特許第5936282号(P5936282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5936282-半導電性ローラ 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936282
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】半導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-94656(P2014-94656)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212728(P2015-212728A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】田島 啓
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287965(JP,A)
【文献】 特開2007−283659(JP,A)
【文献】 特開2004−163825(JP,A)
【文献】 特開2007−090820(JP,A)
【文献】 特開2006−016552(JP,A)
【文献】 特開平11−044317(JP,A)
【文献】 特開2013−117678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/16
G03G 15/00
G03G 15/08
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の2種のみを質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で含むゴム分、
前記ゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の範囲で、かつローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω以下となるように配合割合が調整されたSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種のカーボンブラック、ならびに
前記ゴム分を架橋させるための架橋成分としての硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤を含むゴム組成物を筒状に押出成形し、
加硫缶または連続架橋装置を用いて架橋させたのちシャフトを挿通した状態で、
紫外線の照射により外周面に酸化膜を形成してなる半導電性ローラ。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、さらに架橋助剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、難燃剤、中和剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含んでいる請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記シャフトを挿通したのち紫外線の照射に先立って前記外周面を研磨してなる請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
電子写真法を利用した画像形成装置において、帯電ローラとして使用される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、いわゆる電子写真法を利用した画像形成装置において帯電ローラ等として用いることができる半導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において感光体の表面を一様に帯電させるために使用される帯電ローラ等としては、例えば半導電性のゴム組成物を所定のプレス型内に充てんしてプレス架橋によって筒状に成形するとともにゴム分を架橋させたのち、中心の通孔に金属等からなるシャフトを挿通してなる半導電性ローラが用いられる。
近年、例えばスモールオフィスやパーソナル向けとして使用可能なコンパクトでかつ安価なレーザープリンタが開発され、普及しつつあり、かかるレーザープリンタに組み込まれる帯電ローラ等の半導電性ローラについても製造が容易でできるだけコスト安価に提供できることが求められるようになってきている。
【0003】
ゴム組成物に半導電性を付与するためには、例えばゴム分としてイオン導電性ゴムを用いたりイオン導電性塩等のイオン導電剤を配合したりしてイオン導電性を付与するか、あるいはカーボンブラックや金属粉等の導電性充填剤を配合して電子導電性を付与するのが一般的である。
しかし前者の場合にはイオン導電性ゴムやイオン導電剤が非常に高価である上、入手や取り扱い等も難しいため、これらのことが半導電性ローラの生産性を低下させ、製造コストを増加させる原因となっている。
【0004】
一方、後者の場合には汎用のゴム分に汎用の導電性充填剤を配合すればよいためゴム組成物自体はコスト安価に調製できる。
しかしゴム組成物中に導電性充填剤を均一に分散させるのは難しく、半導電性ローラの外周面の周方向や幅方向で単位体積あたりの導電性充填剤の含有量がばらつきやすいため、それに伴って1つの半導電性ローラの外周面で電気抵抗値が一定せずにばらつきやすいという問題がある。そして、外周面の電気抵抗値にばらつきのある半導電性ローラを例えば帯電ローラとして使用した場合には、感光体の表面を均一に帯電させることができず、形成画像に濃度ムラ等の画像不良を生じるおそれがある。
【0005】
半導電性ローラの外周面をコーティング膜で被覆すると、電気抵抗値のばらつきをカバーして感光体の表面を均一に帯電させることができ、形成画像に濃度ムラ等の画像不良が生じるのを抑制できる。
また半導電性ローラを帯電ローラ等として感光体と直接に接触させた状態で使用した際に、当該半導電性ローラ中から外周面にブリードあるいはブルームしてくる成分によって感光体が汚染されて形成画像に影響がでるのを防ぐこともできる。さらにトナーの流動性や帯電性を改善するべくトナーに添加されるシリカ等の添加剤が半導電性ローラの外周面に蓄積されて形成画像に影響がでるのを防止することもできる(特許文献1等)。
【0006】
しかしコーティング膜は、そのもとになる液状のコーティング剤をスプレー法、ディッピング法等の塗布方法によって半導電性ローラの外周面に塗布したのち乾燥させて形成され、かかる形成過程において埃等の異物の混入、厚みムラの発生等の様々な不良を生じやすいという問題がある。
しかもコーティング膜の形成は既に確立された技術であって更なる改良の余地は少ないため、これらの不良が発生する割合(不良率)を現状より大幅に低下させるのは難しく、このことも半導電性ローラの歩留まりおよび生産性を低下させ、製造コストを上昇させる一因となっている。
【0007】
またイオン導電性、電子導電性のいずれのゴム組成物を用いる場合でも当該ゴム組成物をプレス架橋させるためには、レーザープリンタの製造メーカーごと、あるいは同じ製造メーカーでも製品ごとに半導電性ローラの外径や幅、シャフトの径等はさまざまであるため、そのそれぞれに対応したプレス型を常時用意しておく必要がある。
したがってプレス型に多額の設備投資を要し、このことが半導電性ローラの生産性を低下させ、製造コストを増加させる原因の一つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3449726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来に比べてコスト安価に製造でき、しかもその外周面の周方向や幅方向で電気抵抗値がばらついたりせず均一な半導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の2種のみを質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で含むゴム分、
前記ゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の範囲で、かつローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω以下となるように配合割合が調整されたSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種のカーボンブラック、ならびに
前記ゴム分を架橋させるための架橋成分としての硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤を含むゴム組成物を筒状に押出成形し、
加硫缶または連続架橋装置を用いて架橋させたのちシャフトを挿通した状態で、
紫外線の照射により外周面に酸化膜を形成してなる半導電性ローラである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム分としてNBRとEPDMという、いずれも汎用のゴムを使用するとともに、かかる汎用のゴムに、汎用のカーボンブラックのうちSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種を配合することにより、半導電性ローラのもとになるゴム組成物自体をコスト安価に調製できる。
また、かかるゴム組成物を筒状に押出成形後、プレス型を使用せずに、加硫缶または連続架橋装置を用いて架橋させているため半導電性ローラの外径や幅、シャフトの径等に応じた複数のプレス型を常時用意しておく必要がなく、多額の設備投資を不要にできる。外径やシャフトの径の違いは押出成形に使用するダイを変更したり押出条件を調整したりすることにより、また幅の違いは押出成形した筒体のカット位置を変更したりすることにより、それぞれ対応できる。
【0012】
またゴム分としてNBRとEPDMとを質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で併用し、カーボンブラックとしては上記3種のうちの少なくとも1種を選択して用い、なおかつ架橋成分として硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤を少なくとも併用するとともに、外周面を形成するゴム組成物中に含まれるNBRのジエン結合部分を紫外線の照射によって酸化反応させて酸化膜を形成することにより、カーボンブラックを配合して電子導電性を付与した際に生じる先述した問題は全て解消できる。
【0013】
すなわち酸化膜は、従来のコーティング膜と同様にカーボンブラックの含有量のばらつきによる電気抵抗値のばらつきをカバーして、1つの半導電性ローラ内で電気抵抗値がばらつくのを抑制するために機能するとともに、ブリードやブルームによって感光体が汚染されたり、シリカ等の添加剤が半導電性ローラの外周面に蓄積したりするのを防止するためにも機能する。
【0014】
しかも酸化膜はコーティング膜とは違い、半導電性ローラの外周面に紫外線を照射して、当該外周面を形成するゴム組成物中に含まれるNBRそれ自体のジエン結合部分を酸化反応させて形成されるため、その形成工程において酸化膜中に埃等の異物が混入するおそれはない。また酸化反応は、紫外線の照射によって半導電性ローラの外周面で一様に進行するため、酸化膜に厚みムラが生じるおそれもない。そのため半導電性ローラの歩留まりおよび生産性を向上できる。
【0015】
ただしカーボンブラックとして、電子導電性に優れたいわゆる導電性カーボンブラックを使用した場合には少量の添加で半導電性ローラに半導電性を付与できるものの、かかる導電性カーボンブラックはゴム分に対する分散性が低いため半導電性ローラの外周面の単位体積あたりの含有量に大きなばらつきを生じやすく、酸化膜ではかかる含有量のばらつきによる電気抵抗値のばらつきを十分にカバーすることができない。
【0016】
そのため、かかる半導電性ローラを例えば帯電ローラとして使用した場合には感光体の表面を均一に帯電させることができず、形成画像に濃度ムラ等の画像不良を生じるおそれがある。
またカーボンブラックとして、HAFより粒径の大きいFEFを使用した場合には半導電性ローラのローラ抵抗値を106.5Ω以下とするためにゴム分の総量100質量部あたり50質量部以上の多量のカーボンブラックを配合しなければならない。
【0017】
そのため各成分を混練してゴム組成物を調製する際や、当該ゴム組成物を筒状に押出成形する際の加工性が低下して良好な筒体を形成できなかったり、形成できたとしても架橋後の筒体が硬くなってシャフトをスムースに挿通できなかったりする。
これに対しカーボンブラックとしてSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種を使用した場合には、これらのカーボンブラックを、導電性カーボンブラックよりも均一にゴム組成物中に分散させて、含有量のばらつきとそれによる電気抵抗値のばらつきを、半導電性ローラの外周面に形成する酸化膜によって十分にカバーできる程度まで小さくすることが可能となる。
【0018】
また半導電性ローラのローラ抵抗値を106.5Ω以下とするためには、上記3種のカーボンブラックのうちの少なくとも1種をゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の割合で配合すればよいため、各成分を混錬してゴム組成物を調製したり、調製したゴム組成物を筒状に押出成形したりする際の加工性を向上して良好な筒体を形成できる。また架橋後の筒体の柔軟性を向上してシャフトをスムースに挿通することも可能となる。
【0019】
ただしNBRとEPDMの2種のゴム分のうちNBRの割合が先述の範囲より少ない場合には、当該NBRのジエン結合部分の割合が少なくなるため、半導電性ローラの外周面に、先に説明した機能に優れた十分な厚みと強度を有する酸化膜を形成することができない。
一方EPDMは半導電性ローラの耐オゾン性、耐老化性、耐候性等の耐性を向上するために機能する成分であり、かかるEPDMの割合が先述の範囲より少ない場合にはかかる耐性が不足して、例えば酸化膜形成のために紫外線照射した際に外周面にクラック等を生じやすくなる。
【0020】
これに対しゴム分としてNBRとEPDMの2種のみを質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で併用することにより、クラック等の発生を抑制しながら、紫外線の照射によって半導電性ローラの外周面に、先に説明した機能に優れた十分な厚みと強度を有する酸化膜を形成することが可能となる。
ただし架橋成分として過酸化物架橋剤のみを使用し、硫黄とスルフェンアミド系促進剤を使用しない場合には、酸素が存在する加硫缶や連続架橋装置での架橋ではゴム分を架橋反応させることができず、例えば帯電ローラとして感光体と接触させた際に当該帯電ローラに貼りつくといった問題を生じてしまう。
【0021】
また硫黄とスルフェンアミド系促進剤のみを使用し、過酸化物架橋剤を使用しない場合には、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によって架橋反応を進行させることはできるものの架橋が十分でなく、例えば感光体と接触させた状態で長時間停止させた際に接触部位にヘタリを生じて、形成画像のヘタリに対応する位置にニップ跡の画像不良を生じてしまう。
【0022】
これに対し、架橋成分として硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤の3種を併用することにより、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によってゴム分を十分に架橋させて、上記貼りつきやヘタリ等を生じない半導電性ローラを形成できる。
かかる半導電性ローラのローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω以下に限定されるのは、ローラ抵抗値がこの範囲未満である場合、および範囲を超える場合には、そのいずれにおいても当該半導電性ローラを帯電ローラとして使用した際に良好な画像を形成できず、画像不良を生じるためである。これに対しローラ抵抗値を上記の範囲とすることにより、特に帯電ローラとして使用した際に画像不良のない良好な画像を形成しうる半導電性ローラを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図2】半導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はNBR、およびEPDMの2種のみを質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で含むゴム分、
前記ゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の範囲で、かつローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω以下となるように配合割合が調整されたSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種のカーボンブラック、ならびに
前記ゴム分を架橋させるための架橋成分としての硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤を含むゴム組成物を筒状に押出成形し、
加硫缶または連続架橋装置を用いて架橋させたのちシャフトを挿通した状態で、
紫外線の照射により外周面に酸化膜を形成してなる半導電性ローラである。
【0025】
《ゴム組成物》
〈ゴム分〉
ゴム分としては、先に説明したようにNBRとEPDMの2種のみを、質量比(NBR)/(EPDM)=70/30〜30/70の範囲で併用する。
この範囲よりNBRの割合が少ない場合には、当該NBRのジエン結合部分の割合が少なくなるため、半導電性ローラの外周面に、先述した機能に優れた十分な厚みと強度を有する酸化膜を形成することができない。
【0026】
一方、EPDMの割合が上記の範囲より少ない場合には、当該EPDMによる半導電性ローラの耐オゾン性、耐老化性、耐候性等の耐性を向上する効果が十分に得られないため、例えば酸化膜形成のために紫外線照射した際に外周面にクラック等を生じやすくなる。
これに対しゴム分としてNBRとEPDMの2種のみを上記の質量比で併用することにより、クラック等の発生を抑制しながら、紫外線の照射によって半導電性ローラの外周面に、先述した機能に優れた十分な厚みと強度を有する酸化膜を形成することが可能となる。
【0027】
(NBR)
NBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
これらNBRの1種または2種以上を使用できる。
【0028】
(EPDM)
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMがいずれも使用可能である。EPDMとしては、第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。
【0029】
これらEPDMの1種または2種以上を使用できる。
〈カーボンブラック〉
カーボンブラックとしては、先に説明したようにSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種が選択して用いられる。
上記3種以外の、例えば導電性カーボンブラックを使用した場合には、当該導電性カーボンブラックのゴム分に対する分散性が低いため半導電性ローラの外周面の単位体積あたりの含有量に大きなばらつきを生じやすく、酸化膜ではかかる含有量のばらつきによる電気抵抗値のばらつきを十分にカバーすることができない。
【0030】
そのため、かかる半導電性ローラを例えば帯電ローラとして使用した場合には感光体の表面を均一に帯電させることができず、形成画像に濃度ムラ等の画像不良を生じるおそれがある。
またHAFより粒径の大きいFEFを使用した場合には、半導電性ローラのローラ抵抗値を106.5Ω以下とするためにゴム分の総量100質量部あたり50質量部以上の多量のカーボンブラックを配合しなければならない。
【0031】
そのため各成分を混練してゴム組成物を調製する際や、当該ゴム組成物を筒状に押出成形する際の加工性が低下して良好な筒体を形成できなかったり、形成できたとしても架橋後の筒体が硬くなってシャフトをスムースに挿通できなかったりする。
これに対しカーボンブラックとしてSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種を使用した場合には、これらのカーボンブラックを、導電性カーボンブラックよりも均一にゴム組成物中に分散させて、含有量のばらつきとそれによる電気抵抗値のばらつきを、半導電性ローラの外周面に形成する酸化膜によって十分にカバーできる程度まで小さくすることが可能となる。
【0032】
また半導電性ローラのローラ抵抗値を106.5Ω以下とするためには、上記3種のカーボンブラックのうちの少なくとも1種をゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の割合で配合すればよいため、各成分を混錬してゴム組成物を調製したり、調製したゴム組成物を筒状に押出成形したりする際の加工性を向上して良好な筒体を形成できる。また架橋後の筒体の柔軟性を向上してシャフトをスムースに挿通することも可能となる。
【0033】
カーボンブラックの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満で、なおかつ後述する測定方法によって測定される半導電性ローラのローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω以下となるように設定すればよい。
具体的には、使用するカーボンブラックが上記3種のうちどの1種または2種以上であるかや、組み合わせるゴム分におけるNBRとEPDMの質量比、あるいは組み合わせる架橋成分の種類等と、目的とするローラ抵抗値との兼ね合いにより、上記ゴム分の総量100質量部あたり50質量部未満の範囲で、カーボンブラックの配合割合の好適範囲を設定できる。
【0034】
例えばカーボンブラックがSAFである場合、当該SAFの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり22.5質量部以上であるのが好ましく、32.5質量部以下であるのが好ましい。またISAFである場合は、ゴム分の総量100質量部あたり27.5質量部以上であるのが好ましく、35質量部以下であるのが好ましい。さらにHAFの場合は、ゴム分の総量100質量部あたり32.5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0035】
〈架橋成分〉
架橋成分としては、先に説明したように硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤の3種を少なくとも併用する。これにより、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によってゴム分を十分に架橋させて感光体への貼りつきやヘタリ等を生じない半導電性ローラを形成できる。
【0036】
(硫黄)
硫黄としては、架橋剤(加硫剤)として機能しうる種々の硫黄が使用可能である。特に粉末硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2.5質量部以下であるのが好ましい。
【0037】
硫黄の配合割合がこの範囲未満では、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によってゴム分を十分に架橋できないおそれがある。一方、硫黄の配合割合が上記の範囲を超える場合には、過剰の硫黄が半導電性ローラの外周面にブルームして感光体を汚染したりするおそれがある。
これに対し、硫黄の配合割合を上記の範囲とすることで、ブルームの発生を防止しながら、ゴム分をより一層良好に架橋させることができる。
【0038】
(過酸化物架橋剤)
過酸化物架橋剤としては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α′−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
過酸化物架橋剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1.0質量部以上であるのが好ましく、3.0質量部以下であるのが好ましい。
過酸化物架橋剤の配合割合がこの範囲未満では、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によってゴム分を十分に架橋できないおそれがある。一方、過酸化物架橋剤の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の筒体が硬くなってシャフトをスムースに挿通できないおそれがある。
【0040】
これに対し、過酸化物架橋剤の配合割合を上記の範囲とすることで、架橋後の柔軟性を確保しながらゴム分をより一層良好に架橋させることができる。
(スルフェンアミド系促進剤)
スルフェンアミド系促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等の1種または2種以上が挙げられる。
【0041】
スルフェンアミド系促進剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2.0質量部以下であるのが好ましい。
スルフェンアミド系促進剤の配合割合がこの範囲未満では、加硫缶や連続架橋装置を用いた架橋によってゴム分を十分に架橋できないおそれがある。一方、スルフェンアミド系促進剤の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の筒体が硬くなってシャフトをスムースに挿通できないおそれがある。
【0042】
これに対し、スルフェンアミド系促進剤の配合割合を上記の範囲とすることで、架橋後の柔軟性を確保しながら、ゴム分をより一層良好に架橋させることができる。
(他の架橋成分)
架橋成分としては、上記3成分に加えて、さらに他の促進剤や架橋助剤を配合してもよい。
【0043】
このうち架橋助剤としては、例えば酸化亜鉛等の金属酸化物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などの1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり3質量部以上、10質量部以下であるのが好ましい。
〈その他の成分〉
ゴム組成物には、さらに充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、難燃剤、中和剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。
【0044】
これにより、各成分を配合し、混練してゴム組成物を調製する際や、当該ゴム組成物を筒状に押出成形する際の加工性を向上したり、成形後にゴム分を架橋させて得られる半導電性ローラの機械的強度、耐久性等を向上したり、あるいは半導電性ローラのゴムとしての特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久歪みが小さくヘタリを生じにくい特性等を向上したりできる。
【0045】
充填剤としては酸化亜鉛、シリカ、先の3種以外の他のカーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。このうちカーボンブラックとしては、同一の半導電性ローラ中での電気抵抗値のばらつきを生じないために絶縁性の、もしくは弱導電性のカーボンブラックが好ましい。
スコーチ防止剤としてはN−シクロヘキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0046】
その他の成分としては、従来公知の任意の化合物が使用可能である。
以上の各成分を含むゴム組成物は従来同様に調製できる。すなわちNBRとEPDMを所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することでゴム組成物を調製できる。
混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
【0047】
《半導電性ローラ》
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、先に説明した各成分を含むゴム組成物によって筒状に形成され、中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定されるとともに、外周面4に紫外線照射によって酸化膜5が形成されたものである。
【0048】
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成される。半導電性ローラ1とシャフト3とは、例えば導電性を有する接着剤等によって電気的に接合されるとともに機械的に固定されて一体に回転される。
かかる半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラとして好適に使用できる。
【0049】
半導電性ローラ1の径方向の厚みは、帯電ローラとして使用する場合、当該帯電ローラの小型化、軽量化を図りながら適度なニップ厚を確保するために0.5mm以上、特に1mm以上であるのが好ましく、15mm以下、中でも10mm以下、特に7mm以下であるのが好ましい。
半導電性ローラ1は、先に説明した各成分を含むゴム組成物を用いて、下記の工程を経て製造される。
【0050】
すなわちゴム組成物を、押出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、半導電性ローラ1の断面形状、すなわち円環状に対応するダイを通して長尺の筒状に押出成形する。
次いで冷却して固化させた筒体を所定の長さにカットし、通孔2に架橋用の仮のシャフトを挿通した状態で加硫缶内に収容し、当該加硫缶内に加熱水蒸気を供給して加熱、加圧することでゴム分を架橋させる。
【0051】
あるいは押出成形した筒体を長尺のまま送りながら連続架橋装置内を通過させて連続的に架橋させたのち所定の長さにカットする。
次いで外周面に導電性の接着剤を塗布したシャフト3を通孔2に挿通して、接着剤が熱硬化性接着剤である場合は加熱により硬化させて半導電性ローラ1とシャフト3とを電気的に接合するとともに機械的に固定する。
【0052】
そして必要に応じて半導電性ローラ1の両端をカットし、また外周面4を所定の表面粗さになるように研磨したのち紫外線を照射することで、当該外周面4を構成するゴム組成物中のNBRのジエン結合部分を酸化反応させて酸化膜5を生成させる。これにより図1に示す半導電性ローラ1が製造される。
かかる半導電性ローラ1は、先に説明した各成分を含有するゴム組成物からなり、しかも外周面4が酸化膜5で被覆されているため、先に説明したメカニズムにより、外周面の周方向や幅方向で電気抵抗値がばらついたりせず均一である。また感光体の汚染や外周面へのトナーの蓄積等よる画像不良が生じるおそれもない。しかも半導電性ローラ1は、上記ゴム組成物を用いることと、上記の工程を経ることとが相まって、従来に比べてコスト安価に製造することもできる。
【0053】
なお半導電性ローラ1は、外周面4側の外層と、シャフト3側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を本発明の構成とすればよい。
また半導電性ローラ1は多孔質構造としてもよいが、耐摩耗性等を向上したり、先に説明したヘタリによるニップ跡の発生を防止したりすることを考慮すると非多孔質構造であるのが好ましい。
【0054】
さらに半導電性ローラ1は、先に説明したようにローラ抵抗値が10Ω以上、106.5Ω未満である必要がある。ローラ抵抗値は、外周面4に酸化膜5を形成した状態での測定値である。
《ローラ抵抗値の測定方法》
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【0055】
図1図2を参照して、本発明では半導電性ローラ1のローラ抵抗値を温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、印加電圧50Vの条件で、下記の方法によって測定した値でもって表すこととする。
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム6を用意し、かかるアルミニウムドラム6の外周面7に、上方からローラ抵抗値を測定する半導電性ローラ1の、酸化膜5を形成した外周面4を接触させる。
【0056】
また半導電性ローラ1のシャフト3とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。直流電源8は(−)側をシャフト3、(+)側を抵抗9と接続する。抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
次いでシャフト3の両端部にそれぞれ450gの荷重Fをかけて半導電性ローラ1をアルミニウムドラム6に圧接させた状態で、当該アルミニウムドラム6を回転(回転数:40rpm)させながら、両者間に直流電源8から直流50Vの印加電圧Eを印加した際に抵抗9にかかる検出電圧Vを計測する。
【0057】
検出電圧Vと印加電圧E(=50V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(1′):
R=r×E/(V−r) (1′)
によって求められる。ただし式(1′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(1):
R=r×E/V (1)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23℃、相対湿度55%である。
【0058】
また半導電性ローラ1は、その用途等に応じて任意の硬さ、圧縮永久ひずみを有するように調整できる。かかる硬さ、圧縮永久ひずみ、並びにローラ抵抗値等を調整するためには、例えばNBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)を先に説明した範囲内で調整したり、架橋成分としての硫黄、過酸化物架橋剤、スルフェンアミド系促進剤等の種類と量を調整したり、カーボンブラックや充填剤その他の成分の種類と量を調整したりすればよい。
【0059】
本発明の半導電性ローラは帯電ローラのほか、例えば現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等としてレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0060】
〈実施例1〉
NBR〔低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:19.5%、非油展、JSR(株)製のJSR(登録商標)N250SL〕70質量部、およびEPDM〔エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展、住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)505A〕30質量部をゴム分として、9Lニーダを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分を先に説明した手順で加えてさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0061】
NBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)=70/30であった。
【0062】
【表1】
【0063】
表1中の各成分は下記のとおり。
ISAF:カーボンブラック〔東海カーボン(株)製のシースト6〕
粉末硫黄:架橋剤〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)CZ〕
過酸化物架橋剤:ジクミルパーオキサイド〔日油(株)製のパークミル(登録商標)D〕
酸化亜鉛2種:架橋助剤〔三井金属鉱業(株)製〕
表中の質量部は、先のゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
【0064】
次に、調製したゴム組成物をφ60の押出成形機に供給して外径φ11.0mm、内径φ5.5mmの筒状に押出成形した後、外径φ3mmの架橋用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で160℃×30分間加熱して架橋させた。
次いで、外周面に導電性の熱硬化性接着剤(ポリアミド系)を塗布した外径φ6mmの金属シャフトを挿通し直してオーブン中で150℃×60分間加熱して接着したのち両端をカットし、広幅研磨機を用いて外径がφ8.5mmになるまで外周面を研磨した。
【0065】
研磨後の外周面をアルコール拭きしたのち、UV光源から外周面までの距離を50mmとしてUV処理装置にセットし、30rpmで回転させながら紫外線を5分間照射することで酸化膜を形成して半導電性ローラを製造した。
〈実施例2、3、比較例1、2〉
NBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)を80/20(比較例1)、50/50(実施例2)、30/70(実施例3)、および20/80(比較例2)としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0066】
〈比較例3〉
粉末硫黄と促進剤CZを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。NBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)=70/30であった。
〈比較例4〉
過酸化物架橋剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。NBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)=70/30であった。
【0067】
〈実施例4、5、比較例5、6〉
ISAFの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり25質量部(比較例5)、27.5質量部(実施例4)、35質量部(実施例5)、および40質量部(比較例6)としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈実施例6、7、比較例7、8〉
ISAFに代えてSAF〔東海カーボン(株)製のシースト9〕を、ゴム分の総量100質量部あたり20質量部(比較例7)、22.5質量部(実施例6)、32.5質量部(実施例7)、および35質量部(比較例8)配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0068】
〈実施例8、9、比較例9、10〉
ISAFに代えてHAF〔東海カーボン(株)製のシースト3〕を、ゴム分の総量100質量部あたり30質量部(比較例9)、32.5質量部(実施例8)、40質量部(実施例9)、および45質量部(比較例10)配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0069】
〈比較例11〉
ISAFに代えてFEF〔東海カーボン(株)製のシーストSO〕を、ゴム分の総量100質量部あたり50質量部配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈比較例12、13〉
ISAFに代えて導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカ ブラック(登録商標)〕を、ゴム分の総量100質量部あたり20質量部(比較例12)、および30質量部(比較例13)配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0070】
〈加工性評価〉
架橋後に金属シャフトを挿通しなおす際に、スムースに挿通できたものを加工性良好「○」、挿通できなかったものを加工性不良「×」と評価した。
〈耐性評価〉
滋賀院照射によって外周面にクラックが発生したものを耐性不良「×」、発生しなかったものを耐性良好「○」と評価した。
【0071】
〈ローラ抵抗値の測定〉
実施例、比較例で製造した半導電性ローラのローラ抵抗値を、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、印加電圧50Vの条件で、先に説明した測定方法によって測定した。なお以下の表ではローラ抵抗値をlogR値で表している。
〈実機試験〉
感光体と、当該感光体の表面に常時接触させて配設された帯電ローラとを備え、レーザープリンタ本体に着脱自在とされたトナーカートリッジ〔キヤノン(株)製のCRG−316BLK〕の純正の帯電ローラに代えて、実施例、比較例で製造した半導電性ローラを帯電ローラとして組み込んだ。
【0072】
(初期画像評価)
そして組み立てたトナーカートリッジを、直後にカラーレーザープリンタ〔キヤノン(株)製のLBP5050〕に装填し、直ちにハーフトーン画像、ベタ画像を印刷して初期画像として評価した。
評価は、何らかの画像不良が見られたものを「×」、見られなかったものを「○」とした。
【0073】
(通紙後画像評価)
また装填して500枚/日、1分間に2枚のペースでの通紙を5日間実施した後にハーフトーン画像、ベタ画像を各5枚ずつ連続印刷して、通紙後画像として評価した。
評価は、連続印刷の間に何らかの画像不良が見られたものを「×」、見られなかったものを「○」とした。
【0074】
(保管試験)
また別に用意した、組み立てた直後のトナーカートリッジを温度50℃、相対湿度90%の高温、高湿環境下で5日間静置したのち同じカラーレーザープリンタに装填してハーフトーン画像、ベタ画像を各5枚ずつ枚連続印刷する保管試験を実施した。
評価は、連続印刷中に1枚でも白スジの画像不良が見られたものを「×」、連続印刷の全枚数を通して白スジの画像不良が全く見られなかったものを「○」とした。
【0075】
以上の結果を表2〜表5に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
表3の比較例1の結果より、ゴム分としてのNBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)が80/20でEPDMの量が不足する場合には耐性が不十分で、紫外線照射によって外周面にクラックが発生することが判った。そのため比較例1は特性を評価しなかった。
また比較例2の結果より、ゴム分としてのNBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)が20/80でNBRの量が不足する場合には、通紙後画像評価においてシリカ等の添加剤の蓄積による画像ムラが発生しているのが確認された。そしてこのことから、外周面に良好な酸化膜が形成されていないことが判った。
【0081】
比較例3の結果より、架橋成分として過酸化物架橋剤のみを使用した場合には保管試験において画像不良が発生した。そこで状態を確認したところ、半導電性ローラが感光体に貼りついているのが確認され、ゴム分が架橋されていないことが判った。
表4の比較例4の結果より、架橋成分として硫黄とスルフェンアミド系促進剤のみを使用した場合には保管試験においてニップ跡の画像不良が発生した。そこで状態を観察したところ、保管時に感光体と接触し続けていた半導電性ローラの接触部位にヘタリが生じているのが確認され、ゴム分の架橋が十分でないことが判った。
【0082】
表5の比較例11の結果より、カーボンブラックとしてFEFを使用するとともに、半導電性ローラのローラ抵抗値を下げるために配合割合をゴム分の総量100質量部あたり50質量部とした場合には架橋後に硬くなりすぎて、金属シャフトをスムースに挿通できないことが判った。
また比較例12、13の結果より、カーボンブラックとして導電性カーボンブラックを使用した場合には、当該導電性カーボンブラックの分散性が低いため、酸化膜では十分にカバーできない電気抵抗値のばらつきを生じて感光体の表面を均一に帯電させることができず、形成画像に濃度ムラ等の画像不良を生じることが判った。
【0083】
これに対し実施例1〜9の結果より、ゴム分としてのNBRとEPDMの質量比(NBR)/(EPDM)を70/30〜30/70の範囲とし、カーボンブラックとしてSAF、ISAF、およびHAFからなる群より選ばれた少なくとも1種を使用するとともに、架橋成分として硫黄、過酸化物架橋剤、およびスルフェンアミド系促進剤の3種を併用することで上記の問題をいずれも解消して、外周面の周方向や幅方向で電気抵抗値がばらついたりせず均一な半導電性ローラを、従来に比べてコスト安価に製造できることが判った。
【0084】
ただし実施例1、4、5、比較例5、6の結果より、カーボンブラックとしてISAFを使用した系では、ローラ抵抗値を10Ω以上、106.5Ω以下の範囲として良好な画像を形成するために、当該ISAFの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり27.5質量部以上に設定するのが好ましく、35質量部以下に設定するのが好ましいことが判った。
【0085】
また実施例6、7、比較例7、8の結果より、カーボンブラックとしてSAFを使用した系では、ローラ抵抗値を上記の範囲として良好な画像を形成するために、当該SAFの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり22.5質量部以上に設定するのが好ましく、32.5質量部以下に設定するのが好ましいことが判った。
さらに実施例8、9、比較例9、10の結果より、カーボンブラックとしてHAFを使用した系では、ローラ抵抗値を上記の範囲として良好な画像を形成するために、当該HAFの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり32.5質量部以上に設定するのが好ましく、40質量部以下に設定するのが好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0086】
1 半導電性ローラ
2 通孔
3 シャフト
4 外周面
5 酸化膜
6 アルミニウムドラム
7 外周面
8 直流電源
9 抵抗
10 計測回路
F 荷重
V 検出電圧
図1
図2