特許第5936220号(P5936220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936220CO2ガス放電レーザを駆動するための結合RF電力供給源を平衡化する装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936220
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】CO2ガス放電レーザを駆動するための結合RF電力供給源を平衡化する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/097 20060101AFI20160609BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H01S3/097 A
   H01S3/00 G
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-527209(P2014-527209)
(86)(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公表番号】特表2014-527723(P2014-527723A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012051467
(87)【国際公開番号】WO2013028564
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】13/216,091
(32)【優先日】2011年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512095392
【氏名又は名称】コヒレント, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュメルザー, デイビッド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウアー, フレデリック ダブリュー.
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0204134(US,A1)
【文献】 特開平01−147708(JP,A)
【文献】 米国特許第05941916(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 − 3/30
H03F 1/00 − 3/45
3/50 − 3/52
3/62 − 3/64
3/68 − 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)電力をガス放電レーザの放電電極に供給するための無線周波数(RF)電力供給源装置であって、前記装置は、
第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールであって、そのそれぞれがRF出力を有する第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールと、
前記放電電極に接続された単一の結合RF出力に前記トランジスタ増幅器モジュールのRF出力を結合するための電力結合配列と、
DC電圧を前記第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールのそれぞれに供給するためのDC電力供給源であって、前記DC電力供給源は、前記トランジスタ増幅器モジュールのそれぞれに、対応する第1の複数の電気スイッチを介して、別個に接続可能または切断可能である、DC電力供給源と、
前記DC電力供給源と前記第1の複数の電気スイッチとの間の電気経路内に位置する第1の電流センサであって、前記第1の電流センサは、前記第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールのうちの任意の1つが前記DC電力供給源に接続されるとき、前記トランジスタ増幅器モジュールよって引き込まれる電流を監視する、第1の電流センサと
を備える、装置。
【請求項2】
第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールであって、前記第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのそれぞれは、RF出力を有し、前記第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのRF出力は、前記電力結合配列によって、前記単一の結合RF出力に結合され、前記第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのそれぞれは、対応する第2の複数の電気スイッチによって、前記DC電力供給源に接続可能または切断可能である、第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールと、前記DC電力供給源と前記第2の複数の電気スイッチとの間の電気経路内に位置する第2の電流センサであって、前記第2の電流センサは、前記第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのうちの任意の1つが前記DC電力供給源に接続されるとき、前記トランジスタ増幅器モジュールによって引き込まれる電流を監視する、第2の電流センサとをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールおよび第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのそれぞれには、等しい数N個のトランジスタ増幅器モジュールが存在する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
N個のRF増幅器ステージが存在し、前記N個のRF増幅器ステージのそれぞれは、プッシュ−プル構成に配列された、前記第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールのうちの1つのみと前記第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのうちの1つのみとを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電力結合配列は、前記トランジスタ増幅器モジュールのRF出力をN個のRF増幅器ステージ出力に結合するための、前記増幅器ステージのそれぞれに1つずつのN個のインピーダンス整合ネットワークと、前記放電電極に接続された前記単一のRF出力に前記N個のRF増幅器ステージ出力を結合するための単一のRF電力結合器とを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
2N個の増幅器ステージが存在し、前記2N個の増幅器ステージのそれぞれが、前記第1および第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールのうちの1つのみを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記電力結合配列は、前記放電電極に接続された前記単一のRF出力に前記トランジスタ増幅器モジュールのRF出力を結合するための単一のRF電力結合器を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
増幅されるRF信号は、信号分割器によって2N個の部分に分割され、前記2N個の信号部分は、2N個の入力接続の対応する1つによって、前記2N個のトランジスタ増幅器モジュールの対応する1つに接続され、2N個の選択的可変リアクタンス回路が存在し、前記2N個の選択的可変リアクタンス回路のうちの1つは、対応する前記トランジスタ増幅器モジュールに接続された対応する前記信号部分の振幅および位相を調節するために、前記2N個の入力接続のそれぞれの対応する1つに接続されている、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記選択的可変リアクタンス回路はそれぞれ、並列接続された選択的可変キャパシタを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記結合されたRF出力は、インピーダンス整合ネットワークを介して、前記放電電極に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
無線周波数(RF)電力をガス放電レーザの放電電極に供給するための無線周波数(RF)電力供給源装置であって、前記装置は、
第1の複数N個のRF増幅器ステージであって、前記第1の複数N個のRF増幅器ステージそれぞれは、プッシュ−プル配列において、第1および第2のトランジスタ増幅器モジュールを含み、RF増幅器ステージ出力を提供する、第1の複数N個のRF増幅器ステージと、
前記放電電極に接続された単一の結合RF出力に前記RF増幅器ステージ出力を結合するための電力結合配列と、
DC電力供給源であって、前記DC電力供給源は、前記DC電力供給源からの第1および第2の電気経路を有し、前記第1および第2の電気経路は、それぞれ、前記RF増幅器ステージのそれぞれにおける前記第1および第2のトランジスタ増幅器モジュールにDC電圧を供給する、DC電力供給源と、
前記RF増幅器ステージのそれぞれにおける第1のトランジスタ増幅器モジュールであって、前記第1のトランジスタ増幅器モジュールは、対応する第1の複数の電気スイッチを介して、前記DC電力供給源からの前記第1の電気経路に、別個に接続可能または切断可能である、第1のトランジスタ増幅器モジュールと、
前記RF増幅器ステージのそれぞれにおける第2のトランジスタ増幅器モジュールであって、前記第2のトランジスタ増幅器モジュールは、対応する第2の複数の電気スイッチを介して、前記DC電力供給源からの前記第2の電気経路に、別個に接続可能または切断可能である、第2のトランジスタ増幅器モジュールと、
前記DC電力供給源からの前記第1の電気経路内に位置する第1および第2の電流センサであって、前記第1および第2の電流センサは、トランジスタ増幅器モジュールのうちの任意の1つが前記DC電力供給源への対応する電気経路に接続されるとき、前記トランジスタ増幅器モジュールによって引き込まれる電流を監視する、第1および第2の電流センサと
を備える、装置。
【請求項12】
増幅されるRF信号は、第1の信号分割器によってN個の第1のRF信号部分に分割され、前記N個のRF信号部分はそれぞれ、前記N個のRF増幅器ステージのうちの対応する1つによって受信される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記RF増幅器ステージはそれぞれ、第2の信号分割器を含み、前記第2の信号分割器は、前記第1の信号分割器からの前記第1のRF信号部分を、前記第1のトランジスタ増幅器モジュールに接続された第1のRF信号部分と、第2のトランジスタ増幅器モジュールに接続された第2のRF信号部分とに分割するように配列されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
第1および第2の選択的可変リアクタンス回路が存在し、対応する前記トランジスタ増幅器モジュールに接続された対応する前記第2の信号部分の振幅および位相を調節するために、前記第1の選択的可変リアクタンス回路は、前記第2の信号分割器と、前記第1のトランジスタ増幅器モジュールとの間の接続に接続され、前記第2の選択的可変リアクタンス回路は、前記第2の信号分割器と、前記第2のトランジスタ増幅器モジュールとの間の接続に接続されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記選択的可変リアクタンス回路はそれぞれ、並列接続された選択的可変キャパシタを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記結合されたRF出力は、インピーダンス整合ネットワークを介して、前記放電電極に接続されている、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
RF電力をガス放電レーザの放電電極に供給するために使用されるRF電力供給源を構成する方法であって、前記電力供給源は、RF信号発生器を含み、前記RF信号発生器の出力は、少なくとも3つの並列接続された増幅器モジュールに供給され、前記増幅器モジュールの出力は、結合されて、次いで、前記電極に供給され、前記増幅器モジュールは、DC電力供給源によって給電され、前記方法は、
(a)2つ以下の増幅器モジュールが前記DC電力供給源に接続されるように、1つまたは複数の増幅器モジュールを前記DC電力供給源から切断するステップと、
(b)前記増幅器モジュールの出力の電流および位相が所定の範囲内であるように、前記DC電力供給源に接続されたままである前記増幅器モジュールの出力を調節するステップと、
(c)ステップ(a)および(b)を1回または複数回繰り返すステップであって、毎回、全ての増幅器モジュールからの出力の電流および位相が所定の範囲内になるまで、異なる増幅器モジュールまたは対の増幅器モジュールを前記DC電力供給源に接続する、ステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記RF電力供給源は、前記増幅器モジュールのそれぞれと関連付けられた可変インピーダンスユニットを含み、前記増幅器モジュールの出力を調節する前記ステップは、前記関連付けられた可変インピーダンスユニットのインピーダンスを調節することによって行なわれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)の間、2つの増幅器モジュールが前記DC電力供給源に接続され、前記増幅器モジュールを調節するステップの間、前記位相は、2つの接続された増幅器モジュールの出力の位相を比較することによって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)の間、1つのみの増幅器モジュールが前記DC電力供給源に接続され、前記増幅器モジュールを調節するステップの間、前記位相は、前記信号発生器の出力の位相と前記接続された増幅器モジュールの出力の位相とを比較することによって測定される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、二酸化炭素(CO)ガス放電レーザに関する。本発明は、特に、複数のRFトランジスタ電力供給源の結合出力によって駆動されるCOガス放電レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
COガス放電レーザでは、レーザ筐体内のレイジングガス混合物は、一対の平行に離間された電極間に達するガス混合物における無線周波数(RF)放電によって励起される。高出力COレーザ、例えば、100ワット(W)またはそれより大きい出力電力を有するCOスラブレーザでは、ガス混合物は、典型的には、CO、窒素(N)およびヘリウムHeを含み、約50〜150トルの圧力である。レーザを駆動する(ガス放電を励起する)ためのRF電圧(RF電力)は、単一のRF発振器に接続される複数のRF増幅器の結合出力によって提供され、その出力は、必要に応じて、事前に増幅される。典型的には、増幅器はそれぞれ、プッシュ−プル配列において、2つのRFトランジスタ増幅器モジュールを含む。
【0003】
典型的には、COスラブレーザ内でガス放電を励起するために要求されるRF電圧は、約80〜100MHz駆動周波数において、約225ボルトである。印加される一定電圧Vに対する放電内の電流は、放電内へ送達される電力に伴って、線形に増加する。放電のインピーダンスは、放電内へのRF電力が増加されるにつれて減少する。COスラブレーザは、放電内へのRF電力をレーザ出力電力に変換するために、約10%の効率を有する。一例として、250W出力を有するCOレーザは、放電内へ送達される約11アンペア(A)の電流において、約2500WのRF電力を要求する。放電のインピーダンスは、約20オームである。
【0004】
一例として、トランジスタ電力モジュールを使用して、2500WのRF電力を提供するために、最低でも6つのMOSFET BLF278モジュール(Philips Corporation(Eindhoven,Holland)から入手可能)が、要求される。モジュールの出力は、レーザガス放電を発生させる電極に提供される単一の出力を形成するように結合される必要がある。
【0005】
複数のトランジスタ電力増幅器モジュールの出力を結合する際に対処される必要がある問題は、個々の増幅器のそれぞれの出力の電流平衡化および位相調節である。これは、最小の後方反射で、負荷(放電電極)中への最大電力出力を得るために要求される。この後方反射は、トランジスタモジュール内で消散される熱として発現する。
【0006】
図1は、CO拡散冷却型レーザを駆動する際に使用されるRF結合器タイプの電力供給源内のRF電力増幅器を電流および位相平衡化するための従来技術の配列10を図式的に図示する。ここでは、RF発振器12の出力は、ドライバ増幅器14の入力に提供される。ドライバ増幅器の出力は、1〜3個の信号スプリッタ(信号分割器)16の入力に提供される。スプリッタの3つの出力はそれぞれ、対応する電力増幅器ステージ18に提供される。増幅器ステージは、公称上、同じであるが、増幅器ステージおよびその構成要素における製造公差により、わずかな差異が存在し得るという事実を反映するために、ステージ18A、18B、および18Cとして別個に指定される。これらの差異は、前述の電流および位相平衡化のための要件につながる。
【0007】
増幅器ステージ18Aでは、スプリッタ16からの対応する信号は、信号スプリッタ(信号分割器)D1によって、2つの部分にさらに分けられる。一方の部分は、トランジスタ増幅器モジュールA1に送信され、他方の部分は、トランジスタ増幅器モジュールA2に送信される。増幅器モジュールA1およびA2は、ここでは、プッシュ−プル構成に配列される。増幅器出力は、インピーダンス整合ネットワークZ1によって結合される。増幅器ステージ18Bでは、スプリッタ16からの対応する信号は、信号スプリッタD2によって、2つの部分にさらに分けられる。それらの部分は、トランジスタ増幅器モジュールA3およびA4によって増幅され、増幅された出力は、インピーダンス整合ネットワークZ2によって結合される。増幅器ステージ18Cでは、スプリッタ16からの対応する信号は、信号スプリッタD3によって、2つの部分にさらに分けられる。それらの部分は、トランジスタ増幅器モジュールA5およびA6によって増幅され、増幅された出力は、インピーダンス整合ネットワークZ3によって結合される。
【0008】
インピーダンス整合ネットワークZ1、Z2、およびZ3の出力は、RF出力電力結合器20によって結合される。結合された出力は、離間され、相互に平行である電極24および接地電極26を備える電極対22(放電電極)の活電極24に印加される。電極は、レイジングガス混合物を含むレーザ筐体(図示せず)内に位置する。インピーダンス整合ネットワーク(IMN)28は、結合器20の出力インピーダンスと放電電極のインピーダンスとを整合させる。
【0009】
トランジスタ増幅器モジュールA1−6は、DC電力供給源30からのDC電圧によって給電される。DC電力供給源は、トランジスタ増幅器モジュールA−6のそれぞれに、6つの対応する電流センサCS1−6のうちの1つを通して電力を送達する。好ましい電流センサは、ホール効果センサである。ホール効果電流センサは、それを通して流れる電流に比例して、出力電圧を生成する。そのようなセンサは、印刷回路基板技術に適合可能なパッケージ内において、サブアンペアから数百アンペアまでの広範囲の電流を取り扱うことができる。
【0010】
電流および位相平衡化は、トランジスタ増幅器モジュールA1−6の個別の入力に接続された選択的可変インピーダンス回路B1−6を調節することによって達成される。ここでの回路はそれぞれ、可変分路(並列)静電容量部の形態である。回路B1−6のインピーダンスの調節は、トランジスタ増幅器モジュールA1−6内への入力電力および入力の位相を調節し、次に、DC電力供給源30からトランジスタ増幅器モジュールによって引き込まれるDC電流の量を変動させる。さらに、これは、次に、トランジスタ増幅器モジュールの出力電力および出力の位相を変動させ、それに応じて、インピーダンス整合ネットワークZ1−3のRF出力の振幅および位相を変動させる。
【0011】
可変インピーダンス回路B1−6のインピーダンスは、電力結合器20への入力のそれぞれの振幅および位相が等しいか、またはほぼ等しくなるまで、調節される。振幅および位相は、当技術分野において公知であるように、オシロスコープおよび一時的接続を用いて監視されることができる。調節は、増幅器ステージ18A−Cの構成要素の、製造公差内の変動を補償するために必要である。増幅器ステージからの出力から同一の電流および位相を得ることは、電極対22によって生成されるガス放電内への最大RF電力送達を達成するために重要である。
【0012】
電力結合器20によって結合された入力の電流および位相平衡化を理解するために十分な装置10の説明のみが、提供されていることに留意されたい。RF電力結合器およびそのためのインピーダンス整合ネットワークの詳細な説明は、特許文献1および特許文献2に提供されている(それぞれ、本発明の譲受人に譲渡され、それぞれの完全な開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる)。
【0013】
前述の電流および位相平衡化方法は、完成したCOレーザ内の放電電極への電力移送の所望の最適化を達成するために非常に適しているが、本方法は、製造の観点から、特に、平衡化動作のために要求される時間および対応するコストに関して、特定の欠点を有する。このような要求される時間は、増幅器間のクロストークが存在し、これが、平衡化動作を反復工程にし、平衡点に収束するように、各可変インピーダンス回路に一連の再調節が要求されるので、比較的に長い。反復工程を習得するために、相当の熟練および経験が、オペレータに要求される。別の欠点は、トランジスタ増幅器モジュールとDC電力供給源との間の接続のそれぞれにおいて、電流センサを設置するために要求される時間およびコストである。結合された増幅器出力のために電流および位相平衡化する、より単純かつ時間がかからない方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,755,452号明細書
【特許文献2】米国特許第7,970,037号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面では、無線周波数(RF)電力をガス放電レーザの放電電極に供給するための無線周波数(RF)電力供給源装置は、第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールを備え、そのそれぞれが、RF出力を有する。電力結合配列は、放電電極に接続された単一の結合RF出力にトランジスタ増幅器モジュールのRF出力を結合するために提供される。DC電力供給源は、DC電圧を第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールのそれぞれに供給するために提供される。DC電力供給源は、トランジスタ増幅器モジュールのそれぞれに、対応する第1の複数の電気スイッチを介して、別個に接続可能または切断可能である。第1の電流センサは、DC電力供給源と第1の複数の電気スイッチとの間の電気経路内に位置し、第1の複数のトランジスタ増幅器モジュールの任意の1つがDC電力供給源に接続されるとき、そのトランジスタ増幅器モジュールによって引き込まれる電流を監視する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールが存在し、そのそれぞれは、RF出力を有し、第2の複数のトランジスタモジュールのRF出力は、電力結合配列によって、単一の結合RF出力に結合される。第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールはそれぞれ、対応する第2の複数の電気スイッチによって、DC電力供給源に接続可能または切断可能である。第2の電流センサは、DC電力供給源と第2の複数の電気スイッチとの間の電気経路内に位置し、第2の複数のトランジスタ増幅器モジュールの任意の1つがDC電力供給源に接続されるとき、そのトランジスタ増幅器モジュールによって引き込まれる電流を監視する。
【0017】
本発明の回路配列は、2つの電流センサによって監視されながら、常時、電力供給源に接続された一対のトランジスタ増幅器モジュールのみによって、電力結合配列内の電流および位相平衡化を可能にする。これは、従来技術の装置における複数対のセンサ間の前述のクロストーク問題を回避すると同時に、トランジスタ増幅器モジュール対の数に関わらず、要求されるセンサの総数を2つに低減することによって、コストを節約する。
【0018】
明細書内に組み込まれ、その一部を構成する付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を図式的に図示し、前述に与えられる一般的な説明および以下に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、3つの増幅器ステージのRF出力が結合された従来技術の回路を図式的に図示し、各増幅器ステージが、プッシュ−プル構成において、2つのトランジスタ増幅器を含み、トランジスタ増幅器は、6つの対応する電流センサを通して単一の電力供給源から送達されるDC電流によって給電され、6つの選択的可変インピーダンス回路が、結合に先立って、増幅器ステージの出力の振幅および位相を平衡化するために、トランジスタ増幅器への入力を調節するために提供される。
図2図2は、本発明による回路のある好ましい実施形態を図式的に図示し、図1の回路と同様に、3つの増幅器ステージのRF出力が結合されるが、振幅および位相平衡化動作の間、増幅器ステージのそれぞれに別個に接続可能であるように配列された2つのみの電流センサが存在する。
図3図3は、本発明による回路の別の好ましい実施形態を図式的に図示し、図2の回路と同様に、3つの増幅器ステージのRF出力が結合されるが、増幅器ステージはそれぞれ、1つのみのトランジスタモジュールを含み、3つのみの選択的可変インピーダンス回路が存在し、1つのみの電流センサが存在し、その電流センサは、DC電力供給源に接続され、振幅および位相平衡化動作の間、増幅器ステージのそれぞれに別個に接続可能であるように配列される。
図4図4は、本発明による回路のさらに別の好ましい実施形態を図式的に図示し、図3の実施形態と同様に、4つ(2対)の増幅器ステージのRF出力が結合されるが、DC電力供給源に接続された2つ(1対)の電流センサが存在し、各対は、振幅および位相平衡化動作の間、増幅器ステージ対に別個に接続可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面(同様の特徴が、同様の参照番号によって指定される)を引き続き参照すると、図2は、3つの増幅器ステージのRF出力が結合される、本発明による回路のある好ましい実施形態40を図式的に図示する。回路40は、以下の点を除き、図1の回路10と類似する。回路40では、DC電力供給源20への2つの接続42および44に、2つのみの電流センサCS1およびCS2が存在する。好適な電流センサは、Allegro MicroSystems Inc.(Irvine, California)によって製造された型番AE5758等のホール効果電流センサである。接続42および44は、スイッチS1、S2、S3、S4、S5、およびS6を介して、増幅器ステージ18A−Cの全てに接続可能である。接続のうちの一方は、(適切なスイッチを介して)増幅器ステージ内のトランジスタ増幅器モジュールのうちの一方に行なわれ、他方の接続は、(適切なスイッチを介して)増幅器ステージ内のトランジスタ増幅器モジュールの他方に行なわれる。
【0021】
ユーザによる実際の動作では、スイッチS1−6は全て、全3つの増幅器ステージが給電されるように、つながれる。電流および位相平衡化動作では、1度に1つのみの増幅器が、電力供給源に接続され得る。図2では、増幅器ステージ18Cは、スイッチS5および6がつながれた状態において、電力供給源に接続されるように描写される一方、増幅器ステージ18Aおよび18Bは、スイッチS1およびS2ならびにスイッチS3およびS4を開放することによって、電力供給源から切断される。増幅器ステージはそれぞれ、プッシュ−プル構成において、2つの増幅器モジュールを含み、増幅器ステージと関連付けられた両方のスイッチは、増幅器ステージが動作するために、つながれなければならない。
【0022】
図1の回路におけるように、選択的可変インピーダンス回路B1−6(ここでは、分路キャパシタの形態である)が、それぞれ、電力結合器への入力を平衡化するためにトランジスタ増幅器モジュールA1−6への入力を調節するために提供される。前述のPhilips NXP BLF278(MOSFET)増幅器モジュールに対して、分路キャパシタは、好ましくは、約3〜15ピコファラッド(pF)の値を有する。NXP BLF278 MOSFETは、100MHzにおいて、最大400Wの持続的出力電力に定格される。本トランジスタモジュールは、電力供給源30から、48ボルトのDCを要求する。本MOSFETを使用することによって、全増幅器モジュールA1−6に対して、電力結合器20の出力は、最大2400Wであり得、これは、240W出力を有するレーザを駆動するために十分なRF電力である。
【0023】
増幅器ステージ18A−Cへの接続は、説明を明確にするために、機械的に動作されるスイッチS1−S6によって、接続可能または切断可能であるように描写および説明される。しかしながら、実際は、切替動作のための取り外し可能なリンクまたはヒューズを、接続を開放するために取り外され、接続をつなぐために置換されるヒューズ(リンク)で代用することが、より便利かつ低コストであることが見出された。用語「スイッチ」は、本説明および添付の特許請求の範囲に使用されるように、そのような取り外し可能なリンクまたはヒューズを含むことが意図される。前述の電力レベルに対して、これらの取り外し可能なリンクは、典型的には、薄型ヒューズソケット(型番3557−2等)を伴う、LITTELFUSE(部品番号0891)(両方とも、Keystone Electronic Corporation(Astoria,NewYork)から利用可能である)等の低コストかつ低背型の小型ヒューズであり得る。
【0024】
図2の回路内の電流および平衡化動作の一実施例では、Cadence Design Systems Inc(SanJose,California)から利用可能なPSPICE等の市販の回路分析ソフトウェアを使用する、回路のコンピュータシミュレーションが、可変インピーダンス回路B1−6のための公称値(増幅器ステージ18A−Cのための公称構成要素仕様に基づく)を確立するために実施される。次いで、増幅器ステージ18AのみがDC電力供給源30に接続されるように、スイッチS3−6が、S1およびS2をつないだまま開放される。反復様式、すなわち、試行錯誤様式において、等しい電流(電流センサCS1およびCS2によって測定される)がトランジスタ増幅器モジュールA1およびA2によって引き込まれるまで、回路B1およびB2のインピーダンス(リアクタンス)値は、変動される。A1およびA2からの出力RF信号の位相もまた、観測される。出力が同相ではない場合、位相は、ソフトウェアシミュレーションによって計算されたおよその公称値に回路B1およびB2のリアクタンス値を再調節することによって等しくされる。これは、通常、以前に確立された電流平衡を乱す。回路B1およびB2のリアクタンスの微調節が、電流および位相の最適平衡が確立されるまで、反復的に継続される。
【0025】
次に、スイッチS1およびS2が開放され、増幅器ステージ18Aを電力供給源から切断し、スイッチS3およびS4がつながれ、増幅器ステージ18BをDC電力供給源に(電流センサを介して)接続する。次いで、回路B3およびB4のリアクタンスが、増幅器ステージ18Aに対して行なわれたように、増幅器モジュールA3およびA4によって引き込まれる電流ならびに増幅器モジュール出力の位相を平衡化するために調節される。増幅器18Aおよび増幅器18Bの電流が、比較される。それらの電流は、増幅器ステージ18Bによって出力電力結合器に送給されるRF電力がステージ18Aからのものと整合するように、等しくあるべきである。それらの電流が等しくない場合、回路B1およびB2ならびにB3およびB4(1度に1つのみの増幅器ステージが電力供給源に接続される)のリアクタンスの反復調節が、許容可能な位相および電流平衡が、4つの増幅器電流ならびに電力結合器20への入力の振幅および位相に対して確立されるまで行なわれる。
【0026】
この許容可能な平衡が達成されると、スイッチS1、S2、S3、およびS4は、開放され、増幅器ステージ18Aおよび18BをDC電力供給源から切断し、スイッチS5およびS6は、つながれて、増幅器ステージ18CをDC電力供給源に接続する。前述のような反復工程が、許容可能な平衡が増幅器ステージによって引き込まれる電流および電力結合器20への入力の位相に対して確立されるまで、必要に応じて、回路B1、およびB2、およびB3およびB4に対する再調節とともに実施される。
【0027】
許容可能な平衡が、個々に調節された増幅器ステージ18A−Cのそれぞれによって達成されると、スイッチS1−6は全て、つながれ、全3つの増幅器ステージをDC電力供給源に接続する。ステージ18A−CからのRF電力出力および位相が、RF電力結合器への入力において測定される。電力および位相が規定公差内で等しい場合、電流および位相平衡化が、完了する。電流または位相平衡化のいずれかが規定公差外にある場合、平衡化は、前述のように、さらに調節され得る。さらなる微調整が、インピーダンス整合回路Z1−3のうちの1つ以上における構成要素値を調節することによって達成され得る。前述の説明から分かり得るように、これは、労力を要するタスクであるが、増幅器ステージ間のクロストークが反復平衡化手順を複雑化する、図1の従来技術の装置における電流および位相平衡化工程より有意に時間がかからないことが見出された。
【0028】
可変インピーダンス(可変リアクタンス)回路B1−6はそれぞれ、分路接続(並列接続)された選択的可変キャパシタとして描写されるが、他の形態の選択的可変リアクタンス回路が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、使用されてもよいことに留意されたい。このようなものとして、容量性素子または誘導性素子を含む、より複雑な回路の直列接続された選択的可変キャパシタが挙げられる。
【0029】
図3は、3つの増幅器ステージ19A、19B、および19CのRF出力が結合される、本発明による回路の別の好ましい実施形態50を図式的に図示する。回路50は、図2の回路40と類似するが、回路50では、増幅器ステージはそれぞれ、それぞれがモジュールA1、A2、およびA3として指定されるモジュールを有する1つのみのトランジスタ増幅器モジュールを含む。それぞれがB1、B2、およびB3として指定される3つのみの選択的可変インピーダンス回路が存在し、電流および位相平衡化動作の間、増幅器ステージのそれぞれに、それぞれスイッチS1、S2、およびS3を介して、別個に接続可能であるように配列された1つのみの電流センサCS1が存在する。
【0030】
図3の回路内の電流および平衡化動作の一実施例では、回路のコンピュータシミュレーションが、図2の回路の動作を参照して上記に論じられたように、可変インピーダンス回路B1−3に対する公称値を確立するために実施される。スイッチS1が、次いで、つながれ、スイッチS2およびS3が、開放される。トランジスタ増幅器モジュールA1によって、DC電力供給源から引き込まれる電流は、電流センサCS1によって測定される。分路リアクタンスB1は、増幅器によって引き込まれるDC電流に正比例する所望の出力電力範囲内で増幅器A1を動作させるように調節される。
【0031】
次に、トランジスタ増幅器A1の出力における位相が、ドライバ増幅器14の出力と信号スプリッタ16への入力との間に位置する試験点Tにおいて測定され、入力信号の位相と比較される。この位相比較は、例えば、試験点Tにおける二重掃引オシロスコープの一方のリード、および出力電力結合器20の前に位置する試験点T1を接触させることによって行なわれることができる。増幅器によって与えられる位相シフトは、存在する場合、オシロスコープ画面上に表示される2つの波形の変位によって分かり得る。点T2およびT3は、それぞれ、増幅器A2およびA3に関して、同様の位相比較を行なうために提供される。
【0032】
前述の手順は、他の2つの増幅器に対して(別個に)繰り返され、各増幅器A1、A2、およびA3によって引き込まれる電流が同一であり、試験点Tと試験点T1、T2、およびT3との間の測定によって示される位相シフトが同一であるように、選択的可変キャパシタB2およびB3を調節する。これによって、電流および位相平衡化手順が完了する。
【0033】
図3の一般的配列は、3つよりも多い増幅器モジュールを含むように拡張されることができる。しかしながら、3つよりも多い増幅器ステージが所望の電力を放電内に提供するために必要とされるとき、図4に描写されるように配列された偶数の増幅器ステージが、好ましい。ここでは、回路60は、4つの増幅器ステージ19A、19B、19C、および19Dを有し、それぞれ、トランジスタ増幅器モジュールA1、A2、A3、およびA4を含む。DC電力供給源30は、電流センサCS1を通して、トランジスタ増幅器モジュールA1およびA3に給電する。電力供給源は、電流センサCS2を通して、トランジスタモジュールA2およびA4に給電する。
【0034】
本配列は、図2の配列に類似するが、トランジスタ増幅器モジュールは、プッシュ−プル構成に配列されない。好ましい電流および位相平衡化手順は、本質的に、図2を参照して上記に説明されたものである。最初に、増幅器ステージ19Aおよび19Bは、スイッチS1およびS2がつながれ、スイッチS3およびS4が開放された状態において、平衡化され得る。次いで、増幅器ステージ19Cおよび19Dは、スイッチS1およびS2が開放され、スイッチS3およびS4がつながれた状態において、平衡化され得る。
【0035】
本発明は、例示的な数の増幅器を含む実施形態および好ましい回路構成要素を参照して上記に説明されている。当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、より多くの数の増幅器が、結合されてもよく、または異なる構成要素が、使用されてもよいことを認識する。
図1
図2
図3
図4