【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
530gの菜種極度硬化油(融点67℃、横関油脂工業(株)製)を容器に入れ、80℃で加熱して完全に溶融させた。次に、70gの香料(ビーフフレーバー、長岡香料(株)製)および400gのデキストリン(松谷化学工業(株)製の「パインデックス#2」)を、溶融させた菜種極度硬化油に添加して、80℃で均一に撹拌して混合物を得た。得られた混合物を室温下で静置して固化させた後、パワーミル((株)昭和化学機械工作所製、P−3型)を用いて粉砕し、篩(12メッシュ)にかけて香料組成物1を得た(香料含有量:7質量%、平均粒子径:約35μm)。
【0029】
(実施例2)
下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物2を得た(香料含有量:7質量%、平均粒子径:約35μm)。オクテニルコハク酸デンプンナトリウムは、松谷化学工業(株)製の「エマルスター#500A」を使用した。
パーム極度硬化油(融点57℃、横関油脂工業(株)製):630g
実施例1で使用した香料(ビーフフレーバー):70g
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム:300g
【0030】
(実施例3)
下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物3を得た(香料含有量:10質量%、平均粒子径:約35μm)。
菜種極度硬化油(融点67℃):500g
香料(親子丼フレーバー、長岡香料(株)製):100g
実施例1で使用したデキストリン:400g
【0031】
(実施例4)
下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物4を得た(香料含有量:10質量%、平均粒子径:約35μm)。D−ソルビトールは、物産フードサイエンス(株)製の「ソルビットFP 100M」を使用した。
パーム極度硬化油(融点57℃):500g
実施例3で使用した香料(親子丼フレーバー):100g
D−ソルビトール:400g
【0032】
(実施例5)
下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物5を得た(香料含有量:20質量%、平均粒子径:約35μm)。
菜種極度硬化油(融点67℃):500g
香料(牛丼フレーバー、長岡香料(株)製):200g
実施例1で使用したデキストリン:300g
【0033】
(実施例6)
下記の処方に変更して、90℃で均一に撹拌した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物6を得た(香料含有量:20質量%、平均粒子径:約35μm)。カルナウバワックスは、横関油脂工業(株)製の「精製カルナウバワックスR−100」を使用し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンは、松谷化学工業(株)製の「フードテックス」を使用した。
菜種極度硬化油(融点67℃):250g
カルナウバワックス(融点83℃):250g
実施例5で使用した香料(牛丼フレーバー):200g
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン:300g
【0034】
(実施例7)
下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物7を得た(香料含有量:20質量%、平均粒子径:約35μm)。
菜種極度硬化油(融点67℃):300g
実施例5で使用した香料(牛丼フレーバー):200g
実施例1で使用したデキストリン:500g
【0035】
(比較例1)
180gのアラビアガム(日本粉末薬品(株)製)および750gの実施例1で使用したデキストリンを、1640gの熱水に溶解した。そこに70gの実施例1で使用した香料(ビーフフレーバー)を添加し、TKホモミキサー(プライミクス(株)製)を用いて乳化を行いO/W型エマルジョンを得た。得られたエマルジョンをスプレードライヤー(大川原化工機(株)製、L−12型)を用いて噴霧乾燥を行い(送風温度150℃および排風温度84℃)、香料組成物Aを得た(香料含有量:7質量%)。
【0036】
(比較例2)
実施例1で用いた香料およびデキストリンに代えて、比較例1で得られた香料組成物Aを使用し、かつ下記の処方とした以外は、実施例1と同様の手順で香料組成物Bを得た(香料含有量:3.5質量%)。
菜種極度硬化油(融点67℃):500g
比較例1で得られた香料組成物A:500g
【0037】
(比較例3)
下記の原料を均一に撹拌して液体状香料組成物Cを得た(香料含有量:7質量%)。食用油脂は、築野食品工業(株)製の「米サラダ油」を使用した。
食用油脂:930g
実施例1で使用した香料(ビーフフレーバー):70g
【0038】
(比較例4)
下記の原料を均一に撹拌して液体状香料組成物Dを得た(香料含有量:10質量%)。
比較例3で使用した食用油脂:900g
実施例3で使用した香料(親子丼フレーバー):100g
【0039】
(比較例5)
下記の原料を均一に撹拌して液体状香料組成物Eを得た(香料含有量:20質量%)。
比較例3で使用した食用油脂:800g
実施例5で使用した香料(牛丼フレーバー):200g
【0040】
(試験1:レトルトカレー)
市販されているレトルトカレーを未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例1で得られた香料組成物1を添加した。レトルトカレーと香料組成物とは、99.8:0.2の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用カレー1を得た。同様にして、香料組成物1の代わりに実施例2で得られた香料組成物2、比較例1および2で得られた香料組成物AおよびB、ならびに比較例3で得られた液体状香料組成物Cをそれぞれ用いて試験用カレー2およびA〜Cを得た。なお、比較例2で得られた香料組成物については、レトルトカレーと香料組成物とを、99.6:0.4の質量比で使用した。一方、レトルトカレーを未使用のレトルトパウチに移して、香料組成物を添加せずに121℃で20分間レトルト処理を行い、対照品(対照カレー)を得た。
【0041】
さらに、市販されているレトルトカレーを未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例1で使用した香料、菜種極度硬化油(融点67℃)および実施例1で使用したデキストリンを、それぞれ添加した。レトルトカレーと香料と菜種極度硬化油とデキストリンとは、99.8:0.014:0.106:0.08の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用カレーX(比較例6)を得た。
【0042】
得られた試験用カレーおよび対照品(対照カレー)を、6名のパネラーに試食してもらい、下記の基準で官能評価をしてもらった。評価項目は、(1)レトルト臭のマスキング効果、(2)コク・旨味、および(3)一体感・調理感の3項目である。評価結果(6名のパネラーの平均点)を表1に示す。
<評価基準>
4点:対照品と比較して顕著に向上していると感じた場合。
3点:対照品と比較して向上していると感じた場合。
2点:対照品と比較して若干向上していると感じた場合。
1点:対照品と比較して差がないか、または悪化していると感じた場合。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、本発明の香料組成物を用いた試験用カレー1および2は、試験用カレーA〜CおよびX(比較例1〜3および6)と比べて、レトルト臭が効果的にマスキングされていることがわかる。さらに、コクや旨味など他の評価項目においても優れていることがわかる。
【0045】
(試験2:レトルト親子丼)
市販されているレトルト親子丼を未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例3で得られた香料組成物3を添加した。レトルト親子丼と香料組成物とは、99.8:0.2の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用親子丼3を得た。同様にして、香料組成物3の代わりに実施例4で得られた香料組成物4および比較例4で得られた液体状香料組成物Dをそれぞれ用いて試験用親子丼4およびDを得た。一方、レトルト親子丼を未使用のレトルトパウチに移して、香料組成物を添加せずに121℃で20分間レトルト処理を行い、対照品(対照親子丼)を得た。
【0046】
さらに、市販されているレトルト親子丼を未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例3で使用した香料、菜種極度硬化油(融点67℃)および実施例1で使用したデキストリンを、それぞれ添加した。レトルト親子丼と香料と菜種極度硬化油とデキストリンとは、99.8:0.02:0.1:0.08の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用親子丼Y(比較例7)を得た。
【0047】
得られた試験用親子丼および対照品(対照親子丼)を、6名のパネラーに試食してもらい、試験1と同様にして官能評価をしてもらった。評価結果(6名のパネラーの平均点)を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、本発明の香料組成物を用いた試験用親子丼3および4は、試験用親子丼DおよびY(比較例4および7)と比べて、レトルト臭が効果的にマスキングされていることがわかる。さらに、コクや旨味など他の評価項目においても優れていることがわかる。
【0050】
(試験3:レトルト牛丼)
市販されているレトルト牛丼を未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例5で得られた香料組成物5を添加した。レトルト牛丼と香料組成物とは、99.8:0.2の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用牛丼5を得た。同様にして、香料組成物5の代わりに実施例6および7で得られた香料組成物6および7、ならびに比較例5で得られた液体状香料組成物Eをそれぞれ用いて試験用牛丼6、7およびEを得た。一方、レトルト牛丼を未使用のレトルトパウチに移して、香料組成物を添加せずに121℃で20分間レトルト処理を行い、対照品(対照牛丼)を得た。
【0051】
さらに、市販されているレトルト牛丼を未使用のレトルトパウチに移し、そこに実施例5で使用した香料、菜種極度硬化油(融点67℃)および実施例1で使用したデキストリンを、それぞれ添加した。レトルト牛丼と香料と菜種極度硬化油とデキストリンとは、99.8:0.04:0.1:0.06の質量比で使用した。均一に撹拌混合した後、密封して121℃で20分間レトルト処理を行い、試験用牛丼Z(比較例8)を得た。
【0052】
得られた試験用牛丼および対照品(対照牛丼)を、6名のパネラーに試食してもらい、試験1と同様にして官能評価をしてもらった。評価結果(6名のパネラーの平均点)を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示すように、本発明の香料組成物を用いた試験用牛丼5〜7は、試験用牛丼EおよびZ(比較例5および8)と比べて、レトルト臭が効果的にマスキングされていることがわかる。さらに、コクや旨味など他の評価項目においても優れていることがわかる。
【0055】
したがって、本発明の香料組成物は、レトルト食品を製造する際に発生する不快なレトルト臭をマスキングし、かつレトルト食品に優れた風味、コクおよび旨味といった呈味、レトルト食品中の各具材が有する味の一体感および調理感を付与していることがわかる。一方、比較例1〜8は、レトルト臭のマスキング効果も、コクや旨味、味の一体感や調理感も乏しいことがわかる。