(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中蓋は中央部に締結部を有し、前記外蓋は中央部に締結具を挿通可能な開口部を有し、前記外蓋の外側から前記開口部に前記締結具の一部を挿通し、前記締結具を前記締結部に係合させることによって前記外蓋を前記中蓋に固定する、ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物収納容器。
前記コンクリート被覆層及び前記外蓋は、無筋コンクリートにより構成されているとともに、金属製の繊維材、粒状体又は粉状体が混練されている、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の放射性廃棄物収納容器。
【背景技術】
【0002】
現在、放射性廃棄物の収納容器としては、フレキシブルコンテナバッグ、コンクリート製容器、ドラム缶等が使用されている。フレキシブルコンテナバッグは、いわゆる土嚢に代表されるように、軽量で可搬性に優れ、取り扱い易いものの、ポリエチレンやポリプロピレン等の化学繊維で形成された織布により構成されており、放射能を遮蔽することができない。したがって、フレキシブルコンテナバッグに放射性廃棄物を収納した場合には、地上に放置しておくことは好ましくなく、仮置場や中間処分場において地中に埋めておく必要がある。
【0003】
コンクリート製容器は、放射能の遮蔽性に優れるものの大型化・重量化し易く、可搬性に劣る。例えば、特許文献1に記載された放射性廃棄物収納容器は、放射能汚染物質を一時的もしくは短〜中期的に保管するための収納空間の容積が1m
3以上の鉄筋コンクリート製角型保管容器であって、底部と側壁部とを一体成形してなる上面開口で鉄筋コンクリート製の容器本体と該開口に蓋をするための鉄筋コンクリート製蓋体と前記蓋体を前記容器本体に固定するための複数の連結プレートを備え、前記容器本体における底部と側壁部及び蓋体の各最小厚が13〜18cmであることを特徴とする。
【0004】
ドラム缶は、一般に200リットル以上の容積を有する金属製の缶であり、上述したコンクリート製容器よりも小型で軽量であるものの放射能の遮蔽性に劣る。そこで、特許文献2に記載されたように、ドラム缶の内側にコンクリート層を形成して放射能の遮蔽性を向上させたものが既に提案されている。特許文献2に記載された放射性廃棄物収納容器は、補強筋入りの重質コンクリート製板材の上面に電磁石吸着用の鋼板と複数のフックボルト係止用ナットとを補強筋に連結させて取り付けた内蓋を重質コンクリート製の内張層を有するドラム缶の開口部に嵌装したことを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたコンクリート製容器では、収納容積を大きく確保できるものの大型化・重量化してしまうことから、ホットスポットが生じている住宅地等に近接した箇所への搬送が困難になってしまう。また、コンクリート製蓋体も重量物であるから蓋体の開閉を手軽に行うことができず、容器が満杯になるまで蓋体を取り外した状態で放置しておかなければならず、収納した放射性廃棄物からの放射能を効果的に遮蔽することができない。さらに、容器を開放した状態で放置すると容器内に雨水が浸入し易く、放射性製廃棄物の収容量が制限されたり、雨水が溢れ出して放射性物質が拡散したりしてしまうことにもなる。
【0007】
また、特許文献2に記載されたコンクリートを内張したドラム缶では、内蓋と外蓋とを有しており、二重蓋構造を有しているものの、内蓋がコンクリート製であることから重量物となってしまい、クレーンで移動させることを前提とした構造となっており(例えば、内蓋には電磁石吸着用鋼板やフックボルト係止用ナットが配置されている)、手軽にドラム缶の開閉を行うことができない。したがって、上述したコンクリート製容器と同様の問題を生じる。さらに、一般的なドラム缶は200リットル程度の容量であり、コンクリート製容器と比較して収納容積が少ないうえに、その内側にコンクリートを内張していることから、さらに収納容積が低下してしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、小型で可搬性に優れるとともに放射能の遮蔽性に優れた放射性廃棄物収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、放射性廃棄物を収納可能かつ放射能を遮蔽可能な放射性廃棄物収納容器であって、前記放射性廃棄物の収納部を形成するドラム缶と、該ドラム缶の側周部及び底面部の外面を覆うコンクリート被覆層と、前記ドラム缶の上部を覆う中蓋と、該中蓋を前記ドラム缶に固定する固定手段と、該中蓋を覆うとともに前記コンクリート被覆層の上部に配置されるコンクリート製の外蓋と、を
有し、前記中蓋は、前記ドラム缶の外縁部に係止可能なフック部と前記ドラム缶の開口部を覆う円板部とを有する金属製の中蓋本体部と、前記フック部及び前記円板部により形成される窪みに形成されたコンクリート層と、を有することを特徴とする放射性廃棄物収納容器が提供される。
【0011】
また、前記中蓋は中央部に締結部を有し、前記外蓋は中央部に締結具を挿通可能な開口部を有し、前記外蓋の外側から前記開口部に前記締結具の一部を挿通し、前記締結具を前記締結部に係合させることによって前記外蓋を前記中蓋に固定するようにしてもよい。さらに、前記コンクリート被覆層は、底面部中央に前記締結具の頭部を収容可能な凹部を有し、前記放射性廃棄物収納容器を積載可能に構成されていてもよい。
【0012】
また、前記コンクリート被覆層及び前記外蓋は、無筋コンクリートにより構成されているとともに、金属製の繊維材、粒状体又は粉状体が混練されていてもよい。また、前記コンクリート被覆層は、側周部に配置された複数のインサートを有し、該インサートに吊り下げ用金具が締結可能に構成されていてもよい。また、前記ドラム缶の内側に、放射能を遮蔽可能な金属層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係る放射性廃棄物収納容器によれば、ドラム缶の外側をコンクリート被覆層で覆うとともに軽量な中蓋を配置したことにより、ドラム缶の収納容積を低下させることなく放射能を遮蔽することができるとともに、手軽に容器を開閉することができる。したがって、放射性廃棄物収納容器が満杯になるまで現地に一時的に置いておく場合であっても、容器を使用しないときには中蓋を閉めておくことができ、放射能の漏洩や雨水の浸入を抑制することができ、収容量の低減、放射性物質の拡散、近隣住民や作業者の被曝等を抑制することができる。
【0014】
また、一般的に市販されているドラム缶をベースにしていることから、放射性廃棄物収納容器の小型化及び軽量化を図ることができ、例えば、車両積載型トラッククレーン(ユニック車、キャブバッククレーン車等)により搬送することができ、ホットスポットが生じている住宅地等に近接した箇所まで放射性廃棄物収納容器を容易に搬送することができる。したがって、本発明によれば、小型で可搬性に優れるとともに放射能の遮蔽性に優れた放射性廃棄物収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放射性廃棄物収納容器の実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の実施形態に係る放射性廃棄物収納容器を示す断面図である。
図2は、
図1に示した中蓋の説明図であり、(A)は上面図、(B)は変形例の部分断面図、(C)は中蓋の固定手段を示す上面図、を示している。
図3は、
図1に示したコンクリート被覆層及び外蓋の説明図であり、(A)は
図1におけるX−X断面図、(B)は外蓋の下面図、を示している。
【0017】
本発明の実施形態に係る放射性廃棄物収納容器1は、
図1〜
図3に示したように、放射性廃棄物を収納可能かつ放射能を遮蔽可能な放射性廃棄物収納容器であって、放射性廃棄物の収納部を形成するドラム缶2と、ドラム缶2の側周部及び底面部の外面を覆うコンクリート被覆層3と、ドラム缶2の上部を覆う中蓋4と、中蓋4をドラム缶2に固定する固定手段5と、中蓋4を覆うとともにコンクリート被覆層3の上部に配置されるコンクリート製の外蓋6と、を有する。
【0018】
前記ドラム缶2は、ホットスポット等の放射性物質が蓄積した土砂や汚染水、放射性物質が付着した雨樋、瓦礫、廃材等を含む放射性廃棄物を収容する容器である。ドラム缶2は、一般に200リットル以上の容積を有する金属性の缶を意味し、JIS規格により大きさや寸法が規定されている。最も一般的なドラム缶2は、容量200リットル、直径約600mm、高さ約900mmである。また、ドラム缶には、蓋が開閉可能なオープンドラムと蓋が密閉されたタイトヘッドドラムとの二種類が存在しているが、本実施形態ではオープンドラムが使用される。
【0019】
前記コンクリート被覆層3は、ドラム缶2の外周面を覆い、放射能を遮蔽する機能を有する。コンクリート被覆層3は、ドラム缶2の底部及び側周部を覆うように形成されるとともに、ドラム缶2の上部(例えば、50mm程度)は露出するように形成される。このドラム缶2の露出部は、中蓋4の係止部として使用される。コンクリート被覆層3は、例えば、50〜150mm程度の厚さを有する。
【0020】
かかるコンクリート被覆層3を形成する際には、ドラム缶2を上下反転させた状態で、通常のコンクリート製品と同様に、型枠を組み、コンクリートを打設(打ち込み)し、締固めを行い、その後、仕上げ、養生を行う。また、ドラム缶2の底部に型枠保持用のインサート31を溶接し、ドラム缶2の底部を覆う型枠をインサート31にボルト等の締結具を使用して固定することにより、コンクリート打設時における型枠の浮き上がりを抑制するようにしてもよい。かかる処理により、平らな底部を有するコンクリート被覆層3を形成することができる。また、締固め時には、型枠の外側から振動を与えて、コンクリートを流動化させ、コンクリートを隅々まで行き渡らせるとともに、コンクリートの内部に含まれる気泡や余分な水分を抜くようにしてもよい。
【0021】
また、コンクリート被覆層3は、底面部中央に凹部32が形成されている。凹部32は、放射性廃棄物収納容器1を縦置きした状態で積載する際に、外蓋6を中蓋4に固定する締結具7を収容可能な大きさに形成される。
【0022】
また、コンクリート被覆層3は、側周部に配置された複数のインサート33を有していてもよい。インサート33は、例えば、
図3(B)に示したように、中心角120度の間隔で三箇所に配置される。ただし、インサート33の配置は図示したものに限定されず、二箇所に配置されていてもよいし、四箇所以上の箇所に配置されていてもよいし、均等な間隔で配置されていてもよいし、任意の間隔で配置されていてもよい。このインサート33には、例えば、放射性廃棄物収納容器1の搬送時に使用する吊り下げ用金具等が締結される。また、インサート33の外周に略U時形状の鉄筋を掛け渡して、添筋34を配置するようにしてもよい。かかる添筋34を配置することにより、強度を部分的に向上させることができる。
【0023】
また、コンクリート被覆層3は、いわゆる無筋コンクリートにより構成されているとともに、金属製の繊維材、粒状体又は粉状体が混練されていてもよい。コンクリート被覆層3の内側にはドラム缶2が配置されていることから、コンクリート被覆層3は無筋コンクリートにより構成することができるが、例えば、コンクリート被覆層3が厚くなったような場合には、適宜鉄筋を挿入するようにしてもよい。
【0024】
また、例えば、繊維材としては鋼繊維が使用され、粒状体としては鉄球や鉛粒が使用され、粉状体としては鉄粉や鉛粉が使用される。これらの添加材(繊維材、粒状体又は粉状体)は、比重の大きい金属であれば、鉄や鉛に限定されるものではない。かかる添加材をコンクリートに付加することにより、放射能の遮蔽性をさらに向上させることができる。これらの添加材は、分量が多い方が好ましいが、コンクリートとの親和性を考慮して、例えば、コンクリートに対する体積比率が0.5〜5%、好ましくは0.5〜3%程度となるように調整される。
【0025】
また、コンクリート被覆層3の上部内縁部には、ドラム缶2とコンクリート被覆層3との隙間への水の浸入を抑制するためのシール材35が配置されていてもよい。シール材35を配置することにより、ドラム缶2やコンクリート被覆層3の腐食を抑制することができる。
【0026】
前記中蓋4は、ドラム缶2の開口部を封止するための蓋体である。具体的には、中蓋4は、
図1及び
図2(A)に示したように、ドラム缶2の外縁部に係止可能なフック部41aとドラム缶2の開口部を覆う円板部41bとを有する金属製の中蓋本体部41と、フック部41a及び円板部41bにより形成される窪みに形成されたコンクリート層42と、を有する。フック部41aの内側(ドラム缶2の上端部と接触する部分)には、シール材としてゴムパッキンを配置するようにしてもよい。
【0027】
このように、オープンドラムに使用される中蓋本体部41にコンクリート層42を形成したことにより、中蓋4の放射能の遮蔽性を向上させることができる。このコンクリート層42は、直径600mm以下、厚さ10〜20mm程度であることから、中蓋4の重量は20〜30kg程度となり、成人男性が数人いれば人力で容易に持ち上げることが可能である。したがって、中蓋4の開閉を容易に行うことができ、放射性廃棄物収納容器1に放射性廃棄物を入れるとき以外は、ドラム缶2の開口部を中蓋4で封止しておくことができる。
【0028】
また、中蓋4は、表面側のコンクリート層42の中央部に配置された締結部43を有する。締結部43は、例えば、ボルト等の締結具7を締結可能なナット形状を有しており、円板部41bに溶接されて中蓋本体部41に固定される。この締結部43には、後述するように、外蓋6を固定するための締結具7が締結される。
【0029】
また、
図2(B)に示したように、コンクリート層42の中間部に網筋44(網目状の鉄筋)を配置するようにしてもよい。網筋44をコンクリート層42に挿入することにより、中蓋4の強度を向上させることができ、コンクリート層42を形成した場合における中蓋本体部41の変形や破損を抑制することができる。
【0030】
前記固定手段5は、中蓋4の外縁部に沿って配置され、中蓋4のフック部41aを締め付けることによって中蓋4をドラム缶2の開口部に固定する部品である。固定手段5は、例えば、
図1及び
図2(C)に示したように、中蓋4の外縁部に沿って配置可能なバンド部51と、バンド部51を環状に形成して縮径した状態を保持するロック機構52と、を有している。
図2(C)において、ロック機構52を解除した状態を一点鎖線で図示し、ロック機構52を作用させた状態を実線で図示している。
【0031】
ロック機構52は、例えば、バンド部51の側面部に回動可能に配置されたレバー部材52aと、レバー部材52aの回動部とバンド部51の自由端とを接続する連結部材(図示せず)と、を有し、連結部材を接続した状態でレバー部材52aを外側から内側に回動させることによって、バンド部51の自由端を引き寄せて縮径させ、中蓋4を締め付けるように構成される。なお、かかる固定手段5は、単なる一例であって、中蓋4をドラム缶2に固定することができる機構であれば、他の構成であってもよい。
【0032】
外蓋6は、コンクリート被覆層3の上部を覆う蓋体である。具体的には、外蓋6は、
図1及び
図3(B)に示したように、コンクリート被覆層3と略同一の直径を有するコンクリート製の略円盤形状部材であって、その内側には、ドラム缶2の露出部、中蓋4及び固定手段5を収容可能な空間を構成する凹部61が形成されている。凹部61は、中蓋4の外形に沿った第一円弧部61aと、固定手段5との干渉を避けるために部分的に拡径された第二円弧部61bと、を有する。第二円弧部61bは、固定手段5の幅よりも大きく形成されており、外蓋6の位置決めを簡単にできるように構成されている。
【0033】
また、外蓋6は、中央部に締結具7(
図1参照)を挿通可能な開口部62を有している。
図1に示したように、ボルト等の締結具7のネジ部が開口部62の外側から挿通され、中蓋4の締結部43(ナット)に螺合される。すなわち、中蓋4は中央部に締結部43を有し、外蓋6は中央部に締結具7を挿通可能な開口部62を有し、外蓋6の外側から開口部62に締結具7の一部を挿通し、締結具7を締結部43に係合させることによって外蓋6を中蓋4に固定するように構成されている。
【0034】
このように、外蓋6の固定部を中央部に配置することにより、外蓋6の位置決めを正確に行う必要がなく、外蓋6の封止作業を容易に行うことができる。それに対し、外蓋6の固定部を中央部以外の場所(例えば、外周部)に配置した場合には、コンクリート被覆層3等に配置された締結部と位相を正確に一致させる必要があり、外蓋6の封止作業が面倒になってしまう。
【0035】
また、外蓋6は、コンクリート被覆層3と同様に、無筋コンクリートにより構成されているとともに、金属製の繊維材、粒状体又は粉状体が混練されていてもよい。かかる構成により、外蓋6の放射能の遮蔽性を向上させることができる。
【0036】
ここで、
図4は、放射性廃棄物収納容器の封止手順を示す図であり、(A)は開放状態、(B)は中蓋固定状態、(C)は外蓋載置状態、(D)は外蓋固定状態、を示している。なお、各図において、インサート31,33、シール材35等の図を省略してある。
【0037】
上述した本実施形態に係る放射性廃棄物収納容器1は、一般的に市販されているドラム缶2をベースにしていることから、放射性廃棄物収納容器1の小型化及び軽量化を図ることができ、例えば、車両積載型トラッククレーン(ユニック車、キャブバッククレーン車等)により搬送することができ、ホットスポットが生じている住宅地等に近接した箇所まで放射性廃棄物収納容器1を容易に搬送することができる。そして、放射性廃棄物収納容器1は、ホットスポットに近接した箇所に配置され、外蓋6及び中蓋4が取り外され、放射性廃棄物が収納される。
【0038】
図4(A)に示したように、放射性廃棄物収納容器1に放射性廃棄物Wを収納するときは、外蓋6及び中蓋4を取り外しておき、ドラム缶2が開放した状態にしておく。なお、外蓋6の取り外しには、外蓋6が30〜40kg程度の重量を有することから、車両積載型トラッククレーンに搭載されたクレーンを使用するようにしてもよいし、人力(例えば、二〜三人程度)で行うようにしてもよい。中蓋4の取り外しには、中蓋4は軽量であることから人力で行うようにしてもよいし、車両積載型トラッククレーンに搭載されたクレーンを使用してもよい。
【0039】
そして、放射性廃棄物収納容器1が満杯になるまでの間、雨が降っている間、放射性廃棄物Wをホットスポットから回収している間等のように、放射性廃棄物収納容器1を長時間放置することになったような場合には、
図4(B)に示したように、中蓋4をドラム缶2の上部に被せて開口部を封止する。このとき、固定手段5を使用してもよいし、一時的な封止であるため固定手段5の使用を省略するようにしてもよい。
【0040】
上述したように、本実施形態に係る放射性廃棄物収納容器1において、中蓋4はコンクリート層42を有していることから放射能を遮蔽する機能を有しており、かつ、軽量化されていることからクレーン等の重機を使用しなくても容易に持ち上げてドラム缶2上に配置することができる。したがって、ドラム缶2の開閉を容易に行うことができ、常時開放しておく必要がなく、放射能の漏洩や拡散、作業者や近隣住民の被曝等を抑制することができる。
【0041】
その後、ドラム缶2が満杯になった場合やホットスポットにおける放射性廃棄物Wを全部回収できた場合には、放射性廃棄物収納容器1を回収する必要がある。この場合、
図4(B)に示したように、中蓋4を固定手段5によりドラム缶2に固定して、ドラム缶2の開口部を気密に封止する。
【0042】
続いて、
図4(C)に示したように、外蓋6をコンクリート被覆層3上に配置する。外蓋6は、30〜40kg前後の重量を有することから、例えば、車両積載型トラッククレーンに搭載されたクレーンを使用して、コンクリート被覆層3上に移動される。最終的に、放射性廃棄物収納容器1は、車両積載型トラッククレーンに回収されて中間処分場等に搬送されることから、外蓋6の開閉に際し、専用の重機を用意しておく必要はない。
【0043】
次に、
図4(D)に示したように、外蓋6の開口部62に締結具7が座金等を介して挿通され、締結具7は中蓋4の締結部43に接続される。かかる処理により、外蓋6が中蓋4に固定される。中蓋4はドラム缶2に固定されていることから、結局、外蓋6は間接的にドラム缶2に固定され、コンクリート被覆層3の上部を封止することができる。外蓋6は、中蓋4のコンクリート層42よりも厚いコンクリートにより形成されていることから、放射能の遮蔽性に優れており、放射能の漏洩を効果的に抑制することができる。また、ドラム缶2の開口部は、中蓋4及び外蓋6の二重蓋構造により封止されていることから、放射能の漏洩を効果的に抑制することができる。
【0044】
上述した本発明に係る放射性廃棄物収納容器1によれば、ドラム缶2の外側をコンクリート被覆層3で覆うとともに軽量な中蓋4を配置したことにより、ドラム缶2の収納容積を低下させることなく放射能を遮蔽することができるとともに、手軽に容器を開閉することができる。したがって、放射性廃棄物収納容器1が満杯になるまで現地に一時的に置いておく場合であっても、容器を使用しないときには中蓋4を閉めておくことができ、放射能の漏洩や雨水の浸入を抑制することができ、収容量の低減、放射性物質の拡散、近隣住民や作業者の被曝等を抑制することができる。
【0045】
ここで、
図5は、
図1に示した放射性廃棄物収納容器の使用状態等を示す図であり(A)は吊り下げ状態、(B)は積載状態、(C)は金属層を内張した状態、を示している。なお、
図5(B)において、放射性廃棄物収納容器1の底部の一部を切り欠いた状態を図示している。
【0046】
例えば、放射性廃棄物収納容器1を車両積載型トラッククレーンから降ろしたり、車両積載型トラッククレーンに回収したりする場合には、
図5(A)に示したように、放射性廃棄物収納容器1は空の状態で500kg程度の重量を有することから、車両積載型トラッククレーンに搭載されたクレーンを使用することが好ましい。その際、放射性廃棄物収納容器1の周面に埋め込まれたインサート33に吊り下げ用金具81を取り付け、吊り下げ用金具81にワイヤ82を掛け回し、クレーンのフック83にワイヤ82を係止させて放射性廃棄物収納容器1を昇降させるようにすればよい。
【0047】
すなわち、上述した本実施形態に係る放射性廃棄物収納容器1では、
図1及び
図5(A)に示したように、コンクリート被覆層3が、側周部に配置された複数のインサート33を有し、インサート33に吊り下げ用金具81が締結可能に構成されている。
【0048】
また、中間処分場等において、放射性廃棄物収納容器1を積載する場合には、
図5(B)に示したように、縦置きされた放射性廃棄物収納容器1の上部に別の放射性廃棄物収納容器1が載置され積載される。すなわち、上述した本実施形態に係る放射性廃棄物収納容器1では、
図1及び
図5(B)に示したように、コンクリート被覆層3が、底面部中央に締結具7の頭部を収容可能な凹部32を有し、放射性廃棄物収納容器1を積載可能に構成されている。
【0049】
なお、外蓋6の表面に締結具7の頭部を収容可能な窪みを形成した場合には、外蓋6の表面から締結具7の頭部が突出しないことから、放射性廃棄物収納容器1がかかる構成を有する場合には、凹部32を省略することができ、凹部32を形成しなくても、容易に放射性廃棄物収納容器1を縦方向に積載することができる。
【0050】
また、放射性廃棄物収納容器1の放射能の遮蔽性を向上させる手段として、ドラム缶2の内側に、放射能を遮蔽可能な金属層9を形成するようにしてもよい。金属層9は、例えば、鉛板や鉛シート、鉄板や鉄シートを貼付することによって形成してもよいし、鉛や鉄を含む材料を塗装したり溶射したりして形成するようにしてもよい。
【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されず、要求される放射能の遮蔽性に応じてコンクリート被覆層3や外蓋6のコンクリートの厚さを適宜変更することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。