特許第5936270号(P5936270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日特エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000002
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000003
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000004
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000005
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000006
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000007
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000008
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000009
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000010
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000011
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000012
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000013
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000014
  • 特許5936270-巻線装置及び巻線方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936270
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20160609BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H02K15/085
   H02K15/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-206683(P2012-206683)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-64347(P2014-64347A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】日特エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 功治
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/12962(WO,A1)
【文献】 特開2003−61320(JP,A)
【文献】 特開2011−130554(JP,A)
【文献】 米国特許第5915643(US,A)
【文献】 米国特許第6036135(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
H02K 15/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多極電機子(1)の巻線位置にある磁極(2)に線材(3)が巻回されるように,環状に巻回された前記線材(3)を前記磁極(2)間のスロット(1b)に挿入する巻線装置であって、
前記磁極(2)を挟む間隔を空けて設けられた一対の第一係止爪(13,14)と、
前記一対の第一係止爪(13,14)の周囲を回動しながら前記線材(3)を繰り出して前記一対の第一係止爪(13,14)に対して前記線材(3)を掛け回すように巻回するフライヤ(51)と、
前記一対の第一係止爪(13,14)を前記磁極(2)を挟む位置にまで移動させて前記一対の第一係止爪(13,14)の間に張設された前記線材(3)を前記スロット(1b)に挿通させる第一移動機構(16,21)と
を備えた巻線装置。
【請求項2】
多極電機子(1)を回転させて磁極(2)を順次に巻線位置に送るインデックス機構(7)と、
一対の第一係止爪(13,14)に隣接して前記磁極(2)を挟む間隔を空けて設けられた一対の第二係止爪(33,34)と、
前記一対の第二係止爪(33,34)をフライヤ(51)が線材(3)を巻回させる位置から前記磁極(2)を挟む位置にまで移動させて前記一対の第二係止爪(33,34)の間に張設された前記線材(3)をスロット(1b)に挿通させる第二移動機構(36,41)と
を更に備えた請求項1記載の巻線装置。
【請求項3】
多極電機子(1)を回転させることによって磁極(2)を巻線位置に送る第一インデックス工程と、
前記多極電機子(1)の外側において一対の第一係止爪(13,14)に対して線材(3)を掛け回すように巻線する第一巻線工程と、
前記一対の第一係止爪(13,14)を移動させて前記一対の第一係止爪(13,14)に巻回された巻線を巻線位置にある前記磁極(2)に嵌入させる第一嵌入工程と
が繰返される巻線方法。
【請求項4】
第一嵌入工程の後又はその第一嵌入工程と共に多極電機子(1)を回転させることによって新たな磁極(2)を巻線位置に送る第二インデックス工程と、
多極電機子(1)の外側において一対の第二係止爪(33,34)に対して前記線材(3)を掛け回すように巻線する第二巻線工程と、
前記一対の第二係止爪(33,34)を移動させて前記一対の第二係止爪(33,34)に巻回された巻線を巻線位置にある前記磁極(2)に嵌入させる第二嵌入工程と
を更に含み、
第二嵌入工程の後又は前記第二嵌入工程と共に第一インデックス工程が行われる請求項3記載の巻線方法。
【請求項5】
第一巻線工程及び第一嵌入工程の時に一対の第二係止爪(33,34)を第二嵌入工程において巻線を嵌入させた磁極(2)の多極電機子(1)の軸方向の両側から挟む位置に維持させ、
第二巻線工程及び第二嵌入工程の時に一対の第一係止爪(13,14)を第一嵌入工程において巻線を嵌入させた磁極(2)の多極電機子(1)の軸方向の両側から挟む位置に維持させる
請求項4記載の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータやレゾルバに用いられる多極電機子の磁極にコイル形成用の線材を巻き付ける巻線装置及び巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、モータやレゾルバに用いられる多極電機子の磁極には、巻回された線材から成るコイルが形成される。従来、このコイルの形成方法として、インサータと呼ばれる装置を用いる方法(例えば、特許文献1参照。)や、線材を繰り出し可能なノズルをその磁極の周囲において周回させ、そのノズルから繰り出される線材をその磁極に直接巻回する方法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。そして、このインサータを用いる方法にあっては、あらかじめ環状に巻回された線材を、多極電機子の一方の端部から、磁極と磁極の間のスロットに挿入しつつ軸方向に引いて、最終的にその環状に巻回された線材を多極電機子の磁極に装着する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−245120号公報
【特許文献2】特開2003−169455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したインサータ方式によれば、巻回された線材を多極電機子の軸方向に引いて、巻回された線材が描く環状を細長く変形させ、それにより真っ直ぐに伸びた線材を磁極間に形成された真っ直ぐなスロットに多極電機子の端部から引っ張りつつ挿入するので、その引っ張りに起因して線材が延びてしまうおそれがある。また、その延ばされた線材はスロットに長手方向に擦れつつそのスロットに挿入されるので、その擦れに基づいて線材にダメージが与えられるおそれもある。
【0005】
これに対して、ノズルから繰り出される線材をその磁極に直接巻回する方法にあっては、線材の延びや擦れに起因するダメージは発生し難いと考えられる。けれども、例えば、レゾルバに用いられる多極電機子にあっては、その線材が挿入されるスロットの幅が狭いようなものもある。このようにスロットの幅が狭いような場合には、ノズルをそのスロットの内部にまで進入させることができずに、ノズルをその磁極の周囲において周回させることができない不具合がある。このため、ノズルが進入不能なスロットを有する多極電機子には、そのノズルから繰り出される線材をその磁極に直接巻回することはできないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0006】
本発明の目的は、線材にダメージを与えることなく、巻回された線材から成るコイルを多極電機子の磁極に形成し得る巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、線材が挿入されるスロットの幅が狭く、そのスロットにノズルが進入不能な場合であっても、複数回巻回された線材から成るコイルを磁極に形成し得る巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多極電機子の巻線位置にある磁極に線材が巻回されるように,環状に巻回された線材を磁極間のスロットに挿入する巻線装置の改良である。
【0009】
その特徴ある構成は、磁極を挟む間隔を空けて設けられた一対の第一係止爪と、一対の第一係止爪の周囲を回動しながら線材を繰り出して一対の第一係止爪に対して線材を掛け回すように巻回するフライヤと、一対の第一係止爪を磁極を挟む位置にまで移動させて一対の第一係止爪の間に張設された線材をスロットに挿通させる第一移動機構とを備えたところにある。
【0010】
この場合、多極電機子を回転させて磁極を順次に巻線位置に送るインデックス機構と、一対の第一係止爪に隣接して磁極を挟む間隔を空けて設けられた一対の第二係止爪と、一対の第二係止爪をフライヤが線材を巻回させる位置から磁極を挟む位置にまで移動させて一対の第二係止爪の間に張設された線材をスロットに挿通させる第二移動機構とを更に備えることが好ましい。
【0011】
一方、本発明の巻線方法は、多極電機子を回転させることによって磁極を巻線位置に送る第一インデックス工程と、多極電機子の外側において一対の第一係止爪に対して線材を掛け回すように巻線する第一巻線工程と、一対の第一係止爪を移動させて一対の第一係止爪に巻回された巻線を巻線位置にある磁極に嵌入させる第一嵌入工程とが繰返される方法である。
【0012】
第一嵌入工程の後又はその第一嵌入工程と共に多極電機子を回転させることによって新たな磁極を巻線位置に送る第二インデックス工程と、多極電機子の外側において一対の第二係止爪に対して線材を掛け回すように巻線する第二巻線工程と、一対の第二係止爪を移動させて一対の第二係止爪に巻回された巻線を巻線位置にある磁極に嵌入させる第二嵌入工程とを更に含むことが好ましく、この場合、第二嵌入工程の後又は第二嵌入工程と共に第一インデックス工程が行われる。
【0013】
そして、第一巻線工程及び第一嵌入工程の時に一対の第二係止爪を第二嵌入工程において巻線を嵌入させた磁極の多極電機子の軸方向の両側から挟む位置に維持させ、第二巻線工程及び第二嵌入工程の時に一対の第一係止爪を第一嵌入工程において巻線を嵌入させた磁極の多極電機子の軸方向の両側から挟む位置に維持させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の巻線装置及び巻線方法は、磁極を挟む間隔を空けて設けられた一対の係止爪に対して線材を掛け回すように巻回し、その後一対の係止爪を磁極を挟む位置にまで移動させて一対の係止爪の間に張設された線材をスロットに挿通させるものである。ここで、磁極を挟むような間隔とされた一対の係止爪に線材が掛け回すように巻線されて形成されたコイルにあっては、一対の係止爪にそれぞれ掛け回される円弧部と、その円弧部の両端部から連続して一対の係止爪の間で真っ直ぐに伸びる互いに平行な伸長部とを有することになる。
【0015】
よって、その一対の係止爪を、多極電機子の外側から巻線位置の磁極を挟む位置まで、そこに巻回された線材からなるコイルと共に移動させて、コイルの伸長部を巻線位置にある磁極の両側におけるスロットにそれぞれ挿入させることにより、巻回された線材から成るコイルを変形させることなく、その巻線位置にある磁極にそのコイルを嵌入させることができる。このように、本発明の巻線装置及び巻線方法にあっては、そのコイルの嵌入時において、コイルを変形させないので、巻回された線材が描く環状を細長く変形させる従来のインサータ方式に比較して、線材が延びてしまうようなことはない。
【0016】
また、一対の係止爪の間におけるコイルの互いに平行な伸長部は、その間隔を維持した状態で、多極電機子の径方向に移動してスロットに挿入される。このため、その互いに平行な伸長部の間隔を、そのコイルが嵌入される磁極の周方向における幅又はその幅より僅かに広い間隔とすることにより、その伸長部が挿入されるスロットや磁極と過度に擦れるようなことはない。よって、その擦れに起因して線材にダメージが与えられるようなこともない。そして、そのスロットに進入するのは線材のみであるので、その線材が挿入されるスロットの幅が狭く、そのスロットにノズルが進入不能な場合であっても、複数回巻回された線材にダメージを与えることなくその線材をスロットに挿入して、その複数回巻回された線材から成るコイルを確実に磁極に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明実施形態の巻線装置を示す斜視図である。
図2】その巻線装置の正面図である。
図3】その巻線装置の右面図である。
図4図2のB−B線断面図である。
図5図3のA−A線断面図である。
図6】その一対の係止爪に線材が巻回された状態を示す正面図である。
図7】その一対の係止爪に巻回された線材から成るコイルを示す図6のC−C線断面図である。
図8】その巻回された線材から成るコイルがスロットに挿入される状態を示す図7のD−D線断面図である。
図9】その一対の第一係止爪に線材が巻回される状態を示す斜視図である。
図10】その一対の第一係止爪に巻回された線材がスロットに挿入される状態を示す図9に対応する斜視図である。
図11】巻回された線材から一対の第二係止爪を引き抜く状態を示す斜視図である。
図12】その一対の第二係止爪に線材が巻回される状態を示す斜視図である。
図13】その一対の第二係止爪に巻回された線材がスロットに挿入される状態を示す図12に対応する斜視図である。
図14】巻回された線材から一対の第一係止爪を引き抜く状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図3に本発明の巻線装置100を示す。この巻線装置100は、モータやレゾルバ,又は発電機を構成する多極電機子1の複数の磁極2(図1)の周囲に線材3を巻線する装置である。この実施の形態における多極電機子1は、レゾルバに使用されるものであって、環状部1a(図1)と、この環状部1aから径方向外側に向かって放射状に突出した複数の磁極2とを備える。図8に示すように、この多極電機子1における各磁極2の間には線材3が挿入される真っ直ぐなスロット1bが開口してなり、その線材3が挿入されるスロット1bの幅wは線材3の外径dの倍の値より僅かに広く、2本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することはできるけれども、3本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することができないようなものとする。このスロット1bは環状部1aの中心軸に平行に真っ直ぐなものであるので、磁極2の断面は4角形を構成し、磁極2の外周面は平滑状の4平面からなるものとする。
【0020】
図1図3に戻って、この巻線装置100は、各部材が配置される基台5(図2)と、その基台5上に方形状に組まれて取付けられた支持台6と、この支持台6に取付けられて多極電機子1を回転させることによって磁極2を順次に巻線位置に送るインデックス機構7とを備える。図4に示すように、支持台6は間隔をあけて多極電機子1を挟むように設けられた一対の側板6a,6bと、その一対の側板6a,6bの端部を連結して方形状に組まれた端板6c,6dとを備える。各図にあっては、互いに直交するX,Y及びZの三軸を設定し、X軸が多極電機子1の軸方向である略水平横方向、Y軸がその多極電機子1の径方向である略水平前後方向、Z軸が多極電機子1の径方向であって上方に巻線が成される磁極2が位置する鉛直方向に延びるものとし、この巻線装置100の構成について説明する。
【0021】
図5に示すように、インデックス機構7は、多極電機子1をその軸方向を水平にして支持するものであり、支持台6に取付板8を介して固定されたインデックスモータ9と、そのインデックスモータ9の出力軸9aに連結され多極電機子1が取付けられるインデックス台11と、そのインデックス台11と同軸にそのインデックス台11に固定可能に構成されてそのインデックス台11と共に多極電機子1を挟む取付具12とを備える。多極電機子1は、環状部1a(図1)がインデックス台11に同軸に配置され、このように配置された多極電機子1を、取付ねじ12aを介して取付具12がインデックス台11と共に挟むことにより、多極電機子1はインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持される。
【0022】
このインデックス機構7では、多極電機子1がインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持されるので、インデックスモータ9が駆動すると、インデックス台11に支持された多極電機子1はその軸を中心として回転することになる。ここで、この巻線装置100では、中心軸を水平にして支持された多極電機子1のZ軸方向上方に位置する磁極2に巻線を行うものとし、その上方に位置する磁極2を巻線位置にある磁極2とする。そして、その巻線位置にある磁極2への巻線作業終了後には、インデックスモータ9が駆動することによって多極電機子1が回転し、次に巻線される磁極2がZ軸方向上方の巻線位置に送られるようになっている。このように、インデックス機構7は、多極電機子1の磁極2を巻線位置に順次に送るように構成される。
【0023】
本発明の巻線装置100は、多極電機子1の巻線位置にある磁極2に線材3が巻回されるように,環状に巻回された線材3を磁極2間のスロット1bに挿入するものであって、この実施の形態では、単一の磁極2の両側に形成されるスロット1bに環状に巻回された線材3が挿入される場合を示す。本発明の巻線装置100は、多極電機子1の軸方向であるX軸方向から磁極2を挟む間隔H(図2)を空けて設けられた一対の第一係止爪13,14を備える。この実施の形態では、単一の磁極2に線材3が巻回されるようにその磁極2の両側に形成されるスロット1bに環状に巻回された線材3が挿入される場合であるので、図4の拡大図に示すように、一対の第一係止爪13,14は、磁極2を挟んだ状態で、そのY軸方向における幅寸法Aが、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さか又は僅かに大きい長さに形成される。そして、一対の第一係止爪13,14は、その磁極2に対向する面が平面に形成され、磁極2と反対面は中央がX軸方向の外側に膨出するように湾曲して形成される。これにより、この一対の第一係止爪13,14は、その断面形状がD字状を成す棒状物から成る場合を示す。
【0024】
また、図2に示すように、本発明の巻線装置100は、一対の第一係止爪13,14を移動させる第一移動機構16,21を備える。この実施の形態における第一移動機構16,21は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ17〜19の組み合わせにより構成されて一方の第一係止爪13を三軸方向に移動させる右第一移動機構16と、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ22〜24の組み合わせにより構成されて他方の第一係止爪14を三軸方向に移動させる左第一移動機構21とを備える。右第一移動機構16と左第一移動機構21は対称構造を成すけれども、両者は同一構造に形成される。
【0025】
即ち、この実施の形態における第一移動機構16,21の伸縮アクチュエータ17〜19,22〜24は、細長い箱形ハウジング17d〜19d,22d〜24dと、そのハウジング17d〜19d,22d〜24d内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ17a〜19a,22a〜24aによって回動駆動されるボールネジ17b〜19b,22b〜24bと、このボールネジ17b〜19b,22b〜24bに螺合して平行移動する従動子17c〜19c,22c〜24c等によって構成される。そして、これらの伸縮アクチュエータ17〜19,22〜24は、サーボモータ17a〜19a,22a〜24aが駆動してボールネジ17b〜19b,22b〜24bが回転すると、このボールネジ17b〜19b,22b〜24bに螺合する従動子17c〜19c,22c〜24cがハウジング17d〜19d,22d〜24dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0026】
一対の第一係止爪13,14は、それぞれ第一移動板15,20を介して第一移動機構16,21に取付けられる。具体的に説明すると、この実施の形態では、第一係止爪13,14が設けられた第一移動板15,20をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ17,22のハウジング17d,22dに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ17,22とともにその第一移動板15,20をZ軸方向に移動可能に、その従動子17c,22cがL形ブラケット25を介してZ軸方向伸縮アクチュエータ18,23のハウジング18d,23dに取付けられる。また、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ18,23の従動子18c,23cをY軸方向伸縮アクチュエータ19,24の従動子19c,24cに取付け、そのX軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ17,18,22,23とともにその第一移動板15,20をY軸方向に移動可能に、そのY軸方向伸縮アクチュエータ19,24のハウジング19d,24dが支持台6における側板6a,6bにそれぞれ取付けられる。それらの各伸縮アクチュエータ17〜19,22〜24におけるX軸サーボモータ17a,22a、Y軸サーボモータ19a,24a及びZ軸サーボモータ18a.23aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
【0027】
また、図3図5に示すように、本発明の巻線装置100は、一対の第一係止爪13,14に隣接して磁極2を挟む間隔を空けて設けられた一対の第二係止爪33,34と、この一対の第二係止爪33,34を移動させる第二移動機構36,41とを更に備える。この一対の第二係止爪33,34は、一対の第一係止爪13,14と同一の断面形状に形成される。即ち、この一対の第二係止爪33,34にあっても、図4に示すように、その断面形状がD字状を成す棒状物から成り、磁極2を挟んだ状態で、そのY軸方向における幅寸法Aが、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又は僅かに大きな長さに形成される。ただし、そのZ軸方向における長さは一対の第一係止爪13,14と異なり、図3に示すように、この一対の第二係止爪33,34は、一対の第一係止爪13,14より長く形成される場合を示す。
【0028】
第二移動機構36,41にあっては、前述した第一移動機構16,21と同一構造のものが用いられる。即ち、図5に示すように、第二移動機構36,41は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ37〜39の組み合わせにより構成されて、一方の第二係止爪33を三軸方向に移動させる右第二移動機構36と、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ42〜44の組み合わせにより構成されて他方の第二係止爪34を三軸方向に移動させる左第二移動機構41とを備える。一対の第二係止爪33,34は第二移動板35,40を介して各第二移動機構36,41を構成するX軸方向伸縮アクチュエータ37,42のハウジング37d,42dにそれぞれ取付けられる。この右第二移動機構36と左第二移動機構41は対称構造を成して同一構造をなし、前述した右第一移動機構16と左第一移動機構21と同一構造のものであるので、ここにおける繰返しての説明を省略する。
【0029】
このような構成により、図2に示す第一移動機構16,21及び図5に示す第二移動機構36,41は、図示しないコントローラからの指令により、第一移動板15,20及び第二移動板35,40とともに、一対の第一係止爪13,14及び一対の第二係止爪33,34を、基台5に対して三軸方向に任意に移動可能に構成される。このため、第一移動機構16,21は、一対の第一係止爪13,14を三軸方向に移動させて、少なくとも後述するフライヤが線材3を巻回させる位置から、磁極2を挟む位置にまで移動させて、一対の第一係止爪13,14の間に張設された線材3をスロット1bに挿通させるように構成される(図9及び図10)。また、この第二移動機構36,41は、一対の第二係止爪33,34を三軸方向に移動させて、少なくとも後述するフライヤが線材3を巻回させる位置から、磁極2を挟む位置にまで移動させて、一対の第二係止爪33,34の間に張設された線材3をスロット1bに挿通させるように構成される(図12及び図13)。
【0030】
ここで、図4に示すように、一対の第一係止爪13,14が取付けられた第一移動板15,20と、一対の第二係止爪33,34が取付けられた第二移動板35,40の形状は異なる。即ち、第一移動板15,20及び第二移動板35,40は、各移動機構16,21,36,41のX軸方向伸縮アクチュエータ17,22,37,42のハウジング17d,22d,37d,42dに基端が取付けられる本体板15a,20a,35a,40aをそれぞれ備える。けれども、第一移動板15,20はその本体板15a,20aの先端から、多極電機子1に向かってX軸方向に延びる延長部15b,20bが形成され、その延長部15b,20bの先端に一対の第一係止爪13,14がZ軸方向に延びて取付けられる。これに対して、第二移動板35,40はその本体板35a,40aの先端から、多極電機子1の周方向に向かってY軸方向に延びる直交部35b,40bが形成され、その直交部35b,40bの先端に一対の第二係止爪33,34がZ軸方向に延びて取付けられる。
【0031】
また、図1図3に示すように、本発明の巻線装置100は、一対の第一係止爪13,14の周囲又は一対の第二係止爪33,34の周囲を回動しながら線材3を繰り出してその一対の第一係止爪13,14又は一対の第二係止爪33,34に対して線材3を掛け回すように巻回するフライヤ51を備える。この実施の形態におけるフライヤ51は、巻線位置にある磁極2、即ち、中心軸を水平にして支持された多極電機子1のZ軸方向上方に位置する磁極2に上方から対向し、駆動モータ52により鉛直軸を中心に一対の第一係止爪13,14の周囲又は一対の第二係止爪33,34の周囲で回転し、線材3を繰り出してその一対の第一係止爪13,14又は一対の第二係止爪33,34にその線材3を掛け回すように巻回するものである。
【0032】
具体的に、この実施の形態におけるフライヤ51は、図5に詳しく示すように、支持部53に枢支されたシャフト部51aと、そのシャフト部51aの多極電機子1に臨む下端部に基端が接続されその多極電機子1に臨む下端がラッパ状に広がったフライヤ部51bとを備える。フライヤ部51bの広がった下端にはシャフト部51aの回転軸を対称線とする対称位置に線材3を転向させる小プーリ51dが外側に向かってそれぞれ設けられ、一方の小プーリ51dの近傍にはその小プーリ51dにより転向した線材3を巻線位置にある磁極2方向に案内するノズル51eが傾斜して設けられる。他方の小プーリ51dの近傍には、回転軸を対称線とする先のノズル51eの対称位置に、そのノズル51eと同形同大のダミーノズル51gが同様に傾斜して設けられる。これによりフライヤ51は、そのフライヤ51の回転軸を含む断面が、その回転軸を対称線とする対称構造を成すように形成される。
【0033】
支持部53は支持台6における端板6c,6dと平行な鉛直板54に立設され、フライヤ51におけるシャフト部51aの中心軸が巻線位置にある磁極2のZ軸方向上方に位置するようにそのシャフト部51aが支持部53の支持孔53aに貫通され、ベアリング55を介してフライヤ51はシャフト部51aの中心軸を回転軸として回転自在に支持される。シャフト部51aには、その中心軸にガイド筒51cが貫通して固定される。このガイド筒51cには、図示されない線材源からの線材3が導入され、巻線位置にある磁極2に臨む先端から繰り出されて一方の小プーリ51dに向かうように構成される。このガイド筒51cの先端と一方の小プーリ51dを連結するフライヤ部51dには、この線材3を通過させる通過孔51fが形成され、ガイド筒51cの先端から繰り出された線材3はこの通過孔51fを通過した後一方の小プーリ51dにおいて転向し、ノズル51eを通過して一対の第一係止爪13,14の周囲又は一対の第二係止爪33,34の周囲に供給可能に構成される。
【0034】
シャフト部51aの基端には、シャフト部51aの中心軸に中心軸が一致する第一プーリ56が取付けられ、それらの中心軸に平行な回転軸52aを有する駆動モータ52がフライヤ51に隣接して設けられる。この駆動モータ52は鉛直板54に立設された固定板57に取付けられ、その回転軸52aに第二プーリ58が取付けられる。そして、第一プーリ56と第二プーリ58の間にベルト59が掛け回される。駆動モータ52には、図示しないコントローラの制御出力が接続され、そのコントローラからの指令により駆動モータ52が駆動してその回転軸52aが第二プーリ58とともに回転すると、その回転はベルト59により第一プーリ56に伝達され、その第一プーリ56が設けられたフライヤ51が回転するように構成される。
【0035】
図3に示すように、フライヤ51は支持台6にフライヤ移動手段61を介して移動可能に取付けられる。フライヤ移動手段61は、上述した各種移動機構16,21,36,41と同一構造であって、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ62〜64の組み合わせにより構成される。具体的に、この実施の形態では、フライヤ51が設けられた鉛直板54をZ軸方向に移動可能にZ軸方向伸縮アクチュエータ62のハウジング62dに取付け、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ62とともにその鉛直板54をY軸方向に移動可能に、その従動子62cがL形ブラケット65を介してY軸方向伸縮アクチュエータ63のハウジング63dに取付けられる。また、そのY軸方向伸縮アクチュエータ63の従動子63cをX軸方向伸縮アクチュエータ64の従動子64cに取付け、そのY軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ62,63とともにその鉛直板54をX軸方向に移動可能に、そのX軸方向伸縮アクチュエータ64のハウジング64dが支持台6に台座66を介して取付けられる。それらの各伸縮アクチュエータ62〜64におけるZ軸サーボモータ62a、Y軸サーボモータ63a及びX軸サーボモータ64aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、このフライヤ移動手段61はコントローラからの指令により、各伸縮アクチュエータ62〜64が駆動して、鉛直板54とともにフライヤ51を基台5に対して三軸方向に任意に移動可能に構成される。
【0036】
次に、上記巻線装置を用いた本発明における巻線方法を説明する。
【0037】
本発明における巻線方法は、多極電機子11を回転させることによって磁極22を巻線位置に送る第一インデックス工程と、図9に示すように、その多極電機子11の外側において一対の第一係止爪13,14に対して線材3を掛け回すように巻線する第一巻線工程と、図10に示すように、その一対の第一係止爪13,14を移動させて一対の第一係止爪13,14に巻回された巻線を巻線位置にある磁極2に嵌入させる第一嵌入工程とが繰返される方法である。
【0038】
けれども、第一嵌入工程の後又はその第一嵌入工程と共に多極電機子11を回転させることによって新たな磁極22を巻線位置に送る第二インデックス工程と、図12に示すように、多極電機子11の外側において一対の第二係止爪33,34に対して線材3を掛け回すように巻線する第二巻線工程と、図13に示すように、その一対の第二係止爪33,34を移動させて一対の第二係止爪33,34に巻回された巻線を巻線位置にある磁極2に嵌入させる第二嵌入工程とを更に含ませることもできる。この場合、第二嵌入工程の後又は第二嵌入工程と共に第一インデックス工程が行われることになる。以下に各工程を詳説するけれども、各工程における巻線装置100の動作は、巻線装置100に搭載された図示しないコントローラによって自動制御されるものとする。
【0039】
先ず、巻線を行う前の準備として、多極電機子1をインデックス機構7により支持させる。具体的には、図5に示すように、多極電機子1の環状部1aをインデックス台11に同軸に配置し、取付ねじ12aを介して取付具12をインデックス台11に取付けることにより、取付具12とインデックス台11により多極電機子1を挟む。このようにして、多極電機子1をインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持する。
【0040】
その後、第一インデックス工程が行われ、この第一インデックス工程では、インデックス機構7におけるインデックスモータ9を駆動して、その支持された多極電機子11を回転させ、巻線すべき磁極22をZ軸方向上方の巻線位置に送る。具体的には、巻線すべき磁極2をZ軸方向上方に位置させて、フライヤ51の回転軸方向に一致させる。図示しないが、このような多極電機子1の巻線位置への位置合せは、磁極2近傍に設けたセンサ等の図示しない検知器を用いて磁極2の位置を検出し、その検出した情報を基に行うことができる。そして、最初の巻線にあっては、フライヤ移動手段61によりフライヤ51を移動させて、線材3が供給されるノズル51eを多極電機子1における図示しない絡げピンの周囲に周回させ、そのノズル51eから繰り出される線材3をその絡げピンに絡げておく。
【0041】
次に、第一巻線工程が開始される。この第一巻線工程にあっては、先ず、図6及び図9に示すように、第一移動機構16,21により一対の第一係止爪13,14をそれぞれ移動させて、その一対の第一係止爪13,14が巻線位置にある磁極2、即ち、中心軸を水平にして支持された多極電機子1のZ軸方向上方に位置する磁極2を、多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔H(図7)とする。そして、第一移動機構16,21により、その一対の第一係止爪13,14を多極電機子11の外側、即ち、Z軸方向上方にまでそれぞれ移動させる。その後、駆動モータ62によりフライヤ51を図6の実線矢印で示すように回転させ、これによりフライヤ51におけるノズル51eから繰り出される線材13を、多極電機子1の外側において、一対の第一係止爪13,14に対して掛け回すように巻線する。
【0042】
この実施の形態では、線材3が挿入されるスロット1bの幅w(図8)は、3本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することができないものである。このため、第一巻線工程において、フライヤ51が1回転する毎にフライヤ移動手段61は、そのフライヤ51をZ軸方向に線材3の直径dに相当する量だけ移動させて、一対の第一係止爪13,14に対して線材3をZ軸方向に隣接させつつ巻回し、その線材3が径方向、即ち、X軸方向やY軸方向に重なるようなことを防止する。
【0043】
このように、磁極2を軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔Hとされた一対の第一係止爪13,14に線材3を掛け回すように巻線すると、図7に示すように、その巻回された線材3から成るコイル4は、第一係止爪13,14にそれぞれ掛け回される円弧部4a,4bと、その円弧部4a,4bの両端部から連続して一対の第一係止爪13,14の間で真っ直ぐに伸びる互いに平行な一対の伸長部4c,4dとを有することになる。また、図7に示すように、磁極2を挟む一対の第一係止爪13,14のY軸方向における幅寸法Aは、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又はそれよりも僅かに広い長さに形成されているので、図8に示すように、巻回された線材3から成るコイル4の伸長部4c,4dの間隔Aは、磁極2の周方向における幅B又はそれよりも僅かに広い間隔を空けて互いに平行なものとなる。
【0044】
次に、第一嵌入工程が行われる。この第一嵌入工程では、一対の第一係止爪13,14をZ軸方向下方に移動させて、一対の第一係止爪13,14に巻回された巻線を巻線位置にある磁極2に嵌入させる。具体的には、図8及び図10に示すように、第一移動機構16,21(図2)により、その一対の第一係止爪13,14を、多極電機子11の外側から巻線位置の磁極2を挟む位置まで、その一対の第一係止爪13,14に巻回された線材3からなるコイル4と共に移動させる。そして、図8の実線矢印で示すように、少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けて互いに平行に設けられたコイル4の伸長部4c,4dを、巻線位置にある磁極2の両側におけるスロット1bにそれぞれ挿入させる。これにより、その巻線位置にある磁極2の周囲に巻回された線材3から成るコイル4を変形させることなく嵌入することが可能になる。このように、本発明では、そのコイル4の嵌入時において、コイル4を変形させないので、巻回された線材が描く環状を細長く変形させる従来のインサータ方式に比較して、線材3が延びてしまうおそれはない。
【0045】
また、コイル4の伸長部4c,4dは、少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けて互いに平行なものであり、その伸長部4c,4dは、少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けた状態で、多極電機子1の径方向に移動してスロット1bに挿入されるので、その線材11がそのスロット1bや磁極2に過度に擦れるようなことはない。このため、線材3にダメージが与えられるようなこともない。そして、この実施の形態では、その線材3が挿入されるスロット1bの幅w(図8)が狭いものであるけれども、上記第一巻線工程において、一対の第一係止爪13,14に対して線材3をZ軸方向に隣接させつつ巻回することにより、この第一嵌入工程において、複数回巻回された線材3を、そのスロット1bの幅方向に重なることなく挿入することが可能になる。
【0046】
次に、第二インデックス工程が行われる。この第二インデックス工程は、上述した第一嵌入工程の後又はその第一嵌入工程と共に行われる。この第二インデックス工程では、多極電機子11を回転させることによって新たな磁極22を巻線位置に送る。具体的には、インデックス機構7におけるインデックスモータ9を駆動してその支持された多極電機子11を回転させ、新たに巻線すべき磁極22をZ軸方向上方の巻線位置に送る。この実施の形態では、単一の磁極2に線材3が巻回されるので、先の第一嵌入工程においてコイル4が嵌入された磁極2に隣接する磁極2を巻線位置に案内するものとし、図12では、コイル4が嵌入された磁極2が一点鎖線矢印で示すように移動するものとする。
【0047】
ここで、この第二インデックス工程が前述した第一嵌入工程と共に行われる場合には、その第一嵌入工程において、第一移動機構16,21は、一対の第一係止爪13,14を、多極電機子11の外側から巻線位置の磁極2を挟む位置まで移動させると共に、その一対の第一係止爪13,14を、周方向に移動する磁極2とともに移動させて、その磁極2との周方向における相対的な位置関係が変動することを防止することになる。このような第二インデックス工程により、新たな磁極2が巻線位置に達することになり、その後、第二巻線工程が行われる。そして、この第二巻線工程及びその後の第二嵌入工程の時に、一対の第一係止爪13,14を第一嵌入工程においてコイル4を嵌入させた磁極2の多極電機子1の軸方向の両側から挟む位置に維持させる。
【0048】
この第二巻線工程では、多極電機子11の外側において一対の第二係止爪33,34に対して線材3を掛け回すように巻線する。この第二巻線工程にあっては、先ず、図7及び図12に示すように、第二移動機構36,41(図5)により一対の第二係止爪33,34をそれぞれ移動させて、その一対の第二係止爪33,34が巻線位置の磁極2、即ち、先の第一嵌入工程においてコイル4が嵌入された磁極2に隣接する磁極2であって、第二インデックス工程において新たに多極電機子1のZ軸方向上方に位置するようになった磁極2を、多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔とする。このとき、第二移動機構36,41は、図12の実線矢印で示すように、一対の第二係止爪33,34をZ軸方向に移動させて、一対の第一係止爪13,14が取付けられた移動板15,20における延長部15b,20bに一対の第二係止爪33,34が衝突するような事態を回避しつつ移動させる。そして、そのような衝突を回避しつつ、一対の第二係止爪33,34を巻線位置の磁極2の多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔とする。
【0049】
そして、第二移動機構36,41(図5)により、その一対の第二係止爪33,34を多極電機子11の外側、即ち、Z軸方向上方にまでそれぞれ移動させる。その後、駆動モータ62によりフライヤ51を回転させ、そのノズル51eから繰り出される線材13を、多極電機子1の外側において、一対の第二係止爪33,34に対して掛け回すように巻線する。この第二巻線工程におけるフライヤ51の回転方向は上述した第一巻線工程におけるフライヤ51の回転方向と逆方向であり、図7に、このフライヤ51におけるノズル51eを一点鎖線で示す。そして、この第二巻線工程においても、フライヤ51が1回転する毎にフライヤ移動手段61は、そのフライヤ51をZ軸方向に線材3の直径dに相当する量だけ移動させて、一対の第二係止爪33,34に対して線材3をZ軸方向に隣接させつつ巻回し、その線材3が径方向、即ち、X軸方向やY軸方向に重なるようなことを防止する。
【0050】
次に第二嵌入工程が行われる。この第二嵌入工程では、一対の第二係止爪33,34を移動させて、一対の第二係止爪33,34に巻回された巻線を巻線位置にある磁極2に嵌入させる。ここで、磁極2を軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔とされた一対の第二係止爪33,34に掛け回すように巻線された線材3から成るコイル4にあっても、図7に示すように、一対の第二係止爪33,34にそれぞれ掛け回される円弧部4a,4bと、その円弧部4a,4bの両端部から連続して一対の第二係止爪33,34の間で真っ直ぐに伸びる互いに平行な一対の伸長部4c,4dとを有することになる。また、磁極2を挟む一対の第二係止爪33,34のY軸方向における幅寸法Aは、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又はそれよりも僅かに広い長さに形成されているので、巻回された線材3から成るコイル4の伸長部4c,4dは、磁極2の周方向における幅Bを空けて互いに平行なものとなる。
【0051】
このため、図13に示すように、この第二嵌入工程において、その一対の第二係止爪33,34を、多極電機子11の外側から巻線位置の磁極2を挟む位置までコイル4と共に移動させると、図8に実線矢印で示すように、磁極2の周方向における幅B又はそれよりも僅かに広い間隔を空けて互いに平行に設けられたコイル4の伸長部4c,4dは、巻線位置にある磁極2の両側におけるスロット1bにそれぞれ挿入されることになる。これにより、この第二嵌入工程にあっても、その巻線位置にある磁極2の周囲に巻回された線材3から成るコイル4を変形させることなく嵌入することが可能になる。よって、この第二巻入工程におけるコイル4の嵌入時においても、コイル4を変形させないので、巻回された線材が描く環状を細長く変形させる従来のインサータ方式に比較して、線材3が延びてしまうおそれは無い。
【0052】
また、コイル4の伸長部4c,4dは、磁極2の周方向における幅B又はそれよりも僅かに広い間隔を空けて互いに平行なものであり、その伸長部4c,4dはその間隔を保ちつつ多極電機子1の径方向に移動してスロット1bに挿入されるので、その線材11がそのスロット1bや磁極2に過度に擦れるようなことはない。このため、線材3にダメージが与えられるようなこともない。そして、この実施の形態では、その線材3が挿入されるスロット1bの幅w(図8)が狭いものであるけれども、上記第二巻線工程において、一対の第二係止爪33,34に対して線材3をZ軸方向に隣接させつつ巻回することにより、この第二嵌入工程において、複数回巻回された線材3から成るコイル4を、そのスロット1bの幅方向に重なることなく挿入することが可能になる。
【0053】
そして、この第二嵌入工程の時に、一対の第一係止爪13,14を第一嵌入工程において巻線を嵌入させた磁極2の多極電機子1の軸方向の両側から挟む位置に維持させるので、その巻線は一対の第一係止爪13,14に掛け回された状態で維持される。このため、第一嵌入工程においてスロット1bに挿入された線材3は、そのスロット1bに挿入された真っ直ぐな状態が維持され、その線材3がスロット1bの中で撓むようなことはない。よって、この第二嵌入工程において、複数回巻回された線材3を、そのスロット1bに挿入することに対して、先に挿入された線材3がその挿入先を塞ぐようなことはなく、隣接する磁極2に既にコイル4が嵌入されていても、比較的容易にその線材3をスロット1bに挿入することが可能になる。
【0054】
この第二嵌入工程の後又はその第二嵌入工程と共に先に説明した第一インデックス工程が再び行われ、上述した各工程は上記順番で順次繰返される。この繰返される新たな第一インデックス工程では、多極電機子11を再び回転させることによって新たな磁極22を巻線位置に送ることになる。ここで、再び行われる新たな第一インデックス工程が前述した第二嵌入工程と共に行われる場合には、その第二嵌入工程において、第二移動機構36,41(図5)は、一対の第二係止爪33,34を、多極電機子11の外側から巻線位置の磁極2を挟む位置まで移動させると共に、その一対の第二係止爪33,34を、周方向に移動する磁極2とともに移動させて、その磁極2との周方向における相対的な位置関係が変動することを防止することになる。
【0055】
また、第二嵌入工程の時に磁極2の多極電機子1の軸方向の両側から挟む位置に一対の第一係止爪13,14をコイル4と共に維持させた。けれども、再び繰返される新たな第一巻線工程では、図14の実線矢印で示すように、第一移動機構16,21(図2)により、その一対の第一係止爪13,14を多極電機子1の中心軸方向に移動させて、そのコイル4をスロット1bに残存させるとともに、そのコイル4から一対の第一係止爪13,14を引き抜く。その後、図9の実線矢印で示すように、第一移動機構16,21(図2)は一対の第一係止爪13,14をX軸方向に移動させることにより、その一対の第一係止爪13,14が一対の第二係止爪33,34と衝突するような事態を回避する。そして、そのような衝突を回避しつつ、その一対の第一係止爪13,14を巻線位置の磁極2を多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔とする。
【0056】
また、再び繰返される新たな第一巻線工程及び第一嵌入工程の時に、一対の第二係止爪33,34を第二嵌入工程においてコイル4を嵌入させた磁極2の多極電機子1の軸方向の両側から挟む位置に維持させる。これにより、その巻線2は一対の第二係止爪33,34に掛け回された状態で維持される。このため、第二嵌入工程においてスロット1bに挿入された線材3は、そのスロット1bに挿入された真っ直ぐな状態が維持され、その線材3がスロット1bの中で撓むようなことはない。よって、繰返される第一嵌入工程において、複数回巻回された線材3を、そのスロット1bに挿入することに対して、先に挿入された線材3がその挿入先を塞ぐようなことはなく、隣接する磁極2に既にコイル4が嵌入されていても、比較的容易にその線材をスロット1bの奥にまで確実に挿入することが可能になる。
【0057】
また、再び行われる第一嵌入工程の時に磁極2の多極電機子1の軸方向の両側から挟む位置に一対の第二係止爪33,34をコイル4と共に維持させる。けれども、再び繰返される新たな第二巻線工程では、図11に示すように、第二移動機構36,41(図5)により、その一対の第二係止爪33,34を多極電機子1の中心軸方向に移動させて、そのコイル4をスロット1bに残存させるとともに、そのコイル4から一対の第二係止爪33,34を引き抜く。その後、第二移動機構36,41は、図12の実線矢印で示すように、一対の第二係止爪33,34をZ軸方向に移動させて、一対の第一係止爪13,14が取付けられた移動板15,20における延長部15b,20bに一対の第二係止爪33,34が衝突するような事態を回避する。そして、そのような衝突を回避しつつ、一対の第二係止爪33,34を巻線位置の磁極2の多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて挟むような間隔とすることになる。
【0058】
そして、上述した各工程を順次繰返し、多極電機子1における全ての磁極2にコイル4が嵌入された状態で巻線作業は終了することになる。
【0059】
なお、上述した実施の形態では、単一の磁極2の周方向における両側に形成されるスロット1bに環状に巻回された線材3が挿入されて、環状に巻回された線材3から成るコイル4が単一の磁極の周囲に巻回される場合を示した。そのために、一対の第一係止爪13,14及び一対の第二係止爪33,34のY軸方向における幅寸法Aが、磁極2の周方向における幅Bと同じ又はそれよりも僅かに広い長さであるとした。けれども、環状に巻回された線材3から成るコイル4は、単一の磁極2の周囲に巻回されるものに限定されるものではなく、複数の磁極2の周囲に巻回される、いわゆる分布巻きであっても良い。このように、複数の磁極2の周囲に線材3を巻回させる、いわゆる分布巻きの場合は、線材3が巻回される一対の第一係止爪13,14及び一対の第二係止爪33,34が、磁極2を挟んだ状態で、そのY軸方向における幅寸法Aを、その巻回しようとする複数の磁極2の周方向における全体の幅と同じ長さ又はそれよりも僅かに長い長さに形成する。これにより、環状に巻回された線材3から成るコイル4を、複数の磁極2の周囲に巻回させる、いわゆる分布巻きが可能となる。
【0060】
また、上述した実施の形態では、レゾルバに使用される多極電機子1であって、環状部1aから径方向外側に向かって複数の磁極2が放射状に突出したものを用いて説明したけれども、本発明における巻線の対象である多極電機子は、レゾルバのものに限られず、モータ用のものであっても良い。また、その多極電機子1は、図示しないが、環状部から径方向内側に向かって複数の磁極が中心に向かって突出したようなものであっても良い。
【0061】
また、上述した実施の形態では、環状部1aの中心軸に平行に真っ直ぐなスロット1bを有する多極電機子1を用いて説明したけれども、そのスロット1bが真っ直ぐである限り、その多極電機子1を捩ってスロット1bを互いに平行にしつつ傾斜させた、いわゆるスキューされた多極電機子1であっても良い。このようにスキューされた多極電機子1であっても、そのスロット1bが真っ直ぐであれば、線材にダメージを与えることなく、巻回された線材から成るコイルを多極電機子の磁極に形成することができる。
【0062】
更に、上述した実施の形態では、スロット1bの幅wが、2本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することはできるけれども、3本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することができないものとして説明したけれども、このスロットの幅wは、2本の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することはできれば、3本以上の線材3がそのスロット1bの幅方向に重なった状態で挿入することができるようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 多極電機子
1b スロット
2 磁極
3 線材
7 インデックス機構
13,14 第一係止爪
16,21 第一移動機構
33,34 第二係止爪
36,41 第二移動機構
51 フライヤ
100 巻線装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14