特許第5936244号(P5936244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936244ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936244
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/09 20060101AFI20160609BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20160609BHJP
   C08G 65/46 20060101ALI20160609BHJP
   C07C 43/10 20060101ALI20160609BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C07C41/09
   C08G65/34
   C08G65/46
   C07C43/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-508465(P2014-508465)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公表番号】特表2014-518852(P2014-518852A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012034666
(87)【国際公開番号】WO2012148849
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】61/479,185
(32)【優先日】2011年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ムリアワン エドワード ブディ
(72)【発明者】
【氏名】スンカーラ ハリー バブ
(72)【発明者】
【氏名】ポラディ ラジャ ハリー
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−503486(JP,A)
【文献】 特表2007−501325(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/011279(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/011276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/09
C07C 43/10
C08G 65/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1,3−プロパンジオールおよび硫酸を含む初期混合物を少なくとも150℃の温度で重縮合させて、第1の反応混合物を得る工程と、
(b)前記第1の反応混合物に、(i)アルミナ、(ii)シリカ系ろ過助剤、および任意選択で(iii)活性カーボンブラックを、120℃を超え、かつ200℃未満の温度で添加して、第2の反応混合物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応混合物を、1〜40トールの圧力、および120℃〜200℃の温度で蒸留して、第3の反応混合物と1,3−プロパンジオールを含有する留出物とを得る工程と、
(d)前記第3の反応混合物を、70℃〜100℃の温度でろ過して、0.5重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有し、かつ0.05mgKOH/g未満の酸価および1NTU未満の濁度を有する、200〜500の数平均分子量のポリトリメチレングリコールを得る工程と
を含む、低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する方法。
【請求項2】
工程(c)からの1,3−プロパンジオールを含有する前記留出物が、工程(a)の初期混合物に再循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の反応混合物が、1重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)が繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)における硫酸の量が、0.3重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが、200〜300の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記初期混合物が、回収した1,3−プロパンジオールを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)が、120〜180℃で行われ、かつアルミナとシリカの合わせた合計量が、前記第1の反応混合物の5重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アルミナ対シリカの重量比が、2:1〜3:1の範囲内である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年4月26日に出願された、米国仮特許出願第61/479185号明細書からの優先権の利益に関し、かつその利益を主張する。
【0002】
本発明は、1,3−プロパンジオールからポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその使用は、当技術分野で説明されてきた。それは、典型的には酸触媒を用いて、1,3−プロパンジオールの脱水によってまたはオキセタンの開環重合によって調製され得る。
【0004】
コーティングなどの水系用途、およびパーソナルケア製品にとって、1,3−プロパンジオールの重縮合から短鎖または低分子量のポリトリメチレンエーテルグリコールを生成することが望ましい。しかしながら、1,3−プロパンジオールモノマーの脱水によって調製される低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールは、かなりの量、例えば、約8〜15重量%で未反応モノマーを含有し得、これは、ある種の用途にとって望ましくなく、かつ生成物からのモノマーの除去により、生成物が費用のかかるものとなり得る。また、硫酸が触媒として用いられる場合、重縮合の間に、酸の大部分が、エステル、硫酸水素アルキルに転化され、ポリマーのヒドロキシ官能性に影響を与えることにより、反応中間体としてのその使用を制限し得る。
【0005】
さらに、比較的低い分子量のポリマーは、比較的高い分子量を有するポリマーよりもより水溶性である。このため、比較的低分子量のポリマーの精製において加水分解工程を行うことは、硫酸エステルとグリコール末端基との間の平衡反応のために困難となり得、したがって、明確な水相と有機相との分離を達成することは困難となり得る。また、従来の方法で用いられる水洗浄工程は、水洗浄が、存在する酸を除去するだけでなく、水溶性の短いポリエーテル鎖も除去するので、相当の不利点になり得る。さらに、水溶液からのポリマーの可溶性部分の回収が、望ましくは高いポリマー収率を得るために、望ましく、このことは、それが大量の水の蒸留を必要とするので、費用および時間がかかり、望ましくなく高い資本、維持管理、および操業コストをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、酸触媒および酸触媒誘導末端基(例えば、酸エステル末端基)を含まず、2.0重量%未満の未反応プロパンジオールを含む、比較的低分子量で、水溶性のポリトリメチレンエーテルグリコールを製造することが望ましい。加水分解および/または水洗浄工程なしで酸触媒重合を用いて、このようなポリトリメチレンエーテルグリコールを調製することがさらに望ましい。本発明は上記および他の目的に向けられるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
(a)1,3−プロパンジオールおよび硫酸を含む初期混合物を少なくとも約150℃の温度で重縮合させて、第1の反応混合物を得る工程と、
(b)第1の反応混合物に、(i)アルミナ、(ii)シリカ系ろ過助剤、および任意選択で(iii)活性カーボンブラックを、約120℃を超え、かつ約200℃未満の温度で添加して、第2の反応混合物を形成する工程と、
(c)第2の反応混合物を約1〜約40トールの圧力で約120℃〜約200℃の温度で蒸留して、第3の反応混合物と1,3−プロパンジオールを含有する留出物とを得る工程と、
(d)第3の反応混合物を約70℃〜約100℃の温度でろ過して、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有し、かつ0.05mgKOH/g未満の酸価および約1NTU(nephelometric turbidity unit)未満の濁度を有する、約200〜約500の数平均分子量のポリトリメチレングリコールを得る工程と
を含む、低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する方法である。
【0008】
本発明の別の態様は、約200〜約300の数平均分子量、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオール、約10ppm未満の硫黄含有量、および約50未満のAPHA色数値を有するポリトリメチレンエーテルグリコールである。
【0009】
(a)1,3−プロパンジオールおよび硫酸を含む初期混合物を少なくとも約150℃の温度で重縮合させて、第1の反応混合物を得る工程と、
(b)第1の反応混合物に、(i)アルミナ、(ii)シリカ系ろ過助剤、および任意選択で(iii)活性カーボンブラックを、約120℃を超え、かつ約200℃未満の温度で添加して、第2の反応混合物を形成する工程と、
(c)第2の反応混合物を、約1〜約40mmHgの圧力で約120℃〜約200℃の温度で蒸留して、第3の反応混合物と1,3−プロパンジオールを含有する留出物とを得る工程と、
(d)第3の反応混合物を約70℃〜約100℃の温度でろ過して、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有し、かつ0.05mgKOH/g未満の酸価および約1NTU未満の濁度を有する、約200〜約500の数平均分子量のポリトリメチレングリコールを得る工程と
を含む、低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する方法が本明細書で開示される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態において、工程(c)からの蒸留1,3−プロパンジオールは、工程(a)の初期混合物に再循環されて、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオールおよび約1NTU未満の濁度を有する、約200〜約500の数平均分子量のポリトリメチレングリコールを得る。
【0011】
一部の実施形態において、数平均分子量は、約200〜約400、または約200〜約300であり得る。
【0012】
「低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコール」によって、約200〜約500の数平均分子量を有するポリマーまたはオリゴマーが意味される。
【0013】
初期混合物中に用いられる1,3−プロパンジオールは、様々な化学的経路のいずれか、または生化学的変換経路によって得ることができる。好ましい経路は、米国特許第5,015,789号明細書、同第5,276,201号明細書、同第5,284,979号明細書、同第5,334,778号明細書、同第5,364,984号明細書、同第5,364,987号明細書、同第5,633,362号明細書、同第5,686,276号明細書、同第5,821,092号明細書、同第5,962,745号明細書、同第6,140,543号明細書、同第6,232,511号明細書、同第623,948号明細書、同第6,277,289号明細書、同第6,284,930号明細書、同第6,297,408号明細書、同第6,331,264号明細書および同第6,342,646号明細書に記載されている。一部の好ましい実施形態において、反応物質としてまたは反応物質の成分として用いられる1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析によって決定して約99重量%を超える純度を有する。
【0014】
初期混合物は、約90重量%以上の1,3−プロパンジオールを含み得る。より典型的には、初期混合物は、99重量%以上の1,3−プロパンジオールを含み得る。
【0015】
初期混合物は、少量の、典型的には約10重量%以下、および一部の実施形態において、1重量%未満の他の共反応物質、例えば、1,3−プロパンジオールダイマーも含有し得る。熱安定剤、酸化防止剤および色剤が、必要に応じて重合混合物または最終生成物に添加され得る。
【0016】
適切な酸重縮合触媒は、米国特許出願公開第2002/0007043 A1号明細書および米国特許第6,720,459号明細書に開示されている。最も好ましい触媒は、硫酸である。
【0017】
重縮合重合方法は、バッチ、半連続、連続などであり得る。適切なバッチ法は、米国特許出願公開第2002/0007043号明細書に記載されており、ここで、ポリトリメチレン−エーテルグリコールは、(a)(1)反応物質、および(2)酸重縮合触媒を与える工程と、(b)反応物質を重縮合させて、ポリトリメチレンエーテルグリコールを形成する工程とを含む方法によって調製される。反応は、少なくとも約150℃、より典型的には少なくとも約160℃〜約210℃、より典型的には約170℃〜約190℃の高温で行われる。
【0018】
典型的には、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、大気圧以下で調製される。重縮合が約220℃未満の温度で行われる場合、典型的な圧力は、約5mmHg(66kPa)未満であり;約150℃の温度では、典型的な圧力は、約100mmHg(13kPa)以下である。
【0019】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの調製に使用され得る連続法は、米国特許第6,720,459号明細書に開示されており、ここで、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、(a)(i)反応物質、および(ii)重縮合触媒を連続的に供給する工程と、(b)反応物質を連続的に重縮合させて、ポリトリメチレンエーテルグリコールを形成する工程とを含む連続法によって調製される。典型的には、重縮合は、2つ以上の反応段階で行われる。典型的な温度、圧力範囲および工程は、米国特許第6,720,459号明細書に記載されている。
【0020】
連続法の一つにおいて、重縮合は、上向並流塔反応器中で行われ、反応物質、およびポリトリメチレンエーテルグリコールは、ガスおよび蒸気の流れとともに並流で上方に流れ、典型的にはここで、反応器は、少なくとも3、少なくとも8、かつ最大30までの段、より典型的には最大15までの段を有する。反応物質は、1つまたは複数の位置で反応器に供給され得る。別の実施形態において、重縮合は、向流垂直反応器で行われ、ここで、反応物質およびポリトリメチレンエーテルグリコールは、ガスおよび蒸気の流れに対して向流方式で流れる。典型的には、この反応器は、2つ以上の段を有する。典型的には、反応物質は、反応器の頂部で供給される。
【0021】
本明細書で開示される方法で用いられる酸重縮合触媒の量を調節することが望ましく、高過ぎる酸濃度は、ポリマー中望ましくなく高い濃度の触媒誘導末端基をもたらし得、高い固体廃棄物および低いポリマー収率をもたらし得るからである。過度に低い酸濃度も望ましくなく、これは、それらが、実用的であるには遅過ぎる重合反応速度をもたらすからである。酸の量は、反応物質の重量に基づいて、典型的には約0.1重量%から、より典型的には約0.25重量%から、約1重量%、より典型的には約0.5重量%以下である。酸重縮合触媒が硫酸である一実施形態において、適切な触媒レベルは、約0.25重量%であることが見出されている。
【0022】
バッチまたは連続重縮合のいずれかの反応時間は、望ましいポリマー分子量および反応温度に依存し、反応時間が長ければ長いほど、高い分子量を生成する。触媒が硫酸である一実施形態において、反応時間は、典型的には180℃で、約1時間から、より典型的には約2時間から、さらにより典型的には約3時間から、約20時間、より典型的には約10時間、さらにより典型的には約6時間までである。
【0023】
重合方法の条件にかかわらず、本発明の一態様は、精製操作であり、これにより、良い品質の生成物が、過度に時間がかかり、困難で、かつ費用がかかる加水分解工程および水洗浄工程なしに得ることが可能となる。本開示の文脈で「良い品質」という用語は、生成物が、触媒残留物または触媒誘導ポリマー末端基をほとんどまたはまったく含まずに、高いジヒドロキシル官能性を有することを意味する。「高いヒドロキシル官能性」は、ポリマー分子の約90%以上、好ましくは約95%以上、さらには99.8%以上が、2個のヒドロキシル基を有することを意味する。例えば、硫酸が触媒として用いられる場合の一実施形態において、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物は、約0〜約10、典型的には約5ミリ当量/kgの酸エステル末端基、および約0から約10ppm、典型的には約8ppmまでの硫黄を含有することが見出される。生成物の酸価は、0.05mgKOH/g未満、より典型的には0.03mgKOH/g未満である。
【0024】
本明細書で開示される方法において、粗ポリトリメチレンエーテルグリコールの精製における第1の工程は、反応混合物に、アルミナおよびシリカ系ろ過助剤を重合温度でまたはそれよりわずかに低い温度で添加することを含む。アルミナの添加により、重縮合反応が停止されるだけでなく、反応混合物中に存在する酸、および酸エステル基が吸収される。シリカは、ろ過助剤として作用し、アルミナを含有する生成物混合物のろ過速度を改善する。アルミナとシリカを両方とも使用すると、工程が比較的簡単となる一方で、様々な用途に望ましい品質の生成物を与えることが見出される。
【0025】
アルミナは、酸化アルミニウム、Al23、およびその水和物またはオキシ水酸化物、例えば、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア、ベーマイトおよび擬ベーマイトを意味する。アルミナは、任意の結晶相、例えば、アルファ−アルミナ(しばしば、α−アルミナまたはα−Al2O3として記される)、ガンマ−アルミナ(しばしば、γ−アルミナまたはγ−Al2O3として記される)、および無数のアルミナ多形体で存在し得る。水和アルミナ、特にオキシ水酸化アルミニウムは、一般式γ−AlO(OH)x・H2O(式中、xは、0〜1である)を有する。x=0の場合、その物質は、擬ベーマイトと比較して特異的にベーマイトであり;x>0であり、かつその物質がそれらの結晶構造中に水を取り込む場合、それらは、擬ベーマイトとして知られる。ベーマイトおよび擬ベーマイトは、Al23・zH2O(ここで、z=1である場合、その物質は、ベーマイトであり、1<z<2である場合、その物質は擬ベーマイトである)とも記述される。
【0026】
反応混合物に添加されるアルミナの量は、典型的には第1の反応混合物の約2〜4重量%である。
【0027】
ろ過助剤は、ポリマー中に懸濁した固体によるフィルタースクリーンの詰まりを防止することによって、ポリマー溶液または液体ポリマーのろ過の生成物スループットを促進するために一般に用いられる、不活性で、微粉化した微小孔性の固体である。シリカ系ろ過助剤は、酸化ケイ素、すなわち、SiO2から主として構成される無機物質である。適切なシリカ系ろ過助剤は、石英、ヒュームド(fumed)、発熱性シリカ、コロイド状シリカ、シリカゲル、珪藻土(diatomaceous earthまたはdiatomite)、滴虫土(infusorial earth)、珪藻土(kieselguhr)、パーライトまたは他の火山ガラス、ならびに市販の製品、例えば、Celite(登録商標)、Celpure(登録商標)、HarborliteおよびFibra−Celである。セルロースろ過助剤と比較される場合、シリカ系ろ過助剤は、いくつかの利点を有する。シリカ系ろ過助剤は、セルロースよりも熱的に安定であり、したがって、非常により高い温度で使用され得る。さらに、シリカは、無機であるので、ろ過の間に有機セルロースなどの他のタイプのろ過助剤より生成物を吸収せず、ろ過速度を増加させる。
【0028】
反応混合物に添加されるシリカ系ろ過助剤の量は、典型的には第1の反応混合物の約1〜2重量%である。
【0029】
アルミナとシリカは両方とも、乾燥固体として、または水性スラリーとして添加され得る。アルミナ対シリカの好ましい重量比は、2:1〜3:1、好ましくは2.5:1である。アルミナとシリカとは、典型的には確実に混合するための十分な撹拌とともに、別個にまたは同時にのいずれかで、高温で添加され得る。典型的な温度範囲は、約120℃〜約200℃である。
【0030】
水は、アルミナの添加後、ただしろ過前、に除去されてもよい。任意の従来の乾燥方法、例えば、乾燥剤または分子篩による吸収が、または上記の蒸留工程の間に使用され得る。
【0031】
アルミナおよびシリカの添加後、反応混合物は、1〜40トールの範囲の減圧下かつ120〜200℃の範囲の温度で蒸留されて、未反応モノマーを除去する。蒸留は、標準ワイプト膜蒸発器(wiped−film evaporator)、短行蒸留器(short path distillator)で、または全縮器、凝縮物受器ならびに真空および加熱能力を適切に備える場合は、第2の反応混合物を含有する容器中で行われ得る。蒸留は、生成物が、全生成物の重量で、約2%未満、または約1%未満、または約0.5%未満を含有するまで、続けられる。
【0032】
非常に低レベルの未反応モノマーを含有する低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールは、反応性中間体として、または水性(water−borne)コーティング配合物中の低揮発性有機内容物(VOC)成分として有用である。
【0033】
蒸留モノマーのすべてまたは一部は、回収して、初期混合物に供給原料の一部として再循環して戻すことができる。供給原料中の未使用PDO対再循環PDOの典型的な重量比は、約9:1〜8:1である。アルミナとシリカの両方を含有する第2の反応混合物の蒸留から回収されるPDOは、さらなる処理を必要とせず、そのままで使用される場合、望ましくは低い色数を有する生成物をもたらし、一部の実施形態においてAPHA値は、50程度に低いか、またはそれ未満であることがわかっている。さらなる処理なしにPDOを再循環することは、製造のコストもかなり低減させる。
【0034】
次に、反応混合物はろ過される。ろ過は、当技術分野で知られたいずれかの濾過方法で行われ得る。例えば、重量ろ過、遠心ろ過、または加圧ろ過が使用され得る。フィルタープレス、キャンドルフィルター、圧力リーフフィルターまたは従来のろ紙も、ろ過に使用することができ、これらは、バッチ式でまたは連続的に行うことができる。さらなるろ過助剤材料が、ろ過工程の間に使用され得る。使用済みろ過ケーキは、固体廃棄物として処理され得るか、またはそれは、後処理されて、生成物を回収し得る。さらに、いずれのタイプのろ過助剤も、ろ過を高めるためにこの工程で加えられ、またはろ紙上にプレコーティングされ得る。ろ過工程は、所望の濁度が得られるまで、1回以上の回数繰り返され得る。
【0035】
精製工程は、ポリマー中に存在する硫酸触媒を除去するだけでなく、驚くべきことに、加水分解工程がなくても、触媒誘導ポリマー末端基を除去する。この開示の文脈において、「触媒誘導ポリマー末端基」は、触媒から直接形成される、または触媒の分解生成物から形成される末端基を指す。例えば、触媒がヨウ化水素酸である場合、従来技術の方法で見出される末端基はヨウ素であり;硫酸触媒の場合は、従来技術の方法で見出される末端基は硫酸エステルである。本明細書で開示される方法の生成物は、典型的には、約0〜約10、より典型的には約0〜約5ppmの硫黄を含有する。したがって、末端基は、ほとんどヒドロキシルのみと、少量のオレフィン性不飽和とである。「ほとんどヒドロキシルのみ」は、末端基の約90%以上、好ましくは約95%以上、さらには99.8%以上が、ヒドロキシルであることを意味する。すなわち、ポリマーは、典型的には約0〜約10、より典型的には約0〜約8ミリ当量/kgの非ヒドロキシルまたは非オレフィン性末端基を含有する。
【0036】
したがって、本明細書で開示される方法は、典型的には約200〜約300、または約200〜約270の数平均分子量を有する比較的高い純度のポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【0037】
本明細書で開示される方法の最も卓越した利点は、この方法が、水溶性である低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールを得るために操作される場合に明らかである。これは、約200〜約500の数平均分子量のポリトリメチレンエーテルグリコールについて、加水分解および水洗浄工程を必要とする公知の精製方法は、水に敏感なオリゴマーの存在のために行うことが困難であり得るからである。これにより、加水分解工程が困難で、時間のかかるものとなり得るだけでなく、収量損失をもたらし得る。
【0038】
本明細書で開示される方法によって生成される生成物は、典型的には約50APHA未満の色数、および約15ミリ当量/kg未満の末端基不飽和を有する。生成物の色数は、必要に応じて、活性カーボンブラックなどの色低減助剤の添加によってさらに改善され得る。適切な方法の一つは、2003年8月5日に出願された、米国特許出願第2004/022516号明細書に開示されている。
【0039】
酸重縮合触媒が硫酸である典型的な実施形態において、本明細書で開示される方法によって得られるポリトリメチレンエーテルグリコールは、非常に低いレベルの酸エステル末端基、典型的には約0〜約10、より典型的には約5ミリ当量/kgまでの酸エステル末端基、および典型的には約0〜約10ppm、より典型的には約8ppm、または約5ppmまでのレベルの硫黄を有することが見出される。
【実施例】
【0040】
実施例1
凝縮器および撹拌機を備えた50ガロンのガラス裏張り反応器に、120kgのバイオ系PDO(1,3−プロパンジオールモノマー、DuPontおよびTate & Lyle Bioproducts)を投入した。反応物質を、50rpmの撹拌速度および5L/分の表面下N2スパージング(sparging)とともに、180℃に加熱した。反応物質温度が180℃に達したとき、254g(0.2重量%)の98%硫酸を反応器中に添加した。これは、重合の開始を示した。重合は、N2スパージングなしで180℃で進行した。反応揮発物質を凝縮器中で凝縮させ、ポリマー生成物は反応器中に蓄積させた。重合を420分間進行させた。重合の最後に、反応器のヘッドスペース上のN2スパージングとともに、反応器温度を150℃に低下させた。温度が150℃に達したとき、2.7kgの擬べーマイトアルミナ(BASF G−250低密度アルミナゲル)および1.4kgのシリカ系ろ過助剤(Celite Hyflo Super Cel(登録商標))を反応器中に添加した。固体の添加後に、1〜5L/分の表面下N2スパージングとともに30〜40トールの真空をかけ、反応器温度を170℃と180℃の間に上昇させることによって、モノマーの蒸留を行った。大部分PDOを含有する留出物を凝縮させ、再循環のために収集した。約11kgの留出物を収集後、真空を開放し、標準ヌッチェ(Neutsche)型フィルターで行われるろ過工程のために、温度を80℃に低下させた。ろ過工程の間、擬べーマイトアルミナは、1NTU未満の濁度が得られるまで(Thermo Scientific Orion AQUAfast(登録商標)IV Advanced Turbidity Meterで測定した)、ポリマーをフィルター中に数回再循環させて戻すことによって、シリカ系ろ過助剤の存在下でポリマーから除去した。シリカ系ろ過助剤によるろ過速度は、78kg/時間であった。
【0041】
比較例
凝縮器および撹拌機を備えた50ガロンのガラス裏張り反応器に、120kgのバイオ系PDO(1,3−プロパンジオールモノマー、DuPontおよびTate & Lyle Bioproducts)を投入した。50rpmの撹拌速度および5L/分の表面下N2スパージングとともに、反応物質を180℃に加熱した。反応物質温度が180℃に達したとき、254gの98%硫酸を反応器中に添加した。これは、重合の開始を示した。N2スパージングなしで重合は180℃で進行した。反応揮発物質を、凝縮器中で凝縮させ、ポリマー生成物を、反応器中で蓄積させた。重合を420分間進行させた。重合の最後に、反応器のヘッドスペース上のN2スパージングとともに、反応器温度を100℃に低下させた。2.7kgの擬べーマイトアルミナ(BASF G−250低密度アルミナゲル)および1.4kgのセルロース系ろ過助剤(Solka Floc(登録商標)Grade 40(International Fiber Corporation,North Tonawanda,NY製))を反応器中に100℃で3時間添加し、この反応混合物をろ過した。ろ過工程は、標準ヌッチェ型フィルターで行った。ろ過工程の間、1NTU未満の濁度が得られるまでポリマーをフィルター中に数回再循環させて戻すことによって、擬ベーマイトアルミナをセルロース系ろ過助剤の存在下でポリマーから除去した。このろ過助剤によるろ過速度は、20kg/時間であり、このろ過助剤が、シリカ系ろ過助剤ほど有効でなく、また実施例1に用いた高温条件(120℃超)で熱的に不安定であったことが示唆される。
【0042】
実施例2
供給原料を除いて、装置および重合手順は、実施例1におけるものと同じであった。112kgの未使用バイオ系1,3−プロパンジオールモノマーを投入し、8kgの実施例1から収集した留出物と混合した。50rpmの撹拌速度および5L/分の表面下N2スパージングとともに反応物質を180℃に加熱した。反応物質温度が180℃に達したとき、254gの98%硫酸を反応器中に添加した。これは、重合の開始を示した。N2スパージングなしで重合は180℃で進行した。反応揮発物質を、凝縮器中で凝縮させ、ポリマー生成物を、反応器中で蓄積させた。重合を420分間進行させた。重合の最後に、反応器のヘッドスペース上のN2スパージングとともに、反応器温度を150℃に低下させた。温度が150℃に達したとき、2.7kgの擬ベーマイトアルミナおよび1kgのシリカ系ろ過助剤を反応器中に添加した。固体の添加後、1〜5L/分の表面下N2スパージングとともに30〜40トールの真空をかけ、反応温度を170℃〜180℃に上昇させることによって、モノマーの蒸留を行った。大部分PDOを含有する留出物を凝縮させ、収集した。約14kgの留出物を収集した後、真空を解放し、ろ過工程のために温度を80℃に低下させた。ろ過工程の間、1NTU未満の濁度が得られるまでポリマーをフィルター中に数回再循環させて戻すことによって、擬ベーマイトアルミナをシリカ系ろ過剤の存在下でポリマーから除去した。
【0043】
実施例3
9,000kgのバイオ系1,3−プロパンジオールモノマーおよび18.5kgの98%硫酸を、凝縮器および撹拌機を備えた3,000ガロンのガラス裏張り反応器に投入した。60rpmの撹拌速度および200mL/分の表面下N2スパージングとともに、反応混合物を180℃に加熱した。加熱の開始を、重合時間の開始とした。重合の間、反応揮発物質を凝縮器中で凝縮させ、ポリマー生成物を反応器中で蓄積させた。ポリマー試料を定期的に採取し、それらの粘度を分析して、重合の間の分子量増加の進行を追跡した。いったん100センチポイズの目標粘度に達すると、反応器のヘッドスペース上のN2スパージングとともに温度を160℃に低下させた。温度が165℃未満に達したときに、190kgの擬ベーマイトアルミナおよび75kgのシリカ系ろ過助剤を反応器中に添加した。固体の添加後、20〜50L/分の表面下N2スパージングとともに10〜40トールの真空をかけ、反応器温度を186℃に上昇させることによって、モノマーの蒸留を行った。大部分PDOを含有する留出物を凝縮させ、再循環のために収集した。ポリマー試料を定期的に採取し、GCを用いてPDO含有量を分析した。PDO含有量が0.5重量%未満に達した後、真空を解放し、1,000ガロンのローゼンムント(Rosenmound)型フィルターで行われるろ過工程のために温度を100℃に低下させた。ろ過工程の間、1NTU未満の濁度が得られるまでポリマーをフィルターに数回再循環させて戻すことによって、擬ベーマイトアルミナをシリカ系ろ過助剤の存在下でポリマーから除去した。
【0044】
実施例4
供給原料および最終生成物の色を改善するためのカーボンブラックの添加以外は、装置および手順は実施例3におけるものと同じであった。8,000kgの未使用バイオ系1,3−プロパンジオールモノマーおよび1,000kgの実施例3から収集した留出物ならびに18.5kgの98%硫酸を反応器中に投入した。60rpmの撹拌速度および200L/分の表面下N2スパージングとともに、この反応混合物を180℃に加熱した。加熱の開始を重合時間の開始とした。重合の間、反応揮発物質を凝縮器中で凝縮させ、ポリマー生成物を反応器中で蓄積させた。ポリマー試料を定期的に採取し、それらの粘度を分析して、重合の間の分子量増加の進行を追跡した。いったん目標粘度に達すると、反応器のヘッドスペース上のN2スパージングとともに温度を160℃に低下させた。反応混合物中の全硫黄レベルを固体の添加前に分析し、1386ppmであることがわかった。温度が165℃未満に達したときに、190kgの擬ベーマイト、75kgのシリカ系ろ過助剤、および15kgの活性カーボンブラックを反応器中に添加した。固体の添加後、20〜50L/分の表面下N2スパージングとともに10〜40トールの真空をかけ、反応器温度を186℃に上昇させることによって、モノマーの蒸留を行った。大部分PDOを含有する留出物を、凝縮させ、再循環のために収集した。ポリマー試料を定期的に採取し、GCを用いてPDO含有量を分析した。PDO含有量が0.5重量%未満に達した後、真空を解放し、ろ過工程のために温度を100℃に低下させた。ろ過工程の間、1NTU未満の濁度が得られるまでポリマーをフィルターに数回再循環させて戻すことによって、擬ベーマイトアルミナをシリカ系ろ過助剤の存在下でポリマーから除去した。
【0045】
これらの実施例で得られた生成物の品質を、表1に一覧にする。生成物の色は、Hunter Lab Color Quest Colorimeterを用いて決定し、APHA指数として表した。濁度は、Thermo Scientific Orion AQUAfast(登録商標)IV Advanced Turbidity Meterを用いて決定し、NTU単位で表した。酸価は、塩基による滴定によって決定した。ポリマー中の全硫黄(硫酸および酸エステルからの)の量は、波長分散X線蛍光分光法(PANalytical Model PW2400 WDXRF分光計)を用いて試料を分析することによって決定した。
【0046】
【表1】
次に、本発明の態様を示す。
1.(a)1,3−プロパンジオールおよび硫酸を含む初期混合物を少なくとも約150℃の温度で重縮合させて、第1の反応混合物を得る工程と、
(b)前記第1の反応混合物に、(i)アルミナ、(ii)シリカ系ろ過助剤、および任意選択で(iii)活性カーボンブラックを、約120℃を超え、かつ約200℃未満の温度で添加して、第2の反応混合物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応混合物を、約1〜約40トールの圧力、および約120℃〜約200℃の温度で蒸留して、第3の反応混合物と1,3−プロパンジオールを含有する留出物とを得る工程と、
(d)前記第3の反応混合物を、約70℃〜約100℃の温度でろ過して、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有し、かつ0.05mgKOH/g未満の酸価および約1NTU未満の濁度を有する、約200〜約500の数平均分子量のポリトリメチレングリコールを得る工程と
を含む、低分子量ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する方法。
2. 工程(c)からの1,3−プロパンジオールを含有する前記留出物が、工程(a)の初期混合物に再循環される、上記1に記載の方法。
3. 前記第3の反応混合物が、約1重量%未満の1,3−プロパンジオールを含有する、上記1に記載の方法。
4. 工程(d)が繰り返される、上記1に記載の方法。
5. 工程(a)における硫酸の量が、約0.3重量%未満である、上記1に記載の方法。
6. 前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが、約200〜約300の分子量を有する、上記1に記載の方法。
7. 前記初期混合物が、回収した1,3−プロパンジオールを含有する、上記1に記載の方法。
8. 工程(c)が、約120〜約180℃で行われ、かつアルミナとシリカの合わせた合計量が、前記第1の反応混合物の約5重量%未満である、上記1に記載の方法。
9. アルミナ対シリカの重量比が、2:1〜3:1の範囲内である、上記8に記載の方法。
10. 約200〜約300の数平均分子量、約0.5重量%未満の1,3−プロパンジオール、約10ppm未満の硫黄含有量、および約50未満のAPHA色数値を有する、上記1に記載の方法によって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコール。