(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936286
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】エネルギーの効率的な態様で薄膜を乾燥させるための方法
(51)【国際特許分類】
F26B 13/10 20060101AFI20160609BHJP
F26B 3/28 20060101ALI20160609BHJP
F26B 23/04 20060101ALI20160609BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20160609BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
F26B13/10 A
F26B3/28
F26B23/04 A
F26B25/00 A
B05C9/14
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-503687(P2014-503687)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-513263(P2014-513263A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】US2012030845
(87)【国際公開番号】WO2012138516
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】13/082,469
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511009710
【氏名又は名称】エヌシーシー ナノ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー, カート エー.
(72)【発明者】
【氏名】ローソン, イアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】マックール, スティーブン シー.
(72)【発明者】
【氏名】エド, アンドリュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ダス, ロナルド アイ.
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0007285(US,A1)
【文献】
特開2009−277759(JP,A)
【文献】
特開2009−099758(JP,A)
【文献】
特開2008−128567(JP,A)
【文献】
特表2010−536602(JP,A)
【文献】
特開2009−164201(JP,A)
【文献】
特表2008−522369(JP,A)
【文献】
特開2010−016356(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/015328(WO,A1)
【文献】
特開2005−231262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00 − 25/22
H05B 1/00 − 3/86
H05B 41/30 − 43/02
B05C 7/00 − 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に位置する薄膜を有する薄膜積層を乾燥させるための方法であって、該方法は、
該薄膜積層を閃光灯を通過して搬送することと、
特定の熱プロファイルに従って複数のマイクロパルスのパルス幅を変更することにより、特定の波形を生成することであって、該特定の熱プロファイルは、該薄膜および基板の積層特性に従って設計される、ことと、
該薄膜積層を複合光パルスを用いて照射することにより、該薄膜から溶媒を除去することであって、該複合光パルスは、該特定の波形の形状およびタイミングに従って該閃光灯からの複数のマイクロパルスによって形成され、該複合光パルスの全持続時間は、該薄膜積層の全熱平衡時間よりも短い、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記搬送することは、前記複合光パルスが送達されている時間の間に、前記薄膜積層を搬送方向に前記閃光灯の照射領域の長さの10%未満だけ搬送することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、
【数1】
であり、式中、τ
1およびτ
2はそれぞれ、前記薄膜および基板の熱平衡時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、前記基板の熱平衡時間とほぼ同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロパルスは、同じタイミングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロパルスは、異なるタイミングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロパルスは、電圧、パルス長さ、任意の所与の領域の中の前記基板上に衝突するマイクロパルスの平均数、パルス繰り返し周波数、マイクロパルスの数、およびデューティサイクルによって成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板は、450℃未満の最大動作温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複合光パルスの瞬間面積電力密度は、同一のパルス長さの単一パルス損傷閾値を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
一定温度が、処理の間、前記薄膜積層内の場所において維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜積層の中へ付与される全エネルギーは、該薄膜積層を前記基板の最大動作温度まで加熱するために必要とされるエネルギーの量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板上に位置する薄膜を有する薄膜積層を熱的に処理するための方法であって、該方法は、
該薄膜積層を閃光灯を通過して搬送することと、
特定の熱プロファイルに従って複数のマイクロパルスのパルス幅を変更することにより、特定の波形を生成することであって、該特定の熱プロファイルは、該薄膜および基板の積層特性に従って設計される、ことと、
該薄膜積層を複合光パルスを用いて照射することにより、該薄膜を熱的に処理することであって、該複合光パルスは、該特定の波形の形状およびタイミングに従って該閃光灯からの複数のマイクロパルスによって形成され、該複合光パルスの全持続時間は、該薄膜積層の全熱平衡時間よりも短い、ことと
を含む、方法。
【請求項13】
前記搬送することは、前記複合光パルスが送達されている時間の間に、前記薄膜積層を前記閃光灯の照射領域の長さの10%未満だけ搬送方向に搬送することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、
【数2】
であり、式中、τ
1およびτ
2はそれぞれ、前記薄膜および基板の熱平衡時間である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、前記基板の熱平衡時間とほぼ同一である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロパルスは、同じタイミングを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロパルスは、異なるタイミングを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロパルスは、電圧、パルス長さ、任意の所与の領域の中の前記基板上に衝突するマイクロパルスの平均数、パルス繰り返し周波数、マイクロパルスの数、およびデューティサイクルによって成形される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記基板は、450℃未満の最大動作温度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記複合光パルスの瞬間面積電力密度は、同一のパルス長さの単一パルス損傷閾値を上回る、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
一定温度が、処理の間、前記薄膜積層内の場所において維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記薄膜積層の中へ付与される全エネルギーは、該薄膜積層を前記基板の最大動作温度まで加熱するために必要とされるエネルギーの量未満である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本願は、米国特許出願第13/082,469号(2011年4月8日出願)の一部継続出願であり、この出願の内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
(1.技術分野)
本発明は、概して、薄膜を熱的に処理するステップに関し、特に、閃光灯からの光パルスを使用することによって薄膜を乾燥させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(2.従来技術の記述)
薄膜を支持するための基板を選定するとき、概して、コスト上の理由から、シリコーン、フッ化炭素、セラミック、ガラス等の高価な基板よりもテレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリカーボネート、セルロース等の安価な基板を採用することがより好ましい。しかしながら、安価な基板は、その高価な同等物よりも低い最大動作温度を有する傾向にあるので、比較的低温だけが安価な基板上に位置する薄膜を乾燥させるために利用することができる。
【0004】
アレニウスの式によると、乾燥(すなわち、溶媒を撥ね飛ばす)、粒子焼結、緻密化、化学反応開始、化学反応変調、位相変換、粒子成長、焼鈍、熱処理等の熱的に駆動されるプロセスは、指数関数態様で処理温度に関連する。故に、乾燥温度の僅かな低下は、有意により長い乾燥時間およびより多くのエネルギーを必要とし、これは、より多くのコストがかかる乾燥作業へとつながるであろう。
【0005】
その結果、処理時間を延長させることなく、安価な基板上に位置する薄膜を熱的に処理するための改良されたプロセスを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によると、薄膜積層は、薄膜積層を閃光灯を通過して搬送し、その間に、薄膜積層が閃光灯からの複合光パルスで照射されることによって、熱的に処理される。複合光パルスは、複数のマイクロパルスから構成される。複合光パルスの持続時間は、薄膜積層の全熱平衡時間よりも短い。加えて、薄膜積層が、閃光灯を通過して搬送されているとき、薄膜積層は、複合光パルスの送達の間に、照射領域の長さの10%未満だけ搬送方向に移動するはずである。
【0007】
本発明の全特徴および利点は、以下の詳細な説明において明白となるであろう。
【0008】
本発明自体、ならびにその好ましい使用形態、さらなる目的、および利点は、付随の図面と併せて熟読しながら、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2-1】
図2aは、単一光パルスおよび複合光パルスの強度およびパルス長さを示し、それぞれ、
図1の薄膜積層を加熱するために使用することができる。
図2bは、基板が
図2aの単一光パルスによって照射された後の基板の温度対時間を示すグラフである。
図2cは、基板が
図2aの複合光パルスによって照射された後の基板の温度対時間を示すグラフである。
【
図2-2】
図2dは、2つの異なる一定処理温度域を提供可能な複合光パルスである。
図2eは、基板が
図2dの複合光パルスによって照射された後の基板の温度対時間を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施形態による、
図2aの複合光パルスを生成するための乾燥装置の略図である。
【
図4】
図4は、
図3の乾燥装置内の閃光灯コントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A.薄膜積層の熱平衡時間)
材料のある層についての熱平衡時間τは、
【0011】
【数1】
式中、c=材料の比熱
ρ=材料の質量密度
x=材料の厚さ
κ=材料の熱伝導率
によって計算される。
【0012】
異なる厚さを有する異なる材料の複数の層を有する薄膜積層に対する全熱平衡時間τ
stackは、
【0013】
【数2】
によって計算されることができ、
式中、τ
1、τ
2、τ
3等はそれぞれ、薄膜積層の個々の層の各々についての熱平衡時間である。
【0014】
薄膜積層は、異なる材料の複数の層を含んでもよいが、実際は、薄膜積層は、通常、薄膜を支持するための比較的より厚い基板の上部の上の薄膜の層から構成される。そのような場合、薄膜積層の熱平衡時間は、多くの場合、基板によって左右される。例えば、
図1に示されるように、薄膜191が、厚さx
fおよび熱平衡時間τ
fを有し、基板192が、厚さx
sおよび熱平衡時間τ
sを有する、基板192の上部の上に位置する薄膜191から構成される薄膜積層190の場合、x
s≫x
fのとき、薄膜積層190の全熱平衡時間τ
stackは、単純に基板192の熱平衡時間τ
sとなる。
【0015】
前述の原理は、実践的実施例について図示することができる。基板192が、c
s=730J/kg−K、ρ
s=1.4g/cm
3、x
s=150ミクロン、およびκ
s=0.24W/m−Kを有するテレフタル酸ポリエチレン(PET)から作製され、薄膜191が、c
f=235J/kg−K、ρ
f=10.5g/cm
3、x
f=1ミクロン、およびκ
f=420W/m−Kを有する銀から作製されるとき、基板192(τ
s)および薄膜191(τ
f)の熱平衡時間は、それぞれ、24msおよび1.5×10
−6msとなる。したがって、x
s≫x
fのとき、薄膜積層191の熱平衡時間は、基板192単独のものとほぼ区別できない。
【0016】
(B.薄膜積層の熱処理)
基板192上の薄膜191を熱的に処理するとき、膜積層190全体が、熱処理時間を最小にするために、基板192の最大動作温度まで加熱されることができる。重要なこととして、基板192が急加熱および急冷却されるとき、基板192を損傷させずに、基板192上の薄膜191を基板192の最大動作温度を遥かに超える温度まで加熱することさえ可能である。
【0017】
基板192に対して、超高速冷却速度とともに非常に短い加熱時間を達成するために、
図2aに図示されるように、持続時間t
pを有する単一光パルス201を使用して、薄膜191および基板192の両方を温度T
peakまで加熱することができる。温度T
peakは、
図2bに示されるように、基板192がその特性を有意に変化させる機会を持たないように、薄膜191に隣接する基板192の側面が非常に短い時間の間だけ温度T
peakにあるので、基板192の最大動作温度T
maxよりも高くあり得る。加えて、薄膜191は、基板192への伝導を介して、急冷却される。
【0018】
薄膜191および基板192の物理的特性および寸法と併せて、薄膜積層190の加熱時間および冷却速度の両方が、光パルスの熱プロファイル(すなわち、光パルスの形状)によって決定される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によると、
図2aの光パルス201は、複合光パルス202の形態で基板192に送達され得る。複合光パルス202は、複数の光パルスから構成される。正確な熱プロファイルを有する複合光パルス202が利用されると、基板192は、最短乾燥時間を達成するために、その最大動作温度を遥かに超える温度まで加熱され得る。薄膜積層190を乾燥するとき、複合光パルス202のパルス長さは、好ましくは、薄膜積層190の熱平衡時間τ
stackよりも短い。
【0020】
図2aに示されるように、複合光パルス202は、複数のマイクロパルスを含み、
図1の薄膜積層190等の薄膜積層内に、最適硬化のためにカスタマイズされるべき温度プロファイルをもたらす。その最も単純な形態において、複合光パルス202は、均一なマイクロパルスを含む。この場合、複合光パルス202は、6つの異なるパラメータ:i.強度(電圧)、ii.複合パルス長さ、iii.薄膜積層上の任意の所与の領域内の基板上に衝突する複合パルスの平均数、iv.パルス繰り返し周波数、v.マイクロパルスの数、およびvi.マイクロパルスのデューティサイクルによって成形されることができる。均一でないマイクロパルスが利用されるとき、各個々のマイクロパルスのパルス長さおよび遅延を規定することができる。
【0021】
最大動作温度T
maxを有する基板192において、基板192上に位置する薄膜191は、加熱時間が非常に短く、冷却速度が非常に高速であるとき、
図2aの複合光パルス202によって、温度T
peakまで加熱され得る。
図2cに示されるように、基板192の表面における温度は、一時的にT
peakに到達し、基板192の表面における温度は、瞬時に、最大動作温度T
maxよりも低いレベルに達する。また、基板192は、複合光パルスによって加熱された後、瞬時に、熱平衡に到達する。
【0022】
薄膜の処理のための最適複合光パルスのパラメータは、実験的に決定されることができる。第1に、単一光パルスからの薄膜積層についての損傷閾値は、薄膜積層の熱平衡時間よりも短いパルス長さを選択し、薄膜積層へのある程度の損傷が観察されるまで増加する面積電力密度の一連の単一光パルスに薄膜積層を暴露することによって確定される。その単一光パルス長さに対する最適熱処理は、概して、損傷閾値電力よりも若干小さい電力である。損傷機構は、多くの場合、熱的に駆動される、すなわち、付与されるエネルギーの量に関連するので、パルス長さが短いほど、概して、より高い面積電力密度閾値を有する。加えて、薄膜が、光を吸収しているとき、パルス長さが短いほど、概して、優先的に基板上の薄膜を加熱し、プロセスのエネルギー効率を増加させる。しかしながら、乾燥プロセスまたはガスを生成する任意の熱プロセスの場合、損傷閾値はまた、ガスが薄膜積層内に局所「破裂」を生じさせることなく、逃散し得る速度に関連する。したがって、また、基本的には、パルス長さから独立して、最大面積電力密度が存在し、これは、効率的な熱処理は、単純にパルス長さを減少し続けることによっては、達成することができないことを意味する。
【0023】
前述の単一光パルスが、同一の全体パルス長さのより短いパルス(すなわち、マイクロパルス)のバーストに変換されると、非常に短いパルスのエネルギー効率が、薄膜を処理するための適正なエネルギーを付与しながら、実現され得る。この処理は、薄膜積層を損傷せずに、単一パルス損傷閾値を超える瞬間電力(例えば、マイクロパルスの間の電力)において行われ得る。
【0024】
熱処理のための複合光パルスの最適化はさらに、NovaCentrix(Austin、Texas)製SimPulse
TM等のソフトウェアシミュレーションを使用して、複合光パルスからの暴露による薄膜積層の熱応答をシミュレートすることによって、改良されることができる。薄膜積層内の各層の熱物理特性および閃光灯からの出力を入力することによって、シミュレーションソフトウェアは、複合パルスへの暴露の間およびその後の薄膜積層内の場所毎の温度を提供することができる。これが行われると、薄膜積層への損傷は、損傷を生じさせる物理的機構を明らかにすることができる。これは、特定の損傷機構を回避するための最適複合パルスを設計可能にする。例えば、損傷機構が、基板のガス化温度等の薄膜積層内の温度限界であるとき、その特定の温度近傍で、但し、それを超えることなく、薄膜を処理してもよい。同様に、複数の溶媒を有する膜を乾燥させるとき、各溶媒は、特定の温度で煮沸させてもよい。したがって、その薄膜の最適処理は、複数の一定温度処理域を有する複合パルスを含んでもよく、乾燥は、最初に、より低い一定温度で行われ、より揮発性の溶媒を蒸発させた後に、より高い一定温度で処理し、低揮発性の溶媒を蒸発させる。
【0025】
薄膜は、薄膜積層の熱平衡時間よりも短い処理時間の間、基板の最大動作温度よりも有意に高い温度で処理されることができるが、薄膜積層が熱平衡後に達成する温度は、依然として、基板の最大動作温度よりも低くある必要があり、そうでなければ、損傷が生じるであろう。したがって、薄膜積層内に付与され得るエネルギーの総量は、薄膜積層を基板の最大動作温度まで加熱するために必要とされる全エネルギーを超えることができない。その数値は、薄膜内の任意の溶媒の任意の蒸発熱を含む薄膜積層の全エンタルピーを計算することによって決定されることができる。
【0026】
複合光パルスはまた、薄膜積層上に2つの異なる一定の処理温度域を提供することができる。例えば、
図2dに示されるように、複合光パルスは、2つの異なる処理温度域を提供可能な複数のマイクロパルスを含み、複合光パルスのタイミング(μs)は、表Iに列挙される。
【0027】
【表1】
図2eは、基板が
図2dの複合光パルスによって照射された後の基板の温度対時間を示す。
【0028】
(C.薄膜積層上の薄膜を乾燥させるための装置)
次に、
図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態による、薄膜を乾燥させるための装置の略図が図示されている。示されるように、乾燥装置300は、搬送システム310、閃光灯コントローラ330、および閃光灯350を有する閃光灯ヘッド320を含む。低インダクタンスケーブル325は、閃光灯コントローラ330と閃光灯ヘッド320との間に接続される。搬送システム310は、薄膜積層340を閃光灯ヘッド320を通過して移動させる一方、閃光灯コントローラ330は、成形パルスが搬送システム310上の薄膜積層340の搬送速度に同期されるように、パルス幅変調(PWM)を使用して電流の成形パルスを閃光灯350に提供する。好ましくは、閃光灯350は、キセノン、クリプトン、またはアルゴン等のガスで充填された密閉閃光灯である。閃光灯350はまた、時として、指向性プラズマアーク(DPA)ランプと称される水冷壁閃光灯であることができる。
【0029】
閃光灯コントローラ330は、制御コンピュータ360を含む。制御コンピュータ360は、好ましくは、当業者に公知であるように、処理ユニット、キーボード、マウス、タッチスクリーン等の入力デバイス、およびモニタ等の出力デバイスを含む。
【0030】
所与の持続時間のパルス列をパルス幅変調するために、各個々のパルスは、パルス成形を提供するために比較的短くある必要がある。さらに、パルスは、ある一部の時間の間、オンにされないので、単一パルスを提供する源よりも高強度である必要がある。したがって、乾燥装置300は、100kW/cm
2を上回るピーク電力を有する10マイクロ秒程度の短いパルス長さを提供可能である必要がある。加えて、パルスのためのPWM周波数は、50kHz程度と高速であり得る。
【0031】
閃光灯350から放出される光パルスの形状ならびに薄膜および基板の物理的特性と寸法は、基板を損傷させずに薄膜が乾燥され得る熱勾配および後続温度に影響を及ぼし得る。したがって、乾燥装置300はまた、種々の情報を乾燥装置300の異なる部分ならびに薄膜積層340上の膜および基板から収集するための複数のセンサ(図示せず)を含む。種々のセンサから収集された情報およびユーザ入力は、コンピュータ制御システム360にフィードバックされ、そこで、熱プロファイルが再計算され得る。再計算された熱プロファイルを使用して、閃光灯コントローラ330は、薄膜積層340が閃光灯350の下を搬送されている間、閃光灯350によって薄膜積層340に送達される光の波形を制御する。
【0032】
次に、
図4を参照すると、閃光灯コントローラ330のブロック図が図示される。示されるように、閃光灯コントローラ330は、エンコーダ510、任意の波形発生器520、熱シミュレータ525、および制御コンピュータ360を含む。ユーザは、最初に、薄膜積層特性540および所望の処理レベル550を閃光灯コントローラ330に入力する。搬送システム310(
図3)からの搬送速度等の入力および付加的システム限界を受信後570、エンコーダ510は、搬送システム310上に位置する薄膜を硬化させるための適切な時間の間、信号を任意の波形発生器520に送信するトリガ信号をコンピュータに提供する。トリガ信号によって、任意の波形発生器520は、ユーザ入力540および550に基づいて、種々の形状およびタイミングの波形を生成することが可能になる。任意の波形発生器520は、閃光灯350(
図3)を駆動させるための波形信号を増幅させる閃光灯駆動装置530に、波形信号を送信する。
【0033】
フィードバック情報は、乾燥装置300のパルスエネルギー、パルス持続時間、パルス波形等のパラメータの連続的およびリアルタイムの調節を可能にする。前述のパラメータは全て、ソフトウェアおよび/またはハードウェア制御の下において、0.1%の分解能を有するミリ秒時間フレーム単位で改変されることができる。
【0034】
薄膜積層340が移動しており、閃光灯パルス周波数が搬送速度に同期されているとき、周波数は、
【0035】
【数3】
によって求められ、式中、
f=閃光灯複合パルス率[Hz]
S=搬送速度[m/分]
O=重複係数(すなわち、任意の所与の点において、基板によって受信される複合パルスの平均数)
W=搬送方向における閃光灯350の幅[cm]
である。
例えば、搬送速度100m/分、重複係数4、および硬化ヘッド幅7cmでは、ストロボのパルスレートは、95.4Hzである。より高速の搬送速度の場合、この関係は、閃光灯450の幅を増加させるか、または付加的閃光灯を追加することによって充足され得る。
【0036】
閃光灯350によって照射される面積よりも大きい基板面積にわたって、均一な硬化を達成するために、閃光灯350は、複合光パルスの送達を基板の搬送と同期させることが必要とされる。しかしながら、搬送速度が高速過ぎて、複合光パルスの送達の間、基板が有意に移動する場合、基板上の均一な硬化は、不可能である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によると、移動する基板上での均一な硬化は、薄膜積層340が複合光パルスの送達の間、閃光灯350の幅の10%未満だけ搬送方向に移動する場合、薄膜積層340の任意の長さ距離にわたって達成することができる。これは、以下の式の形式:
t<60×W/S
式中、
t=複合パルスの長さ[ms]
W=搬送方向における閃光灯350の幅[cm]
S=搬送速度[m/分]
で表される。
表IIは、搬送方向における搬送速度および光パルスの幅に対する均一な硬化のための複合パルスの最大パルス長さ[ms]を示している:
【0038】
【表2】
パルスを複合するミリ秒単位の時間は、搬送方向における均一な処理を達成するものよりも短くなければならない。
【0039】
(実施例1:PET上のナノ銀インクの乾燥および焼結)
PET上のナノ銀インクの2つの試料が調製され、各試料は、150ミクロン厚のPET基板上に印刷された1ミクロン厚のナノ銀薄膜である。第1の試料は、150℃で5分間、炉内で乾燥され、溶媒を撥ね飛ばし、持続時間1ms、1.6kW/cm
2、ウェブ速度10m/分、単一光パルスの送達毎に、1.6J/cm
2のエネルギーを付与する重複係数4で単一光パルスに暴露され、全エネルギー6.4J/cm
2が基板上に付与され、銀を焼結した。
【0040】
炉内で乾燥されなければ、第2の試料は、異なるパルス長さおよび遅延の6つの異なるマイクロパルスから構成される1ms長さの複合光パルスに暴露され、複合光パルスのタイミング(μs)は、表III:
【0042】
光パルスの強度を、付与される全エネルギー量が、第1の試料と同じであるように、4.7kW/cm
2まで増加させた。材料を、ウェブ速度10m/分、光パルス毎に1.6J/cm
2を付与する重複係数4で処理し、合計6.4×1.6J/cm
2を基板上に付与し、単回通過で銀を乾燥および焼結した。
【0043】
このタイプの処理の実装は、より多くの処理を従来の炉よりも少ない全体エネルギーで行うことができる。従来の炉処理の場合、基板全体、その周囲の空気、および処理域を包囲する従来の炉が、薄膜を処理するために加熱されなければならない。
【0044】
溶媒の蒸発によって吸収されるエンタルピーを無視する単一パルスに対する薄膜ならびに基板の背面における熱応答は、
図2bに示される曲線に類似している。薄膜および基板の背面における複合光パルスからの熱応答は、
図2cに示される曲線に類似している。
図2bと
図2cとの曲線の比較は、薄膜が高温にある時間量が、単一光パルスからよりも、複合光パルスからの方が有意に多いことを示す。具体的には、薄膜が約800℃に留まる時間量(
図2c参照)は、単一光パルスからのものの約2倍である(
図2b参照)。両方の場合とも、同一の放射暴露量を使用するので、これは、付与される同一のエネルギー量に対して、より多くの熱処理をもたらす。要するに、同一の熱処理量が、より少ないエネルギーを用いて達成され得る。
【0045】
これは、連続した小規模の高速光パルス列とは非常に異なる効果を有することに留意されたい。その場合においては、加熱の時間尺度は、薄膜積層の熱平衡時間尺度を上回り、従来の炉によって加熱される場合に類似するであろう。したがって、表面は、本発明において薄膜積層を損傷せずに達成されるピーク温度には到達しないであろう。その結果、本発明よりも低い処理速度を有するであろう。
【0046】
加えて、複合光パルスは、乾燥またはガス発生化学反応を有するようなガスを発生させる熱プロセスにおいて、別の有意な利点を有する。複合光パルスは、複数のマイクロパルスを含むので、乾燥中の薄膜に「通気」させる、すなわち、マイクロパルスの間においてガスを放出する。この作用は、薄膜内におけるガスの蓄積を防止し、そうでなければ、急膨張するガスによって凝集破壊を受けるであろう。
【0047】
(実施例2:溶媒蒸発を考慮した多温度域処理)
パルスプロファイルの同調性は、複数の個別のプロセスが単回通過において行われ得る場合、薄膜を乾燥させるために特に有用である。要するに、溶媒を含有する薄膜は、既に乾燥させられているものほど急速には加熱されることができない。すなわち、溶媒が薄膜中にあるとき、高電力は、溶媒を急膨張させて、薄膜を「破裂」させ、凝集破壊をもたらすであろう。理想的には、除去されるまで、最初により低い電力において溶媒を除去した後に、焼結等の付加的熱処理を行うためにより高い電力への暴露が続くことが所望されるであろう。
図2dは、複合パルスからの実施例1の膜および基板の代表的な熱応答プロファイルを示し、パルスの第1の部分は、最初の1.2msの間、薄膜の表面における温度を約700℃に維持した後に、残りの0.5msの間、薄膜の温度を1,000℃に維持するために、より高い電力への暴露が続く。本実施例では、溶媒蒸発は、より低い電力処理域の間で生じ、焼結は、より高い温度処理域の間で生じる。したがって、通常域処理とは対照的に、材料は、異なる温度の異なる領域または区域を有する炉内を搬送される。本発明は、同一のタイプの処理を時間単位で行わせ、したがって、「時間域処理」と称される。
【0048】
同一の原理を、複数の溶媒を含有する薄膜にも適用することができ、複数の加熱域を、揮発度を低下させるために、各溶媒を蒸発させるために形成させ得る。実施例1のシステムでは、パルスプロファイルは、システムが完全に吸収性であり、いかなるエネルギーも、周囲環境へと損失させられないと仮定して、6.4J/cm
2に暴露されるときの主要溶媒構成要素の全エンタルピー変化、銀インク顔料、および基板を考慮することによって計算することができ、溶媒を加熱および蒸発させるために、4.4J/cm
2のみが必要とされることが見出される。残りの銀金属を、約1,000℃まで非常に急速に加熱し、全エンタルピー変化0.15J/cm
2を必要とする。パルス間の時間の間、エネルギーは、基板中に漏出し、基板を146℃の推定値まで上昇させ、1.85J/cm
2のエンタルピー変化を必要とする。必要とされる全エネルギー量は、約6.4J/cm
2である。
【0049】
(実施例3:ガス生成の変調による薄膜内の凝集破壊の保存)
水性銅前駆体インクを、エチレングリコールおよびグリセロールを含有する基剤中に10.0重量%の酸化銅(II)、4.5重量%の酢酸銅(II)を含むように調製した。トレースを、Epson Stylus C88インクジェットプリンタを使用して、125ミクロン厚のPETシート上に印刷した。閃光灯で硬化させて、酸化銅および酢酸銅を、エチレングリコールおよびグリセロールによって還元させ、伝導性銅金属の膜を形成した。還元反応は、適量のガスを生成する。
【0050】
印刷された膜を、以下の条件で、本発明の方法および装置を使用して硬化させた:電圧250V、複合光パルス持続時間=1,050マイクロ秒、デューティサイクル0.6を伴う4マイクロパルス(すなわち、各マイクロパルスは、パルス間に117μsの遅延を有する175マイクロ秒長であった)、重複係数=3、ウェブ速度=6.4m/分。試料収率は、平均シート抵抗3.7Ω/□を伴って、100%であった。
【0051】
同じトレースが、同一であるが、単一パルスのみを有する機器で硬化させられたとき、ガス発生がトレースの凝集破壊を生じさせ、僅か64%の試料収率をもたらした。平均シート抵抗は、5.2Ω/□であった。入力変数のいずれの変化も、より低い伝導性または不良収率トレースをもたらした。
【0052】
説明されたように、本発明は、可動基板上の薄膜を熱的に処理するための方法を提供する。本発明は、先行技術よりも有意に長い時間周期の間、薄膜を高温下に置くことを可能にする。これは、同一の全時間量内で同一の放射エネルギー量を使用して行われ、したがって、損傷は、基板には生じない。
【0053】
本発明は、特に、好ましい実施形態を参照して、図示および説明されたが、形態および詳細における種々の変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において成され得ることが当業者によって理解されるであろう。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
基板上に位置する薄膜を有する薄膜積層を乾燥させるための方法であって、該方法は、
該薄膜積層を閃光灯を通過して搬送することと、
該薄膜積層を複合光パルスを用いて照射することであって、該照射することにより、該薄膜から溶媒を除去し、該複合光パルスは、該閃光灯からの複数のマイクロパルスによって形成され、該複合光パルスの全持続時間は、該薄膜積層の全熱平衡時間よりも短い、ことと
を含む、方法。
(項目2)
前記搬送することは、前記複合光パルスが送達されている時間の間に、前記薄膜積層を搬送方向に前記閃光灯の照射領域の長さの10%未満だけ搬送することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、
【数4】
であり、式中、τ1およびτ2はそれぞれ、前記薄膜および基板の熱平衡時間である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、前記基板の熱平衡時間とほぼ同一である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記マイクロパルスは、同じタイミングを有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記マイクロパルスは、異なるタイミングを有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記マイクロパルスは、電圧、パルス長さ、任意の所与の領域の中の前記基板上に衝突するマイクロパルスの平均数、パルス繰り返し周波数、マイクロパルスの数、およびデューティサイクルによって成形される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記基板は、450℃未満の最大動作温度を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記複合光パルスの瞬間面積電力密度は、同一のパルス長さの単一パルス損傷閾値を上回る、項目1に記載の方法。
(項目10)
一定温度が、処理の間、前記薄膜積層内の場所において維持される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記薄膜積層の中へ付与される全エネルギーは、該薄膜積層を前記基板の最大動作温度まで加熱するために必要とされるエネルギーの量未満である、項目1に記載の方法。
(項目12)
基板上に位置する薄膜を有する薄膜積層を熱的に処理するための方法であって、該方法は、
該薄膜積層を閃光灯を通過して搬送することと、
該薄膜積層を複合光パルスを用いて照射することであって、該照射することにより、該薄膜を熱的に処理し、該複合光パルスは、該閃光灯からの複数のマイクロパルスによって形成され、該複合光パルスの全持続時間は、該薄膜積層の全熱平衡時間よりも短い、ことと
を含む、方法。
(項目13)
前記搬送することは、前記複合光パルスが送達されている時間の間に、前記薄膜積層を前記閃光灯の照射領域の長さの10%未満だけ搬送方向に搬送することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、
【数5】
であり、式中、τ1およびτ2はそれぞれ、前記薄膜および基板の熱平衡時間である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記薄膜積層の前記全熱平衡時間は、前記基板の熱平衡時間とほぼ同一である、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記マイクロパルスは、同じタイミングを有する、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記マイクロパルスは、異なるタイミングを有する、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記マイクロパルスは、電圧、パルス長さ、任意の所与の領域の中の前記基板上に衝突するマイクロパルスの平均数、パルス繰り返し周波数、マイクロパルスの数、およびデューティサイクルによって成形される、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記基板は、450℃未満の最大動作温度を有する、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記複合光パルスの瞬間面積電力密度は、同一のパルス長さの単一パルス損傷閾値を上回る、項目12に記載の方法。
(項目21)
一定温度が、処理の間、前記薄膜積層内の場所において維持される、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記薄膜積層の中へ付与される全エネルギーは、該薄膜積層を前記基板の最大動作温度まで加熱するために必要とされるエネルギーの量未満である、項目12に記載の方法。