特許第5936257号(P5936257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936257
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   B60S3/06
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-61295(P2012-61295)
(22)【出願日】2012年3月17日
(65)【公開番号】特開2013-193530(P2013-193530A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 健
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−118363(JP,A)
【文献】 特開平10−006936(JP,A)
【文献】 特開2001−270427(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0086238(US,A1)
【文献】 特開2000−335381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車機本体と自動車とが相対移動し、移動に伴い洗車機本体内に備えた洗車ブラシを車体面に移動させて洗車を行う洗車機であって、前記洗車ブラシを自動車に接離するブラシ移動手段と、洗車ブラシを回転駆動するブラシモータと、該ブラシモータの電流値を検出する電流値検出手段と、ブラシモータの電流値が所定範囲内になるように前記ブラシ移動手段を制御する制御手段とを備えた洗車機において、
前記制御手段は、ブラシとの接触面積が少なく前記電流値検出手段での電流変化量が小さい自動車車体の部位に対してブラシの接近速度が低速になるようブラシ移動手段を制御することを特徴とする洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車ブラシで自動車車体をブラッシング洗浄する際に、車体との接触度合いをブラシモータの電流値により監視するようにした洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような洗車機では、洗車ブラシを回転駆動するブラシモータの電流値が設定された上限電流閾値と下限電流閾値との間に保持されるように、ブラシを車体に接離させる制御を行っている。すなわち、ブラシを車体に接触させたときのブラシモータの電流値が上限電流閾値を上回ると、車体への過接触を判断してブラシを車体から離間させ、下限電流閾値を下回ると、車体への接触不足を判断してブラシを車体に接近させるものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような制御を大型車やバス等を洗車する大型車洗車機で採用した場合、箱車の側面のようにブラシの接触面積が広い部位と、平ボディのあおり部のようにブラシの接触面積が狭い部位とを比べると、平ボディのあおり部のようにブラシの接触面積が狭い部位では、ブラシの回転抵抗が小さいため、ブラシモータの電流変化量が少なくなる。また、接触面積が狭い部位は、ブラシ重量を含めたブラシの接触圧が局部的に掛かるため、ブラシの接近を許容できる範囲、つまりブラシモータ電流値の上限電流閾値と下限電流閾値の範囲も狭くなる。このため、ブラシを車体に接近させる接近速度によっては、ブラシモータの電流値が上限電流閾値を上回った時点で、ブラシの接近を停止させたとしても制動距離が閾値の範囲を逸脱してブラシが車体に過接触状態になり、ブラシや車体を破損させてしまう危険が高かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−6936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、ブラシモータの電流値によりブラシの接離を制御する洗車機において、平ボディのあおり部のようにブラシとの接触面積が狭い車体部位を安全に洗浄することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため本発明は、洗車機本体と自動車とが相対移動し、移動に伴い洗車機本体内に備えた洗車ブラシを車体面に移動させて洗車を行う洗車機であって、前記洗車ブラシを自動車に接離するブラシ移動手段と、洗車ブラシを回転駆動するブラシモータと、該ブラシモータの電流値を検出する電流値検出手段と、ブラシモータの電流値が所定範囲内になるようにブラシ移動手段を制御する制御手段とを備えた洗車機において、制御手段は、ブラシとの接触面積が少なく前記電流値検出手段での電流変化量が小さい自動車車体の部位に対してブラシの接近速度が低速になるようブラシ移動手段を制御することを特徴とする洗車機を提案するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗浄する車体部位がブラシとの接触面積が少なく電流変化量が小さい場合、ブラシの接近速度が低速になるようにしたので、平ボディのあおり部のようにブラシとの接触面積が狭い車体部位に対してブラシを過接触させることなく作用させることができ、ブラシと車体の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の洗車機を示す正面図である。
図2】同装置の側面図である。
図3】側面洗浄ブラシ6・6の構造を示す説明図である。
図4】同装置の制御系を示すブロック図である。
図5】車体部位毎の電流変化量を示す説明図である。
図6】側面洗浄ブラシ6の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を基に、本発明の実施態様について説明する。図1は本発明の洗車機を示す正面図、図2は同側面図である。
1は本体フレームで、自動車車体を跨ぐように門型状に形成され、正転逆転可能な走行モータ4・4により、車輪2・2を回転駆動してレール3・3に沿って往復走行する。5は上面洗浄ブラシで、本体フレーム1の脚部に備えた昇降レール間に沿って昇降し、主に自動車の上面をブラッシングする。6・6は側面洗浄ブラシで、本体フレーム1の上部幅方向に備えた走行レールに沿って開閉し、主に自動車の前後面及び側面をブラッシングする。7は走行限界スイッチで、本体フレーム1の脚部下端に設けられ、前記レール3の前端及び後端付近に設置したドッグ3a・3bに接触して本体フレーム1の前進及び後進の限界位置を検出する。ここでは、走行限界スイッチ7がドッグ3aに接触すると走行後端位置が検出され、ドッグ3bに接触すると走行前端位置が検出されるものである。
【0010】
8a・8bは電装ボックスで、本体フレーム1の脚部前面に左右一対で取り付けられ、正面視右側に位置する電装ボックス8a・8bの前面に洗車受付を行う操作パネル9を設けている。10・11は光電スイッチで、それぞれ発光部と受光部とを対面配置するとともに、受光部を発光部よりも高い位置に配置することで傾斜した光軸を形成し、この傾斜光軸の透光/遮光によって車体の有無を検出するもので、電装ボックス8a・8bの対向する内面において奥行き方向に所定距離離れた位置に設置されている。
【0011】
このような構成の洗車機は、主にトラックやバス等の大型車の洗車に用いられる。本体フレーム1を待機位置に待機させた状態で、洗浄する自動車を光電スイッチ10・11で与える停止位置まで入車させ、操作パネル9で任意の洗車プログラムを選択した後にスタートすると、本体フレーム1が前進し、各散水ノズルから洗浄水を散布しながら各洗浄ブラシ5・6により車体のブラッシング洗浄が施されるのである。
【0012】
図3は側面洗浄ブラシ6・6の構造を示す説明図である。
側面洗浄ブラシ6・6は、ブラシ軸22の上端に直結したキャリア12L・12Rによって本体フレーム1内の後方上部に水平に横架された開閉レール13に沿って開閉するように構成され、ブラシモータ14・14により正逆転駆動される。キャリア12L・12Rは、それぞれ右端と左端を無端状に接続するチェーン15と、該チェーン15が懸回されるスプロケット16L・16Rと、一方のスプロケット16L・16Rを正逆転する開閉モータ17からなる開閉装置により独立して開閉される。
【0013】
図4は本発明の制御系を示すブロック図である。
20は洗車制御部で、本体フレーム1の本体走行モータ4,走行限界スイッチ7,操作パネル9,光電スイッチ10・11,側面洗浄ブラシ6・6のブラシモータ14,開閉モータ17が接続されている。
【0014】
操作パネル9には、車種選択キー21,洗車箇所指定キー22,洗車コースキー23,洗車スタートキー24,洗車ストップキー25が備えられ、顧客の希望に添った洗車形態を設定できるようになっている。このうち、車種選択キー21では、「箱車・平ボディ・バス」といった形状の異なる自動車の選択と、「2トン・4トン・10トン」といった大きさの異なる自動車の選択が組み合わせて選択でき、洗車箇所指定キー22では、車体における「前面・側面・後面・上面」のうち洗浄する箇所を選択でき、洗車コースキー23では、「水洗車・洗剤洗車・ワックス洗車」といった洗車コースが選択できる。
【0015】
洗車制御部20は、本体フレーム1の走行位置を検出する走行位置検出部26と、本体走行モータ4を制御する走行制御部27と、側面洗浄ブラシモータ14の電流値を検出する電流検出部28と、開閉モータ17を制御する開閉制御部29と、各種データを記憶したデータ記憶部30を備えている。
【0016】
走行位置検出部26は、本体走行モータ4の駆動時間をカウントし、走行限界スイッチ7で検出される走行限界位置からの本体フレーム1の移動位置を推定する。走行制御部27は、走行位置検出部26で検出される本体フレーム1の移動位置と操作パネル9での選択内容に基づいて本体フレーム1の走行/停止を制御するとともに走行速度を可変する。電流検出部28は、側面洗浄ブラシモータ14の電流値を検出し、ブラシと車体との接触状態を判断する。開閉制御部29は、走行位置検出部26及び電流検出部28からの指令を受けて側面洗浄ブラシ6を開閉するとともに開閉速度を可変する。
【0017】
データ記憶部30は、ブラシを車体に接触させたときの電流上昇量から接触状態を判断するための電流閾値AHi,ALoを車種や洗浄部位毎に記憶している。記憶された閾値データは、ブラシとの接触面積等を考慮して予め設定されるものである。このうち、「平ボディ」の「側面・後面(あおり部)」については、その他の車種・車体部位(例えば箱車の側面・後面)に比べて極端にブラシとの接触面積が狭いため、閾値が予め低く設定されるとともに、上限閾値と下限閾値の幅が狭く設定されている。
【0018】
図5に示すように、「平ボディ」のあおり部のようにブラシとの接触面積が狭い部位では、「箱車」の箱部のようにブラシとの接触面積が広い部位に比べて、ブラシの回転抵抗が小さく電流変化量が著しく少なくなる。また、「平ボディ」のあおり部では、ブラシ重量を含めたブラシの接触圧が局部的に掛かるため、ブラシの接近を許容できる範囲、つまりブラシモータ電流値の上限電流閾値と下限電流閾値の範囲も狭くなる。このため、データ記憶部30には、各電流閾値が予め低く設定されているとともに、上限閾値と下限閾値の幅が狭く設定されているのである。
【0019】
このような構成により、側面洗浄ブラシ6でブラッシング洗浄を行う際に、ブラシを車体に接触させたときに上昇する電流値が、データ記憶部30に記憶された電流閾値AHi〜ALoの間になるように、本体フレーム1の走行と側面洗浄ブラシ6の開閉を制御してブラッシング洗浄が実行されることになる。尚、上面洗浄ブラシに関しても側面洗浄ブラシと同様に制御される。
【0020】
続いて、洗車動作について説明する。
本体フレーム1は、走行位置スイッチ7がドッグ3aに接触する待機位置で洗浄する車両の入車待ち状態にある。車両が乗り入れられて、本体フレーム1前面左右の電装ボックス8a,8b間に設けた光電スイッチ10・11のうち、前方の光電スイッチ10が遮光、後方の光電スイッチ11が透光している状態になると、車両の停止位置と判断して停止を促す。こうして、車両が正規の停止位置に停車されると、操作パネル9での洗車受付を許可し、各キーにて選択動作を行った後、洗車スタートキー24を入力すると洗車がスタートする。洗車スタートがすると、まずブラシを空転させて空転電流値を検出する。以後、洗車開始時のブラシ空転電流値を基準に、車体に接触して上昇する電流上昇値を、データ記憶部30に記憶された上限電流閾値AH〜下限電流閾値ALoの範囲内に収まるように制御される。
【0021】
以下、洗車設定として、車種選択キー21で「箱車・4トン」,洗車箇所指定キー22で「前面・側面・後面」,洗車コースキー23で「水洗車」を選択した場合の側面洗浄ブラシ6による洗車動作について、図6を用いて説明する。
【0022】
洗車スタートに伴い、側面洗浄ブラシ6・6を閉位置まで閉じたら(1)、側面洗浄ブラシ6・6を内回りに回転させて本体フレーム1を前進させる(2)。ブラシモータ14の電流値により側面洗浄ブラシ6・6が車体前面に接触したことを検出すると、本体フレーム1の走行を停止させ、側面洗浄ブラシ6・6のミラーMが装備されていない側(ここでは右側)のみを往復で横移動させて(3)車体前面のブラッシングを行う。
【0023】
側面洗浄ブラシ6・6による前面洗浄が終わると、側面洗浄ブラシ6・6を閉じたまま本体フレーム1を後端位置まで後進させ(4)、後端位置に至ると本体フレーム1の走行を停止させ、側面洗浄ブラシ6・6の回転を停止させて開位置まで開く(5)。側面洗浄ブラシ6・6を開いた状態で、本体フレーム1を前進させ(6)、側面洗浄開始位置まで前進すると、本体フレーム1の走行を停止させ、側面洗浄ブラシ6・6を外回りに回転させて側面洗浄ブラシ6・6を閉じ(7)車体側面の接触させる。ブラシモータ14の電流値により側面洗浄ブラシ6・6が車体側面に接触したことを検出すると、本体フレーム1を前進させて(8)車体側面のブラッシングを行う。
【0024】
側面洗浄ブラシ6・6が車体側面から車体後面に回り込みながら閉位置まで閉じたら(9)、本体フレーム1の走行を停止させ、後進に切り替える(10)。ブラシモータ14の電流値により側面洗浄ブラシ6・6が車体後面に接触したことを検出すると、本体フレーム1の走行を停止させ、 側面洗浄ブラシ6・6を開きながら車体後面のブラッシングを行う。側面洗浄ブラシ6・6が開位置まで開いたら(11)、側面洗浄ブラシ6・6の回転を停止させて終了となる。
【0025】
さて、洗車する車種として、「平ボディ」を選択した場合、同様な手順で洗車が実行されるが、上記動作(7)及び(10)における車体へのブラシ接触速度を「箱車」を選択した場合に比べて低速にしている。これは、「平ボディ」の側面及び後面(あおり部)が「箱車」の側面及び後面(箱部)と比べて極端に狭く、ブラシの電流値変化が検出しにくいことに起因している。すなわち、ブラシの電流変化量を監視しながら電流閾値に対する過不足を判断し、本体フレーム1の走行又はブラシの開閉に反映させる制御は時間が掛かるため、ブラシを通常の速度で「平ボディ」のあおり部に接触させると、上限閾値を越えた時点でブラシへの接近を停止させたとしても制動距離によって閾値の範囲を逸脱してブラシが車体に強接触する可能性が高くなるからである。そのため、「平ボディ」のあおり部に側面洗浄ブラシを接近させる際、走行制御部27及び開閉制御部29により「トラック」の車体側面及び後面に接近させる際の速度よりも低速になるよう制御するのである。
【0026】
以上のように本発明は、箱車の側面のようにブラシの接触面積が広い車体部位と、平ボディのあおり部のようにブラシの接触面積が狭い車体部位とに応じてブラシの接近速度を変えるようにしたので、洗浄する車体部位に関わらず適正なブラシ接触圧で洗浄することができ、安全で洗浄力の高い洗車を実行することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 本体フレーム
4 走行モータ
5 上面洗浄ブラシ
6・6 側面洗浄ブラシ
9 操作パネル
14 ブラシモータ
17 開閉モータ
20 洗車制御部
26 走行位置検出部
27 走行制御部
28 電流検出部
29 開閉制御部
30 データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6