特許第5936279号(P5936279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5936279-運転支援装置 図000002
  • 特許5936279-運転支援装置 図000003
  • 特許5936279-運転支援装置 図000004
  • 特許5936279-運転支援装置 図000005
  • 特許5936279-運転支援装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936279
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20160609BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20160609BHJP
   B60W 50/02 20120101ALI20160609BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G08G1/09 V
   B60W50/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-271585(P2013-271585)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-125707(P2015-125707A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−079118(JP,A)
【文献】 特開2007−205942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00− 1/16
B60W 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記走行環境検出手段で検出した走行環境に基づき自車両の走行車線を認識する車線認識手段と、
前記車線認識手段で認識した走行車線に基づき前記自車両の運転支援制御を行う運転支援制御手段と
を備える運転支援装置において、
前記運転支援制御手段は、運転支援制御を開始する際の開始条件を予め設定されている判定項目毎に判定する開始条件判定手段と、
前記開始条件判定手段で開始条件不成立と判定された場合、不許可と判定された判定項目の中から高速道路走行時に不許可と判定された判定項目を抽出する判定項目絞り込み手段と、
前記判定項目絞り込み手段で絞り込んだ判定項目を不許可コードとして記憶させるコード記憶手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記判定項目絞り込み手段は、前記高速道路走行時に不許可と判定された前記判定項目の中から不許可状態が設定時間継続している判定項目を抽出する
ことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
自車両前方の走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記走行環境検出手段で検出した走行環境に基づき自車両の走行車線を認識する車線認識手段と、
前記車線認識手段で認識した走行車線に基づき前記自車両の運転支援制御を行う運転支援制御手段と
を備える運転支援装置において、
前記運転支援制御手段は、運転支援制御を開始する際の開始条件を予め設定されている判定項目毎に判定する開始条件判定手段と、
前記開始条件判定手段で開始条件不成立と判定された場合、不許可と判定された判定項目の中から不許可状態が設定時間継続している判定項目を抽出する判定項目絞り込み手段と、
前記判定項目絞り込み手段で絞り込んだ判定項目を不許可コードとして記憶させるコード記憶手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援制御を開始する前に調べる開始条件が不成立と判定された場合、判定条件として設定されている判定項目の中から、運転者が故障ではないかと疑念を抱く判定項目を抽出し、記憶させるようにした運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両前方の環境情報に基づいて車両を操向(操舵制御、ブレーキ制御等)する運転支援装置として、車線逸脱防止制御(LDP:Lane Departure Prevention)や、車線維持支援制御(LKSA:Lane Keeping Steering Assist)等が知られている。
【0003】
車線逸脱防止制御は、自車両が走行車線から逸脱傾向にあると判断した場合に、自車両を車線中央側へ戻す操向を行うものである。又、車線維持支援制御は、走行車線内に目標走行位置を設定し、自車両が目標走行位置に沿って走行するように操向を行うものであり、この操向制御は、例えばアクチュエータによって操舵機構に操舵力を付与して前輪を転舵したり、左右車輪に制駆動力差を与えてヨーモーメントを発生させることによって行う。
【0004】
ところで、運転者が支援制御を開始すべく、制御スイッチをONしても、システムが直ちに支援制御を開始するものではなく、開始条件を判定し、開始条件が不成立の場合、制御スイッチをONしても支援制御は開始されない。又、悪天候、路面状況、車両の運動状況等によっても支援制御が開始されない状況が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3332501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した悪天候や路面状況によって支援制御が開始されない状況は、運転者においても認識しているため、その支援制御が開始されない(開始条件が不成立)の原因は容易に把握することができる。しかし、運転者の認識できない原因によって支援制御が開始されず、それが継続している場合、故障ではないかと疑念を抱かせてしまう場合がある。
【0007】
このような場合、運転者はディーラに車両を持ち込んで故障の原因を調べてもらおうとするが、開始条件が満足されないために、開始されなかったと思われる状況でも、その履歴が検出されない場合、原因を明らかにすることは困難である。一方、開始条件不成立の履歴を全て記憶させることも考えられるが、故障と思われる原因を探求する際の作業が煩雑化してしまう不都合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、運転者が制御スイッチをONしても、運転支援制御が開始されない原因を容易に解明することのできる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自車両前方の走行環境を検出する走行環境検出手段と、前記走行環境検出手段で検出した走行環境に基づき自車両の走行車線を認識する車線認識手段と、前記車線認識手段で認識した走行車線に基づき前記自車両の運転支援制御を行う運転支援制御手段と
を備える運転支援装置において、前記運転支援制御手段は、運転支援制御を開始する際の開始条件を予め設定されている判定項目毎に判定する開始条件判定手段と、前記開始条件判定手段で開始条件不成立と判定された場合、不許可と判定された判定項目の中から高速道路走行時に不許可と判定された判定項目を抽出する判定項目絞り込み手段と、前記判定項目絞り込み手段で絞り込んだ判定項目を不許可コードとして記憶させるコード記憶手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転支援制御を開始する際の開始条件を判定し、開始条件不成立と判定された場合、不許可と判定された判定項目の中から運転者が故障かと疑念を抱く判定項目を絞り込んで記憶させるようにしたので、ディーラの作業者は記憶されている判定項目を読込むことで、運転者が制御スイッチをONしても運転支援制御が開始されず、故障ではないかと疑念を抱いた原因を容易に解明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】運転支援装置を搭載する車両の概略構成図
図2】運転支援装置の概略構成図
図3】運転支援制御ルーチンを示すフローチャート
図4】運転支援制御サブルーチンを示すフローチャート
図5】(a)は車線維持(LKSA)モードで走行している状態の平面図、(b)は車線逸脱防止(LDP)モードで走行している状態の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1において、車両(自車両)1には、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとが配設されており、この左右前輪FL,FRが、ラック&ピニオン機構等のステアリング機構2にタイロッド3を介して連設されている。又、このステアリング機構2に、先端にハンドル4を固設するステアリング軸5が連設されている。運転者がハンドル4を操作すると、ステアリング機構2を介して前輪FL,FRが転舵される。
【0013】
又、ステアリング軸5に電動パワーステアリング(EPS)装置6のEPSモータ7が、図示しない伝達機構を介して連設されている。EPS装置6はEPSモータ7とEPS制御ユニット(EPS_ECU)8とを有しており、このEPS_ECU8にて、EPSモータ7がステアリング軸5に付加するアシストトルクを制御する。EPS_ECU8は後述するハンドル角センサ12で検出するハンドル角、及び車速センサ13で検出する車速等に応じ、運転者がハンドル4に加える操舵トルクをアシストするアシストトルクを設定する。ステアリング軸5にアシストトルクを付加することで運転者のハンドル操作の負担が軽減される。
【0014】
又、EPS_ECU8は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信等を用いた車内ネットワークを介して、運転者の運転支援を行う運転支援制御手段としての運転支援制御ユニット(DSS(Driving Support System)_ECU)11と接続されている。運転支援制御においては、DSS_ECU11にて設定したアシストトルクに対応する指令信号がEPS_ECU8に送信され、EPS_ECU8にてEPSモータ7に所定のアシストトルクを発生させて、自車両1が、後述する目標進行路をトレースして走行するように制御する。尚、図示しないが、車内ネットワークには、EPS_ECU8、DSS_ECU11以外に、エンジン制御ユニット、変速機制御ユニット、ブレーキ制御を含む車両操安性制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)ユニット等、自車両1の走行状態を制御するユニット類が相互通信自在に接続されており、これら制御ユニットはマイクロコンピュータを主体に構成されている。
【0015】
このDSS_ECU11は、ステアリング軸5に取り付けられてハンドル4のハンドル角を検出するハンドル角センサ12、車速を検出する車速センサ13、ハンドル4に加えられる操舵トルク、すなわち運転者による操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ14等、自車両1の挙動を検出するセンサ類からの信号が受信される。更に、運転支援制御のON/OFFを選択すると共に、ONの場合は運転支援モード、すなわち、車線逸脱防止制御(LDP)モードと車線維持支援制御(LKSA)との何れかを選択する制御スイッチ15からの信号も受信される。
【0016】
更に、DSS_ECU11には、後述する制御開始条件を判定する際に必要とする各種パラメータを、車内ネットワークを介して各制御ユニットから受信する。尚、受信するパラメータとしては、自車両1に作用するヨーレート、4輪の車輪速等がある。又、このハンドル角センサ12で検出したハンドル角、及び車速センサ13で検出した車速は、後述する車線認識部24でも読込まれる。
【0017】
又、DSS_ECU11の出力側には、故障診断を行うパーソナルコンピュータ(図示せず)に接続される診断コネクタ16が接続されており、この診断コネクタ16を介して、パーソナルコンピュータをDSS_ECU11に接続することで、このDSS_ECU11に記憶されている、後述する不許可(NG)コードを読出すことができる。
【0018】
一方、符号21はカメラユニットであり、図2に示すように、メインカメラ22aとサブカメラ22bとからなるステレオモノクロカメラ、或いはステレオカラーカメラで構成された走行環境検出手段としての車載カメラ22と、画像処理部23、及び運転支援制御に必要な画像情報を生成する機能として、マイクロコンピュータで構成されている車線認識手段としての車線認識部24が内蔵されている。
【0019】
両カメラ22a,22bは、例えば車内前部のルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。又、この各カメラ22a,22bにCCDやCMOS等の撮像素子が設けられており、この両撮像素子によって自車両が走行している走行レーンを含む進行方向前方の走行環境の三次元画像が撮影される。尚、本実施形態では、車載カメラ22で撮影した画像データに基づいて、自車両1の走行車線や先行車を含む立体物、障害物等を認識するものである。従って、これらを認識できるものであれば、車載カメラ22に代えて、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ等を採用してもよく、更には、これらとの組み合わせであっても良い。
【0020】
画像処理部23は、各カメラ22a,22bで撮影した一対のアナログ画像を所定輝度階調のデジタル画像に変換し、メインカメラ22aの出力信号から基準画像データを生成し、又、サブカメラ22bの出力信号から比較画像データを生成する。そして、この基準画像データ及び比較画像データとの視差に基づいて両画像中の同一対象物の三次元情報、すなわち自車両から対象物までの距離を算出する。尚、車載カメラ22は単眼カメラであっても良く、この場合、周知のモーションステレオ法等を用いて三次元情報を得ることができる。
【0021】
又、車線認識部24は、画像処理部23から送信される画像データに基づき左右白線を認識し、その白線の内側エッジ間の距離(車線幅)W(図5参照)を求める。尚、車線幅Wの求め方については、例えば特開2012−58984号公報等に既述されているため、詳細な説明は省略する。
【0022】
DSS_ECU11は、車線認識部24で求めた自車走行路の車線幅W、制御スイッチ15で設定した運転支援モード(LDPモード/LKSAモード)に基づき運転支援制御を実行する。
【0023】
このDSS_ECU11で実行される運転支援制御は具体的には、図3に示す運転支援制御ルーチンで実行される。このルーチンは、車線認識部24から送信される1フレーム毎の画像情報に同期して起動され、先ずステップS1で、制御スイッチ15がONされているか否かを調べ、ONされている場合、ステップS2へ進み、OFFの場合、ルーチンを抜ける。
【0024】
ステップS2では、運転支援制御を開始する前に、予め設定されている開始条件を判定する判定項目を調べる。そして、ステップS3で全ての判定項目が満足されているか否かを調べ、満足されている場合は制御開始条件成立と判定し、ステップS4へ進む。又、1つでも満足されていない場合は制御開始条件不成立と判定し、ステップS5へ分岐する。尚、このステップS2,S3での処理が、本発明の開始条件判定手段に対応している。
【0025】
制御開始条件として設定されている判定項目の一例を以下に示す。
【0026】
[EPSモータ7の駆動電流が上限値以内であること]
EPSモータ7の駆動電流が上限値に達している状態は、ステアリングの据え切り等によって過大な電流が流れて過熱されていると予想され、アシストトルクを正常に制御することが困難であると判断される。そのため、NOはNG(不許可)と判定される。
【0027】
[操舵トルクセンサ14からの出力信号が検出されていること]
手放し運転を検出する判定項目であり、所定時間内に微弱な操舵トルクが検出されていなければ、NGと判定される。
【0028】
[ハンドル角センサ12で検出したハンドル角が所定時間内に、所定角度、且つ所定回数以上反転(切り換え)されていないこと]
急カーブの繰り返しを検出する判定項目であり、所定時間内に、所定角度、且つ所定回数以上反転(切り換え)されている場合、NGと判定される。
【0029】
[VDC信号が検出されていないこと]
VDCとの制御干渉を回避するための判定項目であり、VDC信号が検出されていれば、NGと判定される。
【0030】
[4輪のタイヤの空気圧が適正範囲に収まっていること]
1つのタイヤの空気圧が極端に低いと正常な操舵制御を行うことが困難となる。各車輪の空気圧が適正範囲に収まっているか否かの判定は、各タイヤの空気圧を直接検出することで行っても良いが、例えば、ヨーレートと4輪の車輪速とに基づいて判定することも可能である。すなわち、ヨーレートが所定範囲内の直進走行において、1つの車輪の車輪速が、他の車輪の車輪速に比し極端に遅い場合、1つのタイヤの空気圧が低いと判定する。
【0031】
[白線の内側エッジを推定する近似曲線が設定されていること]
近似曲線が設定されていない場合、車線認識部24が白線を認識していないと考えられるため、NGと判定される。ところで、濃霧、雨天、積雪等、運転者自身が白線を認識し難い状況以外に、車線認識部24が白線を認識できない状況としては、白線自体が薄くなっている、白線に影落ちがある、白線に薄く積雪されている等、運転者が白線を認識しているにも拘わらず、車線認識部24では白線の内側エッジを認識できないために、近似曲線が生成されない状況がある。
【0032】
そして、上述したように、ステップS3で、全ての判定項目がOKと判定された場合、制御開始条件成立と判定し、ステップS4へ進み、図4に示す運転支援サブルーチンを実行して、ルーチンを抜ける。尚、この運転支援サブルーチンについては後述する。
【0033】
一方、少なくとも1つの判定項目がNGと判定された場合、制御開始条件不成立と判定し、ステップS5へジャンプする。ステップS5へ進むと、ステップS5〜S9でNGコード記憶処理を実行する。このNGコード記憶処理は、運転者が制御スイッチ15をONしたにも拘わらず、運転支援制御が開始されずに故障ではないかとの疑念を抱く判定項目を絞り込んで記憶させるものである。
【0034】
先ず、ステップS5で、上述したステップS2でNGと判定された判定項目を抽出し、ステップS6〜S8で抽出された判定項目の中から運転者が疑念を抱いた判定項目を絞り込む。
【0035】
ステップS6では車速Vと高速判定車速Voとを比較する。この高速判定車速Voは高速道路を高速走行しているか否かを判定するしきい値であり、例えば85〜95[Km/h]程度に設定されている。多くの場合、運転者が運転支援制御を必要とするのは高速道路での高速走行である。従って、現走行が高速走行であり、そのときNGとなった判定項目を絞り込む。そして、V≧Voの場合、ステップS7へ進む。又、V<Voの場合、ルーチンを抜ける。従って、V<Voの場合の判定項目は記憶されない。
【0036】
一方、ステップS7へ進むと、NGとなった判定項目の継続時間Tを計時し、ステップS8で、継続時間Tが設定時間Toを経過したか否か判定する。設定時間Toは運転者が故障ではないかと疑念を抱くようになる限界時間であり、例えば、20〜30[sec]程度に設定されている。この継続時間が、例えば30[sec]に設定されている場合、1秒当たりのフレーム数を30とすると、900フレーム分の移動距離で継続的に検出されている判定項目のみが絞り込まれる。尚、このステップS6〜S8での処理が、本発明の判定項目絞り込み手段に対応している。
【0037】
そして、T≧Toの場合、当該判定項目は運転者の限界時間を超えていると判定し、ステップS9へ進み、NGとされた判定項目(NGコード)を記憶させてルーチンを抜ける。尚、この場合、NGコードと共に記憶日時、及び記憶時の自車両1の位置(緯度及び経度)を示すGPS位置座標を記憶させるようにしても良い。
【0038】
このNGコードは、ディーラに備えられている故障診断用パーソナルコンピュータ(図示せず)を、診断コネクタ16を介してDSS_ECU11に接続することで読出すことができる。ディーラの作業者は納車された車両1に対し、運転者から故障ではないかとの指摘を受けた場合、故障診断用パーソナルコンピュータをDSS_ECU11に接続し、NGコードを読出すことで、運転支援制御が開始されなかった原因を解明し、運転者にそのときの状況を確認することで、運転者の抱いた疑念を解消することができる。尚、このステップS9での処理が、本発明のコード記憶手段に対応している。
【0039】
次に、上述したステップS4で実行される運転支援制御処理について簡単に説明する。この運転支援制御処理は、図4に示す運転支援制御サブルーチンに従って実行される。このサブルーチンは、先ず、ステップS11で、車線認識部24で求めた自車走行路の車線幅Wを読込み、ステップS12で車速Vを読込む。
【0040】
その後、ステップS13,S14で高速道路を走行中か否かを判定する。すなわち、ステップS13では車線幅Wが設定車線幅Ws以上か否かを判定する。この設定車線幅Wsは、走行車線が高速道路の車線幅か否かを判定するしきい値であり、例えば、2.8〜3.0[m]程度に設定されている。ステップS14では、車速Vと高速道路走行判定車速Vsとを比較する。この高速道路走行判定車速Vsは高速道路の走行を判定するしきい値であり、80〜85[Km/h]程度に設定されている。
【0041】
そして、ステップS13でW≧Wsと判定され、且つ、ステップS15でV≧Vsと判定された場合、高速道路を走行中と判定し、ステップS15へ進む。又、ステップS13でW<Wsと判定され、或いは、ステップS15でV<Vsと判定された場合、高速道路の走行ではないと判定し、ステップS17へジャンプする。
【0042】
高速道路の走行と判定されてステップS15へ進むと、制御スイッチ15からの信号に基づき、運転者の選択した運転支援モードを読込む。そして、運転者がLKSAモードを選択している場合、ステップS16へ進み、LKSAモードを実行してルーチンを抜ける。一方、LDPモードが選択されている場合、ステップS17へ進む。
【0043】
ステップS13,S14,或いはS15からステップS17へ進むと、LDPモードを実行してルーチンを抜ける。従って、本実施形態では、走行支援モードとして基本的にはLDPモードが実行され、運転者が制御スイッチ15を操作して運転支援モードとしてLKSAモードを選択した場合、高速走行においてLKSAモードが実行される。
【0044】
LKSAモードが実行されると、図5(a)に示すように、左右車線の内側エッジから自車両1が走行すべき目標進行路(例えば、左右車線の中央)を設定し、この目標進行路の認識曲率、車速Vに基づきFF目標ハンドル角を設定する。又、ハンドル角センサ12で検出したハンドル角(実ハンドル角)と車速Vに基づきFB曲率を設定し、このFB曲率に基づいて自車両1進行方向における所定時間経過後の位置(目標点)を求め、この目標点と目標進行路とのずれ幅Δcが0となるようなFB目標ハンドル角を設定する。そして、FF目標ハンドル角にFR目標ハンドル角を加算して最終的な指示ハンドル角を設定し、この指示ハンドル角に対応するEPS付加トルクをEPS_ECU8へ送信し、EPSモータ7を駆動させて、自車両1が目標進行路に沿って走行するように操舵制御を行う。
【0045】
一方、LDPモードが実行されると、図5(b)に示すように、DSS_ECU11は、走行車線を区画する白線の内側エッジを推定する近似曲線に対し、自車両1が逸脱傾向にあると判断した場合に、運転者にその旨を警告すると共に、自車両1を車線中央側へ戻す付加トルク指示値をEPS_ECU8へ送信し、EPSモータ7を駆動させて、車線逸脱を防止する。
【0046】
このように、本実施形態では、運転支援制御を開始するに際して判定する制御開始条件の判定項目のうち、NGとなった判定項目のコード(NGコード)を、そのまま記憶させるのではなく、主に、運転者が故障ではないかとの疑義を抱く判定項目を絞り込んで、そのNGコードを記憶させるようにしたので、ディーラの作業者は、このNGコードに基づき運転支援制御が開始されなかった原因を容易に解明することができる。
【0047】
又、記憶するNGコードを、車速Vと継続時間Tとに基づき、高速道路を高速で走行する際に継続的にNGとなる判定項目に絞り込んだので、短時間でより明確に原因を探求することができる。
【0048】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、記憶するNGコードを車速Vと継続時間T以外の他の要素で絞り込むようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1…自車両、
6…電動パワーステアリング(EPS)装置、
7…EPSモータ、
8…EPS制御ユニット、
11…運転支援制御ユニット、
13…車速センサ、
23…画像処理部、
24…車線認識部、
T…継続時間、
To…設定時間、
V…車速、
Vo…高速判定車速、
Vs…高速道路走行判定車速Vs、
図1
図2
図3
図4
図5