシメチルを含む)、アリールオキシアルキル(フェノキシメチルなど);または置換アルキル(低級アルキルを含む)、アリール(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、C
1からC
4アルキルまたはC
1からC
4アルコキシで場合により置換されているフェニルを含む)、スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアラルキルスルホニルなど)、一、二もしくは三リン酸エステル、トリチルもしくはモノメトキシトリチル、置換ベンジル、アルカリール、アラルキル(ベンジルを含む)、アルコキシアルキル(メトキシメチルを含む)、アリールオキシアルキル(フェノキシメチルなど)である。前記エステル中のアリール基は、最適にはフェニル基を含む。特に、アシル基には、アセチル、トリフルオロアセチル、メチルアセチル、シクロプロピルアセチル、プリピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ネオ−ヘプタノイル、フェニルアセチル、2−アセトキシ−2−フェニルアセチル、ジフェニルアセチル、α−メトキシ−α−トリフルオロメチル−フェニルアセチル、ブロモアセチル、2−ニトロ−ベンゼンアセチル、4−クロロ−ベンゼンアセチル、2−クロロ−2,2−ジフェニルアセチル、2−クロロ−2−フェニルアセチル、トリメチルアセチル、クロロジフルオロアセチル、過フルオロアセチル、フルオロアセチル、ブロモジフルオロアセチル、メトキシアセチル、2−チオフェンアセチル、クロロスルホニルアセチル、3−メトキシフェニルアセチル、フェノキシアセチル、t−ブチルアセチル、トリクロロアセチル、モノクロロ−アセチル、ジクロロアセチル、7H−ドデカフルオロ−ヘプタノイル、過フルオロ−ヘプタノイル、7H−ドデカ−フルオロヘプタノイル、7−クロロドデカフルオロ−ヘプタノイル、7−クロロ−ドデカフルオロ−ヘプタノイル、7H−ドデカフルオロヘプタノイル、7H−ドデカフルオロ−ヘプタノイル、ノナ−フルオロ−3,6−ジオキサ−ヘプタノイル、ノナフルオロ−3,6−ジオキサヘプタノイル、過フルオロヘプタノイル、メトキシベンゾイル、メチル3−アミノ−5−フェニルチオフェン−2−カルボキシル、3,6−ジクロロ−2−メトキシ−ベンゾイル、4−(1,1,2,2−テトラフルオロ−エトキシ)−ベンゾイル、2−ブロモ−プロピオニル、オメガ−アミノカプリル、デカノイル、n−ペンタデカノイル、ステアリル、3−シクロペンチル−プロピオニル、1−ベンゼン−カルボキシル、O−アセチルマンデリル、ピバロイルアセチル、1−アダマンタン−カルボキシル、シクロヘキサン−カルボキシル、2,6−ピリミジンジカルボキシル、シクロプロパン−カルボキシル、シクロブタン−カルボキシル、過フルオロシクロヘキシルカルボキシル、4−メチルベンゾイル、クロロメチルイソオキサゾリルカルボニル、過フルオロシクロヘキシルカルボキシル、クロトニル、1−メチル−1H−インダゾール−3−カルボニル、2−プロペニル、イソバレリル、1−ピロリジンカルボニル、4−フェニルベンゾイルが挙げられる。
【0137】
ここで用いる用語「が実質的に無い」または「が実質的に不在の状態」は、このヌクレオシドの指定のエナンチオマーを少なくとも95重量%から98重量%、さらにいっそう好ましくは99重量%から100重量%含むヌクレオシド組成物を指す。好ましい実施態様において、本発明の方法および化合物における化合物は、複数のエナンチオマーが実質的に無い。
【0138】
同様に、用語「単離された」は、このヌクレオシドを少なくとも95重量%から98重量%、さらにいっそう好ましくは99重量%から100重量%含み、残りは他の化学種またはエナンチオマーを含むヌクレオシド組成物を指す。
【0139】
ここで用いる用語「宿主」は、細胞系および動物、好ましくはヒトを含む、ウイルスが複製できる単細胞または多細胞生物を指す。また、宿主は、複製または機能を本発明の化合物によって修飾することができるフラビウイルス科ウイルスの一部を保有しているのもであってもよい。用語「宿主」は、感染細胞、フラビウイルス科ウイルスゲノムのすべてまたは一部でトランスフェクトされた細胞、ならびに動物、特に霊長類(チンパンジーを含む)およびヒトを指す。本発明の大部分の動物適用では、宿主は、ヒト患者である。しかし、一定の適応症における獣医学的適用は、本発明により明確に予想される(チンパンジーなど)。
【0140】
II.2’−分枝ヌクレオシドおよびこれらのプロドラッグ
最も広い実施態様において、本発明は、2’−分枝ヌクレオシドに対して耐性であるフラビウイルス科ウイルス感染の治療方法を提供する。一つの実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、プリンまたはプリン誘導体(ピロロ−プリンなど)である。好ましい実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、ピリミジンである。他の副次的実施態様には、2’−分枝ウラシルおよび2’−分枝シトシンヌクレオシドを含む、2’−アルキルおよび2’−メチル分枝ピリミジンヌクレオシドが挙げられる。もう一つの実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、プリンである。他の副次的実施態様には、2’−分枝アデノシンヌクレオシドおよび2’−分枝6−N−メチルアミノプリンヌクレオシドを含む、2’−アルキルおよび2’−メチル分枝プリンヌクレオシドが挙げられる。
【0141】
特定の実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドの代表は、式:
【0142】
【化7】
(式中、R
3は、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
3がHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基である。)
によって表される化合物β−D−2’−CH
3−リボCである。
【0143】
もう一つの特定の実施態様において、前記2’−分枝プリンヌクレオシドの代表は、式:
【0144】
【化8】
(式中、R
3は、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
3がHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基である。)
によって表される化合物β−D−2’−CH
3−リボ−6−N−メチルアミノプリンである。
【0145】
本発明の一つの実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0146】
【化9】
(式中、
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
4は、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2であり;および
塩基は、本明細書でさらに説明するようなプリンまたはピリミジンである。)
ものまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩である。
【0147】
本発明のもう一つの実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0148】
【化10】
(式中、
塩基は、本明細書で定義するようなプリンまたはピリミジン塩基であり;
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩を含む);直鎖、分枝鎖または環状アルキル(低級アルキルを含む);アシル(低級アシルを含む);CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、CO−アリールオキシアルキル、CO−置換アリール、スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
6は、アルキル(低級アルキルおよびハロゲン化アルキルを含む)、CH
3、CF
3、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、2−Br−エチル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、CF
3、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;および
R
7は、水素、OR
3、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、ハロ−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり、および
Xは、O、S、SO
2またはCH
2であり、
塩基は、本明細書でさらに説明するようなプリンまたはピリミジンである。)
のものまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/または塩である。
【0149】
本発明のさらにもう一つの実施態様において、前記2’−分枝ヌクレオシドは、一般式:
【0150】
【化11】
(式中、
塩基は、本明細書で定義するようなプリンまたはピリミジン塩基であり;
R
6は、アルキル(低級アルキルおよびハロゲン化アルキルを含む)、CH
3、CF
3、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、2−Br−エチル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、CF
3、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;
R
7は、OR
2、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、ハロ−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり、
R
9は、水素、OR
3、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、塩素、臭素、ヨウ素、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2、−N(アシル)
2であり;
R
10は、H、アルキル(低級アルキルを含む)、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり;
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩を含む);直鎖、分枝鎖または環状アルキル(低級アルキルを含む);アシル(低級アシルを含む);CO−アルキル、CO−アリール、CO−アルコキシアルキル、CO−アリールオキシアルキル、CO−置換アリール、スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
Xは、O、S、SO
2またはCH
2である。)
のものである。
【0151】
2’−分枝ヌクレオシドの一般合成
1.適切に修飾された糖を用いる核酸塩基のグリコシル化
この方法の重要な出発原料は、適切な脱離基(LG)、例えばアシル基またはクロロ、ブロモ、フルオロもしくはヨードで適切に置換された、2’−OHおよび2’−Hを有する糖であり得る。前記糖は、購入することができ、または標準的なエピマー化、置換、酸化および還元法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。次に、この置換された糖を、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−修飾糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー(Meerwin−Pondorf−Verley)試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0152】
次に、適切な非プロトン溶媒を用い、適温で、グリニャール試薬、有機リチウム、リチウムジアルキル銅、またはTBAF中のR
4−SiMe
3(この場合のR
4は、下で定義する)などの有機金属炭素求核試薬をこのケトンとカップリングさせることにより、2’−アルキル化糖が生じる。このアルキル化糖は、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0153】
次に、この場合により保護された糖を、Townsend Chemistry of Nucleosides and Nucleotides,Plenum Press,1994のよって教示されているような当業者に周知の方法によって、塩基にカップリングさせることができる。例えば、適切な溶媒中、適温で、四塩化スズ、四塩化チタンまたはトリメチルシリルトリフレートなどのルイス酸を用いて、アシル化糖をシリル化塩基にカップリングさせることができる。また、トリメチルシリルトリフレートの存在で、ハロ−糖をシリル化塩基にカップリングさせることができる。
【0154】
次いで、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、このヌクレオシドを脱保護することができる。
【0155】
特定の実施態様では、2’−C−分枝リボヌクレオシドが望ましい。リボヌクレオシドの合成を図式1に示す。また、デオキシリボヌクレオシドを使用することができる。これらのヌクレオシドを得るために、生成リボヌクレオシドを、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法により、場合により保護し、そして、この2’−OHを適する還元剤で還元することができる。場合により、この2’−ヒドロキシルを活性化して、還元を助長することができる。すなわち、バートン還元にて。
【0156】
【化12】
(図式中、
LGは、脱離基であり;
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上でフェニル基が場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
4は、水素、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2である。)。
【0157】
2.既成ヌクレオシドの修飾
この方法のための重要な出発原料は、2’−OHおよび2’−Hを有する適切に置換されたヌクレオシドであり得る。前記ヌクレオシドは、購入することができ、または標準的なカップリング法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。前記ヌクレオシドは、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991におより教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0158】
次に、この適切に保護されたヌクレオシドを、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−修飾糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0159】
次いで、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991において教示されているような当業者に周知の方法によって、このヌクレオシドを脱保護することができる。
【0160】
特定の実施態様では、2’−C−分枝リボヌクレオシドが望ましい。リボヌクレオシドの合成を図式2に示す。また、デオキシリボヌクレオシドを使用することができる。これらのヌクレオシドを得るために、生成リボヌクレオシドを、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって場合により保護し、次に、2’−OHを適する還元剤で還元することができる。場合により、この2’−ヒドロキシルを活性化して、還元を助長することができる。すなわち、バートン還元にて。
【0161】
【化13】
(図式中、
R
1およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上でフェニル基が場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
4は、水素、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2である。)。
【0162】
2’−分枝ピリミジンヌクレオシドの一般合成
1.適切に修飾された糖を用いるピリミジンのグリコシル化
2’−分枝ピリミジンヌクレオシドの一般的な調製方法の代表を図式3で概説する。この図式は、β−D−リボ構造の2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを説明するものである。また、当業者は、この一般図式を変形して、2’−β−L−分枝ピリミジンヌクレオシドを生産することができる。この方法のための重要な出発原料は、適切な脱離基(LG)、例えばアシル基またはクロロ、ブロモ、フルオロもしくはヨードで適切に置換された、2’−OHおよび2’−Hを有する糖であり得る。前記糖は、購入することができ、または標準的なエピマー化、置換、酸化および還元法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。次に、この置換された糖を、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−変性糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー(Meerwin−Pondorf−Verley)試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0163】
次に、適切な非プロトン溶媒を用い、適温で、グリニャール試薬、有機リチウム、リチウムジアルキル銅、またはTBAF中のR
4−SiMe
3などの有機金属炭素求核試薬をこのケトンとカップリングさせることにより、2’−アルキル化糖を生じる。このアルキル化糖は、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0164】
次に、場合により保護された糖を、Townsend Chemistry of Nucleosides and Nucleotides,Plenum Press,1994のよって教示されているような当業者に周知の方法によって、ピリミジン塩基にカップリングさせることができる。例えば、適切な溶媒中、適温で、四塩化スズ、四塩化チタンまたはトリメチルシリルトリフレートなどのルイス酸を用いて、アシル化糖をシチジンなどのシリル化ピリミジンにカップリングさせることができる。また、トリメチルシリルトリフレートを用いて、ハロ−糖をシチジンなどのシリル化ピリミジンにカップリングさせることができる。
【0165】
【化14】
(図式中、
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);フェニル基が本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上で場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;
R
4は、水素、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2である。)。
【0166】
2.既成2’−分枝ピリミジンヌクレオシドの修飾
この方法のための重要な出発原料は、2’−OHおよび2’−Hを有する適切に置換された2’−分枝ピリミジンヌクレオシドであり得る。前記2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、購入することができ、または標準的なカップリング法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。前記2’−分枝ピリミジンヌクレオシドは、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0167】
次に、この適切に保護された2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−修飾糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0168】
次いで、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、この2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを脱保護することができる。
【0169】
特定の実施態様では、2’−C−分枝リボヌクレオシドが望ましい。リボヌクレオシドの合成を図式4に示す。また、デオキシリボヌクレオシドを使用することができる。これらのヌクレオシドを得るために、生成リボヌクレオシドを、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって場合により保護し、次に、この2’−OHを適する還元剤で還元することができる。場合により、この2’−ヒドロキシルを活性化して、還元を助長することができる。すなわち、バートン還元にて。
【0170】
【化15】
(図式中、
R
1およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上でフェニル基が場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基であり;ならびに
R
4は、水素、ヒドロキシ、アルキル(低級アルキルを含む)、アジド、シアノ、アルケニル、アルキニル、Br−ビニル、−C(O)O(アルキル)、−C(O)O(低級アルキル)、−O(アシル)、−O(低級アシル)、−O(アルキル)、−O(低級アルキル)、−O(アルケニル)、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、NO
2、NH
2、−NH(低級アルキル)、−NH(アシル)、−N(低級アルキル)
2または−N(アシル)
2である。)。
【0171】
2’−分枝プリンヌクレオシドの一般合成
1.適切に修飾された糖を用いるピリミジンのグリコシル化
2’−分枝プリンヌクレオシドの一般的な調製方法の代表を下の図式5で概説する。この図式は、β−D−リボ構造の2’−分枝プリンヌクレオシドの合成を説明するものである。また、適切な出発原料を使用してβ−L−リボ構造を作成できることは、当業者に十分理解される。出発原料は、構造式(i)の3,5−ビス保護アルキルフラノシド(メチルフラノシドなど)である。次に、このC−2ヒドロキシル基を、三酸化クロムもしくはクロメート試薬またはデス−マーチンペルヨージナンなどの適する酸化剤で、またはスウェルン酸化によって酸化して、構造式(ii)のC−2ケトンを得る。テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの適する有機溶媒中、ハロゲン化アルキル、アルケニルもしくはアルキニルマグネシウム(例えば、MeMgBr、EtMgBr、ビニルMgBr、アリルMgBrおよびエチニルMgBr)またはアルキル、アルケニルもしくはアルキニルリチウム(MeLiなど)のグリニャール試薬を、(ii)のカルボニル二重結合を横切って付加させることによって、構造式(iii)のC−2第三アルコールが生じる。次に、酢酸中の臭化水素などの適する有機溶媒中のハロゲン化水素での式(iii)のフラノシドの処理により、良好な脱離基(F、Cl、BrおよびIなど)をこのフラノース糖誘導体のC−1(アノマー)位置に導入して、中間体ハロゲン化フラノシル(iv)を得る。メタンスルホネート(MeSO
2O−)、トリフルオロメタンスルホネート(CF
3SO
2O−)またはp−トルエンスルホネート(−OTs)などのC−スルホネートも、グリコシド(ヌクレオシド)結合を発生させるための後続反応において有用な脱離基として役立つ。ヌクレオシド結合は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1−メチル−2−ピロリジノンまたはN,N−ジメチル−ホルムアミド(DMF)などの適する無水有機溶媒中、アルカリ水素化物(水素化ナトリウムなど)、アルカリ水酸化物(水酸化カリウムなど)、アルカリ炭酸塩(炭酸カリウムなど)またはアルカリヘキサメチルジシラジド(NaHMDSなど)で処理することによりインサイチュで発生させることができる、適切に置換された4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンなどの適切に置換された1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(v)の金属塩(リチウム、ナトリウムまたはカリウムなど)で、構造式(iv)の中間体を処理することによって、作ることができる。置換反応は、二相系(固−液または液−液)でのTDA−1または塩化トリエチルベンジルアンモニウムなどの相転移触媒を用いることにより、触媒することができる。次に、構造式(vi)の保護ヌクレオシドにおける任意の保護基は、T.W.Greene’and P.G.M.Wuts,「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」,P ed.,John Wiley & Sons,1999に記載されているものなどの確立された脱保護方法論に従って切断することができる。C−4位に第一アミン(−NH
2)を生じさせるためにアンモニアアルコール溶液もしくは液体アンモニアなどの適切なアミンで、第二アミン(−NHR)を生じさせるためにアルキルアミンで、または第三アミン(−NRR’)を生じさせるためにジアルキルアミンで4−ハロ中間体(vi)を処理することにより、前記ピロロ[2,3−d]ピリミジン核の4位にアミノ酸を場合により導入することができる。7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)オン化合物は、水酸化ナトリウム水溶液などの塩基水溶液での(vi)の加水分解よって誘導することができる。1−6のアルコール分解(メタノール分解)によってC−4アルコキシド(−OR)が生じ、これに対してアルキルメルカプチドでの処理によってC−4アルキルチオ(−SR)誘導体が生じる。本発明の所望の化合物を得るために、有機/薬品化学技術分野の通常の技術者に周知の後続の化学操作が必要となる場合もある。
【0172】
【化16】
(図式中、
P
1およびP
2は、独立して保護基であるか、あるいはP
1とP
2が一緒になって、環状保護基を形成し;
R
5およびR
6は、独立してアルキル基であり;
Mは、Li、NaまたはKであり;
X
1およびX
2は、独立して、F、Cl、BrまたはIであり;
R
7、R
8およびR
8は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルである。)。
【0175】
提供する下記の合成は、化合物β−D−2’−CH
3−リボCを得るための非限定的な段階である。通常の当業者は、公知のあらゆる方法でこの合成を変形して、化合物β−D−2’−CH
3−リボCを得ることができる。
【0176】
1.適切に修飾された糖を用いる核酸塩基のグリコシル化
この方法の重要な出発原料は、適切な脱離基(LG)、例えばアシル基またはクロロ、ブロモ、フルオロもしくはヨードで適切に置換された、2’−OHおよび2’−Hを有する糖であり得る。前記糖は、購入することができ、または標準的なエピマー化、置換、酸化および還元法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。次に、この置換された糖を、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−変性糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー(Meerwin−Pondorf−Verley)試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0177】
次に、適切な非プロトン溶媒を用い、適温で、グリニャール試薬、有機リチウム、リチウムジアルキル銅、またはTBAF中のCH
3−SiMe
3などの有機金属炭素求核試薬をこのケトンとカップリングさせることにより、2’−メチルアルキル化糖が生じる。このメチル糖は、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0178】
次に、この場合により保護された糖を、Townsend Chemistry of Nucleosides and Nucleotides,Plenum Press,1994により教示されているような当業者に周知の方法によって、塩基にカップリングさせることができる。例えば、適切な溶媒中、適温で、四塩化スズ、四塩化チタンまたはトリメチルシリルトリフレートなどのルイス酸を用いて、アシル化糖をシリル化塩基にカップリングさせることができる。また、トリメチルシリルトリフレートの存在で、ハロ−糖をシリル化塩基にカップリングさせることができる。
【0179】
次いで、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によってこの2’−メチル−ヌクレオシドを脱保護することができる。
【0180】
2’−メチル−ヌクレオシドの合成を図式6に示す。
【0181】
【化18】
(図式中、
GLは、脱離基であり;および
R
1、R
2およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上でフェニル基が場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基である。)。
【0182】
2.既成2’−メチルヌクレオシドの修飾
この方法のための重要な出発原料は、2’−OHおよび2’−Hを有する適切に置換された2’−メチル−シチジンヌクレオシドであり得る。前記ヌクレオシドは、購入することができ、または標準的なカップリング法を含む公知のあらゆる手段によって調製することができる。前記ヌクレオシドは、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基で、好ましくはアシルまたはシリル基で、場合により保護することができる。
【0183】
次に、この適切に保護された2’−メチル−シチジンヌクレオシドを、相溶性溶媒中、適温で、適切な酸化剤を用いて酸化して、2’−メチル糖を得ることができる。可能な酸化剤は、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸の混合物)、コリンズ試薬(ジピリジンCr(VI)酸化物)、コーリー試薬(クロロクロム酸ピリジニウム)、二クロム酸ピリジニウム、酸性二クロム酸塩、過マンガン酸カリウム、MnO
2、四酸化ルテニウム、相転移触媒(クロム酸、またはポリマー支持過マンガン酸塩など)、Cl
2−ピリジン、H
2O
2−モリブデン酸アンモニウム、NaBrO
2−CAN、HOAc中のNaOCl、亜クロム酸銅、酸化銅、ラネーニッケル、酢酸パラジウム、メールウィン−ポンドルフ−ベルリー試薬(アルミニウムt−ブトキシドと別のケトン)、およびN−ブロモスクシンイミドである。
【0184】
次いで、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によってこのヌクレオシドを脱保護することができる。
【0185】
2’−メチル−シチジンヌクレオシドの合成を図式7に示す。
【0186】
【化19】
(図式中、
R
1およびR
3は、独立して、H、リン酸塩(一、二または三リン酸塩および安定化リン酸塩プロドラッグを含む);アシル(低級アシルを含む);アルキル(低級アルキルを含む);スルホン酸エステル(メタンスルホニルを含むアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含む);本明細書で与えるアリールの定義に記載されているような置換基1個以上でフェニル基が場合により置換されているベンジル;脂質(リン脂質を含む);アミノ酸;炭水化物;ペプチド;コレステロール;またはインビボ投与されたとき、R
1、R
2およびR
3が独立してHまたはリン酸塩である化合物をもたらす医薬適合性の脱離基である。)。
【0187】
医薬適合性のプロドラッグ
本明細書を通して、用語「医薬適合性のプロドラッグおよび/または塩」は、患者に投与するとこの親ヌクレオシド化合物をもたらすヌクレオシド化合物のあらゆる医薬適合性形態(エステル、リン酸エステル、エステルの塩または関連の基など)を説明するために用いる。医薬適合性の塩には、医薬適合性の無機塩基および酸または有機塩基または酸から誘導されたものが挙げられる。適する塩には、製薬技術分野において周知の多数の他の酸の中でも、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されたものが挙げられる。医薬適合性のプロドラッグは、宿主体内で代謝、例えば加水分解されて、本発明の化合物を形成する化合物を指す。プロドラッグの典型的な例には、本活性化合物の官能部分に生体不安定性保護基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグには、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、脱リン酸化を受けて、本活性化合物をもたらすことができる化合物が挙げられる。本発明の化合物は、フラビウイルス科ウイルスに対して抗ウイルス活性を有するか、こうした活性を示す化合物に代謝される。
【0188】
アシル化またはヌクレオシドプロドラッグとして投与される2’−分枝ヌクレオシド(β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ピリミジンヌクレオシドを含む)または関連化合物は、併用または交代療法において使用することができる。
【0189】
本明細書に記載するヌクレオシドのいずれかまたはヒドロキシルもしくはアミン官能基を有する他の化合物をヌクレオシドプロドラッグとして投与して、このヌクレオシドの活性、バイオアベイラビリティ、安定性を増大させる、またはこのヌクレオシドの特性を別様に変化させることができる。多数のヌクレオシドプロドラッグリガンドが公知である。一般に、化合物のヒドロキシル基の、またはヌクレオシドの一、二もしくは三リン酸塩のアルキル化、アシル化または他の親油性修飾は、このヌクレオシドの安定性を増大させる。リン酸塩部分またはヒドロキシルの1つ以上の水素を置換することができる置換基の例には、アルキル、アリール、ステロイド、炭水化物(糖を含む)、1,2−ジアシルグリセロールおよびアルコールが挙げられる。R.Jones and N.Bischofberger,Antiviral Research,27(1995)1−17に多くが記載されている。これらのうちのいずれかを、本開示ヌクレオシドまたは他の化合物と併用して、所望の効果を達成することができる。
【0190】
活性ヌクレオシドまたは他のヒドロキシル含有化合物は、次の参考文献に記載されているように、エーテル脂質(および特に、ヌクレオシドについての5’−エーテル脂質)として提供することもできる: Kucera,L.S.,N.Iyer,E.Leake,A.Raben,Modest E. K.,D.L.W.,and C.Piantadosi.1990.「感染性HIV−1の生産を抑制し、欠陥ウイルスの形成を誘導する新規膜相互作用性エーテル脂質(Novel membrane−interactive ether lipid analogs that inhibit infectious HIV−1 production and induce defective virus formation)」,AIDS Res.Hum.Retro Viruses.6:491−501; Piantadosi,C.,J.Marasco C.J.,S.L.Morris−Natschke,K.L.Meyer,F.Gumus,J.R.Surles,K.S.Ishaq,L.S.Kucera,N.Iyer,C.A.Wallen,S.Piantadosi,and E.J.Modest.1991.「新規エーテル脂質ヌクレオシドコンジュゲートの合成およびこの抗HIV活性についての評価(Synthesis and evaluation of novel ether lipid nucleoside conjugates for anti−HIV activity)」,J Med.Chem.34:1408.1414; Hosteller,K.Y.,D.D.Richman,D.A.Carson,L.M.Stuhmiller,G.M.T.van Wijk,and H.van den Bosch.1992.「3’−デオキシチミジンの脂質プロドラッグである3’−デオキシチミジン二リン酸ジミリストイルグリセロールによる、CEMおよびHT4−6C細胞における1型ヒト免疫不全ウイルスの複製阻害の大いなる向上(Greatly enhanced inhibition of human immunodeficiency virus type 1 replication in CEM and HT4−6C cells by 3’−deoxythymidine diphosphate dimyristoylglycerol, a lipid prodrug of 3,−deoxythymidine)」,Antimicrob.Agents Chemother.36:2025.2029; Hostetler,K.Y.,L.M.Stuhmiller,H.B.Lenting,H.van den Bosch,and D. D.Richman,1990.「アジドチミジンおよび他の抗ウイルスヌクレオシドのリン脂質誘導体の合成および抗レトロウイルス活性(Synthesis and antiretroviral activity of phospholipid analogs of azidothymidine and other antiviralnucleosides)」,J.Biol.Chem.265:61127。ヌクレオシドまたは他のヒドロキシルもしくはアミン含有化合物に、好ましくはこのヌクレオシドまたは親油性調製物の5’−OH位に共有結合で組み込むことができる、適する親油性置換基を開示している米国特許の非限定的な例には、次のものが挙げられる: 米国特許第 5,149,794号(1992年9月22日、Yatvinら)、同第5,194,654号(1993年3月16日、Hostetlerら)、同第5,223,263号(1993年6月29日、Hostetlerら)、同第5,256,641号(1993年10月26日、Yatvinら)、同第5,411,947号(1995年5月2日、Hostetlerら)、同第5,463,092号(1995年10月31日、Hostetlerら)、同第5,543,389号(1996年8月6日、Yatvinら)、同第5,543,390号(1996年8月6日、Yatvinら)、同第5,543,391号(1996年8月6日、Yatvinら)、および同第5,554,728号(1996年9月10日、Basavaら)。これらの特許はすべて、本明細書に参考として援用されている。本発明のヌクレオシド、または親油性調製物に結合することができる親油性置換基を開示している外国特許出願には、次のものが挙げられる: 国際公開公報第89/02733号、同第90/00555号、同第91/16920号、同第91/18914号、同第93/00910号、同第94/26273号および同第96/15132号、欧州特許第0 350 287号および同第93917054.4号、ならびに国際公開公報第91/19721号。
【0191】
2’−分枝β−D−ヌクレオシドの2’、3’および5’−プロドラッグ、またはこれらの医薬適合性の塩、またはこれらの化合物を含有する医薬適合性の調合物は、フラビウイルス科ウイルス感染の治療に使用することができる。具体的には、フラビウイルス科ウイルス感染の治療のために、式:
【0192】
【化20】
によって表されるβ−D−2’−CH
3−リボCの3’−バリンエステルプロドラッグまたはその医薬適合性の塩を被験者に投与することができる。
【0193】
一つの実施態様において、2’−分枝β−Dヌクレオシド2’−プロドラッグは、2’および/または5’位に生体分解性部分を含む。好ましい部分は、DまたはL−バリルを含む天然または合成DまたはLアミノ酸エステルであり、好ましくは、L−バリルなどのL−アミノ酸エステル、およびアセチルを含むアルキルエステルである。従って、具体的に、本発明は、いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’−DまたはL−アミノ酸エステルおよび2’,5’−DまたはL−アミノ酸エステル、好ましくはL−アミノ酸エステル(ここにおいて、その親薬物は、15マイクロモル濃度未満、さらにいっそう好ましくは10マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する); いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’−(アルキルもしくはアリール)エステルまたは2’,5’−ジ(アルキルもしくはアリール)エステル(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。); ならびに(i)2’エステルが、天然または合成DまたはLアミノ酸エステルであり、好ましくはL−アミノ酸エステルであり、および5’−エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;(ii)両方のエステルが、独立して、天然または合成DまたはL−アミノ酸エステルであり、好ましくは両方ともL−アミノ酸エステルであり;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルである;ならびに(iv)2’エステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルであり、および5’−エステルが、天然または合成DまたはL−アミノ酸エステルであり、好ましくはL−アミノ酸エステルである、2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’,5’−ジエステルのプロドラッグ(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する)を包含する。
【0194】
本発明の範囲に入るプロドラッグの例は、β−D−2’−メチル−シチジンの2’−DまたはL−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’−L−バリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’−L−バリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロシチジンの2’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの2’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの2’−アセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’−アセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’−アセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’−アセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’−アセチルエステル;およびβ−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロシチジン、ウリジンもしくはチミジン)の2’−エステルまたはβ−D−2’−メチル−シチジンもしくはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の2’−エステル(ここにおいて、(i)2’エステルは、アミノ酸エステルであるか、(ii)2’エステルは、アルキルもしくはアリールエステルである。)である。
【0195】
本発明の範囲に入るプロドラッグの追加例は、β−D−2’−メチル−シチジンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン(ジバリル−2’,6−ジMe−L−dC);β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの2’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの2’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’,5’−ジアセチルエステル;ならびに(i)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’−エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである、(ii)両方のエステルが、アミノ酸エステルである;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルもしくはアリールエステルである;または(iv)2’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、5’−エステルが、アミノ酸エステルである、β−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロ−シチジン、ウリジンもしくはチミジン)の2’,5’−ジエステルまたはβ−D−2’−メチルシチジンもしくはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の2’,5’−ジエステルである。
【0196】
もう一つの実施態様において、2’−分枝β−Dヌクレオシド3’−プロドラッグは、3’および/または5’位に生体分解性部分を含む。好ましい部分は、バリンなどの天然または合成DまたはLアミノ酸エステルであるが、好ましくは、L−バリンなどのL−アミノ酸、およびアセチルを含むアルキルエステルである。従って、具体的に、本発明は、いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの3’−L−アミノ酸エステルおよび3’,5’−DまたはL−ジアミノ酸エステル(ここにおいて、その親薬物は、15マイクロモル濃度未満、さらにいっそう好ましくは10マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。); いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの3’−(アルキルもしくはアリール)エステルまたは3’,5’−L−ジ(アルキルもしくはアリール)エステル(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。); ならびに(i)3’エステルが、天然または合成DまたはLアミノ酸エステルであり、5’−エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;(ii)両方のエステルが、天然または合成DまたはL−アミノ酸エステルである;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルである;ならびに(iv)3’エステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルであり、および5’−エステルが、天然または合成DまたはL−アミノ酸エステルである、2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの3’,5’−ジエステルのプロドラッグ(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。)を包含する。
【0197】
本発明の範囲に入るプロドラッグの例は、β−D−2’−メチル−シチジンの3’−DまたはL−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの3’−L−バリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの3’−L−バリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの3’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロシチジンの3’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの3’−L−バリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの3’−アセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの3’−アセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの3’−アセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの3’−アセチルエステル;β−D−2’−メチル−シチジンの3’−アセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの3’−アセチルエステル;および(i)3’エステルがアミノ酸エステルであるか、(ii)3’エステルがアルキルもしくはアリールエステルである、β−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロシチジン、ウリジンもしくはチミジン)の3’−エステルまたはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の3’−エステルである。
【0198】
本発明の範囲に入るプロドラッグの追加例は、β−D−2’−メチル−シチジンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン(ジバル−2’,6−ジMe−L−dC);β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの3’,5’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの3’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの3’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの3’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの3’,5’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの3’,5’−ジアセチルエステル;ならびに(i)3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’−エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである、(ii)両方のエステルが、アミノ酸エステルである;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルもしくはアリールエステルである;または(iv)3’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、5’−エステルが、アミノ酸エステルである、β−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロ−シチジン、ウリジンもしくはチミジン)の3’,5’−ジエステルまたはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の3’,5’−ジエステルである。
【0199】
もう一つの実施態様において、2’−分枝β−Dヌクレオシドのプロドラッグは、2’、3’および/または5’位に生体分解性部分を含む。好ましい部分は、DまたはL−バリンを含む天然または合成DまたはLアミノ酸エステルであるが、好ましくは、L−バリンなどのL−アミノ酸エステル、およびアセチルを含むアルキルエステルである。従って、具体的に、本発明は、いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシド、好ましくはL−アミノ酸の2’,3’−LまたはD−ジアミノ酸エステルおよび2’,3’,5’−LまたはD−トリアミノ酸エステル(ここにおいて、その親薬物は、15マイクロモル濃度未満、さらにいっそう好ましくは10マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。); いずれかの望ましいプリンまたはピリミジン塩基を有する2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’,3’−ジ(アルキルもしくはアリール)エステルまたは2’,3’,5’−L−トリ(アルキルもしくはアリール)エステル(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。); ならびに(i)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’−エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;(ii)両方のエステルが、アミノ酸エステルである;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルである;ならびに(iv)2’エステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルであり、3’−エステルが、アミノ酸エステルである、2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’,3’−ジエステルのプロドラッグ(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。)を包含する。さらに、(i)3つすべてのエステルが、アミノ酸エステルである;(ii)3つすべてのエステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルである;(iii)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;(vi)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、5’エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;(v)2’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、3’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである;(vi)2’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである;(vii)2’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アルキルまたはアリールエステルである;ならびに(viii)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アルキルまたはアリールエステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである、2’−分枝β−Dまたはβ−Lヌクレオシドの2’,3’,5’−トリエステル(ここにおいて、その親薬物は、10または15マイクロモル濃度未満のEC
50を場合により有する。)。
【0200】
本発明の範囲に入るプロドラッグの例には、β−D−2’−メチル−シチジンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン(ジバル−2’,6−ジMe−L−dC);β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロシチジンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの2’,3’−L−ジバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの2’,3’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,3’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,3’−ジアセチルエステル;β−D−2’−メチル−シチジンの2’,3’−ジアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,3’−ジアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’,3’−ジアセチルエステル;ならびに(i)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである;(ii)両方のエステルが、アミノ酸エステルである;(iii)両方のエステルが、独立してアルキルまたはアリールエステルである;または(iv)2’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルである、β−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロシチジン、ウリジンもしくはチミジン)の2’,3’−ジエステルまたはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の2’,3’−ジエステルが挙げられる。
【0201】
本発明の範囲に入るプロドラッグの追加例には、β−D−2’−メチル−シチジンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジン(トリバル−2’,6−ジMe−L−dC);β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−ウリジンの2’,3’,5’−L−トリバリンエステル;β−D−2’,6−ジメチル−シチジンの2’,3’,5’−トリアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−チミジンの2’,3’,5’−トリアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−アデノシンの2’,3’,5’−トリアセチルエステル;β−D−2’,8−ジメチル−グアノシンの2’,3’,5’−トリアセチルエステル;β−D−2’,6−ジメチル−5−フルオロ−シチジンの2’,3’,5’−トリアセチルエステル;ならびに(i)3つすべてのエステルが、アミノ酸エステルである;(ii)3つすべてのエステルが、独立してアルキルもしくはアリールエステルである;(iii)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである;(iv)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、5’−エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである;(v)2’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、3’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである;(vi)2’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである;(vii)2’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、3’エステルが、アミノ酸エステルであり、5’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルである;および(viii)2’エステルが、アミノ酸エステルであり、3’エステルが、アルキルもしくはアリールエステルであり、5’エステルが、アミノ酸エステルである、β−D−2’,6−ジメチル−(シチジン、5−フルオロ−シチジン、ウリジンもしくはチミジン)の2’,3’,5’−トリエステルまたはβ−D−2’,8−ジメチル−(グアノシン、アデノシンもしくはイノシン)の2’,3’,5’−トリエステルが挙げられる。
【0202】
本発明の範囲に入るプロドラッグのさらなる例には、米国特許第6,284,748号および同第6,312,662号に開示されているプロドラッグが挙げられる。特に、本発明のプロドラッグには、構造:
【0203】
【化21】
(式中、
V、WおよびW’は、−−H、アルキル、アラルキル、脂環式の基、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、1−アルケニルおよび1−アルキニルから成る群より独立して選択され;または
VおよびZは、追加の原子3から5個を介して互いに連結して、リンに結合している両方のO基からの3個の原子である炭素原子に結合しているヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシまたはアリールオキシカルボニルオキシで置換されている、5から7個の原子を有する、場合により1個のヘテロ原子を含有する環状の基を形成し;または
VおよびZは、追加の原子3から5個を介して互いに連結して、リンに結合しているOに対してベータおよびガンマ位でアリール基に融合している、場合によりヘテロ原子1個を含有する環状の基を形成する;または
VおよびWは、追加の原子3個を介して互いに連結して、炭素原子6個を含有する、ならびにリンに結合しているOからの3個の原子である炭素原子のうちの1個に結合するヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アルキルチオカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシから成る群より選択された1個の置換基で置換される、場合により置換されている環状の基を形成し;または
ZおよびWは、追加の原子3から5個を介して互いに連結して、1個のヘテロ原子を場合により含有する環状の基を形成し、およびVは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくは置換へテロアリールでなければならず;
WおよびW’は、追加の原子2から5個を介して互いに連結して、0から2個のヘテロ原子を場合により含有する環状の基を形成し、およびVは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくはへテロアリールでなければならず;
Zは、−CHR
2OH、−CHR
2OC(O)R
3、−CHR
2OC(S)R
3、−CHR
2OC(S)OR
3、−CHR
2OC(O)SR
3、−CHR
2OCO
2R
3、−OR
2、−SR
2、−CHR
2N
3、−CH
2アリール、−CH(アリール)OH、−CH(CH=CR
22)OH、−CH(C≡CR
2)OH、−R
2、−NR
22、−OCOR
3、−OCO
2R
3、−SCOR
3、−SCO
2R
3、−NHCOR
2、−NHCO
2R
3、−CH
2NHアリール、−(CH
2)
p−OR
12および−(CH
2)
p−SR
12から成る群より選択され;
pは、整数2または3であり;
R
2は、R.sup.3および−−Hから成る群より選択され;
R
3は、アルキル、アリール、脂環式の基およびアラルキルから成る群より選択され;
R
12は、−−Hおよび低級アシルから成る群より選択され;
Mは、2’−分枝ヌクレオシドであるPO
32−、P
2O
63−またはP
3O
94−に結合している基から選択され、および炭素、酸素、硫黄または窒素原子を介してリンに結合している。)
の化合物が挙げられる。
【0204】
1つの非限定的な例において、プロドラッグは、下記化合物におけるがごとくヌクレオシドに結合している:
【0206】
2’および/または3’−プロドラッグの一般合成
この方法のための重要な出発原料は、適切に置換された2’−分枝ヌクレオシドである。前記2’−分枝ヌクレオシドは、購入することができ、または本明細書で開示する技法を含む公知のいずれかの手段によって調製することができる。前記2’−分枝ヌクレオシドは、Greeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,1991により教示されているような当業者に周知の方法によって、適する保護基、好ましくはシリル基で場合により保護することができる。次に、適切なプロトンまたは非プロトン溶媒を用い、適温で、この保護分枝ヌクレオシドを塩化アシルおよび/またはアシル無水物などの適するアシルドナーとカップリングさせて、2’−分枝β−Dヌクレオシドの2’および/または3’プロドラッグを得ることができる。また、次に、適切な非プロトン溶媒を用い、適温で、場合により適するカップリング剤を用いて、この保護分枝ヌクレオシドをアルカノール酸および/またはアミノ酸残基などのカルボン酸のような適するアシルとカップリングさせて、2’−分枝β−Dヌクレオシドの2’および/または3’プロドラッグを得ることができる。可能なカップリング剤は、トリフェニルホスフィンまたは様々なカルボジイミドを伴うミツノブ試薬(例えば、アゾジカルボン酸ジイソプロピルおよびアゾジカルボン酸ジエチル)を含む(しかし、これらに限定されない)、カップリングを促進するあらゆる試薬である。
【0207】
例えば、アセトニトリル−ベンゼン混合物を還流させながら酸塩化物を使用して単純アミノアルコールをエステル化することができる(下の図式8:Synthetic Communications,1978,8(5),327−333参照。この文献は、本明細書に参考として援用されている)。また、エステル化は、J.Am.Chem.Soc.,1999,121(24),5661−5664に記載されているように、無水物を使用して達成することができる。
【0209】
III.フラビウイルス科ウイルスゲノムにおけるβ−D−2’−CH
3−リボC誘発突然変異の検出
一つの実施態様において、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性を同定すること、
(iii)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内においてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、1つ以上の薬物の有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0210】
もう一つの実施態様において、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性を同定すること、
(iii)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内の第282位におけるセリンからトレオニンなどの別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物の有効量を投与すること
を含む、HCVに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0211】
一つの実施態様において、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性を同定すること、
(iii)フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内の第405位におけるセリンからトレオニンなどの別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物の有効量を投与すること
を含む、BVDVに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0212】
もう一つの実施態様において、本発明は、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性を同定すること、
(iii)インターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0213】
一定の実施態様において、患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性の特定は、ウイルスプラーク成長の表現型分析によって決定することができる。もう一つの実施態様において、患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性の特定は、このウイルスの複製適性によって決定することができる。さらなる実施態様において、患者のβ−D−2’−CH
3−リボCに対するウイルス耐性の特定は、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンの存在を検出することによって決定することができる。
【0214】
一つの実施態様において、本発明は、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者からウイルス培養サンプルを得ること、
(iii)このサンプルを培養し、このサンプルと野生型ウイルスの間でプラーク成長を比較すること、
(iv)このサンプルのプラーク成長が、野生型のプラーク成長より小さい(これは、β−D−2’−CH
3−リボCに対する耐性を示す。)かどうか決定すること、
(v)β−D−2’−CH
3−リボCに対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法を含む。
【0215】
もう一つの実施態様において、本発明は、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者からウイルスサンプルを得ること、
(iii)このウイルスの複製適性を決定すること、
(iv)このサンプルのウイルスの複製適性が、野生型ウイルスの複製適性より低い(これは、β−D−2’−CH
3−リボCに対する耐性を示す。)かどうか決定すること、
(v)β−D−2’−CH
3−リボCに対して耐性である患者にインターフェロンの有効量を投与すること
を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0216】
一つの実施態様において、ウイルスプラーク成長および/またはウイルス複製適性は、ウイルスプラークアッセイによって定量することができる。別の実施態様において、感染中心アッセイ、ウイルス誘発性レポーターアッセイ、形質転換アッセイおよび終点希釈アッセイなどの他のアッセイ、またはRT−PCR法を使用して、ウイルス力価を定量することができる(Flintら,Principles of Virology(ASM)第2章; Wagner & Hewlett.Basic Virology(Blackwell),Chapters 9 & 10)。
【0217】
プラークアッセイを行って、ウイルスプラーク成長および/またはウイルス複製適性を定量することができる。宿主細胞の単層が入っている培養皿に、ウイルスの希釈溶液を塗布することができる。これらの細胞に半固体層(粘性培地、例えば寒天など)をかぶせて、1つの感染細胞から別の細胞へのウイルスの拡散を防止することができる。インキュベーション後、「プラーク」を識別することができ、この有機懸濁液中の感染ウイルス粒子数を概算することができる。プラークを識別する1つの方法は、単層内の感染細胞中のウイルス抗原を検出するための抗体染色法の使用による。次に、ウイルス特異的抗体に対しての色原体または蛍光標識を用いてこれらの感染細胞を視覚化することができる。プラークは、表現型分析のために観察してもよいし、および/またはカウントしてウイルス力価を決定してもよい。ウイルス力価は、次の方程式:T
FFU/mL=Nx5xD(式中、Tは、ウイルス力価(単位:FFU/mL)であり;Nは、ウエルあたりのプラーク数であり;Dは、対応するウイルスサンプルについての希釈率である)を用いて、病巣形成単位(FFU)/mLで計算することができる。(例えば、ウイルスサンプルのうちの10
−5希釈に対応するウエルにおいて12のプラークが見出された場合には、T=12x5x10
5=6x10
6 PFU/mL)。次に、被定義宿主環境において感染後代を生産する総合的複製能力であるウイルス複製適性を決定することができる。
【0218】
本発明のもう一つの側面は、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドGからCへの突然変異の存在(第405位アミノ酸においてセリンからトレオニンへの突然変異をもたらす)を決定するための方法である。Ser
405、BVDV推定機能性NS5B領域のアミノ酸位置が、ヘパシウイルスゲノム、ペスチウイルスゲノムおよびフラビウイルスゲノムすべての間で高度に保存されていること(
図11; Laiら,J.Virol.,1999,73,10129−36)が認められているので、突然変異を受ける他のフラビウイルス科ウイルスの推定機能性NS5BドメインBの対応するセリン残基は、本発明の実施態様に従って検出することができる。例えば、BVDVのRNAポリメラーゼドメインのSer
405は、HCVのRNAポリメラーゼドメインのSer
282に対応する。従って、本発明の実施態様は、HCVゲノムの第8443位ヌクレオチド(BVDV RNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドに対応する。)のGからCへの突然変異も包含する。
【0219】
一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスゲノムの区画に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、および次に、このオリゴヌクレオチドがこのウイルス核酸にハイブリダイズするかどうかを決定することを含む、β−D−2’−CH
3−リボC耐性を示す突然変異を検出するための方法を提供する。
【0220】
別の実施態様において、本発明は、
(i)β−D−2’−CH
3−リボCもしくはβ−D−2’−CH
3−リボCの3’バリンエステルプロドラッグなどのプロドラッグまたはその医薬適合性の塩の有効量を投与すること、
(ii)この患者の血液をアッセイして、野生型ウイルスから突然変異ウイルスへの血清変換について検査すること、
(iii)インターフェロンの有効量を投与すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスに感染している患者を治療するための方法を提供する。
【0221】
さらにもう一つの実施態様において、本発明は、
(i)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むサンプルと、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンまたはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(ii)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、
(iii)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドまたはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへのこのプローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、β−D−2’−CH
3−リボC耐性フラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルをアッセイするための方法を提供する。
【0222】
さらなる実施態様において、本発明は、
(i)フラビウイルス科ウイルス核酸配列を含むと推測されるサンプルと、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のSerの位置にThrがコードされているコドンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(ii)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、
(iii)前記プローブの前記配列へのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のSerの代わりにThrを含有する(これは、そのウイルスがインターフェロン治療に対して過敏であることを示す。)と推測されるサンプルをアッセイするための方法を提供する。
【0223】
もう一つの実施態様において、本発明は、
(i)BVDV核酸配列を含むと推測されるサンプルと、RNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチドプローブとを接触させること、
(ii)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、
(iii)BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンへの前記プローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸におけるセリンまたは第1214位ヌクレオチドにおけるシチジンの代わりにThrを含有する(これは、そのウイルスがインターフェロン治療に対して過敏であることを示す。)と推測されるサンプルをアッセイするための方法を提供する。
【0224】
もう一つの実施態様において、本発明は、
(i)HCV核酸配列を含むと推測されるサンプルと、第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンに相補的な配列を有する検出可能なヌクレオチドプローブとを接触させること、
(ii)前記プローブを前記配列にハイブリダイズさせること、
(iii)HCVゲノムの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンへの前記プローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含む、HCVゲノムの第282位アミノ酸または第8443位ヌクレオチドにおいて高度に保存されているRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のSerの代わりにThrを含有する(これは、そのウイルスがインターフェロン治療に対して過敏であることを示す。)と推測されるサンプルをアッセイするための方法を提供する。
【0225】
オリゴヌクレオチドプローブ
フラビウイルス科ウイルスの2’−分枝ピリミジンヌクレオシド誘発突然変異の存在を検出することができるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。本プローブは、突然変異を含むウイルス核酸配列に相補的である。これらのプローブは、方法およびキットに使用することができる。本オリゴヌクレオチドプローブは、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドもしくはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第8443位ヌクレオチドにおけるヌクレオチドシチジン、またはフラビウイルス科ウイルスゲノム内のRNAポリメラーゼのドメインBの保存セリンをコードしているフラビウイルス科ウイルスの他のヌクレオチド(
図11)を検出することができる。
【0226】
本オリゴヌクレオチドプローブの長さは、好ましくは少なくとも14ヌクレオチド、好ましい実施態様では、少なくとも15、20、25または30ヌクレオチドである。長さが約25または30ヌクレオチドより長いプローブの使用は、一般には好ましくない。一つの実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるグアニンからシチジンへの塩基変化を特定するように設計することができる。もう一つの実施態様において、本オリゴヌクレオチドプローブは、HCVの第8443位ヌクレオチドにおけるグアニンからシチジンへの塩基変化を特定するように設計することができる。本オリゴヌクレオチドプローブは、突然変異領域が、被ハイブリダイズセグメント内部の区画に位置するか、あるいは被ハイブリダイズセグメントの3’または5’末端いずれかにあることができるように設計することができる。突然変異領域は、十分なハイブリダイゼーションを可能ならしめるように、このプローブの中央付近に位置することが好ましい。
【0227】
下の表2は、RNAポリメラーゼ領域のヌクレオチド第1214位(また、ヌクレオチド第11,136位と呼ばれる。参照: ゲンバンク・アクセッション番号AJ133739;Vassilev and Donis(2000)Virus Res 69(2)95−107)を含むBVDVヌクレオチド配列の実例となる実施態様を提供するものである。これらの配列を与えれば、通常の技術者は、標準的なアルゴリズムを使用して、下のヌクレオチド配列に相補的なまたは実質的に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを構成することができる。相補的対合に関する法則は周知の: シチジン(「C」)は、グアニン(「G」)と常に対合し、チミン(「T」)またはウラシル(「U」)は、アデニン(「A」)と常に対合する。プローブは、このプローブが十分にハイブリダイズし、診断用ヌクレオチドを識別することができさえすれば、標的核酸配列に100%相補的である必要はない。ある程度の塩基対ミス対合は、一般に許容され得る。
【0229】
従って、一つの実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、フラビウイルス科ウイルスヌクレオチド配列に対する相補性に関して1、2、3、4、5または6のミス対合を有する。
【0230】
本発明の他の側面は、フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXTにおいてセリンからトレオニンへ変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、2’−分枝ヌクレオシド、例えば2’−分枝ピリミジンヌクレオシド、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC、またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の治療有効量を治療が必要なヒトに投与することによって、フラビウイルス科ウイルス感染を治療する方法を提供する。トレオニンをコードしているコドンACA、ACGまたはACUを上の表2中のコドンACC(太字)の代わりに用いて、BVDVのRNAポリメラーゼ領域のドメインBにおけるトレオニンの存在を検出することができる。
【0231】
本発明のもう一つの側面は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主において、インターフェロンの治療有効量を投与することによりフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。従って、本発明の別の実施態様においては、例えば、トレオニンをコードしているコドンACA、ACGまたはACUを上の表2中のコドンACC(太字)の代わりに用いて、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位残基におけるトレオニンの存在を検出することができる。
【0232】
下の表3は、HCVゲノムのヌクレオチド第8443位(ゲンバンク・アクセッション番号AJ238799; Lohmannら,(1999)Science 285(5254)110−113)を含むHCVヌクレオチド配列の例となる実施態様を提供するものである。HCVゲノムのヌクレオチド第8443位は、BVDVゲノムのヌクレオチド第11,136位に対応し、またβ−D−2’−CH
3−リボCでの治療によって突然変異させられるフラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域の保存セリン残基(BVDVゲノムのSer
405、これは、HCVのSer
282に対応する(
図11)。)を表す。上で述べたように、これらの配列を与えられると、通常の技術者は、標準的なアルゴリズムを使用して、下のヌクレオチド配列に相補的なまたは実質的に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを構成することができる。
【0234】
従って、一つの実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、フラビウイルス科ウイルスヌクレオチド配列に対する相補性に関して1、2、3、4、5または6のミス対合を有する。
【0235】
本発明の他の側面は、フラビウイルス科ウイルスにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXTにおいてセリンからトレオニンへの変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、2’−分枝ヌクレオシド、例えば、2’−分枝ピリミジンヌクレオシド、例えばβ−D−2’−CH
3−リボC、またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の治療有効量を治療が必要なヒトに投与することによって、フラビウイルス科ウイルス感染を治療する方法を提供する。前と同様、例えば、トレオニンもコードしているコドンACA、ACGまたはACUを表3のコドンACC(太字)の代わりに用いて、HCVのRNAポリメラーゼ領域のドメインBにおけるトレオニンの存在を検出することができる。
【0236】
本発明のもう一つの側面は、RNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主において、インターフェロンの治療有効量を投与することによりフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。例えば、上のように、トレオニンもコードしているコドンACA、ACGまたはACUを表3のコドンACC(太字)の代わりに用いて、HCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位残基におけるトレオニンの存在を検出することができる。
【0237】
もう一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス核酸配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。一つの実施態様において、本ヌクレオチドの長さは、少なくとも14ヌクレオチドであり、また突然変異を有するヌクレオチド配列に、配列特異的でストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
【0238】
プライマーのハイブリダイズ領域として使用されるオリゴヌクレオチド配列は、プローブのハイブリダイズ領域としても使用することができる。プローブとしての使用に適するプライマー配列は、このプライマーのハイブリダイゼーション特性に依存する。同様に、プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、プライマーとしても使用することができる。
【0239】
これらの実施態様の提供により、特異的プライマーおよびプローブが、例えば、この5’末端または3’末端いずれかに、標的配列に相補的である、または標的配列に相補的でないヌクレオチドを付加させることによって作成できることは、当業者には明らかであろう。プライマー組成物が、標的配列の伸長の開始点としての役割を果たす限り、ならびにプライマーおよびプローブが、例示する実施態様の範囲内に含まれる少なくとも14の連続的ヌクレオチドを含む限り、こうした組成物は、本発明の範囲内である。
【0240】
本明細書におけるプローブは、排他的または確定的とはみなされない次の非限定的な基準によって選択することができる:(1)本プローブは、突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスゲノムの領域から選択される;(2)本プローブは、検査の信頼性を落とすと予想されるあらゆるウイルスゲノム配列との相同性がない;および(3)本プローブは、例えばクレノウフラグメントと呼ばれるDNAポリメラーゼの部分のような大腸菌DNAポリメラーゼなどの増幅酵素によって核酸伸長に干渉し得る、被増幅核酸の二次構造形成がない。二次構造形成の防止は、増幅培地中、約15重量%以下、好ましくは5から10重量%のジメチルスルホキシド(DMSO)を使用すること、および/または増幅温度を30から40℃に上昇させることによって達成することができる。
【0241】
さらに、本プローブは、約50%のグアニンおよびシチジン含量率を有することができ、ならびにプライマーの3’末端に多数の連続的アデニンおよびチミン残基(これらは、安定性が劣るハイブリッドを生じる原因となり得る。)を有さないものとする。
【0242】
本発明のプローブの長さは、約10から30ヌクレオチド、好ましくは少なくとも14、15、20、25または30ヌクレオチドである。本発明で用いるヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、およびイノシンなどの修飾ヌクレオチド、すなわちこれらのハイブリダイゼーション特性を本質的に変化させない修飾基を有するヌクレオチドであり得る。本明細書を通して、プローブ配列は、5’末端から3’末端までの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドとして表す。いずれのプローブも、それ自体で使用することができ、またはこれらの相補形またはこれらのRNA形(ここにおいて、Tは、Uにより置換される)で使用することができる。
【0243】
本発明のプローブは、対応するヌクレオチド配列を含む挿入物を含有する組み換えプラスミドのクローニングによって、また場合により、適切なヌクレアーゼの使用によるこのクローン化プラスミドからの前者の切断、および例えば分子量に応じた分画によるこれらの回収によって、作成することができる。本発明のプローブは、例えば従来的なリン酸トリエステルまたはリン酸ジエステル法またはこれらの自動型実施態様により、化学合成することもできる。こうした自動型実施態様の1つでは、ジエチルホスホロアミダイトを出発原料として使用し、Beaucageら,Tetrahedron Letters (1981),22:1859−1862が記載したように合成することができる。修飾固体支持体を用いるオリゴヌクレオチドの1つの合成法が、米国特許第4,458,066号に記載されている。生物学的供給源から単離されたプライマー(制限エンドヌクレアーゼ消化物など)の使用も可能である。
【0244】
プライマーまたはプローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、ホスホロチエート(Matsukuraら,1967)、アルキルホスホロチエート(Millerら,1979)、ペプチド核酸(Nielsenら,1991; Nielsenら,1993)、モルホリノ核酸、ロックト核酸、偽環状オリゴ核酸塩基、2’−O−4’−C−エチレン架橋核酸などのヌクレオチド類似体も含むことができ、または介在物質(Asselinら,1984)を含有することができる。
【0245】
所望の特性を有するプローブを設計するために、当業者には公知である次の有用なガイドラインを適用することができる。ハイブリダイゼーション反応の程度および特異性は、多数の因子による影響を受けるため、これらの因子の1つ以上を操作することによって、特定のプローブの正確な感受性および特異性、この標的に完璧に相補的であるか否かを決定することになる。本明細書でさらに例示する様々なアッセイ条件の重要性および効果は、当業者には公知である。
【0246】
標的核酸ハイブリッドに対するプローブの安定性は、これらのアッセイ条件に適合するように選択するべきである。これは、長い高AT型配列を避けること、このハイブリッドをGC塩基対で終わらせること、および適切なT
mを有するプローブを設計することによって達成することができる。プローブの始点と終点は、この長さと%GCに起因して、T
mが最終アッセイ実施温度より約2から10℃高くなるように選択すべきである。G−C塩基対は、A−T塩基対と比較すると、追加の水素結合のために大きな熱安定性を示すので、プローブの塩基組成は重要である。従って、関与する相補的核酸のG−C含有率が高いハイブリダイゼーションほど、高い温度で安定となる。イオン強度、およびプローブが使用されることとなるインキュベーション温度などの条件も、プローブ設計時に考慮しなければならない。ハイブリダイゼーションが、この反応混合物のイオン強度が増大するにつれて増加し得ること、およびハイブリッドの熱安定性が、イオン強度の増大に伴って増加し得ることは、公知である。一方、水素結合を崩壊するホルムアミド、尿素、DIVISOおよびアルコールなどの化学試薬は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増大させ得る。こうした試薬による水素結合の不安定化は、T
mを大いに低下させ得る。一般に、長さ10から50塩基の合成オリゴヌクレオチドプローブに最適なハイブリダイゼーションは、所定のデュプレックスについての融解温度より約5℃低い温度で発生する。最適より低い温度でのインキュベーションは、ミス対合塩基配列のハイブリダイズを可能に得、従って、特異性を低下させ得る。高相補的核酸ハイブリッドのみが形成され、および/または相補度が十分でないハイブリッドは形成されない高度ストリンジェンシー条件下でのみハイブリダイズするプローブを有することが望ましい。従って、アッセイ条件のストリンジェンシーが、ハイブリッドを形成する2本の核酸鎖間に必要な相補度を決める。ストリンジェンシーの程度は、例えば、標的核酸とで形成されたハイブリッドと非標的核酸とで形成されたハイブリッドの間の安定性の差を最大化するように選択する。この場合、単一の塩基対の変化を検出する必要があり、それには非常に高いストリンジェンシー条件が求められる。
【0247】
標的核酸配列の長さおよびプローブ配列の長さも考慮すべきである。1つの特定領域からの、位置および長さが異なる幾つかの配列が存在し、これらによって所望のハイブリダイゼーション特性が生じ得る場合もある。またある配列が、一つの塩基が異なるだけの別の配列より、有意に良好であり得る場合もある。
【0248】
完璧には相補的ではない核酸がハイブリダイズすることは可能であるが、完璧に相補的な塩基配列の最長伸長によって、通常はハイブリッドの安定性が決まる。長さおよび塩基組成が異なるオリゴヌクレオチドプローブを使用できるが、好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、塩基数14と30の間の長さであり、標的核酸配列に完璧に相補的である十分な配列長を場合によりさらに有する。
【0249】
ハイブリダイゼーション抑制性の強力な内部構造を形成することが知られている標的DNAまたはRNA内の領域は、あまり好ましくない。一つの実施態様では、広範囲にわたる自己相補性を有するプローブを避ける。上で説明したように、ハイブリダイゼーションは、水素結合された2本鎖を形成するように、相補的な2本の核酸1本鎖が会合することである。これら2本の鎖のうちの1本が、あるハイブリッドに全面的にまたは部分的に関係している場合、これはこの鎖が新しいハイブリッドの形成にほとんど参加できないであろうことを当然意味する。十分な自己相補性がある場合、単一プローブの分の中で分子内および分子間ハイブリッドが形成されることもある。こうした構造は、注意深いプローブ設計によって回避することができる。関心のある配列の実質的な部分が1本鎖であるようにプローブを設計することにより、ハイブリダイゼーションの速度および程度を大いに増大させることができする。このタイプの相互作用の調査にはコンピュータプログラムを利用することができる。しかし、ある場合には、このタイプの相互作用を回避できないことがある。
【0250】
特異的プライマーおよび配列特異的オリゴヌクレオチドプローブは、ウイルスゲノム配列の増幅および検出を可能にするポリメラーゼ連鎖反応において使用することができる。
【0251】
本発明の一つの側面は、特異的オリゴヌクレオチドプライマーに関する。本発明は、フラビウイルス科ウイルスの突然変異からの核酸配列の増幅に適するフラビウイルス科ウイルス核酸増幅用オリゴヌクレオチドプライマーを含む組成物を提供する。例えば、このプライマーは、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドにおけるGからCへのヌクレオチド変化を検出することができる。もう一つの例では、このプライマーは、HCVゲノムの第8443位ヌクレオチドにおけるGからCへのヌクレオチド変化を検出することができる。
【0252】
フラビウイルス科ウイルス突然変異の増幅および検出
本発明のもう一つの側面は、フラビウイルス科ウイルス突然変異を増幅する方法およびフラビウイルス科ウイルス突然変異の存在を検出する方法に関する。
【0253】
DNAまたはRNAは、この分野において公知の様々な技法により、血液または組織材料(肝臓など)などの身体サンプルから抽出することができる。未精製サンプル、例えば血漿、血清または血液から採ったサンプルは、増幅前に、サンプルの細胞、液、組織、ウイルスカプシドまたは動物細胞膜を開くために、ならびに核酸(複数を含む)の鎖(複数を含む)を露出させおよび/または分離するために有効な試薬の一定量で処理してもよい。これらの鎖を露出させおよび分離するためのこの溶解段階および核酸変性段階によって、増幅をさらにずっと容易に起こすことができるだろう。
【0254】
一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス核酸配列(複数を含む)を含むと推測されるサンプルを増幅させ;この増幅配列を、突然変異のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブと接触させ;プローブをこの配列にハイブリダイズさせることにより、この配列を検出する、突然変異の検出方法を提供する。一つの実施態様において、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応法の使用により達成される。もう一つの実施態様において、突然変異は、BVDVゲノムのRNAポリメラーゼ領域の第1214位におけるGからCへのヌクレオチド変化である。さらにもう一つの実施態様において、突然変異は、HCVゲノムの第8443位におけるGからCへのヌクレオチド変化である。
【0255】
増幅
使用する増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Saikiら,1988)、リガーゼ連鎖反応(LCR;Landgrenら,1988;Wu & Wallace,1989;Barany,1991)、核酸増幅反応法(NASBA;Buatelliら,1990;Compton,1991)、転写ベースの増幅方式(TAS;Kwohら,1989)、鎖置換増幅(SDS;Duck,1990;Walkerら,1992)、Q9レプリカーゼによる増幅(Lizardiら,1988;Lomeliら,1989)、またはこの分野において知られている核酸分子の増幅に適する他のあらゆる方法であり得る。
【0256】
ポリメラーゼ連鎖反応
増幅のためのPCR法は、この分野において一般によく知られている(例えば、米国特許第4,683,202号および同第4,683,194号参照)。この増幅プロセスは、関与した反応ステップの数に対して指数量で、特定の核酸配列を調製するための酵素的連鎖反応を、所望の配列の末端がこの配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを合成できるようにおよびこの配列の少量が連鎖反応を開始するために入手できるように十分詳細に知られていることを条件として、含み得る。一方のプライマーは負(−)鎖に相補性であり、他方のプライマーは正(+)鎖に相補性である。変性された核酸にこのプライマーをアニールし、次にDNAポリメラーゼIの大きなフラグメント(Klenow)などの酵素およびヌクレオチドで伸長することにより、標的配列を含む(+)および(−)鎖が新たに合成されることになる。これらの新たな合成配列は、プライマーのテンプレートでもあるため、変性サイクルの反復、プライマーのアニーリング、伸長の結果、プライマーによって定義された領域の指数蓄積がもたらされる。この連鎖反応の産物は、利用した特異的プライマーの末端に対応する末端を有する別個の核酸2本鎖になる。
【0257】
いかなる特定の拡散配列もこのプロセスによって生産することができる。必要なことは、一方のプライマーから合成した伸長生成物が定義長の核酸への他方のプライマーの伸長のテンプレートとして、このテンプレート(相補体)から切り離されたとき、役割を果たすよう、所望の配列の別の鎖にこの配列に沿った相対位置でハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーを調製することができるように、配列の両末端にある十分な数の塩基が十分詳細にわかっていることのみである。この配列の両末端の塩基についての知識が多いほど、標的核酸配列に対するプライマーの特異性が高くなり得、従って、この方法の効率が高くなり得る。以後用いるプライマーという語は、特に増幅されるフラグメントの末端配列に関する情報が多少あいまいである場合、1つ以上のプライマーを指す。例えば、ある核酸配列が、蛋白質配列情報から推論される場合、この遺伝子コードの縮重を基に可能なすべてのコドン変異を表す配列を含むプライマーのコレクションを、各鎖に対して用いることができる。このコレクションからの1つのプライマーを、増幅すべき所望の配列の末端とともに実質的に保存することができる。
【0258】
特定の核酸配列は、テンプレートとしてこの配列を含有する診断用マーカー核酸の使用により、作成することができる。このサンプルの標的核酸配列が2つの鎖を含む場合、これらをテンプレートとして使用する前に、単独の段階としてまたはプライマー伸長産物の合成と同時に、核酸の鎖を分離する必要がある。この鎖の分離は、物理的、化学的または酵素的手段を含むあらゆる適する変性技法(ここで用いる「変性」という語は、こうした手段すべてを包含する)を用いて達成することができる。核酸の鎖を分離する1つの物理的方法は、変性されるまで核酸を加熱することを含む。典型的な熱変性は、約1から10分の範囲の時間、約80から150℃の範囲の温度を必要とし得る。鎖の分離は、DNAを変性することが公知のリボATPの存在下で、ヘリカーゼとして公知の酵素類からの酵素またはヘリカーゼ活性を有する酵素RecAにより誘導される。ヘリカーゼでの核酸の鎖の分離に適する反応条件は、Kuhn Hoffmann−Berling,CSH−Quantitative Biology,43:63(1978)により記載されており、RecAを使用するための技法は、C.Radding,Ann.Rev.Genetics,16:405−37(1982)に総説されている。
【0259】
増幅すべき配列を含有する元の核酸が1本鎖である場合、その相補体は、この一本鎖に1つまたは2つのオリゴヌクレオチドプライマーを付加させることによって合成する。適切な単一のプライマーを付加させる場合、プライマー伸長産物は、このプライマー、重合剤、および下に記載する4つのヌクレオシド三リン酸の存在下で合成する。この産物は、1本鎖核酸に一部相補的であり、またこの核酸鎖とハイブリダイズして、不等長鎖のデュプレックスを形成し、次に、これらを上に記載したように1本鎖に分離して、2本の分離した相補的1本鎖を作ることができるだろう。また、2つの適切なプライマーを1本鎖核酸に付加させて、反応を行うことができる。
【0260】
元の核酸が増幅すべき配列を構成する場合、生産されるプライマー伸長産物は、元の核酸の鎖に相補的または実質的に完全に相補的であり、またこれらとハイブリダイズして、1本鎖分子に分離することができる等長鎖のデュプレックスを形成するだろう。
【0261】
この核酸(1つまたは複数)の相補鎖を分離するとき、この核酸が、元々2本鎖であろうと、1本鎖であろうと、これらの鎖は、追加の核酸鎖を合成するためのテンプレートとしてすぐに使用できるようになっている。この合成は、テンプレートへのプライマーのハイブリダイゼーションを起こさせることができる条件下で行われる。一般に、それは、例えば7から9のpH範囲を達成するように緩衝水溶液中で起こる。モル濃度過剰(ゲノム核酸については、通常、プライマー:テンプレート=約10
8:1)の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、分離されたテンプレート鎖を含有する緩衝液に添加してもよい。しかし、診断用途に本方法を使用する場合、相補鎖の量がわかっているはずはなく、このため、確信を持って相補鎖の量に対するプライマーの量を決めることができないことは、理解される。しかし、実質的な問題として、一般に、添加されるプライマーの量は、増幅すべき配列が複雑な長鎖核酸鎖の混合物に含まれているときには相補鎖(テンプレート)の量よりモル濃度が過剰であろう。本方法の効率の向上には、モル濃度大過剰が好ましい。
【0262】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸dATP、dCTP、dGTPおよびTTPも、別々にまたはプライマーと一緒に適切な量で合成混合物に添加し、得られた溶液を約1から10分間、例えば約1から4分間、約90から100℃に加熱する。この加熱時間の後、この溶液を放置して、プライマーハイブリダイゼーションに好適である室温に冷却する。この冷却混合物に、プライマー延長反応を果たすために適する薬剤(本明細書では「重合剤」と呼ぶ)を添加し、この分野において公知の条件下で反応を起こさせる。重合剤は、他の試薬(それが熱安定性である場合)と一緒に添加することもできる。この合成反応は、室温から、それより高いとこの重合剤がもはや機能しなくなる温度まで、行うことができる。従って、例えば、DNAポリメラーゼを重合剤として使用する場合、この温度は、一般に、約40℃以下である。最も適便には、この反応は、室温で行う。
【0263】
重合剤は、酵素を含む、プライマー伸長産物の合成を達成するように機能することができるあらゆる化合物または系であり得る。このために適する酵素には、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼムテイン、逆転写酵素、および熱安定性酵素(すなわち、変性を起こさせるために十分上昇させた温度に付された後、プライマー伸長を行う酵素)を含む他の酵素が挙げられ、これらは、各々の核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物を形成するために妥当な方式でヌクレオチドの組み合わせを促進することができる。一般に、この合成は、各プライマーの3’末端で開始し、合成が終わるまでテンプレート鎖に沿って5’方向に進行し、それによって長さが異なる分子が生成することになる。また、上の記載と同じ方法を用いて、5’末端で合成を開始させ、3’末端の方向に進行する重合剤を使用することができる。
【0264】
新たに合成された鎖およびこの相補的核酸鎖は、標的配列が存在する場合、上に記載したハイブリダイゼーション条件下で2本鎖分子を形成するであろう。このハイブリッドをこの方法の次の段階で使用する。次の段階では、ハイブリダイゼーション条件下で処理されたサンプルを、上に記載した手順のいずれかを用いる変性条件に付して、標的配列が存在する場合には1本鎖分子を得る。
【0265】
1本鎖分子を用いて、新たな核酸を合成する。上で指示した条件下で反応を進行させるために必要な場合には、追加の重合剤、ヌクレオシドおよびプライマーを添加してもよい。重ねて、この合成は、各オリゴヌクレオチドプライマーの一方の末端で開始し、このテンプレートの1本鎖に沿って進行してさらなる核酸を生産する。この段階の後、この伸長産物の半分は、2つのプライマーが結合した特定の核酸配列から成るだろう。
【0266】
変性および伸長産物の合成段階は、検出に必要な程度まで標的核酸配列を増幅するために必要なだけ繰り返すことができる。下でさらに詳細に説明するように、生産される特定の核酸配列の量は、指数方式で蓄積することになる。
【0267】
最初の核酸または核酸混合物から1つ以上の特定の核酸配列を生産することが望ましい場合には、適切な数の異なるオリゴヌクレオチドプライマーを利用する。例えば、2つの異なる特定の核酸配列を生産すべき場合、4つのプライマーを利用する。これらのプライマーのうちの2つは、この特定の核酸配列の一方に対して特異的であり、残りの2つのプライマーは、もう一方の特定の核酸配列に対して特異的である。この要領で、本方法により2つの異なる特定の配列の各々を指数的に生産することができる。
【0268】
本発明は、各段階の後に新たな試薬を添加する段階的方式で、または同時に、すなわちすべての試薬を最初の段階で添加する1段階方式で、または所定の段階数の後に新たな試薬を添加する一部段階的、一部同時的方式で行うことができる。変性法、例えば、熱不安定酵素の場合のような重合剤を不活性化し得る加熱法を用いる場合には、各鎖分離段階後に重合剤を補充する必要がある。酵素手段を鎖分離段階に用いる場合には、同時法を用いることができる。この同時手順では、反応混合物は、所望の配列を有する核酸鎖(複数を含む)に加えて、鎖分離酵素(例えば、ヘリカーゼ)、この鎖分離酵素のための適切なエネルギー源(例えば、rATP)、4つのヌクレオシド三リン酸、モル濃度過剰のオリゴヌクレオチドプライマー、および重合剤(例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント)を含有する。
【0269】
同時法における変性に熱を用いる場合、高温で機能するであろう熱安定ポリメラーゼなどの熱安定性薬剤を利用することができ、この場合の高温とは、例えば、この薬剤に依存して約50から105℃であり、この温度では、核酸が、平衡状態の1本鎖および2本鎖から成るであろう。より短い核酸には、約40から50℃の低い温度を用いることができる。高い方の温度範囲は、酵素が分解するであろう温度、またはそれより高いと不十分なレベルのプライマーハイブリダイゼーションが起こる温度に依存するであろう。こうした熱安定酵素は、例えば、A.S.Kaledinら,Biokhimiya,45,644−651(1980)によって記載されている。この定温反応が成功させるために、プライマーは、互いに6から8の塩基対の範囲内の3’末端を有する。この方法の各段階は、最初にすべての試薬が存在するにもかかわらず逐次的に起こる。必要な場合には、追加の材料を添加してもよい。望ましい量の特異的核酸配列を作成するために適する長さの時間が経過した後、公知のいずれかの方法によりこの酵素を不活性化することにより、またはこの反応の成分を分離することにより、反応を停止させることができる。
【0270】
増幅は、熱安定酵素を使用して伸長、アニーリングおよび変性を可能ならしめるように温度を段階的に上昇させる温度サイクリング反応を用いて行うこともできる。
【0271】
本発明の方法は、継続的に行うことができる。自動型方法の一つの実施態様では、反応は、変性域、試薬添加域、および反応域を通して循環させることができる。もう一つの実施態様において、プライマー伸長産物の合成に使用する酵素をカラム内に固定することができる。他の反応成分は、ポンプによりこのカラムおよび直列に配置された加熱コイルに通して継続的に循環させることができ、従って、生産された核酸を不活性化させることなく、繰り返し変性することができる。
【0272】
PCR法を用いるフラビウイルス科ウイルスの遺伝子型決定法は、この分野において一般に知られている。さらに、フラビウイルス科ウイルスを含有すると推測されるサンプルを用いてPCRを行った後、このフラビウイルス科ウイルスゲノムを配列決定することができる。
【0273】
プローブと標的配列のハイブリダイゼーションの検出
サンプル中のプローブと標的核酸配列の間で形成されたハイブリッドの検出に適するアッセイ様式は、この分野において知られている(Smbrookら,1985)。ハイブリダイゼーションの検出は、この核酸が増幅されていようと、いなかろうと、達成することができる。
【0274】
1つの検出法は、増幅されていない核酸または増幅された核酸とハイブリダイズすることができる標識プローブの使用、およびこのプローブがハイブリダイズしたかどうかの決定によるものである。こうしたプローブは、BVDVのRNAポリメラーゼの第1214位またはHCVゲノムの第8443位ヌクレオチドなどの、突然変異したと推測されるヌクレオチドを必須として含む。
【0275】
オリゴヌクレオチドは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段または化学的手段により検出可能な標識を組み込むことによって標識することができる。有用な標識には、
32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(ELISAにおいて通常使用されるようなもの)、ビオチン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体を利用することができるハプテンおよび蛋白質が挙げられる。
【0276】
核酸は、放射性プローブを用いる、または用いないノーザンブロットまたはサザンブロットによってそれを分析することにより検出することができる。一つの実施態様において、例えばフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測される末梢血からの少量のDNAサンプルを、オリゴヌクレオチドプローブを用いるサザンブロット法によって分析して、特定の核酸ウイルスマーカーを検出する。もう一つの実施態様では、例えばフラビウイルス科ウイルスを含有すると推測される末梢血からの少量のDNAサンプルを先ず増幅し、次に、オリゴヌクレオチドプローブを用いるサザンブロット法によって分析して、特異的核酸ウイルスマーカーを検出する。
【0277】
もう一つの方法は、オリゴマー制限法(米国特許第4,683,194号に記載されているものなど)を含む。この手順では、増幅された核酸を変性して、溶液状態で標識オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせ、この標識オリゴヌクレオチドプローブが、標的配列に特異的にハイブリダイズし(すなわち、プライマーに含まれる特定の保存領域におよぶ)、関心のある制限部位の少なくともひとつにおよぶ。標的とプローブの間で形成されたデュプレックスは、制限部位を再形成し、例えばBglI、PvuIIまたはHifIなどの制限酵素で切断すると標識プローブフラグメントを放出し、このフラグメントは、ゲル電気泳動法によって完全長プローブから分割することができる。次に、この得られたゲルをオートラジオグラフィーに付す。この方法による増幅産物の分析は、迅速、すなわち数時間の範囲内であり得る。
【0278】
増幅産物を分析するために用いることができるもう一つの方法は、ドット・ブロット法である。ドット・ブロット法では、増幅された標的DNAをナイロン膜などの固体支持体上に固定する。この膜−標的複合体を適するハイブリダイゼーション条件下で標識プローブと共にインキュベートし、ハイブリダイズされなかったプローブを適するストリンジェント条件下で洗浄することにより除去して、この膜を、結合したプローブの存在についてモニターする。
【0279】
代替様式は、増幅された標的DNAを標識し、プローブをナイロン膜などの固体支持体上に固定する「逆」ドット・ブロット様式である(Saikiら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6230、およびPCT特許国際公開公報第89/11548号参照)。典型的には、標的DNAは、1つ以上の標識プライマーの組み込みにより、増幅中に標識する。一方のプライマーを標識してもよいし、両方のプライマーを標識してもよい。膜−プローブ複合体をこの増幅され標識された標的DNAと共に適するハイブリダイゼーション条件下でインキュベートして、ハイブリダイズされなかった標的DNAを適するストリンジェント条件下で洗浄し、次に、このフィルタを、結合した標的DNAの存在についてモニターする。
【0280】
また、逆ドット・ブロットアッセイは、多数のプローブハイブリダイゼーション部位またはウエルを有する固体支持体を使用して行うことができる。例えば、マイクロウエルプレートは、本方法の大規模臨床適用に特に有用である。プローブは、受動的結合により、またはマイクロウエルプレートに付着するウシ血清アルブミン(BSA)などの蛋白質中間体を通して、マイクロウエルプレートに固定することができる。マイクロウエルプレートで行われる逆ドット・ブロット法は、米国特許第5,232,829号、およびLoeffelholzら,1992,J.Clin.Microbiol.30(11):2847−2851に記載されている。本発明のもう一つの実施態様において、逆ドット・ブロットアッセイは、マイクロウエルプレートを使用して行い、プライマーは、Levenson and Chang,1989,in PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,(Innisら編,Academic Press.San Diego)99−112頁に記載されているようにビオチンで標識する。プローブをBSAと複合させ(Tungら,1991,Bioconjugate Chem.2:464−465参照。これは本明細書に参照により組込まれる)、マイクロウエルプレートに固定する。標識プライマーを使用して増幅し、固定化プローブとハイブリダイズさせた後、増幅核酸は、先ず、アビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(A−HRP)またはストレプタビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(SAHRP)にビオチンを結合させることにより検出し、次に、HRPが色原体の色変化を触媒する反応を行うことにより検出する。
【0281】
検出のためにハイブリダイゼーションデュプレックスを固定する別法では、BSA複合プローブを磁気微粒子に結合させる。この結合プローブを標識増幅産物に溶液状態でハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション後、プローブ−標的デュプレックスをこの溶液から磁気的に除去し、次に、この磁気固定化ハイブリダイゼーションデュプレックスを検出する。
【0282】
もう一つの検出法は、5’ヌクレアーゼアッセイと呼ばれ、このアッセイでは、標識検出プローブをPCR増幅プロセス中に付加させる。前記プローブは、これらがDNA合成用プライマーとして作用することを防止するように変性されている。各合成段階中、すなわちプライマー伸長中に標的DNAにハイブリダイズするあらゆるプローブが、DNAポリメラーゼ、例えばTaq DNAポリメラーゼの5’から3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。次に、このプローブからの分解産物を検出する。従って、プローブ破壊産物の存在は、発生したプローブ−標的DNA間ハイブリダイゼーションと発生した増幅反応の両方を示す。例えば、米国特許第5,210,015号も参照のこと。
【0283】
上に記載したアッセイ様式は、典型的に、標識オリゴヌクレオチドを利用してハイブリッドデュプレックスの検出を可能にする。オリゴヌクレオチドは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段または化学的手段による検出可能な標識の組み込みなど、前に言及した技法のいずれによっても標識することができる。有用な標識には、
32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(ELISAにおいて通常使用されるようなもの)、ビオチン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体を利用することができるハプテンおよび蛋白質が挙げられる。
【0284】
フラビウイルス科ウイルスの核酸の増幅を検出するための別法は、反応混合物中の2本鎖DNAの全量の増加をモニターすることによる方法である(Higuchiら,1992,Bio/Technology 10:413−417; Higuchiら,1993,Bio/Technology 11:1026−1030;および欧州特許公開第487,218号および同第512,334号に記載されているような方法)。2本鎖の標的DNAの検出は、エチジウムブロマイド(EtBr)および他のDNA結合標識が、2本鎖DNAに結合したときに示す蛍光の増加に基づく。標的配列の合成によってもたらされる2本鎖DNAの増加に起因して、検出可能な蛍光の増加が生じる。
【0285】
フラビウイルス科ウイルスの突然変異の検出に有用なさらにもう一つの方法は、逆ハイブリダイゼーションアッセイによる方法である。これは、複数のプローブを必要とする場合に特に有用である。一つの実施態様では、選択されたプローブセットを、わかっている別個の位置で固体支持体に固定する(点、線または他の形)。もう一つの実施態様では、選択されたプローブセットを膜ストリップに線状に固定することができる。前記プローブは、固体支持体上の描写した位置に個々にまたは混合物として固定することができる。特定の実施態様にでは、線プローブアッセイを用いて、本発明の突然変異を含むフラビウイルス科ウイルス遺伝子型をスクリーニングすることができる。前記線プローブアッセイには、膜上に平行線状に固定された複数のプローブが必要であり、そこで増幅核酸フラグメントの逆ハイブリダイゼーションを行う。次に、このハイブリッドは、非放射性発色系とカップリングするビオチン−ストレプタビジンにより検出することができる。例えば、国際公開公報第97/40193号参照。
【0286】
フラビウイルス科ウイルス遺伝子型判決定法を用いて、フラビウイルス科ウイルスの突然変異の存在を分析することもできる。例えば、配列ベースの系統発生分析、ディファレンシャルハイブリダイゼーション、PCRまたは制限断片長多型を用いることができる。
【0287】
フラビウイルス科ウイルス蛋白質/ペプチドマーカーの検出
もう一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス感染に対する長期2’−分枝ヌクレオシド療法の失敗について診断するためのウイルスマーカー検出方法を提供し、この方法では、フラビウイルス科ウイルス蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントを含有するサンプルをこうしたウイルスマーカーについて分析する。療法の失敗と相関する蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントは、ウエスタンブロット、二次元ゲル電気泳動法、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、高感度ケミルミネッセンス法(ECL)、免疫組織化学法、ELI−Spotアッセイ、ペプチド配列決定法または抗体利用プロテインアレイ法を含むこの分野において公知の一般に適用可能なあらゆる蛋白質検出法によって検出することができる。例えば、2’−分枝ヌクレオシド治療について診断するためのフラビウイルス科ウイルスマーカーの蛋白質発現は、古典的な免疫組織学的方法で分析することができる。これらにおいて、具体的な識別は、特異的ウイルスマーカー対する一次抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)によって達成されるが、二次検出系には、蛍光、酵素または他の接合二次抗体を利用することができる。結果として、病理試験のためのフラビウイルス科ウイルス感染組織切片の免疫組織学的染色が達成される。
【0288】
2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応について診断するための蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントのもう一つの検出方法は、ウエスタンブロットである。簡単に言うと、フラビウイルス科ウイルス蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントを含有するサンプルを電気泳動ゲルによって分離する。次に、これらの分離蛋白質をニトロセルロースなどの培地に移入する。次に、2’−分枝ヌクレオシドの失敗に相関する特異的フラビウイルス科ウイルスアミノ酸配列に対して反応性のストレプタビジン−アルカリホスファターゼなどの検出可能な標識を有する抗体を、フラビウイルス科ウイルスアミノ酸配列を含有するニトロセルロース媒体を被覆する。反応性抗体は、対応するフラビウイルス科ウイルスアミノ酸配列と結合することになり、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)などの試薬を使用して検出することができる。例えば、Jalkanen,M.,ら,J.Cell.Biol.101:976−985(1985); Jalkanen,M.ら,J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987)を参照のこと。
【0289】
また、フラビウイルス科ウイルス保有者の血清中に存在する反応性抗体を利用して、2’−分枝ヌクレオシド治療診断用のフラビウイルス科ウイルスマーカーの存在を検出することができる。酵素イムノアッセイ(EIA)を含む当業者に公知のあらゆる公知抗体アッセイ法を用いることができる。例えば、一つの実施態様において、フラビウイルス科ウイルス特異的抗体を有するフラビウイルス科ウイルス保有者からのサンプルを、2’−分枝ヌクレオシド療法の成功および/または失敗と相関する特異的フラビウイルス科ウイルスペプチドを含む固体支持体アレイと接触させる。次に、これらの反応性抗体を、ストレプタビジン−アルカリホスファターゼで標識されたウサギ抗ヒトIgG抗体と、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸を含有する試薬とを使用し、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸に暴露することによって検出する。
【0290】
2’−分枝ヌクレオシド療法に対するフラビウイルス科ウイルス保有者の長期反応について診断するための蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントのもう一つの検出方法は、通常の当業者に公知の技法を用いてこの蛋白質、ペプチドまたはペプチドフラグメントを配列することによる方法である(例えば、Matsudaira,P.,J Biol Chem 262:10035−10038,(1987); Salinovich,O.and Montelano,R.,Anal.Biochem.156:341,(1986); Tarr,G.E.:Manual Edman Sequencing System.In:Shively,J.E.,(ed.) Methods of Protein Microcharacterization.The Humana Press Inc.,Clifton,NJ,1986,pp.155−194;およびFernandez,J.,Andrews,L.and Mische,S.,Anal.Biochem.218:112−117,(1994)参照)。例えば、エドマン法を用いて、ペプチドのアミノ酸配列を決定してもよい。簡単に言うと、エドマン化学は、配列内の蛋白質/ペプチドのN末端から1度に1つずつアミノ酸残基を除去する。各アミノ酸残基の除去に必要なエドマン化学の各サイクルは、次の3段階から成る:弱アルカリ条件下でフェニルイソチオシアネート(PITC)とカップリングさせて、フェニルチオカルバモイル(PTC)−ペプチドを形成する段階;分解して、第一の残基をこのアニリノチアゾリノン(ATZ)−アミノ酸誘導体として放出させる段階;このATZ誘導体をさらに安定なフェニルチオヒダントイン(PTH)−アミノ酸誘導体に転化させる段階。エドマン分解の各サイクルで除去されるPTH−アミノ酸残基は、スモールまたはマイクロボアRP−HPLCによって同定される。この方法および起こり得る落とし穴についての十分な説明は、Tarr,G.E.:Manual Edman Sequencing System.In:Shively,J.E.,(ed.) Methods of Protein Microcharacterization.The Humana Press Inc.,Clifton,NJ,1986,pp.155−194によって与えられている。また、サンプルが、N末端配列を発生させない場合、N末端残基をブロックし、調製手順中に分解するか、立体的な理由のためにエドマン化学の試薬に利用できない場合には、ペプチドを分画し、次に、分析する制御型特異的蛋白質分解にこのサンプルを付すことができる。この分画アプローチは、Fernandez,J.,Andrews,L.and Mische,S.: 内部配列分析のための二フッ化ポリビニリデン結合蛋白質についての改善された酵素的消化手順(An improved procedure for enzymatic digestion of polyvinylidene difluoride−bound proteins for internal sequence analysis).Anal.Biochem.218:112−117,1994によって記載されている。
【0291】
アレイ
本発明のもう一つの側面は、フラビウイルス科ウイルス核酸ウイルスマーカーを検出するためのDNA、RNAまたはペプチドアレイの使用を提供する。こうしたアレイには、DNAマクロアレイ、DNAマイクロアレイおよびDNAマイクロチップが挙げられる。DNAアレイは、例えば、米国特許第5,837,832号、同第5,807,522号、同第6,007,987号、および同第6,110,426号、国際公開公報第99/05324号、同第99/05591号、同第00/58516号、同第95/11995号、同第95/35505号A1、および同第99/42813号、特開平10−503841号T2、ギリシャ特許第3030430号T3、スペイン特許第2134481号T3、欧州特許第804731号B1、ドイツ特許第69509925号C0、カナダ特許第2192095号AA、オーストラリア特許第2862995号A1、同第709276号B2、オーストリア特許第180570号、欧州特許第1066506号、ならびにオーストラリア特許第2780499号に記載されている。こうしたアレイは、例えば、PCT国際公開公報第99/05574号,ならびに米国特許第5,754,524号、同第6,228,575号、同第5,593,839号および同第5,856,101号に記載されているように、作成したサンプルヌクレオチドとこれらのアレイを接触させたときのハイブリダイゼーションの結果のコンピュータ解析法に組み込むことができる。病原マーカーについてのスクリーニング方法も、例えば、米国特許第6,228,586号、同第6,160,104号、同第6,083,698号、同第6,268,398号、同第6,228,578号および同第6,265,174号に記載されているように、この分野において公知である。DNAアレイ法のさらなる記載は、例えば、次の文献において見出すことができる: Shoemaker D.D.ら,Nature 409(6822):922−927(2001); Kane M.D.ら,Nucleic Acids Res 28 (22):4552−7(2000); Taton TAら,Science.289(5485):1757−60(2000); Jorg Reichertら,Anal.Chem.,72(24):6025−6029(2000); Reinke V,Mol Cell 6(3):605−16(2000); Marx J.Science 289:1670−1672(2000); Lockhart D.J.ら,Nature 405(6788):827−836(2000); Cortese J.D.,The Scientist 14[17]:25(2000); Cortese J.D.,The Scientist 14[11]:26(2000); Fritz J.ら,Science.288(5464):316−8(2000); Mark Schena(Ed.),Microarray Biochip Technology,Eaton Publishing Company,Distributed by TeleChem/arrayit.com; Scherf U.ら,Nat Genet.24(3):236−44(2000); Ross D.T.ら,Nat Genet.24(3):227−35(2000); Walt D.R.,Science 287:451−452(2000); Afshari C.A.ら,Cancer Res 59(19):4759−60(1999); Gwynne P.and Page G.,Science,1999 August 6.(広告特集版。マイクロアレイ関連会社のリストを掲載(special advertising supplement;has a list of microarray−related companies)); Baldwin D.ら,Curr Opin Plant Biol 2(2):96−103(1999); Pollack J.R.ら,Nat Genet 23(1):41−6(1999); Khan J.ら,Electrophoresis 20(2):223−9(1999); Gerhold D.ら,Trends Biochem Sci 24(5):168−73(1999); Ekins R.and Chu F.W.,Trends in Biotechnology 17:217−218(1999); Nuwaysir,E.F.ら,Molecular Carcinogenesis 24:153−159 (1999); Sinclair,B.The Scientist,13(11):18−20(1999); The Chipping Forecast,Nature Genetics(January 1999 Supplement); Schena, M.and Davis,R.W.Genes,Genomes and Chips.In DNA Microarrays:A Practical Approach(編者 M.Schena),Oxford University Press,Oxford,UK,1999;Marton M.J.ら,Nat Med.4(11):1293−301(1998); Wang D.G.ら,Science 280(5366):1077−82(1998); Schena,M.and R.W.Davis.Parallel Analysis with Biological Chips.in PCR Methods Manual(編者 M.Innis,D.Gelfand,J.Sninsky),Academic Press,San Diego,1998; Lemieux,B.ら,Molecular Breeding 4:277−289(1998); Schena,M.ら,Trends in Biotechnology 16301−306(1998); Service,R.F.,Science 282(5388):396−399(1998); Service,R.F.,Science 282(5388):399−401(1998); Kricka,L.,Nature Biotechnology 16:513(1998); Housman,D.,Nature Biotechnology 16(6):492−493(1998); Ramsay,G.,Nature Biotechnology 16(1):40−44(1998); Marshall,A.ら,Nature Biotechnology 16(1):27−31(1998); Kononen J.ら,Nat.Med.4(7):844−847(19998); Blanchard,A.P.(1998)Synthetic DNA Arrays;in Genetic Engineering,Vol.20,pp.111−123,編者 J.K.Setlow,Plenum Press,New York; Proudnikov D.ら,Anal Biochem 259(1):34−41(1998); Chen J.J.ら,Genomics 51(3):313−24(1998); Wallace R.W.,Molecular Medicine Today 3:384−389(1998); Covacci,A.ら,Drug Development Research 41:180−192(1997); Forozan,F.ら,Trends in Genetics 13:405−409(1997); Blanchard,A.P.& L.Hood,Nature Biotechnology 14:1649(1996); Blanchard,A.P.ら,Biosensors & Bioelectronics 11:687−690(1996); DeRisi J.ら,Nat Genet 14(4):457−60(1996); Shalon D.ら,Genome Res 6(7):639−45(1996); Schena M.ら,Proc Natl Acad Sci U S A 93(20):10614−9(1996);およびSchena M.ら,Science 270(5235):467−70 (1995)。
【0292】
アレイ上のプローブは、長さ約10から30ヌクレオチドほどもの短さ、または数キロベースまでになることもある全フラビウイルス科ウイルス遺伝子もしくはフラビウイルス科ウイルスクローンほどもの長さを含む(しかし、これらに限定されない)様々な長さのものであり得る。加えて、表2および3(配列番号1から62)に記載したもののような様々な長さの配列をプローブとして使用することができる。このアレイは、このアレイ上のすべてのプローブがこれらの対応する遺伝子にほぼ同じハイブリダイゼーションストリンジェンシーでハイブリダイズすることができるように、設計することができる。アレイ用のプローブは、用いられるハイブリダイゼーションストリンジェンシーに対して一意的であるべきである。一意的プローブは、1つの標的につき1つタイプの核酸としかハイブリダイズすることができない。プローブは、用いられるハイブリダイゼーションストリンジェンシーで2つの異なる遺伝子、すなわち関連遺伝子から誘導された核酸、または非相同配列とハイブリダイズする場合、一意的ではない。遺伝子に対するプローブの配列の相同性および用いられるハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、選択されたサンプルを検査する際にプローブが一意的であるか否かを決定するために役立つ。プローブは、同じ遺伝子から誘導された異なる核酸、すなわちスプライス変異体ともハイブリダイズしてはならない。関心のあるスプライス変異体は判っているので、1つのアレイに対して幾つかの異なるプローブ配列を、各プローブがスプライス変異体のうちの1つから誘導された核酸にしかハイブリダイズしないように、関心のある標的配列から選択することができる。一つの実施態様において、配列番号1から62を含むアレイが、選択的ハイブリダイゼーションを可能ならしめるハイブリダイゼーション条件下で使用される。選択的ハイブリダイゼーション条件下では、プローブは、ただ1つの同定配列からの核酸としかハイブリダイズしない。もう一つの実施態様において、関心のあるいずれかのフラビウイルス科ウイルス配列を含むアレイが、選択的ハイブリダイゼーションを可能ならしめるハイブリダイゼーション条件下で使用される。選択的ハイブリダイゼーション条件下では、プローブは、ただ1つの同定配列からの核酸としかハイブリダイズしない。
【0293】
一つの実施態様において、マイクロアレイの使用には、先ず、mRNAまたは全RNAの逆転写などによる関心のある遺伝子の増幅、次に、この分野において公知の方法を利用するポリメラーゼ連鎖反応が必要である。核酸をコピーする場合、この分野において公知の検出法および定量法で使用することができる標識を用いてそれを標識する。核酸は、放射性または非放射性標識で標識することができるが、好ましくは蛍光標識を含む。関心のある配列プローブを含むマイクロアレイに標識核酸を導入し、一定時間、反応させる。次に、この支持体を洗浄して異物を除去し、固定されたプローブ分子に結合した標的上にこれらの核酸を残して、オートラジオグラフィー、液体シンチレーションカウント法、および/または蛍光などのこの分野において公知の方法による検出および定量に備える。ハイブリダイゼーション法および検出法に改善を施す場合、通常の当業者はこれらを容易に応用することができる。この分野において周知であるように、プローブ分子と標的分子が2分子間に強い非共有結合を形成することによりハイブリダイズする場合、このプローブと標的核酸は、このアニーリング段階および洗浄段階を高度ストリンジェンシー条件下で行うならば、本質的に完全に相補的であると合理的に仮定することができる。この検出可能な標識は、ハイブリダイゼーションが起こったか否かを決定するための手段にもなる。オートラジオグラフィー、液体シンチレーションカウント法または蛍光などのこの分野において公知の検出および定量法でこのアレイの画像を得ることにより、このアレイの特定の位置での強度と比較してどの程度フラビウイルス科ウイルス遺伝子配列が存在するかを決定することができる。高定量シグナルは、特定の配列が調製したサンプル中に存在することを示し、定量シグナル不在は、特定の配列が存在しないことを示す。2’−分枝ヌクレオシド治療の前および2’−分枝ヌクレオシド治療中など、異なる条件下での様々な遺伝子配列の存在を直接比較することができる。同様に、2’−分枝ヌクレオシドなどの一定の刺激に応じて如何なる配列が存在するかを決定することができる。
【0294】
一つの実施態様において、患者のフラビウイルス科ウイルス配列のプロフィールを、DNAアレイ法を利用して経時的に追跡することができる。別の実施態様において、理学療法として2’−分枝ヌクレオシドを受けている、または他の抗フラビウイルス科ウイルス理学療法を受けているフラビウイルス科ウイルス保有患者を、この治療に応じての上述のフラビウイルス科ウイルスゲノム配列の変化について経時的にモニターすることができる。
【0295】
配列番号1から62または他の被同定フラビウイルス科ウイルス配列を含むアレイは、スポット法または光リリソグラフィーによる固相合成などのこの分野において公知のいずれかのアレイ合成法によって作成することができる。アレイは、固体支持体、例えば、顕微鏡用スライドガラスに印刷することもできる。印刷前に、この分野において公知であるように、結合用の支持体を提供すべくスライドガラスを準備する。アレイは、この分野において公知のいずれかの印刷技法および機械を使用して印刷することができる。印刷は、この分野において公知のとおり、この支持体上へのプローブの配置、この支持体へのプローブの取り付け、および非特異的ハイブリダイゼーションを防止するためのこの支持体のブロックを含む。好ましくは、本発明のアレイは、光リソグラフィーと無作為配列化学を併用する固相合成によって合成する。プローブの選択およびアレイの設計に関する重要な要素の一部は、すべてのアレイの生産に共通している。例えば、プローブハイブリダイゼーションを最適化する戦略は、プローブ選択の過程に必ず含まれる。特定のpH、塩および温度条件下でのハイブリダイゼーションは、融解温度を考慮に入れることおよび望ましいハイブリダイゼーション挙動と相関する経験則を用いることによって最適化することができる(本明細書に参照により組込まれ参考として援用されている、Keller,G.H.,and M.M.Manak(1987) DNA Probes,Stockton Press,New York,N.Y.,pp.169−170に記載されているとおり。)。プローブハイブリダイゼーションの強度および濃度依存性の予測にはコンピュータモデルを使用することができる。
【0296】
ハイブリダイゼーションのための中等度から高度のストリンジェンシー条件は、この分野において公知である。ブロットのための高度ストリンジェンシー条件の一例は、5xSSC/5xデンハルト溶液/0.1% SDS中、68℃でのハイブリダイジング、および0.2xSSC/0.1% SDS中、室温での洗浄である。中等度ストリンジェンシー条件の一例は、5xSSC/5xデンハルト溶液/0.1% SDS中、68℃でのハイブリダイゼーション、および3xSSC中、42℃での洗浄である。温度および塩濃度のパラメータを変化させて、プローブと核酸の間の望ましい配列同一性レベルを達成することができる。ハイブリダイゼーション条件のさらなるガイダンスについては、例えば、Ausubelら(1995)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY,N.Y.を参照のこと。融解温度は、次の式(Beltz,G.A.ら,[1983] Methods of Enzymology,R.Wu,L.Grossman and K.Moldave[Eds.] Academic Press,New York 100:266−285)によって表すことがことができる。融解温度=81.5℃.+16.6Log[Na+]+0.41(+G+C)−0.61(%ホルムアミド)−600/(塩基対におけるデュプレックスの長さ)。
【0297】
本発明に有用な核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作ることができる。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動法によって確認することができる。PCRは、核酸配列の反復型酵素的プライム合成である。この手順はよく知られており、当業者がよく用いる(例えば、Mullis,米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号および同第4,800,159; Saikiら,Science 2301350−1354(1985)参照)。PCRは、標的配列の反対の鎖にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーを両端に有する関心のあるDNAフラグメントを酵素により増幅するために用いられる。これらのプライマーは、3’末端を互いの方向に向けて配向する。テンプレートの熱変性サイクルの反復、プライマーのこれらの相補配列へのアニーリング、およびDNAポリメラーゼでのこのアニールされたプライマーの伸長によって、PCRプライマーの5’末端により定義されるセグメントが増幅されることになる。各プライマーの伸長産物は他のプライマーのテンプレートとしての役割を果たすことができるので、各サイクルが、前のサイクルで生産されたDNAテンプレートの量を本質的に倍にする。これは、数時間で数百万倍までの特定の標的配列の指数蓄積をもたらす。高温細菌サームス・アクアティカス(Thermus aquaticus)から単離されるTaqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼの使用により、この増幅プロセスを完全に自動化することができる。使用することができる他の酵素は、当業者には公知である。
【0298】
また、ペプチド核酸(PNA)で作ったプローブを、オリゴヌクレオチドで作ったプローブの代用として上記と同じ用途に用いることができる。オリゴヌクレオチドについてのPNAでの代用は、この分野において周知である。既成モノマーによるペプチド核酸の合成は、例えば、PCT特許出願国際公開公報第92/20702号および同第92/20703号に記載されている。合成、構造、生物学的特性およびPNAの使用に関する最近の進歩も報告されている。例えば、PCT特許出願国際公開公報第93/12129号、Neilsen P.E.らの米国特許第6617422号、Cookらの米国特許第5,539,083号、米国特許出願第20030059789号A1、Kleiberらの米国特許第6475721号、Egholmら,Nature:365,566−568(1993)、Nielsenら,Science 254:1497−1500(1991)、およびEgholmら,J.Am.Chem.Soc.,114:1895−1897(1992)を参照のこと。
【0299】
キット
本発明の一つの側面による方法論を用いる2’−分枝ヌクレオシドに対するフラビウイルス科ウイルスサンプルの耐性状態を決定するためのアッセイでの使用に適する検査キットは、(1)野生型DNA配列(もしくはこの対応するRNA)の一領域または本明細書に記載するような突然変異DNA配列の一領域に相補的であるオリゴヌクレオチド、(2)このオリゴヌクレオチドの3’末端からの核酸の重合に必要な材料、および(3)オリゴヌクレオチドプライマー伸長産物の存在を決定するための手段を具備する。重合材料には、適切な酵素、バッファ、洗浄溶液、標識、および必要な場合にはこの標識の支持体が挙げられる。PCRを用いて核酸を増幅する場合には、野生型DNA配列(もしくはこの対応するRNA)の一領域または本明細書に記載するような突然変異DNA配列の一領域を増幅することになる適切なオリゴヌクレオチドプライマー、およびdNTP(デオキシヌクレオシド三リン酸)などの追加材料を含めるべきである。このアッセイを行うための説明も含めることができる。
【0300】
本発明のもう一つの側面による方法論を用いるインターフェロンに対するフラビウイルス科ウイルスの感受性を決定するためのアッセイでの使用に適する検査キットは、野生型DNA配列(もしくはこの対応するRNA)の一領域または突然変異DNA配列の該当領域に相補的なオリゴヌクレオチドと共に、ハイブリダイゼーションを可能ならしめるために必要な材料を具備する。こうした材料には、適切なバッファ、洗浄溶液、標識、および必要な場合にはこのこれらの標識の支持体が挙げられる。一つの実施態様では、前記オリゴヌクレオチドを標識する。PCRを用いて、ハイブリダイゼーション前に核酸を増幅する場合には、野生型DNA配列(もしくはこの対応するRNA)の一領域または突然変異体DNA配列の一領域を増幅することになる適切なオリゴヌクレオチドプライマー、適切な酵素およびdNTP(デオキシヌクレオチド三リン酸)などの追加材料を含めるべきである。このアッセイを行うための説明も含めることができる。
【0301】
もう一つの実施態様において、本発明は、フラビウイルス科ウイルス感染の長期2’−分枝ヌクレオシド治療に対する耐性のマーカーを検出するためのキットを提供する。このキットは、この診断用マーカーを含むフラビウイルス科ウイルスの核酸配列に実質的に結合しているオリゴヌクレオチドプローブを含む区画を含むことができる。また、このキットは、ペプチド核酸(PNA)または他のアンチセンス擬似プローブをオリゴヌクレオチドの代わりに含む。このキットは、フラビウイルス科ウイルス核酸ウイルスマーカーへのこのプローブのハイブリダイゼーションを検出する試薬も含む。本発明はフラビウイルス科ウイルス核酸のPCR増幅用のプライマーを含むことができるキットも包含する。あるキットは、オリゴヌクレオチドまたはペプチド核酸プローブなどの、増幅されたフラビウイルス科ウイルス核酸検出するための手段も含むことができる。場合によっては、プローブは、適切な支持膜に固定されている。このキットの他の任意の構成要素には、例えば、プライマー伸長産物の合成を触媒する薬剤、基質ヌクレオシド三リン酸、標識に用いる手段(例えば、この標識がビオチンである場合にはアビジン−酵素コンジュゲートおよび酵素基質ならびに色原体)、PCRまたはハイブリダイゼーション反応に適するバッファ、および本方法を実施するための説明が挙げられる。
【0302】
加えて、本キットは、治療の失敗と相関するフラビウイルス科ウイルスゲノムの配列を有する1つ以上の核酸を含有する正の対照を含む容器、および/またはこうした核酸を有さない負の対照を含む容器を有することができる。さらに、本キットは、プローブの配列に含まれる部位で標的配列含有核酸を切断することができる制限酵素のための容器を有することができる。
【0303】
本発明は、生体サンプル中に存在し得る、療法の失敗と相関するフラビウイルス科ウイルスの1つ以上のウイルスマーカーを検出および/または遺伝分析するためのキットも提供し、このキットは、次の構成要素を具備する:(i)適切な場合、サンプル中に存在する核酸を放出、単離または濃縮するための手段;(ii)適切な場合、少なくとも一つの適するプライマー対;(iii)おそらく固体支持体に固定されている、上で定義したようなプローブ少なくとも二つ;(iv)ハイブリダイゼーションバッファ、または前記バッファを製造するために必要な成分;(v)洗浄溶液、または前記溶液を製造するために必要な成分;(vi)適切な場合、前のハイブリダイゼーションから得られたハイブッドを検出するための手段;(vii)適切な場合、固体支持体上の既知の位置に前記プローブを取り付けるための手段;および/または(viii)本方法を実施するための説明。
【0304】
さらに、本発明は、サンプル中の反応性抗体の存在を検出するためのイムノアッセイに使用することができる、2’−分枝ヌクレオシド療法の失敗に相関するウイルスマーカーに反応するペプチドまたはペプチドフラグメントを含むキットも提供する。前記ペプチドは、安定させた溶液の状態であってもよいし、凍結乾燥させた状態であってもよい。こうしたキットは、凍結乾燥ペプチドを加水分解するための適切な溶液を含む。このキットは、前述のペプチドをブロットするための適切な固体媒体も含む。このキットは、ストレプタビジン−アルカリホスファターゼで標識した抗ヒトIgG抗体などの、このペプチドに対して反応性の抗体の存在の検出するための適切な試薬も含むことができる。さらに、このキットは、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)などの検出試薬を含むことができる。
【0305】
また、このキットは、2’−分枝ヌクレオシド療法に関連した特異的ペプチド配列に対して反応性の抗体を含むことができる。
【0306】
IV.フラビウイルス科ウイルス感染の治療
抗フラビウイルス科ウイルス薬での併用または交代治療
フラビウイルス科ウイルスの薬物耐性変異体は、抗ウイルス薬での長期治療後に出現し得る。最も一般的には、薬物耐性は、ウイルス複製に使用される酵素をコードしている遺伝子の突然変異によって発生する。フラビウイルス科ウイルス感染に対する薬物の効能は、この化合物を、主薬に起因するものとは異なる突然変異を誘発する第二の、おそらく第三の抗ウイルス化合物と併用または交代で投与することにより、延長、増強または回復させることができる。併用療法は、ウイルスに対して同時に複数のストレスを誘発する。薬物動態、生体分布またはこの薬物の他のパラメータを、こうした併用または交代療法によって変えることができる。
【0307】
本発明は、治療が必要なヒトに、ウイルスゲノムにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXTにおいてセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオシドの突然変異以外の位置で、突然変異を直接もしくは間接的に誘発する1つ以上の薬物および/またはこうした突然変異に関係する1つ以上の薬物と併用および/または交代で、2’−分枝ヌクレオシドまたはこの医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩を投与することにより、フラビウイルス科ウイルス感染の最適な治療を達成する方法を提供する。
【0308】
突然変異フラビウイルス科ウイルス感染のインターフェロン治療
本発明のもう一つの側面は、フラビウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ領域のドメインBの保存セリンアミノ酸残基(
図11)におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主において、インターフェロンの治療有効量を投与することによりフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。一つの実施態様において、インターフェロンの治療有効量を投与することにより、RNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むBVDV感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。もう一つの実施態様において、インターフェロンの治療有効量を投与することにより、HCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むHCV感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。特定の実施態様では、インターフェロンアルファ−2bを投与して、フラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる。
【0309】
さらなる実施態様において、(i)宿主からウイルスサンプルを得ること、(ii)このサンプル中のフラビウイルス科ウイルスが、RNAポリメラーゼの第405位アミノ酸残基にトレオニンを有するか否かを同定すること、および(iii)RNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を含むフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主にインターフェロンの有効量を投与することを含む、BVDVに感染していると推測される宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。
【0310】
もう一つの実施態様において、(i)宿主からウイルスサンプルを得ること、(ii)このサンプル中のフラビウイルス科ウイルスが、RNAポリメラーゼの第282位アミノ酸残基にトレオニンを有するか否かを同定すること、および(iii)RNAポリメラーゼ領域の第282位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異を有するフラビウイルス科ウイルスに感染している宿主にインターフェロンの有効量を投与することを含む、HCVに感染していると推測される宿主においてフラビウイルス科ウイルス感染を治療および/または実質的に治癒させる方法を提供する。
【0311】
インターフェロンには、次のものが挙げられる:ScheringによるIntron−A(インターフェロンアルファ−2b)、ScheringによるPEG−INTRON(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2b)、RocheによるRoferon−A(インターフェロンアルファ−2a)、RocheによるPEGASYS(ポリエチレングリコール化インターフェロンアルファ−2a)、InterMuneによるINFERGEN(インターフェロンアルファコン−1)、ViragenによるOMNIFERON(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON、Ares−SeronoによるREBIF(インターフェロンベータ−1a)、BioMedicineによるオメガインターフェロン(Omega Interferon)、アマリロバイオサイエンス(Amarillo Biosciences)による経口インターフェロンアルファ(Oral Interferon Alpha)、およびInterMuneによるインターフェロンガンマ−1b(Interferon gamma−1b)。
【0312】
BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位アミノ酸またはHCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位アミノ酸におけるセリンからトレオニンへの突然変異の同定は、セリンからトレオニンへのアミノ酸変化を可能ならしめるフラビウイルス科ウイルスゲノムの突然変異の存在を検出することにより達成することができる。一つの実施態様では、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチド(ここにおいて、このRNAポリメラーゼ領域の第1214位ヌクレオチドは、BVDVゲノムの第11,136位ヌクレオチドに対応する)におけるシチジンの存在を利用して、このアミノ酸変化を検出することができる。他の実施態様では、次の二重突然変異を検出することができる:第1214位(GからC)と第1215位(CからA);第1214位(GからC)と第1215位(CからG);または第1214位(GからC)と第1215位(CからU)。これらに起因して、BVDVのRNAポリメラーゼ領域の第405位におけるセリンからトレオニンへのアミノ酸変化が生じる。もう一つの実施態様では、HCVゲノムの第8443位ヌクレオチドにおけるシチジンの存在を利用して、このアミノ酸変化を検出することができる。他の実施態様では、次の二重突然変異を検出することができる:第8443位(GからC)と第8444位(CからA);第8443位(GからC)と第8444位(CからG);または第8443位(GからC)と第8444位(CからU)。これらに起因して、HCVのRNAポリメラーゼ領域の第282位におけるセリンからトレオニンへのアミノ酸変化が生じる。これらの突然変異は、標識プローブ、逆ハイブリダイゼーションアッセイ、サザンブロット、または当業者に公知の他のあらゆる検出法などの上に記載した検出法のいずれかを用いて検出することができる。
【0313】
V.医薬組成物の調製
フラビウイルス科ウイルスに起因する感染を示す、ヒトを含むあらゆる宿主は、ウイルスゲノムにおいて、このRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXT内のセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で突然変異を誘発する薬物と併用または交代で、本明細書に詳細に記載するいずれの指示または投与方式についても医薬適合性の担体または希釈剤の存在下、β−D−2’−CH
3−リボCまたはこの3’バリンエステルプロドラッグなどの、2’−分枝ヌクレオシドまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩の有効量を患者に投与することにより治療することができる。β−D−2’−CH
3−リボCなどの2’−分枝ヌクレオシド、またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩は、単独で投与してもよいし、または本明細書に記載する他の抗ウイルス薬と併用または交代で投与してもよい。活性材料は、液体形態または固体形態で、あらゆる適切な経路により、例えば、経口、非経口、静脈内、皮内、皮下または局所的に投与することができる。
【0314】
化合物の好ましい用量は、1日につき受容者の体重のkgあたり約1から50mg、好ましくは1から20mg、さらに一般的には0.1から約100mgの範囲であろう。その医薬適合性の塩およびプロドラッグの有効投薬範囲は、送達される親ヌクレオシドの重量を基に計算することができる。このプロドラッグおよび/または塩が本質的に活性を示す場合、有効投薬量は、このプロドラッグおよび/もしくは塩の重量を用いて、または当業者に公知の他の手段によって概算することができる。
【0315】
化合物は、単位剤形あたり7から3000mg、好ましくは70から1400mgの活性成分を含有するものを含むが、これらに限定されないあらゆる適する剤形単位で適便に投与することができる。例えば、活性成分50から1000mgの経口投薬量が、通常適便である。
【0316】
理想的には、活性成分は、約0.2から70μM、好ましくは約0.1から10μMの活性化合物のピーク血漿中濃度を達成するように投与すべきである。これは、例えば、場合により生理食塩水中の、活性成分の0.1から5%溶液の静脈内注射により達成することができ、または活性成分のボーラスとして投与することができる。
【0317】
薬物組成物中の活性化合物の濃度は、この薬物の吸収、不活性化および排泄速度、ならびに当業者に公知の他の因子に依存するであろう。投薬量の値は、緩和すべき状態の重症度によっても変わることに注意しなければならない。さらに、いずれの特定の被験者についても、具体的な薬剤投与計画は、個々の必要性、およびこれらの組成物を投与する人またはこれらの組成物の投与を管理する人の専門的な判断に従って調整すべきであり、本明細書に記載する濃度範囲は、特許請求の範囲に記載する組成物の範囲または実施の単なる例であり、これらを制限するためのものではないことは、理解することができる。活性成分は、1回で投与してもよいし、様々な時間間隔で投与できるように多数の、より小さな用量に分割してもよい。
【0318】
活性化合物の好ましい投与方式は、経口方式である。経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食担体を含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入されるか、錠剤に圧縮される。経口治療投与のために、活性化合物は、賦形剤と配合して、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で用いることができる。医薬適合性の結合剤および/または補助材料を、本組成物の一部として含めてもよい。
【0319】
錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、次の成分のうちのいずれか、または似たような性質の化合物を含有してもよい:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの潤滑剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジフレーバーなどの着香剤。投薬単位形がカプセルである場合、上のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含むことができる。加えて、投薬単位形は、この投薬単位の物理的形状を修正する他の様々な材料、例えば糖衣、シェラックまたは他の腸溶性物質を含むことができる。
【0320】
本化合物は、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムなどの成分として投与することができる。シロップは、活性化合物に加えて、スクロース(甘味剤および一定の保存薬として)、色素および着色剤ならびに芳香薬を含有することができる。
【0321】
本化合物またはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩は、所望の作用を損なわせない他の活性材料と、または抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬もしくは他の抗ウイルス薬(他のヌクレオシド化合物を含む)などの、所望の作用を補足する材料と混合することもできる。非経口適用、皮内適用、皮下適用または局所適用に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファ;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度調節剤。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回使用バイアル内に封入することができる。
【0322】
静脈内投与する場合、好ましい担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
【0323】
好ましい実施態様において、本活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出調合物などの身体からの急速な放出からこの化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン−酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生体分解性生体適合性ポリマーを用いることができる。こうした調合物の調製法は、当業者には明らかであろう。これらの材料は、Alza Corporationから購入することもできる。
【0324】
リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に有する細胞をターゲットにしたリポソームを含む)も医薬適合性の担体として好ましい。これらは、例えば米国特許第4,552,811号に記載されているような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。前記特許は、この全文が本明細書に参考として援用されている。例えば、リポソーム調合物は、ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールなどの適切な脂質(複数を含む)を有機溶媒に溶解すること、次に、この溶媒を蒸発させ、容器の表面に所望の脂質の薄膜を残すことによって調製することができる。本活性化合物またはこの一リン酸、二リン酸および/もしくは三リン酸誘導体の水溶液をこの容器に導入する。この容器を手で渦攪拌して容器の側面から脂質材料を除去し、脂質凝集物を分散させ、それによってリポソーム懸濁液を作る。
【0325】
活性化合物(複数を含む)は、治療する患者に深刻な毒性作用をもたらすことなくインビボでのウイルス複製、特にフラビウイルス科ウイルスの複製を阻害するように、化合物の治療有効量を患者に送達するために十分な量で、医薬適合性の担体または希釈剤に含まれる。「阻害量」とは、例えば本明細書に記載するものなどのアッセイによって測定されるような、阻害効果を発揮するために十分な活性成分の量を意味する。
【0326】
制御放出調合物
生体分解性ポリマーの分野は、ポリ乳酸の合成および生体分解性が1996年にKulkarniら(「外科移植材のためのポリ乳酸(Polylactic acid for surgical implants)」,Arch.Surg.,93:839)によって報告されて以来、急速に発展した。送達装置用のマトリックス材料として有用と報告されている他のポリマーの例には、ポリ無水物;ポリグリコリドおよびポリラクチド−co−グリコリドなどのポリエステル;ポリリシンなどのポリアミノ酸;ポリエチレンオキシド、アクリル酸末端のポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリアクリロニトリルおよびポリホスファゼンのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。例えば、Langerらの米国特許第4,891,225号および同第4,906,474号(ポリ無水物)、Hutchinsonの米国特許第4,767,628号(ポリラクチド、ポリラクチド−co−グリコリド酸)、ならびにTiceらの米国特許第4,530,840号(ポリラクチド、ポリグリコリド、およびコポリマー)を参照のこと。組織接触材料および制御放出担体としての光重合性生体分解性ヒドロゲル(重合および架橋可能なエンドキャップ型モノマーまたはオリゴマーである、生体分解性モノマーまたはオリゴマー延長部を有する親水性オリゴマーを含む重合および架橋型マクロマーのヒドロゲル)を記載しているHubbellらの米国特許第5,626,863号;ならびに薬物送達用制御放出剤および組織治療薬として使用するためのマルチブロック生体分解性ヒドロゲルに関するFocalらの国際公開公報第97/05185号も参照のこと。
【0327】
架橋ゼラチンなどの生物由来の分解性材料は、周知である。ヒアルロン酸は、架橋しており、分解性膨潤性ポリマーとして生物医学的用途に使用されている(Della Valleらの米国特許第4,957,744号;(1991)「トロンボゲン形成低減のための高分子生体材料の表面変性(Surface modification of polymeric biomaterials for reduced thrombogenicity)」,Polym.Mater.Sci.Eng,62:731−735))。
【0328】
現在、多くの分散系が、物質、特に生物活性化合物の担体として使用されており、または使用のために調査されている。医薬および化粧品の調合に使用される分散系は、懸濁剤または乳剤のいずれかとして分類されている。懸濁剤は、懸濁化剤を使用して液体媒体に分散させた、粒径数ナノメートルから数百マイクロメートルの範囲の固体粒子と定義される。固体粒子には、マイクロスフェア、マイクロカプセルおよびナノスフェアが挙げられる。乳剤は、界面活性剤および脂質などの乳化剤の界面膜によって安定化させた、ある液体を別の液体に分散させたものと定義される。乳剤調合物には、油中水型および水中油形乳剤、多層乳剤、マイクロエマルジョン、マイクロドロップレット、およびリポソームが挙げられる。マイクロドロップレットは、Haynesに対して発行された米国特許第4,622,219号および同第4,725,442号において定義されているような、内側に油相を有する球状脂質層から成る単層リン脂質小胞である。リポソームは、水不溶性極性脂質と水溶液を混合することにより調製されるリン脂質小胞である。水中でこの不溶性脂質を混合することにより生じた不利なエントロピーによって、水溶液が閉じ込められたリン脂質の同心包囲膜の非常に規則正しいアセンブリが生成する。
【0329】
Dunnらの米国特許第4,938,763号は、非反応性水不溶性熱可塑性ポリマーを生体適合性水溶性溶媒に溶解して液体を形成すること、この液体を体内に配置すること、および溶媒を散逸させて固体インプラントを作ることによってインサイチュでインプラントを形成することによる、さらにもう一つの薬物送達法を開示している。前記ポリマー溶液は、注射器によって体内に配置することができる。前記インプラントは、この周囲の腔の形状を呈することができる。別の実施態様では、前記インプラントは、反応性液体オリゴマー性ポリマーから成り、前記ポリマーは、溶媒を含有せず、通常は硬化触媒を添加して、固体を形成するように所定の位置で硬化させる。
【0330】
多数の特許が、ウイルスゲノムにおけるRNAポリメラーゼ領域のドメインBの高保存コンセンサス配列XRXSGXXXTにおけるセリンから別のアミノ酸への変化をもたらすヌクレオチドの突然変異以外の位置で突然変異を誘発する薬物と併用および/または交代で2’−分枝ヌクレオシドまたはその医薬適合性のプロドラッグおよび/もしくは塩を投与するために使用することができる薬物送達系を開示している。米国特許第5,749,847号は、電気泳動による生体へのヌクレオチドの送達法を開示している。米国特許第5,718,921号は、ポリマーを含むマイクロスフェアおよび送達系としてこの中に分散させた薬物の使用を開示している。米国特許第5,629,009号は、生物活性因子の制御放出のための送達系を開示している。米国特許第5,578,325号は、薬物送達用の非線状親水性疎水性マルチブロックコポリマーのナノ粒子およびミクロ粒子の使用を開示している。米国特許第5,545,409号は、生物活性因子の制御放出のための送達系を開示している。米国特許第5,494,682号は、薬物送達系としてイオン架橋型高分子マイクロカプセルの使用を開示している。
【0331】
Andrx Pharmaceuticals,Inc.の米国特許第5,728,402号は、ヒドロゲル形成剤との混合物で活性薬物、その塩またはプロドラッグを含む内相および胃での溶解に耐える皮膜を含む外相を備える制御放出調合物を記載している。Andrx Pharmaceuticals,Inc.の米国特許第5,736,159号は、インサイチュで通路が形成される、ほとんど水に溶解しない薬物についての制御放出調合物を開示している。Andrx Pharmaceuticals,Inc.の米国特許第5,567,441号は、1日1回用制御放出調合物を開示している。米国特許第5,508,040号は、多粒子状拍動性薬物送達系を開示している。米国特許第5,472,708号は、拍動性粒子ベース薬物送達系を開示している。米国特許第5,458,888号は、薬物を含有する内相および重量平均分子量が3,000から10,000のポリエチレングリコールポリマーを含む外相を有するブレンドを使用することができる制御放出錠剤調合物を記載している。米国特許第5,419,917号は、ヒドロゲルからの薬物の放出速度を変更するための方法を開示しており、この方法は、実質的にゼロ次のヒドロゲルからの薬物の放出速度をもたらすことができる医薬適合性イオン性化合物の有効量の使用に基づく。米国特許第5,458,888号は、制御放出錠剤調合物を開示している。
【0332】
Elan Corporation,plcの米国特許第5,641,745号は、生体分解性ポリマー中に活性薬物を含んで、マイクロスフェアまたはナノスフェアを形成している制御放出医薬調合物を開示している。この生体分解性ポリマーは、適切にはポリ−D,L−ラクチドまたはポリ−D,L−ラクチドとポリ−D,L−ラクチド−co−グリコリドのブレンドである。Elan Corporation,plcの米国特許第5,616,345号は、有機酸と会合している活性化合物、ならびにこのコアを包囲し、医薬適合性被膜形成性水不溶性合成ポリマーの主集団および医薬適合性被膜形成性水溶性合成ポリマーの副集団を含む多層膜を含む、1日1回投与するための制御吸収調合物を開示している。米国特許第6,451,515号は、生体分解性ナノ粒子に基づく制御放出調合物を開示している。米国特許第5,637,320号は、1日1回投与するための制御吸収調合物を開示している。米国特許第5,580,580号および同第5,540,938号は、神経疾患を治療する際の調合物およびこれらの使用に関する。米国特許第5,533,995号は、薬物送達を制御する受動型経皮式装置に関する。米国特許第5,505,962号は、制御放出医薬調合物を記載している。
【0333】
以下の実施例は、本発明の様々な実施態様を説明するものであり、如何なる点でも制限するためのものではない。
【実施例1】
【0335】
β−D−2’−CH
3−リボC耐性BVDVの単離
非細胞障害性(ncp)BVDV(I−N−dIns株; ネブラスカ州(NE)、リンカーンのDr.R.Donis,U.)でのナイーブ細胞のインビトロ感染により、MDBK細胞系(ATCC、Manassas,VA,カタログ番号:CCL−22)においてBVDV持続感染を成立させた。感染多重度(MOI)は、0.01であった。病巣アッセイによって決定して、安定した高レベルの感染(1mLあたり10
6から10
7の病巣形成単位(FFU))が達成されるまで、細胞を週に2回継代した(分裂比 1:15)。次に、8μMのβ−D−2’−CH
3−リボC(Index Pharmaceuticals)が入っている、または入っていない6ウエル培養プレート内で、これらの持続感染細胞を増殖させた。細胞培養物を、分裂比が1:15から1:20になるまで、3日から4日ごとに継代した。8回の継代後、β−D−2’−CH
3−リボCの存在下で増殖させた細胞培養物をT−75培養フラスコに拡張し、2回凍解して、β−D−2’−CH
3−リボC−耐性BVDVのウイルスストックとしてその後の特性付けに用いた。細胞培養物におけるウイルス力価は、各継代終了時にウイルス病巣アッセイによりモニターした。
【0336】
ウイルス病巣アッセイを行うために、1ウエルあたり2x10
5の細胞が入っている6ウエルプレートにMDBK細胞を接種し、使用前に少なくとも5時間、37℃/5% CO
2で増殖させた。試験サンプル(細胞単層と併せた培養上清)を2回凍解し、培地中10倍に系列希釈して、6ウエルプレート内の試験細胞に1ウエルあたり0.2mLで接種するために使用した。1時間吸着させた後、接種材料を除去し、完全増殖培地(1X DMEM(Cellgro)、8%ウシ血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび25mM HEPESを補足したもの)中0.5%のアガロース3mLをこれらの細胞にかぶせた。37℃/5% CO
2で3日間インキュベートした後、プレートをPBS中7.4%のホルムアルデヒド3mLで1時間固定し、PBSで洗浄した。細胞単層を1ウエルあたり1mLのPBS−0.25% Triton X−100で透過性にし、0.5mLのヤギ抗BVDV抗血清(VMDR,Inc.;PBS−0.25% Triton X−100で1:1000希釈したもの)と共に1時間インキュベートした。次に、この抗血清を除去して、細胞単層をPBSで洗浄し(15分間で2回)、0.5mLのペルオキシダーゼ−ロバ抗ヤギ抗体コンジュゲート(PBS−0.25% Triton X−100で1:1000希釈したもの)と共にさらに1時間インキュベートした。抗体を除去した後、細胞単層をPBSで洗浄し(15分間で2回)、ウイルス病巣が見えるようになるまで(約15分)室温で0.5mLのジアミノベンジジン(DAB)ペルオキシダーゼ基質溶液(Vector Laboratories)と共にインキュベートした。すべてのインキュベーションは、前後に揺り動かしながら行った。水で洗浄することにより着色を停止させ、プレートを放置して空気乾燥させた。ウイルス力価は、次の方程式を用い、FFU/mLで計算した。T
FFU/mL=Nx5xD(式中、Tは、ウイルス力価(単位:FFU/mL)であり、Nは、1ウエルあたりの病巣の数であり、Dは、対応するウイルスサンプルの希釈率である)。(例えば、ウイルスサンプルの10
−5希釈に対応するウエルにおいて12の病巣が見出された場合には、T=12x5x10
5=6x10
6 PFU/mL)。
【0337】
一般に、ウイルス力価は、2から3回の継代後、10
6から10
7 FFU/mLに達し、少なくとも2ヶ月にわたってさらに継代した後も有意には変化しなかった。このような持続感染細胞系を8μMのβ−D−2’−CH
3−リボCで治療したとき、ウイルス力価は急速に低下し、2回の継代後、ウイルスは、もはや検出できなかった(
図1)。しかし、阻害剤の存在下でのさらなる継代の後、ウイルスが培地に再び出現し(一般に、3から5回継代した時点)、ウイルス力価は、未治療の培養物のものより約10倍低い10
5 FFU/mLでプラトーに達した(
図1)。ウイルス力価におけるこの10倍の差は、治療から28日後でさえ観察された。この実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。再出現したウイルスの表現型は、初期野生型ウイルスとは著しく異なり、野生型ウイルスのものよりずっと小さい、一般には直径で3から10倍小さい病床をもたらした(
図2)。この表現型は、少なくとも72日間、阻害剤の存在下での長期継代培養後も変化しなかったが、治療を中止すると急速に野生型の表現型(大病巣)に戻った。
【0338】
考え合わせると、これらのデータは、野生型ウイルスが治療後に細胞培養物から姿を消すこと、およびβ−D−2’−CH
3−リボC耐性ウイルス変異体が組織培養において複製適性をあまり示さないことを示している。
【実施例2】
【0339】
ウイルス増殖動態
野生型BVDVとβ−D−2’−CH
3−リボC耐性BVDV、両方の増殖動態を比較した。MDBK細胞を6ウエルプレートに接種し(1ウエルあたり細胞数2x10
5)、37℃/5% CO
2で一晩増殖させた。細胞を感染多重度0.1でBVDV I−N−dInsまたはβ−D−2’−CH
3−リボC耐性突然変異体、I−N−dInsβ−D−2’−CH
3−リボC−Rに感染させた。1時間吸着させた後、接種材料を除去して、細胞をPBSで洗浄し、次に、細胞に2mLの新しい増殖培地をかぶせた。BVDV、I−N−dInsβ−D−2’−CH
3−リボC−Rについて、8μMのβ−D−2’−CH
3−リボCが存在する状態または不在の状態の二重重複ウエルを用意した。細胞培養物を37℃/5% CO
2でインキュベートした。感染後、0(吸着時間終了時)、6、12、24、36、48、60、72時間の時点で、培養物を2回凍解し、上に記載したような病巣アッセイによりウイルス力価を定量した。
【0340】
感染後12時間で、野生型ウイルスの後代は、10
4 FFU/mLを超える有意なレベルに達した。これは、8から14時間であるBVDVの完全寿命と一致する。対照的に、耐性ウイルス変異体の後代は、この時点ではまた検出できなかった(
図3)。耐性ウイルスの複製は、感染後24時間で初めて検出された。感染後36時間で、耐性ウイルスの複製は、野生型ウイルスのものよりまだ約100倍効率が低かった。これらのデータは、β−D−2’−CH
3−リボC−耐性BVDVの複製が、特に感染初期段階では、野生型ウイルスより有意に遅いことを明確に示している。これらのデータは、
図1および2で提示した結果とも一致する。
【実施例3】
【0341】
β−D−2’−CH
3−リボCに対する耐性の評価
選択したBVDV変異体(I−N−dInsβ−D−2’−CH
3−リボC−R)は、野生型BVDVよりβ−D−2’−CH
3−リボCに対して耐性である。前記変異体が、表現型もウイルス力価レベルも変化させずに、長期間(少なくとも72日間)、前記化合物の存在下で、MDBK細胞中、適度に高いレベルまで安定的に複製できるからである。この耐性を定量するために、野生型ウイルスと変異体ウイルスの両方を使用して、ウイルス収量低下検定を行った。
【0342】
ウイルス収量低下検定を行うために、MDBK細胞を24ウエルプレートに接種し(1ウエルあたり細胞数1x10
5)、37℃/5% CO
2で一晩インキュベートした。細胞を感染多重度0.1でBVDVに感染させた。1時間吸着させた後、接種材料を除去して、細胞をPBSで洗浄し、次に、試験化合物の系列2倍希釈物(β−D−2’−CH
3−リボCについては0から32μM、Intron(登録商標)Aについては0から800 IU/mL)を含有する1mLの新しい増殖培地をこれらの細胞にかぶせた。37℃/5% CO
2で48時間インキュベートした後、プレートを−70℃で2回凍解して細胞培養物を溶解した。この細胞培養でのウイルス力価を上に記載した病巣アッセイにより定量した。試験化合物についての50%、90%および4−log有効濃度(平均値±標準偏差)は、二重重複ウエルに基づくものである。EC
50、EC
90およびEC
4−log値は、XLFitソフトウエアを用いる曲線当てはめによって導出した。EC
50、EC
90およびEC
4−logは、ウイルス力価をそれぞれ50%、90%および99.99%低下させる試験化合物の濃度である。
【0343】
感染性野生型BVDV粒子の生成は、それぞれ0.59±0.12μMおよび1.49±0.28μMのEC
50値およびEC
90値を有するβ−D−2’−CH
3−リボCによって非常に有効に抑制された(
図4および表4)。7.14±1.26μMのβ−D−2’−CH
3−リボC濃度で野生型ウイルスの収量は4 log低下し、16μMでウイルス力価は検出限界下(<10 FFU/mL)に低下した。対照的に、試験した最高β−D−2’−CH
3−リボC濃度(32μM)で、耐性ウイルス収量に対する影響は観察されなかった。従って、I−N−dInsβ−D−2’−CH
3−リボC−Rウイルスは、ウイルス収量低下検定によって得られたEC
50値を基に、野生型ウイルスよりこの阻害剤に対する耐性が少なくとも54倍高かった(0.59±0.12μMに対して>32μM)。
【0344】
【表4】
【実施例4】
【0345】
核酸配列分析:β−D−2’−CH
3−リボC耐性表現型の原因である遺伝子突然変異の同定
阻害剤、すなわちヌクレオシド類似体の性質を基に、ウイルスポリメラーゼを尤もらしい分子標的とみなした。従って、本発明者らは、野生型とβ−D−2’−CH
3−リボC−耐性BVDV、両方のNS5B領域の配列から始めた。β−D−2’−CH
3−リボCを用いて、または用いずに8継代の治療(
図1)を行った後、組織培養溶解産物からウイルスRNAを抽出し、全NS5B領域をRT−PCR付し、配列した。ウイルスRNAは、QIAamp(登録商標) Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)をこの製造業者のプロトコルに従って使用して、細胞培養物から抽出した。全NS5B領域を転写し、QUIAGEN(登録商標) OneStep RT−PCR Kitを使用して増幅させた。QIAquick(登録商標) PCR Purification Kit(QIAGEN)を使用してPCR産物を精製し、Tufts Core Facility,Boston,MAにおいて自動ABI DNA Sequencer(Perkin−Elmer)を用い、ABI PRISM(登録商標)Sequencingプロトコルを使用して配列決定した。
【0346】
少なくとも2つの独立したRT−PCR産物を使用して、各領域を両方向に配列決定した。以前に発表されたBVDV(I−N−dIns株)全長ゲノム配列(Vassilev,V.B.and R.O.Donis.(2000)Virus Res.69(2):95−107)と比較したとき、前記野生型ウイルスには突然変異は見出せなかった。ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)誘発アポトーシスは、細胞内ウイルスRNA蓄積の増加と相関している。ただ1つのヌクレオチドの置換が、I−N−dIns β−D−2’−CH
3−リボC−Rウイルスにおいて見出された。第1214位CからG(その結果、第405位においてアミノ酸残基SerがThrに変化する)。興味深いことに、このアミノ酸の位置は、突然変異分析(Lai V.C.,Kao C.C.,Ferrari E.,Park J.,Uss A.S.,Wright−Minogue J.,Hong Z.,and J.Y.Lau.「ウシウイルス性下痢ウイルスRNA依存性TNAポリメラーゼの突然変異分析(Mutational analysis of bovine viral diarrhea virus RNA−dependent RNA polymerase)」J Virol.,1999,73,10129−36)によって同定したところ、推定機能性NS5BドメインB(
図5)に位置する。このドメインは、HCVゲノムのNS5B領域ならびに他のフラビウイルスのゲノムにおいても見出される。さらに、アミノ酸位置Ser
405は、すべてのペスチウイルスゲノムおよびフラビウイルスゲノムの間で高度に保存されている。
【実施例5】
【0347】
Intron Aに対する過敏性
上に記載したウイルス収量低下検定を用いて、デノボ感染MDBK細胞におけるIntron Aに対する感受性についての野生型I−N−dInsウイルスとI−N−dIns β−D−2’−CH
3−リボC−R変異体の比較を行った。再び本発明者らは、これら2つウイルスの間に著しい違いを見出した。この野生型ウイルスは、Intron Aにより中等度に阻害され、EC
90値は、119±34.1μM、および試験した最高薬物濃度でのウイルス収量の低下は約1.5 logであった(
図6)。対照的に、I−N−dIns β−D−2’−CH
3−リボC−R変異体は、EC
90値が3.15±0.72μM、ウイルス収量の最大低下がほぼ4 logであって(
図6)、Intoron Aに対する感受性がそれより大幅に高いことがわかった。EC
90値の比較を基に、β−D−2’−CH
3−リボC耐性ウイルスは、野生型BVDVより、Intron Aに対して約40倍感受性が高かった。
【実施例6】
【0348】
β−D−2’−CH
3−リボCおよびIntron Aの併用治療
野生型BVDVに対するIntron Aの単独でのまたはβ−D−2’−CH
3−リボCと併用での効果をMDBK持続感染細胞でさらに研究した。一つの実験設定では、幾つかの阻害剤濃度で1回または2回治療した7日後(2継代)、ウイルス力価を測定した。この実験の結果(表5Aおよび5Bならびにまた
図7および8に提示する)は、次のようにまとめることができる。記載の実験条件下、β−D−2’−CH
3−リボCは、単独で、BVDV(I−N−dIns株)増殖を用量依存的に強く阻害した。8μMのβ−D−2’−CH
3−リボCでの治療により、ウイルス力価は6.2 log低下した(
図7)。インターフェロンα−2bは、単独で、最小の効果を及ぼす(0.1 logのウイルス力価低下)。2μMのβ−D−2’−CH
3−リボCまたは2000 IU/mLのインターフェロンα−2bでの1回の治療によって、ウイルス力価は、それぞれ1.61 logおよび0.1 log低下した。同濃度での併用治療の効果は、2.22 logであり、これは、加算した効果(1.71 log)より0.51 log高かった。4μMのβ−D−2’−CH
3−リボCまたは2000 IU/mLのインターフェロンα−2bでの1回の治療によって、ウイルス力価は、それぞれ2.06 logおよび0.1 log低下した(表5B、
図8)。同濃度での併用治療の効果は、4.56 logであり、これは、加算した効果(2.16 log)より2.4 log高かった。このように、β−D−2’−CH
3−リボCおよびインターフェロンアルファ−2bは、特にβ−D−2’−CH
3−リボCを4μMの濃度で使用した場合、相乗的に作用してBVDVを阻害した。
【0349】
【表5】
【0350】
【表6】
【0351】
もう一つの実験設定では、治療時間を10日に延長し、各継代(3から4日ごと)後にウイルス力価(NY−1株)をモニターした。再び、β−D−2’−CH
3−リボCとインターフェロンアルファ−2bの同様の相乗阻害効果が観察された(
図9)。特に、8μMのβ−D−2’−CH
3−リボCと200 IU/mLのIntron Aとを併用して細胞培養物を治療した場合、ウイルスは、治療の7日後には検出不能となり、少なくとも27日間はさらに継代しても再出現しなかった。これらのデータは、持続感染細胞の処理後に出現するβ−D−2’−CH
3−リボC−耐性BVDV異性体は、Intron Aに対して感受性であるという、前に記載した本発明者らの発見と一致する。考え合わせると、これらのデータは、β−D−2’−CH
3−リボCでのウイルス持続感染の治療後に出現する耐性ウイルス集団をIntron Aでのその後の治療によって排除できることを、さらに示唆している。
【0352】
特定の実施態様を参照しながら本発明を説明した。本発明の変型および変法は、上記の本発明の詳細な説明から当業者には明らかであろう。