特許第5936251号(P5936251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936251
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】機械式立体駐車場の防音装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   E04H6/06 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-286102(P2011-286102)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133674(P2013-133674A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100073276
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 公總
(72)【発明者】
【氏名】高橋 善晴
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−065567(JP,U)
【文献】 特開平06−033621(JP,A)
【文献】 特開平05−141756(JP,A)
【文献】 実開昭58−009408(JP,U)
【文献】 特開2001−107591(JP,A)
【文献】 実開平04−041048(JP,U)
【文献】 特開2001−317224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピット内に設置した躯体フレームの支柱にブラケット支持したモーターの正逆回転によるチェーンの駆動によって単一乃至複数列の昇降フレームに配置した複数段の車載パレットを昇降自在とした機械式立体駐車場であって、上記モーターを被覆する防音カバーを配置し且つ該防音カバーの下面に部分的に配置した開口に下面開放筒状の騒音減衰ボックスを一体に配置するとともに該騒音減衰ボックス内に屈曲連通路を形成するようにその内壁上下中間位置に該内壁との間に連通空間を配置した上下複数にして相互に逆向きの部分仕切パネルを配置してなることを特徴とする機械式立体駐車場の防音装置。
【請求項2】
上記防音カバー及び騒音減衰ボックスを、基板の内壁に吸音遮音材を被覆配置し、上記部分仕切パネルを基板の上下両面に同じく吸音遮音材を被覆配置して形成してなることを特徴とする請求項1に記載の機械式立体駐車場の防音装置。
【請求項3】
上記モーターと、該モーターを支柱に支持したブラケット間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式立体駐車場の防音装置。
【請求項4】
上記躯体フレームを上記支柱と、該支柱の上端に架設配置した梁材を備えて形成し、該梁材の長手方向両端をピット開口端近傍の内壁に設置したアンカーベースにボルトナットで固定するとともに該梁材とアンカーベース間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の機械式立体駐車場の防音装置。
【請求項5】
上記昇降フレームへの複数段の車載パレットの配置を、昇降フレームの連結支柱に設置したブラケットにボルトナットで固定するとともにブラケットと車載パレット間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の機械式立体駐車場の防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式立体駐車場の発生する騒音を可級的に減衰することによって、例えば、住宅地、マンションの敷地内等にも好適に設置し得るようにした機械式立体駐車場の防音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機械式立体駐車場として、本出願人による、ピット内に設置した躯体フレームの支柱にブラケット支持したモーターの正逆回転によるチェーンの駆動によって単一乃至複数列の昇降フレームに配置した複数段の車載パレットを昇降自在としたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−317224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合を含めて、この種の機械式立体駐車場は、駐車車両数を車載パレットの段数分に倍増乃至それ以上に駐車用の敷地を有効利用することができるが、住宅地やマンションの敷地内のような静粛を求められる地域に設置したとき、モーターを低騒音用のものとしても、例えば、日常会話程度とされる55dB乃至60dB程度の騒音を発生する傾向があり、特に、夜間における車両の入出庫には、該騒音が近隣に比較的大きく波及するため、苦情原因となることも多く、このような静粛を求められる地域における機械式立体駐車場は、例えば、油圧ジャッキにより車載パレットを昇降するようにした油圧式の立体駐車場(高度な静粛性を有するとの印象を受けるが、油圧ポンプの作動時に60dB程度の騒音を生じるのが一般である。)との対比で騒音発生が大きいとの印象を与え易く、油圧式との競合に際して不利になる傾向がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、騒音を可及的に抑制することによって、静粛を求められる地域の夜間の入出庫に際しての騒音の発生を可及的に減衰し得るようにした機械式立体駐車場の防音装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に沿って鋭意検討した結果、ピット内設置の躯体フレームの支柱にブラケット支持したモーターを防音カバーで被覆するとともに該防音カバーの下面に、その開口を介して下面開放筒状の騒音減衰ボックスを配置し、該騒音減衰ボックスに上下複数逆向きの部分仕切パネルを配置し、防音カバー内のモーターから騒音を騒音減衰ボックス内でその開放した下面に向けて音波が屈曲して通過するように、屈曲連通路を形成することによって、防音カバーと騒音減衰ボックスにより、立体駐車場の入出庫に際して不可避的に生じるモーター音を可及的に減衰することが可能になるとの知見を得て、本発明をなすに至ったもので、即ち、請求項1に記載の発明を、ピット内に設置した躯体フレームの支柱にブラケット支持したモーターの正逆回転によるチェーンの駆動によって単一乃至複数列の昇降フレームに配置した複数段の車載パレットを昇降自在とした機械式立体駐車場であって、上記モーターを被覆する防音カバーを配置し且つ該防音カバーの下面に部分的に配置した開口に下面開放筒状の騒音減衰ボックスを一体に配置するとともに該騒音減衰ボックス内に屈曲連通路を形成するようにその内壁上下中間位置に該内壁との間に連通空間を配置した上下複数にして相互に逆向きの部分仕切パネルを配置してなることを特徴とする機械式立体駐車場の防音装置としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、防音カバー及び騒音減衰ボックスを、その基板の内壁、基板の上下面をそれぞれ吸音遮音材で被覆して、上記騒音の外部への伝播を可及的に防止するとともに騒音の可及的な減衰を有効且つ適切に行うものとするように、これを、上記防音カバー及び騒音減衰ボックスを、基板の内壁に吸音遮音材を被覆配置し、上記部分仕切パネルを基板の上下両面に同じく吸音遮音材を被覆配置して形成してなることを特徴とする請求項1に記載の機械式立体駐車場の防音装置としたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記モーター音の減衰とともにモーター回転の振動を、モーター支持の支柱に伝導するのを防止して、該支柱への伝導による振動騒音を可及的に減衰して、更に防音効果を向上したものとするように、これを、上記モーターと、該モーターを支柱に支持したブラケット間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式立体駐車場の防音装置としたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、同様に、上記モーター音の減衰とともに、昇降フレームの昇降に伴なう振動を、上記躯体フレームを介してピットの内壁に伝導するのを防止して、該ピットの振動騒音を可及的に減衰して、更に防音効果を向上したものとするように、これを、上記躯体フレームを上記支柱と、該支柱の上端に架設配置した梁材を備えて形成し、該梁材の長手方向両端をピット開口端近傍の内壁に設置したアンカーベースにボルトナットで固定するとともに該梁材とアンカーベース間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の機械式立体駐車場の防音装置としたものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、同様に、上記モーター音の減衰とともに、昇降フレームの昇降に伴なう振動が車載パレットに伝導するのを防止して、該車載パレットの振動騒音を可及的に減衰して、更に防音効果を向上したものとするように、これを、上記昇降フレームへの複数段の車載パレットの配置を、昇降フレームの連結支柱に設置したブラケットにボルトナットで固定するとともにブラケットと車載パレット間に防振材を介設してなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の機械式立体駐車場の防音装置としものである。
【0011】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、ピット内設置の躯体フレームの支柱にブラケット支持したモーターを防音カバーで被覆するとともに該防音カバーの下面に、その開口を介して下面開放筒状の騒音減衰ボックスを配置し、該騒音減衰ボックスに上下複数逆向きの部分仕切パネルを配置し、防音カバー内のモーターから騒音を騒音減衰ボックス内でその開放した下面に向けて音波が屈曲して通過するように、屈曲連通路を形成することによって、防音カバーと騒音減衰ボックスにより、立体駐車場の入出庫に際して不可避的に生じるモーター音を可及的に減衰して、騒音を可及的に抑制することによって、静粛を求められる地域の夜間の入出庫に際しての騒音の発生を可及的に減衰し得るようにした機械式立体駐車場の防音装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、防音カバー及び騒音減衰ボックスを、その基板の内壁、基板の上下面をそれぞれ吸音材で被覆して上記騒音の可及的な減衰を有効且つ適切に行うものとすることができる。
【0014】
請求項3、4及び5に記載の発明は、それぞれ同じく上記に加えて、上記モーター音の減衰とともに、モーター回転の振動による支柱への振動騒音を可及的に減衰し、昇降フレームの昇降に伴なう振動によるピットへの振動騒音を可及的に減衰し、昇降フレームの昇降に伴なう振動による車載パレットの振動騒音を可及的に減衰し、それぞれ更に防音効果を向上したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】立体駐車場の平面図である。
図2】立体駐車場の昇降フレームを上昇した正面図である。
図3】立体駐車場の左側面図である。
図4】立体駐車場の昇降フレームを上昇した右側面図である。
図5】モーターとモーター音の防音措置の関係を示す部分拡大正面図である。
図6】モーター音の防音措置部分の分解斜視図である。
図7】モーター音の防音措置部分の斜視図である。
図8】ピットと躯体フレームの梁材間の防音措置を示す分解正面図である。
図9】ピットと躯体フレームの梁材間の防音措置を示す正面図である。
図10】昇降フレームと車載パレットの防音措置を示す正面図である。
図11】昇降フレームと車載パレットの防音措置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aは立体駐車場であり、該立体駐車場Aは、ピット1内に設置した躯体フレーム2の支柱21にブラケット41支持したモーター4の正逆回転によるチェーンの駆動によって単一乃至複数列の昇降フレーム3に配置した複数段の車載パレット32を昇降自在とした機械式のものとしてあり、このとき該立体駐車場Aは、その上記モーター4を被覆する防音カバー5を配置し且つ該防音カバー5の下面に部分的に配置した開口に下面開放筒状の騒音減衰ボックス6を一体に配置するとともに該騒音減衰ボックス6内にS字状、M字状等の屈曲連通路63を形成するようにその内壁上下中間位置に該内壁との間に連通空間を配置した上下複数にして相互に逆向きの部分仕切パネル62を配置したものとしてある。
【0017】
即ち、立体駐車場Aは、ピット1と、躯体フレーム2と、複数段の車載パレット32を有する複数列の昇降フレーム3と、該昇降フレーム3をチェーン駆動する躯体フレーム2に設置したモーター4を備えたものとしてあり、本例にあ
って該躯体フレーム2は、地表を含めて3段の車載パレット32を有するものとしてあり、このとき、上記ピット1は、上記3段のうちの2段にして、複数列、本例にあって2列の昇降フレーム3を収容する面積と深さを有して、内壁にコンクリートを打設し上面を開口した2段2列用のものとしてあり、躯体フレーム2は、該ピット1に起立設置した4隅のコーナー及び車載パレット32間の中間前後2本の、本例にあっては合計6本の支柱21及びこれら支柱21の上端に架設配置した梁材22を備えて形成したものとし、昇降フレーム3は、それぞれ4本の連結支柱31と、該連結支柱31の上端位置に及び上下中間位置に、各対向する側端をブラケット33を用いて固定して支持した車載パレット32を備えたものとし、また、モーター4は、各昇降フレーム3を、躯体フレーム2の支柱21に添設配置したチェーン、本例にあってはローラーチェーンを回転駆動して2列の昇降フレーム3をそれぞれ昇降するように、例えば、躯体フレーム2後方の2本の支柱21上端にブラケット41を用いて固定してある。
【0018】
モーター4を被覆する上記防音カバー5及びこれに一体に配置した騒音減衰ボックス6は、これを、基板の内壁に吸音遮音材7を被覆配置し、上記部分仕切パネル62を基板の上下両面に同じく吸音遮音材7を被覆配置して形成したものとしてある。
【0019】
本例にあって防音カバー5は、その基板を、数mm厚、本例にあって3mm厚程度とした硬質板、例えば金属板、特に鋼板によるものとし、例えば、スプロケット接続用の回転軸を側面に突出するように挿通してモーター4を5面で被覆するとともに下面に騒音減衰ボックス6に連通する開口を備えたカバー本体51と、該カバー本体51のピット1壁面側の1面を閉塞被覆した閉塞板52とを備え、本例にあって高さ40cm弱、幅30cm強、奥行60cm弱とした中空ボックスによるものとしてあり、該防音カバー5によるモーター被覆は、例えば、モーター4を上記支柱21に支持するについて用いたブラケット41のモーター支持板に起立した4箇所の起立ボルトに該防音カバー5下面の底板を挿通してナットによって締着固定して、上記モーター支持板の下位において行い且つカバー本体51及び閉塞板52の2面に配置した張出し片53を、閉塞板52とピット1壁面間の数cmの空隙を利用して該閉塞板52側からのボルトにカバー本体51側からのナットを締着固定して、これを行ったものとしてある。
【0020】
騒音減衰ボックス6は、同じく、その基板を数mm厚、本例にあって3mm厚程度とした硬質板、例えば金属板、特に鋼板によるものとし、上記防音カバー5、特にそのカバー本体51の下面に部分的に配置した開口、本例にあっては防音カバー5の底面の設置状態で前後方向の後方1/2幅程度に形成した開口に合せた断面積を有する、例えば、高さ50cm、幅25cm強、奥行30cm弱とした縦長のものとしてあり、その防音カバー5への固定は、上端に張出配置した張出し片61を上記防音カバーの底板にボルトナットで締着固定して、防音カバー5の後方位置において該防音カバー5に対してL字状をなすように一体に配置してある。
【0021】
このとき、騒音減衰ボックス6は、その上記吸音遮音材7を配置した内部に上下複数の部分仕切パネル62を配置して、該内部に、上方から下方に向けて上記S字状、M字状等の適宜形状に屈曲した屈曲連通路63を配置し、上記防音カバー5の開口からのモーター音を、該屈曲連通路63を通過して、該騒音減衰ボックス6の開放した下端、即ち、筒状の下端に配置した開口からピット1内に至るようにしてあり、本例にあって該部分仕切パネル62は、これを、上下に2枚配置することによって、S字状をなすように上記屈曲連通路63を形成してあり、このとき、該部分仕切パネル62は、騒音減衰ボックス6の対向する内壁、本例にあっては、前後方向に対向する内壁から、騒音減衰ボックス6の前後幅より短寸の、例えば15〜20cm程度の前後長さのものとして、上位において後方に、下位において前方に向けて突出してあり、これによって上位の部分仕切パネル62の突出方向先端の後方、下位の部分仕切パネル62の同じく突出方向先端の前方にそれぞれ5〜10cm程度の幅の逆位置の空隙を配置して、本例にあって上記S字状の屈曲連通路63を形成したものとしてある。
【0022】
上記部分仕切パネル62は、上記防音カバー5、騒音減衰ボックス6と同じく、数mm厚の硬質板、例えば金属板、特に鋼板を用いて、対向する内壁に対して、端部に張出配置した折曲固定片を騒音減衰ボックス6の内壁面に同じくボルトナットで締着固定して、その吸音遮音材7の被覆層が、該騒音減衰ボックス6の上記対向する内壁面から突出して該騒音減衰ボックス6内に上記屈曲連通路63を形成するようにその配置を行ってある。
【0023】
本例にあって、上記モーター音の防音措置に用いた吸音遮音材7は、吸音性、遮音性及び防振性を兼備した制振遮音材を使用したものとしてある。制振遮音材は、例えば、下位側からベース層、制振層及び表層を積層一体化した3層構造を基本構造として、制振層による振動制御によってその遮音性を確保するとともにベース層、表層によって更に吸音性、防振性を確保したものを用いてあり、このとき、該制振遮音材は、防音措置の対象である立体駐車場が屋外設置のものであることに鑑みて、必要に応じて、更に、表層の表面に防水層を1層配置した4層構造のものを用いるものとしてある。本例の上記制振遮音材は、そのベース層を、例えば、数mm厚さの発泡樹脂を用いた粘弾性層とし、制振層を、例えば、上記振動制御を行うように薄肉のガラス繊維クロスと、該ガラス繊維クロスの表面に、例えば、マトリックス状緻密に接着固定した円形、矩形等適宜平面形状をなす小片多数の硬質板、本例にあっては同じく薄肉の、例えば数mm径の亜鉛鉄板による円形小片との、ガラス繊維クロス、亜鉛鉄板小片を一体化した1mm以下の薄肉のシート層とし、表層73を、例えば、1cm弱の厚さの軟質発泡樹脂層としてあり、これによって粘弾性層と軟質発泡樹脂層との間に上記制振層を介装一体化したものとしてある。該吸音遮音材7は、そのベース層に配置した接着剤によって、防音カバー5、騒音減衰ボックス6、その部分仕切パネル62に接着固定してある。
【0024】
このように、モーター4を防音カバー5によって被覆するとともに、これに屈曲連通路63を形成した騒音減衰ボックス6を配置する一方、該防音カバー5の内壁、騒音減衰ボックス6の内壁、部分仕切パネル62の表裏面に、吸音遮音材7を配置することによって、モーター4が不可避的に発生するモーター音が、防音カバー5、騒音減衰ボックス6から外部に漏れるのを防止するとともに該モーター音が騒音減衰ボックス6の屈曲連通路63を通過することによって、該騒音減衰ボックス6内で反射吸音を繰り返すことによって、該モーター音の強制減衰を行い、音のエネルギーを大きく減耗して、その開放した下面からピット1内の下方に向けて放出するようにしてあり、従って、モーター音が幾分残存してもピット1内で更に減衰する結果、上記不可避的に発生するモーター音が地上に伝播して近隣に及ぶのを有効且つ確実に防止できる。
【0025】
更に、本例にあって立体駐車場Aは、上記モーター音の防音措置に加えて、モーター4の回転駆動乃至昇降フレーム3の昇降の振動の伝導を受けて騒音を発生する部位にそれぞれ防振材8を介設して、該振動に起因する騒音の防音措置としてある。
【0026】
即ち、上記躯体フレーム2の上記梁材22は、その長手方向両端をピット1開口端近傍の内壁に設置したアンカーベース23にボルトナットで固定するとともに該梁材22とアンカーベース23間に防振材8を介設してあり、上記昇降フレーム3に対する複数段の車載パレット32の配置は、これを、昇降フレーム3の連結支柱31に設置したブラケット33にボルトナットで固定するとともにブラケット33と車載パレット32間に防振材8を介設してあり、上記モーター4と、該モーター4を支柱21に支持したブラケット24間に防振材8を介設してあり、また、本例にあっては、例えば、上記防音カバー5の上記支柱21と交差する面のピット1へのボルトナットの固定部位を含めて振動伝播可能性のある部位に同様に防振材8を適宜配置してある。
【0027】
本例にあって、上記防振材8は、例えば防振ゴムのシート、スリーブを用いて、該防振ゴムのシートを上記アンカーベース23と梁材22、ブラケット33と車載パレット32に介設し、また、スリーブをボルトとナット間に介設してあり、これによって、昇降フレーム3とピット1間、昇降フレーム3と車載パレット32間、上記モーター4と支柱21間におけるモーター4の回転駆動乃至昇降フレーム3の昇降の振動の伝導による騒音を制振するようにそれぞれ介設するものとしてあり、これによって上記モーター音の防音措置に加えて、立体駐車場Aの振動騒音を防止するようにその上記振動に起因する騒音の防音措置としてある。
【0028】
本例の立体駐車場Aにあって、車両の入出庫は、昇降フレーム3毎に地上に立設配置した操作パネル42のスイッチ操作により、モーター4を正逆方向に回転駆動することによって行うところ、その上記モーター音の防音措置と振動に起因する防音措置を施すことによって、該立体駐車場Aの騒音を大きく減衰することができる。
【0029】
即ち、実験によれば、各車載パレット32に車両を搭載した状態で、モーター4のスイッチをONとしたとき、正面における騒音は、上記防音措置を施さない場合には56乃至59dBであるところ、上記防音措置を施したものにあっては48dB乃至50dBであり、防音措置によって8乃至9dBの騒音減衰効果が認められた。
【0030】
また、防音カバー5と騒音減衰ボックス6を用いたときに、上記振動発生部位の防振材8を介設しない場合と、該防振材8を介設した場合の、同じく正面における騒音は、前者において50乃至53dBであるところ、後者においては上記48乃至50dBとなるから、防音カバー5及び騒音減衰ボックス6による単独の防音措置における騒音減衰効果は概ね数dBであると認められる。50dBの騒音は、例えば、エアコンの室外機の騒音、静かな事務所内の騒音程度とされるところ、該防音措置を施すことなく、上記防振材の介設のみによるものは、50dBを超えた程度とし得るから、騒音を相当程度に抑制することができるが、該モーター音の防音措置を施すことによって、騒音を40dB台後半にまで減衰することが可能となり、夜間の入出庫を行うことが避け得ない、住宅地やマンションのような静粛を求められる地域の立体駐車場Aとして有効に作用するものとし得る。
【0031】
本例の立体駐車場Aは、以上の如くに、機械式であることによる騒音を大幅に減衰し、上記油圧式の立体駐車場と同等乃至それ以下の騒音抑制を行ったものとすることができ、設置場所を顧慮することなく、静粛を求められる地域においても好適に設置使用し得るものとすることができる。
【0032】
図示した例は以上のとおりとしたが、騒音減衰ボックスにおける仕切パネルを増加して、屈曲連通路の形状をM字状とするように、該仕切パネルの上下枚数によって該屈曲連通路を、更に適宜の形状とすること、上記ローラーチェーンに防音措置を施すこと、上記防振材をモーターとそのブラケット間に追加的に介設すること、吸音遮音材乃至防振材を、軟質ゴム、合成樹脂クッション材等適宜材質のものとすること等を含めて、本発明の実施に当って、機械式立体駐車場、ピット、躯体フレーム、モーター、昇降フレーム、車載パレット、防音カバー、騒音減衰ボックス、仕切パネル、屈曲連通路、必要に応じて用いる基板、吸音遮音材、防振材等の各具体的形状、構造、材質、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0033】
A 立体駐車場
1 ピット
2 躯体フレーム
21 支柱
22 梁材
23 アンカーベース
24 ブラケット
3 昇降フレーム
31 連結支柱
32 車載パレット
33 ブラケット
4 モーター
41 ブラケット
42 操作パネル
5 防音カバー
51 カバー本体
52 閉塞板
53 張出し片
6 騒音減衰ボックス
61 張出し片
62 部分仕切パネル
63 屈曲連通路
7 吸音遮音材
8 防振材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11