特許第5936287号(P5936287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59362871,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936287
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 403/02 20060101AFI20160609BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C07C403/02
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516276(P2014-516276)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-522812(P2014-522812A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2012061280
(87)【国際公開番号】WO2012175396
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】11171068.7
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ネッチェル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウステンベルク, ベティーナ
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭39−012314(JP,B1)
【文献】 特表2014−521598(JP,A)
【文献】 Lopez, Susana; Rodriguez, Jesus; Rey, Jose Garcia; de Lera, Angel R.,Structural Effects Affecting the Thermal Electrocyclic Ring Closure of Vinylallenes to Alkylidenecyclobutenes,Journal of the American Chemical Society ,1996年,118(8),1881-91
【文献】 Ammal, Salai Cheettu; Yoshikai, Naohiko; Inada, Youichi;,Synergistic Dimetallic Effects in Propargylic Substitution Reaction Catalyzed by Thiolate-Bridged Diruthenium Complex,Journal of the American Chemical Society ,2005年,127(26),9428-9438
【文献】 Nishibayashi, Yoshiaki; Shinoda, Akira; Miyake, Yoshihiro;,Ruthenium-catalyzed propargylic reduction of propargylic alcohols with silanes,Angewandte Chemie, International Edition ,2006年,45(29),4835-4839
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 403/
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)
【化1】

の脱水反応によって、1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン(式(I)の化合物)
【化2】

を製造する方法であって、少なくとも1種類のチオレート架橋ジルテニウム錯体が触媒として使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
40〜100℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
50〜80℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
周囲圧力にて行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒システムとして、チオレート架橋ジルテニウム錯体、任意選択で弱配位性アニオンを使用して行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒システムとして、[(C(CH)RuCl(μ−SMe)Ru(C(CH)Cl]およびテトラフルオロホウ酸アンモニウムを使用して行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水を含有しない溶媒(または溶媒の混合物)中で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンを製造するための向上した方法、ならびにその高度に異性体富化された形、および有機合成、特にビタミンAまたはβ−カロテンまたは他のカロテノイド、例えばカンタキサンチン、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの合成のための中間体(構成単位)を形成するプロセスでのかかる化合物の使用に関する。この新規な化合物はビタミンAを合成するための出発原料として有用であることが特に言及される。
【0002】
ビタミンA
【化1】


は、多くの用途に重要な成分である。ビタミンAは、例えば視覚プロセス、遺伝子転写、免疫機能、骨代謝、造血、皮膚および細胞の健康ならびに抗酸化機能など、体中の様々な機能において役割を果たす。ビタミンA(およびその誘導体)が重要であること、かつその合成が複雑であることから、向上した製造方法が常に必要とされている。
【0003】
1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン、式(I)
【化2】


の化合物は有機合成において重要な化合物である。式(I)の化合物は、例えば、ビタミンAまたはβ−カロテンの合成で使用される中間体の合成で使用される。
【0004】
G.Ohloffらは、一般的な(酸性)脱水反応条件下にて(例えば、p−トルエンスルホン酸、過塩素酸またはギ酸を用いて)、化合物(II)は環化生成物(A’)および(B’)を形成することが判明したことから、化合物(II)の脱水反応による式(I)の化合物の合成が些細なことではないことを実証している(K.H.Schulte−Elte,T.Umiker,G.Ohloff,Helv.Chim.Acta 1980,63,284−292)。
【化3】

【0005】
英国特許出願公開第1034189号明細書には、リン酸アルミニウムを使用して、230℃〜250℃の範囲の温度にて、20mmHg(=2’666,45Pa)の減圧下にて、3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)
【化4】


を脱水することによる、式(I)の化合物の製造方法が記載されている。これらの条件下にて、生成物は収率70%で得られる。1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンは異性体混合物として得られ、使用される。
【0006】
本発明の目標は、廃棄物の形成、エネルギー消費を低減し、かつ空時収率を増加する目的で、高温、減圧、および多量のアルミニウム塩を必要としない、式(I)の化合物の製造方法の代替反応を発見することであった。
【0007】
驚くべきことに、特定の種類の触媒を使用し、より低い温度、気圧、および触媒条件下で作業することによって、式(I)の化合物が現況技術と比較して高い収率で得られることが判明した。
【0008】
したがって、本発明は、3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)の脱水反応によって、1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン(式(I)の化合物)を製造するための、新規かつ向上した方法であって、少なくとも1種類のチオレート架橋ジルテニウム錯体が触媒として使用されることを特徴とする方法に関する。
【0009】
通常、反応温度は、40℃〜100℃、好ましくは50℃〜80℃である。本発明による方法は、周囲圧力にて行われる。チオレート架橋ジルテニウム錯体は、本発明による方法において触媒として使用される。かかる触媒の混合物を使用することも可能である。好ましくは、[(C(CH)RuCl(μ−SMe)Ru(C(CH)Cl]および弱配位性アニオンを含む触媒システムが使用される。弱配位性アニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、テトラクロロアルミン酸アニオン、過塩素酸アニオン、テトラキス−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸アニオン(BAr)、メチルアルミニウムオキサン(MAO)、トリフレートアニオン、トリフルイミドである。
【0010】
使用されるジルテニウム錯体と弱配位性アニオンとの比は1:0.9〜1:3、好ましくは1:0.95〜1:2である。ルテニウム触媒は、出発原料(式(I)の化合物)に対して1:200〜1:10の比で使用される。
【0011】
本発明の方法は溶媒中で行われる。通常、水を含有しない溶媒(または溶媒の混合物)が使用される。適切な溶媒は、極性または非極性非プロトン性溶媒、例えばエーテル、例えばTHF、メチル−THF、MTBE、エステル、例えば酢酸エチル、または1,2−ジクロロエタンまたはジクロロメタンである。
【0012】
上述の方法のさらに驚くべき効果は、式(Ia)
【化5】


の化合物である、過剰量(85%を超える量)の(Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンを有する、式(I)の生成物が生成されることである。
【0013】
副生成物(例えば、E異性体)を除去して、高度に富化されたZ異性体を得ることが可能である。これは、例えばカラムクロマトグラフィーなどの一般に公知の精製方法を使用して行うことができる。
【0014】
本発明は、新規な化合物にも関する。式(Ia)の化合物((Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン)は新規である。したがって、本発明は、式(Ia)
【化6】


の化合物にも関する。
【0015】
(Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エンの構造または純度は、NMR、GC、HPLCまたはTLCなどの一般に使用される任意の分析法によって決定することができる。
【0016】
式(Ia)の新規な化合物の分析データを以下に示す:
【化7】


H−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=0.99(s,6H,CH,H12+H13),1.42(m,2H,CH,H2),1.55(m,2H,CH,H3),1.58(s,3H,CH,H14),1.85(s,3H,CH,H15),1.90(t,J=6.3Hz,2H,CH,H4),2.99(d,J=6.8Hz,2H,CH,H7),3.16(s,1H,CH,H11),5.61(t,1H,CH,6.8Hz,H8)。
【0017】
13C−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=19.5(C3),19.8(C14),22.7(C15),28.2(C12+C13),30.1(C7),33.0(C4),35.0(C1),39.8(C2),80.9(C11),84.9(C10),115.5(C9),128.7(C5),135.3(C6),140.3(C8)。
【0018】
GC(実施例1に記載される):t(Ia)=8.85分
HPLC(実施例1に記載される):t(Ia)=5.59分
TLC(SiO,シクロヘキサン/酢酸エチル9:1,アニスアルデヒド):R(Ib)=0.67
【0019】
式(Ib)
【化8】


の化合物である、((Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン)のE型は、例えばRey et al.,Tetrahedron Letters 1993,34(39),p.6293−6296に記載の方法に従って合成することができる。式(Ib)の化合物の分析データを以下にまとめる:
H−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=0.96(s,6H,2×CH,H12+H13),1.40−1.44(m,2H,CH,H2),1.53(s,3H,CH,H14),1.55−1.61(m,2H,CH,H3),1.84(d,J=1.4Hz,3H,CH,H15),1.92(t,J=6.0Hz,2H,CH,H4),2.74(s,1H,CH,H11),2.78(d,J=6.8Hz,2H,CH,H7),5.80(td,J=6.8Hz,J=1.4Hz,1H,CH,H8)。
【0020】
13C−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=17.1(C15),19.5(C3),19.8(C14),27.8(C7),28.2(2C,C12+C13),33.0(C4),34.9(C7),39.7(C2),73.1(C11),87.1(C10),115.1(C9),128.8(C5),135.2(C6),141.0(C8)。
【0021】
GC(実施例1に記載される通り):t(Ib)=9.26分
HPLC(実施例1に記載される通り):t(Ib)=5.24分
TLC(SiO,シクロヘキサン/酢酸エチル9:1,アニスアルデヒド):R(Ib)=0.67。
【0022】
本発明による方法の生成物は有機合成で使用することができる。それは、例えばビタミンAまたはβ−カロテン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの合成において、特にビタミンAまたはβ−カロテン(好ましくはビタミンA)の合成のための中間体(構成単位)を形成するプロセスにおいて重要な生成物である。さらに、過剰量の式(Ia)のZ異性体を含む混合物の生成を可能にするプロセスを有することは非常に興味深い。
【0023】
本発明による方法によって得られる式(I)の化合物を、式(III)
【化9】


の化合物(式中、RがC〜C15アルキル部位またはC〜C18アルケニル部位を示す)と反応させる。
【0024】
がC〜C15アルキル部位である場合、次いで好ましくは、アルキル部位は直鎖状である。特に好ましいアルキル部位は、メチル、エチルおよびペンタデシルである。RがC〜C18アルケニル部位である場合、式(III)の化合物は2個以上のC−C二重結合を含有する。好ましくは、アルケニル部位は枝分かれしていない。
【0025】
その反応生成物(式(IV)の化合物)
【化10】


は、ビタミンAまたはβ−カロテンまたは他のカロテノイド、例えばカンタキサンチン、アスタキサンチンおよびゼアキサンチンの合成のための、特にビタミンA(およびその誘導体)の合成のための中間体である。式(III)の化合物は新規な化合物である。
【0026】
式(III)の化合物は、式(V)
【化11】


の化合物(式中、RがC〜C15アルキル部位またはC〜C18アルケニル部位を示す)の塩素化によって生成することができ、少なくとも1種類の塩素化反応物が使用される。
【0027】
がC〜C15アルキル部位である場合、次いで好ましくは、アルキル部位は直鎖状である。特に好ましいアルキル部位は、メチル、エチルおよびペンタデシルである。
【0028】
がC〜C18アルケニル部位である場合、式(V)の化合物は2個以上のC−C二重結合を含有する。好ましくは、アルケニル部位は枝分かれしていない。
【0029】
塩素化反応物は広く知られており、使用されている。式(III)の化合物を製造するために、任意の塩素化反応物(またはその混合物)を使用することができる。塩素化反応物の例は、塩化オキサリル、五塩化リン、塩化チオニル、オキシ塩化リン、塩素、塩素酸、塩化アンチモン(V)、次亜塩素酸、N−クロロスクシンイミド、三塩化リン、塩化スルフリル、四塩化炭素、塩化シアヌルである。好ましい塩素化反応物は、塩化オキサリル、五塩化リン、塩化チオニルおよびオキシ塩化リンである。
【0030】
塩素化反応物は通常、式(V)の化合物の量に対してわずかにモル過剰量で添加される。この反応は通常、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、ジクロロエタン、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、またはエーテルなどの極性または非極性溶媒中で行われる。式(V)の化合物の塩素化は通常、−20〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度で行われる。
【0031】
式(IV)の化合物は、ビタミンA(およびその誘導体)およびβ−カロテンの合成、好ましくはビタミンA(およびその誘導体)の合成における中間体として使用される。
【0032】
本発明の実施例は、本発明を例証する役割を果たす。
【0033】
[実施例]
[実施例1:(Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン(式(Ia)の化合物)]
窒素雰囲気下にて、[(C(CH)RuCl(μ−SMe)Ru(C(CH)Cl]16.1mg(0.03mmol,5モル%)およびテトラフルオロホウ酸アンモニウム5.3mg(0.05mmol)を無水1,2−ジクロロエタン7.5mlに溶解した。その暗赤色の溶液に、無水1,2−ジクロロエタン5.0ml中の3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)129mg(0.5mmol)の溶液を室温にて一滴ずつ添加した。出発原料を完全に添加した後、溶液を60℃に加熱した。60℃で3時間後、茶色の溶液を室温に冷却した。
【0034】
半濃縮ブライン(3×25ml)で反応混合物を洗浄した。ジクロロメタン20mlで水層を2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥状態まで濃縮した。Z/E比93:7を有する粗生成物(式(I)の化合物)が収率93%で得られた。副生成物(VI)は検出されなかった。
【0035】
[粗生成物(E/Z混合物=式(Ia)の化合物と式(Ib)の化合物の混合物)の分析データ:]
[Ia:]
H−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=0.99(s,6H,CH,H12+H13),1.42(m,2H,CH,H2),1.55(m,2H,CH,H3),1.58(s,3H,CH,H14),1.85(s,3H,CH,H15),1.90(t,J=6.3Hz,2H,CH,H4),2.99(d,J=6.8Hz,2H,CH,H7),3.16(s,1H,CH,H11),5.61(t,1H,CH,6.8Hz,H8)。
13C−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=19.5(C3),19.8(C14),22.7(C15),28.2(C12+C13),30.1(C7),33.0(C4),35.0(C1),39.8(C2),80.9(C11),84.9(C10),115.5(C9),128.7(C5),135.3(C6),140.3(C8)。
GC:t(II)=9.84分,t(Ia)=8.85分
HPLC:t(II)=3.17分,t(Ia)=5.59分
TLC(SiO,シクロヘキサン/酢酸エチル9:1,アニスアルデヒド);R(II)=0.16,R(Ia)=0.63
【0036】
[Ib:]
H−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=0.96(s,6H,2×CH,H12+H13),1.40−1.44(m,2H,CH,H2),1.53(s,3H,CH,H14),1.55−1.61(m,2H,CH,H3),1.84(d,J=1.4Hz,3H,CH,H15),1.92(t,J=6.0Hz,2H,CH,H4),2.74(s,1H,CH,H11),2.78(d,J=6.8Hz,2H,CH,H7),5.80(td,J=6.8Hz,J=1.4Hz,1H,CH,H8)。
13C−NMR(300MHz,CDCl):δ[ppm]=17.1(C15),19.5(C3),19.8(C14),27.8(C7),28.2(2C,C12+C13),33.0(C4),34.9(C1),39.7(C2),73.1(C11),87.1(C10),115.1(C9),128.8(C5),135.2(C6),141.0(C8)。
【0037】
GC(実施例1に記述される通り):t(Ib)=9.26分
HPLC(実施例1に記述される通り):t(Ib)=5.24分
TLC(SiO,シクロヘキサン/酢酸エチル9:1,アニスアルデヒド):R(Ib)=0.67
【0038】
式(Ia)の化合物は最終工程で精製された。
【0039】
[GC法:]
装置:Agilent 7890A;キャリアーガス:ヘリウム;圧力:25psi;流量:88ml/分;注入容積:1μl;インジェクター:スプリット(10:1);インジェクター温度:250℃;カラム:HP−5(5%フェニルメチルシロキサン)(30m×320μm×0.25μm);温度プログラム:50℃(2分),15℃/分,300℃(5分);検出器:FID;検出器温度:300℃。
【0040】
[HPLC法:]
装置:Agilent 1050;カラム:Supelcosil LC−18(250mm×4.6mm×5μm);自動サンプラー:Agilent 1100;注入容積:2μl;溶離剤:アセトニトリル/水90:10;流量:1.5ml/分;温度:23℃;検出器:可変波長検出器;検出波長:230nm。
【0041】
[実施例2:(Z)−1,3,3−トリメチル−2−(3−メチルペント−2−エン−4−イニル)シクロヘキス−1−エン(式(Ia)の化合物)]
窒素雰囲気下にて、[(C(CH)RuCl(μ−SMe)Ru(C(CH)Cl]16.1mg(0.03mmol,5モル%)を無水1,2−ジクロロエタン7.5mlに溶解した。その暗赤色の溶液に、無水1,2−ジクロロエタン5.0ml中の3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)129mg(0.5mmol)の溶液を室温にて一滴ずつ添加した。出発原料を完全に添加した後、溶液を60℃に加熱した。60℃で24時間後、茶色の溶液を室温に冷却した。
【0042】
半濃縮ブライン(3×25ml)で反応混合物を洗浄した。ジクロロメタン20mlで水層を2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥状態まで濃縮した。Z/E比87:13を有する粗生成物(式(I)の化合物)が収率91%で得られた。副生成物(VI)は検出されなかった。分析データについては、実施例1を参照のこと。
【0043】
[実施例3:3,7−ジメチル−4−オキソ−9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ノナ−2,7−ジエン−5−イニルアセテート(式(IVa)の化合物)]
窒素雰囲気下にて、ヨウ化銅(I)59.9mg(0.308mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[(PPhPdCl]110.3mg(0.154mmol)を100ml四つ口フラスコも添加した。23℃にて、無水THF42.0mlを添加し、黄色の懸濁液を5分間攪拌した。シリンジを使用してトリエチルアミン2.15ml(15.4mmol)を一滴ずつ添加し、オレンジ色の液体が得られた。1分以内に、4−クロロ−3−メチル−4−オキソブト−2−エニルアセテート(式(IIIa)の化合物)
【化12】


3.10g(15.4mmol)を添加し、溶液が暗いオレンジ色に変化した。実施例1の反応生成物2.92g(14.0mmol)を5分間にわたって一滴ずつ添加すると、黄色の懸濁液が形成した。反応混合物を室温に冷却し、GCおよびTLCによってモニターした。23℃で2時間20分後、すべての出発原料が消費された。反応混合物を分液漏斗に移し、ジエチルエーテル80mlで希釈し、半濃縮重炭酸ナトリウム溶液(80ml)で洗浄した。層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×75ml)で抽出した。合わせた有機層を半飽和重炭酸ナトリウム溶液80mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥状態まで濃縮した。粗生成物(式(IVa)の化合物)
【化13】


が茶色のオイルとして得られ(5.44g,純度82%,収率93%)、カラムクロマトグラフィーおよび木炭処理によって精製された。
【0044】
[比較例1:]
無水トルエン1.0ml中の3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)26mg(0.13mmol)の溶液に、Amberlyst−15 94mgを添加した。23℃で48時間攪拌した後、濾過によって酸性イオン交換樹脂を除去し、減圧下にて溶媒を蒸発させた。粗生成物のGC分析から、式(A’)の化合物65面積%が示された。生成物A’は、参照NMRデータと比較することによって同定された(G.Ohloff et al,Helvetica Chimica Acta 1976,59,1158−1168参照)。
【0045】
[比較例2:]
窒素雰囲気下にて、[(C(CH)RuCl(μ−SMe)Ru(C(CH)Cl]54.2mg(0.085mmol,0.625モル%)およびテトラフルオロホウ酸アンモニウム143.3mg(1.367mmol,10モル%)を無水1,2−ジクロロエタン80mlに溶解した。その暗赤色の溶液に、無水1,2−ジクロロエタン5.0ml中の3−メチル−5−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)ペント−1−イン−3−オール(式(II)の化合物)3.369g(13.67mmol)の溶液を室温にて一滴ずつ添加した。出発原料を完全に添加した後、溶液を60℃に加熱した。60℃で3時間後、茶色の溶液を室温に冷却した。半濃縮ブライン(3×150ml)で反応混合物を洗浄した。ジクロロメタン150mlで水層を2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥状態まで濃縮した。不要な副生成物として収率15%の1,3,3−トリメチル−2−(3−メチレンペント−4−イニル)シクロヘキス−1エン(式(VI)の化合物)と共に、Z/E比94:6を有する粗生成物(式(I)の化合物)が収率81%で得られた。
【化14】