(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を信号光と参照光とに分割し、被検眼の眼底を経由した前記信号光と参照光路を経由した前記参照光とを重畳して干渉光を生成し、前記干渉光を検出する光学系と、
前記干渉光の検出結果に基づいて前記眼底の断層像を形成する画像形成部と、
前記断層像を解析することで、前記眼底の中心窩の近傍に位置する異常領域を特定する特定部と、
前記中心窩と前記異常領域との間の距離を算出し、前記中心窩に対する前記異常領域の方向と前記距離とを対応付けた対応情報を生成する対応情報生成部と、
前記対応情報に基づいて前記眼底の状態を評価するための評価情報を生成する評価情報生成部と
を有し、
前記画像形成部が、前記干渉光の検出結果に基づいて、前記眼底の中心窩の近傍に位置する複数の断面における複数の断層像を形成し、
前記対応情報生成部が、前記複数の断層像のそれぞれについて、当該断面における前記中心窩と前記異常領域との間の距離を算出し、前記複数の断面に対応する複数の方向における前記距離の分布を表す分布情報を前記対応情報として生成する分布情報生成部を含み、
前記評価情報生成部が、
前記分布情報に含まれる前記距離のうちの最小値を特定し、
前記最小値に対応する方向を前記複数の方向のうちから特定し、
前記特定された方向に基づいて前記評価情報を生成する
ことを特徴とする眼底観察装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る眼底観察装置は、OCTを用いて眼底の断層像(2次元断層像及び3次元画像の少なくとも一方を含む)を形成する。また、この発明に係る眼底画像解析装置は、OCTを用いて取得された眼底の断層像の入力を受ける。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として援用することが可能である。
【0020】
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプのOCTを適用した構成について詳しく説明する。特に、実施形態に係る眼底観察装置は、特許文献5に開示された装置と同様に、スペクトラルドメインOCTの手法を用いて眼底のOCT画像及び眼底像の双方を取得可能である。なお、スペクトラルドメイン以外のタイプ、たとえばスウェプトソースOCTの手法を用いる眼底観察装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、この実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外の眼底撮影装置、たとえばSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などに、この実施形態に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。また、この実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。
【0021】
[構成]
図1及び
図2に示すように、眼底観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。演算制御ユニット200は「眼底画像解析装置」としての機能を有する。
【0022】
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。なお、眼底カメラユニット2は「撮像部」の一例である。また、眼底カメラユニット2を用いて撮影された眼底像は「眼底の表面画像」の一例である。
【0023】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38。)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
【0024】
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
【0025】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0026】
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
【0027】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
【0028】
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー40にて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0029】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
【0030】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0031】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0032】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
【0033】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0034】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0035】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
【0036】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
【0037】
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光LS)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを信号光LSで走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光LSをx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。
【0038】
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0039】
なお、スウェプトソースタイプのOCT装置の場合には、低コヒーレンス光源を出力する光源の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。一般に、OCTユニット100の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
【0040】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。
【0041】
光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
【0042】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。
【0043】
参照光LRは、光ファイバ104により導かれて光減衰器(アッテネータ)105に到達する。光減衰器105は、公知の技術を用いて、演算制御ユニット200の制御の下、光ファイバ104に導かれる参照光LRの光量を自動で調整する。光減衰器105により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ104により導かれて偏波調整器(偏波コントローラ)106に到達する。偏波調整器106は、たとえば、ループ状にされた光ファイバ104に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ104内を導かれる参照光LRの偏光状態を調整する装置である。なお、偏波調整器106の構成はこれに限定されるものではなく、任意の公知技術を用いることが可能である。偏波調整器106により偏光状態が調整された参照光LRは、ファイバカプラ109に到達する。
【0044】
ファイバカプラ103により生成された信号光LSは、光ファイバ107により導かれ、コリメータレンズユニット105により平行光束とされる。更に、信号光LSは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、信号光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ11により屈折されて眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を経由してファイバカプラ109に到達する。
【0045】
ファイバカプラ109は、信号光LSの後方散乱光と、ファイバカプラ104を経由した参照光LRとを干渉させる。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ110により導かれて出射端111から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ112により平行光束とされ、回折格子113により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ114により集光されてCCDイメージセンサ115の受光面に投影される。なお、
図2に示す回折格子118は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
【0046】
CCDイメージセンサ115は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ115は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを演算制御ユニット200に送る。
【0047】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0048】
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様である。
【0049】
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像を表示装置3に表示させる。
【0050】
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御などを行う。
【0051】
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、光減衰器105の動作制御、偏波調整器106の動作制御、CCDイメージセンサ120の動作制御などを行う。
【0052】
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0053】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
【0054】
〔制御系〕
眼底観察装置1の制御系の構成について
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
【0055】
(制御部)
眼底観察装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
【0056】
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の合焦駆動部31A、光路長変更部41及びガルバノスキャナ42、更にOCTユニット100の光源ユニット101、光減衰器105及び偏波調整器106を制御する。また、主制御部211は、後述する各種の表示制御を実行する。主制御部211は「表示制御部」の一例として機能する。
【0057】
合焦駆動部80は、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、主制御部211は、図示しない光学系駆動部を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることもできる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0058】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0059】
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼底観察装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0060】
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ115からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部220は「形成部」として機能する。なお、眼底Efの3次元画像を解析する場合には、画像形成部220と画像処理部230(3次元画像を形成する機能)が「形成部」に相当する。
【0061】
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。また、眼底Efの部位とその画像とを同一視することもある。
【0062】
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0063】
画像処理部230は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0064】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0065】
画像処理部230は、眼底像とOCT画像との位置合わせを行うことができる。眼底像とOCT画像とが並行して取得される場合には、双方の光学系が同軸であることから、(ほぼ)同時に取得された眼底像とOCT画像については、撮影光学系30の光軸を基準として位置合わせすることができる。また、眼底像とOCT画像との取得タイミングに関わらず、OCT画像をxy平面に投影して得られる画像と眼底像との位置合わせをすることにより、そのOCT画像とその眼底像とを位置合わせすることも可能である。
【0066】
画像処理部230は、層領域特定部231と、層厚情報生成部232と、異常領域特定部233と、分布情報生成部234と、評価情報生成部235とを有する。ここで、層領域特定部231、層厚情報生成部232、及び異常領域特定部233は、「特定部」の一例として機能する。また、分布情報生成部232は「対応情報生成部」の一例として機能する。
【0067】
(層領域特定部)
層領域特定部231は、眼底Efの断層像を解析して所定の層領域を特定する。この断層像には、2次元断層像と3次元画像とが含まれる。層領域とは、眼底Efに存在する層状(又は膜状)の組織に相当する、断層像中の画像領域を意味する。なお、眼底Efには、網膜、脈絡膜及び強膜が存在する。網膜は、組織学的に10層に分けることができ、外側から順に、網膜色素上皮層、視細胞層、外境界膜、外顆粒層、外網状層、内顆粒層、内網状層、神経節細胞層、神経繊維(線維)層、及び内境界膜からなる。層領域は、このような構成を有する眼底Efにおける1以上の組織に相当する画像領域である。
【0068】
層領域特定部231は、従来と同様に、断層像の画素値(輝度値)に基づいて所定の層領域を特定する。また、断層像の画素値に基づいて複数の層領域を特定し、それらの画素値や形状に基づいて所定の層領域を選択するようにしてもよい。また、眼底Efの特徴的な部位(網膜表面、特徴的な画素値を有する層領域等)を特定し、これらからの距離に基づいて所定の層領域を特定するようにしてもよい。一般に、所定の層領域の特定は、任意の公知技術(画像処理技術)を用いて行うことができる。
【0069】
(層厚情報生成部)
層厚情報生成部232は、層領域特定部231により特定された層領域を解析して、この層領域の厚みに関連する層厚情報を生成する。層厚情報の例として、厚み分布情報、対称位置情報、左右眼情報がある。なお、層厚情報は、これらに限定されるものではない。また、層厚情報は、これらを含む複数の情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
厚み分布情報は、眼底Efの断層像が表す眼底Efの断面における層領域の厚みの分布を表す。この情報を生成する処理の例として、層厚情報生成部232は、断面の任意の位置(つまり任意のxy座標の位置)における所定の層の厚み(つまりz方向における当該層領域の上面と下面との間の距離)を求め、その位置と厚みとを対応付ける。層の厚みは、たとえば、当該層領域を構成する画素のz方向における配列数をカウントすることにより、又は断層像に定義された実空間における距離を求めることにより算出される。
【0071】
対称位置情報は、眼底Efの中心窩に関する対称位置における層領域の厚みの差又は比を表す。中心窩(に相当する画像位置)は、断層像が描写する黄斑部の窪みの最深部又は中心部として求めてもよいし、眼底像の画素値に基づき特定される黄斑部の中心位置として求めてもよいし、ガルバノスキャナ42による走査位置情報から求めてもよいし、固視位置と光学系光軸(フレームの中心位置)との位置関係から求めてもよい。また、画像解析によって求める代わりに、眼底像又は断層像の表示画像中に手入力するようにしてもよい。また、当該被検眼Eについて過去に得られた眼底像や断層像を参照可能な場合には、この過去画像に基づき特定された中心窩の位置、及び過去画像と今回の画像との位置関係に基づいて、今回の画像における中心窩の位置を特定することが可能である。この処理における位置関係は、たとえば、過去画像中の特徴点(黄斑部、視神経乳頭、特徴的な血管、血管分岐点等)と、今回の画像中の当該特徴点とに基づく、画像間の位置合わせによって得られる。
【0072】
中心窩に関する対称位置は、たとえば中心窩に対して点対称な2つの位置である。この2つの点対称な位置は、中心窩を通過する線分において、中心窩から等距離にある2つの位置である。中心窩からの距離は、画素数として特定することもできるし、xy平面に定義された実空間における距離として求めることもできる。対称位置の他の例として、中心窩を通過する直線に対する線対称な2つの位置を用いることもできる。
【0073】
このような2つの位置における厚みは、厚み分布情報と同様にして算出される。層厚情報生成部232は、一対の対称位置における2つの厚みの値の差又は比を算出する。差を算出する場合、一方の厚みの値に対する他方の厚みの値の差を算出してもよいし、差の絶対値を算出してもよい。なお、前者の場合には負の値も取りうる。比を算出する場合には、事前に設定された方向付けに基づいて、一方を分母に、他方を分子に割り当てて算出を行う。
【0074】
左右眼情報は、一患者の左右の被検眼のそれぞれについて断層像を形成する場合に適用される。左右眼情報は、左被検眼の眼底と右被検眼の眼底との対称位置における層領域の厚みの差又は比を表す。この対称位置は、上下方向については左右被検眼ともに上方向及び下方向として定義される位置であり、左右方向については鼻方向及び耳方向として定義される位置である。換言すると、この対称位置は、体軸(又は顔の中心線)に対する鏡像位置、つまり鏡像対称な位置である。各位置における厚みの算出方法、及び、差又は比の算出方法は、上記と同様である。
【0075】
(異常領域特定部)
異常領域特定部233は、層厚情報生成部232により生成された層厚情報に基づいて異常領域を特定する。異常領域とは、疾患に起因する眼底Efの異常が生じていると判断される領域だけでなく、異常が生じていると推定される領域も含んでいてもよい。
【0076】
この実施形態では、層領域の厚み(薄くなること、又は厚くなること)を評価対象とする。層領域の厚みの評価は、たとえば、複数の正常眼をOCT計測して得られた厚みの統計値(平均値、標準偏差等)に基づき設定された正常範囲との比較により行うことができる。この正常範囲は、計測対象領域全体に等しく設定されていてもよいし、計測対象領域をいくつかの領域に分割して領域ごとに設定されていてもよい。また、複数の層領域に対して個別に正常範囲を設定するようにしてもよい。
【0077】
判定対象となる異常は、層領域のような構造的な異常には限定されず、たとえば血流のような機能的な異常や、光学的な異常であってもよい。解析処理に供されるOCT画像の種別は、このような異常の種別に応じて決定される。たとえば、構造的な異常を判定する場合には眼底Efの形態を表す通常のOCT画像が用いられ、機能的な異常を判定する場合には機能的計測(ドップラーOCT等)により得られたOCT画像が用いられ、光学的な異常を判定する場合には光学特性計測(偏光OCT等)により得られたOCT画像が用いられる。
【0078】
OCT画像にはノイズが混入することがある。ノイズの影響を排除するために、異常領域の特定処理において、一旦特定された異常領域のサイズを算出し、そのサイズが所定の閾値以下である場合に、この異常領域を正常領域と判定するようにしてもよい。このサイズ(面積又は体積)は、異常領域に含まれる画素数として求めてもよいし、実空間における面積として算出してもよい。また、この閾値は、任意の方法で求めることが可能であり、たとえば、OCT計測を実際に行なってノイズのサイズを求めてもよいし、理論的に求めてもよいし、異常のサイズの臨床データから求めてもよい。
【0079】
(分布情報生成部)
この実施形態では、眼底Efの中心窩の近傍に位置する複数の断面における複数の断層像を取得し、これら断層像が解析処理に供される。そのために、眼底観察装置1は、黄斑部用の固視位置を設定して後述の放射スキャンを行う。この放射スキャンは、たとえば中心窩を略中心とする所定本数の直線状のスキャン(リニアスキャン)からなる。これらリニアスキャンは、たとえば等角度間隔で設定される。リニアスキャンの本数は任意に設定可能であるが、検査の精度を高めたい場合にはより多数に設定することができ(たとえば1度間隔で180本)、検査時間の短縮を図りたい場合にはより少数に設定することができる。なお、この実施形態で適用可能なスキャン態様は放射スキャンには限定されず、3次元スキャン等の他のスキャン態様を適用することも可能である。
【0080】
分布情報生成部234は、各ラインスキャンに対応する断層像を解析し、その断面における中心窩と異常領域との間の距離を算出する。この断面は、ラインスキャンの軌跡に沿い、かつ、z方向に延びる平面である。また、距離の算出処理では、当該断面における異常領域が特定される。より具体的には、分布情報生成部234は、異常領域特定部233により特定された異常領域と当該断面との間で共通なxy座標を求め、更に、この共通なxy座標のうち中心窩のxy座標に最も近いものを選択する。この選択されたxy座標と中心窩のxy座標との間の距離が、当該断面における中心窩と異常領域との間の距離となる。なお、共通なxy座標が存在しない場合は、当該断面に異常領域が存在しないこととなる。また、この距離は、前述した層領域の厚みと同様に、画素数として、又は実空間における距離として、求めることができる。
【0081】
分布情報生成部234は、この算出処理を各断層像に対して実行する。それにより、複数の断面に対応する複数の方向における距離の分布を表す分布情報が得られる。複数の断面に対応する複数の方向とは、たとえば中心窩を基準として定義される方向である。この実施形態では、たとえば、中心窩を原点とするxy座標系において、所定方向(x軸方向、y軸方向等)を角度0度とし、かつ所定の回転方向(時計回り方向又は反時計回り方向)に角度の値が増加するに対するように定義される。分布情報は、このようにして定義される各方向(角度等)に対して、中心窩と異常領域との間の距離を対応付けることによって生成される。分布情報は「対応情報」の一例である。また、分布情報生成部234は「対応情報生成部」の一例として機能する。
【0082】
分布情報の例を
図5に示す。このグラフ情報において、横軸は中心窩を原点とする方向を表し、縦軸は中心窩からの距離を表す。横軸の「T」、「S」、「N」、「I」は、眼科で慣用されているように、それぞれ「耳方向」、「上方向」、「鼻方向」、「下方向」を表す。隣接する2つの方向の間の角度は90度である。また、このグラフ情報に相当するOCT計測領域は、中心窩から各方向に3mmの範囲の円盤状領域である。このOCT計測は、たとえば、長さ6mmのラインスキャンを複数本組み合わせた放射スキャンによって実現される。また、中心窩を中心とする6mm×6mmの範囲の3次元スキャンを行って得られたデータから、当該円盤状領域に含まれるデータを抽出するようにしてもよい。また、同心円スキャンを用いることも可能である。
【0083】
図5に示すグラフ情報によれば、耳側から上側を経由して鼻側を少し越えた辺りまで、異常領域が無いことが分かる。つまり、円盤状領域の上半円領域には異常領域が無いことが分かる。更に、鼻側を少し越えた辺りから下側に向かって異常領域と中心窩との距離が次第に小さくなって行き、下側を超えて耳側との中間付近において、その距離が最も小さくなっている。そして、この最も近い方向を越えて耳側に向かって異常領域と中心窩との距離が次第に大きくなっている。
【0084】
グラフ情報は、たとえば評価情報生成部235により生成される。なお、グラフ情報を生成するための座標系のテンプレートが、記憶部212等にあらかじめ記憶されている。主制御部211により、グラフ情報を表示部240Aに表示させることができる。この場合、主制御部211は「表示制御部」として機能する。グラフ情報は、後述の評価情報の一例である。
【0085】
図5に示すグラフ情報の基になった異常領域の分布を
図6に示す。なお、この異常領域の分布を表す情報(異常領域分布画像)は、分布情報と眼底像に基づいて形成される。異常領域分布画像の背景は、眼底カメラユニット2を用いて撮影された眼底像Gである。眼底像Gは、前述のように黄斑部用の固視位置で撮影されたものであり、そのフレームのほぼ中心位置に中心窩Cが描写される。なお、この眼底像Gは、より広角で撮影されたものをトリミングしたものであってもよいし、走査領域Rのサイズ(ここでは直径6mmの円盤状領域)に合わせた画角で撮影されたものであってもよい。符号Aで示す斜線領域は異常領域を示す。異常領域Aは、それ以外の領域(正常領域を含む)と異なる態様で表示される。その一例として、異常領域Aに相当する眼底像Gの部分領域に所定の色を付したり、この部分領域の輪郭を表示したりすることが可能である。
【0086】
異常領域分布画像は、たとえば評価情報生成部235により生成される。主制御部211により、異常領域分布画像を表示部240Aに表示させることができる。この場合、主制御部211は「表示制御部」として機能する。異常領域分布画像は、後述の評価情報の一例である。
【0087】
(評価情報生成部)
評価情報生成部235は、分布情報生成部234により生成された分布情報に基づいて、被検眼Efの診断に用いられる評価情報を生成する。評価情報として記録される項目は、診断の目的に応じて適宜に決定される。評価情報は、主制御部211により、所定の形式で表示される。この表示形式の例として、数値で表示する方法や、画像として表示する方法や、グラフ情報を用いて表示する方法などがある。以下、評価情報及びその表示態様の例を説明する。
【0088】
(評価情報の第1の例)
評価情報の第1の例は、中心窩の最も近くに異常領域が位置する方向を表す情報(最近接方向情報)を含む。そのために、評価情報生成部235は、まず、分布情報生成部234により生成された分布情報に含まれる距離の大小を比較して最小値を特定する。次に、評価情報生成部235は、分布情報を参照し、この最小値に対応する方向(最近接方向)を特定する。そして、評価情報生成部235は、特定された最近接方向に基づいて最近接方向情報を生成する。
【0089】
最近接方向情報の例を
図7及び
図8に示す。
図7に示す例では、
図6に示す異常領域分布画像上に、中心窩Cと、これに最も近い異常領域の位置とを結ぶ矢印201が、評価情報として表示されている。矢印201の延びる方向が最近接方向を表している。また、
図8に示す例では、
図5に示すグラフ情報上に、横軸において最近接方向を示す位置と、グラフにおいて横軸に最も近い位置とを示す矢印202が、評価情報として表示されている。なお、矢印201、202と共に、最近接方向を示す数値(角度)を表示させてもよい。
【0090】
なお、1つの最近接方向を選択する代わりに、異常領域と中心窩との距離が近いものから順に所定数の方向を選択し、これを評価情報としてもよい。その表示態様についても同様である。
【0091】
(評価情報の第2の例)
評価情報の第2の例は、中心窩と異常領域との距離が所定の閾値以下である方向を表す情報(近接方向情報)である。この近接方向情報を求めるために、評価情報生成部235は、まず、分布情報に含まれる距離と所定の閾値とを比較し、この閾値以下である距離を選択する。この閾値は、デフォルトで設定されたものでもよいし、ユーザが任意に設定したものであってもよい。次に、評価情報生成部235は、分布情報を参照することで、選択された各距離に対応する方向を特定する。そして、評価情報生成部235は、特定された方向に基づいて近接方向情報を生成する。
【0092】
この近接方向情報の例としては次のものがある:
(1)中心窩と異常領域との距離が閾値以下である方向の割合を表す割合情報;
(2)中心窩と異常領域との距離が閾値以下である方向において、異常領域と中心窩との間に位置する正常領域のサイズを表すサイズ情報;
(3)この正常領域における任意の層領域の厚みの統計値。
【0093】
例(1)の割合情報について説明する。割合情報は、上記のように、中心窩と異常領域との距離が閾値以下である方向の割合を表す。割合情報は、このような方向の全体に対する割合だけでなく、このような方向の個数(角度)であってもよい。これは、全体の個数や角度があらかじめ決まっているからである。
【0094】
割合情報を生成する場合、評価情報生成部235は、まず、分布情報に含まれる各距離と閾値とを比較し、この閾値以下である距離を特定する。次に、評価情報生成部235は、分布情報を参照することで、選択された各距離に対応する方向を特定する。そして、評価情報生成部235は、分布情報に含まれる全ての方向と、特定された方向とに基づいて割合情報を生成する。この処理では、たとえば、特定された方向の個数と全ての方向の個数とに基づく商や比を求めてもよいし、特定された方向の個数を求めてもよい。
【0095】
割合情報の表示態様を説明する。割合情報の表示例を
図9及び
図10に示す。
図9においては、特定された方向の範囲を示す矢印からなる割合情報203が、
図6に示す異常領域分布画像上に提示されている。また、
図10には、
図5に示す分布情報の横軸における特定された方向の範囲を示す矢印からなる割合情報204が提示されている。更に、
図10には、この割合情報204を求めるために適用された閾値SHが提示されている。また、図示は省略するが、割合情報として、特定された方向の個数や、その角度や、上記商又は比などを数値で表示することも可能である。
【0096】
次に、例(2)のサイズ情報について説明する。サイズ情報は、上記のように、中心窩と異常領域との距離が閾値以下である方向において、異常領域と中心窩との間に位置する正常領域のサイズを表す。この正常領域は、
図11に符号205で示す領域である。なお、
図11は、サイズ領域の表示態様の一例である。
【0097】
サイズ情報を生成する場合、評価情報生成部235は、まず、分布情報に含まれる各距離と閾値とを比較し、この閾値以下である距離を特定する。次に、評価情報生成部235は、分布情報を参照することで、選択された各距離に対応する方向を特定する。そして、評価情報生成部235は、特定された方向のそれぞれについて、中心窩と異常領域との間の領域を求める。この領域は正常領域に相当する。このようにして各方向について求められた正常領域の総和がサイズ情報となる。
【0098】
サイズ情報は、このような正常領域の面積の値の総和でもよいし、特定された全ての方向における正常領域の面積と異常領域の面積との割合でもよいし、特定された全ての方向の全面積と正常領域の面積との割合でもよい。また、全面積は異常領域と正常領域との和であるから、特定された全ての方向の全面積と異常領域の面積との割合をサイズ情報としてもよい。また、面積の代わりに体積を用いることも可能である。この体積は、層厚情報の生成に用いられた層領域の体積でもよいし、それ以外の層領域の体積でもよい。サイズ情報の表示態様は、
図11に示した方式には限定されず、上記算出結果のいずれかを数値で提示したものであってもよい。
【0099】
例(3)の統計値について説明する。この統計値は、例(2)と同様にして特定された正常領域における層領域の厚みから統計的に得られる値である。この層領域は例(2)と同様に任意である。この統計値の例としては、平均値、最大値、最小値、分散、標準偏差、中央値などがある。また、この統計値は1つの値である必要はなく、2つ以上の値を含んでいてもよい。たとえば上に例示した統計値のうちの2つ以上を含んでいてもよいし、値が大きいもの(及び/又は小さいもの)から順に所定個数を含んでいてもよい。主制御部211は、評価情報生成部235により算出された統計値を表示部240Aに表示させる。
【0100】
(評価情報の第3の例)
評価情報の第3の例は、分布情報に含まれる複数の方向を2以上の群に分割し、各群について生成されるものである。複数の方向の分割態様は事前に設定される。この分割態様は、デフォルトとして設けられたものでもよいし、ユーザが任意に設定したものでもよい。また、ユーザにより選択可能ないくつかの分割態様が事前に設けられていてもよい。この実施形態では、
図12に示すように、走査領域Rを4つの象限に分割する。なお、走査領域Rの分割態様(つまり複数の方向の分割態様)は、これには限定されず、分割数や分割対象の領域(方向)は任意である。
【0101】
この評価情報の例としては次のものがある:
(1)2以上の群のそれぞれに関する、異常領域と中心窩との間の距離の統計値;
(2)2以上の群のそれぞれに関する、異常領域と中心窩との間に位置する正常領域のサイズを表すサイズ情報;
(3)2以上の群のそれぞれに関する、この正常領域における任意の層領域の厚みの統計値;
(4)2以上の群のそれぞれに関する、その群の画像領域に対する異常領域の割合を表す割合情報;
(5)2以上の群のそれぞれに関する、異常領域のサイズを表すサイズ情報;
(6)2以上の群のそれぞれに関する、異常領域における任意の層領域の厚みの統計値。
【0102】
例(1)の距離の統計値について説明する。各方向における異常領域と中心窩との距離は、前述のようにして算出される。評価情報生成部235は、各群について、これに含まれる方向における距離の統計値を演算する。この統計値の例としては、平均値、最大値、最小値、分散、標準偏差、中央値などがある。また、この統計値は1つの値である必要はなく、2つ以上の値を含んでいてもよい。主制御部211は、算出された統計値を表示部240Aに表示させる。
【0103】
図12に示す例では、4つの群i〜ivのそれぞれにおける距離の統計値が得られる。統計値が最大値や最小値の場合のように特定の方向を示す場合、この方向を提示するようにしてもよい。
図12に示す例では、たとえば中心窩Cから当該方向に延びる線分によって当該方向を示す。
【0104】
また、
図13のように分布情報の横軸を複数の群(ここでは4つの群206〜209)に分割することで、これら複数の群を提示することも可能である。この例では、たとえば横軸において当該方向に対応する位置から縦軸と平行に延びる線分によって、最大値や最小値を提示することができる。
【0105】
例(2)のサイズ情報について説明する。このサイズ情報は、複数の群のそれぞれについて「評価情報の第2の例」と同様にして算出される。主制御部211は、算出されたサイズ情報を表示部240Aに表示させる。
【0106】
例(3)の厚みの統計値について説明する。この統計値は、複数の群のそれぞれについて「評価情報の第2の例」と同様にして算出される。主制御部211は、算出された統計値を表示部240Aに表示させる。
【0107】
例(4)の割合情報は、各群の画像領域における異常領域の割合を表す。この割合情報は、たとえば、各群において異常領域と判定された画像領域の面積を、その群の画像領域の面積で除算することにより算出される。たとえば
図12に示す例の象限(群)iiiについては、象限iii中の斜線領域の面積を象限iiiの面積で除算する演算が行われる。
【0108】
この割合情報の他の例として、各群において異常領域が存在する方向の個数を、その群に含まれる全ての方向の個数で除算するようにしてもよい。なお、この商の分子は、中心窩と異常領域との間の距離が所定の閾値以下となるような方向に限定されていてもよい。
【0109】
主制御部211は、以上のようにして算出されたいずれかの割合情報を表示部240Aに表示させる。
【0110】
例(5)のサイズ情報は異常領域のサイズを表す。このサイズ情報の算出処理は、例(2)の正常領域のサイズ情報の場合と同様にして実行できる。主制御部211は、算出された異常領域のサイズ情報を表示部240Aに表示させる。
【0111】
例(6)の統計値は、各群について、異常領域における任意の層領域の厚みを統計的に処理することにより得られる。この統計値の例としては、平均値、最大値、最小値、分散、標準偏差、中央値などがある。また、この統計値は1つの値である必要はなく、2つ以上の値を含んでいてもよい。主制御部211は、算出された統計値を表示部240Aに表示させる。
【0112】
以上のように機能する画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
【0113】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼底観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルモニタなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0114】
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルディスプレイとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0115】
〔信号光の走査及びOCT画像について〕
ここで、信号光LSの走査及びOCT画像について説明しておく。
【0116】
眼底観察装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
【0117】
水平スキャンは、信号光LSを水平方向(x方向)に走査させるものである。水平スキャンには、垂直方向(y方向)に配列された複数の水平方向に延びる走査線に沿って信号光LSを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元画像を形成することができる(3次元スキャン)。垂直スキャンについても同様である。
【0118】
十字スキャンは、互いに直交する2本の直線状の軌跡(直線軌跡)からなる十字型の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。放射スキャンは、所定の角度を介して配列された複数の直線軌跡からなる放射状の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。なお、十字スキャンは放射スキャンの一例である。
【0119】
円スキャンは、円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。同心円スキャンは、所定の中心位置の周りに同心円状に配列された複数の円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。円スキャンは同心円スキャンの一例である。螺旋スキャンは、回転半径を次第に小さく(又は大きく)させながら螺旋状(渦巻状)の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。
【0120】
ガルバノスキャナ42は、互いに直交する方向に信号光LSを走査するように構成されているので、信号光LSをx方向及びy方向にそれぞれ独立に走査できる。更に、ガルバノスキャナ42に含まれる2つのガルバノミラーの向きを同時に制御することで、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
【0121】
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面における断層像を取得することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元画像を取得することができる。
【0122】
上記のような信号光LSの走査対象となる眼底Ef上の領域、つまりOCT計測の対象となる眼底Ef上の領域を走査領域と呼ぶ。3次元スキャンにおける走査領域は、複数の水平スキャンが配列された矩形の領域である。また、同心円スキャンにおける走査領域は、最大径の円スキャンの軌跡により囲まれる円盤状の領域である。また、放射スキャンにおける走査領域は、各スキャンラインの両端位置を結んだ円盤状(或いは多角形状)の領域である。
【0123】
[動作]
眼底観察装置1の動作について説明する。
図14は、眼底観察装置1の動作の一例を表す。アライメントやピント合わせは完了しており、黄斑部用の固視標が被検眼Eに提示されているものとする。なお、各処理の詳細は前述したので、以下では処理の流れを簡単に説明する。
【0124】
(S1:中心窩近傍の複数の断層像を取得する)
まず、主制御部211は、光源ユニット101、ガルバノスキャナ42等を制御して、眼底Efの中心窩の近傍を信号光LSで走査する。この走査は、たとえば中心窩を中心とする放射スキャンである。画像形成部220は、この走査態様に対応する複数の断層像を形成する。
【0125】
(S2:異常領域を特定する)
次に、画像処理部230は、ステップ1で得られた複数の断層像に基づいて異常領域を特定する。この処理は、層領域特定部231による所定の層領域の特定処理、層厚情報生成部232による層厚情報の生成処理、及び異常領域特定部233による異常領域の特定処理を含む。
【0126】
(S3:分布情報を生成する)
続いて、分布情報生成部234は、ステップ2で特定された異常領域に基づいて分布情報を生成する。この処理は、各断層像における中心窩と異常領域との間の距離を算出する処理と、各断面の方向と当該距離とを対応付ける処理とを含む。それにより、
図5に示すような分布情報が得られる。
【0127】
(S4:評価情報を生成する)
次に、評価情報生成部235は、ステップ3で生成された分布情報に基づいて評価情報を生成する。ここで生成される評価情報は、前述した例のうちの少なくとも1つである。生成される評価情報の種別をあらかじめ指定するように構成できる。
【0128】
(S5:評価情報を表示する)
主制御部211は、ステップ4で生成された評価情報を表示部240Aに表示させる。この表示態様については前述した。また、ステップ4において複数種別の評価情報を生成しておき、操作部240Bを用いて指定された種別の評価情報を選択的に表示させるように構成することができる。
【0129】
[効果]
眼底観察装置1の効果について説明する。
【0130】
眼底観察装置1は、光学系と、画像形成部220と、層領域特定部231と、層厚情報生成部232と、異常領域特定部233と、分布情報生成部234と、評価情報生成部235とを有する。光学系は、光源ユニット101からの光を信号光LSと参照光LRとに分割し、眼底Efを経由した信号光LSと参照光路を経由した参照光LRとを重畳して干渉光LCを生成し、干渉光LCを検出する。画像形成部220は、干渉光LSの検出結果に基づいて、眼底Efの断層像を形成する。層領域特定部231、層厚情報生成部232、及び異常領域特定部233は、この断層像を解析することで、眼底Efの中心窩の近傍に位置する異常領域を特定する。分布情報生成部234は、中心窩と異常領域との間の距離を算出し、中心窩に対する異常領域の方向と距離とを対応付けた対応情報を生成する。評価情報生成部235は、この対応情報に基づいて、眼底Efの状態を評価するための評価情報を生成する。
【0131】
ここで、画像形成部220は、たとえば、干渉光LCの検出結果に基づいて、眼底Efの中心窩の近傍に位置する複数の断面における複数の断層像を形成する。また、分布情報生成部234は、たとえば、これら断層像のそれぞれについて、その断面における中心窩と異常領域との間の距離を算出し、これら断面に対応する複数の方向における距離の分布を表す分布情報を対応情報として生成する。評価情報生成部235は、この分布情報に基づいて評価情報の生成を行う。
【0132】
このような眼底観察装置1によれば、中心窩の近傍における異常領域の分布状態に基づき評価情報を取得することができる。このような検査を視野検査の代わりに行うことで、検査時間の短縮を図りつつ、中心管理のための客観的なデータを提供することが可能となる。
【0133】
〈第2の実施形態〉
この実施形態に係る眼底観察装置は、第1の実施形態と異なる評価情報を提供する。第1の実施形態では、中心窩と異常領域との距離に基づき評価を行なっているが、この実施形態では、中心窩から所定距離だけ離れた部位における異常領域の分布に基づき評価を行う。
【0134】
この実施形態の眼底観察装置は、第1の実施形態と同様の光学系を有する(
図1及び
図2を参照)。一方、この実施形態の眼底観察装置は、第1の実施形態と異なる画像処理部を有する。この実施形態の構成例を
図15に示す。第1の実施形態と同様の処理を実行する構成部位には同じ符号が付されている。また、
図15で記載が省略された制御系の構成部位は、第1の実施形態と同様である(
図3を参照)。このような構成(画像処理部230)を有する演算制御ユニット200は「眼底画像解析装置」の一例に相当する。
【0135】
画像処理部230には、層領域特定部231と、層厚情報生成部232と、異常領域特定部233と、評価情報生成部236とが設けられている。層領域特定部231、層厚情報生成部232、及び異常領域特定部233は、それぞれ第1の実施形態と同様の処理を実行する。一方、詳細は後述するが、評価情報生成部236は、第1の実施形態の評価情報生成部235と異なる処理を実行する。なお、双方の評価情報生成部235及び236を具備するように構成することも可能である。
【0136】
この実施形態の眼底観察装置の動作について説明する。この実施形態では、眼底Efの中心窩の近傍に位置する断面を信号光LSで走査する。この断面としては、眼底Efの中心窩を(ほぼ)中心とする所定の円周(対象円)に沿う断面か、若しくはこの対象円と複数点で交差する断面が用いられる。対象円に沿う断面を走査する場合には、たとえば円スキャンが用いられる。また、対象円と複数点で交差する断面を走査する場合には、たとえば放射スキャンや3次元スキャンが用いられる。
【0137】
図16に示す円301は対象円の例である。対象円は、あらかじめ設定された径を有する(たとえば直径3mm)。対象円の中心と中心窩との位置合わせは、第1の実施形態と同様に、黄斑部用の固視標を用いたり、眼底像とOCT画像との位置合わせ処理を用いたりすることにより実現される。また、中心窩が黄斑部の中心位置であること、つまり黄斑部に相当する凹みの最深部であることを利用して、OCT画像自体から中心窩の位置を特定することもできる。
【0138】
画像形成部220は、上記のような走査で得られた干渉光LCの検出結果に基づいて、この走査がなされた断面を表す断層像を形成する。このとき、断面と対象円とに共通な部分(つまり上記の交差する複数点)のみを画像化するようにしてもよい。
【0139】
層領域特定部231は、画像形成部220により形成された断層像を解析して、対象円に沿う断面における所定の層領域を特定する。層厚情報生成部232は、特定された層領域を解析して、その層領域の厚みに関連する層厚情報を生成する。異常領域特定部233は、層厚情報に基づいて異常領域を特定する。層領域特定部231、層厚情報生成部232、及び異常領域特定部233は、「特定部」の一例として機能する。なお、特定部は、異常領域を特定する処理に加えて、又は当該処理に代えて、正常領域を特定するようにしてもよい。
【0140】
なお、以上において、対象円上のデータのみを処理するように構成してもよいし、それ以外のデータも含めて処理するように構成してもよい。この実施形態では、対象円上の複数の点における異常/正常の判別結果を評価情報生成部236に提供可能な形態であれば十分である。
【0141】
評価情報生成部236について説明する。評価情報生成部236は、次に示す情報のうちの少なくとも1つを含む評価情報を生成する:
(1)異常領域の長さ;
(2)正常領域の長さ;
(3)対象円の長さに対する異常領域の長さの割合;
(4)対象円の長さに対する正常領域の長さの割合;
(5)異常領域の長さと正常領域の長さとの差;
(6)異常領域の長さと正常領域の長さとの比;
【0142】
情報(1)について説明する。異常領域の長さは、対象円上の上記複数の点のうち、異常領域であるとされた点の分布に基づいて算出できる。つまり、対象円の円周の長さはあらかじめ決まっているので、この長さに基づいて、又はこの長さに基づく単位長さに基づいて、異常領域の長さを算出することができる。異常領域が複数存在する場合には、これら異常領域の長さの和を算出結果とする。
【0143】
情報(2)について説明する。正常領域の長さは、異常領域と同様にして算出できる。なお、この実施形態では異常領域を特定しているので、対象円上において異常領域ではないと判定された部分が正常領域に相当する。逆に正常領域を特定するように構成する場合には、対象円上において正常領域ではないと判定された部分が異常領域に相当することとなる。
【0144】
情報(3)について説明する。対象円の長さに対する異常領域の長さの割合は、上記情報(1)と同様にして算出された異常領域の長さを、あらかじめ決められた対象円の長さで除算することにより得られる。
【0145】
情報(4)について説明する。対象円の長さに対する正常領域の長さの割合は、上記情報(2)と同様にして算出された正常領域の長さを、あらかじめ決められた対象円の長さで除算することにより得られる。
【0146】
情報(5)について説明する。異常領域の長さと正常領域の長さとの差は、上記情報(1)と同様にして算出された異常領域の長さと、上記情報(2)と同様にして算出された正常領域の長さとの差を求めることにより得られる。ここで、異常領域及び正常領域のうちあらかじめ決められた一方から他方を減算するようにしてもよいし、任意の順序の差の絶対値を求めるようにしてもよい。前者の場合、他方の画像領域の長さに対する一方の画像領域の長さの差が得られ、その値は負値にもなり得る。後者の場合には負値にはならない。
【0147】
情報(6)について説明する。異常領域の長さと正常領域の長さとの比は、上記情報(1)と同様にして算出された異常領域の長さと、上記情報(2)と同様にして算出された正常領域の長さとの比を求めることにより得られる。ここで、異常領域及び正常領域のうちあらかじめ決められた一方に対する他方の比が算出される。つまり、異常領域の長さに対する正常領域の長さの比を算出するか、若しくは正常領域の長さに対する異常領域の長さの比を算出する。
【0148】
主制御部211は、上記のようにして算出された評価情報を表示部240Aに表示させる。また、
図17に示すように、対象円301と異常領域Aとの共通領域を表す情報、つまり対象円301上における異常領域の分布を表す情報302を、表示部240Aに表示させることも可能である。
【0149】
この実施形態の眼底観察装置の効果について説明する。この眼底観察装置は、光学系と、画像形成部220と、特定部と、評価情報生成部236とを有する。光学系は、光源ユニット101からの光を信号光LSと参照光LRとに分割し、被検眼Eの眼底Efを経由した信号光LSと参照光路を経由した参照光LRとを重畳して干渉光LCを生成し、この干渉光LCを検出する。画像形成部220は、干渉光LCの検出結果に基づいて、眼底Efの中心窩Cを中心とする円周(対象円301)に沿う断面の断層像を形成する。特定部は、この断層像を解析することで、円周に沿う断面における異常領域及び/又は正常領域を特定する。評価情報生成部236は、異常領域及び/又は正常領域の長さ、円周の長さに対する異常領域及び/又は正常領域の長さの割合、並びに、異常領域の長さと正常領域の長さとの差又は比のうちの少なくとも1つを含む、眼底Efの状態を評価するための評価情報を生成する。
【0150】
ここで、特定部は、断層像を解析して円周に沿う断面における所定の層領域を特定する層領域特定部231と、この層領域を解析してその厚みに関連する層厚情報を生成する層厚情報生成部232とを含み、この層厚情報に基づいて異常領域及び/又は正常領域を特定する。
【0151】
このような眼底観察装置によれば、中心窩の近傍における異常領域の分布状態に基づき評価情報を取得することができる。このような検査を視野検査の代わりに行うことで、検査時間の短縮を図りつつ、中心管理のための客観的なデータを提供することが可能となる。
【0152】
〈眼底画像解析装置〉
眼底画像解析装置の実施形態について説明する。眼底画像解析装置は、たとえば上記実施形態の演算制御ユニット200のように眼底観察装置の一部として実現可能である。また、OCT計測や眼底撮影の機能を持たない眼底画像解析装置を適用することも可能である。
【0153】
眼底画像解析装置の第1の構成例は、受付部と、特定部と、対応情報生成部と、評価情報生成部とを有する。受付部は、被検眼の眼底の断層像の入力を受け付ける。受付部は、外部からのデータを眼底画像解析装置に入力するためのものである。受付部の例として、通信インターフェイスやドライブ装置がある。特定部は、第1の実施形態と同様の機能を有し、断層像を解析することで、眼底の中心窩の近傍に位置する異常領域を特定する。対応情報生成部は、たとえば第1の実施形態と同様の機能を有し、中心窩と異常領域との間の距離を算出し、中心窩に対する異常領域の方向と距離とを対応付けた対応情報を生成する。評価情報生成部は、第1の実施形態と同様の機能を有し、対応情報に基づいて眼底の状態を評価するための評価情報を生成する。
【0154】
眼底画像解析装置の第2の構成例は、受付部と、特定部と、評価情報生成部とを有する。受付部は、被検眼の眼底の中心窩を中心とする円周に沿う断面の断層像を受け付ける。受付部は、たとえば第1の構成例と同様のデバイスである。特定部は、第2の実施形態と同様に、断層像を解析することで、円周に沿う断面における異常領域及び/又は正常領域を特定する。評価情報生成部は、第2の実施形態と同様に、異常領域及び/又は正常領域の長さ、円周の長さに対する異常領域及び/又は正常領域の長さの割合、並びに、異常領域の長さと正常領域の長さとの差又は比のうちの少なくとも1つを含む、眼底の状態を評価するための評価情報を生成する。
【0155】
このような眼底画像解析装置によれば、中心窩の近傍における異常領域の分布状態に基づき評価情報を取得することができる。このような解析処理を視野検査の代わりに行うことで、検査時間の短縮を図りつつ、中心管理のための客観的なデータを提供することが可能となる。
【0156】
[変形例]
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0157】
上記の実施形態においては、光路長変更部41の位置を変更することにより、信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、この光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、参照光の光路に反射ミラー(参照ミラー)を配置し、この参照ミラーを参照光の進行方向に移動させて参照光の光路長を変更することによって、当該光路長差を変更することが可能である。また、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100を移動させて信号光LSの光路長を変更することにより当該光路長差を変更するようにしてもよい。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも可能である。
【0158】
上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
【0159】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。