【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
疎水性物質の分散剤として使用される反応性界面活性剤であって、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする反応性界面活性剤である。
【0010】
【化1】
式(1)中、Xはラジカル重合性反応基、R
1は炭素数3〜20の直鎖アルキル基、Yは分子量1000以下
であり、かつ、糖類骨格を有するノニオン性親水性基を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明の反応性界面活性剤において、Xで表されるラジカル重合性反応基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル基及びビニルエーテル基等のラジカル重合性の高い官能基がより好ましい。
【0012】
上記Xで表されるラジカル重合性反応基としては、下記式(2)〜(6)で表されるラジカル重合性反応基の何れかを用いることが好ましい。
これらの重合性反応基は、反応ラジカルの共鳴安定化に関する値(Q値)が比較的に大きい上に、ビニル基に結合している置換基の立体障害が大きくないため、重合反応が容易に進むという利点がある。
【0013】
【化2】
式(2)〜(6)中、R
2は水素原子又はメチル基を示す。
【0014】
本発明の反応性界面活性剤において、R
1はとしては、炭素数3〜20の直鎖アルキル基を用いる。
上記炭素数が3未満であると、疎水性が低下して、疎水性物質への吸着性に劣るものとなり、上記炭素数が20を超えると、重合性反応基がアルキル鎖中に埋没してしまい、重合反応性が低下する。好ましくは炭素数4〜12である。
【0015】
また、上記R
1はとしては、直鎖アルキル基を用いる。分岐鎖状のアルキル基を用いた場合、重合反応性基の立体障害となって反応性が低下するだけでなく、疎水性物質上に配向を持って吸着するのが困難となり、界面活性剤の吸着密度が低下して、分散安定化効果が低下する。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、 ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が好ましい。なかでも、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ウンデシル基がより好ましい。
【0016】
本発明の反応性界面活性剤では、Yとして分子量1000以下のノニオン性親水性基を用いる。
ノニオン性を有することで、pHや塩濃度の変化によって親水性が変化しにくく、安定して分散安定性を発現することができるという利点がある。
【0017】
上記ノニオン性親水性基の分子量の上限は1000である。分子量1000を超えると、親水性/疎水性のバランスが悪くなり、界面活性能力が低下する。好ましい上限は600である。なお、下限については特に限定されないが、100以上が好ましい。
【0018】
上記Yとしては、糖類骨格を有するものが好ましい。これらの骨格を有する分子は親水性ユニットに多くの水酸基を導入できるため、ノニオン性であるにもかかわらず界面活性能力が高い。
界面活性剤の品質を一定に保つためには、糖類の中でもアルドヘキソースおよびケトヘキソースといった6員環からなる単糖類の骨格を有することが好ましく、グルコース誘導体骨格を有することが更に好ましい。グルコース誘導体骨格としては、例えばグルコノラクトン骨格およびグルコサミン骨格が挙げられる。
【0019】
上記グルコノラクトン骨格とは、基材にグルコノラクトン(D−(+)−グルコン酸−δ−ラクトン)を化学反応させて得られた分子構造を有するものをいう。
上記グルコノラクトン骨格としては、例えば、下記式(7)に示す構造等が挙げられる。
【0020】
【化3】
【0021】
また、上記グルコサミン骨格とは、基材にグルコサミンを化学反応させて得られた分子構造を有するものをいう。上記グルコサミン骨格としては、例えば、下記式(8)に示す構造等が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
本発明の反応性界面活性剤は、従来、反応性界面活性剤が用いられてきた用途、即ち、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤等以外にも、疎水性物質の表面改質剤等に使用することができる。特に、カーボンナノチューブ等の疎水性物質の分散剤として好適に使用することができる。
【0024】
本発明の反応性界面活性剤を疎水性物質の分散剤として使用する場合は、疎水性物質の種類にもよるが、該疎水性物質に対して、好ましくは1〜30重量%使用することが好ましい。
【0025】
本発明の反応性界面活性剤を疎水性物質の分散剤として使用する場合は、反応性界面活性剤と疎水性物質を混合した後に、反応性界面活性剤を反応させるプロセスを付与することが好ましい。
また、反応性界面活性剤を重合反応させる際には、別途重合開始剤、あるいは反応性界面活性剤と共重合可能なモノマーが添加されても良い。上記反応性界面活性剤と共重合可能なモノマーとしては、架橋性の多官能性モノマーが好ましい。
架橋性の多官能性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば以下に示すようなジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジアリル化合物、トリアリル化合物、ジビニル化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
上記トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。