特許第5936213号(P5936213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936213
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】PDT効果増強剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/11 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K31/11
   A61K31/136
   A61K31/197
   A61K41/00
   A61P43/00 121
   A61P35/00
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-520935(P2014-520935)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2013003728
(87)【国際公開番号】WO2013187069
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-136227(P2012-136227)
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】508123858
【氏名又は名称】SBIファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 良夫
(72)【発明者】
【氏名】宇都 義浩
(72)【発明者】
【氏名】堀 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 究
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−045656(JP,A)
【文献】 特開昭56−012310(JP,A)
【文献】 特表2011−506377(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/146089(WO,A1)
【文献】 特表2006−502081(JP,A)
【文献】 特開2001−002641(JP,A)
【文献】 米国特許第03652770(US,A)
【文献】 特開昭54−126731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 − 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用することを特徴とする、以下の式(I)で示される化合物を含む、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤。
【化1】
[式中、Rは−CHO又は−CH=NR(但し、Rは、置換若しくは非置換のフェニル基)を示し、
,Rは、それぞれH又はフッ素、塩素、臭素、及びニトロ基から選ばれる電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、
,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す。]
【請求項2】
式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドから選ばれることを特徴とする請求項1記載の増強剤。
【請求項3】
PDTが、がんを対象とすることを特徴とする請求項1又は2記載の増強剤。
【請求項4】
がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする請求項記載の増強剤。
【請求項5】
光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤を調製するための、以下の式(I)で示される化合物の使用。
【化2】
[式中、Rは−CHO又は−CH=NR(但し、Rは、置換若しくは非置換のフェニル基)を示し、
,Rは、それぞれH又はフッ素、塩素、臭素、及びニトロ基から選ばれる電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、
,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す。]
【請求項6】
式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドから選ばれることを特徴とする請求項記載の使用。
【請求項7】
PDTが、がんを対象とすることを特徴とする請求項5又は6記載の使用。
【請求項8】
がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする請求項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感剤又は5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはその誘導体又はそれらの塩(以下、これらを合わせて「ALA類」ということがある)と併用される化合物を含む、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がん(悪性腫瘍)は日本における最大の死因となっており、日本国民の2人に1人が罹患するといわれている。また、他の先進国においても、がんは死因の上位にランクされている。そのため、がんの有効な治療法の開発は、日本国民を始め、世界の人々にとっての悲願である。しかし、がんは患者自身の細胞であるため、副作用を伴わずに、がんを効果的に治療し得る有効な治療剤や治療方法の開発は容易ではなく、未だ十分な治療剤や治療方法は得られていない。
【0003】
近年、広く用いられるようになってきた光線力学的治療(Photodynamic Therapy:以下「PDT」ともいう。)は、治療が簡便で、生体侵襲性が小さく、臓器温存が可能であることなどから、近年、QOLを考慮した新たながん治療法として注目されている。PDTは、投与されたポルフィリン関連化合物が直接腫瘍組織や新生血管へ特異的に集積した後、レーザー光などの光の励起により生ずる一重項酸素が細胞を変性、壊死に陥らせることにより治療効果を発揮するものである。
【0004】
がん治療を目的に国内で承認されている光増感剤には、ヘマトポルフィリン誘導体のポルフィマーナトリウム(商品名:フォトフリン)や、植物クロロフィル由来のタラポルフィンナトリウム(商品名:レザフィリン)がある。ポルフィマーナトリウムは代謝が遅く、表皮組織付近に集積しやすい性質を持っているため、日光過敏症をおこすことが知られている。
【0005】
一方、5−ALAは動物や植物や菌類に広く存在する、生体内に含まれる天然アミノ酸の一種であり、クロロフィルやヘムの共通前駆体として細胞内で代謝を受ける。5−ALA自体には光感受性はないとされ、PDTにおいては、投与されたALA類がヘム生合成経路の一連の酵素群によりプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX;PpIX)に代謝され、PpIXが、直接腫瘍組織や新生血管へ特異的に集積した後、レーザー光などの光により励起状態になることで生ずる一重項酸素が細胞を変性、壊死に陥らせることにより治療効果を発揮するとされており、ALA類を用いた光線力学的療法(ALA−PDT)の研究が進められている。また、PDTにおける作用増強剤として、血管拡張性麻酔薬からなる、光線力学的療法用剤のがん細胞壊死作用増強剤が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、がんの細胞種や悪性度によっては、ALA−PDTの効率が低いいわゆるALA−PDT耐性の細胞があることも知られている。例えば、がん細胞内でPpIX等のポルフィリンを基質とするABCトランスポーターファミリーの一つであるABCG2が高発現することによりPpIXが細胞質へ排出され、PpIXが十分に蓄積しない細胞は、ALA−PDT効果が低い場合があることが確認されている(非特許文献1参照)。本発明者らは、これまでABCG2阻害剤を併用し、ABCG2自体をブロックしてしまう方法や、ABCG2トランスポーターの基質である抗がん剤と5−アミノレブリン酸とを併用することによって抗がん剤の抗がん作用を増強する手法を考案してきた。
【0007】
しかしながら、すべてのALA−PDT耐性細胞において、必ずしもABCG2の高発現が認められるというわけではなく、ALA−PDT耐性の原因がABCG2にあるということはできない。ALA−PDT耐性を示すがん細胞の中には、かえって、ABCG2の発現が低いものも存在し、当然ながらこれらの細胞には上述のABCG2阻害剤やABCG2のブロック方法による効果は認められず、実質上PDTによる治療の限界とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再表2007/086395号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tamura, A. et al, (2007) Drug Metabolism and Pharmacokinetics 22, No.6, 428-440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、PDTを行うに際し、標的細胞、特にABCG2の発現が低いALA−PDT耐性がん細胞に対して、PDT効果を増強することのできる増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、18種類の化合物のALA−PDTにおける作用効果増強作用を、ABCG2の発現が低い5−ALA−PDT耐性がん細胞であることが確認されているヒト胃がん細胞のMKN−45細胞を用いて検討したところ、ALA−PDTにおいて、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、又は3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドを、ALA類と併用して用いると、顕著にPDTの効果を増強することを見いだし、さらに、本発明の増強剤は、正常細胞には作用を及ぼさないことを確認して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、[1]光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用することを特徴とする、以下の式(I)
【0013】
【化1】
【0014】
[式中、Rは−CHO又は−CHOに変換可能な基を示し、R,Rは、それぞれH又は電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、R,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す]で示される化合物を含む、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤に関する。
【0015】
また、本発明は、[2]式(I)における−CHOに変換可能な基が、−CH=NR、−CH=NOR、又は−CH(OR)OR10であって、Rは、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基を示し、Rは、水素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を示し、R,R10は、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基を示し、あるいは、R,R10は1つのジオール分子を構成するものでもよく、その場合、R及びR10は、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基、又は置換若しくは非置換のカテコール基を示す上記[1]記載の増強剤や、[3]式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒド(5−クロロサリチルアルデヒド)、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒド(3−クロロサリチルアルデヒド)から選ばれることを特徴とする上記[1]記載の増強剤や、[4]PDTが、がんを対象とすることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の増強剤や、[5]がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする上記[4]記載の増強剤に関する。
【0016】
さらに、本発明は、[6]光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用して、上記式(I)[式中、Rは−CHO又は−CHOに変換可能な基を示し、R,Rは、それぞれH又は電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、R,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す。]で示される化合物を対象に投与することを特徴とする光線力学的治療(PDT)の効果を増強する方法や、[7]上記式(I)[式中、Rは、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基を示し;Rは、水素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を示し;R,R10は、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基を示し、あるいは、R,R10は1つのジオール分子を構成するものでもよく、その場合、R及びR10は、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基、又は置換若しくは非置換のカテコール基を示す。]における−CHOに変換可能な基が、−CH=NR、−CH=NOR、又は−CH(OR)OR10であることを特徴とする上記[6]記載の方法や、[8]上記式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドから選ばれることを特徴とする上記[6]記載の方法や、[9]PDTが、がんを対象とすることを特徴とする上記[6]記載の方法や、[10]がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする上記[9]記載の方法に関する。
【0017】
さらに、本発明は、[11]光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、光線力学的治療(PDT)の効果を増強するための、上記式(I)[式中、Rは−CHO又は−CHOに変換可能な基を示し、R,Rは、それぞれH又は電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、R,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す。]で示される化合物や、[12]上記式(I)[式中、Rは、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基を示し;Rは、水素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を示し;R,R10は、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基を示し、あるいは、R,R10は1つのジオール分子を構成するものでもよく、その場合、R及びR10は、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基、又は置換若しくは非置換のカテコール基を示す。]における−CHOに変換可能な基が、−CH=NR、−CH=NOR、又は−CH(OR)OR10であることを特徴とする上記[11]記載の化合物や、[13]上記式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドから選ばれることを特徴とする上記[11]記載の化合物や、[14]PDTが、がんを対象とすることを特徴とする上記[11]〜[13]のいずれか記載の化合物や、[15]がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする上記[14]記載の化合物に関する。
【0018】
さらに、本発明は、[16]光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤を調製するための、上記式(I)[式中、Rは−CHO又は−CHOに変換可能な基を示し、R,Rは、それぞれH又は電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、R,R,Rは、それぞれH又は−OHを示す。]で示される化合物の使用や、[17]上記式(I)[式中、Rは、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基を示し;Rは、水素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を示し;R,R10は、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基を示し、あるいは、R,R10は1つのジオール分子を構成するものでもよく、その場合、R及びR10は、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基、又は置換若しくは非置換のカテコール基を示す。]における−CHOに変換可能な基が、−CH=NR、−CH=NOR、又は−CH(OR)OR10であることを特徴とする上記[16]記載の使用や、[18]上記式(I)で示される化合物が、N−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン、3,5−ジクロロサリチルアルデヒド、3,5−ジクロロベンツアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドから選ばれることを特徴とする上記[16]記載の使用や、[19]PDTが、がんを対象とすることを特徴とする上記[16]〜[18]のいずれか記載の使用や、[20]がんが、ABCG−2低発現細胞から構成されていることを特徴とする上記[19]記載の使用に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PDTにおける光増感剤等の投与量を軽減することができ、PDTの標的細胞がALA−PDT耐性細胞である場合にもPDTの治療効果を増強することができ、患者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】イソボログラムによる評価方法の模式図を示す。A剤とB剤の2つの薬剤を併用した場合に50%細胞増殖抑制を示す薬剤濃度をグラフにプロットしたとき、これらのポイントが曲線より低濃度側にある場合を相乗効果がある(synergistic)と判定できる。
図2】濃度が0,0.41,1.23,3.70,11.1,33.3,及び100μMとなるように調製したN−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン(TX−816)と、濃度が0,50,100,200μMとなるように調製したALAとを添加して5−ALA−PDTを行った場合の結果を示す図である。
図3】TX−816の5−ALA−PDT増強効果をイソボログラムによって検討した結果を示す図である。TX−816の5−ALA−PDT増強効果は、相乗効果の範疇に属することが確認された。
図4】TX−816の各濃度における細胞増殖抑制率(inhibition ratio:IR)を片変数グラフにプロットしたグラフを示す図である。IC50(50%阻害濃度)値は36.5μMと計算された。
図5】(a)TX−816、(b)3,5−ジクロロサリチルアルデヒド(DCSA)、(c)2−クロロ−4−ニトロアニリン(CNA)のそれぞれの構造を示す図である。
図6】表3に表される被検化合物(化合物番号:3,6,7,8,11,12)について、IRの比較を示す図である。
図7】表5に表される被検化合物(整理番号:7−2、7−3、7−4、7−5、7−6、7−7)について、IRの比較を示す図である。
図8】DCSAと3-fluorosalicylaldehyde(3−FSA)とのIRの比較を示す図である。
図9】50μMの5−ALA単独処理(a)と、50μMの5−ALAと100μMのDCSAとの同時処理(b)とにおける、MKN−45細胞への細胞内PpIXの蓄積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のPDTの効果増強剤としては、光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、上記式(I)で示される化合物を含むものであれば特に制限されず、本発明のPDTの効果増強方法としては、光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用して、上記式(I)で示される化合物を対象に投与する方法であれば特に制限されず、本発明の化合物としては、光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、光線力学的治療(PDT)の効果を増強するための、上記式(I)で示される化合物であれば特に制限されず、本発明の使用としては、光増感剤又はアミノレブリン酸(ALA)類と併用する、光線力学的治療(PDT)の効果増強剤を調製するための、上記式(I)で示される化合物の使用であれば特に制限されないが、上記PDTとは、光増感剤やALA類の投与により、光に反応する化合物が蓄積した病変部の標的細胞に光を照射することにより治療を行う方法であり、ALA−PDTは、それ自身は光増感作用を有さないALA類を投与し、色素生合成経路を経て誘導されたPpIXを標的細胞内に特異的に蓄積させ、光の照射によりPpIXが周囲の酸素分子を励起し、その結果生成する一重項酸素が、その強い酸化力により殺細胞効果を奏することを利用する治療方法であり、上記PpIXを励起させる光の波長としては、400nm〜700nm、好ましくは625nm〜642nmを挙げることができ、なかでも635nmが好ましい。
【0022】
上記式(I)中、Rは−CHO又は−CHOに変換可能な基を示し、R、Rは、それぞれH又は電子吸引性基(但し、少なくとも一方は電子吸引性基である。)を示し、R、R、Rは、それぞれH又は−OHを示す。
【0023】
本発明における−CHOに変換可能な基は、加水分解により−CHOへと変換される基であり、具体的には−CH=NRで示されるイミン、−CH=NORで示されるオキシム、又は−CH(OR)OR10で示されるアセタールを挙げることができる。
【0024】
上記R,Rにおける電子吸引基としては、それぞれフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、ニトロ基、スルホニル基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基を挙げることができ、フッ素、塩素、臭素、及びニトロ基が好ましく、フッ素又は塩素がより好ましい。
【0025】
上記Rとしては、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基を挙げることができ、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換のフェニル基、あるいは置換若しくは非置換のナフチル基が好ましく、置換若しくは非置換のフェニル基がより好ましい。
【0026】
上記Rとしては、水素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を挙げることができる。
【0027】
上記R、R10としては、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルケニル基、置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基を挙げることができ、
あるいは、R、R10は1つのジオール分子を構成するものでもよく、その場合、R及びR10としては、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基、又は置換若しくは非置換のカテコール基を挙げることができる。
【0028】
上記R、R、R10において、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロブチルメチル基、へキシル基、メチルペンチル基、エチルブチル基、3,3−ジメチル−ブチル−2−イル基、シクロペンチルメチル基、2’,2’−ジメチルシクロプロピルメチル基、1−メチルシクロプロピルメチル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができる。
【0029】
上記R,R,R10において、それぞれ置換若しくは非置換の炭素数3〜6の環状のアルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、1−メチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、2’,2’−ジメチルシクロプロピル基、1−メチルシクロブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、シクロヘキシル基が好ましい。
【0030】
上記R,R,R10において、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、クロトニル基、ブテニル基、クロトノニトリル基、ペンテニル基、2−オキソ−3−ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニルメチル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、アリル基が好ましい。
【0031】
上記R,R,R10において、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数3〜6の環状のアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、2−オキソ−シクロヘキセニル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、シクロヘキセニル基が好ましい。
【0032】
上記R,R,R10において、それぞれ置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜6のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、プロパルギル基が好ましい。
【0033】
上記R,R,R10において、それぞれ置換若しくは非置換の炭素数3〜9の複素環基としては、ピロリジニル基、N−メチルピロリジニル基、N−エチルピロリジニル基、N−アセチルピロリジニル基、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、2−オキソテトラヒドロフラニル基、2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル基、3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、ピロリル基、フリル基、チオフェニル基、2−チオフェンカルボン酸メチル−3−イル基、4−メチル−2−チオフェンカルボン酸メチル−3−イル基、ピペリジニル基、N−メチルピペリジニル基、N−エチルピペリジニル基、N−イソプロピルピペリジニル基、4−ピロリジニルピペリジニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、2−オキソテトラヒドロピラニル基、2,5−ジオキソテトラヒドロピラニル基、3−アセチルアミノ−4,5−ジヒドロキシ−6−ヒドロキシメチルテトラヒドロピラニル基、3,4,5−トリヒドロキシ−6−ヒドロキシメチルテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピリジニル基、メチルピリジニル基、エチルピリジニル基、メトキシピリジニル基、エトキシピリジニル基、メトキシカルボニルピリジル基、ニトロピリジニル基、シアノピリジニル基、3−ニトロ−4−メチルピリジニル基、2−ニトロ−5−メチルピリジニル基、イミダゾリル基、N−メチルイミダゾリル基、メチルイミダゾリル基、シアノイミダゾリル基、ニトロイミダゾリル基、ピラゾイル基、N−メチルピラゾイル基、N−フェニルピラゾイル基、メチルピラゾイル基、tert−ブチルピラゾイル基、フェニルピラゾイル基、チアゾリル基、ニトロチアゾリル基、メチルチアゾリル基、ジメチルチアゾリル基、メトキシチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ニトロベンゾチアゾリル基、メチルベンゾチアゾリル基、ジメチルベンゾチアゾリル基、メトキシベンゾチアゾリル基、シアノイミダゾリル基、ピラジニル基、メチルピラジニル基、インドリル基、メチルインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ニトロベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、クロメニル基、イソクロメニル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、ピリジニル基、クロロピリジニル基、ニトロピリジニル基、クロロニトロピリジニル基が好ましい。
【0034】
上記Rにおいて、置換若しくは非置換のフェニル基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、エトキシフェニル基、ジエトキシフェニル基、トリエトキシフェニル基、エチニルフェニル基、ニトロフェニル基、ジニトロフェニル基、トリニトロフェニル基、3−メトキシ−2−メチルフェニル基、メチルニトロフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、イソプロポキシフェニル基、2,3−メチレンジオキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル基、2−メチル−5−イソプロピルフェニル基、2−tert−ブチル−6−メチルフェニル基、ビフェニル基、インダニル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、2−クロロ−4−ニトロフェニル基、2−ニトロ−4−クロロフェニル基、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニル基、2,6−ニトロ−4−クロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2−クロロ−4−シアノフェニル基、2−シアノ−4−クロロフェニル基、2,6−ジクロロ−4−シアノフェニル基、2,6−シアノ−4−クロロフェニル基が好ましく、2−クロロ−4−ニトロフェニル基がより好ましい。
【0035】
上記Rにおいて、置換若しくは非置換のナフチル基としては、ナフチル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、メトキシナフチル基、ジメトキシナフチル基、トリメトキシナフチル基、エチルナフチル基、ジエチルナフチル基、トリエチルナフチル基、エトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基、トリエトキシナフチル基、ニトロナフチル基、ジニトロナフチル基、トリニトロナフチル基、メチルニトロナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、テトラヒドロキシナフチル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、ニトロナフチル基、クロロナフチル基、クロロニトロナフチル基が好ましい。
【0036】
上記R、R10において、R,R10が1つのジオール分子を構成する場合、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルカンジオール基としては、エチレンジオール基、1,2−プロパンジオール基、1,3−プロパンジオール基、1,2−ブタンジオール基、1,3−ブタンジオール基、1,4−ブタンジオール基、2,3−ブタンジオール基、1,2−ジヒドロキシ−2−メチルプロパン基、2−メチル−1,3−プロパンジオール基、2−メチル−1,4−ブタンジオール基、1,2−ペンタンジオール基、1,3−ペンタンジオール基、1,4−ペンタンジオール基、1,5−ペンタンジオール基、2,3−ペンタンジオール基、2,4−ペンタンジオール基、1,2−ヘキサンジオール基、1,3−ヘキサンジオール基、1,4−ヘキサンジオール基、1,5−ヘキサンジオール基、1,6−ヘキサンジオール基、2,3−ヘキサンジオール基、2,4−ヘキサンジオール基、2,5−ヘキサンジオール基、3,4−ヘキサンジオール基、1,5−ジヒドロキシ−2−メチルペンタン基、1,2−ヘプタンジオール基、1,3−ヘプタンジオール基、1,4−ヘプタンジオール基、1,5−ヘプタンジオール基、1,6−ヘプタンジオール基、1,7−ヘプタンジオール基、2,3−ヘプタンジオール基、2,4−ヘプタンジオール基、2,5−ヘプタンジオール基、2,6−ヘプタンジオール基、3,4−ヘプタンジオール基、3,5−ヘプタンジオール基、1,2−オクタンジオール基、1,3−オクタンジオール基、1,4−オクタンジオール基、1,5−オクタンジオール基、1,6−オクタンジオール基、1,7−オクタンジオール基、1,8−オクタンジオール基、2,3−オクタンジオール基、2,4−オクタンジオール基、2,5−オクタンジオール基、2,6−オクタンジオール基、2,7−オクタンジオール基、3,4−オクタンジオール基、3,5−オクタンジオール基、3,6−オクタンジオール基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、エチレンジオール基、1,2−プロパンジオール基、1,3−プロパンジオール基、1,2−ブタンジオール基、1,3−ブタンジオール基、2,3−ブタンジオール基、1,2−ペンタンジオール基、1,3−ペンタンジオール基、2,3−ペンタンジオール基、2,4−ペンタンジオール基、1,2−ヘキサンジオール基、1,3−ヘキサンジオール基、2,3−ヘキサンジオール基、2,4−ヘキサンジオール基、3,4−ヘキサンジオール基が好ましく、エチレンジオール基、1,2−プロパンジオール基、1,3−プロパンジオール基、1,3−ブタンジオール基、2,4−ペンタンジオール2,4−ヘキサンジオール基がより好ましい。
【0037】
上記R、R10において、R、R10が1つのジオール分子を構成する場合、置換若しくは非置換のカテコール基としては、カテコール基、メチルカテコール基、エチルカテコール基、ビニルカテコール基、プロピルカテコール基、アリルカテコール基、ブチルカテコール基、メトキシカテコール基、エトキシカテコール基、プロポキシカテコール基、ブトキシカテコール基、フルオロカテコール基、クロロカテコール基、ブロモカテコール基、アセチルカテコール基、ニトロカテコール基、シアノカテコール基、α,β−ジヒドロキシナフチル基、及びこれらのフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン置換体を挙げることができ、カテコール基、メチルカテコール基、メトキシカテコール基、エトキシカテコール基、プロポキシカテコール基、α,β−ジヒドロキシナフチル基が好ましく、メトキシカテコール基がより好ましい。
【0038】
上記式(I)において、Rが−CH=NRであり、RがOHであり、R及びRが塩素であり、R及びRが水素であり、Rが2−クロロ−4−ニトロフェニルであるN−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリンや、Rが−CHOであり、RがOHであり、R及びRが塩素であり、R及びRが水素である3,5−ジクロロサリチルアルデヒドや、Rが−CHOであり、R、R及びRが水素であり、R及びRが塩素である、3,5−ジクロロベンツアルデヒドや、
が−CHOであり、RがOHであり、R、R及びRが水素であり、Rが塩素である5−クロロサリチルアルデヒドや、Rが−CHOであり、RがOHであり、Rが塩素であり、R、R及びRが水素である3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドや、
が−CHOであり、RがOHであり、Rがフッ素であり、R、R及びRが水素である3−フルオロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒドを特に好適に挙げることができる。
【0039】
式(I)で表される化合物のうち、Rが−CHOに変換可能な基である−CH=NRであるとき、これらはRが−CHOである式(I)で表される化合物とRNHとの脱水縮合反応で得ることができる。具体的には、Rが−CHOである式(I)で表される化合物とRNHとをジクロロメタン等の有機溶媒に溶解し、脱水剤を加えることで目的の化合物を得ることができる。このとき、脱水剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、中性アルミナ、塩基性アルミナなどを用いることができる。前記反応で、目的化合物が得られない場合若しくは得にくい場合は、ベンゼン又はトルエンを反応溶媒とし、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等の不揮発性の酸を触媒として用い、ディーン・スターク反応装置を用いることで目的の化合物を得ることができる。
【0040】
式(I)で表される化合物のうち、Rが−CHOに変換可能な基である−CH=NORであるとき、これらはRが−CHOである式(I)で表される化合物とヒドロキシルアミン塩酸塩をジクロロメタン等の有機溶媒に溶解し、トリエチルアミン等の有機塩基を加えることで、Rが水素である目的の化合物を得ることができる。この化合物を単離した後に、再度ジクロロメタン等の有機溶媒に溶解し、トリエチルアミン等の有機塩基の存在下、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル、塩化ベンゼンスルホニル、又は塩化パラトルエンスルホニルのいずれかを加えることで、Rがメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基である目的の化合物を得ることができる。
【0041】
式(I)で表される化合物のうち、Rが−CHOに変換可能な基である−CH(OR)OR10であるとき、これらはRが−CHOである式(I)で表される化合物とROH、R10OHとの脱水反応により得ることができる。具体的には、Rが−CHOである式(I)で表される化合物とROH、R10OHとをベンゼン又はトルエンに溶解し、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等の不揮発性の酸を触媒として用い、ディーン・スターク反応装置を用いることで目的の化合物を得ることができる。
【0042】
本発明における増強作用としては、相加作用と相乗作用を挙げることができるが、相乗作用が好ましく、相乗作用は、例えば、2種類の薬剤を併用した場合、ある特定の作用について、2種類の薬剤の作用が合わさった効果(相加効果)を超えた効果(相乗効果)を奏する作用である。2種類の薬剤がいかなる相互作用を有するかは、具体的にはSteel et al.(1979)らにより提案されたイソボログラムによる評価に基づき決定することができる。すなわち、例えば、A剤とB剤の2つの薬剤を併用した場合、A剤単独でのIC50、IC40、IC30、IC20、IC10をそれぞれa5、a4、a3、a2、a1とし、同様にB剤単独でのIC50、IC40、IC30、IC20、IC10をそれぞれb5、b4、b3、b2、b1とし、次にグラフ上のY軸上に(0,a5)をプロットし、X軸上に(b5,0)をプロットし、さらに(b5−b1,a1)、(b5−b2,a2)、(b5−b3,a3)、(b5−b4,a4)、(b1,a5−a1)、(b2,a5−a2)、(b3,a5−a3)、(b4,a5−a4)の値を同じグラフ上にプロットして各ポイントを結ぶ曲線を描き、A剤とB剤の2つの薬剤を併用し、50%細胞増殖抑制を示す薬剤濃度を前述のグラフにプロットした場合に、これらのポイントが曲線より低濃度側にあるときに相乗効果がある(synergistic)と判定し、曲線内にあるときに相加効果がある(additive)と判定し、曲線より高濃度側にあるときに一つの薬剤が他剤の作用を打ち消す場合の効果があるとして拮抗効果(antagonistic)があると判定することにより、相乗効果を奏する濃度を決定することができる。模式図を図1に示す。
【0043】
本発明の増強剤や式(I)で示される化合物の投与対象としては、哺乳動物を挙げることができ、具体的にはヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌを挙げることができ、なかでもヒトを好適に例示することができる。
【0044】
上記投与対象における標的細胞としては、PDTが適用可能な細胞であれば特に制限されず、がん細胞、いぼ、異形成、細菌・真菌感染部位細胞、ウイルス感染細胞を挙げることができるが、がん細胞が好ましく、PDT耐性がん細胞がより好ましく、ALA−PDT耐性がん細胞がさらに好ましく、PEPT1発現・ABCG2低発現ALA−PDT耐性がん細胞がさらに好ましく、ABCG−2阻害剤と併用してもPDT増強作用がみられないPEPT1発現・ABCG−2低発現ALA−PDT耐性がん細胞が特に好ましい。
【0045】
上記がんとしては、悪性黒色腫(メラノーマ)、皮膚がん、肺がん、気管及び気管支がん、口腔上皮がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、肝臓及び肝内胆管がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、乳がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、脳腫瘍等の上皮細胞などが悪性化したがん・腫瘍や、筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫等の支持組織を構成する細胞である筋肉や骨が悪性化したがん・腫瘍や、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫等の造血細胞由来のがん・腫瘍などを挙げることができる。
【0046】
本発明の増強剤は、インビトロの系、インビボの系のいずれであっても、PDTの効果を増強することができる。インビトロの系で使用する方法としては、(a)上記投与対象の生物種由来の標的がん細胞に、本発明の増強剤と、本発明における光増感剤又はALA類(以下、「光増感剤等」ともいう。)とを添加した後、PDTを行う工程を含む方法を挙げることができ、上記工程(a)としては、(a1)標的がん細胞を含む培地に本発明の増強剤を添加・混合し、光増感剤等を添加して混合後、5分間〜25時間、より好ましくは10分間から15時間、さらに好ましくは2時間〜7時間、特に好ましくは3〜6時間培養し、次いで、本発明の増強剤及び光増感剤等を含む培地を除去した後、あらたに培地を加えてPDTを行う工程を例示することができる。
【0047】
上記インビトロ系における本発明の増強剤の使用量としては、本発明の増強効果が得られる限り特に制限されないが、ALA−PDT感受性の標的細胞を培養する培地中の最終濃度として、例えばALAは25μM〜125μMを挙げることができ、25μM〜50μMが好ましく、ALA−PDT低感受性の標的細胞ではALAは300μM以上が好ましい。DCSAは10μM〜100μMを挙げることができ、30μM〜100μMがより好ましい。
【0048】
本発明の増強剤や式(I)で示される化合物をインビボの系で使用する場合の投与経路としては、静脈内、筋肉内、動脈内等への注射投与;経口投与;経皮投与;経粘膜投与;経直腸投与;経腔投与;脳等への局所投与を例示することができ、なかでも、静脈内、筋肉内、動脈内等への注射投与;経口投与;経皮投与を好適に例示することができる。本発明の増強剤や式(I)で示される化合物の投与経路と、本発明における光増感剤等の投与経路は、同一であっても異なっていてもよい。また、本発明の増強剤や式(I)で示される化合物と、光増感剤等とは、対象に同時に投与してもよいし、いずれかを先に投与してもよいが、より優れた本発明の増強効果を得る観点から、本発明の増強剤や式(I)で示される化合物を先に投与し、光増感剤等を後で投与する態様を好適に例示することができる。
【0049】
上記インビボ系における本発明の増強剤や式(I)で示される化合物の使用量としては、本発明の増強効果が得られる限り特に制限されないが、本発明のDCSA換算で成人1人1回のPDTあたり、好ましくは1mg〜10000mg、より好ましくは3mg〜3000mg、さらに好ましくは10mg〜1000mgを好適に例示することができる。
【0050】
本発明の増強剤や式(I)で示される化合物には、本発明の増強効果が得られる限り、必要に応じてPDT効果を増強する他の任意成分を含むことができ、また、薬効成分、賦形剤等の他の成分を加えることができる。本発明の増強剤や式(I)で示される化合物をインビボの系で使用する場合の剤型としては、注射剤、点滴剤、膀胱内注入剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、シロップ剤、発布剤、座薬等を例示することができる。これらは溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤等を適宜用い、常法に従って製剤することができる。
【0051】
本発明の増強剤や式(I)で示される化合物の構造がもたらすPDT効果の増強作用機序は不明であるが、細胞内PpIX集積性から類推される効果を超えたPDTによる殺細胞効果からすると、効果増強作用のうちの一つは細胞内PpIX蓄積の上昇作用にある。
【0052】
本発明における光増感剤は、可視光を吸収して蛍光を発し、また、腫瘍組織や新生血管へ特異的に集積し、一重項酸素を発生することができる。これら光増感剤としては、PDTに使用されている光増感剤であれば使用することができるが、テトラピロール系化合物を例示することができ、具体的には、PpIX、ポルフィマーナトリウム(フォトフリン)、タラポルフィンナトリウム(レザフィリン)、ベンゾポルフィリン、フォスキャン、クロリン、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、ヘプタカルボキシルポルフィリンI、ヘプタカルボキシルポルフィリンIII、ヘキサカルボキシルポルフィリンI、ヘキサカルボキシルポルフィリンIII、ペンタカルボキシルポルフィリンI、ペンタカルボキシルポルフィリンIII、コプロポルフィリンI、コプロポルフィリンIII、イソコプロポルフィリン、ハルデロポルフィリン、イソハルデロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、メソポルフィリン、エチオポルフィリン、ピロポルフィリン、デューテロポルフィリンIX、ペンプトポルフィリン、ATXs−10、テトラ(m−ヒドロキシフェニル)クロリン、スズ(IV)クロリンe6、フェオフォルビド、ピロフェオフォルビド、バクテリオクロリン、フタロシアニン、フェノチアジン、エチルエチプルプリンスズ、プルプリンイミドを挙げることができる。
【0053】
上記ALA類としては、一般式(II)RNCHCOCHCHCORで示される化合物、又はそれらの塩を挙げることができ、上記式(II)中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜16のアリール基又は炭素数7〜22のアラルキル基を示し;Rはヒドロキシ基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数7〜22のアラルキルオキシ基又はアミノ基である、5−ALA若しくはその誘導体、又はそれらの塩が好ましい。
【0054】
式(II)における炭素数1〜24のアルキル基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を挙げることができ、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0055】
式(II)における炭素数1〜12のアシル基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニルカルボニル基、炭素数5〜12の単環式若しくは多環式アロイル基又は炭素数5〜12の単環式若しくは多環式アリールオキシカルボニル基を挙げることができ、特に炭素数1〜6のアルカノイル基が好ましく、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基等を挙げることができる。なお、上記炭素数1〜12のアシル基における炭素数には、カルボニル炭素が含まれる。
【0056】
式(II)における炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ウンデシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。なお、上記炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基における炭素数には、カルボニル炭素が含まれる。
【0057】
式(II)における炭素数6〜16のアリール基としては、単環式又は多環式アリール基を挙げることができ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等を挙げることができる。
【0058】
前記式(II)における炭素数7〜22のアラルキル基としては、上記炭素数6〜16のアリール基と上記炭素数1〜6のアルキル基とからなる基を挙げることができ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0059】
式(II)における炭素数1〜24のアルコキシ基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を挙げることができ、炭素数1〜16のアルコキシ基が好ましく、特に炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0060】
式(II)における炭素数1〜12のアシルオキシ基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイルオキシ基を挙げることができ、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基が好ましい。具体的には、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ペンタノイルオキシ基等を挙げることができる。
【0061】
式(II)における炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、具体的にはメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基、ペンチルオキシカルボニルオキシ基、ヘキシルオキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。なお、上記炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基における炭素数には、カルボニル炭素が含まれる。
【0062】
式(II)における炭素数6〜16のアリールオキシ基としては、単環式又は多環式アリールオキシ基を挙げることができ、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基等を挙げることができる。炭素数7〜22のアラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基を有するものが好ましく、具体的には、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等を挙げることができる。
【0063】
式(II)において、R及びRとしては水素原子が好ましい。Rとしてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基が好ましく、ヒドロキシ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はヘキシルオキシ基が特に好ましい。
【0064】
式(II)において、R及びRが水素原子であり、Rがヒドロキシ基である化合物は5−ALAであり、特に好ましく挙げることができる。5−ALA以外の5−ALA誘導体の好適な例として、5−ALAメチルエステル、5−ALAエチルエステル、5−ALAプロピルエステル、5−ALAブチルエステル、5−ALAペンチルエステル、5−ALAヘキシルエステル等の5−ALAエステルを挙げることができ、特に5−ALAメチルエステル又は5−ALAヘキシルエステルが好ましく挙げることができる。なお、5−ALAのエステル体が、5−ALAと同様の生理的効果を示すことは、例えば特表平11−501914号公報に開示されている。
【0065】
5−ALA又は5−ALA誘導体の薬理学的に許容される塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩を挙げることができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を挙げることができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を挙げることができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を挙げることができる。
【0066】
5−ALA又は5−ALA誘導体は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの方法によっても製造することができる。例えば、5−ALA誘導体のアミノ基におけるアシル基や、カルボキシル基におけるエステル基等は、化学合成の常法により、アミノ基のアシル化や、カルボキシル基のエステル化等により製造することができる。また、5−ALA又は5−ALA誘導体の塩を取得したいとき、一般式(II)で示される化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解若しくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。5−ALA又は5−ALA誘導体は、水又は各種溶媒との付加物の形で存在することもできる。
【0067】
本発明における光増感剤等の投与量としては、本発明の増強剤や式(I)で示される化合物による増強効果が得られる限り特に制限されず、例えば、光増感剤等がALA類である場合の経口投与量としては、5−ALA換算で体重1kgあたり、1mg〜1000mg、好ましくは5mg〜100mg、より好ましくは10mg〜30mg、さらに好ましくは15mg〜25mgであるが、本発明の増強剤と併用するにあたっては通常のPDTで推奨される量の10〜90%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%を挙げることができる。また、ALA類を溶液の形態で使用する場合は、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意して調製することが好ましい。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって有効成分の分解を防ぐことができる。
【0068】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
[実施例1]
[新規PDT作用効果増強剤の探索1]
徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部の堀均教授及び宇都義浩准教授より提供された18種類の被検化合物について、各被検化合物と5−ALA塩酸塩とを用いたPDT(5−ALA−PDT)を行い、PDTの効果増強作用を検討した。
【0070】
がん細胞として、ヒト胃がん細胞株であるMKN−45細胞を用いた。かかるMKN−45細胞は、10%(v/v)非働化ウシ胎児血清(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)と50μg/mLカナマイシン(明治製菓株式会社製)を添加したRPMI−1640培地(日水製薬社製)(10%FBS−RPMI)中で、37℃にて5%COインキュベーター内で培養して継代維持した。細胞は、0.25%トリプシン−2mMのEDTA溶液で浮遊細胞として実験に供した。上記MKN−45細胞は、ALAの取込みトランスポーター(PEPT1)を発現しているがABCG2トランスポーターの発現が低く、かつABCG−2阻害剤との併用によるPDT効果の増強がみられない細胞であることが、既に発明者により確認されている。
【0071】
上記MKN−45細胞は、5×10細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種後、一晩37℃にて培養した。培地として、10%FBS(HyClone Laboratories社製、South Logan, UT, USA)を添加したRPMI−1640培地を使用した。培養後培地を除去し、あらたに189μLの10%FBS−RPMIをウェルに添加し、DMSOに溶解して2mM及び20mMとなるように調製した各被検化合物をDMSOにより段階希釈して1μL/ウェル添加し、ミキサーにより混合した(培地中での終濃度10μM及び100μM)。ついで、注射用蒸留水に溶解して2mMとなるように調製した5−ALA塩酸塩を10μL添加してミキサーにより混合後(終濃度100μM)、COインキュベーター内で37℃にて4時間培養した。
【0072】
培養後、各被検化合物及び5−ALA塩酸塩を含む培地を除去し、あらたに200μLの10%FBS−RPMIを添加し、96ウェルプレート用PDT照射装置により、波長628.1nmにて5分間照射し、PDTを行った。コントロール群としてALA未添加のウェル(ALA(−))及び/又は被検化合物未添加のウェルを設け、同様にPDTを行った。
【0073】
殺細胞効果の測定については、Cell-Counting Kit-8(同仁化学研究所社製)を用いて水溶性フォルマザンを生成するテトラゾリウム塩WST−8を発色基質として用い、生成したMTTフォルマザン濃度を測定するMTT改良法により行った。すなわち、5−ALA−PDT処置72時間経過後に、培地を除去し、200μLのPBSで洗浄し、40倍に希釈したCell-Counting Kit-8溶液を各ウェルに200μL分注し、さらにCOインキュベーター内で37℃にて1時間培養した。生成したMTTフォルマザン濃度について、イムノリーダー(日本インターメッド社製)を用いて490nmにおける吸光度を測定し、以下の式を用いてIRを算出した。結果を以下の表1に示す。
【0074】
[数1]
IR(%)=(1−T/C)×100
(但し、Tは5−ALA塩酸塩と各被検化合物を添加した各ウェルの平均吸光度、Cはコントロール群のウェルの平均吸光度である。)
【0075】
【表1】
【0076】
(結果)
表1から明らかなとおり、5−ALA塩酸塩を添加せずに化合物TX−816を10μM添加してPDTを行った場合には、MKN−45細胞について3%のIRしか示さなかったのに対し、100μMの5−ALA塩酸塩を添加し、化合物TX−816を10μM添加してPDTを行った場合には80%近いIRを示し、上記18種類の被検化合物の中で最大の効果的な5−ALA−PDT増強作用を示した。なお、被検化合物を添加せず、100μMの5−ALA塩酸塩を添加してPDTを行ったコントロールでは、33%のIRを示した。
【0077】
[実施例2]
[TX−816の作用効果の検討]
上記TX−816について、ALA−PDT効果増強作用をさらに詳細に検討した。終濃度が0、0.41、1.23、3.70、11.1、33.3、及び100μMとなるように調製したTX−816(終濃度100μMの場合は20mM)を1μL/ウェル添加し、注射用蒸留水に溶解して終濃度が0、50、100、200μMになるように調製したALA(終濃度200μMの場合は4mM)を10μL添加してミキサーにより混合後、5時間培養し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行った。TX−816の各濃度におけるIRを片変数グラフにプロットし、IC50(50%阻害濃度)値を求めた。結果を図2〜4に示す。
【0078】
(結果)
図2から明らかなとおり、TX−816は濃度依存的にALA−PDT効果を増強することが確認され、5−ALA塩酸塩が50μMの場合に最も濃度依存的PDT作用増強効果を奏することが確認された。
【0079】
図3から明らかなとおり、イソボログラム法による併用効果の判定を行った結果、TX−816のALA−PDT増強効果は、相乗効果であることが確認された。
【0080】
図4から明らかなとおり、TX−816の72時間持続接触によるMKN−45細胞に対する増殖抑制効果におけるIC50値は36.5μMと計算され、長時間の持続接触でも低毒性の濃度で相乗効果を発揮できることが確認された。
【0081】
(考察)
MKN−45細胞は、ALA−PDT耐性細胞であるが、ABCG2の発現は低く、かつ、ALAの取り込みトランスポーター(PEPT1)が発現していることが確認されているので、今回の実験に用いた細胞に、5−ALAが取り込まれていないという事象は考えにくい。また、細胞内に取り込まれたALAがポルフィリンに代謝される過程において段階的に働く代謝酵素をコードする遺伝子群の発現についても検討したが、特に異常な発現プロファイルはみられなかった(データ特に示さず)。したがって、TX−816は、ALA類と併用することでALA−PDT耐性細胞におけるPDTの作用効果を相乗的に増強することができるといえる。
【0082】
[実施例3]
[DCSA及びCANの作用効果の検討]
TX−816は、図5に示すとおり、ジクロロフェノールとクロロニトロベンゼンがシッフ塩基として結合したN−3’,5’−ジクロロ−2’−ヒドロキシベンジリデン−2−クロロ−4−ニトロアニリン(図5(a)参照)である。TX−816は水溶性が低いため、本願の検討においてはDMSOに溶解して用いたが、DMSO中で、DCSA(図5(b)参照)とCNA(図5(c)参照)に分解することが、発明者らの解析により明らかになった。それゆえ、本発明のPDT作用効果増強剤の活性本体はDCSA又はCNAのいずれか一方である可能性があり、DCSA、CAN、TX−816を比較して、MKN−45細胞に対するALA−PDT効果増強作用を検討した。濃度が11.1、33.3、及び100μMとなるように調製したDCSA、CNA、及びTX−816をそれぞれ1μL/ウェル添加し、DMSOに溶解して終濃度が0、31.25、62.5、125、250、500、1000μMになるように調製した10μLの5−ALA塩酸塩をさらに添加してミキサーにより混合後、5時間培養し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行い、IRを算出した。結果を以下の表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
(結果)
上記表2から明らかなとおり、DCSAはTX−816と同程度の効果増強作用を示す一方、CNAには全く増強作用が認められず、DCSAがALA−PDT効果増強作用を有する化合物であることが確認された。
【0085】
[実施例4]
[新規PDT作用効果増強剤の探索2]
PDT効果増強作用を有するさらなる化合物探索のための検討対象として、DCSAの類縁化合物及び誘導体である、以下の表3に示した18化合物をピックアップした。その内、6化合物(化合物番号:3,6,7,8,11,12)について、被検化合物として、MKN−45細胞におけるALA−PDT効果増強作用をDCSA(化合物番号:1)と比較して検討した。終濃度が0、3.125、6.25、12.5、25、50、100μMとなるように調製した各被検化合物を1μL/ウェル添加し、終濃度が0、50μMになるように調製した10μLの5−ALA塩酸塩をさらに添加してミキサーにより混合後、5時間培養し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行い、IRを算出した。結果を図6に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
(結果)
DCSA類縁化合物の内、上記表3に示された化合物のうち、化合物6(3,5−ジクロロベンツアルデヒド),7(5−クロロサリチルアルデヒド),及び8(3−クロロ−2−ヒドロキシベンツアルデヒド)等のアルデヒド基を有する化合物において、DCSAに匹敵する増強作用が認められた(図6参照)。一方、アルデヒド基がカルボキシル基に置換された化合物3では活性がなく、アルデヒド基がアミド基に置換された化合物12や、アルデヒド基を有さない化合物11では活性が低いことから、アルデヒド基が活性発現に重要であることが確認された。このことから、ベンツアルデヒドへアルデヒド基の求電子性を高める置換基を導入することで、さらなる活性の向上が期待できる。
アルデヒド基が活性発現に重要であることが確認された。
【0088】
[比較例1]
(正常細胞における増強効果)
がん細胞として前記MKN−45細胞を、正常細胞としてヒト臍帯血管内皮細胞HUVEC細胞(C2517A; Lonza社製, Walkersville, MD, USA)をそれぞれ用いて、本発明の増強剤共存下での5−ALA−PDT感受性の比較を行った。
【0089】
MKN−45細胞及びHUVEC細胞はそれぞれ1×10個/ウェルを96ウェルプレートに播種後一晩37℃にて培養した。細胞毎の専用培地として、MKN−45細胞には10%FBS(HyClone Laboratories社製、South Logan, UT, USA)を添加したRPMI−1640培地(10%FBS-RPMI; 日水製薬社製)を、HUVEC細胞には内皮細胞培地キット−2(EGM-2 BulletKit; CC-3162, Lonza社)をそれぞれ使用した。
【0090】
培養後各上記専用培地を除去し、各細胞について、あらたに189μLのそれぞれの上記専用増殖培地をウェルに添加後、DMSOに溶解して終濃度30μM又は100μMになるように調製したDCSAをそれぞれ1μL/ウェル添加し、注射用蒸留水に溶解して段階希釈したALAをさらに添加してミキサーにより混合し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行い、IC50を算出した。結果を以下の表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
(結果)
上記表4に示されるとおり、HUVEC細胞は5−ALA−PDT感受性は低いことから、正常細胞に対するDCSAの作用は、がん細胞に対する作用効果とは明確な相違があった。
【0093】
[比較例2]
[新規PDT作用効果増強剤の探索3]
DCSA類縁化合物として、以下の表5に表される被検化合物(整理番号:7−2、7−3、7−4、7−5、7−6、7−7)について、DCSA(整理番号:7−1)と比較したALA−PDT効果増強作用を検討した。DMSOに溶解して培地中での終濃度が0、0.41、1.23、3.70、11.1、33.3、及び100μMとなるように調製した各化合物を1μL/ウェル添加し、注射用蒸留水に溶解して終濃度が0、50μMになるように調製した10μLのALAをさらに添加してミキサーにより混合後、5時間培養し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行い、IRを算出した。結果を図7に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
(結果)
上記化合物の中には消炎・解熱・鎮痛作用や抗血小板作用を持つサリチル酸やアセチルサリチル酸(アスピリン)も含む。図7より明らかなとおり、3-hydroxybenzaldehyde(HBA)、benzaldehyde(BA)やsalicylaldehyde(SA)はアルデヒド基を有していても効果増強作用はみられなかった。ALA−PDT効果増強作用においてはアルデヒド基と水酸基や塩素原子などの導入置換基の位置関係が重要であることが明らかになった。また、サリチル酸やアセチルサリチル酸には効果増強作用はなく、サリチル酸系非ステロイド性抗炎症薬におけるプロスタグランジン(PG)合成抑制作用とは異なる作用機序を有することが推察される。
【0096】
[実施例5]
[新規PDT作用効果増強剤の探索4]
3−chloro-2-hydroxy-benzaldehydeにおける塩素原子の代わりにフッ素原子を導入した3-fluorosalicylaldehyde(3−FSA)を用いてALA−PDT効果増強作用を検討した。6mM(終濃度30μM)のDCSA、6mM(終濃度30μM)の3−FSA、20mM(終濃度100μM)の3−FSAを1μL/ウェル添加し、注射用蒸留水に溶解して終濃度が0、7.8、15.6、31、63、125、250μMになるように調製した10μLのALAをさらに添加してミキサーにより混合後、5時間培養し、実施例1と同様の手順で5−ALA−PDTを行い、ついでMTT改良法を行い、細胞抑制率とIC50を算出した。結果を図8に示す。
【0097】
(結果)
図8より明らかなとおり、100μMの活性は30μMのDCSAに相当する活性を示した。3−FSAの活性はDCSAの約3分の1と評価された。
【0098】
[実施例6]
[細胞内のPpIX蓄積の検討]
DCSAのALA−PDT効果増強作用の機序を検討する目的でLLS−405VISLED光源とSEC2000−VIS/NIRスペクトロメーターSLIT200蛍光測定装置(ビー・エス・エイ社製)とを用いて、MKN−45細胞の細胞内のPpIX蓄積に与えるDCSAの効果を解析した。15cmディッシュに5×10個のMKN−45細胞を播種し、サブコンフルエントになるまで培養した。細胞が十分に増殖したところで19mLの加温した新鮮な10%FBS添加RPMI−1460培地を添加した。DMSOに溶解したDCSAを終濃度30μM又は100μM(DMSO終濃度は0.5%)になるように培地に加えたのち、1mM又は2mMの5-ALAを1mL(終濃度50μM及び100μM)を添加した。5時間培養した後、細胞をトリプシン−EDTAにより回収した後に、10mLの10%FBS添加RPMI−1460培地に懸濁し、細胞数を計数した。遠心後PBSで2回洗浄し、2%のTriton X−100により細胞を溶解した。15,000rpmにて15分間の遠心後、上清を回収し、SEC2000−VIS/NIRスペクトロメーターにより蛍光強度を測定した。結果を図9に示す。
【0099】
(結果)
図9に示したとおり、50μMの5−ALA単独処理時(a)に比べて、50μMの5−ALAと100μMのDCSAとを同時処理した場合(b)、細胞内PpIXが約5.5倍も増加した。本発明の増強剤による効果増強作用のうちの一つは、本発明の増強剤自身の細胞内PpIX蓄積の上昇効果作用にあると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の増強剤は、PDTを用いる医療分野において有用である。
図1
図2
図4
図5
図3
図6
図7
図8
図9