(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるビニルエーテル(共)重合体の製造方法は、上記式(1)で示されるn個のヒドロキシル基を含有するビニルエーテルを含む単量体成分を、特定の重合開始剤の存在下で重合させることを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
単量体成分
本発明によるビニルエーテル(共)重合体の製造方法に用いる単量体成分は、下記式(1):
下記式(1):
【化4】
(式中、R
1は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜7のアルコキシアルキル基を表し、分岐していても、環状構造を含んでいてもよく、nは1〜5である。)
で示される少なくとも1種のヒドロキシル基含有ビニルエーテルを必須成分として含むものである。式(1)において、ヒドロキシル基の数nは1〜5の範囲であり、好ましくは1〜3の範囲であり、特に好ましくは1である。
【0024】
式(1)中、R
1で示される炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10のn+1価のアルキル基又は炭素数5〜10のn+1価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜10のn+1価のアルキル基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の直鎖又は分岐鎖状のアルカンからn+1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0026】
炭素数5〜10のn+1価の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜10の単環又は多環のシクロアルカンもしくはそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基が挙げられる。除かれる水素原子は、シクロアルカンのものであっても付加されたアルキル基のものであってもよい。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンやそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、デカヒドロナフタレン等のポリシクロアルカンやそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0027】
シクロアルカンに付加するアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基が挙げられる。置換基の数は1に限られず、複数の置換基を有する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0028】
また、式(1)中、R
1で示される炭素数3〜7のアルコキシアルキル基としては、炭素数3〜7の直鎖、分岐鎖状、又は環状エーテルからn+1個の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、メチルsec−ブチルエーテル、エチルsec−ブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル等の直鎖又は分岐鎖状エーテルからn+1個の水素原子を除いた基;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテルからn+1個の水素原子をのぞいた基が挙げられる。
【0029】
これらの中でも炭素数1〜10のn+1価のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の2価(n=1)の直鎖アルキル基(アルキレン基)が特に好ましい。具体的には、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン基(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、ペンタメチレン基(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−)、ヘキサメチレン基(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−)が挙げられる。
【0030】
上記式(1)で示されるビニルエーテルのうち、1個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシメチルビニルエーテル、1−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル等の直鎖アルキルビニルエーテル;
1−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−メチルプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシアミルビニルエーテル、3−ヒドロキシアミルビニルエーテル、2−ヒドロキシアミルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−3−メチルブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−3−メチルブチルエーテル等の分岐鎖状のアルキルビニルエーテル;
2−ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−シクロへキシルビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロへキシルビニルエーテル、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロへキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへプチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロオクチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロオクチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロデカニルビニルエーテル等の単環のシクロアルキルビニルエーテル;
3−ヒドロキシ−1−ビニルオキシアダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオールモノビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジオールモノビニルエーテル、デカリンジオールモノビニルエーテル等の多環のシクロアルキルビニルエーテル;
2−ヒドロキシ−1−メトキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−メトキシエチルビニルエーテル、2−(ヒドロキシメトキシ)エチルビニルエーテル、1−(ヒドロキシメトキシ)エチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−メトキシプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−エトキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−1−エトキシブチルビニルエーテル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−3−ビニルオキシテトラヒドロフラン、4−ヒドロキシ−2−ビニルオキシテトラヒドロフラン、4−ヒドロキシ−2−ビニルオキシテトラヒドロピラン等のアルコキシビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
2個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール等の3価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0032】
3個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタテトロール、2,3,4,5−ヘキサテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン、等の4価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0033】
4個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、アドニトール、アラビニトール、キシリトール、トリグリセリン、等の5価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0034】
5個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ダルシトール、イノシトール等の6価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0035】
これらのビニルエーテルの中でも、入手或いは合成が容易な点で、1個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルが好ましく、中でも、ラジカル重合性の点で、直鎖又は分岐鎖状のアルキルビニルエーテル及びアルコキシアルキルビニルエーテルが好ましく、ヒドロキシメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチル-プロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−3−メチルプロピルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル等がより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテルが特に好ましい。
【0036】
本発明によるビニルエーテル共重合体の製造方法に用いる単量体成分は、下記式(2):
【化5】
(式中、R
2は炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基を表し、分岐していても、環状構造を含んでいてもよい。)、
又は下記式(3):
【化6】
(式中、R
3は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、R
4はメチル基又はエチル基を表し、mは1〜5である。)
で示される少なくとも1種のビニルエーテルをさらに含んでもよい。
【0037】
すなわち、ビニルエーテル共重合体は、式(1)で示されるビニルエーテルのみを重合させてもよいが、式(2)又は式(3)で示されるビニルエーテル、或いはその両方と共に共重合させることができる。
【0038】
上記式(2)中、R
2で示される炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数2〜20のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基が挙げられる。炭素数2〜20のアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、イソアミル基、イソへキシル基、イソへプチル基、イソオクチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチルへキシル基、2−メチルオクチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、4−エチル−1−メチルオクチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0039】
炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、チクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基等の単環の脂環式アルキル基;2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、3−エチルシクロペンチル基、2−メチルシクロへキシル基、3−メチルシクロへキシル基、4−メチルシクロへキシル基、2−エチルシクロへキシル基、3−エチルシクロへキシル基、4−エチルシクロへキシル基等のアルキル基が置換した脂環式アルキル基;
シクロへキシルメチル基、2−シクロへキシルエチル基等のシクロアルキルアルキル基;
トリシクロデカニル基、1−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、デカヒドロナフチル基等の多環の脂環式アルキル基などが挙げられる。
【0040】
これらの脂肪族炭化水素基の中でも、ヒドロキシル基含有ビニルエーテルとの相溶性及びラジカル共重合性の点において、炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数5〜10の単環の脂環式アルキル基がより好ましい。
【0041】
上記式(2)で示されるビニルエーテルとしては、具体的には、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−へキシルビニルエーテル、n−ヘプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、n−デシルビニルエーテル、n−ウンデシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−トリデシルビニルエーテル、n−テトラデシルビニルエーテル、n−ペンタデシルビニルエーテル、n−ヘキサデシルビニルエーテル、n−ヘプタデシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル等の直鎖アルキルビニルエーテル;
イソプロピルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、イソへキシルビニルエーテル、イソへプチルビニルエーテル、イソオクチルビニルエーテル、1,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、1,3−ジメチルブチルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、1−メチルヘプチルビニルエーテル、2−メチルオクチルビニルエーテル、1−ペンチルヘキシルビニルエーテル、4−エチル−1−メチルオクチルビニルエーテル等の分岐鎖状のアルキルビニルエーテル;
シクロペンチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、シクロへプチルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル、4−メチルシクロへキシルビニルエーテル、4−エチルシクロへキシルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニルビニルエーテル等の単環又は多環のシクロアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
これらのビニルエーテルの中でも、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−へキシルビニルエーテル、n−ヘプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、イソへキシルビニルエーテル、イソへプチルビニルエーテル、イソオクチルビニルエーテル、1,3−ジメチルブチルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、1−メチルヘプチルビニルエーテル等の炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキルビニルエーテル;シクロペンチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、シクロへプチルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル等の炭素数5〜10の単環のシクロアルキルビニルエーテルが好ましい。
【0043】
また、上記式(3)中、R
3で示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基としては、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、トリメチレン(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)等の、直鎖のアルキレン基;エチリデン[−CH(CH
3)−]、プロピレン[−CH(CH
3)CH
2−]、プロピリデン[−CH(CH
3CH
2)−]、イソプロピリデン[−C(CH
3)
2−]、等の分岐鎖のアルキレン基等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等の直鎖アルキレン基、プロピレン、プロピリデン等の分岐鎖アルキレン基が好ましく、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、プロピリデンが特に好ましい。また、R
3は1種であっても2種以上であってもよい。
【0045】
上記式(3)における(R
3O)で表される基の平均付加モル数mは1〜5の範囲であり、より好ましくは1〜4の範囲であり、更に好ましくは1〜3の範囲である。
【0046】
上記式(3)で示されるビニルエーテルとしては、具体的には、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、3−メトキシプロピルビニルエーテル、3−エトキシプロピルビニルエーテル、3−エトキシブチルビニルエーテル、メチルジエチレングリコールビニルエーテル、エチルジエチレングリコールビニルエーテル、メチルトリエチレングリコールビニルエーテル、メチルテトラエチレングリコールビニルエーテル、メチルペンタエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテルはいずれも親水性であり、ヒドロキシル基を含むビニルエーテルと野ラジカル重合反応においていずれも好適な反応性を示すが、モノマーの入手容易性の点で、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、メチルジエチレングリコールビニルエーテル、エチルジエチレングリコールビニルエーテル、メチルトリエチレングリコールビニルエーテル等をより好適に用いることができる。
【0047】
式(1)で示されるヒドロキシル基含有ビニルエーテルと、式(2)又は(3)で示されるビニルエーテルとを共重合させる場合、用いるモノマーの種類及び組成比は得られるビニルエーテル共重合体に求められる種々の特性に応じて適宜選択することができる。本発明による製造方法においては、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル(2種以上のヒドロキシル基含有ビニルエーテルを用いる場合はその総量)の組成比を全モノマーに対して10〜99mol%の広い範囲から選択することが可能である。なお、ラジカル反応性の観点から、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル(2種以上のヒドロキシル基含有ビニルエーテルを用いる場合はその総量)の比率は、全モノマーに対して10〜99mol%の範囲が好ましく、15〜99mol%の範囲がより好ましく、20〜99mol%の範囲が特に好ましい。ヒドロキシル基含有ビニルエーテルの比率が10mol%以上であれば、十分なラジカル重合性が得られ、高分子量化を図ることができる。
【0048】
ビニルエーテル(共)重合体
本発明による製造方法によれば、従来の知見に反し、ラジカル重合により高分子量のビニルエーテル(共)重合体を得ることが可能である。得られるビニルエーテル(共)重合体は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1000〜100000の範囲内であり、より好ましくは3000〜50000の範囲内であり、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。また、得られるビニルエーテル(共)重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.0〜5.0の範囲内であり、より好ましくは1.0〜4.0の範囲内であり、さらに好ましくは1.2〜3.0の範囲内である。
【0049】
本発明による製造方法において、重合反応における重合率(即ち、モノマーの転化率)は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。単量体成分に複数のモノマーが含まれる場合、各モノマーの転化率が全て上記範囲内であることが好ましい。
【0050】
本発明による製造方法によれば、ポリアセタールの生成を抑制することができる。例えば、生成される(共)重合体中のポリアセタールの含有率は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。さらに、(共)重合体は、ポリアセタールを実質的に含まないことが好ましい。
【0051】
油溶性ラジカル重合開始剤
油溶性ラジカル重合開始剤は、油溶性であり、ラジカル重合を開始させるためのラジカル重合開始剤あれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。上記油溶性ラジカル重合開始剤は、水に不溶性又は難溶性(23℃における水への溶解度が10質量%以下、好ましくは5質量%以下)であることが好ましい。油溶性ラジカル重合開始剤としては、特に有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
【0052】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類が挙げられる。
【0053】
有機アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾニトリル化合物;ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾエステル化合物;2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシルエチル]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾアミド化合物;2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0054】
これらの油溶性ラジカル重合開始剤の中でも、分子量再現性の点で有機アゾ系化合物が好ましく、副反応抑制の点でアゾニトリル化合物及びアゾエステル化合物がより好ましく、ポリマー中に有害なシアノが取り込まれない点でアゾエステル化合物が特に好ましい。
【0055】
油溶性ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であればラジカル重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。重合開始剤は1種のみ、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
油溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、反応温度や各モノマーの組成比によって異なるため一概に限定することはできないが、ラジカル重合性のモノマー総量100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、1.0〜5質量部が特に好ましい。油溶性ラジカル重合開始剤の添加量が0.1質量部以上であれば、重合反応を十分に進行させることができ、10質量部以下であれば、生成される重合体の分子量の低下を防止することができ、また、コストも削減できる。
【0057】
重合溶媒
本発明による製造方法において、重合反応は無溶媒で行ってもよいし、基質と反応せずかつ、モノマーと水素結合を形成し、連鎖移動定数の小さい溶媒を使用してよい。当該溶媒としては、水又は水可溶性有機溶剤を用いることができ、特に疎水性モノマーとの共重合を行う場合は、水可溶性有機溶剤を用いることが好ましい。水可溶性有機溶剤としては、アルコール、アルキルアミド、アルキルスルホキシド、ケトン等を好適に用いることができる。
【0058】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類を挙げることができる。
【0059】
アルキルアミドとしては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。アルキルスルホキシドとしてはジメチルスルホキシドが挙げられる。ケトンとしてはアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
これらの中でも、製造時における作業性及びラジカル重合性の観点からモノアルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0061】
重合溶媒を使用する場合、その使用量は10〜80質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲が特に好ましい。重合溶剤の比率が80質量%以下であれば、十分なラジカル重合性が得られ、重合速度の低下を防止し、生成される重合体の分子量の低下を防止することができる。
【0062】
重合工程
本発明による製造方法において、重合工程の反応温度(重合温度)は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、段階的に温度を変えて反応(重合)させてもよい。一般的には50〜180℃の範囲が好ましく、60〜170℃が特に好ましい。反応温度が50℃以上であれば、反応の低下を防止し、180℃以下であれば、油溶性ラジカル重合開始剤の分解を防止し、かつ連鎖移動の上昇に起因する生成される重合体の分子量の低下を防止することができる。
【0063】
重合方法は特に制限されないが、例えば、予め反応器にモノマーと重合開始剤と、必要に応じて重合溶媒とを仕込んでおき、昇温することによって重合を開始させることができる。また、加熱したモノマー又はモノマー溶液に、重合開始剤を添加して重合を開始してもよい。重合開始剤の添加は逐次添加でも一括添加でもよい。また、これらを組み合わせて、予め重合開始剤の一部を反応器に仕込んでおき、その後残部を反応系に逐次添加してもよい。逐次添加の場合、操作は煩雑になるが重合反応を制御しやすい。
【0064】
更に、発熱による温度上昇が懸念される場合や、複数のモノマーの反応速度が大きく異なる場合は、モノマー又はモノマー溶液を分割して、又は連続的に添加してもよい。この場合、モノマー又はモノマー溶液の一部を反応器に添加した時点で反応温度まで昇温し、その後残部を分割して、又は連続的に添加してもよいし、反応器に予め溶媒を仕込んでおき、加熱された溶媒中にモノマー又はモノマー溶液を分割して、又は連続的に添加してもよい。また、重合開始剤は予め反応器に仕込んでおいてもよいし、単量体と合わせて、又は別々に系内に添加してもよいし、予め重合開始剤の一部を反応器に仕込んでおき、その後残部を反応系に逐次添加してもよい。このような方法は、発熱による温度上昇を抑制できるので、重合反応を制御しやすい。
【0065】
重合反応の進行状態は、発熱状態又は残存単量体量の測定などで追跡することが出来る。単量体の残存量が多い場合は、反応熟成後、更に重合開始剤を添加して残存量を減らすことができる。
【0066】
反応終了後、生成されるヒドロキシル基含有ビニルエーテルのホモポリマー又は共重合体は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿など)により後処理されて単離される。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0068】
実施例において得られたホモポリマー及び共重合体の物性評価は以下の方法により行った。
1)ホモポリマーの構造分析、重合率、及び共重合体の組成分析は、
1H NMR又は
13C NMRを用いて行った。
(1)
1H NMR:JMN AL−300(JEOL(株)製)を用い、サンプルを重水又は重クロロホルムに溶解して測定した。
(2)
13C NMR:JMN LA−500(JEOL(株)製)を用い、サンプルを重メタノールに溶解して測定した。
【0069】
2)ホモポリマー及び共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の分析は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行った。
条件1(ホモポリマー及びHBVE/HEVE共重合体)
カラム:TSKgelカラムG−MHHR−M×2(東ソー(株)製)
又は、Shodex GPC KD804×3(昭和電工(株)製)
溶媒:ジメチルホルムアミド(10mmоl/L臭化リチウム含有)
測定温度:40℃
流速:1.0ml/分
検量線:標準ポリスチレンスタンダード
【0070】
条件2(その他の共重合体)
カラム:Shodex GPC LF804×3(昭和電工(株)製)
溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:1.0ml/分
検量線:標準ポリスチレンスタンダード
【0071】
実施例1:ポリヒドロキシエチルビニルエーテルの製造(バルク重合、油溶性ラジカル重合開始剤AIBN)
試験管に、撹拌子と、ヒドロキシエチルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「HEVE」と記載する)5.40g(61.4mmol)と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製「V−60」、以下、「AIBN」と記載する)0.020g(0.12mmol、モノマーに対して0.2mol%)とを加え、ゴム製のセプタムキャップで蓋をした。撹拌しながらセプタムキャップ上部より注射針2本を指し、その1本から乾燥窒素を吹き込み、攪拌させながら20分間バブリングさせた。その後、注射針を抜き、70℃に予め加熱しておいたオイル恒温槽に試験管をつけ、16時間撹拌しながら加熱し、重合した。重合終了後、セプタムキャップを外し、氷水で重合容器を冷却し、重合を停止し、ポリヒドロキシエチルビニルエーテル(以下、「PHEVE」と記載する)を得た。得られたPHEVEは、分子量分画1000ダルトンの透析膜によって純水を用いて透析し、無色透明の液状ポリマーを得た。HEVEの重合率(即ち、モノマーの転化率)は37%であり、Mw=31600、Mw/Mn=2.82であった。
【0072】
<リビングカチオン重合法によるPHEVEとの比較>
非特許文献1に従って、リビングカチオン重合法によりポリ(2−(tert−ブチルジメチルシリロキシ))エチルビニルエーテルを脱シリル化してPHEVEを合成した。このリビングカチオン重合法によって得られたPHEVE及び実施例1により合成したPHEVE構造を
1H NMRの分析結果で比較したところ、同じ場所にピークが見られた。このことから実施例1においてもPHEVEが生成されることを確認した。
【0073】
更に、
13C NMR測定によりリビングカチオン重合法によって得られたPHEVEと、実施例1で得たPHEVEの微細構造(立体規則性)を測定した。非特許文献1のリビングカチオン重合法で合成されるPHEVEでは、主鎖メチレン基に由来するシグナルから得たメソ及びラセモの比が、メソ:ラセモ=67:33であるのに対し、実施例1で得られたPHEVEでは、メソ:ラセモ=51:49であり、本発明によって得られるPHEVEの微細構造は、リビングカチオン法により得られるPHEVEとは異なる(即ち、重合様式が異なる)ことが確認された。
【0074】
実施例2:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(1)(バルク重合、油溶性ラジカル重合開始剤AIBN)
試験管に、撹拌子と、ヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「HBVE」と記載する)7.10g(61.2mmol)と、「AIBN」0.020g(0.12mmol、モノマーに対して0.2mol%)とを加え、ゴム製のセプタムキャップで蓋をした。撹拌しながらセプタムキャップ上部より注射針2本を指し、その1本から乾燥窒素を吹き込み、攪拌させながら20分間バブリングさせた。その後、注射針を抜き、70℃に予め加熱しておいたオイル恒温槽に試験管をつけ、48時間撹拌しながら加熱し、重合した。重合終了後、セプタムキャップを外し、氷水で重合容器を冷却し、重合を停止し、ポリヒドロキシブチルビニルエーテル(以下、「PHBVE」と記載する)を得た。得られたPHBVEは、分子量分画1000ダルトンの透析膜によって純水を用いて透析し、無色透明の液状ポリマーを得た。HBVEの重合率(即ち、モノマーの転化率)は33%であり、Mw=23200、Mw/Mn=1.66であった。
【0075】
<リビングカチオン重合法によるPHBVEとの比較>
非特許文献1に従って、リビングカチオン重合法によりポリ(4−(tert−ブチルジメチルシリロキシ))ブチルビニルエーテルを脱シリル化してPHBVEを合成した。このリビングカチオン重合法によって得られたPHBVE及び実施例1により合成したPHBVE構造を
1H NMRの分析結果で比較したところ、同じ場所にピークが見られた。このことから実施例2においてもPHBVEが生成されることを確認した。
【0076】
実施例3:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(2)(バルク重合、AIBN量変更)
AIBNの量を0.20g(1.2mmol、モノマーに対して2mol%)とした以外は実施例2と同様にしてPHBVEを合成した。HBVEの重合率は65%であり、Mw=5400、Mw/Mn=1.81であった。
【0077】
実施例4:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(3)(溶媒水、油溶性ラジカル重合開始剤AIBN)
HBVEと同量(質量比)の水を加えた以外は実施例2と同様にしてPHBVEを合成した。HBVEの重合率は37%であり、Mw=29400、Mw/Mn=1.73であった。
【0078】
実施例5:HEVE/HBVE共重合体の製造
HEVEとHBVEの両モノマーをモル比で0:100、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、40:60となるように調整し、実施例1と同様の方法により、AIBN(モノマーの総量に対して0.2mol%)によるラジカルバルク重合を行った。重合物の組成を
1H NMR測定により求めたところ、いずれの場合もHBVEとHEVEが仕込み比とほぼ同じ割合で導入されていることから、HBVEとHEVEの反応性はほぼ等しく、ランダム共重合体が得られていることが確認された。
【0079】
<HEVE/HBVEランダム共重合体の曇点測定>
得られた重合体を水に溶解させ、1.0質量%とした後、その水溶液温度を10℃から90℃まで(昇温)又はその水溶液温度を90℃から10℃まで(降温)変化させ、曇点を測定した。 結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示されるように、HBVEホモポリマー及びHEVE/HBVEランダム共重合体は、いずれも、特定の温度において親水性及び疎水性が可逆的に変化する熱刺激応答性ポリマーであることがわかる。また、応答温度は、共重合体の組成比を変えることで任意に制御することが可能である。
【0082】
実施例6:ポリジエチレングリコールモノビニルエーテルの製造
モノマーをジエチレングリコールモノビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「DEGVE」と記載する)8.10gとした以外は実施例2と同様の操作により、ポリジエチレングリコールモノビニルエーテルを得た。DEGVEの重合率は39%であり、Mw=85000、Mw/Mn=3.13であった。
【0083】
比較例1:水溶性アゾ開始剤によるPHBVEの製造(1)(バルク重合、水溶性ラジカル重合開始剤V−501)
重合開始剤を4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬工業(株)製「V−501」)0.034g(0.12mmol、モノマーに対して0.2mol%)とした以外は実施例2と同様の操作により重合を行った。得られたポリマーは約40質量%のポリアセタールを含むPHBVEであり、PHBVEとポリアセタールの混合物の重合率は48%、Mw=29500、Mw/Mn=1.64であった。
【0084】
比較例2:水溶性アゾ開始剤によるPHBVEの製造(2)(バルク重合、水溶性ラジカル重合開始剤VA−044)
重合開始剤を、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業(株)製「VA−044」)0.040g(0.12mmol、モノマーに対して0.2mol%)とした以外は実施例2と同様の操作により重合を行ったが、PHBVEは得られず、選択的にポリアセタールが得られた。その重合率は100%で、Mw=3500、Mw/Mnは=1.66であった。
【0085】
実施例7:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(4)(バルク重合、油溶性ラジカル重合開始剤V−601)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE91.42g(787.0mmol)と、重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業(株)製「V−601」)1.8034g(7.84mmol、モノマーに対して1mol%)とを加えて、70℃で8時間重合を行った。減圧乾燥により残存モノマーの除去を行い、PHBVEを得た(HBVE転化率77.5%、Mw=78000、Mw/Mn=1.59)。
【0086】
実施例8:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(5)(バルク重合、油溶性ラジカル重合開始剤V−59)
重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製「V−59」)に変更した以外は実施例7と同様の操作により、PHBVEを得た(HBVE転化率35.0%、Mw=75000、Mw/Mn=1.52)。
【0087】
実施例9:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE68.25g(587.6mmol)と、メタノール17.82gとを加えて加熱し、内温が70℃に達してから「V−601」1.3393g(5.82mmol、モノマーに対して1mol%)をメタノール11.91gに溶かした溶液を1時間かけて滴下し、70℃で8時間撹拌した。メタノールを70.58g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン168.8gで3回抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去してPHBVEを得た(HBVE転化率56.7%、Mw=43000、Mw/Mn=1.35)。
【0088】
実施例10:ポリヒドロキシブチルビニルエーテルの製造(6)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
「V−601」の比率をモノマーに対して5mol%に変更した以外は実施例9と同様の操作により、PHBVEを得た(HBVE転化率91.6%、Mw=42000、Mw/Mn=1.24)。
【0089】
実施例11:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(1)(HBVE/IBVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE35.53g(305.9mmol)と、イソブチルビニルエーテル(東京化成工業(株)製、以下、「IBVE」と記載する)29.42g(293.6mmol)と、メタノール26.16gと、「V−601」1.3801g(6.00mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、還流状態で8時間撹拌した。メタノールを69.89g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン65gで3回抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去して、無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=7500、Mw/Mn=1.56、組成比HBVE/IBVE=48.5/51.5であった(HBVE転化率37.8%、IBVE転化率40.1%)。
【0090】
実施例12:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(2)(IBVE/IBVE=7/3)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
HBVEとIBVEの比率を7/3(モル比)に変更した以外は実施例11と同様の操作により、無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=8900、Mw/Mn=1.59、組成比HBVE/IBVE=64.1/35.9であった(HBVE転化率50.4%、IBVE転化率65.9%)。
【0091】
実施例13:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(3)(HBVE/IBVE=3/7)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE21.79g(187.6mmol)と、IBVE43.11g(430.2mmol)と、メタノール21.16gと、「V−601」7.0961g(30.84mol、モノマーに対して5mol%)とを加え、還流状態で8時間撹拌した。減圧乾燥を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行い、淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=5200、Mw/Mn=1.64、組成比HBVE/IBVE=27.7/72.3であった(HBVE転化率53.0%、IBVE転化率59.2%)。
【0092】
実施例14:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(4)(HBVE/IBVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE35.16g(302.7mmol)と、IBVE30.36g(303.0mmol)と、メタノール21.40gと、「V−601」7.0162(30.49mmol、モノマーに対して5mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを69.33g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン130g中に重合液を滴下して30分間撹拌した。撹拌を停止し上澄みを留去した後に、ヘキサン130gを添加し30分間撹拌した。同様の操作を2回繰り返した後、減圧下で溶剤を除去して、淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=5600、Mw/Mn=1.62、組成比HBVE/IBVE=45.4/54.6であった(HBVE転化率66.3%、IBVE転化率79.6%)。
【0093】
実施例15:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(5)(HBVE/IBVE=5/5)(溶媒イソプロパノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE35.27g(303.6mmol)と、IBVE29.64g(295.8mmol)と、イソプロパノール26.50gと、「V−601」1.3868g(6.03mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。その後、減圧下で溶剤、残存モノマー、重合開始剤残渣を除去して無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=5700、Mw/Mn=1.67、組成比HBVE/IBVE=51.8/48.2であった(HBVE転化率66.9%、IBVE転化率62.3%)。
【0094】
実施例16:ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(6)(HBVE/IBVE=5/5)(溶媒DMF、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE36.25g(312.1mmol)と、IBVE30.60g(305.4mmol)と、ジメチルホルムアミド28.13gと、「V−601」1.4356g(6.24mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、70℃で8時間重合を行った。得られたポリマーは、Mw=5800、Mw/Mn=1.59、組成比HBVE/IBVE=51.1/48.9であった(HBVE転化率52.6%、IBVE転化率50.4%)。
【0095】
実施例17:ヒドロキシエチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(1)(HEVE/IBVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、ヒドロキシエチルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「HBVE」と記載する)30.13g(342.0mmol)と、IBVE34.23g(342.0mmol)と、メタノール26.15gと、「V−601」1.6073g(6.98mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、還流条件で8時間撹拌した。内容物を室温まで冷却し、ヘキサン64gで抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去して、無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーはMw=8700、Mw/Mn=1.68、組成比HEVE/IBVE=47.5/52.5であった(HEVE転化率59.7%、IBVE転化率66.0%)。
【0096】
実施例18:ヒドロキシエチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル共重合体の製造(2)(HEVE/IBVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HEVE30.71g(348.5mmol)と、IBVE34.82g(347.5mmol)と、メタノール20.85gと、「V−601」8.0746(35.09mmol、モノマーに対して5mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを70.14g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン130g中に重合液を滴下して30分間撹拌した。撹拌を停止し上澄みを留去した後に、ヘキサン130gを添加し30分間撹拌した。減圧下で溶剤を除去して、淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=5900、Mw/Mn=1.66、組成比HEVE/IBVE=49.8/50.2であった(HEVE転化率82.2%、IBVE転化率83.0%)。
【0097】
実施例19:ヒドロキシブチルビニルエーテル/2−エチルヘキシルビニルエーテル共重合体の製造(HBVE/EHVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE28.00g(241.0mmol)と、2−エチルヘキシルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「EHVE」と記載する)37.57g(240.0mmol)と、メタノール22.88gと、「V−601」5.5780(24.24mmol、モノマーに対して5mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを69.86g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン130g中に重合液を滴下して30分間撹拌した。撹拌を停止し上澄みを留去した後に、減圧下で溶剤を除去して淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=4800、Mw/Mn=1.53、組成比HBVE/EHVE=54.1/45.9であった(HBVE転化率78.8%、EHVE転化率66.8%)。
【0098】
実施例20:ヒドロキシブチルビニルエーテル/シクロへキシルビニルエーテル共重合体の製造(HBVE/CHVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE31.75g(273.3mmol)と、シクロヘキシルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「CHVE」と記載する)34.50g(273.4mmol)と、メタノール27.45gと、「V−601」1.2716g(5.53mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを70.65g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン65gで3回抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去して淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=3700、Mw/Mn=1.55、組成比HBVE/CHVE=44.0/56.0であった(HBVE転化率35.4%、CHVE転化率45.0%)。
【0099】
実施例21:ヒドロキシブチルビニルエーテル/2−(2−(2−エトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル共重合体の製造(HBVE/EOEOVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE28.92g(249.0mmol)と、2−(2−(2−エトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「EOEOVE」と記載する)38.8g(241.0mmol)と、メタノール27.63gと、「V−601」1.1340g(4.93mmol、モノマーに対して1mol%) とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを73.35g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン93gで3回抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去して無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=8300、Mw/Mn=1.78、組成比HBVE/EOEOVE=47.5/52.4であった(HBVE転化率49.2%、EOEOVE転化率54.3%)。
【0100】
実施例22:ヒドロキシブチルビニルエーテル/メチルトリエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(1)(HBVE/TEGMeVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤1mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE26.13g(224.9mmol)と、メチルトリエチレングリコールビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「TEGMeVE」と記載する)41.30g(217.4mmol)と、メタノール28.25gと、「V−601」1.0360g(4.50mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを74.81g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン67gで3回抽出を行い、残存モノマーと重合開始剤残渣の除去を行った。その後、減圧下で溶剤を除去して無色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=8600、Mw/Mn=1.66、組成比HBVE/TEGMeVE=52.0/48.0であった(HBVE転化率59.1%、TEGMeVE転化率54.6%)。
【0101】
実施例23:ヒドロキシブチルビニルエーテル/メチルトリエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(2)(HBVE/TEGMeVE=5/5)(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、HBVE26.26g(226.1mmol)と、TEGMeVE42.80g(225.3mmol)と、メタノール24.29gと、「V−601」5.2189(22.68mmol、モノマーに対して5mol%)とを加え、70℃で8時間撹拌した。メタノールを73.90g加え内容物を室温まで冷却し、ヘキサン138g中に重合液を滴下して30分間撹拌した。撹拌を停止し上澄みを留去した後に、ヘキサン138gを添加し30分間撹拌した。同様の操作を2回繰り返した後、減圧下で溶剤を除去して、淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mw=5700、Mw/Mn=1.77、組成比HBVE/TEGMeVE=50.8/49.2であった(HBVE転化率81.3%、TEGMeVE転化率78.8%)。
【0102】
比較例3:ポリイソブチルビニルエーテルの製造(溶媒メタノール、油溶性ラジカル重合開始剤5mol%)
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、容器内に、IBVE62.06g(619.4mmol)と、メタノール26.03gと、「V−601」1.4436g(6.27mmol、モノマーに対して1mol%)とを加え、還流条件で8時間重合した。次いで、減圧下で溶媒を留去して、淡黄色透明の液状ポリマーを得た。得られたポリマーは、IBVE転化率7.0%、Mw=7490、Mw/Mn=1.56であった。
【0103】
比較例1及び2に示されるように、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を用いた場合は、ポリアセタールが生成して効率よくポリビニルエーテルを得ることができない。
【0104】
また、比較例3において示されるように、ヒドロキシブチルビニルエーテルやヒドロキシエチルビニルエーテルなどのヒドロキシル基を含有するビニルエーテルを用いないでビニルエーテルのラジカル重合を行った場合は、重合率(モノマー転化率)が非常に低く、工業的な生産性が低い。
【0105】
これに対し、本発明による製造方法は、ヒドロキシル基含有ビニルエーテルを必須の単量体成分とし、かつ油溶性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合を行うことにより、ポリアセタールの生成を抑制し、ヒドロキシル基を導入したビニルエーテルのホモポリマー又はランダム共重合体を高い転化率で効率よく製造することができる。