(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の巻線装置を
図1に示す。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明の巻線装置10について説明する。本発明の巻線装置10は、被巻線部材11を装着可能なチャック13を備える。
図3及び
図4に示すように、この実施の形態における被巻線部材11は、誘電体、磁性体、絶縁体セラミックスやプラスチックスなどの絶縁性材料より成り、巻胴部11cの両端部に鍔部11a,11bが形成されたいわゆるチップ部品用のコア11である。この被巻線部材11の巻胴部11cは断面が円形を成し、その両端部における鍔部11a,11bは外形が円形を成すけれども、対向する部分に互いに平行な平面部11dが形成される。一方の鍔部11aの互いに平行な平坦部11dに端子11eがそれぞれ外側に突出するように設けられ、他方の鍔部11bには端子11eが設けられない。そして、チャック13は、このような被巻線部材11の一方の鍔部11aを把持可能に構成される。
【0015】
図3に示すように、この実施の形態におけるチャック13は、Y軸方向に伸びて水平に配置されたスピンドル12の端部に設けられる。このチャック13は、そのスピンドル12の先端にそのスピンドル12と同軸に基端が設けられたチャック本体14と、そのチャック本体14の外周に嵌合され、チャック用スプリング16により軸方向に弾性支持されたチャック開閉部材17を備える。
図3及び
図4に示すように、チャック本体14には、その中心軸に沿って先端からスリット14aが軸方向に伸びて形成される。このスリット14aによりチャック本体14の先端は2分割され、それらの各分割片の外周にはスピンドル12に向かって外径が小さくなるテーパ面14cがそれぞれ形成される。そして、チャック本体14の先端縁にはスリット14aを中心として被巻線部材11の一方の鍔部11aを収容する凹部14dが形成され、この凹部14dの周壁は一方の鍔部11aの外形に相応して形成される。
【0016】
図3に示すように、チャック本体14の外周に嵌合されたチャック開閉部材17は筒状の部材であり、内周をチャック本体14における各分割片のテーパ面14cに摺接するように構成される。一方、チャック開閉部材17の外周には、図示しないチャック開閉機構が係合する凹溝17aが形成される。そして、チャック用スプリング16によりスピンドル12から離間する方向に付勢されたチャック開閉部材17は、チャック本体14のテーパ面14cを同方向に押圧し、結果としてチャック本体14のスリット14bにより分断された先端における各分割片の互いの間隔を狭め、先端の凹部14dに収容された被巻線部材11の一方の鍔部11aを把持し、チャック13の中心軸に被巻線部材11の中心軸CCを一致させた状態でその被巻線部材11を把持可能に構成される(
図5)。
【0017】
また、チャック13が先端に設けられたスピンドル12には、後述するノズル51から繰出される線材22の端部を一時的に係止する
絡げ部材としての捨て絡げ部材24が設けられる(
図5)。この実施の形態における線材22は、絶縁被覆導線であって、Cuよりなる導線と、その導線の外周面を被覆するように形成された絶縁被覆とを有するものを示す。この捨て絡げ部材24は、円柱状を成して形成され、その先端に直径方向に形成されて巻初めの線材22aが進入可能な幅を有する溝24aが形成される。この円柱状を成す捨て絡げ部材24はスピンドル12にL形の取付部材25を介して設けられる。
【0018】
図2に示すように、このチャック13が先端に同軸に設けられたスピンドル12は基台18にその中心軸を中心として回転可能に枢支される。そして、スピンドル12が枢支された基台18は、台座10aに固定される。基台18にはスピンドル12を捨て絡げ部材24とともに回転させる巻回手段としてのサーボモータ27が取付けられる。スピンドル12及びサーボモータ27の回転軸27aにはそれぞれプーリ28a,28bが設けられ、それらのプーリ28a,28bにベルト28cが架設される。これによりサーボモータ27は、駆動してその回転軸27aが回転すると、ベルト28cを介してその回転がスピンドル12に伝達され、これによりスピンドル12を捨て絡げ部材24とともに回転させるように構成される。そして、図示しないが、この台座10aには、このチャック13を操作するチャック開閉機構が設けられる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、台座10a上には、線材22を繰出す線材繰出機50が設けられる。この線材繰出機50は、その線材22が挿通されるノズル51と、そのノズル51を3軸方向に移動させるノズル移動機構52と、その線材22に張力を付与するテンション装置53とを備える。ノズル51は支持板54に固定され、ノズル移動機構52はこの支持板54を台座10aに対して3軸方向に移動可能に構成される。この実施の形態におけるノズル移動機構52は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ56〜58の組み合わせにより構成される。このノズル移動機構52を構成する各伸縮アクチュエータ56〜58は、細長い箱形ハウジング56d〜58dと、そのハウジング56d〜58d内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ56a〜58aによって回動駆動されるボールネジ56b〜58bと、このボールネジ56b〜58bに螺合して平行移動する従動子56c〜58c等によって構成される。そして、これらの各伸縮アクチュエータ56〜58は、サーボモータ56a〜58aが駆動してボールネジ56b〜58bが回転すると、このボールネジ56b〜58bに螺合する従動子56c〜58cがハウジング56d〜58dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0020】
この実施の形態では、ノズル51が設けられる支持板54をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ56のハウジング56dに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ56とともにその支持板54をZ軸方向に移動可能に、X軸方向伸縮アクチュエータ56の従動子56cがZ軸方向伸縮アクチュエータ57の従動子57cに取付けられる。また、そのX軸及びY軸方向伸縮アクチュエータ56,57とともにその支持板54をY軸方向に移動可能に、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ57のハウジング57dがY軸方向伸縮アクチュエータ58の従動子58cに取付けられる。そして、Y軸方向伸縮アクチュエータ58のハウジング58dがY軸方向に伸びて台座10aに固定される。それらの各伸縮アクチュエータ56〜58における各サーボモータ56a〜58aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
【0021】
一方、テンション装置53は、繰出される線材22に張力を与えるとともにその線材22を引き戻し可能なものである。この実施の形態におけるテンション装置53は、台座10aに設けられたケーシング61と、そのケーシング61のY軸方向における側面に設けられたドラム62及びテンションバー63とを備える。線材22はドラム62に巻付けられ、そのドラム62を回転させて線材22を繰出す繰出し制御モータ64がケーシング61の内部に設けられ、ドラム62から繰出された線材22はテンションバー63の先端における線材ガイド63aに導かれる。線材ガイド63aに導かれた線材22はその線材ガイド63aからノズル51を貫通するように配線される。
【0022】
テンションバー63は、基端の回動軸63bを支点としてX軸方向に回動可能となっている。この回動軸63bの回動角度は、ケーシング61内に収容され回動軸63bに取付けられた回動角度検出手段としてのポテンショメータ65により検出される。ポテンショメータ65の検出出力は図示しないコントローラに入力され、コントローラからの制御出力が繰出し制御モータ64に接続される。
【0023】
図1に示すように、テンションバー63の回動軸63bと線材ガイド63aとの間の所定位置には、テンションバー63の回動方向に付勢力を与える付勢手段としての弾性部材であるスプリング66の一端が取付けブラケット63cを介して取付けられる。テンションバー63は、弾性部材であるスプリング66によって回動角度に応じた弾性力が及ぼされる。このスプリング66の他端は、移動部材67に固定される。この移動部材67はテンション調節ネジ68の雄ネジ68aに螺合しており、この雄ネジ68aの回転に従って移動調整が可能に構成される。このように、スプリング66の他端の固定位置は変位でき、テンションバー63によって付与される線材22の張力が調節可能に構成される。
【0024】
図示しないコントローラは、回動角度検出手段であるポテンショメータ65により検出された回動角度が所定の角度となるように繰出し制御モータ64を制御するように構成される。従って、このテンション装置53では、スプリング66によりテンションバー63を介して線材22に張力を与えて、そのテンションバー63が所定の角度になるようにドラム62が回転して所定量の線材22が繰出される。よって、線材22の張力は所定の値に維持されるようになっている。
【0025】
図2に示すように、台座10aには、ノズル51の他にノズル51を通過した線材22をエア圧により切断するニッパクランプ装置71(特開2011−217824)が、カッタ移動機構72を介して取付けられる。ニッパクランプ装置71は、線材22を切断するとともに、その切断された線材22の片側を保持可能に構成されたものであり、取付板70に取付けられる。このニッパクランプ装置71を移動させるカッタ移動機構72は、上述したノズル移動機構52と同様に、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ73〜75の組み合わせにより構成される。
【0026】
この実施の形態では、ニッパクランプ装置71が設けられる取付板70をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ73のハウジング73dに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ73とともにその取付板70をZ軸方向に移動可能に、Y軸方向伸縮アクチュエータ73の従動子73cがZ軸方向伸縮アクチュエータ74の従動子74cに取付けられる。また、そのY及びZ軸方向伸縮アクチュエータ73,74とともにその取付板70をX軸方向に移動可能に、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ74のハウジング74dがX軸方向伸縮アクチュエータ75の従動子75cに取付けられる。そして、X軸方向伸縮アクチュエータ75のハウジング75dがX軸方向に伸びて台座10aに固定される。それらの各伸縮アクチュエータ73〜75における各サーボモータ73a〜75aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
【0027】
このような構成によりカッタ移動機構72は、ニッパクランプ装置71を台座10aに対して3軸方向に移動可能に構成される。このカッタ移動機構72によりニッパクランプ装置71は、そのカッタ歯71aが線材22を切断する切断位置と、その線材22から離間する待機位置との間を移動可能に構成される。そして、このカッタ移動機構72により、ニッパクランプ装置71はノズル51と別に独立して移動し、図示しないコントローラにより制御可能に構成される。
【0028】
図1に示すように、本発明の巻線装置10は、被巻線部材11に巻回され、線材切断手段であるニッパクランプ装置71により切断された線材22の端部を端子11eに巻回させる線材絡げ手段80を備える。この実施の形態における線材絡げ手段80は、端子11eが挿入可能な筒状部材81と、端子11eを中心にその筒状部材81を回転させる回転手段である絡げサーボモータ82を備える。基台18の近傍の台座10aには支柱79が立設され、この支柱79の上部にモータ移動機構83を介して絡げサーボモータ82がその回転軸82aを鉛直方向下方に向けて設けられる。このモータ移動機構83は、上述したノズル移動機構52及びカッタ移動機構72と同様に、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ84〜86の組み合わせにより構成される。
【0029】
この実施の形態では、絡げサーボモータ82が設けられる取付片87をZ軸方向に移動可能にZ軸方向伸縮アクチュエータ84のハウジング84dに取付け、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ84とともにその取付片87をX軸方向に移動可能に、Z軸方向伸縮アクチュエータ84の従動子84cがX軸方向伸縮アクチュエータ85のハウジング85dにアングル部材88を介して取付けられる。また、そのZ及びX軸方向伸縮アクチュエータ84,85とともにその取付片87をY軸方向に移動可能に、そのX軸方向伸縮アクチュエータ85の従動子85cがY軸方向伸縮アクチュエータ86の従動子86cに取付けられる。そして、Y軸方向伸縮アクチュエータ86のハウジング86dがY軸方向に伸びて支柱79の上部に固定される。それらの各伸縮アクチュエータ84〜86における各サーボモータ84a〜86aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。このような構成によりモータ移動機構83は、絡げサーボモータ82を台座10aに対して3軸方向に移動可能に構成される。
【0030】
そして、この絡げサーボモータ82の回転軸82aに、断面が円形を成す筒状部材81が同軸に設けられる。この筒状部材81は、端子11eが挿入可能な内径を有し、この筒状部材81の先端には、その周方向の一部に先端から突出する突起81aが形成される。
図10及び
図14に示すように、筒状部材81に端子11eが挿入された状態で、突起81aは、その端子11eに沿う線材22をその端子11eとともに挟むように形成される。断面が円形を成すピン状の端子11eを用いるこの実施の形態では、突起81aの外周が筒状部材81の外周に連続するけれども、線材22をその端子11eとともに挟むために、突起81aは筒状部材81の内径より離れた位置に形成される場合を示す。そして、筒状部材81が端子11eを中心に回転するとき、この突起81aはその筒状部材81とともに端子11eを中心として端子11eの周囲で周回し、その端子11eとともに挟む線材22を端子11eの周囲に周回させるように構成される。このため、突起81aの周囲に当接して摺れることになる線材22に損傷を与えないように、この突起81aの断面は円形に形成される。
【0031】
次に、このような巻線装置を用いた巻線手順を説明する。
【0032】
巻線に際して、先ず、
図5に示すように、被巻線部材11の一方の鍔部11aをチャック13により把持させる。これは、被巻線部材11の一方の鍔部11aをチャック13の先端の凹部14d(
図4)に収容して、チャック用スプリング16により付勢されたチャック開閉部材17により、スリット14bにより分断された先端における各分割片の互いの間隔を狭める。それにより先端の凹部14dに収容された被巻線部材11の一方の鍔部11aをチャック13により把持させる。そして、X軸方向に水平に伸びたノズル51から線材22を繰出して下方に折り曲げ、ノズル51から繰出された線材22の端部を巻初めの線材22aとして捨て絡げ部材24に支持させる。
【0033】
巻初めの線材22aとして捨て絡げ部材24に支持は、ノズル移動機構52(
図1)によりノズル51を移動させることにより行われる。具体的には、
図5に示すように、ノズル51を移動させてノズル51の先端から下方に折り曲げられた巻初めの線材22aを捨て絡げ部材24の溝24aに挿通させる。その後、
図6に示すように、ノズル51をその捨て絡げ部材24の周囲に周回させた後、被巻線部材11の端子11eにおいて折り返すように移動させる。このようにして、ノズル51から繰出される線材22の端部を捨て絡げ部材24に支持させるとともに、その後にノズル51から繰出される線材22を端子11eに係止させる。
【0034】
その後、サーボモータ27(
図2)により捨て絡げ部材24とチャック13を同期して同方向に回転させる。それによりノズル51から繰出される線材22をチャック13とともに
図7の実線矢印で示すように回転する被巻線部材11の巻胴部11cに巻回させて、巻回された線材22から成るコイル30を得る。このとき、ノズル51を巻胴部11cの幅の範囲で往復移動させることが好ましい。即ち、チャック13が被巻線部材11とともに1回転する毎に、ノズル51をその線材22の線径に等しい量だけ移動させることにより、ノズル51から繰出される線材22を巻胴部11cに互いに密着した状態で整列に巻回させる。これにより、いわゆる線材22の整列巻きが可能になる。そして、
図7に示すように、線材22が所定数巻回された段階で、巻き終わりの線材22bを絡げる端子11eをノズル51に向けた状態で被巻線部材11の回転を止める。
【0035】
その後、
図8に示すように、ノズル移動機構52(
図1)によりノズル51を移動させて、そのノズル51を被巻線部材11の端子11eにおいて折り返すように移動させ、上方に待機させる。このようにして、巻線後にノズル51から繰出される線材22を巻き終わり用の端子11eに係止させる。その後、カッタ移動機構72(
図2)によりニッパクランプ装置71を移動させて、そのカッタ歯71a,71aが端子11eの近傍の線材22を挟むようにする。そして、そのニッパクランプ装置71により端子11eの近傍においてカッタ歯71a,71aを閉じて、その端子11eに絡げうる長さの線材22を端子11eの近傍に残した状態で、端子11eとノズル51の間の線材22を切断する。すると、テンション装置53(
図1)により線材22はそのテンション装置53側に戻ろうとするけれども、水平なノズル51から繰出された線材22は下方に折り曲げられることにより、ノズル51の孔縁に係止してその線材22の戻りは防止される。それとともに線材22を下方に折り曲げることにより、次の巻線の準備をすることができる。
【0036】
次に、巻胴部11cに巻回されて引き出された線材22であって、ニッパクランプ装置71の切断により形成されたを巻終わりの線材22bを端子11eに絡げる。この絡げは線材絡げ手段80より行われる。そのために、先ずサーボモータ27はスピンドル12を若干回転させて、
図9に示すように、その端子11eを上方に向けて、その端子11eを筒状部材81に対向させる。この状態で、モータ移動機構83は絡げサーボモータ82を移動させて、その回転軸82aに同軸に設けられた筒状部材81を下降させてその端子11eを筒状部材81に挿入させ、
図10に示すように、端子11eに係止された線材22の外側から突起81aを当接させる。
【0037】
その後、
図11に示すように、絡げサーボモータ82により、端子11eを中心に筒状部材81を回転させる。すると、端子11eに係止された線材22の外側に当接する突起81aは、その筒状部材81とともに端子11eの周囲で周回し、その端子11eに掛け回された巻き終わりの線材22bを、その外側に当接する突起81aが端子11eの周囲において周回することにより、端子11eの周囲に周回させる。このとき、巻終わりの線材22bが端子11eの周囲に1回巻回される毎に、その筒状部材81を線材22の外径分上昇させて、その巻終わりの線材22bを端子11eの周囲に軸方向に沿って螺旋状に巻回することが好ましい。このようにして、巻き終わりの線材22bをその端子11eに絡げる。この絡げが終了した後には、モータ移動機構83により絡げサーボモータ82とともに筒状部材81を上昇させることにより、その筒状部材81から端子11eを抜き出す。
【0038】
次に、捨て絡げ部材24に絡げられた巻初めの線材22を端子11eに絡げる。このために、
図12に示すように、サーボモータ27(
図2)によりスピンドル12を逆方向に若干回転させて、その端子11eをノズル51側に向ける。その後、カッタ移動機構72(
図2)によりニッパクランプ装置71を移動させて、そのカッタ歯71aが端子11eの近傍の線材22を挟むようにする。そして、そのニッパクランプ装置71により端子11eの近傍においてカッタ歯71a,71aを閉じて、その端子11eに絡げ得る長さの線材22を端子11eの近傍に残した状態で、端子11eと捨て絡げ部材24の間の線材22を切断する。その後、図示しないが、捨て絡げ部材24に残る線材22をそのニッパクランプ装置71が把持した状態で、カッタ移動機構72(
図2)によりその線材22を捨て絡げ部材24から取り出して、図示しない線材22収容箱にまで移動させ、収容させる。
【0039】
その後、
図13に示すように、スピンドル12を再び若干回転させて、巻初めの線材22aが掛け回された端子11eを上方に向けて、その端子11eを筒状部材81に対向させる。この状態で、モータ移動機構83は絡げサーボモータ82を移動させて、その回転軸82aに同軸に設けられた筒状部材81を下降させて、
図14に示すように、その筒状部材81に端子11eを挿入させる。その後、
図15に示すように、端子11eを中心に筒状部材81を回転させて、端子11eに係止された線材22の外側に突起81aに当接させ、更にその筒状部材81を突起81aとともに回転させることにより、その端子11eに掛け回された線材22の端部をその端部に当接する突起81aが端子11eの周囲において周回することにより、その線材22を端子11eの周囲に周回させる。
【0040】
このとき、巻初めの線材22aが端子11eの周囲に1回巻回される毎に、その筒状部材81を線材22の外径分上昇させて、その巻初めの線材22aを端子11eの周囲に軸方向に沿って螺旋状に巻回することが好ましい。このようにして、巻初めの線材22aをその端子11eに絡げる。この絡げが終了した後には、モータ移動機構83により絡げサーボモータ82とともに筒状部材81を上昇させることにより、その筒状部材81から端子11eを抜き出す。
【0041】
このように端子11eに絡げられた巻初めの線材22a及び巻き終わりの線材22bは、その後、それらの端子11eに電気的に接続される。この接続は、従来から行われている公知の一般的な方法により行うことができる。例えば、フラックスを用いた半田付けにより行うことが例示される(特開2009−142839)。このように、巻初めの線材22a及び巻き終わりの線材22bを端子11eに接続させることにより、被巻線部材11と、その被巻線部材11に所定の回数巻回された線材22からなるコイル30とを備えたチップコイルを得ることができる。
【0042】
そして、このように線材22を端子11eに絡げる方法では、筒状部材81に端子11eを挿入し、端子11eを中心に筒状部材81を回転させるので、その筒状部材81により端子11eが傾くようなことを防止することができる。これにより、その端子11eが傾くことに起因する被巻線部材11や端子11e自身の破損は回避される。また、筒状部材81を回転させて、筒状部材81の先端から突出する突起81aに当接する線材22の端部を端子11eに周回させるので、その傾きが禁止された端子11eの周囲に線材22を巻回することが可能になる。このため、本発明では、比較的径の大きな線材22であっても、被巻線部材11や端子11e自身を破損することなく、その線材22を端子11eに確実に絡げることが可能になるのである。
【0043】
また、巻初めの線材を端子に絡げた後に被巻線部材の巻胴部にその線材を巻回させる従来の絡げ方法にあっては、端子に既に絡げられた巻初めの線材を巻胴部に案内する過程において、その案内される線材が端子に既に絡げられている線材の上に乗って、その絡げられた線材の外径が拡大することもある。けれども、本発明によれば、巻初めの線材22aであっても、筒状部材81を突起81aとともに回転させつつ上昇させることにより、
図15に示すように、その巻初めの線材22aを端子11eの周囲に被巻線部材11側から螺旋状に巻回することができる。このため、本発明によれば、端子11eに絡げられている線材22の上に線材22が更に乗るようなことはなく、線材22が端子11eの径方向に重なって、その端子11eに絡げられた線材22の外径が拡大するようなことはない。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、断面が円形のピン状の端子11eを用いて説明したけれども、この端子11eは断面が円形のピン状のものに限られず。断面が方形を成す棒状又は板状のものであっても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態では、突起81aが内径より離れた位置に形成された筒状部材81を用いて説明したけれども、
図16及び
図17に示すように、突起81aは筒状部材81の内径にその外周が連続するようなものであっても良い。この
図16及び
図17に示す端子11eは、その断面が方形を成す板状のものであって、そこに絡げられる線材22が落ち込む切り欠き11fがその両側に複数形成される。このような場合であっても、筒状部材81は、その端子11eが挿入可能な内径のものが用いられる。そして、突起81aは、その筒状部材81に端子11eが挿入された状態で、その端子11eに沿う線材22をその端子11eとともに挟む必要がある。
【0046】
けれども、端子11eが板状のものであって、そこに絡げられる線材22が落ち込む切り欠き11fがその両側に形成されているような場合には、
図16に示すように、筒状部材81の内径に外周が連続するような突起81aであっても、その突起81aは線材22をその端子11eとともに挟むことができる。このため、このような筒状部材81の内径に外周が連続するような突起81aであっても、
図17に示すように、筒状部材81が端子11eを中心に回転すると、この突起81aはその筒状部材81とともに端子11eを中心として端子11eの周囲で周回し、その端子11eとともに挟む線材22を端子11eの周囲に周回させて、例えば、巻き終わりの線材22bをその端子11eに絡げることができる。