特許第5936264号(P5936264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936264
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】遠心バレル研磨機
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/02 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   B24B31/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-136337(P2012-136337)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-619(P2014-619A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 達樹
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭46−028797(JP,Y1)
【文献】 特開昭62−251066(JP,A)
【文献】 実開平04−001771(JP,U)
【文献】 特開平03−069845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00−3/60
B24B21/00−39/06
F16H51/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターレットの偏心位置に回転可能に設けた複数のバレル槽に回転力を減速して伝達する減速機構を備え、
前記減速機構が、
軸受部によって回転可能に支持された従動側シャフトと、
前記従動側シャフトに一体回転可能に設けられ、且つ前記軸受部よりも前記従動側シャフトの一端側に配置され、前記従動側シャフトに対して着脱可能であって、前記従動側シャフトの前記一端側へ変位させることによって前記従動側シャフトから外される低速側ギヤと、
前記従動側シャフトと並列するように配された駆動側シャフトと、
前記駆動側シャフトを中心として回転可能であり、前記低速側ギヤと噛み合う高速側小径ギヤと、
前記高速側小径ギヤと一体回転可能であり、前記高速側小径ギヤよりも前記従動側シャフトの前記一端側へずれて配置された高速側大径ギヤとを備えて構成されており、
前記従動側シャフトの前記一端側から見たときに、前記低速側ギヤの外周縁部の一部が、前記高速側大径ギヤの外周縁部に隠れるようになっている遠心バレル研磨機であって、
前記従動側シャフトの外周と前記低速側ギヤの内周との間に着脱可能に設けられたスペーサを備え、
前記軸受部と前記高速側大径ギヤとの間には、前記スペーサを外した状態において、前記低速側ギヤが、前記従動側シャフトに対して軸線を斜めにするように傾くことを可能にする変位許容空間が設けられ、
前記スペーサを前記従動側シャフトと前記低速側ギヤとの間から外した状態では、前記低速側ギヤにおける前記高速側大径ギヤとの対応部を、前記高速側大径ギヤから遠ざかるように径方向へ変位させることが可能となっていることを特徴とする遠心バレル研磨機。
【請求項2】
前記スペーサが、前記従動側シャフトと前記低速側ギヤを一体回転し得るように結合する結合手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の遠心バレル研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心バレル研磨機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転駆動されるターレットの偏心位置に、複数のバレル槽を回転可能に取り付けた遠心バレル研磨機が開示されている。この遠心バレル研磨機では、バレル槽を遊星回転させる手段として、ターレットと同心に配されたモータ駆動される太陽ギヤと、バレル槽に一体回転し得るように設けた遊星ギヤとを噛み合わせる構造が用いられている。
【0003】
ギヤを用いてバレル槽を遊星回転させるものにおいて、バレル槽の自転速度を遅くしようとする場合、図7に示すように、太陽ギヤ100と遊星ギヤ101との間に減速ギヤ102を介在させる構造が考えられる。減速ギヤ102は、太陽ギヤ100に噛み合う大径ギヤ103と、遊星ギヤ101に噛み合う小径ギヤ104とを、軸方向に並べて一体回転可能に結合して構成されている。この減速構造では、太陽ギヤ100、減速ギヤ102、遊星ギヤ101が、夫々、太陽シャフト105、減速シャフト106、遊星シャフト107の先端部(図6における右側の端部)に配置されている。シャフト105,106,107の軸線方向において、大径ギヤ103は、遊星ギヤ101より先端側に配置することが好ましい。この大径ギヤ103と遊星ギヤ101の位置関係は、次の理由による。
【0004】
バレル槽108を支持する遊星シャフト107は、バレル槽108内でマス(工作物と研磨石の総称)が流動することによる重心位置の変動と、遊星シャフト107の先端部に固着された遊星ギヤ101の質量とが原因となって、僅かながら湾曲変形することがある。湾曲変形した遊星シャフト107が小径ギヤ104に対して不正に接触すると、異音を生じることがある。異音の発生は、遊星ギヤ101の位置を、遊星シャフト107の軸方向における先端よりも中央側(バレル槽108側)に設定することで抑制することが可能である。また、遊星ギヤ101の位置を、遊星シャフト107の軸方向における先端よりも中央側に設定すれば、遊星シャフト107を細くしてもその湾曲変形を抑えることが可能となるので、遊星シャフト107の軽量化を図ることも実現可能となる。このような理由により、遊星ギヤ101が、大径ギヤ103よりも軸方向中央側の位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−251066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、遊星ギヤ101が噛み合う小径ギヤ104は、大径ギヤ103よりも外径寸法が小さいので、シャフト105,106,107の先端側から見たときに、遊星ギヤ101の一部が大径ギヤ103の陰に隠れることになる。遊星ギヤ101を、交換やメンテナンスのために遊星シャフト107から外す際には、遊星ギヤ101を遊星シャフト107の先端側へスライドさせて抜き取るようになっているため、遊星ギヤ101を着脱する際には、大径ギヤ103を減速シャフト106から外しておく必要がある。そのため、作業に手間が掛かるという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ギヤを着脱する際の作業性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、
ターレットの偏心位置に回転可能に設けた複数のバレル槽に回転力を減速して伝達する減速機構を備え、
前記減速機構が、
軸受部によって回転可能に支持された従動側シャフトと、
前記従動側シャフトに一体回転可能に設けられ、且つ前記軸受部よりも前記従動側シャフトの一端側に配置され、前記従動側シャフトに対して着脱可能であって、前記従動側シャフトの前記一端側へ変位させることによって前記従動側シャフトから外される低速側ギヤと、
前記従動側シャフトと並列するように配された駆動側シャフトと、
前記駆動側シャフトを中心として回転可能であり、前記低速側ギヤと噛み合う高速側小径ギヤと、
前記高速側小径ギヤと一体回転可能であり、前記高速側小径ギヤよりも前記従動側シャフトの前記一端側へずれて配置された高速側大径ギヤとを備えて構成されており、
前記従動側シャフトの前記一端側から見たときに、前記低速側ギヤの外周縁部の一部が、前記高速側大径ギヤの外周縁部に隠れるようになっている遠心バレル研磨機であって、
前記従動側シャフトの外周と前記低速側ギヤの内周との間に着脱可能に設けられたスペーサを備え、
前記軸受部と前記高速側大径ギヤとの間には、前記スペーサを外した状態において、前記低速側ギヤが、前記従動側シャフトに対して軸線を斜めにするように傾くことを可能にする変位許容空間が設けられ、
前記スペーサを前記従動側シャフトと前記低速側ギヤとの間から外した状態では、前記低速側ギヤにおける前記高速側大径ギヤとの対応部を、前記高速側大径ギヤから遠ざかるように径方向へ変位させることが可能となっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、低速側ギヤを従動側シャフトから外す際には、従動側シャフトと低速側ギヤとの間からスペーサを外し、スペーサを外すことによって空いた空間を利用して、低速側ギヤにおける高速側大径ギヤとの対応部を、高速側大径ギヤから遠ざかるように径方向へ変位させることができる。本発明によれば、従動側シャフトに対して低速側ギヤを着脱する際に、高速側大径ギヤを駆動側シャフトから外す必要がないので、作業性が良い。
また、低速側ギヤの外径寸法を大きくすることができるので、バレル槽を、より遅い速度で回転させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の遠心バレル研磨機の構成図
図2】遊星ギヤの取付け構造をあらわす拡大断面図
図3】遊星シャフトと遊星ギヤの間からスペーサを外した状態をあらわす拡大断面図
図4】スペーサを外した状態で、遊星ギヤを傾けた状態をあらわす拡大断面図
図5図4の状態から更に遊星ギヤを傾けた状態をあらわす拡大断面図
図6】スペーサの断面図
図7】従来例の遠心バレル研磨機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の遠心バレル研磨機は、
前記スペーサが、前記従動側シャフトと前記低速側ギヤを一体回転し得るように結合する結合手段を備えていてもよい。
この構成によれば、スペーサとは別に、専用の結合手段を用いる場合に比べると、部品点数を少なくすることができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。本実施例の遠心バレル研磨機は、図1に示すように、軸線を水平に向けた太陽シャフト10を中心として回転する一対のターレット11と、太陽シャフト10を中心としてターレット11を公転させるための公転用駆動機構16と、両ターレット11の間における偏心位置に配された複数のバレル槽12と、ターレット11に対してバレル槽12を相対回転させるための自転用駆動機構21とを備えて構成されている。バレル槽12は、公転用駆動機構16と自転用駆動機構21とにより、太陽シャフト10を中心として遊星回転する。このバレル槽12の遊星回転により、バレル槽12の内部では、研磨石を用いた工作物の表面のバリ取りや光沢仕上げ等の研磨処理が行われる。
【0013】
太陽シャフト10は、基台13によって回転可能に支持されている。ターレット11は、太陽シャフト10に相対回転可能に支持されている。バレル槽12の両端面からは一対の遊星シャフト14(本発明の構成要件である従動シャフト)が、太陽シャフト10と平行に突出しており、遊星シャフト14は、ターレット11に設けた軸受部15に貫通された状態で、ターレット11に対して相対回転し得るように支持されている。
【0014】
公転用駆動機構16は、ターレット11の下方に配した公転用モータ17と、公転用モータ17の出力軸に固着した公転用駆動プーリ18と、ターレット11の外周に形成した公転用従動プーリ19と、公転用駆動プーリ18と公転用従動プーリ19との間に掛け回した公転用ベルト20とを備えて構成される。この公転用駆動機構16により、公転用モータ17の回転力がターレット11に直接伝達される。
【0015】
自転用駆動機構21は、ターレット11の下方に配した自転用モータ22と、自転用モータ22の出力軸に固着した自転用駆動プーリ23と、太陽シャフト10に一体回転するように取り付けた自転用従動プーリ24と、自転用駆動プーリ23と自転用従動プーリ24との間に掛け回した自転用ベルト25とを備え、これらにより、自転用モータ22の回転力は、太陽シャフト10に対して直接伝達される。
【0016】
自転用駆動機構21は、太陽シャフト10の回転力を遊星シャフト14に減速して伝達するための減速機構26を備えている。減速機構26は、上記遊星シャフト14と、遊星ギヤ27(本発明の構成要件である低速側ギヤ)と、スペーサ40と、太陽ギヤ28と、減速シャフト29(本発明の構成要件である駆動側シャフト)と、減速ギヤ30とを備えて構成されている。遊星ギヤ27は、遊星シャフト14の右端部14R(本発明の構成要件である一端)に配置される。遊星シャフト14に取り付けられている遊星ギヤ27は、右方へ変位させることによって遊星シャフト14から外すことができ、遊星シャフト14の右方から左方へ変位させることによって遊星シャフト14に取り付けることができる。
【0017】
遊星ギヤ27の中心孔27Hの内径は遊星シャフト14の外径よりも大きく設定されており、遊星ギヤ27の内周面と遊星シャフト14の外周面との間には、スペーサ40が装着されている。このスペーサ40により、遊星ギヤ27は、遊星シャフト14に対し、一体的に回転し得るように且つ着脱可能に設けられている。
【0018】
スペーサ40は、図6に示すように、構造的には、円筒状をなすインナリング41と、円筒状をなすアウタリング46と、複数のボルト48とを備えて構成されている。また、スペーサ40は、機能的には、遊星ギヤ27の内周面と遊星シャフト14の外周面との径方向の寸法差を埋めて、遊星シャフト14に対する遊星ギヤ27の径方向への相対変位を規制する機能(変位規制手段40A)と、遊星ギヤ27を遊星シャフト14に対して一体回転し得るように結合する機能(結合手段40B)を兼ね備えている。
【0019】
インナリング41は、リング本体部42と、リング本体部42の軸方向における右端から径方向外向きに張り出したフランジ部43とを一体に形成して構成されている。リング本体部42の外周面は、左方(遊星シャフト14から遊星ギヤ27を抜き取る方向とは反対の方向)に向かって外径が小さくなるように傾斜したテーパ状の押圧面44となっている。アウタリング46の内周面は、左方に向かって内径が小さくなるように傾斜したテーパ面の受圧面47となっている。フランジ部43には、周方向に間隔を空けた複数の貫通孔45が形成されている。遊星ギヤ27には、その右端面を凹ませた形態であって、複数の貫通孔45と対応するように配置された複数の雌ネジ孔49が形成されている。リング本体部42とアウタリング46は変位規制手段40Aを構成し、フランジ部43とボルト48は結合手段40Bを構成する。
【0020】
遊星シャフト14に遊星ギヤ27とスペーサ40を組み付ける際には、まず、遊星シャフト14の右方から遊星ギヤ27を遊星シャフト14に外嵌し、次に、遊星ギヤ27の右方から、遊星ギヤ27と遊星シャフト14との間にアウタリング46を挿入し、その後、アウタリング46の内周と遊星シャフト14の外周との間に、インナリング41のリング本体部42を挿入する。そして、遊星ギヤ27の右方から各貫通孔45に挿通したボルト48を、雌ネジ孔49にねじ込んで締め付ける。すると、ボルト48のねじ込み力が、テーパ状の押圧面44からテーパ状の受圧面47に作用し、楔作用によって、遊星ギヤ27とスペーサ40と遊星シャフト14が、一体回転し得るように固定される。
【0021】
図1に示すように、太陽ギヤ28は、太陽シャフト10に対し一体回転し得るように固着されている。減速シャフト29は、右側のターレット11の右側面から突出しており、太陽シャフト10及び遊星シャフト14と平行をなして固定されている。減速シャフト29には、減速ギヤ30がベアリング31を介して相対回転可能に取り付けられている。減速ギヤ30は、小径ギヤ32(本発明の構成要件である高速側小径ギヤ)と大径ギヤ33(本発明の構成要件である高速側大径ギヤ)とから構成され、小径ギヤ32と大径ギヤ33は、ボルト36により一体回転し得るように結合されている。
【0022】
小径ギヤ32は、遊星ギヤ27に噛み合わされている。小径ギヤ32のピッチ径は、遊星ギヤ27のピッチ径よりも小さい。大径ギヤ33は太陽ギヤ28に噛み合わされている。大径ギヤ33のピッチ径は、小径ギヤ32のピッチ径よりも大きい。したがって、太陽ギヤ28(太陽シャフト10)の回転力は、大径ギヤ33と小径ギヤ32を介すことにより、減速されて遊星ギヤ27に伝達されるようになっている。
【0023】
図2,3に示すように、大径ギヤ33は、遊星シャフト14の軸方向において、遊星ギヤ27よりも右方(つまり、遊星ギヤ27を遊星シャフト14から外すときの変位方向と同じ方向)に配置されている。また、大径ギヤ33は小径ギヤ32よりもピッチ径が大きい。したがって、シャフト10,14,29を右方から見ると、大径ギヤ33の外周縁部が、遊星ギヤ27の外周縁部の一部を覆い隠す状態となる。これは、遊星ギヤ27を、遊星シャフト14と同軸状態を維持したままで軸方向右側へスライド(平行移動)させると、遊星ギヤ27における大径ギヤ33との対応部27A(図2,3における下端部)が、大径ギヤ33に突き当たって遊星ギヤ27を外すことができない、ということを意味する。本実施例では、その対策として、上記のスペーサ40に加え、変位許容空間35が設けられている。
【0024】
軸受部15と大径ギヤ33との間には、遊星ギヤ27を収容するための収容空間34が確保されているが、収容空間34の軸方向の寸法は遊星ギヤ27の軸方向の寸法よりも大きく設定されている。これにより、遊星ギヤ27を遊星シャフト14に取り付けた状態では、遊星ギヤ27の左外側面と軸受部15の右端との間に、遊星ギヤ27の傾きを許容するための変位許容空間35が確保されている。
【0025】
本実施例では、変位許容空間35とスペーサ40を設けたので、図3に示すように、スペーサ40を外した状態では、遊星ギヤ27の中心孔27Hと遊星シャフト14との間に隙間が空く。この隙間により、遊星シャフト14に外嵌されている遊星ギヤ27を、遊星シャフト14に対して軸線を斜めにするように(つまり、遊星シャフト14の径方向へ倒れるように)傾けることができる。このとき、図4に示すよう、まず、遊星ギヤ27のうち遊星シャフト14を挟んで大径ギヤ33とは反対側(図4における上側)の部分を、右方へ倒すように変位させ、遊星ギヤ27の中心孔27Hの一部を遊星シャフト14の右端部14Rから外すようにする。
【0026】
この後、更に遊星ギヤ27を傾けると、図5に示すように、遊星ギヤ27における大径ギヤ33との対応部27Aが、変位許容空間35内へ進出することにより、大径ギヤ33から軸方向左方へ遠ざかるとともに、減速シャフト29から径方向に遠ざかる。このように遊星ギヤ27を斜めにすれば、遊星ギヤ27を、大径ギヤ33と遊星シャフト14との間を通して、遊星シャフト14及び大径ギヤ33の右方へ取り出すことができる。また、遊星ギヤ27を遊星シャフト14に取り付ける場合は、上記と同様に遊星ギヤ27を斜めにしながら遊星シャフト14の外嵌すればよい。このようにすれば、遊星ギヤ27を、遊星シャフト14と大径ギヤ33との間を通して収容空間34内に収容することができる。
【0027】
本実施例の遠心バレル研磨機は、遊星シャフト14に一体回転可能に且つ着脱可能に設けられて、遊星シャフト14の右端部14R側へ変位させて外す遊星ギヤ27と、減速シャフト29を中心に回転する小径ギヤ32と、小径ギヤ32と一体回転し、小径ギヤ32よりも右端部14R側へずれて配置した大径ギヤ33とを備えており、遊星シャフト14の右端部14R側から見たとき、遊星ギヤ27の外周縁部の一部が、大径ギヤ33の外周縁部に隠れるように位置関係となっている。しかし、遊星シャフト14の外周と遊星ギヤ27の内周との間に着脱可能なスペーサ40が設けられているので、スペーサ40を遊星シャフト14と遊星ギヤ27との間から外すと、遊星ギヤ27における大径ギヤ33との対応部27Aを、大径ギヤ33から遠ざかるように径方向へ変位させることが可能となっている。したがって、本実施例によれば、遊星シャフト14に対して遊星ギヤ27を着脱する際に、大径ギヤ33を減速シャフト29から外す必要がないので、作業性が良い。
【0028】
また、バレル槽12を支持する遊星シャフト14は、バレル槽12内でマスが流動することによる重心位置の変動と、遊星シャフト14の先端部に固着された遊星ギヤ27の質量とが原因となって、僅かながら湾曲変形することが懸念される。湾曲変形した遊星シャフト14が小径ギヤ32に対して不正に接触すると、異音を生じることがある。しかし、本実施例では、遊星ギヤ27の位置を、遊星シャフト14の軸方向における先端よりも中央側(バレル槽12側)に設定しているので、異音の発生を抑制することができる。また、遊星ギヤ27の位置を、遊星シャフト14の軸方向における先端よりも中央側に設定すれば、遊星シャフト14を細くしてもその湾曲変形を抑えることが可能となるので、遊星シャフト14の軽量化を図ることも実現可能となっている。
【0029】
また、本実施例の遠心バレル研磨機は、スペーサ40が、遊星シャフト14と遊星ギヤ27を一体回転し得るように結合する結合手段40Bを備えているので、スペーサ40とは別に、専用の結合手段を用いる場合に比べて、部品点数が少なくなっている。
また、本実施例の遠心バレル研磨機は、遊星シャフト14が軸受部15によって回転可能に支持され、遊星ギヤ27が、軸受部15よりも遊星シャフト14の右端部14Rに近い位置に配置されているのであるが、軸受部15と大径ギヤ33との間には、スペーサ40を外した状態において、遊星ギヤ27が、遊星シャフト14に対して軸線を斜めにするように傾くことを可能にする変位許容空間35が設けられている。このような変位許容空間35を設けたことにより、遊星ギヤ27の外径寸法を大きくすることができるので、バレル槽12を、より遅い速度で回転させることが可能となる。
【0030】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、従動側シャフト(遊星シャフト14)の外周の半径と低速側ギヤ(遊星ギヤ27)の内周の半径との寸法差を、低速側ギヤと高速側大径ギヤ(大径ギヤ33)の径方向の重なり寸法よりも小さくしたが、従動側シャフトの外周の半径と低速側ギヤの内周の半径との寸法差は、低速側ギヤと高速側大径ギヤの径方向の重なり寸法より大きくしてもよい。この寸法関係にすれば、低速側ギヤを斜めにしなくても、従動側シャフトから外すことができる。
(2)上記実施例では、スペーサ40が、従動側シャフト(遊星シャフト14)と低速側ギヤ(遊星ギヤ27)を一体回転し得るように結合するための結合手段40Bを備えているが、これに限らず、スペーサとは別に、専用の結合手段を設けてもよい。
(3)上記実施例では、駆動側シャフトが、太陽シャフト10(即ち、ターレットの回転中心)に対して偏心した位置に配した減速シャフト29である場合について説明したが、本発明は、駆動側シャフトが太陽シャフトである場合にも適用できる。
(4)上記実施例では、従動側シャフトがバレル槽12を支持する遊星シャフト14である場合について説明したが、本発明は、従動側シャフトが、太陽シャフト(即ち、ターレットの回転中心)と遊星シャフト(即ち、バレル槽を支持するシャフト)との間に配された減速シャフトである場合にも適用できる。
(5)上記実施例では、駆動側シャフト(減速シャフト29)がターレット11に固定され、駆動側シャフトに対して高速側小径ギヤ(小径ギヤ32)と高速側大径ギヤ(大径ギヤ33)が相対回転し得るようにしたが、これに限らず、駆動側シャフトをターレットに対して相対回転可能に支持し、高速側小径ギヤと高速側大径ギヤが駆動側シャフトと一体回転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
11…ターレット
12…バレル槽
14…遊星シャフト(従動側シャフト)
14R…遊星シャフトの右端部(従動側シャフトの一端)
15…軸受部
26…減速機構
27…遊星ギヤ(低速側ギヤ)
29…減速シャフト(駆動側シャフト)
32…小径ギヤ(高速側小径ギヤ)
33…大径ギヤ(高速側大径ギヤ)
35…変位許容空間
40…スペーサ
40B…結合手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7