(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936291
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】エネルギー貯留装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/20 20060101AFI20160609BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
F03B13/20
H02J15/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-143560(P2015-143560)
(22)【出願日】2015年7月21日
(62)【分割の表示】特願2012-122508(P2012-122508)の分割
【原出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-194157(P2015-194157A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-123225(P2011-123225)
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-149016(P2011-149016)
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512153795
【氏名又は名称】合同会社アルバトロス・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】秋元 博路
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−201018(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02080899(EP,A1)
【文献】
米国特許第07397144(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/20
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動可能な縦回転軸を形成する第1浮体と、係留されて第1浮体を取り巻く第2浮体とを備え、第1浮体は、縦回転軸に直交する軸線回りの第2浮体に対する相対揺動と、縦回転軸延在方向の第2浮体に対する相対直進運動とが可能であり、更に第2浮体に取り付けられて第1浮体の回転運動エネルギーを発電機の駆動トルクに変換する動力伝達装置を備え、水上に設置され、発電機に供給される電力を第1浮体の回転エネルギーに変換して第1浮体に貯留することを特徴とするエネルギー貯留装置。
【請求項2】
一対の第1浮体と、係留されて前記一対の第1浮体を取り巻く第2浮体とを備え、第2浮体は中間ブイ付多点係留され、第2浮体と中間ブイとを連結する係留索は、上面視で、前記一対の第1浮体の回転軸線を結ぶ第1直線の前記一対の第1浮体間の中間点を通り第1直線に直交する第2直線に関して線対称に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縦回転軸と、縦回転軸を支持する浮体と、浮体内に配設され縦回転軸に作動係合して回転駆動される発電機とを備え、浮体が水上係留された、洋上風力エネルギー取出装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO03/089787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置の発電機に電力を供給し、電力を縦回転軸の回転エネルギーに変換して縦回転軸に貯留すれば、エネルギー貯留装置が成立する。
特許文献1の装置には、縦回転軸を回転可能に支持する支持装置と、発電機とを浮体内に配設するので、浮体の内部構造が複雑になり、製造コストが上昇するという問題がある。また、縦回転軸が略鉛直に延在することが予定されており、当該予定を達成するために、浮体と係留装置とが大型化するという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、縦回転軸と、縦回転軸を支持する浮体と、浮体内に配設され縦回転軸に作動係合して回転駆動される発電機とを備え、浮体が水上係留されたエネルギー貯留装置であって、従来技術に比べて浮体の内部構造が簡素で、浮体と係留装置とが小型化され、製造コストが低い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、揺動可能な縦回転軸を形成する第1浮体と、係留されて第1浮体を取り巻く第2浮体とを備え、第1浮体は、縦回転軸に直交する軸線回りの第2浮体に対する相対揺動と、縦回転軸延在方向の第2浮体に対する相対直進運動とが可能であり、更に第2浮体に取り付けられて第1浮体の回転運動エネルギーを発電機の駆動トルクに変換する動力伝達装置を備え、水上に設置され、発電機に供給される電力を第1浮体の回転エネルギーに変換して第1浮体に貯留することを特徴とするエネルギー貯留装置を提供する。
発電機に供給される電力を第1浮体の回転エネルギーに変換することにより、エネルギー貯留装置が得られる。
本発明においては、縦回転軸は第1浮体であって水の浮力で支持されるので、従来技術の浮体に相当する第2浮体は第1浮体の支持構造を要さない。第1浮体は揺動可能なので、従来技術の浮体に相当する第2浮体は第1浮体の揺動を阻止する必要が無い。動力伝達装置は第1浮体と第2浮体の間のオープンスペースに配設される。従って、従来技術の浮体に相当する第2浮体の内部構造は従来技術に比べて簡素化され、第2浮体と係留装置とは従来技術に比べて小型化され、第2浮体の製造コストは従来技術に比べて低減する。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、エネルギー貯留装置は一対の第1浮体と、係留されて前記一対の第1浮体を取り巻く第2浮体とを備え、第2浮体は中間ブイ付多点係留され、第2浮体と中間ブイとを連結する係留索は、上面視で、前記一対の第1浮体の回転軸線を結ぶ第1直線の前記一対の第1浮体間の中間点を通り第1直線に直交する第2直線に関して線対称に配設されている。
エネルギー貯留装置の稼働時に、一対の第1浮体を互いに逆方向へ回転させれば、発電機から第2浮体に伝達されるトルクが相殺され、第2浮体の回転が防止される。この結果、係留が容易化されて係留コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例に係るエネルギー貯留装置の構造図である。(a)は第1浮体が直立した時の部分側面図であり、(b)は上面図であり、(c)はローラーと支持腕の模式的な斜視図であり、(d)は第1浮体が傾斜した時の部分側面図であり、(e)は第1浮体が上方へ移動した時の第1浮体周側面上でのローラー当接部の軌跡とローラーの姿勢との関係を示す部分側面図である。
【
図2】発明の実施例に係るエネルギー貯留装置の部分側面図である。
【
図3】本発明の実施例に係るエネルギー貯留装置の係留状態を示す構造図である。(a)は一対の第1浮体を有するエネルギー貯留装置の上面図であり、(b)は単一の第1浮体を有するエネルギー貯留装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例に係るエネルギー貯留装置を説明する。
図1(a)、(b)、(c)、
図2に示すように、エネルギー貯留装置Aは、縦回転軸、即ち上下に延在する回転軸、を形成する円柱状の第1浮体1と、水上係留されて第1浮体1を取り巻く第2浮体2とを備えている。
第2浮体2は、上面視で、第1浮体1を中心とする正三角形の各頂点に配設された円柱状の浮体2aと、隣接する浮体2a同士を連結する腕部材2bとを有している。3本の腕部材2bは同一平面上に在る。
U型の二股部3a’と二股部の基部から延びる軸部3a”とを有する音叉形状部材である第1部分3aと、U型の二股部3b’と二股部の基部から延びる軸部3b”とを有する一対の音叉形状部材が、二股部3b’を互いに突き当てて一体化された第2部分3bとを有し、第2部分3bの両軸部3b”が第1部分3aの二股部3a’に回動自在に支持された構造を有する支持腕3が、第1部分3aの軸部3a”を腕部材2bに直交させて、腕部材2bの長さ方向中央部に取り付けられている。支持腕3は、3本の腕部材2bが含まれる平面内で、第1浮体1の中心軸線Lへ向けて延びている。第1部分3aの軸部3a”は、当該軸部の中心軸線回りに回動可能に、また図示しないバネの付勢力を受けて、所定のストローク内で腕部材2bから出没自在に、腕部材2bに取り付けられている。各腕部材2bに1個の支持腕3が取り付けられている。
各支持腕3の第2部分3bに、厚肉円盤状のローラー4が回動自在に取り付けられている。
ローラー4は、円盤の中心軸線X回りと、円盤の肉厚中心平面内で軸線Xに直交して第1浮体1の中心軸線Lへ向けて延在する軸線Y回りと、円盤の肉厚中心平面内で軸線Xと軸線Yとの交点を通り且つ前記2軸線に直交する軸線Z回りとに、回動自在に、支持腕3によって支持されている。
3個のローラー4が、上面視で、周方向に120度づつ間隔を隔てて第1浮体1を取り囲んでおり、ローラー4の周側面が第1浮体1の周側面に当接している。ローラー4の周側面は、腕部材3の軸部3a”を付勢する前述の図示しないバネによって、第1浮体1の周側面に押し付けられている。
ローラー4に発電機5が取り付けられている。
エネルギー貯留装置Aは水上に設置されている。第2浮体2は図示しないアンカー及びチェーン又はワイヤーにより係留されて水面に浮いており、第1浮体1はローラー4によって水平移動が制約される点を除いて自由状態で水面に浮いている。ローラー4と発電機5とは水面よりも上方に在る。
【0009】
エネルギー貯留装置Aの第1浮体1に縦回転軸風車や縦回転軸水車を固定して発電を行うことができる。この場合、第1浮体1の回転が、ローラー4に伝達され、ローラー4に取り付けられた発電機5が駆動されて発電される。第1浮体1の回転運動エネルギーが発電機5の駆動トルクに変換され、最終的に電気エネルギーに変換されて取り出される。
ローラー4は、中心軸線である軸線X回りのみならず、軸線Xに直交する軸線Y、Z回りにも回動可能なので、回転する第1浮体1から受ける抵抗が最小になる姿勢で第1浮体1に当接する。この結果、
図1(d)に示すように第1浮体1が揺動して傾斜すると、ローラー4は、軸線Z回りに回動し、軸線Xを第1浮体1の中心軸線Lに平行に延在させて、第1浮体1周側面に当接し、第1浮体1によって回転駆動される。波を受けて回転中の第1浮体1が上下動すると、ローラー4は、軸線Y回りに回動し、
図1(e)に示すように、第1浮体1周側面上のローラー4当接部の軌跡Sの延在方向へ周側面を差し向けて、第1浮体1周側面に当接し、第1浮体1によって回転駆動される。
ローラー4は、前述のごとく第1浮体1の周側面に押し付けられているので、第1浮体1が揺動して傾斜し、上下動し、或いは水平動しても、確実に第1浮体1の周側面に当接し、第1浮体1によって回転駆動される。
従来技術の縦回転軸に相当する第1浮体1は、水の浮力で支持されるので、従来技術の浮体に相当する第2浮体2は第1浮体1の支持構造を要さない。第1浮体1は揺動可能なので、従来技術の浮体に相当する第2浮体2は第1浮体1の揺動を阻止する必要が無い。またローラー4と発電機5とは第1浮体1と第2浮体2の間のオープンスペースに配設される。この結果、従来技術の浮体に相当する第2浮体2の構造は従来技術に比べて簡素化され、第2浮体2と係留装置とは従来技術に比べて小型化され、第2浮体2ひいてはエネルギー貯留装置Aの製造コストは従来技術に比べて低減する。
複数のローラー4と発電機5とを配設することにより、単一の大寸法のローラーと大容量の発電機とを配設する場合に比べてローラー4と発電機5とが小型化されローラー4と発電機5の開発コストと製造コストとが低減する。ローラー4と発電機5の個数を4以上にすれば、発電を継続しつつ何れかのローラー4と発電機5とを保守し或いは交換することが可能になる。
【0010】
図2に示すように、発電機5に電力を供給し、発電機5とローラー4とを介して前記電力を第1浮体1の回転エネルギーに変換することにより、エネルギー貯留装置Aを本来の目的に使用することができる。第1浮体1に貯留された運動エネルギーは、必要時に電気エネルギーとして取り出すことができる。
エネルギー貯留装置Aを、海、湖沼、河川等に設置することができる。
【0011】
図3(a)に示すように、一対の第1浮体1と、一対の第1浮体1を取り巻く第2浮体2と、第2浮体2に取り付けられて一対の第1浮体1に当接する一対の3個のローラー4と、各ローラー4に取り付けられた発電機5とで、エネルギー貯留装置を構成し、第2浮体2を中間ブイ付多点係留しても良い。第2浮体2と中間ブイ10とを連結する2本の係留索11を、上面視で、一対の第1浮体1の回転軸線を結ぶ第1直線X’の前記一対の第1浮体1間の中間点を通り第1直線X’に直交する第2直線Y’に関して線対称に配設する。
第2浮体2と中間ブイ10とを連結する2本の係留索11が、上面視で、一対の第1浮体1の回転軸線を結ぶ第1直線X’の前記一対の第1浮体1間の中間点を通り第1直線X’に直交する第2直線Y’に関して線対称に配設されているので、エネルギー貯留装置の稼働時に、一対の第1浮体1を互いに逆方向へ回転させれば、モータや発電機から第2浮体2に伝達されるトルクが相殺され、第2浮体2の回転が防止される。この結果、係留が容易化されて係留コストが低減する。
単一の縦回転軸風車Bと単一の第1浮体1と第2浮体2とから成るエネルギー貯留装置を係留する際には、
図3(b)に示すように、径方向外方へ延びる腕部材12を第2浮体2に固定し、腕部材12から中間ブイ10へ係留索11を延ばして、第2浮体2を中間ブイ付一点係留するのが望ましい。腕部材12を設けて第2浮体2の回転レバーを増加させることにより、第1浮体1から第2浮体2へ伝達されるトルクを打ち消すために係留索11に発生する張力を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、水上に設置するエネルギー貯留装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0013】
A エネルギー貯留装置
X 中心軸線
Y、Z 軸線
X’ 第1直線
Y’ 第2直線
1 第1浮体
2 第2浮体
2a 浮体
2b 腕部材
3 支持腕
4 ローラー
5 発電機
10 中間ブイ
11 係留索