(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピッチドライブ装置(10)であって、風力または水力発電所の回転子ブレードのピッチを調整するよう構成されたインバータ装置(14)および3相電流駆動モーターを含み、前記駆動モーターが内部永久磁石を具えた回転子を具えた3相電流IPM同期モーター(12)であること、通常動作モードと緊急動作モードの両方において接続される直流電圧エネルギー貯蔵装置(20)が、安全なベーン位置で前記回転子ブレードを駆動させるために前記IPM同期モーター(12)に少なくとも短時間エネルギーを供給すべく整流装置(16)と前記インバータ装置(14)との間で直流電圧中間回路(18)に実質的に直接接続でき、その結果、中間回路電圧VZKが低下していても前記IPM同期モーター(12)を安全なベーン位置で回転速度制御下で少なくとも短時間動作させることができ、
前記直流電圧エネルギー貯蔵装置(20)が、干渉ピーク電圧を抑制すべく、結合部(24)を介して前記直流電圧中間回路(18)に接続されおり、
前記結合部(24)が制御手段(94)およびスイッチング手段(96)を含み、その結果、少なくとも1つの充電電流IGを前記直流電圧中間回路(18)から前記直流電圧エネルギー貯蔵装置(20)へ切り替えることができることを特徴とする装置。
請求項1に記載の装置において、前記IPM同期モーター(12)が、300〜3000rpmの範囲の高速回転範囲向けに構成されていることを特徴とする装置であって、500rpmのより低い回転速度範囲で最適な効率が実現できる装置。
請求項1に記載の装置において、少なくとも前記スイッチング手段(96)が半導体スイッチング手段であって、前記インバータ装置(14)の半導体スイッチング手段および/または前記整流装置(16)の半導体ブリッジダイオードと共に、半導体電力モジュールの筐体の一体型電力モジュール筐体内に一体化されていることを特徴とする装置。
請求項1に記載の装置において、前記整流装置(16)が、受け入れる電力システム電流を制限する、および/または中間回路コンデンサ(26)および前記インバータ装置(14)の前記直流電圧エネルギー貯蔵装置(20)の電流制御された充電を行なう電流制御部(36)を含んでいることを特徴とする装置であって、通常動作モードで前記電流制御部(36)が前記中間回路電圧VZKを事前設定可能な値に調整できる装置。
【背景技術】
【0002】
一般的な種類の装置は、エネルギー生成装置、特に発電機を駆動すべく空気または水の流体に関して回転子ブレードのピッチ角(ピッチ)を変更させる機能を果たす。
【0003】
従来技術では、電気機械駆動システムにおけるDCおよびAC非同期モーター(ASM)を利用する、回転速度の関数として制御可能な風力または水力発電所の回転子の回転子ブレードの調整が開示されている。DC機械が利用される理由は、当該機械が、制御電子機器および動力電子機器が万一故障しても緊急的に回転子ブレードをベーン位置まで移動できるためであり、電力システムの故障時にはアキュムレータパックまたはバッテリパックが直流電圧を供給する。AC機械が頻繁に利用されるのは、当該機械が実質的に保守不要、費用効果が高く、且つ高いトルク出力レベルを可能にするためである。一般に、多くの場合回転速度が動力電子機器により制御可能な非同期モーターがAC機械として用いられ、前記動力電子機器には、一般に、整流装置およびインバータ装置並びにモーター巻線をPWM起動する制御装置が含まれる。緊急動作モードにおいて多くの場合、電力供給の故障時に直流電圧源を用いて緊急動作を行える代替的なDCドライブが提供されている。
【0004】
回転速度は一般に、回転速度センサまたは位置センサからの測定データに基づいて制御される。センサ故障の場合、V/f動作モード(電圧/周波数制御)で制御されるASMは安全な位置、特にベーン位置まで移動させることができる。DCおよびACタイプのモーターにおいて、たとえ直流電圧が低い中間回路電圧であっても高速回転が可能なように磁場を弱めることが可能である。弱め界磁モードとは、回転速度が増大するに従い、電流は一定のままでありながら、駆動磁場の強さが弱まることを意味する。従って、トルクは磁場と電流の積であるため、出力可能なトルクも減少する。
【0005】
独国特許出願公開第10335575A1号明細書に、緊急動作モード用のピッチドライブ装置を記述しており、電力インバータの整流器によりピッチドライブ装置に貯蔵エネルギーが供給される。供給は、充電抵抗器により切り替え可能な方法で行なわれる。緊急動作状況において、中間回路は分離ダイオードを介して起動可能であり、エネルギー貯蔵器は極めて高い容量を有するため、通常動作モードにおける中間回路定格電圧のレベルを緊急動作モードにおいて比較的長い時間、特に数秒間にわたり維持することができる。通常の3相電流モーターがピッチモーターとして用いられる。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0155075A1号明細書に開示されているピッチドライブ装置において、ピッチモーターの電力システムに関連付けられたインバータコントローラが誤動作した場合、電力システムに付随するインバータコントローラと無中断緊急動作モードインバータコントローラとの間で切り替わることが可能である。従って、磁場指向ベクトル制御部が回転速度のセンサレス制御を行なうべく設けられている。
【0007】
従来技術では多くの不都合が生じる。すなわち、DCモーターは、非常に高価且つ極めてメンテナンスの手間が掛かる。電力密度が低いため、一般に質量慣性モーメントが高い。その結果、これらのモーターは、反転モードにおける連続個別ブレード制御等の動的な用途に適していない。AC機械には、理論ピークトルクが電圧と共に二次的に減少する短所がある。障害発生時には中間回路電圧V
ZKが400ボルト未満と低いため、AC機械は低電圧向けに構成されなければならず、またインバータが提供する必要がある高電流を強制的にもたらさなければならない。
【0008】
これらの短所は、独立請求項1に記載の装置により解決される。有利な発展形態は従属クレームの主題である。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、風力または水力発電所の回転子ブレードを調整すべく緊急動作可能なピッチドライブ装置を提案するものであり、当該ピッチドライブ装置は少なくとも1個のインバータ装置および1個の3相電流駆動モーターを含んでいる。3相電流駆動モーターは、永久磁石励起3相電流IPM(内部永久磁石)同期モーターとして実装されている。回転子の内部に埋込まれた永久磁石を備えた回転子を有するIPM同期モーターは、中間回路電圧が低下した場合、例えば3相電流電力供給システムのうち1、2の電力システムフェーズが故障した、整流器またはインバータの分岐に不具合が生じた、または中間回路緊急動作直流電圧源による緊急動作を行なう場合に、直流電流が供給される可動コイル回転子またはSPM(表面取付永久磁石)回転子を有する比較可能な従来方式の同期モーターよりも高いトルクに達する。その結果、供給電圧が低下している場合、特に障害発生時に、高いトルクを実現でき、且つ障害発生時に回転子の緊急動作または調整を迅速に行なうことができる。その結果、回転子ブレード調整装置の堅牢性が大幅に強化され、エネルギー設備の安全性が向上する。
【0010】
本発明によれば、緊急動作モードにおいて、同期モーターに少なくとも短時間エネルギーを供給すべく直流電圧エネルギー貯蔵装置が整流装置とインバータ装置との間で直流電圧中間回路に実質的に直接接続されており、その結果、中間回路電圧VZKが低下していても、IPM同期モーターを回転速度制御下で少なくとも短時間動作させることができる。その結果、少なくとも緊急動作モードにおいて、エネルギー貯蔵装置は、整流装置とインバータ装置の間の中間回路にDCエネルギーを直接供給することができ、エネルギー貯蔵装置がエネルギーを利用可能にできる限り、同期モーターを回転速度制御下で動作させることができる。
【0011】
本発明は、各種の利点を組合わせるシステム概念に基づいている。一つの有利なピッチドライブ装置は3個の中核要素、すなわち磁石が埋め込まれ、且つピッチドライブモーターとしての役割を果たす永久磁石回転子を備えた同期機、サーボ電力インバータとしてのインバータ部、および最後に、高容量コンデンサで構成されている点が有利なバックアップエネルギー貯蔵器としての直流電圧エネルギー貯蔵装置を含んでいる。直流電圧エネルギー貯蔵装置は、従来技術で公知の分離ダイオードを使用する必要なしに、整流装置とインバータ部の間の中間回路に直接結合されている。これは、中間回路V
ZK、電力インバータ装置、およびエネルギー貯蔵装置の電圧レベルが名目的には同一であることを意味する。
【0012】
電力供給システムの故障時に、直流電圧エネルギー貯蔵装置は通常、560VDCという高水準の中間回路電圧を維持することができないため、結果的に直流電圧V
ZKは、ピッチドライブによるエネルギー消費量の、および記憶容量の関数として100Vまで低下する恐れがある。この状況において、従来方式のSPM(表面永久磁石)同期モーターは、不十分且つ狭い範囲に限定された回転速度制御しか受けられず、トルクが急激に低下してピッチドライブ故障のリスクが高くなる。
【0013】
同期モーターは一般に、静止状態でのトルクは利用可能なモーター電流だけに依存し、例えば複巻きまたは非同期機の場合のように、利用可能な電圧には一切依存しないという利点がある。本発明によれば、当該同期モーターは、回転子磁石が内部に埋め込まれたIPM(内部永久磁石)同期モーターである。IPM同期モーターは、高リラクタンスを有し、その結果、リラクタンスモーターと同様の特性を有する。従って、埋め込み磁石に起因するリラクタンス特徴は二つの利点をもたらす。すなわち、中間回路電圧が低い場合の機械のピーク電力は、表面磁石を備えた機械のそれよりも高い。更に、機械のリラクタンス効果を用いることにより、センサを使用しなくても大きいトルク余裕を以て低回転速度で機械を制御できる。従って回転子信号生成器が故障しても、ブレードをベーン位置まで確実に移動させることができる。
【0014】
この利点は、IPMモーターの以下の特性により可能になる。すなわち、IPM同期モーターは、長手方向インダクタンスLdと横方向インダクタンスLqとの間に大きな差があり、一般にLq>Ldである。Lqおよびそれを通って流れる電流Idは当該磁場の磁場形成要素を表し、LdとIqはトルク形成要素を表す。この差異の結果、
図6にて示すように、IPMモーターは、回転速度が比較的低く、且つ電圧が低下した場合に、比較的高いトルクを利用可能にして、センサーなしで制御されるように極めてよく適している。
【0015】
IPM設計の場合、永久磁石は、
図5に示すように回転子の切欠きに嵌入されている。その結果、わずかな機械的エアギャップが実現でき、固定子巻線のインダクタンス値に比較的大きな影響を及ぼすに至る。永久磁石装置に起因して、回転子磁束軸の方向(d方向)の有効エアギャップは、q方向のそれよりも大きく、その結果、d方向のインダクタンスが横軸qのインダクタンスに比べて低下する。当該機械のこの非対称性(Ld<Lq)により追加的なリラクタンストルクが生じて、上述の利点が実現できる。
【0016】
本発明による装置、後述する有利な発展形態、および従来方式のシステム機能は以下を目的としている。
・システムの効率向上
・反転中に生じたエネルギーは、以前のブレーキチョッパー(制動抵抗部)とは異なり、熱に変換されず、エネルギー貯蔵装置、好適にはコンデンサ装置に貯蔵できる。
・同期モーター、特にIPM(一体化永久磁石)同期モーターの特別な特徴の結果、当該モーターの電力排出を所与の対応負荷に対して最小化できる。
・中間回路入力電流が制限された結果、必要な負荷ピークを、エネルギー貯蔵装置内に貯蔵されたエネルギーで賄うことができる。スリップリング、および電力システムに対する最大負荷が減少する。電力損失が減少して回転子スリップリングが保護される。
・設計に起因して同期モーターの質量慣性モーメントが低下した結果、運転時の加速および制動中の損失を減少させることができる。
・システムの安全性向上
・センサ無しで同期モーターの制御が可能な結果、少なくとも緊急動作モードにおいて、ピッチドライブ装置は、回転子信号生成器が故障した場合、極めて超い回転速度であっても安全なベーン位置まで自律的に制御動作を行なうことが可能である。
・電力システム側電圧源の故障時に、必要な出力側電力/トルクピークもまた利用可能にできる。
・エネルギー貯蔵装置が故障したとしても、有利な緊急制動抵抗部により、ブレーキ機能を保証できる。ベーン位置への制御された緊急移動も依然として実行可能である。
【0017】
要約すれば、本発明は、高トルクでの中間回路電圧V
ZKの低下時に、回転速度の制御下でピッチドライブ装置の少なくとも1つの緊急動作モードを可能にし、エネルギーバッファとしての直流電圧エネルギー貯蔵装置は効率を向上させ、且つ回転子スリップリングを介した電流の配送を減らす。
【0018】
有利な一発展形態によれば、IPM同期モーターは、300〜3000rpmの範囲の高速回転範囲向けに構成することができ、より低い回転速度範囲で、特に定格回転速度500rpmの範囲で最適な効率が実現できる筈である。特に、緊急移動の場合、2500rpm以上の高速回転を用いて、短時間で回転子ブレードをベーン位置まで移動させることができる。IPM同期モーターのリラクタンストルクが、対応して変更されたインバータ装置の制御により使用される場合、IPMモーターは、直流中間回路電圧の場合に、表面(SPM表面永久磁石)に配置された磁石を有する比較可能な同期モーターよりも大きいトルク回転速度範囲を有している。大きい回転速度トルク範囲のこの特性は特に、緊急移動中に大規模な電力蓄積を短時間利用可能にする必要がある、すなわち高速回転でピークモーメントを利用可能にする必要があるため、回転子ブレードドライブとして使用する場合に有利である。IPM同期モーターにより利用可能になる弱め界磁モードの可能性により、たとえエネルギー貯蔵装置、特にコンデンサ装置の中間回路電圧が低い値まで(100〜200VのDCまで)低下しても、広いトルク/回転速度範囲の利用が可能になる。広い電圧範囲が利用でき、その結果、エネルギー貯蔵装置の貯槽容量を、従来方式のピッチドライブモーターを使用する場合よりも小さくすることができる。一方、IPM同期モーターを極めて大きいトルクを有するように構成することが可能になる。トルク定数が大きいことは、IPM同期モーターが、所与の電流の流れに対して大きいトルクの発生が可能になることを意味する。これまで、トルク定数の増大は最大回転速度に直接影響するため、この定数の大きさは制限されていた。例えば標準的なSPM(表面永久磁石)同期モーターの場合、トルク定数は40%増大し、比較的大きい誘導電圧に起因して可能な最大回転速度は約40%低下する。しかし、IPMモーターの提案された用途を前提にすれば、トルクの30%までは、誘導された電圧に一切影響を及ぼさないリラクタンスモーメントと呼ばれるものから生じる。トルク定数を上の例のように例えば40%増大させることが望まれる場合、最大回転速度は28%しか減少しない。その結果、IPMモーターを使用することにより、対応するトルクに対して電力排出を最小化することができ、所望の電力目標値(M
max@N
max)の実現が保証されることが明らかになる。
【0019】
有利な一発展形態によれば、直流電圧エネルギー貯蔵装置は高容量コンデンサ装置であってもよい。コンデンサ装置は中間回路に実質的に直接接続されていてもよく、その結果、中間回路電圧の全てがコンデンサに存在することになる。回転子ブレードを調整する間、連続的な反転プロセス、すなわち回転方向の反転の頻繁なプロセスが典型的に同期モーターで生じ、その結果、電圧ピークおよびフィードバックされる再生エネルギーまたは制動エネルギーが生成される。高容量コンデンサ装置は、再生エネルギーまたはピーク電圧を取り込むことができ、その結果、従来のように制動抵抗器によりそれらを除去して熱に変換する必要がなくなる。これは、システムの効率を向上させ、エネルギーを最小化する役割を果たす。更に、コンデンサは、回転子ブレードドライブの短時間の電力ピークに利用可能であり、従って、電力システムからの電力の流れを最小化し、その結果、固定ゴンドラから移動された回転子軸へエネルギーを伝達するシステムスリップリングへの負荷が軽減される。
【0020】
従って、有利な一発展形態によれば、直流電圧エネルギー貯蔵装置は、100VDC〜600VDCの範囲の中間回路電圧V
ZK向けに構成されていてもよい。ピッチドライブ装置内の電気エネルギー貯蔵装置は以下の機能を有している。
1.電力供給システム側の故障時に、インバータ制御された緊急動作を行なう(最長20秒間)べくエネルギーを利用可能にする。
2.短時間の電力ピークを供給する(4秒を超え、少なくとも3秒間)。
3.ピッチドライブが制動された(反転プロセス)場合に生じる全エネルギーを貯蔵する。
【0021】
これまで、公知のエネルギー貯蔵装置、好適にはコンデンサ装置は、項目1で指定された機能だけを目的として構成されていた。これには、項目1で指定された機能を実行すべく緊急移動する間だけ有効な受動エネルギー貯蔵器、すなわち電池またはアキュムレータだけが含まれていた。これら公知のエネルギー貯蔵装置の電圧レベルは通常、約560VDCの名目中間回路レベルを下回り、前記装置は従って、中間回路による無用な充電に対して分離ダイオードにより保護されていて、多くの場合緊急動作モードの場合のみ中間回路に接続される。更に、公知のエネルギー貯蔵装置用において、バックアップアキュムレータ構成を充電して充電状態を維持するために通常は別個の充電装置が必要である。
【0022】
また、項目2、3で指定される機能を実行すべくコンデンサ装置の中間回路への直接結合が実行されるエネルギー貯蔵装置が存在するが、これらは項目1で指定された機能を満足しない。従って、コンデンサ装置は、約100Vに低下した中間回路電圧に対して明示的に構成されている。
【0023】
以下は、上述の従来技術との比較において、有利なエネルギー貯蔵装置、特に提案されたコンデンサ装置の特定の特徴である。
【0024】
・エネルギー貯蔵装置の名目電圧は、常用の中間回路電圧V
ZK、特に約560Vである。
・エネルギー貯蔵装置は、中間回路に実質的に直接接続されている。
・再生エネルギーは主に、エネルギー貯蔵装置に取り込まれる。中間回路電圧はこれに対応して増大し、制動抵抗部は省略できる。
・電力システム側電圧源の故障時に、エネルギー貯蔵装置の電圧、従って中間回路の電圧も最初に560VDCから150VDCまで低下する場合がある。
・緊急動作中に当該電圧低下を可能にすることは、比較的電圧が高い場合、より小容量より多くのエネルギーを貯蔵できるため、コンデンサ装置の容量を最小化できることを意味する。従来方式の「低電圧」構成と比較して、当該コンデンサ装置の容量は50分の一まで小型化することができ、その結果、極めて大幅なコスト削減が実現できる。必要とされる容量が減少することで、コンデンサ装置のために費用対効果が向上した代替的なコンデンサ技術の利用が可能になり、ピッチドライブ装置のコスト削減につながる。
【0025】
有利な一発展形態によれば、直流電圧エネルギー貯蔵装置は、干渉ピーク電圧を抑制すべく、結合部、特にダイオード方式の結合部を介して中間回路に接続することができ、結合部は好適には、中間回路コンデンサの容量を増大させるべく少なくとも1個の追加的な中間回路コンデンサを含んでいてもよい。結合部は、効率だけでなくEMC(電磁気互換性からなる要件)に関して利点をもたらすため、スイッチング損失をエネルギー貯蔵装置ではなく内蔵中間回路コンデンサによりカバーできることを保証する。従って、結合部は、電圧レベルV
fでエネルギー貯蔵装置と中間回路の分離を可能にし、V
fより大きい電圧差が生じたならば、結合すなわち電流の流れが生じるのは、V
ZKとエネルギー貯蔵装置の電圧との間に差違がある場合にだけである。ダイオード方式の結合部を用いた結果、中間回路電圧が結合部の要素に固有の値V
fを下回らない限り、エネルギー貯蔵装置は電流リップルの負荷を受けない。更に、結合部は好適には中間回路のDC線間に接続された追加的な中間回路コンデンサにより拡張でき、その結果、中間回路の電圧変動を更に減少させるべく、対応する適当なコンデンサにより内部中間回路容量を拡張できる。結合部は、代替的にまたは追加的に、高周波干渉を抑制して電流を平滑化すべくインダクタンス回路を含んでいてもよく、その結果、エネルギー貯蔵装置の充電または放電を穏やかに行なうことができる。また、ツェナーダイオード回路または比較可能な回路、例えば直列回路内における1個以上のツェナーダイオードを中間的に接続することも可能であり、そのツェナー電圧V
zは例えば電圧V
fに一致していてもよい。上述の構成要素の組合わせは好適には受動結合部内に含まれていてもよい。
【0026】
有利な一発展形態によれば、結合部は制御手段およびスイッチング手段を含んでいてもよく、その結果、少なくとも1つの充電電流I
Gを直流電圧中間回路から直流電圧貯蔵装置へ切り替えることができる。この発展形態の結合部は、上述の受動要素に任意の可能な組合わせで接続でき、且つ少なくとも充電電流I
Gをスイッチング可能な能動要素を含んでいる。スイッチング手段は、接触器またはリレー等の電気機械スイッチング手段、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力FET等の電子半導体スイッチング手段であってもよい。制御手段は、電子コントロール回路、FPGA、マイクロコントローラ等であってもよい。制御手段は、外部の監視および制御装置からスイッチング命令を受信して、例えば緊急時に、中間回路電圧が低下している場合、駆動モーターの始動時、電力システムの故障時、整流装置に不具合等が生じた場合にスイッチング手段を起動すなわちスイッチオンし、例えば通常動作モードまたはIPMモーターが特別な負荷範囲にあって中間回路に高電流パルスが生じる間、スイッチング手段を停止させることができる。エネルギー貯蔵装置の制御された充電および/または中間回路の再生エネルギーの制御された取り込みは、スイッチング手段の選択的な起動により可能である。制御手段は基本的に、2通りの異なる方法でスイッチング手段を起動できる。すなわち一方では制御方法、例えばPWM的制御概念等により充電電流I
Gを制御する閉制御ループを用いる。他方、例えば上位のピッチモーター制御装置による、外部制御信号に基づくスイッチング手段の静的起動/停止を用いる。エネルギー貯蔵装置の充電制御は、最初に述べた制御方法(中間回路の定電流または定電圧への調整)により実現可能になる。2番目に述べた可能性の範囲内で、再生エネルギーがエネルギー貯蔵器から戻って中間回路内に流入したならば直ちにスイッチング手段を起動させる、すなわち閉じることができる。
【0027】
スイッチング手段は、インバータ内のチョッパーIGBTの従来方式の制御と同様に制御できる。その結果、再生エネルギーは、エネルギー貯蔵器に貯蔵することができ、再生フェーズ(例えばIPMモーターの生成器駆動)の終了後にエネルギーをモーターに供給できる。スイッチング手段は、インバータが始動される間に起動できる。スイッチング手段は従って、中間回路を事前に充電することにより、モーターの電流が制限された始動を許可および支援することができる。事前充電を行なう間、スイッチング手段は閉じていてもよく、通常動作モードにおいてエネルギー貯蔵器に再充電できる。その結果、エネルギーの貯蔵装置と中間回路のスイッチング可能な結合および分離が実現され、エネルギー貯蔵装置は従って、モーターの動作中に生じる電流ピークから保護され続ける。これにより、エネルギー貯蔵装置の稼働寿命を延ばすと共に、緊急動作能力を向上させることができる。
【0028】
有利な一発展形態によれば、直流電圧中間回路に供給電流I
Mを提供するための結合ダイオードを含むバイパス分岐をスイッチング手段と並列に接続することができ、その結果、スイッチング手段の切替わった状態とは独立に供給電流I
Mが流れることができる。その結果、中間回路の電圧V
ZKがエネルギー貯蔵装置V
Bの電圧より小さい限り、スイッチング手段を起動することなく中間回路にエネルギー貯蔵装置から全く受動的にエネルギーを供給することができ、その結果、能動的な介入なしに装置全体の動作信頼性および緊急動作能力が向上する。制御手段は、電流I
Gを制御することによりエネルギー貯蔵装置の充電を能動的に制御することができ、中間回路への緊急供給は、スイッチング手段のスイッチ位置とは独立に生じる。
【0029】
有利な一発展形態によれば、少なくともスイッチング手段は半導体スイッチング手段であって、インバータ装置の半導体スイッチング手段および/または整流装置の半導体ブリッジダイオードと共に半導体電力モジュールの筐体、好適にはIPM(Integrated Power Module)筐体内に一体化されていてもよい。従来方式のIPM、特にDIP−IPM(Dual−Inline Package IPM)は、インバータ装置および/または整流装置用の電力半導体素子だけでなく、個々の半導体スイッチング手段、例えばブレーキチョッパー用のものも含んでおり、これらの半導体スイッチング手段を少なくとも部分的には能動結合部用の半導体スイッチング手段として用いることができる。従って、小型で望ましい設計が実現できる。
【0030】
有利な一発展形態によれば、インバータ装置は、センサ無しに同期モーターの回転速度を制御する磁場指向ベクトル制御部を含んでいてもよく、当該ベクトル制御部は、少なくとも1つの動作モードにおいて、且つ好適には300〜700rpmという同期モーターのより低い回転速度範囲で、特に500rpmの定格回転速度で回転速度の制御を行なうことができる。しかし、緊急動作モードにおいて、1500rpmを超える、特に2500rpmの範囲における高速回転で迅速な調整をセンサ無しで実現することが保証される。ベクトル制御部は、特にセンサに支援されたコントローラの、例えば回転速度センサまたは回転角度センサの故障時に、IPMモーターの回転速度制御を実行することができる。基本的に、回転速度のセンサレス制御は、あらゆる動作モード、すなわち外乱のない通常動作モード、障害が発生した場合(障害動作モード)、または緊急動作モードにおいて同期モーターを制御できる。センサレス制御は好適には少なくとも、例えばセンサ搭載コントローラの1個以上の回転速度センサまたは回転角度センサが故障した、少なくとも1つの電力システムフェーズに障害が生じた等の障害モードにおいて、または電力システム動作モードと内蔵電源動作モードとの切り替え時に用いられる。更に、センサレス制御は、電圧電源の故障時に、巻線負荷が高い緊急動作モードにおいて回転子ブレードをベーン位置に迅速に調整できる点で有利である。
【0031】
一般に、ベクトル制御は、モーターシャフトと共に回転する空間ベクトルの動きと理解される。これは一般に、モーターからの制御ループのフィードバックおよび測定された固定子電流の連続的な変換に基づく。ベクトル制御の場合、トルクは、d/q変換と呼ばれるものにより、固定子電流のq成分だけにより調整され、d成分は永久磁石励起3相電流同期機内でゼロに近づく。同期モーターの回転D−Q磁場における固定子流と固定子電流(3相システムからのd/q変換による)が平行である場合、トルクはゼロに等しい。一方、直角をなす空間ベクトルの場合、最大トルクが生じる。この場合、励起子流と電機子を通る流れは直流機械と同様に互いに直交する。これは従って、制御の目標とする状態である。従来は、直角をなす空間ベクトルを補償するために、フィードバックを有し、且つポールホイールの位置を示す制御ループが必要とされる。このフィードバックは通常、回転速度センサまたはエンコーダ(リゾルバ、光学的増分および絶対値センサまたは誘導センサ)により実行されてきた。提案するセンサレスコントローラは、モーター内で誘導された対向電圧を測定し直すことにより、ブロック整流(PWMモーター起動)において実装できる。このフィードバックは、従来方式のSPMモーターにおいて、特に低速時に、不都合が増すが、以下に説明するように特にIPMモーターで極めて好都合に用いることができる。
【0032】
インバータ装置は、反転プロセス(回転方向の反転)を制御するマイクロコントローラの適合された制御ソフトウェアを有していてもよく、当該ソフトウェアは一方で、センサ無しで同期モーター、好適にはIPM同期モーターの制御、およびモーターの効率を向上させるべく通常動作モードの間、リラクタンストルクの利用を可能にする。また、ベクトル制御部は、必要なピーク電力を引き続き出力側で利用可能にすべく対応する弱め界磁により、緊急動作を行う間に500V超、特に560V超から300V未満、特に200V未満に低下する電圧を補償できる。無論、同期モーター、特にIPM同期モーターは、異なる大きさのインダクタンスL
dおよびL
qを有し、且つリラクタンストルクと呼ばれるものを有している。異なるインダクタンスを用いて、低回転速度でもセンサ無しにモーターを動作させることができる。従来の種類の機械において、これが可能なのは高速回転の場合だけである。従って、正弦波注入電流がセットポイント電流に重ね合わされ、当該注入電流の測定により、ドライブ内で計算された技術制御オブザーバが現在の回転速度を推定できるようになる。本明細書に記載されるIPM同期モーターは、記述した種類のセンサレス制御に特に良く適している。インバータ装置のソフトウェアで実装されて使用されるモーターコントローラは、以下の特性を有する点が有利である。
【0033】
一般に、電気モーターのトルクに影響を及ぼす以下の二つの方法がある。
・磁束
・トルク形成モーター電流I
q
【0034】
ACモーターが制御される場合、磁束と、トルク形成電流Iqだけでなくd電流I
dと呼ばれるものとの間に直接の関係がある。機械の全電流ドレーンは以下のように得られる。
【0035】
この電流値をモーターの現在の動作点の関数(M
act,n
act)(トルク、回転速度)として最小化することは、損失が最適化されたコントローラの機能である。好適なIPM同期モーターを制御する場合、この種の制御は特にその構造条件付き特性により有利である。これは、特に本明細書に記述する用途でのIPM同期モーターの弱め界磁動作の優れた可能性を必要とする。緊急動作を行う間に求められる回転速度は、動作を行う間の平均回転速度より2〜3倍高い。このために、当該モーターは、特に低回転速度用に構成されていなければならないが、迅速な緊急動作の実行が可能になるように2〜4倍の速度、好適には3倍の速度でも短時間(少なくとも10秒より長く、好適には少なくとも20秒間)動作可能でなければならない。IPMモーターは、前記モーターには埋め込み磁石が堅牢に取り付けられており、従って高い超過速度が可能であって、磁気回路は弱め界磁モードおよびオーバーロード範囲の両方で消磁現象に関して堅牢であるため、構造上の理由からこれらの要件に極めて良く適している。インダクタンスqとd間の差が大きい結果、低回転速度でもモーターのセンサレス制御を実行することが可能である。このため、低回転速度範囲で注入信号と呼ばれるものがモーター電流に刻印され、当該注入信号により、技術制御オブザーバは、構造的に条件付けられた磁気非対称性に基づいて現在の回転子位置を検出できる。センサレス制御の可能性の結果、少なくとも緊急動作においてピッチドライブを調整することができ、回転速度センサが故障した場合でも、完全に負荷を掛けられた影響下でベーン位置と呼ばれる箇所へへ移動することができる。
【0036】
有利な一発展形態によれば、および先の例示的な実施形態に続いて、インバータ装置は、同期モーターの回転速度を制御する1個以上の機械的回転速度センサ(エンコーダ)に接続された従来方式のセンサ制御部を含んでいてもよく、通常動作モードにおける回転速度を制御するセンサ制御部と緊急動作モードにおける回転速度を制御するベクトル制御部とを切り替え可能なスイッチオーバー部を含んでいてもよい。センサ制御部は、回転速度センサの測定された回転速度に従いインバータ装置のPWMスイッチングプロセスを制御し、追加的なピッチ制御部として、好適には通常動作モードにおける同期モーターの起動を行なうことができる。制御スイッチオーバー部は、自律的にまたは要求に応じて、通常動作モードで有効な従来方式のセンサ制御部とベクトル制御部との間でモーター制御の切り替えを実行することができる。これは、通常動作モードの間にセンサの故障が生じた場合、当該故障が上位のコントローラまたはコントローラスイッチオーバー部に報告され、センサレス動作モードへの自動切り替えが生じることを意味する。
【0037】
有利な一発展形態によれば、整流装置は、受け入れる電力システム電流を制限する、および/または中間回路コンデンサおよびインバータ装置の直流電圧エネルギー貯蔵装置の電流制御された充電を行なう電流制御部を含んでいてもよく、通常動作モードにおいて、電流制御部は中間回路電圧V
ZKを事前設定可能な値に調整できる。整流装置の完全に制御された入力ブリッジは、特に、放出された直流電圧エネルギー貯蔵装置の場合に、入力電流を許容可能な最大値に制限できることを保証することができ、エネルギー貯蔵装置に充電する間、オーバーロード状態を防止すべく電流の流れは制限できる。電流制御部は、以下の機能およびタスクを実行することができる。
【0038】
・中間回路全体(インバータ、DC中間回路、およびエネルギー貯蔵装置)を名目中間回路電圧V
ZK、特に560Vまで電流制御的に充電する。
・電力システムからの最大電力排出を調整可能な値I
max=K
2・I
Nom、但しK
2=1...2に制限する。
・中間回路電圧V
ZKは、事前充電回路により調整可能な値に設定できる。
・電流制御部のオーバーロードが生じた場合、有利な緊急制動抵抗部を短時間起動できる。
【0039】
有利な一発展形態によれば、緊急制動抵抗部は、同期モーターの急速制動のために電気エネルギーを振り向けるべく起動可能なように直流電圧中間回路に接続されていてもよく、制動抵抗部は、特に中間回路電圧V
ZKが増大した場合に起動できる。その結果、障害があるエネルギー貯蔵装置または電流制御部の障害発生時に、制動プロセスを含む電力システムに支援された緊急動作を依然として実行可能である。
【0040】
更なる利点を図面の説明に見ることができる。これらの図面は、本発明の例示的な実施形態を示す。図面、説明、および請求項には多くの特徴の組合わせを含んでいる。当業者はまた、これらの特徴を適宜個別に考察し、それらを組合わせて更なる適切な組合わせを形成されよう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
同一の構成要素または同種の構成要素は、各図において同一参照符号により指示される。以下の図面は模式的表現を提供するものであり、従って、例えば、接続線は2個の電気装置間の電気的接続を示し、一般に少なくとも1本の前進線および1本の戻り線を含んでいる。スイッチング記号は、個々の構成要素だけでなく1個以上の構成要素を含む回路アセンブリも表す。
【0043】
図1は、本発明によるピッチドライブ装置10の第1の例示的な実施形態の模式的表現である。ピッチドライブ装置10は、IPMモーターとして実装された同期モーター12と、直流電圧エネルギー貯蔵装置20および回転子ブレード48の所望の回転子ブレード調整を設定すべくモーター制御装置64によりPWM(Pulse Width Modulation)モーター起動線60を介してモーター12を起動するインバータ装置14を含んでいる。
【0044】
ピッチモーター12は、回転速度を変換するピッチギア機構56を介して回転子ブレード48の支持されたルート位置に結合されていて、ピッチモーター12の制御された動作モードが風力発電所または水力発電所の回転子ブレード48のピッチ角(ピッチ)を変えることができる。モーター12の回転位置を決定すべく、回転速度センサ46、回転角度センサ50、および回転子ブレード48の終端停止位置を示すことができる終端位置センサ52が、1個以上のセンサ線72を介して、好適にはセンサバスを介して、モーター制御装置64に接続され、その結果、モーター制御装置64に含まれるセンサ制御部32が、モーター12の回転速度および回転角度を受信することができる。モーター制御装置64は、モーター12の所望の回転方向および回転速度を設定すべく、センサ装置により、インバータ装置14に含まれるインバータの正しい段階的な起動を実行することができる。モーター12は更に、ブレーキ54により制動することができ、ブレーキ54はモーター制御装置64により起動される。
【0045】
通常動作モードにおいて、電気エネルギーは、電力供給システム64を介して引き出され、上流のヒューズ素子Fがピッチドライブ装置10を過電圧から保護する。供給電圧は、風力発電所の固定ゴンドラのシステムスリップリングを介して回転ロータ軸に伝達される。ピッチドライブ装置10内では、電力システム側の400Vの3相振動電流が整流装置16により、一般にV
ZK=560V(400のV*1.41)である中間回路18の直流電圧に整流される。整流装置16はまた、ピッチドライブ装置10が始動したときに、特にエネルギー貯蔵装置20を充電し、所望の中間回路電圧V
ZKをもたらすべく、減少した電流が流れるように、電流の流れを監視および制限する電流制御部36を含んでいる。整流装置16の整流された電圧V
ZKを平滑化して、インバータ装置14の高周波数切り替えプロセスにより生じたピーク電圧を逃がす中間回路コンデンサ26が、中間回路18の電位導体間において中間回路18に接続されている。更に、制動抵抗部38が、半導体スイッチ素子であり得るブレーキスイッチ素子62によりシフトされるように、中間回路18に接続されている。モーター制御装置64は、ブレーキスイッチ素子62を起動させることにより、中間回路18から制動抵抗部38へ電流を通すことができ、その結果、中間回路18からエネルギーを逃がすことができ、従ってピッチモーター12を電気的に制動できる。
【0046】
少なくとも緊急動作モードにおいて、直流電圧エネルギー貯蔵装置20は、接触器接点K
0および結合部24を介して中間回路18に直接接続可能である。手動で起動する必要がある接触器接点K
0およびスイッチQ
1は、例えば修理またはメンテナンスの場合に、中間回路18からエネルギー貯蔵装置20の電気的切断を許可するエネルギー貯蔵スイッチング装置66として機能する。エネルギー貯蔵装置20は、高容量コンデンサ装置22へのコンデンサの直列および並列接続を含んでいて、エネルギー貯蔵装置20は、中間回路18の電位レベルV
ZKのエネルギーを貯蔵することができ、緊急動作モードにおいて、少なくともモーター12の緊急動作を可能にすべく貯蔵された電気エネルギーを短時間中間回路18に送ることができる。エネルギー貯蔵装置20は、結合部24を介して中間回路18に結合されていて、結合部24は、エネルギー貯蔵装置20の負荷を減らすべく、中間回路電圧V
ZKとエネルギー貯蔵装置20の電圧との間にわずかな電圧変動が生じた場合に電流の流れを抑制する機能を有し、当該電圧変動を中間回路コンデンサ26が取り込むことができる。結合部24は従って、所定の仕方でエネルギー貯蔵装置20と中間回路コンデンサ24との間で機能を分散させる役割を果たす。モーター制御装置64はまた、通常動作モードから緊急動作モードへ遷移した際に、センサ制御部32と磁場指向ベクトル制御部30との間で切り替わることができる制御スイッチング部34を含んでいる。磁場指向ベクトル制御部30は、測定されたモーター電流に基づいてIPMモーター12のセンサレス制御を実行し、IPMモーターの特徴的な構成により、特に低回転速度の範囲でピッチドライブの駆動挙動の正確な制御が可能になる。
【0047】
緊急動作モードにおいて、例えば、電力供給システム68、整流装置16、回転速度センサ46、回転角度センサ50、終端位置センサ52等が故障した場合、モーター制御装置64の制御スイッチング部34がセンサ制御部32から、測定された注入電流に基づいてIPMモーター12の回転速度を制御するベクトル制御部30に切り替わる。この場合、エネルギー貯蔵装置20からのエネルギーは中間回路18に伝達され、中間回路18の電圧V
ZKは200V未満に低下し得る。モーター12のIPM特性により、中間回路電圧V
ZKが低下して回転速度が低い場合であっても、磁場指向PWM起動を実行することができ、その結果、少なくとも回転子ブレード48のベーン位置に到達できる。
【0048】
図2に、本発明によるピッチドライブ装置10の更なる例示的な実施形態を示す。
図2に示すピッチドライブ装置10は、
図1に示す実施形態にほぼ一致しており、従って個々の構成要素の説明は大幅に省略する。整流装置16は、電力供給システム68の3相の電力システム電圧からの中間回路18の直流電圧中間回路電圧V
ZKを整流すべく3相ブリッジ整流器を含んでいる。中間回路18において、インバータ装置から整流装置16への電流の逆流を予防すべく1個以上の電流導電ダイオード44がスイッチオンされ、その結果、生じたピーク電圧を中間回路コンデンサ26だけ取り込むことができる。インバータ装置14は、中間回路18の直流電圧V
ZKを、回転速度制御下にある同期モーター12を動作させるPWM変調された起動位置電圧に変換すべく、6個の半導体スイッチング素子、好適にはIGBTスイッチング素子を含む3ブリッジインバータを含んでいる。インバータ装置14の半導体スイッチング素子は、通常動作モードにおいてセンサ制御部32により、また緊急動作モードにおいてベクトル制御部30により、正しいフェーズで切り替えられ、制御スイッチング部34は、通常動作モードから緊急動作モードへの遷移に際してこれら2個の制御装置30、32の間で切り替わる。しかし、ベクトル制御部30が通常動作モードと緊急動作モードの両方において回転速度制御を実行することも考えられる。整流装置16は、中間回路18に流入する電流のレベルを制御して、特にピッチドライブ装置10が始動した際に過剰な電流が流れるのを予防し、且つ中間回路電圧V
ZKのレベルを設定可能な電流制御部36を含んでいる。整流装置16により供給される電流を測定すべく、電流のレベルをモーター制御装置64に通知する電流測定装置42がDC中間回路18に接続されており、モーター制御装置64は電流制御部36に電流のレベルを制御させることができる。
【0049】
エネルギー貯蔵装置20が結合部24を介して中間回路18に直接接続されていて、結合部24は、電位の事前決定可能な差異V
fを超えるまで、中間回路18とエネルギー貯蔵装置20の間でのエネルギーの交換ができない。設計、機能する方法、および緊急動作モードにおけるシーケンスの観点から、
図2の例示的な実施形態は
図1のそれとかなりの程度一致している。
【0050】
図3は、エネルギー貯蔵装置20がピッチドライブ装置10の中間回路18に結合することを可能にする受動結合部24の4種の例示的な実施形態の模式図である。いくつかの場合において、電圧変動の補償、中間回路電圧V
ZKの平滑化、およびピーク電圧の取り込みが可能な中間回路コンデンサ26が中間回路18に接続されている。エネルギー貯蔵装置20は、直列および/または並列に接続されたコンデンサによりバックアップエネルギー貯蔵器の高容量エネルギー貯蔵を可能にするコンデンサ装置22を含んでいる。エネルギー貯蔵装置20は、ピッチドライブ12の直前に通知された緊急動作移動用にエネルギーを利用可能にし、反転プロセスの場合に再生エネルギーを吸収して、高トルクが必要とされる場合に電力ピーク用にエネルギーを利用可能にする機能を有している。クラッチ部24は、中間回路18とエネルギー貯蔵装置20の内部コンデンサ電圧との間の電圧差が小さい場合、中間回路コンデンサ26はこれらの電圧差に補償するために用いられるため、電流が流れるのを防止する役割を果たす。本発明の結合部24は個々の素子または以下に示す結合部24の素子の組合わせを含んでいてもよい。
【0051】
図3aに、閾値電圧V
fを有する結合ダイオード40としての2個の相互接続された半導体電力ダイオードを含む結合部24の第1の例示的な実施形態を示す。エネルギー貯蔵装置20と中間回路18の間における電流の流れは、電位の差が結合部24の閾値電圧V
fを超えるまで生じない。この閾値電圧V
fは、必要に応じて複数のダイオードを直列に接続することにより増大させることができ、その結果、適当であれば、中間回路コンデンサ26とエネルギー貯蔵装置20の間で「作業分担」が可能である。
【0052】
図3bに、中間回路30の電位レール間に、相互接続された結合ダイオード40の上流に並列に接続された1個以上の追加的中間回路コンデンサ28を含む結合部24の第2の例示的な実施形態を示す。追加的中間回路コンデンサ28は、中間回路コンデンサ26の容量を増大させることにより、比較的高いピーク電圧を緩和し、リップルを更に抑制すると共により安定した中間回路電圧V
ZKを可能にする。
【0053】
図3cに、インダクタ回路90を含む結合部24の第3の例示的な実施形態を示す。インダクタンスコイル回路90は、1個以上のインダクタを含んでいて、これらを通って電流が直流電圧エネルギー貯蔵装置20と直流電圧中間回路18の間を流れることができる。インダクタ回路90は、電力ピークを平滑化して、インバータ装置14の高速スイッチングプロセス、ネットワーク線の故障、モーター12の負荷変化、その他障害発生時に生じ得る調波を減衰させる。その結果、エネルギー貯蔵装置20は、一定の負荷が掛けられて高周波電流変動から保護され、その結果稼働寿命が延びる。
【0054】
更に、
図3dに、ゼナーダイオードスイッチ92を含む結合部24を示す。ゼナーダイオードスイッチ92は、中間回路電圧V
ZKが直流電圧エネルギー貯蔵装置20の電圧V
Bよりもツェナー電圧V
zの絶対値だけ低くなるまで、エネルギー貯蔵装置20から中間回路18の方向に電流を流れさせないという目的を果たす1個以上のゼナーダイオードまたは比較可能な構成要素を含んでいてもよい。ゼナーダイオードに固有の特徴により、中間回路18の再生可能エネルギーはエネルギー貯蔵装置20に転送される。エネルギー貯蔵器20の電圧V
Bが中間回路電圧V
ZKよりもV
zだけ高い限り、エネルギー貯蔵器20に蓄えられたエネルギーを中間回路18へ出力させることができる。これは、動作の間、エネルギー貯蔵器20の電圧V
Bが、V
ZK+V
z〜V
Bmax(エネルギー貯蔵器20の最大電圧)の範囲で変動し得ることを意味する。
【0055】
図4に、中間回路18のエネルギー貯蔵装置20をスイッチオン/オフでき、その結果エネルギー貯蔵装置20を中間回路18から切り離すことができる能動結合部24を示す。結合部24は、スイッチング手段96、この場合は電力トランジスタ、例えばIGBTに接続された制御装置94を含んでいる。更に、制御手段94は、中間回路18がスイッチオンされた状態でエネルギー貯蔵装置24へと流れることができる充電電流I
Gを検出する電流センサ100と、中間回路18におけるV
ZKだけでなくエネルギー貯蔵装置20における電圧V
Bを検出可能な2個の電圧測定センサとを含んでいる。最後に、結合部24は、インダクタンス回路90と、結合ダイオード40を含んでいてスイッチング手段96を迂回するバイパス分岐102とを含んでおり、その結果、U
B>U
ZKであるならば電流I
Mがエネルギー貯蔵装置20から中間回路18まで流れることができる。制御手段94によりスイッチング手段96がスイッチオンされた結果、再生電流または充電電流I
Gが中間回路18からエネルギー貯蔵装置20に流入することができる。中間回路電圧U
Bがエネルギー貯蔵器電圧U
ZKのレベル未満に低下した場合、エネルギー貯蔵装置はダイオード40を介して中間回路18に電流を供給する。スイッチング手段94は例えば、上位コントローラを介してモーター制御装置(図示せず)に接続されていてもよく、エネルギー貯蔵器20の正規のおよび/または制御された充電に、インバータ14の増強中における起動に、あるいはモーター動作モード中またはモーター12が特定の動作範囲、例えば高負荷動作モードまたは高周波動作モードにある場合における切断に関する外部命令を受信することができる。制御装置94は、例えば外部スイッチオンまたはスイッチオフ信号を受信した場合にスイッチング手段96を静的に起動することができ、または、ある制御方法により、例えば充電電流I
Gを制御する閉制御ループにより、例えばスイッチング手段96の制御された起動を実行することができる。
【0056】
図5は、IPM同期機の永久磁石回転子74の基本設計の模式図である。回転子74は回転子軸80を有し、隠れた磁石の数に対応する輪郭付きポールバルジングを有する回転子積層磁心76を含んでいる。回転子積層磁心76は、渦電流損失を抑制すべく積層されている。各々が回転子軸80の回りに90°ずれている4個の永久磁石78が、回転子積層磁心の内部に埋め込まれている。すなわち、SPMモーターと対照的に内側へ放射状にずれている。この設計により、この種のモーターは、特に低回転速度の範囲で、エネルギー貯蔵装置20により利用可能になる低い中間回路電圧の場合における弱め界磁動作モードにおいて優れたリラクタンス効果を有し、センサレス制御に極めて良く適している。
【0057】
図6に、好適なIPMモーターのトルク/回転速度M/rpm特性曲線を、同一電力データを有するSPMモーターと対比している。IPMモーターは、同一電力排出に対してより高い定格回転速度範囲を有し、同一回転速度rpmに対して大幅に高いトルクMを有しているため、特に弱め界磁動作モードにおいてSPMモーターよりも極めて優れている。従って、特にエネルギー貯蔵装置20により利用可能になる中間回路電圧V
ZKが低い緊急動作モードにおいて、高回転速度rpmで緊急動作用に高トルクMを利用可能にすることができ、回転センサの故障時に、優れたリラクタンス効果により、低い回転速度rpmであってもセンサレス磁場指向ベクトル制御を実行することができる。