特許第5936187号(P5936187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936187
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】反応性界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/56 20060101AFI20160602BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20160602BHJP
   B01F 17/42 20060101ALI20160602BHJP
   B01F 17/22 20060101ALI20160602BHJP
   B01F 17/34 20060101ALI20160602BHJP
   C08F 2/44 20060101ALN20160602BHJP
   C08F 292/00 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   B01F17/56
   C08F2/16
   B01F17/42
   B01F17/22
   B01F17/34
   !C08F2/44 A
   !C08F292/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-82608(P2012-82608)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-212431(P2013-212431A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達生
(72)【発明者】
【氏名】宝得 一貴
(72)【発明者】
【氏名】大村 貴宏
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−230973(JP,A)
【文献】 特開2003−268021(JP,A)
【文献】 特開平06−041176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17
C08F 2
C08F 292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性物質の分散剤として使用される反応性界面活性剤であって、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする反応性界面活性剤。
【化1】
式(1)中、Xはラジカル重合性反応基、Rは炭素数3〜20の直鎖アルキル基、Yは分子量1000以下であり、かつ、糖類骨格を有するノニオン性親水性基を表す。
【請求項2】
式(1)中のXは、下記式(2)〜(6)で表されるラジカル重合性反応基の何れかであることを特徴とする請求項1記載の反応性界面活性剤。
【化2】
式(2)〜(6)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【請求項3】
式(1)中のYは、6員環からなる単糖類の骨格を有すること特徴とする請求項1又は2記載の反応性界面活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に疎水性物質の乳化分散に使用する場合に、余分な界面活性剤の遊離を防止しつつ、充分な乳化分散を可能とした反応性界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、例えば、塗料、印刷インキ、接着剤等ではその製品の製造時、或いは製品の安定化、更には作業性等の点で欠かすことができない成分として製品中に含有されている。
また、界面活性剤は、乳化重合によってポリマーを製造する際に使用される乳化重合用乳化剤としても用いられ、重合の開始反応や成長反応に関与するだけでなく、生成したエマルジョンの機械安定性、化学的安定性、凍結安定性及び貯蔵安定性等にも関与し、更にエマルジョンの粒子径、粘性及び起泡性等のエマルジョン物性、フィルム化した時の耐水性、耐候性、接着性、耐熱性等のフィルム物性にも大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
しかしながら、上記のように界面活性剤を乳化剤として使用した場合、乳化重合法により製造した樹脂エマルジョン中に、界面活性剤が遊離した状態で存在するため、エマルジョンの泡立ち、樹脂の耐水性、接着性等に悪影響を及ぼすことが、問題点として指摘されている。
【0004】
このような問題点を改善すべく、従来の界面活性剤が有する疎水基と親水基とに加え、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性界面活性剤が開発されている。このような反応性界面活性剤は、乳化重合の際に生成ポリマー鎖中に共重合するため、遊離した状態の界面活性剤による物性低下を防ぐことが出来る。
例えば、特許文献1には、ジオキソラン環と、共重合性の不飽和基を合わせ持つ化合物からなる新規な反応性乳化剤が開示されており、特許文献2には、疎水基として分岐の脂肪族炭化水素基を有する反応性界面活性剤が開示されている。
【0005】
一方で、近年は反応性界面活性剤を疎水性物質等の分散に使用することが行われているが、上述のような主に重合乳化剤に使用される反応性界面活性剤は、エマルジョンとの吸着性は充分であるが、疎水性物質の分散に使用する場合は、疎水性物質への吸着性が不充分であるため、好適な分散性を確保できないという問題があった。
【0006】
また、乳化重合用乳化剤だけでなく、樹脂改質剤等にも使用される反応性界面活性剤として、特許文献3に疎水基としてフッ素原子を有する炭化水素基を有する反応性界面活性剤が開示されている。このような反応性界面活性剤は、従来よりも疎水性の強い分子鎖を有するので、疎水性物質への物理的吸着性は多少改善されるものの、化学結合に由来する疎水性物質表面への固定化が不充分であるため、界面活性剤の遊離防止効果についても満足な結果が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−136205号公報
【特許文献2】特開2002−265505号公報
【特許文献3】特開2008−24942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特に疎水性物質の分散に使用する場合に、余分な界面活性剤の遊離を防止しつつ、充分な乳化分散を可能とした反応性界面活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、疎水性物質の分散剤として使用される反応性界面活性剤であって、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする反応性界面活性剤である。
【0010】
【化1】
式(1)中、Xはラジカル重合性反応基、Rは炭素数3〜20の直鎖アルキル基、Yは分子量1000以下であり、かつ、糖類骨格を有するノニオン性親水性基を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明の反応性界面活性剤において、Xで表されるラジカル重合性反応基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル基及びビニルエーテル基等のラジカル重合性の高い官能基がより好ましい。
【0012】
上記Xで表されるラジカル重合性反応基としては、下記式(2)〜(6)で表されるラジカル重合性反応基の何れかを用いることが好ましい。
これらの重合性反応基は、反応ラジカルの共鳴安定化に関する値(Q値)が比較的に大きい上に、ビニル基に結合している置換基の立体障害が大きくないため、重合反応が容易に進むという利点がある。
【0013】
【化2】
式(2)〜(6)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0014】
本発明の反応性界面活性剤において、Rはとしては、炭素数3〜20の直鎖アルキル基を用いる。
上記炭素数が3未満であると、疎水性が低下して、疎水性物質への吸着性に劣るものとなり、上記炭素数が20を超えると、重合性反応基がアルキル鎖中に埋没してしまい、重合反応性が低下する。好ましくは炭素数4〜12である。
【0015】
また、上記Rはとしては、直鎖アルキル基を用いる。分岐鎖状のアルキル基を用いた場合、重合反応性基の立体障害となって反応性が低下するだけでなく、疎水性物質上に配向を持って吸着するのが困難となり、界面活性剤の吸着密度が低下して、分散安定化効果が低下する。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、 ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が好ましい。なかでも、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ウンデシル基がより好ましい。
【0016】
本発明の反応性界面活性剤では、Yとして分子量1000以下のノニオン性親水性基を用いる。
ノニオン性を有することで、pHや塩濃度の変化によって親水性が変化しにくく、安定して分散安定性を発現することができるという利点がある。
【0017】
上記ノニオン性親水性基の分子量の上限は1000である。分子量1000を超えると、親水性/疎水性のバランスが悪くなり、界面活性能力が低下する。好ましい上限は600である。なお、下限については特に限定されないが、100以上が好ましい。
【0018】
上記Yとしては、糖類骨格を有するものが好ましい。これらの骨格を有する分子は親水性ユニットに多くの水酸基を導入できるため、ノニオン性であるにもかかわらず界面活性能力が高い。
界面活性剤の品質を一定に保つためには、糖類の中でもアルドヘキソースおよびケトヘキソースといった6員環からなる単糖類の骨格を有することが好ましく、グルコース誘導体骨格を有することが更に好ましい。グルコース誘導体骨格としては、例えばグルコノラクトン骨格およびグルコサミン骨格が挙げられる。
【0019】
上記グルコノラクトン骨格とは、基材にグルコノラクトン(D−(+)−グルコン酸−δ−ラクトン)を化学反応させて得られた分子構造を有するものをいう。
上記グルコノラクトン骨格としては、例えば、下記式(7)に示す構造等が挙げられる。
【0020】
【化3】
【0021】
また、上記グルコサミン骨格とは、基材にグルコサミンを化学反応させて得られた分子構造を有するものをいう。上記グルコサミン骨格としては、例えば、下記式(8)に示す構造等が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
本発明の反応性界面活性剤は、従来、反応性界面活性剤が用いられてきた用途、即ち、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤等以外にも、疎水性物質の表面改質剤等に使用することができる。特に、カーボンナノチューブ等の疎水性物質の分散剤として好適に使用することができる。
【0024】
本発明の反応性界面活性剤を疎水性物質の分散剤として使用する場合は、疎水性物質の種類にもよるが、該疎水性物質に対して、好ましくは1〜30重量%使用することが好ましい。
【0025】
本発明の反応性界面活性剤を疎水性物質の分散剤として使用する場合は、反応性界面活性剤と疎水性物質を混合した後に、反応性界面活性剤を反応させるプロセスを付与することが好ましい。
また、反応性界面活性剤を重合反応させる際には、別途重合開始剤、あるいは反応性界面活性剤と共重合可能なモノマーが添加されても良い。上記反応性界面活性剤と共重合可能なモノマーとしては、架橋性の多官能性モノマーが好ましい。
架橋性の多官能性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば以下に示すようなジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジアリル化合物、トリアリル化合物、ジビニル化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
上記トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の反応性界面活性剤によれば、特に疎水性物質の乳化分散に使用する場合に、余分な界面活性剤の遊離を防止しつつ、充分な乳化分散が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0029】
(製造例1)
フラスコ中で6-(tert-Butoxycarbonylamino)-1-hexanol21.7g(0.100mol)を酢酸エチル500mlに加え、攪拌して溶解させた。その後、炭酸ナトリウム15.9g(0.150mol)を加えてしばらく攪拌した。酢酸エチル30mlにメタクリロイルクロリド11.5g(0.110mol)を溶かし、平衡形滴下ロートを用いて上記で作成した溶液に加えた。滴下終了後、2時間攪拌して反応させた。反応終了後、吸引濾過にて固体成分を除去した後、濾液の溶媒をエバポレーターを用いて減圧留去し、反応中間体(a−1)を得た。
上記中間体(a−1)に4N-Hydrogen chloride酢酸エチル溶液(渡辺化学工業社製)625mlを加えて2時間攪拌反応した。反応終了後、炭酸ナトリウム10重量%水溶液によってHClを中和し、分液ロートを用いて有機相を回収した。回収した有機相を、エバポレーターを用いて室温で溶媒を減圧留去し、中間体(a−2)を得た。
フラスコに中間体(a−2)を5.98g(0.0323mol)、D(+)-Glucono-1,5-lactone7.21g(0.0400mol)および重合禁止剤として硝酸ナトリウム1.00gを加え、窒素置換を行った。
置換終了後、エタノール500mlを加え、6時間還流を行った。
反応終了後、吸引濾過にて固体成分を除去した後、濾液をエバポレーターを用いて室温で溶媒を減圧留去した。残渣を1,4-dioxaneに溶解させた。その後吸引濾過を行い、固体成分を除去した後、エバポレーターを用いて溶媒を減圧留去した。これを凍結乾燥にて24時間乾燥させ、反応性界面活性剤(A)8.11g(0.0223mol)を得た。表1に反応性界面活性剤(A)の化学式を示す。
【0030】
(製造例2)
6-(tert-Butoxycarbonylamino)-1-hexanol21.7g(0.100mol)の代わりに4-(tert-Butoxycarbonylamino)-1-butanol18.9g(0.100mol)を用いたこと以外は、製造例1に準じて反応性界面活性剤(B)を合成した。表1に反応性界面活性剤(B)の化学式を示す。
【0031】
(製造例3)
メタクリロイルクロリド11.5g(0.110mol)の代わりにクロロスチレン15.2g(0.110mol)を用いたこと以外は、製造例1に準じて反応性界面活性剤(C)を合成した。表1に反応性界面活性剤(C)の化学式を示す。
【0032】
(製造例4)
メタクリロイルクロリド11.5g(0.110mol)の代わりにクロロアリルベンゼン16.8g(0.110mol)を用いたこと以外は、製造例1に準じて反応性界面活性剤(D)を合成した。表1に反応性界面活性剤(D)の化学式を示す。
【0033】
(製造例5)
フラスコ中で8-Bromo-1-octanol22.7g(0.100mol)を酢酸エチル500mlに加え、攪拌して溶解させた。その後、炭酸ナトリウム15.9g(0.150mol)を加えてしばらく攪拌した。酢酸エチル30mlにメタクリロイルクロリド11.5g(0.110mol)を溶かし、平衡形滴下ロートを用いて上記で作成した溶液に加えた。滴下終了後、2時間攪拌して反応させた。反応終了後、吸引濾過にて固体成分を除去した後、濾液の溶媒をエバポレーターを用いて減圧留去し、反応中間体(e−1)を得た。
フラスコに中間体(e−1)を10.7g(0.0412mol)、グルコサミン8.96g(0.0500mol)および重合禁止剤として硝酸ナトリウム1.00gを加え、窒素置換を行った。
置換終了後、エタノール500mlを加え、6時間80℃にて反応を行った。
反応終了後、吸引濾過にて固体成分を除去した後、濾液をエバポレーターを用いて室温で溶媒を減圧留去した。残渣を1,4-dioxaneに溶解させた。その後吸引濾過を行い、固体成分を除去した後、エバポレーターを用いて溶媒を減圧留去した。これを凍結乾燥にて24時間乾燥させ、反応性界面活性剤(E)11.1g(0.0313mol)を得た。表1に反応性界面活性剤(E)の化学式を示す。
【0034】
(製造例6)
8-Bromo-1-octanol22.7g(0.100mol)の代わりに16-Bromo-1-hexadecanol32.1g(0.100mol)を用いたこと以外は、製造例5に準じて反応性界面活性剤(F)を合成した。表1に反応性界面活性剤(F)の化学式を示す。
【0035】
(製造例7)
8-Bromo-1-octanol22.7g(0.100mol)の代わりに2-Bromo-1-ethanol12.5g(0.100mol)を用いたこと以外は、製造例5に準じて反応性界面活性剤(G)を合成した。表1に反応性界面活性剤(G)の化学式を示す。
【0036】
(製造例8)
グルコサミン8.96g(0.0500mol)の代わりにアミノポリオキシエチレン(分子量約1500、オキシエチレンユニット数=約50)75.0g(0.0500mol)を用いたこと以外は、製造例5に準じて反応性界面活性剤(H)を合成した。表1に反応性界面活性剤(H)の化学式を示す。
【0037】
(製造例9)
1-Bromooctaneを7.70g(0.0400mol)、グルコサミン8.96g(0.0500mol)および重合禁止剤として硝酸ナトリウム1.00gを加え、窒素置換を行った。
置換終了後、エタノール500mlを加え、6時間80℃にて反応を行った。
反応終了後、吸引濾過にて固体成分を除去した後、濾液をエバポレーターを用いて室温で溶媒を減圧留去した。残渣を1,4-dioxaneに溶解させた。その後吸引濾過を行い、固体成分を除去した後、エバポレーターを用いて溶媒を減圧留去した。これを凍結乾燥にて24時間乾燥させ、反応性界面活性剤(I)8.30g(0.0294mol)を得た。表1に反応性界面活性剤(I)の化学式を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例1)
カーボンナノチューブ(アルドリッチ社製)50mgおよび反応性界面活性剤(A)50mM水溶液100mlをフラスコに秤取し、超音波にかけてカーボンナノチューブを水溶液中に分散させた。架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン6.5mg(0.0500mmol)、および重合開始剤として2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(商品名, V-50)8.2mg(0.0500mmol)を加えた後、フラスコ内の窒素置換を行った。70℃にて4時間反応を行い、表面処理したカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0040】
(実施例2)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(B)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0041】
(実施例3)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(C)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0042】
(実施例4)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(D)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0043】
(実施例5)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(E)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0044】
(実施例6)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(F)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0045】
(実施例7)
架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0046】
(比較例1)
カーボンナノチューブ(アルドリッチ社製)50mgおよびポリオキシエチレンドデシルエーテル(第一工業製薬社製、DSK NL−70)50mM水溶液100mlをフラスコに秤取し、超音波にかけてカーボンナノチューブを水溶液中に分散させ、カーボンナノチューブ分散液を得た。
【0047】
(比較例2)
ポリオキシエチレンドデシルエーテル50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(I)50mM水溶液を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0048】
(比較例3)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりにノニオン性反応性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、第一工業製薬社製、アクアロンRN−10)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0049】
(比較例4)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(G)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0050】
(比較例5)
反応性界面活性剤(A)50mM水溶液の代わりに反応性界面活性剤(H)50mM水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0051】
(評価方法)
上記で得られた界面活性剤の性能を以下の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0052】
(洗浄操作による分散安定性評価)
上記で得られたカーボンナノチューブを分散液30ml及びジエチルエーテル30mlをビーカーに秤取し、スターラーにて3分間強く攪拌混合した。その後、10分間静置して完全に二層に分離したのを確認し、上層のジエチルエーテル相を除去した。残ったカーボンナノチューブ分散液に再びジエチルエーテル30mlを加え、同様に洗浄操作を繰り返した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、水相の様子を観察してカーボンナノチューブの分散性を確認した。30分間の静置後、固形の沈降堆積物が目視で確認できたものを「沈殿」、確認できなかったものを「分散」とした。
【0053】
(透析操作による分散安定性評価)
上記で得られたカーボンナノチューブを分散液20mlを前処理済みの透析膜に封入し、イオン交換水中に24時間浸漬させた。透析膜は分画分子量15,000のものを用いた。膜内の様子を観察してカーボンナノチューブの分散性を確認した。30分間の静置後、固形の沈降堆積物が目視で確認できたものを「沈殿」、確認できなかったものを「分散」とした。
【0054】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、特に疎水性物質の乳化分散に使用する場合に、余分な界面活性剤の遊離を防止しつつ、充分な乳化分散を可能とした反応性界面活性剤を提供することができる。