特許第5936273号(P5936273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5936273肝実質細胞中のP450タンパク質のアイソフォームの質量分析による定量
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936273
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】肝実質細胞中のP450タンパク質のアイソフォームの質量分析による定量
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/04 20060101AFI20160609BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20160609BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20160609BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20160609BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C12N9/04 ZZNA
   G01N33/68
   G01N33/15 Z
   G01N27/62 V
   G01N27/62 X
   C12Q1/26
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-534356(P2012-534356)
(86)(22)【出願日】2010年10月14日
(65)【公表番号】特表2013-507924(P2013-507924A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010052665
(87)【国際公開番号】WO2011047150
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】61/252,430
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/252,648
(32)【優先日】2009年10月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン, ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】プルカヤスタ, スバシシュ
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−085103(JP,A)
【文献】 特表2007−538262(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0092926(US,A1)
【文献】 Journal of Chromatography B,2008年,vol.871,pp.78-89
【文献】 Anal. Bioanal. Chem.,2008年,vol.392,pp.1123-1134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00−9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のチトクロームP450(CYP)の少なくとも1つのアイソフォームの量を決定するための方法であって、質量分析法技術の使用を含み、チトクロームP450の前記少なくとも1つのアイソフォームはCYP1A2を含み、ここで、前記決定は、配列番号8〜配列番号10、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に対して特異的な少なくとも1つの単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYPアイソフォームの量を決定することを含み、前記方法は、三連四重極型装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いること、そして、前記配列のうちの少なくとも1つのプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含み、ここで、+/−1原子質量単位の範囲内の前記プレカーサー−プロダクトイオン対のm/z値は以下:
配列番号8について432/636、432/535もしくは432/478、
配列番号9について482/800、482/628もしくは482/743、
配列番号10について491/721、491/834もしくは491/535、または
配列番号13について695/695、695/837もしくは695/950
である、方法
【請求項2】
CYP2B6、CYP3A4、および/またはCYP3A5の量を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
配列番号11、配列番号12、または配列番号14のアミノ酸配列を含むペプチドを検出することをさらに含む、請求項1〜2のいずれかに記載の方法であって、ここで、+/−1原子質量単位の範囲内の前記プレカーサー−プロダクトイオン対のm/z値は以下:
配列番号11について528/501、528/614もしくは528/727、
配列番号12について571/783、571/971、571/1028、381/587、381/474もしくは381/375、または
配列番号14について536/795、536/584もしくは536/698
である、方法
【請求項4】
前記質量分析法技術はタンデム質量分析法(MS/MS)技術、または液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC−MS/MS)技術を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記決定は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6に特異的な少なくとも1つの単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP2B6の量を決定することを含む、請求項2〜4のいずれかに記載の方法であって、ここで、+/−1原子質量単位の範囲内の前記プレカーサー−プロダクトイオン対のm/z値は以下
配列番号1について548/911、548/681もしくは548/566、
配列番号2について494/777、494/437もしくは494/874、
配列番号3について421/508、421/607もしくは421/694、または
配列番号4について479/499、479/614もしくは479/727
である、方法
【請求項6】
前記決定は、配列番号5、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A4に特異的な単離された少なくとも1つのペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP3A4の量を決定することを含む、請求項2〜4のいずれかに記載の方法であって、ここで、+/−1原子質量単位の範囲内の前記プレカーサー−プロダクトイオン対のm/z値は以下
配列番号5について440/549、440/650もしくは440/532、
配列番号6について704/794、704/929、564/689、564/745もしくは564/790、または
配列番号7について798/819、798/932もしくは798/1004
である、方法
【請求項7】
前記決定は、配列番号15、配列番号16または配列番号17のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A5に特異的な単離された少なくとも1つのペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP3A5の量を決定することを含む、請求項2〜4のいずれかに記載の方法であって、ここで、+/−1原子質量単位の範囲内の前記プレカーサー−プロダクトイオン対のm/z値は以下
配列番号15について468/581、468/679もしくは468/736、
配列番号16について470/494、470/608もしくは470/722、または
配列番号17について589/747、589/696もしくは589/647
である、方法
【請求項8】
チトクロームP450(CYP)誘導について薬物をスクリーニングするための方法であって、
前記薬物を、ミクロソームを含む生物学的サンプルとインキュベートすること、
請求項1〜7のいずれかに記載の方法を用いた液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC−MSMS)を用いて少なくとも1つのチトクロームP450アイソフォームを定量すること、
定量された値を閾値と比較すること、および
前記定量された値が前記閾値を超えない場合、前記薬物が許容可能なCYP誘導能を有するものと決定すること
を含み、ここで、前記少なくとも1つのチトクロームP450アイソフォームは、CYP1A2を含み、前記定量は、配列番号8〜配列番号10、または配列番号13のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に対して特異的な少なくとも1つの単離されたペプチドを定量することを含む、方法。
【請求項9】
CYP2B6、CYP3A4、および/またはCYP3A5を定量することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ミクロソームを含む生物学的サンプルはヒトに由来する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法にしたがってサンプル中のチトクロームP450(CYP)の少なくとも1つのアイソフォームの量を決定するため、または請求項8〜10のいずれかに記載の方法にしたがってチトクロームP450(CYP)誘導について薬物をスクリーニングするためのキットであって、配列番号8〜10、および13のアミノ酸配列の1つまたは複数を含む、CYPアイソフォームCYP1A2に特異的な1つまたは複数の単離されたペプチドを含む、キット。
【請求項12】
配列番号11、配列番号12、または配列番号14のアミノ酸配列をさらに含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP2B6に特異的な1つまたは複数の単離されたペプチドをさらに含む、請求項11または12に記載のキット。
【請求項14】
配列番号5、配列番号6または配列番号7の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP3A4に特異的な1つまたは複数の単離されたペプチドをさらに含む、請求項11〜13のいずれかに記載のキット。
【請求項15】
配列番号15、配列番号16または配列番号17の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP3A5に特異的な1つまたは複数の単離されたペプチドをさらに含む、請求項11〜14のいずれかに記載のキット。
【請求項16】
前記キットを用いてアッセイを実施するための説明書を含み、前記説明書が、質量分析機器の設定として使用されるトランジション対に関する情報を含む、請求項11〜15のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年10月17日に出願された米国仮特許出願第61/252,648号および2009年10月16日に出願された同第61/252,430号(これらの両方は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の最先出願日の利益を主張する。
【0002】
本教示は、チトクロームP450酵素(CYP)、および質量分析法を用いた酵素の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
チトクロームP450酵素(CYP)は、薬物を代謝する主要な酵素であり、実験的医薬化合物は、開発プロセスの初期にそのCYP誘導能について評価されるのが一般である。化学物質に反応するCYP誘導プロファイルの測定については、薬物安全性評価の基本的な側面として使用することができるが、これらのタンパク質の発現は、転写機構、転写後機構および翻訳機構により調節されている。このため、mRNAを用いたアッセイは、CYP誘導の信頼性の高い予測指標ではない。さらに、CYPは、特にサブファミリー内で広範なアミノ酸配列相同性を示すため、P450タンパク質の発現法も識別力に乏しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本教示の種々の実施形態によれば、化学標識をまったく必要とせずにチトクロームP450酵素(CYP)の1A2アイソフォーム、2B6アイソフォーム、3A4アイソフォームおよび3A5アイソフォームを定量する方法を提供する。アイソフォーム特異的トリプシンペプチドについては、その最適なQ1およびQ3のトランジションと共に、肝実質細胞由来のサンプル、たとえば、ミクロソームを用いた液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析法(LC−MSMS)解析で観察することができる。こうした観察されたペプチドおよびトランジションを用いれば、アイソフォーム1A2、2B6、3A4および3A5の信頼性の高いCYP定量が可能になり得る。
【0005】
種々の実施形態によれば、ペプチドおよび最適なMRMトランジションのセットを、薬物とのインキュベーションにより濃度が影響されない「ハウスキーピング」ミクロソーム(microsomol)タンパク質として提供する。このセットは、定量解析のための補正タンパク質として使用してもよい。いくつかの実施形態では、アイソフォーム特異的ペプチドの重い形態、たとえば、C13および/またはN15で標識された形態をサンプルに添加することにより、定量化を行ってもよい。図1は、ヒトミクロソームのCYP1A2、CYP2B6およびCYP3A3/3A4の典型的なMRM解析を示し、図1ではアイソフォーム特異的ペプチドの一部を表示してある。以下の表1〜4に、本教示の種々の実施形態により観察された最も高感度のアイソフォーム特異的ペプチドのセットごとに最適化トランジションを示す。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6に特異的な単離されたペプチド。
(項目2)
配列番号5、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A4に特異的な単離されたペプチド。
(項目3)
配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に特異的な単離されたペプチド。
(項目4)
配列番号15、配列番号16または配列番号17のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A5に特異的な単離されたペプチド。
(項目5)
サンプル中のチトクロームP450(CYP)の少なくとも1つのアイソフォームの量を決定するための方法であって、質量分析法技術の使用を含み、チトクロームP450の前記少なくとも1つのアイソフォームはCYP2B6、CYP3A4、CYP1A2およびCYP3A5の少なくとも1つを含む、方法。
(項目6)
前記質量分析法技術はタンデム質量分析法(MS/MS)技術を含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記質量分析法技術は液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC−MS/MS)技術を含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記LC−MS/MS技術は三連四重極型装置、および多重反応モニタリング(MRM)の使用を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記決定は、三連四重極型装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いて、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP2B6の量を決定することを含む、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記単離されたペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記方法は約548/911、約548/681または約548/566のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記単離されたペプチドは配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記方法は約494/777、約494/437または約494/874のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記単離されたペプチドは配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記方法は約421/508、約421/607または約421/694のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記単離されたペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記方法は約479/499、約479/614または約479/727のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記決定は、三連四重極型装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いて、配列番号5、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A4に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP3A4の量を決定することを含む、項目5に記載の方法。
(項目15)
前記単離されたペプチドは配列番号5のアミノ酸配列を含み、前記方法は約440/549、約440/650または約440/532のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記単離されたペプチドは配列番号6のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約704/794、約704/929、約564/689、約564/745または約564/790のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記単離されたペプチドは配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約798/819、約798/932または約798/1004のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記決定は、三連四重極型装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いて、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP1A2の量を決定することを含む、項目5に記載の方法。
(項目19)
前記単離されたペプチドは配列番号8のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約432/636、約432/535または約432/478のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記単離されたペプチドは配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約482/800、約482/628または約482/743のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記単離されたペプチドは配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約491/721、約491/834または約491/535のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記単離されたペプチドは配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約528/501、約528/614または約528/727のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記単離されたペプチドは配列番号12のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約571/783、約571/971、約571/1028、約381/587、約381/474または約381/375のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記単離されたペプチドは配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約695/695、約695/837または約695/950のm/z値を有するプレカーサー−
プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記単離されたペプチドは配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記方法は、約536/795、約536/584または約536/698のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記決定は、三連四重極型装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いて、配列番号15、配列番号16または配列番号17のアミノ酸配列を含むチトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A5に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、前記サンプル中のCYP3A5の量を決定することを含む、項目5に記載の方法。
(項目27)
前記単離されたペプチドは配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記方法は約468/581、約468/679または約468/736のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記単離されたペプチドは配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記方法は約470/494、約470/608または約470/722のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記単離されたペプチドは配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記方法は約589/747、約589/696または約589/647のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含む、項目26に記載の方法。
(項目30)
チトクロームP450(CYP)誘導について薬物をスクリーニングするための方法であって、
前記薬物を、ミクロソームを含む生物学的サンプルとインキュベートすること、
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC−MSMS)を用いて2B6アイソフォーム、3A4アイソフォーム、1A2アイソフォームおよび3A5アイソフォームの群から選択される少なくとも1つのチトクロームP450アイソフォームを定量すること、
定量された値を閾値と比較すること、
前記定量された値が前記閾値を超えない場合、前記薬物が許容可能なCYP誘導能を有するものと決定すること
を含む、方法。
(項目31)
前記ミクロソームを含む生物学的サンプルはヒトに由来する、項目28に記載の方法。
(項目32)
配列番号1〜17のアミノ酸配列の1つまたは複数を含む、CYPアイソフォームCYP2B6、CYP3A4、CYP1A2またはCYP3A5に特異的な1つまたは複数の単離されたペプチドを含む、キット。
(項目33)
配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、項目32に記載のキット。
(項目34)
配列番号5、配列番号6または配列番号7の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、項目32に記載のキット。
(項目35)
配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、項目32に記載のキット。
(項目36)
配列番号15、配列番号16または配列番号17の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、項目32に記載のキット。
(項目37)
ホモジニアスアッセイを含む、項目32に記載のキット。
(項目38)
前記キットを用いてアッセイを実施するための質量分析機器の設定として使用されるトランジション対に関する情報を含む、項目32に記載のキット。
【0006】
本教示について、添付図面を参照しながら説明する。図面は、本教示を説明することを意図しており、本教示を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、20μgのミクロソーム調製物のCYP1A2、CYP2B6およびCYP3A4に関するMRM解析を示す(+MRM(412対)の抽出されたイオンクロマトグラム(XIC))。
図2図2は、1μlのミクロソーム調製物のCYP2B6に関するMRM解析を示す(+MRM(15対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。
図3図3は、2μgのミクロソーム調製物のCYP1A2に関するMRM解析を示す(+MRM(57対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。
図4図4は、1μlのミクロソーム調製物のCYP3A4に関するMRM解析を示す(+MRM(34対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。
図5図5Aは、30μlのミクロソーム調製物の3A5に関するMRM解析を示す(+MRM(48対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。図5Bは、30μlのミクロソーム調製物の3A5に関するMRM解析を示す(+MRM(48対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。図5Cは、30μlのミクロソーム調製物の3A5に関するMRM解析を示す(+MRM(48対)の抽出されたイオンクロマトグラム)。
図6図6は、RNAアッセイ、酵素活性アッセイ、および本教示のタンパク質定量法を用いて、CYP2B6の誘導剤で処理した肝細胞のサンプル調製物中で観察されたタンパク質発現の変化を示すグラフを示す。
図7図7は、RNAアッセイ、酵素活性アッセイ、および本教示のタンパク質定量法を用いて、CYP1A2の誘導剤で処理した肝細胞のサンプル調製物中で観察されたタンパク質発現の変化を示すグラフを示す。
図8図8は、RNAアッセイ、酵素活性アッセイ、および本教示のタンパク質定量法を用いて、CYP3A4の誘導剤で処理した肝細胞のサンプル調製物中で観察されたタンパク質発現の変化を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
種々の実施形態によれば、チトクロームP450(CYP)誘導について薬物をスクリーニングする方法であって、薬物を、ミクロソームを含む生物学的サンプルとインキュベートすること、および少なくとも1つのCYPアイソフォームを定量することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、アイソフォームは、2B6アイソフォーム、3A4アイソフォーム、1A2アイソフォームおよび3A5アイソフォームから選択される1つまたは複数のアイソフォームを含んでもよい。この方法は、各アイソフォームの量を定量するため、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC−MSMS)技術を使用することを含んでもよい。それぞれの定量された値を閾値と比較してもよく、定量された値が閾値を超えない場合、薬物を許容可能なCYP誘導能を有するものとして同定することができる。閾値については、所望のCYP誘導能に基づき選択するか、または事前に設定してもよいし、あるいは、スクリーニング対象の薬物に類似しているかまたは類似していない1種または複数種の異なる薬物のCYP誘導能に基づき選択するか、または事前に設定してもよい。いくつかの実施形態では、ミクロソームを含む生物学的サンプルは、哺乳動物由来でも、霊長類由来でも、またはヒト由来でもよい。
【0009】
種々の実施形態によれば、薬物を、ヒト肝実質細胞を含むサンプルとインキュベートしてもよい。いくつかの実施形態では、薬物とのインキュベーション後、ヒト肝実質細胞を含むサンプルを用いて、たとえば、16Gの遠心分離により少なくとも1つのミクロソーム画分を得てもよい。ミクロソーム画分は、CYPに特異的な単離されたペプチド(アイソフォーム特異的ペプチド)を検出することにより、薬物によるCYP誘導について解析することができる。いくつかの実施形態によれば、薬物とのインキュベーション後、ヒト肝実質細胞を含むサンプルを用いて、たとえば、9Gの遠心分離により少なくとも1つのS9画分を得てもよい。S9画分を解析して、たとえば、CYPに特異的な単離されたペプチド(アイソフォーム特異的ペプチド)を検出することにより、薬物によるCYP誘導を検出してもよい。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのCYPアイソフォームを定量するため、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC−MSMS)技術を用いてミクロソーム画分またはS9画分を解析してもよい。それぞれの定量された値を閾値と比較してもよく、定量された値が閾値を超えない場合、薬物を許容可能なCYP誘導能を有するものとして同定することができる。
【0010】
種々の実施形態によれば、肝実質細胞のCYPを直接解析する方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体ペプチドを用いて肝実質細胞(hepatocycte)からアイソフォーム特異的ペプチドを直接抽出してもよい。いくつかの実施形態によれば、抗体ペプチドを用いてアイソフォーム特異的ペプチドを肝実質細胞から直接抽出すれば、S9画分またはミクロソーム画分を調製する必要がなるという利点があり、薬物とのインキュベーションの際に必要とされる肝細胞が少なくなると考えられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、検出された誘導を対照と比較してすることを含む。たとえば、薬物によるCYPの誘導はほとんどないか、まったくないことが望ましいため、薬物が、許容可能と見なされるには、陽性対照と比較して必ず(<)40%未満の誘導を示すように閾値(threshold)を設定してもよい。いくつかの実施形態では、薬物は、許容可能と見なされるには、陽性対照と比較して(<)30%未満の誘導を示さなければならない。他の実施形態では、薬物が、許容可能と見なされるには、陽性対照と比較して(<)20%未満の誘導を示さなければならない。
【0012】
種々の実施形態によれば、サンプル中のチトクロームP450(CYP)の少なくとも1つのアイソフォームの量を決定するための方法を提供する。この方法は、質量分析法技術の使用を含んでもよく、チトクロームP450の少なくとも1つのアイソフォームは、CYP2B6、CYP3A4、CYP1A2およびCYP3A5の少なくとも1つを含む。質量分析法技術は、タンデム質量分析法(MS/MS)技術および/または液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC−MS/MS)技術を含んでもよい。いくつかの実施形態では、この技術は、LC−MS/MS技術と、三連四重極型質量分析装置および多重反応モニタリング(MRM)の使用とを含む。
【0013】
図1は、本実施例で下記のように調製されたミクロソームサンプル調製物のCYP1A2、CYP2B6およびCYP3A4のほか、「ハウスキーピング」ミクロソームタンパク質(ミクロソームGST、コルチコステロイド11βおよびミクロソームトリグリセリド(Tryglyceride))の典型的なMRM解析を示す。CYP1A2、CYP2B6およびCYP3A4の量は、たとえば、サンプル調製物に、アイソフォーム特異的ペプチドの重い形態を添加する同位体希釈質量分析法により決定してもよい。CYP1A2、CYP2B6およびCYP3A4の量は、当該技術分野において公知の他の従来の方法を用いて決定してもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、LC−MSMSを使用し、アイソフォーム特異的ペプチドおよび同位体コードアフィニティータグ(ICAT:isotope−coded affinity tag)を多重反応モニタリング(MRM)により定量してCYP誘導プロファイルを作製する。この方法は、たとえば、参照によってその全体を本明細書に援用するProteomics,6(6),pages 1934−1947(March 2006)に記載されているように、Pennington et al.により示された、ICATで標識したアイソフォーム特異的システインを含むペプチドを定量するアプローチと同様のアプローチを使用してもよい。
【0014】
図2は、本明細書に記載するように調製したミクロソーム調製物のCYP2B6の典型的なMRM解析を示す。以下の表1に記載の配列番号1、2、3または4のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドは、CYP2B6に特異的である。
【0015】
図3は、本明細書に記載するように調製したミクロソーム調製物のCYP1A2の典型的なMRM解析を示す。以下の表3に記載の配列番号8、9、10、11、12、13または14のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドは、CYP1A2に特異的である。
【0016】
図4は、本明細書に記載するように調製したミクロソーム調製物のCYP3A4の典型的なMRM解析を示す。以下の表2に記載の配列番号5、6または7のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドは、CYP3A4に特異的である。配列番号5、6または7のアミノ酸配列を含むペプチドを使用してCYP3A3を同定および/または定量してもよいことも理解すべきである。
【0017】
以下の表4に記載の配列番号15、16または17のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドは、CYP3A5に特異的である。
【0018】
図5A図5Cは、本明細書に記載するように調製したミクロソーム調製物のCYP3A5の3種の典型的なMRM解析の画面を示す。各画面は、個々のペプチドに使用される特定のトランジションに関する。配列番号15、16または17のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドは、CYP3A5に特異的である。
【0019】
種々の実施形態によれば、この方法は、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6に特異的な単離されたペプチド、たとえば、本明細書に記載の配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含むアイソフォームの1つまたは複数を検出することにより、サンプル中のCYP2B6の量を決定することを含んでもよい。この量は、三連四重極型質量分析装置および多重反応モニタリング(MRM)を用いて決定してもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約548/911、約548/681または約548/566のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。本明細書で使用する場合、「約」という用語は、+/−1原子質量単位の範囲内にあることを意味する。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号2のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約494/777、約494/437または約494/874のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号3のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約421/508、約421/607または約421/694のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約479/499、約479/614または約479/727のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。
【0020】
種々の実施形態によれば、この方法は、本明細書に記載の配列番号5、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A4に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、サンプル中のCYP3A4の量を決定することを含んでもよい。この方法は、たとえば、三連四重極型質量分析装置および多重反応モニタリング(MRM)を使用することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号5のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約440/549、約440/650または約440/532のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号6のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約704/794、約704/929、約564/689、約564/745または約564/790のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号7のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約798/819、約798/932または約798/1004のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。
【0021】
種々の実施形態によれば、この方法は、本明細書に記載の配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、サンプル中のCYP1A2の量を決定することを含んでもよい。この方法は、たとえば、三連四重極型質量分析装置および多重反応モニタリング(MRM)を使用することを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約432/636、約432/535または約432/478のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号9のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約482/800、約482/628または約482/743のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号10のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約491/721、約491/834または約491/535のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号11のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約528/501、約528/614または約528/727のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号12のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約571/783、約571/971、約571/1028、約381/587、約381/474または約381/375のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号13のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約695/695、約695/837または約695/950のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号14のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約536/795、約536/584または約536/698のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。
【0023】
種々の実施形態によれば、この方法は、本明細書に記載の配列番号15、配列番号16または配列番号17のアミノ酸配列を含む、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A5に特異的な単離されたペプチドを検出することにより、サンプル中のCYP3A5の量を決定することを含んでもよい。この方法は、たとえば、三連四重極型質量分析装置および多重反応モニタリング(MRM)を使用することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号15のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約468/581、約468/679または約468/736のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号16のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約470/494、約470/608または約470/722のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、本明細書に記載の配列番号17のアミノ酸配列を含んでもよく、この方法は、約589/747、約589/696または約589/647のm/z値を有するプレカーサー−プロダクトイオン対トランジションをモニターすることを含んでもよい。
【0024】
本教示の種々の実施形態によれば、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6、CYP3A4、CYP1A2およびCYP3A5の1つまたは複数に特異的な単離されたペプチドの1つまたは複数を含んでもよいキットを提供する。たとえば、このキットは、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含む、CYP2B6に特異的な1つまたは複数の単離されたタンパク質を含んでもよい。キットは、配列番号5、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP3A4に特異的な1つまたは複数の単離されたタンパク質を含んでもよい。キットは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP1A2に特異的な1つまたは複数の単離されたタンパク質を含んでもよい。キットは、配列番号15、配列番号16または配列番号17のアミノ酸配列を含む、CYPアイソフォームCYP3A5に特異的な1つまたは複数の単離されたタンパク質を含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、キットは、CYPアイソフォームCYP2B6、CYP3A4、CYP1A2およびCYP3A5のそれぞれに特異的な少なくとも1つの単離されたペプチドを含んでもよい。たとえば、キットは、本明細書に記載の配列番号1〜17の単離されたペプチドのそれぞれを含んでもよく、アイソフォーム特異的ペプチドごとにQ1およびQ3のトランジション値を測定するための説明書をさらに含んでもよい。キットは、緩衝液および酵素などの酵素消化成分、他の緩衝液、ならびに任意に他の試薬および/または成分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットは、たとえば、使用者がサンプルを加えるだけでよいようにホモジニアスアッセイを含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットは、較正もしくは補正試薬または標準物質を含んでもよい。キットにはさらに、アッセイを実施する際に使用してもよい、あるいは使用すべき機器の設定に関する情報が含まれていてもよい。キットには、サンプル調製、動作条件、体積、温度設定および同種のものに関する情報が含まれていてもよい。
【0026】
種々の実施形態によれば、様々な因子に応じて、様々なトランジションを使用してアッセイの結果を測定および評価してもよい。したがって、キットは、サンプルと1つまたは複数の対照試薬との間で比較測定を行うのに有用な様々なトランジション値および/または推奨設定を含んでもよい。キットは、トランジション値の特定の対、たとえば、Q1/Q3トランジション対、または1つもしくは複数の異なるトランジション対の値を測定するための説明書を含んでもよい。
【0027】
キットは、1つまたは複数の試薬(regent)の入れ物および適切な説明書を含む密封容器に収められていてもよい。キットには、1つまたは複数のアッセイ、測定値、トランジション対、動作説明書、動作を行うためのソフトウェア、これらの組み合わせ、または同種のものに関する電子情報が保存された電子媒体が含まれていてもよい。
【実施例】
【0028】
本教示については、以下の例および得られたデータを参照すれば、一層理解を深めることができる。以下の例および添付の図面に示した結果では、CYP誘導試験を以下の通り実施した。
【0029】
肝細胞の処理
CYP1A2、CYP2B6およびCYP3A4の発現および活性を高めるため、それぞれ原型肝酵素誘導剤3−メチルコラントレン(3−MC、2μM)、フェノバルビタール(PB、1mM)またはリファンピシン(RIF、10μM)でヒト肝実質細胞の初代培養を72時間処理した。本教示のCYPの定量法を用いて、肝酵素誘導剤による処理後にサンプル中のCYPの量を決定した。さらに、選択的基質(それぞれフェナセチン、ブプロピオンおよびテストステロン)の代謝産物生成によりCYP活性を測定し、qRT−PCR(Taqman(登録商標)、Applied Biosystems)によりmRNAを測定した。
【0030】
ミクロソームの調製
ミクロソームの細胞下画分を、処理した肝実質細胞をホモジナイゼーション緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH7.0、150mMのKCl、2mMのEDTA)に溶解し、続いて9,000×g、4℃で20分間遠心分離することにより調製した。次いで上清(S9画分)を100,000×g、4℃で60分間遠心した。得られたミクロソームのペレットを0.25Mのスクロースに懸濁し、解析まで−80℃で保存した。
【0031】
トリプシン消化
100ulのミクロソーム調製物それぞれに2%SDS5ul、続いて50mMのTCEP10ulを加え、60℃で1時間インキュベートした。0.1MのMMTS5ulを加え、室温で10分間インキュベートした。次いで100mMのトリス(pH=8.50)100ul、続いて50ugのトリプシンを加え、得られた溶液を37℃で一晩消化した。消化物に1ngの同位体標識された合成ペプチドをそれぞれ加え、LC−MSにより解析した。
【0032】
クロマトグラフィー
C18 Jupiter Proteo 50×2.0mmカラム(Phenomenex of Torrance,California)と連結したAgilent 1100システム(Agilent of Santa Clara,California)を用いて、クロマトグラフィーを行った。グラジエントは、15分かけて5〜40%Bとし、Aは、2%ACN、0.1%ギ酸からなり、Bは、90%ACN、10%H2O、0.1%ギ酸からなっていた。流量は、700μL/minであった。
【0033】
質量分析法
サンプルは、Turbo VTMソースおよびAnalyst 1.5を用いて、Applied Biosystems MDS SCIEX 4000 QTRAPTM LC/MS/MSシステムで解析した。定量には、各トランジションのデュエルタイムを最大にするため、スケジュールドMRM(sMRM)を使用した。
【0034】
データ処理
定量データは、Applied Biosystems,LLC of Foster City,California.から入手することができるMultiQuantTM 1.2ソフトウェアを用いて処理した。
【0035】
結果
図6は、RNAアッセイ、CYP活性アッセイ(図中では「酵素活性アッセイ」と記載)、および本教示のCYP定量法(図中では「タンパク質アッセイ」と記載)により観察されたCYP2B6の発現の変化を比較したグラフを示す。3−MCは、ビヒクル対照であり、基礎レベルのCYP2B6を誘導する。PBは、核内受容体CARの活性化によるCYP2B6の原型誘導剤である。RIFも、CYP2B6の周知の誘導剤である。図示したように、CYP活性アッセイおよびRNAアッセイで観察されたタンパク質発現の変化は、本教示のCYP定量法により観察された発現の変化に概ね似ている。
【0036】
図7は、RNAアッセイ、CYP活性アッセイ(図中では「酵素活性アッセイ」と記載)、および本教示のCYP定量法(図中では「タンパク質アッセイ」と記載)により観察されたCYP1A2の発現の変化を比較したグラフを示す。3−MCは、核内受容体AhRの活性化によるCYP1A2の原型誘導剤である。PBおよびRIFは、誘導がある場合に基礎レベルの1A2を誘導するビヒクル対照である。図示したように、CYP活性アッセイおよびRNAアッセイで観察されたタンパク質発現の変化は、3MCで処理したサンプルのRNAアッセイが非常に高レベルのRNAを示す以外、本教示のCYP定量法により観察された発現の変化に概ね似ている。RNAアッセイは、mRNAがすべてタンパク質に変換されるとは限らないため、タンパク質を正確に定量することができない。
【0037】
図8は、RNAアッセイ、CYP活性アッセイ(図中では「酵素活性アッセイ」と記載)、および本教示のCYP定量法(図中では「タンパク質アッセイ」と記載)により観察されたCYP3A4の発現の変化を比較したグラフを示す。3−MCは、CYP3A4をわずかに誘導する。PBは、3A4を著しく誘導する。RIFは、核内受容体PXRの活性化によるCYP3A4の原型誘導剤である。図示したように、CYP活性アッセイおよびRNAアッセイで観察されたタンパク質発現の変化は、本教示のCYP定量法により観察された発現の変化に概ね似ている。
【0038】
下記表1は、本教示により、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP2B6に特異的であると決定されたペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、これらの観察されたペプチドおよびトランジションを使用して、アイソフォームCYP2B6の信頼性の高いCYP定量が可能になる。
【0039】
【表1】
下記表2は、本教示により、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A4に特異的であると決定されたペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、これらの観察されたペプチドおよびトランジションを使用して、アイソフォームCYP3A4の信頼性の高いCYP定量が可能になる。
【0040】
【表2】
下記表3は、本教示により、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP1A2に特異的であると決定されたペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、これらの観察されたペプチドおよびトランジションを使用して、アイソフォームCYP1A2の信頼性の高いCYP定量が可能になる。
【0041】
【表3】
下記表4は、本教示により、チトクロームP450(CYP)アイソフォームCYP3A5に特異的であると決定されたペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、これらの観察されたペプチドおよびトランジションを使用して、アイソフォームCYP3A5の信頼性の高いCYP定量が可能になる。
【0042】
【表4】
下記表5は、ハウスキーピングミクロソームタンパク質ミクロソームGSTのペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、この観察されたペプチドの濃度は、薬物とのインキュベーションにより影響されないため、ペプチドは、信頼性の高いCYPの定量を可能にする補正タンパク質として有用であり得る。
【0043】
【表5】
下記表6は、ハウスキーピングミクロソームタンパク質ミクロソームトリグリセリドのペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。種々の実施形態によれば、この観察されたペプチドの濃度は、薬物とのインキュベーションにより影響されないため、ペプチドは、信頼性の高いCYPの定量を可能にする補正タンパク質として有用であり得る。
【0044】
【表6】
下記表7は、ハウスキーピングミクロソームタンパク質コルチコステロイド11βのペプチドの配列を、それらの最適なMRM Q1、Q3のトランジションと共に示す。表7の配列番号22のペプチドのQ1およびQ3の質量は、アルキル化ペプチドMMTSを示し、別のアルキル化試薬に変更すると、Q1、Q3の質量が変化することを理解すべきである。さらに、MMTS以外のアルキル化試薬を使用してもよい。種々の実施形態によれば、この観察されたペプチドの濃度は、薬物とのインキュベーションにより影響されないため、ペプチドは、信頼性の高いCYPの定量を可能にする補正タンパク質として有用であり得る。
【0045】
【表7】
ミクロソームのLC−MSMS解析により検出される観察されたアイソフォーム特異的トリプシンペプチドを、それらの最適なQ1、Q3のトランジションと組み合わせると、化学標識アプローチをまったく必要とせずに、アイソフォーム1A2、2B6、3A4および3A5のCYPの定量法が可能になる。
【0046】
本明細書の検討、および本明細書に開示された本教示の実施から、当業者には本教示の他の実施形態が明らかになるであろう。本明細書および例は、例示にとどまるものと見なされることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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