(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動源収容部と、前記駆動源収容部支持フレーム又は前記下部フレームとの間に、前記駆動源収容部を強制的に略水平姿勢に制御する姿勢制御部材が配設されている請求項2記載の傾斜地用作業機械。
前記上部フレームと前記駆動源収容部との間にリンク部材が掛け渡されており、前記上部フレームの略水平姿勢への変位に伴って、前記リンク部材を介して、前記駆動源収容部が前記駆動源収容部支持フレームとの軸支位置を中心として回動して略水平姿勢に変位する構成である請求項2又は3記載の傾斜地用作業機械。
前記走行装置間隔調整手段は、前記一対の走行装置間の間隔が最も狭い状態から、前記一対の走行装置間の間隔を拡張方向に調整すると、少なくとも一方の前記走行装置を、前記間隔が最も狭い状態に比較して、外側方向でかつ傾斜地の斜面上部方向に変位させる手段である請求項5記載の傾斜地用作業機械。
前記走行装置間隔調整手段は、前記フレームと前記各走行装置とを結び、前記間隔を拡張方向に調整するに従って、前記各走行装置側に連結された連結端が斜面上部方向に変位して起立姿勢になっていく連結部材と、前記各走行装置を前記フレームに対して離間方向に押圧可能な押圧部材とを有して構成される請求項5又は6記載の傾斜地用作業機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の作業機械の場合、基本的に作業体が作業する箇所が作業機械に対して傾斜地の下方向に限られるため、掘削効率に優れていても、作業範囲が狭くなる。これに対し、特許文献1及び2に示した作業機械の場合、作業体が走行装置に対して略水平姿勢をとり、しかも360度の水平回転ができるので、作業機械の全周を施工することが可能で作業範囲は広くなるという利点がある。しかし、特許文献1及び2の作業機械の場合は、傾斜地の傾斜角度が大きくなればなるほど、略水平姿勢をとっている作業体の高さ(一端側を中心として他端側が、傾斜している走行装置に対して相対的に上方向に回動しているときの、最も間隔が開いた部位間の距離)が高くなるので、不安定になるという問題がある。作業機械としての安定性を高めるために、牽引力を発揮するワイヤーを略逆ハ字状に張ることも解決策の一つであるが、安定性はより高いことが望ましい。
【0006】
一方、特許文献4の作業機械の場合、作業機械をトラックで施工現場に搬送する際にクローラ幅を狭くしてトラックに積載し、施工時にはクローラ幅を広げて作業時の安定性を高めることができる。しかし、この作業機械では、通常の施工の範囲、すなわち、自走式の作業機械の自走能力(登坂能力)の範囲で使用されることが前提となっており、登坂能力を超える傾斜地においてこのようなクローラ幅を調整することは行われていない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、自走での登坂能力を超えるような傾斜地での施工に用いられる作業機械において、作業時の安定性をより高めることができる傾斜地用作業機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の傾斜地用作業機械は、フレームと、前記フレームに支持される一対の走行装置とを有し、ワイヤーの牽引力を利用して施工対象の傾斜地を移動可能である傾斜地用作業機械であって、前記フレームは、下部フレームと、前記下部フレームに沿った姿勢から、前記傾斜地では傾斜状態にある前記下部フレームに対して略水平姿勢に変位可能な上部フレームとを有して構成され、前記一対の走行装置が、前記下部フレームに支持されていると共に、前記上部フレームには、作業体が支持され、前記下部フレームに駆動源収容部支持フレームが設けられており、エンジンを含む駆動源を収容する駆動源収容部が、前記駆動源収容部支持フレームに、前記走行装置及び前記下部フレームが傾斜状態にあっても、略水平姿勢で支持される構成であることを特徴とする。
【0009】
前記下部フレームにおいて、傾斜地の斜面上部寄りに相当するように前記上部フレームが設けられ、斜面下部寄りに相当するように前記駆動源収容部支持フレーム及び前記駆動源収容部が設けられていることが好ましい。前記駆動源収容部が前記駆動源収容部支持フレームに軸支され、軸支位置を中心として回動可能に設けられることにより、傾斜状態であっても略水平に支持される構成であることが好ましい。前記駆動源収容部と、前記駆動源収容部支持フレーム又は前記下部フレームとの間に、前記駆動源収容部を強制的に略水平姿勢に制御する姿勢制御部材が配設されていることが好ましい。また、前記上部フレームと前記駆動源収容部との間にリンク部材が掛け渡されており、前記上部フレームの略水平姿勢への変位に伴って、前記リンク部材を介して、前記駆動源収容部が前記駆動源収容部支持フレームとの軸支位置を中心として回動して略水平姿勢に変位する構成であることが好ましい。さらに、前記一対の走行装置の間隔を拡縮して調整する走行装置間隔調整手段を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の傾斜地用作業機械は、フレームと、前記フレームに支持される一対の走行装置とを有し、ワイヤーの牽引力を利用して施工対象の傾斜地を移動可能である傾斜地用作業機械であって、前記フレームは、下部フレームと、前記下部フレームに沿った姿勢から、前記傾斜地では傾斜状態にある前記下部フレームに対して略水平姿勢に変位可能な上部フレームとを有して構成され、前記一対の走行装置が、前記下部フレームに支持されていると共に、前記上部フレームには、作業体が支持され、前記一対の走行装置の間隔を拡縮して調整する走行装置間隔調整手段を有することを特徴とする。
【0011】
前記走行装置間隔調整手段は、前記一対の走行装置間の間隔が最も狭い状態から、前記一対の走行装置間の間隔を拡張方向に調整すると、少なくとも一方の前記走行装置を、前記間隔が最も狭い状態に比較して、外側方向でかつ傾斜地の斜面上部方向に変位させる手段であることが好ましい。前記走行装置間隔調整手段は、前記フレームと前記各走行装置とを結び、前記間隔を拡張方向に調整するに従って、前記各走行装置側に連結された連結端が斜面上部方向に変位して起立姿勢になっていく連結部材と、前記各走行装置を前記フレームに対して離間方向に押圧可能な押圧部材とを有して構成されることが好ましい。
【0012】
さらに、いずれの傾斜地用作業機械も、前記作業体が、略水平姿勢の前記上部フレームに対して平行回転可能に設けられていることが好ましい。前記下部フレームに前記ワイヤーが巻回されるウインチが設けられていることが好ましい。前記ウインチが、左右一対設けられ、そのそれぞれに前記ワイヤーが巻回されており、2本のワイヤーを上方ほど拡開するように逆ハ字状に張設可能であることが好ましい。前記左右一対のウインチの前方に、前記各ワイヤーをガイドするガイド部材が設けられていることが好ましい。
【0013】
前記上部フレーム及び下部フレームから構成されるフレームに対し、少なくとも前記作業体、前記駆動源収容部、前記ウインチを分離可能であることが好ましい。さらに、前記上部フレームと下部フレームを分離可能であると共に、前記各走行装置を前記下部フレームから分離可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の傾斜地用作業機械は、実動時に作業体が略水平姿勢となって全体の重心位置が上方かつ前方に変位するのであるが、エンジンを含む駆動源を収容する駆動源収容部を下部フレームに配置し、好ましくは作業体よりも駆動源収容部が斜面下部寄りとなるように配置することを特徴とする。傾斜地での実動時には、略水平姿勢にある上部フレーム上で作業体が立設状態になっているので、作業機械の重心位置は上方かつ前方に移動した状態となるが、本発明によれば、斜面下部寄りに駆動源収容部が配置されるため、前後のバランスが向上し、傾斜地用作業機械として安定性に優れている。
【0015】
この場合、駆動源収容部を駆動源収容部支持フレームに対して振り子式で吊り下げ支持することにより、エンジンを常に略水平に維持することができ、エンジンの焼き付き等を抑制することができきる。また、駆動源収容部に収容されるエンジン等の駆動源の配置バランスによっては振り子式のみでは略水平姿勢とならない場合もあるため、駆動源収容部を略水平に強制的に制御する姿勢制御部材(油圧シリンダ等)を設けることが好ましい。さらに、上部フレーム及び駆動源収容部との間にリンク部材を設けることで、上部フレームが略水平姿勢に制御されることに伴って、これに連動して駆動源収容部が略水平姿勢となるような構成とすることもできる。
【0016】
また、本発明の傾斜地用作業機械は、一対の走行装置の間隔を拡縮して調整する走行装置間隔調整手段を有することを特徴とする。傾斜地での実動に際しては、傾斜姿勢になっている走行装置に対して作業体は略水平姿勢をとるのであるが、そのとき走行装置間隔調整手段を作動して走行装置間の間隔を拡張することにより、傾斜地用作業機械の安定性を高めることができる。傾斜地での実動時には、略水平姿勢にある上部フレーム上で作業体が立設状態になっているので、作業機械の重心位置は上方かつ前方に移動した状態で作業が進められる。従って、走行装置間の間隔を広げた際に、走行装置の位置を、走行装置間の間隔が最も狭い状態のときの位置よりも相対的に傾斜地の斜面上部方向に変位させることができるようになっていることが好ましく、それにより、作業体が略水平姿勢となった際のバランスが向上し、傾斜地用作業機械の転倒リスクは減少することになる。
【0017】
さらに、上記いずれの場合も、各種部品(ウインチ、作業体、駆動源収容部など)を分離可能として組立式とすることにより、本傾斜地用作業機械の運搬作業が容易となる。特に、急傾斜地においては、クレーンなどでこれら各種部品を所定の場所に運び込み、その場で組み立てて作業を行うことが可能となり便利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る、傾斜地で実動させる前の作業機械Aを示す側面図である。
【
図2】本発明の一の実施形態に係る、傾斜地で実動させる前の作業機械Aを示す平面図である。
【
図3】本発明の一の実施形態に係る、傾斜地に配置され、走行装置間隔調整手段を作動させていない作業機械Aを示す側面図である。
【
図4】本発明の一の実施形態に係る、傾斜地に配置され、走行装置間隔調整手段を作動させていない作業機械Aを示す平面図である。
【
図5】本発明の一の実施形態に係る、実動時に走行装置間隔調整手段を作動させて走行装置間の間隔を拡張したときの作業機械Aを示す側面図である。
【
図6】本発明の一の実施形態に係る、実動時に走行装置間隔調整手段を作動させて走行装置間の間隔を拡張したときの作業機械Aを示す平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る、実動時に走行装置間隔調整手段を作動させて走行装置間の間隔を拡張したときの作業機械Bを示す側面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る、実動時に走行装置間隔調整手段を作動させて走行装置間の間隔を拡張したときの作業機械Bを示す平面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る作業機械を示し、上部フレーム及び駆動源収容部間にリンク部材を配設した状態を示す側面図である。
【
図10】本発明のさらに他の実施形態に係る作業機械を示し、上部フレーム及び駆動源収容部間にリンク部材を配設した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る傾斜地用作業機械について図面に基づき説明する。
図1及び
図2は、傾斜地で実動させる前の本実施形態に係る作業機械Aを示す側面図と平面図であり、
図3及び
図4は、傾斜地に配置された作業機械Aにおいて、走行装置間隔調整手段を作動させていない状態を示す側面図と平面図である。
【0020】
図1及び
図2において、まず、作業機械Aは、車体ないし架台として機能するフレームを有している。このフレームは枠形状をした下部フレーム1と上部フレーム3を有して構成され、下部フレーム1は、その両側に一対の走行装置2,2が支持されている。これら走行装置2,2は、下部フレーム1から取り外しできないように取り付けられていてもよいが、下部フレーム1から分離可能なように取り付けられていることが好ましい。走行装置2,2としては、不整地の傾斜地が施工対象であるため、無限軌道(クローラ等)が好ましいが、車輪であっても本発明を適用可能である。
【0021】
下部フレーム1の先端部には、軸支ピン1aを介して上記の上部フレーム3の先端部が回動自在に軸支されることにより、当該上部フレーム3が下部フレーム1に支持されている。他方、上部フレーム3の他端部には、油圧装置4の油圧で作動する一対のリフトシリンダ5,5が当該上部フレーム3の両側と下部フレーム1の両側の間を連結した状態で装着されていて、このリフトシリンダ5,5を伸縮動作させることにより、上部フレーム3は下部フレーム1との軸支ピン1aで軸支されている箇所を中心にしてリフトシリンダ5,5の軸方向に回動できるようになっている。
【0022】
また、上部フレーム3には、旋回ベアリング6を介してブーム、アーム、バケットなどの作業体7が支持され、各部材は油圧装置4の油圧によって作動する油圧シリンダ7a,7b,7cで作動できるようになっていて、かつ作業体7は上部フレーム3の上で360度の水平回転ができるようになっている。なお、この作業体7は、上部フレーム3にボルト、ピンなどを介して取り付けられており、これらを外すことによって上部フレーム3から分離可能になっていることが好ましい。
【0023】
下部フレーム1の後端部の両側には、先端が折れ曲がって作業機械Aの後方に向いた形状(
図1のように側面から見て略逆L字状)をした一対の駆動源収容部支持フレーム8,8が立設されていて、この駆動源収容部支持フレーム8,8によって、エンジンを含む駆動源を収容する駆動源収容部9が宙づり状態で支持されている。その場合、駆動源収容部9は軸支ピン8aで駆動源収容部支持フレーム8に軸支されることにより、その軸支ピン8aの軸支位置を中心にして回動できるようになっており、傾斜地でも駆動源収容部9は略水平に支持される。また軸支ピン8aを抜脱することにより駆動源収容部支持フレーム8から分離可能になっている。また、駆動源収容部9と駆動源収容支持フレーム8(又は下部フレーム1)との間には、姿勢制御部材として油圧シリンダ8bを掛け渡し配設することが好ましい。駆動源収容部9内にエンジン等の駆動源がバランスよく配置され、その重心位置が駆動源収容部支持フレーム8における軸支位置よりも下方で左右のバランスもとれている場合には駆動源収容部9は傾斜に対応して重力により軸支ピン8aを中心として自然に回動して略水平姿勢をとることができるが、駆動源の配置バランスがこのような状態でない場合には、傾斜地において軸支ピン8aを中心とした重力による回動では略水平姿勢とならない場合もある。しかし、姿勢制御部材である油圧シリンダ8bを有することにより、油圧シリンダ8bを伸縮させることで、駆動源収容部9を強制的に軸支ピン8aを中心として回動制御することができ、駆動源の配置バランスに拘わらず略水平姿勢を確実にとらせることができる。なお、いずれの場合も、油圧シリンダ8bを設けることで、傾斜地での作業機械Aの実動時に、駆動源収容部9が激しく揺動することを抑制することができる。この場合、略水平姿勢に制御する姿勢制御部材としての油圧シリンダ8bとは別途にショックアブソーバを配置するようにしてもよい。なお、本実施形態では、駆動源収容部9にエンジンのみを配置し、油圧装置4を下部フレーム1上に配置しているが、エンジンだけでなく油圧装置4も駆動源として駆動源収容部9に配置することももちろん可能である。また、姿勢制御部材は、駆動源収容部9を水平姿勢に支持できるものである限り、上記した油圧シリンダ8bに限定されるものではない。
【0024】
また、下部フレーム1の末尾には、軸支ピン1bを介してドーザ10が回動自在に取り付けられ、このドーザ10は油圧シリンダ11を作動させることにより軸支ピン1bを中心にして回動できるようになっている。これらの部材もまた、それぞれの軸支ピンを抜脱することにより、下部フレーム1から分離することが可能になっている。
【0025】
下部フレーム1の前後方向略中央の両側には、この作業機械Aを施工対象の傾斜地で支持し、牽引するための一対のワイヤー12,12を巻回する一対のウインチ13,13がそれぞれ当該下部フレーム1に取り付けられている。本実施形態では、このウインチ13,13もボルトやピンなどを介して取り付けられており、それらを取り外すことにより下部フレーム1から分離可能になっている。なお、ウインチ13,13は本実施形態のように下部フレーム1の前後方向略中央に限られるものではなく、他の部材の取り付けの邪魔にならない位置であればいずれでもよい。そしてウインチ13の前方に位置し、好ましくは下部フレーム1の先端部には、作業機械Aを支持しているワイヤー12,12をウインチ13,13にガイドするためのフェアリーダのような一対のガイド部材14,14が取り付けられている。ガイド部材14,14は、該ガイド部材14,14と傾斜地の上部との間で、ワイヤー12,12が斜めに張設されていたとしても、該ガイド部材14,14とウインチ13,13との間ではワイヤ−12,12がウインチ13,13の各回転軸に略直交する方向に張られ、円滑に巻き取り巻き戻しができるように案内する。
【0026】
次に、作業機械Aの作用について説明する。作業機械Aは、
図3で示したように、傾斜地に配置され、そこの施工作業に入る。
まず、施工対象の傾斜地の上部に一対のアンカーボルトあるいは立木などのワイヤー係止箇所(図示せず)を定め、そこにウインチ13、13に巻回されているワイヤー12,12のそれぞれをガイド部材14、14を経由して取り付ける。このとき、上方のワイヤー係止箇所の間隔をウインチ13,13間の間隔よりも広くして、張設されるワイヤーが、
図4で示したように、平面視形状が逆ハ字状となるようにすることが好ましい。作業機械Aの左右への転倒リスクを低減することができると共に、作業機械Aの傾斜地における移動範囲が、ワイヤー12,12を並行に張設する場合よりも左右に広がる。
【0027】
この状態で、駆動源収容部9に収容されているエンジンを駆動し、ウインチ13,13を作動してワイヤー12,12を巻き取り、走行装置2,2を前方へ駆動すれば作業機械Aは傾斜地を登坂し、またワイヤー12,12を巻き戻し、走行装置2を後方に駆動すれば作業機械Aは傾斜地を下降する。
【0028】
このとき、作業機械Aでは、油圧装置4を作動してリフトシリンダ5,5を伸長させ、上部フレーム3を軸支ピン1aを中心にして回動させ、
図3で示したように、当該上部フレーム3を略水平状態に維持する。こうすることにより、上部フレーム3上の作業体7は、当該上部フレーム3の上で旋回ベアリング6を介して360度の水平回転が可能となり、あらゆる方向に対する作業が可能である。但し、上部フレーム3を略水平姿勢にすると、全体の重心位置は作業機械Aの前方側に変位する。しかしながら、本実施形態では駆動源収容部9が下部フレーム1に支持されているため、上部フレーム3及び該上部フレーム3に支持された作業体7側との前後バランスがうまくとれる構成となっている。従って、傾斜地における作業機械Aは安定な状態を維持することができる。
【0029】
なお、本実施形態の作業機械Aは、運転席を備えていない無人機であり、作業機械Aから離れた位置にいる操作者がリモートコントロールによって上記した操作を指示する。この点は、後述の実施形態に係る作業機械Bにおいも同じである。但し、有人の作業機械とすることも可能であり、その場合には、上部フレーム3に運転席を設けることになる。
【0030】
また、作業機械Aが傾斜状態になると、駆動源収容部支持フレーム8に宙づり状態で支持されている駆動源収容部9は、軸支ピン8aの箇所を中心にして回動することができるので、常に略水平状態を維持しようとする。なお、油圧シリンダ8bを伸縮させて駆動源収容部9を強制的に回動し、略水平姿勢をとらせるようにしてもよいことは上記したとおりである。これにより、駆動源収容部9に収容されたエンジンは作業機械Aの実動中は略水平状態にあるので、エンジン焼きつきなどの不具合を起こすことなく駆動することができる。
【0031】
ここで、作業機械Aに組み込まれている一対の走行装置2,2の間隔を幅方向に拡縮する走行装置間隔調整手段について説明する。
図5及び
図6は、傾斜地を移動する作業機械Aの走行装置2,2間の間隔を拡張した状態を示した図である。
【0032】
図6は、下部フレーム1の一方側付近と走行装置2の一部を切り欠いて示した図であるが、走行装置2,2を、矢印で示したように、外側方向に押圧したり、内側方向に引き寄せたりすることができる押圧部材15,15が前後に所定の間隔をおいて配設されている。なお、図では一方の走行装置2側しか示していないが、他方の走行装置2側にも同様の押圧部材15,15が設けられている。これが作業機械Aにおける走行装置間隔調整手段である。
【0033】
より具体的には、走行装置間隔調整手段としての押圧部材15,15は、例えば、外筒(シリンダ)とその内部を摺動する内筒(ピストン)とを有して形成され、内筒及び外筒の一方を下部フレーム1に固定して左右に沿って配置し、他方を走行装置2,2に連結し、油圧装置4の油圧を利用して一方に対して他方を相対的に外方に突出するように移動させたり、収縮方向に戻したりすることにより、各走行装置2,2間の間隔を拡縮することができるようになっている。
【0034】
作業機械Aにおける安定性を高めるためには、走行装置2,2間の間隔を広くすることが好ましいのであるが、その場合には、押圧部材15,15を作動することにより走行装置2,2を下部フレーム1から離間させ、走行装置2,2間の間隔を広くすればよい。また、例えば施工作業を終了した作業機械Aをトラック運送する場合には、トラックの荷台に積載できるように、押圧部材15,15を作動することにより走行装置2,2を下部フレーム1側に引き寄せ、走行装置間の間隔を狭めればよい。
【0035】
なお、このような拡縮作業は、走行装置2,2の抵抗の少ない状態で行われ、例えば、走行しながら油圧装置4の油圧を利用して行ったり、あるいは、作業体7のブーム、アーム等を操作して、車体を片側ずつ浮かして、押圧部材15,15を片側ずつ動作させて引き出したり引き寄せたりすることができる。
【0036】
走行装置間隔調整手段としては、上記したように油圧の力を利用するのではなく、単なる外筒と内筒からなる構造のものとして、作業体7のブーム、アーム等を操作して、走行装置2,2を引き出したり元の位置に戻したりする構成とすることもできる。なお、この場合には、引き出し位置や戻した位置において、ボルトやピンなどを用いてその位置を固定できるようにすることが好ましい。
【0037】
次に本発明の他の実施形態に係る作業機械Bについて
図7及び
図8に基づいて説明する。この作業機械Bは、走行装置間隔調整手段が異なることを除けば、他の要素は作業機械Aの場合と同じである。そこで、
図8では、走行装置間隔調整手段の構成をわかりやすく示すため、傾斜地を昇降する作業機械Bの下部フレーム1上に装着される諸要素を取り除いて示している。なお、作業機械Aと同じ部材については同じ符号で示す。
【0038】
これらの図において、下部フレーム1には、その両側部に突出する取付部を有しており、この取付部に第1連結部材16A,16Aの一端が連結ピン16a,16aを用いて回動自在な状態で連結されている。そしてこの第1連結部材16A,16Aの他端は、同じく連結ピン16b,16bを用いて各走行装置2,2に設けられた取付部に回動自在な状態で連結されている。また、下部フレーム1の後方においても、各第1連結部材16A,16Aから所定の間隔をおいて同様の構造の第2連結部材16B,16Bが下部フレーム1と各走行装置2,2とを連結している。
【0039】
左右それぞれの第1連結部材16A,16Aと第2連結部材16B,16Bとの間には、一端が第2連結部材16B,16B近傍の下部フレーム1の各側部に回動自在に軸支され、他端が第1連結部材16A,16A近傍の走行装置2,2に回動自在に軸支された油圧シリンダ17,17が配設されている。この油圧シリンダ17,17は、例えば油圧装置4の油圧で作動し、走行装置2,2を内側から外側へ押圧する押圧部材として機能する。
【0040】
かくして、作業機械Bの場合は、上記した各連結部材16A,16B、押圧部材としての油圧シリンダ17,17及び連結ピン等をもって走行装置間隔調整手段が構成されている。
【0041】
この走行装置間隔調整手段は以下のように作動する。
まず、油圧シリンダ17,17を作動させない場合、当該油圧シリンダ17,17は最短状態になっており、下部フレーム1の各側部にほぼ沿った状態で配置されている。これに伴って、第1連結部材16A,16Aと第2連結部材16B,16Bも下部フレーム1の各側部にほぼ沿った状態でたたみ込まれている。このとき、一対の走行装置2,2の間隔は最も狭い状態になっている。
【0042】
そして油圧装置4を駆動して油圧シリンダ17,17を作動させ、そのピストンをシリンダに対して相対的に伸長させると、走行装置2,2は斜め前方(図の矢印方向)に押圧される。このとき、各連結部材16A,16Bは走行装置2,2の外側方向への変位に同期しながらそれぞれの連結ピン16a,16bの箇所を中心にして図の矢印方向に回動し、やはり斜め前方へ起立姿勢をとるように変位していく。
【0043】
油圧シリンダ17が最も伸長したとき、各連結部材16A,16Bは最も起立した姿勢となり、走行装置2,2の間隔は最も拡張した状態になる。
【0044】
走行装置間隔調整手段の上記した動作過程における走行装置2,2の変位状態を考えると、油圧シリンダ17,17が斜め前方に伸縮可能なように下部フレーム1と走行装置2,2の間に配設されているので、一対の走行装置2,2間の間隔の拡張時に、それぞれの走行装置2は斜め前方に変位する。言い換えれば、間隔が最も狭い状態から外側方向へ拡張した状態に変位するのであるが、同時に、それぞれの走行装置2,2は、間隔が最も狭い状態の位置よりも前方へと変位する。この位置の違いは、
図5及び
図6に示した上記実施形態の拡張時の走行装置2,2の位置と、本実施形態の拡張時の走行装置2,2とを比較するわかるように、本実施形態の走行装置2,2は、間隔の狭い状態から間隔の広い状態へと移行すると、傾斜地の斜面上部方向へと変位する。
【0045】
本実施形態においても、作業機械Bの傾斜地での実動の際、傾斜姿勢になっている走行装置2,2に対して作業体7は略水平姿勢となるように制御するが、走行装置間隔調整手段を作動して走行装置2,2間の間隔を拡張することにより、作業機械の安定性を高めることができる。作業体7は略水平姿勢にある上部フレーム3上で立設状態になるため、作業機械Bの重心位置は、作業体7を略水平姿勢に制御する前よりも、上方かつ前方に移動した状態で作業が進められることになる。しかし、本実施形態によれば、走行装置2,2間の間隔を広げた際に、走行装置2,2の位置を、走行装置2,2間の間隔が最も狭い状態のときの位置よりも相対的に傾斜地の斜面上部方向に変位させることができるので、作業体7が略水平姿勢となった際のバランスが向上し、作業機械Bの転倒リスクをより低減させることができる。
【0046】
なお、走行装置2,2を拡縮する方法は、上記実施形態と同様に、油圧シリンダ17,17等の押圧部材を用いるのではなく、作業体7を操作して拡縮するようにしてもよい。また、押圧部材としては油圧シリンダ17,17以外の手段を用いることもできる。また、連結部材16A,16Bは板状のものや棒状のもの等種々の形状で形成することができ、またその大きさ、配設数、取付位置等も限定されない。同様に油圧シリンダ17,17の大きさや取付位置等も全く限定されるものではなく、走行装置2,2の拡張時における下部フレーム1に対する相対位置を斜め前方とすることができればよい。連結部材16A,16Bの形状,16Bの長さを長くしたり、連結部材を複数連結して構成したりすることにより、走行装置2,2間の間隔をより広げる構成とすることができる。
【0047】
また、いずれの実施形態に係る作業機械A,Bも、上記したように、各種部品(ウインチ、作業体、駆動源収容部など)毎に分解(分離)可能としているため、分離状態で運搬し、適宜の場所で組み立てることが可能であり便利である。さらに、上部フレーム3と下部フレーム1を分離可能とし、各走行装置2,2を下部フレームから分離可能とすることにより、運搬作業がより容易となる。また、走行装置間隔調整手段は、フレームに対して走行装置間の間隔を拡縮できる手段であれば何であってもよく、作業機械Aのような二重筒状のピストン、シリンダ形式のものや、作業機械Bのような連結部材を利用したものに限られない。
【0048】
なお、上記各実施形態は、いずれも走行装置間隔調整手段を備えているが、走行装置間隔調整手段を備えていない場合であっても、下部フレーム1に、駆動源収容部支持フレーム8,8を設け、この駆動源収容部支持フレーム8,8によって、駆動源であるエンジン等を収容する駆動源収容部9が傾斜地において略水平姿勢をとれる構成を採用することにより、傾斜地における安定性を高めることができる。すなわち、実動時においては、上部フレーム3及び作業体7が略水平姿勢となって全体の重心位置が上方かつ前方に変位するのであるが、エンジンを収容する駆動源収容部9をこのように下部フレーム1に配置することで、走行装置2,2に対して前後の重量バランスがよくなり、傾斜地における安定性を高めることができる。
【0049】
また、駆動源収容部9を略水平姿勢で維持するに当たって、上記各実施形態では、駆動源収容部支持フレーム8,8に軸支ピン8aで軸支し、振り子式で自然に略水平姿勢がとられるようにするか、あるいは、油圧シリンダ8b,8bを用いて強制的に略水平姿勢をとらせるようにするようにしているが、走行装置間隔調整手段を備えている実施形態も備えていない実施形態のいずれの場合も、上部フレーム3と駆動源収容部9との間にリンク部材18を掛け渡して、上部フレーム3の姿勢変化に追随して駆動源収容部9が姿勢変化するように設けることもできる。この場合、上部フレーム3の回動支点となる軸支ピン1aと、駆動源収容部9の回動支点となる軸支ピン8aとを結ぶ仮想線に対して平行となるようにリンク部材18を配設する。
【0050】
図9及び
図10は、その一例を示したものであり、上部フレーム3に設けた取付部31と、駆動源収容部9の上部に設けた取付部91との間に、長尺状のリンク部材18を掛け渡して各端部を各取付部31,91に軸支している。これにより、リンク部材18は平行リンクを構成することになるため、上部フレーム3が軸支ピン1aを中心として下部フレーム1に沿った状態から略水平姿勢となる方向に回動していくと、リンク部材18がそれに伴って斜め上方に変位し、駆動源収容部9は強制的に軸支ピン8aを中心として略水平姿勢となる方向に回動していく。上部フレーム3は傾斜地においては常に略水平姿勢となるように制御されるため、このようなリンク部材18を設けることにより、駆動源収容部9を容易に略水平姿勢に制御できる。なお、
図9及び
図10において、上記の作業機械A又は作業機械Bと同じ部材については同じ符号で示している。